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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E03F
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E03F
管理番号 1118555
審判番号 無効2000-35531  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-02-09 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-09-30 
確定日 2005-04-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2863151号「側溝構造」の特許無効審判事件についてされた平成15年5月8日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成15年(行ケ)第252号平成16年12月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2863151号の請求項1〜4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯
平成 9年 7月17日 出願
7月18日 手続補正
平成10年11月25日 特許査定
12月11日 設定登録
平成12年 9月30日 無効審判請求
平成13年 1月11日 答弁書
4月20日 弁駁書
平成14年 7月25日 口頭審理
8月31日 上申書(請求人)
9月 3日 回答書(被請求人)
10月 9日 無効理由通知
12月13日 意見書・訂正請求
12月25日 審尋(請求人に対して)
平成15年 3月 7日 回答書(請求人)
5月 8日 審決(訂正を認め、特許維持)
6月14日 請求人が出訴
平成16年12月24日 判決(上記審決を取消)

【2】訂正の適否についての判断
(2-1)明細書の訂正の内容は、以下(ア)〜(カ)のとおりである。
(ア)特許請求の範囲を次のとおり訂正。
「【請求項1】対向する側溝壁内面に形成された上部傾斜面部、該上部傾斜面部に連続して下方に延設された湾曲面部及び該湾曲面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部傾斜面部に対し微小間隙を介して対峙される蓋上部傾斜面部、該蓋上部傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記湾曲面部に対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部及び該蓋湾曲面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隙を介して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋と、を備え、上記側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする側溝構造。
【請求項2】上記側溝蓋の上記湾曲は連続的であり且つ線対称を示す請求項1記載の側溝構造。
【請求項3】対向する側溝壁内面に形成された上部垂直面部、該上部垂直面部に連続して下方に延設された傾斜面部及び該傾斜面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝駆体と、上記上部垂直面部に対し微小間隙を介して対峙される蓋上部垂直面部、該蓋上部垂直面部に連続して下方に延設されて、上記傾斜面部に対し線接触しながら対峙される蓋傾斜面部及び該蓋傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隙を介して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋と、を備え、上記側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする側溝構造。
【請求項4】上記側溝蓋の上記湾曲は連続的であり且つ線対称を示す請求項3記載の側溝構造。」

(イ)明細書の段落【0001】を次のとおり訂正。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般道路の側部に埋設設置されて排水路として使用される側溝構造に関し、特に、車両等の走行重量に十分耐える強度を持ちながら、側溝蓋と側溝との嵌合状態をがたつきなく安定化させる側溝構造に関する。」

(ウ)明細書の段落【0004】〜【0009】を次のとおり訂正。
「【0004】本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、車両の走行に対して十分な強度を確保しながら、側溝蓋のがたつきの発生防止、騒音防止及び側溝蓋の跳ね上り防止ができる側溝構造を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本第1発明の側溝構造は、対向する側溝壁内面に形成された上部傾斜面部、該上部傾斜面部に連続して下方に延設された湾曲面部及び該湾曲面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部傾斜面部に対し微小間隙を介して対峙される蓋上部傾斜面部、該蓋上部傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記湾曲面部に対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部及び該蓋湾曲面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隙を介して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋とを備え、該側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする。
【0006】本第3発明の側溝構造は、対向する側溝壁内面に形成された上部垂直面部、該上部垂直面部に連続して下方に延設された傾斜面部及び該傾斜面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部垂直面部に対し微小間隙を介して対峙される蓋上部垂直面部、該蓋上部垂直面部に連続して下方に延設されて、上記傾斜面部に対し線接触しながら対峙される蓋傾斜面部及び該蓋傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隙を介して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋とを備え、該側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする。上記各発明において、上記「略湾曲」とは、弓形に張られた形状のみならず、この変形形状、例えば、図11に示す階段状弓張り形状及び図12に示す傾斜状逆V字形状等をも含む意味に用いる。上記各発明において,上記湾曲は連続的であり且つ線対称を示すものとすることができる。尚、この湾曲を階段的という不連続的なものとすることもできるし、非対象とすることもできる。
【0007】上記側溝蓋は、蓋下部垂直面部を有する側溝蓋において、該側溝蓋の両側面を該側溝蓋の面端面 (側溝躯体と接触しない側の端面、即ち前後方向の端面をいう。)から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする。上記湾曲の程度は、所定の荷重(例えば自動車等)の負荷により接触することとなるものであればよく、例えば、0.5〜5mm程度、好ましくは1〜4mm程度、更に好ましくは1〜3mm程度である。
【0008】上記側溝蓋は、上記蓋下部垂直面部に連続して上方に延設される蓋湾曲面部、及び該蓋湾曲面部に連続して上方に延設される蓋上部部傾斜面部を備えるものとすることができる。また、上記側溝蓋は、上記蓋下部垂直面部に連続して上方に延設される蓋傾斜面部、及び該蓋傾斜面部に連続して上方に延設される蓋上部垂直面部を備えるものとすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例により図面に基づいて具体的に説明する。
実施例1
本実施例は、両端面から中央にかけて湾曲させた構造及び湾曲面を有する側溝蓋を用いた線接触型側溝構造に関するものである。図1は本側溝構造を示す縦断面図、図2は側溝蓋の正面図、図3は要部の部分拡大断面図、図4は側溝蓋の模式的底面図、図5は側溝蓋の模式的側面図、図6は両方向の湾曲状態を説明する説明図である。本実施例に係わる側溝構造は、側溝躯体1と側溝蓋8とからなる。」

(エ)明細書の段落【0023】を次のとおり訂正。
「【0023】尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例において、側溝蓋の蓋下部垂直面部及び接触予定部Pの湾曲形状は連続的で且つ線対称であるが、これに限らず、非連続的、例えば図11に示すような階段状(4段)とすることができる。この階段形状はこの図に示す数、その各段の長さ及びその高さに限らず、目的等により種々変更できる。例えば、両端部の四隅のみ突出しており、他は凹部になったもの(即ち2段階段状といえる。)、この2段の場合でも両端部側の段長さを比較的長くしたり、又は4段以上の段数等とすることができる。また、図12に示すように、中央にかけて傾斜状に窪む形状(傾斜状逆V字形状)とすることもできる。更に、この湾曲の深さ(R、S)も、1〜3mm以外のもの、例えば.0.5mm程度又は4〜6mm程度とすることもできる。尚、これが大きいと荷重が負荷されても接触しなくなる場合があり、また、あまり小さいと精度良く製作することが困難となるし、精度が悪い場合には四隅で接触せずに、中間部で接触することもありうるので、好ましくない。好ましくは、この湾曲深さ(R、S)は、1〜4mm程度、更に好ましくは1〜3mm程度である。また、湾曲の態様(種類)は、上記実施例1及び上記実施例2に示す場合以外とすることもできる。」

(オ)明細書の段落【0025】を次のとおり訂正。
「【0025】
【発明の効果】本第1乃至第4発明の各側溝構造によれば、まず、その側溝蓋の四隅の線接触部分が確実に接触するので、クサビ効果を有するとともに4点支持のため、側溝蓋がガタガタすることがない。更に、側溝蓋に荷重が負荷されると、全ての接触予定線部分で線接触となるので、同様にクサビ効果により、がたつき音を発生しない。また、本第1乃至第4発明の各側溝構造によれば、側溝躯体1の下部垂直面部4a,4bとの間に微小間隔G2を保っており、且つこの下部垂直面部4a,4bの角には角部があるので、車両の車輪がその側溝蓋上に乗り上げ、その一部に集中的に荷重が作用して、その蓋下部垂直面部の角部が対向する下部垂直面部に衝合することとなり、そのため、それ以上の跳ね上がりが防止される。」

(カ)明細書の段落【0026】を削除。

(2-2)上記訂正事項(ア)は、訂正前の請求項(以下、「旧請求項」という。)1〜4を削除し、旧請求項5,7を、請求項1,3に繰り上げると共に、側溝蓋の構造に関して「側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させること、及び該側溝蓋の底面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の上方側に向けて湾曲させたことの少なくとも一方を備える」という、3通りの要件が記載されていたものから、「及び該側溝蓋の底面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の上方側に向けて湾曲させたことの少なくとも一方を備える」を削除することにより、「側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させる」(以下、「本件特徴要件」という。)という1通りの要件に限定したものであり、これらの訂正は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当し、旧請求項6,8を、請求項2,4に繰り上げると共に、上記新たな請求項1,3と整合させるため「請求項5」及び「請求項7」という記載を「請求項1」及び「請求項3」に変更したものであり、これらの訂正は、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
また、上記訂正事項(イ)〜(カ)は、明細書の発明の詳細な説明の記載を、上記特許請求の範囲の訂正に対応させるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当するものである。そして、いずれの訂正も願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2-3)したがって、当該訂正は、特許法第134条第2項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同第126条第2,3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】本件訂正発明
本件訂正発明は、上記【2】(2-1)(ア)に記載したとおりのものである。

【4】請求人が主張する無効理由及び被請求人の反論の概要
(4-1)請求人は、審判請求書(以下、単に「請求書」という。)において、本件の旧請求項1〜8に係る特許発明は、以下の無効理由1〜5により無効とすべきものである旨主張し、証拠方法として甲第1〜14号証を提示し、更に、補充の証拠として、弁駁書において甲第15,16号証、上申書において甲第17,18号証を提示した。

無効理由1:旧請求項1,2,4〜6に係る特許発明は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。(参照証拠:甲第5〜12,15号証)

無効理由2:旧請求項1〜8に係る特許発明は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施又は公然知られた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。(参照証拠:甲第3〜5,8,11〜14,16〜18号証)

無効理由3:旧請求項1〜8に係る特許発明は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対しされたものであるから、特許法第123条第1項第1号により無効とすべきである。(参照証拠:甲第1,2号証)

無効理由4:旧請求項1〜8に係る特許発明は、明細書に、当業者が実施できる程度に明確かつ充分に記載されておらず、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第4,6項の規定に違反しているから、特許法第123条第1項第4号により無効とすべきである。

無効理由5:旧請求項1〜8に係る特許発明は、この特許の発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しない者の特許出願について特許されたものであるから、特許法第123条第1項第6号により無効とすべきである。(参照証拠:甲第11〜14号証)

<甲号各証(写真以外はいずれも原本等の「写し」)>
甲第1号証:本件特許公報
甲第2号証:本件特許の出願当初の明細書及び図面
甲第3号証:登録実用新案第3031035号公報
甲第4号証:登録実用新案第3026678号公報
甲第5号証:岐阜地方裁判所平成9年(ヨ)第108号(以下、「地裁事件」という。)の準備書面(二)(平成9年7月18日提出)
甲第6号証:地裁事件の書証乙第13号証
甲第7号証:地裁事件の上申書(一)(平成9年7月提出)
甲第8号証:地裁事件の準備書面(九)(平成10年3月2日提出)
甲第9号証:地裁事件の書証乙第53号証
甲第10号証:地裁事件の書証乙第52号証の1(5〜6頁)
甲第11号証:岐阜県美濃加茂市の側溝工事に関する資料
甲第12号証:平成12年9月1日撮影とされる上記工事の施工現場写真
甲第13号証:本件両当事者及び株式会社プロックス間で、平成8年1月12日に締結された「リボーン側溝技術提供契約書」
甲第14号証:「週間ブロック通信(第2000号)」に掲載された「全国リボーン側溝工業会」の広告
甲第15号証:埼玉県北本市の「公文書任意的公開回答書(同市の市道2435号線道路補修工事における「使用材料承認願」)」
甲第16号証:株式会社コンテックが請求人に宛てた「確認書」((株)コンテックによる「リボーン側溝蓋」用型枠図面、その型枠による側溝蓋の製造方法の説明、納入実績一覧)
甲第17号証:甲第16号証中の図面の説明書面
甲第18号証:甲第16号証が真正なものである旨記載された書面

(4-2)被請求人は、答弁書において、請求人の主張する上記無効理由にはいずれも理由がない旨主張し、証拠方法として、乙第1〜8号証を提示した。

<乙号各証(写真以外はいずれも原本等の「写し」)>
乙第1号証:本件請求人が地裁事件で提出した主張書面(1頁,13〜15頁、平成10年4月3日提出)
乙第2号証:本件請求人が地裁事件で提出した主張書面(その二)(1頁,10〜13頁、平成10年5月11日提出)
乙第3号証:株式会社丸治コンクリート工業所が作成したと思われる「リボーン側溝(R側溝)」書面
乙第4号証:請求人会社の平田純一が作成したと思われる「「音」に関する統一見解書」
乙第5号証:「広辞苑」(1303頁,1518頁、第2版第4刷、昭和45年11月18日、株式会社岩波書店)
乙第6号証:被請求人が平成9年10月7日に作成したと思われる「クサビ型側溝と消音側溝との関連性についての証明実験」書面
乙第7号証:平成9年審判第40021号審決
乙第8号証:請求人が被請求人に宛てた、上記甲第13号証に関連する「解約及び解除通知」(平成8年12月16日付)

【5】無効理由1,2についての判断
(5-1)請求人は、旧請求項1,2,4〜6に係る特許発明が、本件特許の出願前に公然実施されたものである旨主張(請求書8頁下から3行〜12頁19行)し、また、旧請求項1〜8に係る特許発明が、本件特許の出願前に公然実施あるいは公知の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張(同12頁下から9行〜16頁16行)するが、旧請求項1〜4については訂正により削除されたので、これらの請求項についての請求人の主張は理由がないものとなった。
そこで、旧請求項5,6を訂正した新たな請求項1,2に係る発明(以下、「本件訂正発明1,2」という。)、及び、旧請求項7,8を訂正した新たな請求項3,4に係る発明(以下、「本件訂正発明3,4」という。)について、検討する。

(5-2)本件訂正発明1〜4に関し、上記判決では、以下のとおり、判示されている。(なお、本審決書では丸付き数字を表記できないので、下線付き数字に置き換えた。)
「第4 当裁判所の判断
1 ……
2 取消事由4(本件訂正発明1,2の公然実施の有無)について
原告(当審注:本件無効審判請求人)は,本件訂正発明1,2は,本件特許出願前に公然実施された発明であり,特許法29条1項2号の規定により特許を受けることができないものである旨主張するので,以下検討する。
(1) 岐阜地方裁判所平成9年(ヨ)第108号不正競争行為差止等仮処分申請事件(以下「別件仮処分申請事件」という。)において,債務者である被告(当審注:本件無効審判被請求人)が提出した平成9年7月18日付け準備書面(甲5)には,被告が現在,製造・販売している商品は同準備書面別紙イ号物件目録記載の物件であること,同物件は本件特徴要件1(側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させること)及び本件特徴要件2(上記側溝蓋の底面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の上方側に向けて湾曲させること)を備えているが,それらは,被告のノウハウに係る所であり,そのため今まで公表しなかったものである旨,別紙イ号物件目録記載の物件は本件訂正発明1,2と同じ作用効果を有する旨の主張が記載され,また,別紙イ号物件目録には本件訂正発明1,2と同じ構成を有する物件が記載されている。
甲5で引用されている乙13(本訴甲6)のNo.4の写真8ないし16は上記の別紙イ号物件目録記載の物件の写真であり,甲7によれば,それは被告会社の社員が平成9年6月30日に撮影したものであると認められる。
(2) 別件仮処分申請事件において,債務者である被告が提出した平成10年3月2日付け準備書面(甲8)には,1「債務者(注:被告)及びその契約社製造にかかる商品は乙53(本訴甲9)の写真記載のとおりであり,いずれも債権者(注:原告)の主張するように約26.6ミリにわたる幅広い部分で接触するものではなく,側溝蓋は側溝本体の角部で約3〜5ミリ以下の範囲で線接触している。」,2「債務者(注:被告)商品に存在する側溝蓋全体のしぼり構造(内側方向並びに上方向への湾曲)も荷重がかからない初期においては,側溝蓋の各側面の4点が確実に支持され,この4点でクサビ効果が得られ,荷重がかかった後においては,全体の線接触部分でのクサビ効果が得られるという消音性,安全性によりすぐれた効果を有するものとして,意識的に採用したもので,債権者(注:原告)主張のように許容される誤差の範囲内のものとは到底いえない。」との主張が記載されている。上記2の記載は,被告において,被告の製造販売に係る商品が本件訂正発明1,2と同様に本件特徴要件1及び本件特徴要件2を備えるものであること,それが本件訂正発明1,2と同じ作用,効果を有することを自認したものにほかならない。
そして,甲8が引用する乙53(本訴甲9)には,埼玉県北本市の現場No.2における被告の製造販売に係る側溝を撮影した写真が掲載されており,これと甲15とを併せてみれば,上記写真の側溝は,埼玉県北本市において,工期を平成8年9月2日〜平成9年1月10日として施工された市道2435号線道路補修工事の側溝施工現場のものであると認められる。
上記乙53(本訴甲9)の現場写真についてみると,現場写真No.21〜3によれば,同現場写真にある側溝が,本件訂正後の請求項1の構成要件のうち,「対向する側溝壁内面に形成された上部傾斜面部,該上部傾斜面部に連続して下方に延設された湾曲面部及び該湾曲面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と,上記上部傾斜面部に対し微小間隙を介して対峙される蓋上部傾斜面部,該蓋上部傾斜面部に連続して下方に延設されて,上記湾曲面部に対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部及び該蓋湾曲面部に連続して下方に延設されて,上記下部垂直面部に微小間隙を介して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋」に相当する構成を備えていることを看取でき,同現場写真No.26には,側溝蓋の蓋湾曲面部に対し該側溝蓋の延長方向(両端面を結ぶ方向)に沿って側溝蓋の両端面において接触するように鋼尺をあてがった状態,及び側溝蓋の中央で蓋湾曲面部と該鋼尺との間に隙間ゲージが差し込まれている状態が撮影されており,このことことから,同写真にある側溝蓋においては,その側面が側溝蓋の両端面から中央にかけて側溝蓋の内側に向けて湾曲していることが理解される。したがって,上記現場写真No.2にある側溝は,甲8に記載のとおり,本件特徴要件1を備えた本件訂正発明1の構成を有するものであるということができる。
(3) 証拠(甲35ないし38)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告を相手方として,本件特許出願日(平成9年7月17日)の前である同年6月17日,被告の製造販売に係る側溝が原告の特許権を侵害するなどとして,岐阜地方裁判所に特許権侵害差止等請求事件(平成9年(ワ)第348号。別件訴訟の一部として併合審理された。)を提起し,その訴状において被告の製造販売に係る側溝を同訴状添付イ号物件目録に特定して記載したところ,被告は同年8月4日付けの答弁書において,被告が側溝を製造・販売してきたことは認めるが,被告の製造販売に係る商品が訴状添付イ号物件目録記載のものであることは否認するとした上,被告の製造販売に係る側溝の構成要件,作用,効果について主張をし,その後に提出した準備書面においても同趣旨の主張をしていること,その構成,作用,効果は,まさに本件訂正発明1,2の構成,作用,効果と同一であることが認められる。
(4) 証拠(甲21)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,別件訴訟において,本件特許権に関して,「被告は,平成6年後半,試行錯誤の末,くさび効果により騒音を発生させない側溝を考案し,試作,実験を繰り返した結果,平成7年秋に製品を完成させ,工業所有権出願の準備にかかった。くさび効果とは,側溝躯体と側溝蓋が線接触し,側溝躯体の角部で側溝蓋を支えることによって,蓋の垂直加重の力線が分散されることなく,側溝躯体の角部上の線接触部でしっかり固定されるとともに,側溝蓋が側溝躯体の角部において下方側に若干沈下して,しっかりと食い込むという効果であり,これにより,騒音防止を図るものである。ところで,くさび形の場合,蓋と本体の接触部において最も荷重がかかるため,強度上,鉄筋を接触部の接点より外側に配筋する必要があったが,当初作成した傾斜面型は,側溝蓋と本体の接触部の接点により内側に鉄筋が配置されるため,強度の点で弱点があり,蓋と本体の傾斜面部を外側にふくらませる必要があった。そこで,被告は,平成7年11月16日と17日に,傾斜面を連続した角の折り曲げでふくらませる図面を作成し,同月28日と30日に,被告が開発当初より型枠製作を依頼していた青影製作所にファクス送信したところ,同社はパイプを用いて鉄板を折り曲げることを提案し,同年12月16日付けで,蓋と本体の接触面部を曲面にした図面を持参した。被告は,以後,この型を原型として,蓋にしぼり(注:内側方向並びに上方向への湾曲)を入れる方法を3か月かけて考案し,ようやく,平成8年3月,現行の試作品を完成させ,実際に敷設したものである。」との主張をしたことが認められる。このことは,平成8年3月ころに本件訂正発明1,2の構成を有する試作品(側溝)が完成したことを意味するものと解される。
そして,証拠(甲29ないし34)によれば,被告代表者のAは,同訴訟における本人尋問(甲29)において,埼玉県南埼玉郡(以下省略)のあやめ会館前で,工期を平成8年1月12日〜同年3月31日として行われた側溝施工工事及び埼玉県幸手市(以下省略)において,工期を平成8年5月7日〜同年6月14日として行われた市道1108号線道路改良工事において,被告が製造販売した上記試作品(側溝)が敷設されたことを認めている。
(5) 特許法29条1項2号にいう「公然実施」とは,その発明の内容を不特定の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいうものであり,同法2条3項1号によれば,この場合の「実施」とは,物の発明にあっては,その物を生産し,使用し,譲渡し,貸し渡し,若しくは輸入し,又はその譲渡若しくは貸し渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をする行為をいうものとされているところ,前記(1)ないし(4)の認定の事実によれば,被告は,本件特許出願前に本件訂正発明1,2の構成を有する側溝を製造して,これを側溝工事用として工事業者に販売譲渡し,それが現に上記各工事現場で敷設されたことが明らかである。
本件のような物の発明の場合には,購入者が販売者からその発明の内容に関しその分析等の試験を行うことを禁じられているなど特段の事情がない限り,購入者は製品を自由に分解・分析してその発明の内容を知ることができるし,また,本件訂正発明1,2に係る側溝は屋外の公道で敷設されるものであるから,該側溝の工事業者等への販売,工事業者による該側溝の敷設により,本件訂正発明1,2は不特定の者が知り得る状況におかれたことになるというべきである。
したがって,本件訂正発明1,2は,特許法29条1項2号にいう「特許出願前に日本国内において公然実施された発明」に該当するというべきである……。
(6) ……
3 取消事由5(本件訂正発明1ないし4の進歩性に関する判断誤り)について
(1) 本件訂正発明1,2が特許法29条1項2号にいう「特許出願前に日本国内において公然実施された発明」に該当するというべきことは,前記2で説示したとおりである。
(2) そこで,進んで,本件訂正発明3,4が進歩性を有するか否かについて検討する。
ア 本件訂正発明1と本件訂正発明3とは,本件訂正発明1では,側溝躯体において,対向する側溝壁内面の上部に形成されるのが「上部傾斜面部」で,これに連続して下方に延設されるのが「湾曲面部」であり,また,側溝蓋において,上記「上部傾斜面部」に対し微小間隙を介して対峙されるのが「蓋上部傾斜面部」で,これに連続して下方に延設されて,上記「湾曲面部」に対し線接触しながら対峙されるのが「蓋湾曲面部」であるのに対し,本件訂正発明3では,側溝躯体において,対向する側溝壁内面の上部に形成されるのが「上部垂直面部」で,これに連続して下方に延設されるのが「傾斜面部」であり,また,側溝蓋において,上記「上部垂直面部」に対し微小間隙を介して対峙されるのが「蓋上部垂直面部」で,これに連続して下方に延設され,上記「傾斜面部」に対し線接触しながら対峙されるのが「蓋傾斜面部」である点において相違するだけであり,他の構成要件は一致している。
しかして,本件訂正発明3の上記相違点に係る構成は,刊行物2(甲4)に記載されているとおり,公知の技術事項であり,本件訂正発明1の「上部傾斜部」ないし「蓋上部傾斜部」や「湾曲面部」ないし「蓋湾曲面部」に代えて,「上部垂直面部」ないし「蓋上部垂直面部」や「傾斜面部」ないし「蓋傾斜面部」の構成を採用することは,当業者が必要に応じて適宜選択することができる程度のことであり,当業者において本件訂正発明3の上記相違点に係る構成を想到することは容易であると認められる。
また,本件訂正明細書(甲20)には,本件訂正発明の効果として,「本第1乃至第4発明(注:本件訂正発明1ないし4)の各側溝構造によれば,まず,側溝蓋の4隅の線接触部分が確実に接触するので,クサビ効果を有するとともに4点支持のため,側溝蓋がガタガタすることがない。更に,側溝蓋に荷重が負荷されると,全ての接触予定線部分で線接触となるので,同様にクサビ効果により,がたつき音を発生しない。・・・」(段落【0025】)と記載されており,本件訂正発明1と本件訂正発明3とで作用,効果には差異がないとされている。
したがって,本件訂正発明3に進歩性を認めることはできない。
イ 本件訂正発明4は,本件訂正発明3を引用し,これを「湾曲は連続的であり且つ線対称を示す」との構成により限定するものであるが,上記ア認定の本件訂正明細書の段落【0025】の記載のとおり,この限定事項の付加によっても発明が奏する作用,効果に変化はなく,その内容に照らしても,それは当業者が適宜選択できる単なる設計事項にすぎないと解される。したがって,本件訂正発明4にも進歩性を認めることはできない。
ウ したがって,本件訂正発明3,4に進歩性は認められない。」

(5-3)上記のとおり、判決には、請求人提出の甲第15号証に係る工事(埼玉県北本市で工期を平成8年9月2日〜平成9年1月10日として施工された市道2435号線道路補修工事)において、本件訂正発明1,2が本件出願前に公然実施されたことが、判示されている。
そして、上記判示事項は、いわゆる「拘束力」を有するから、本件訂正発明1,2は、本件出願前日本国内において公然実施された発明であり、また、本件訂正発明3,4は、該公然実施された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明である、といわざるを得ない。

【6】むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1,2に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に該当し、請求項3,4に係る発明についての特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、いずれも同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
側溝構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 対向する側溝壁内面に形成された上部傾斜面部、該上部傾斜面部に連続して下方に延設された湾曲面部及び該湾曲面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部傾斜面部に対し微小間隙を介して対峙される蓋上部傾斜面部、該蓋上部傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記湾曲面部に対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部及び該蓋湾曲面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隙を介して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋と、を備え、上記側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする側溝構造。
【請求項2】 上記側溝蓋の上記湾曲は連続的であり且つ線対称を示す請求項1記載の側溝構造。
【請求項3】 対向する側溝壁内面に形成された上部垂直面部、該上部垂直面部に連続して下方に延設された傾斜面部及び該傾斜面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部垂直面部に対し微小間隙を介して対峙される蓋上部垂直面部、該蓋上部垂直面部に連続して下方に延設されて、上記傾斜面部に対し線接触しながら対峙される蓋傾斜面部及び該蓋傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隙を介して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋と、を備え、上記側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする側溝構造。
【請求項4】 上記側溝蓋の上記湾曲は連続的であり且つ線対称を示す請求項3記載の側溝構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般道路の側部に埋設設置されて排水路として使用される側溝構造に関し、特に、車両等の走行重量に十分耐える強度を持ちながら、側溝蓋と側溝との嵌合状態をがたつきなく安定化させる側溝構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の側溝構造としては、例えば、特開平6-248688号公報に示すように、側溝蓋の接面部を曲面に成形加工し、幾何学的に相似な曲面に成形加工された接面部を持つ側溝の側溝蓋となして、側溝蓋と側溝の密着性を高めたものが知られている。また、実用新案登録第3026678号及び実用新案登録第3031035号に示すように、側溝蓋と側溝躯体とを線接触させることにより、騒音を防止しようとするものも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記側溝蓋の曲面の接面部と側溝の相似な曲面の接面部とで側溝と側溝蓋を密着させるものでは、精度の高い鋼製型枠を用いる必要があり、このため型枠コストが高くなるほか、成型寸法の管理を十分に行う必要が生じ、経済性、作業性の点で難点がある。また、車両の車輪がこの側溝蓋上に乗り上げ、その一部に集中的に荷重が作用する場合、側溝蓋が滑って跳ね上がろうとする場合がある。また、上記側溝蓋と側溝躯体とを線接触させようとするものでは、側溝蓋を側溝躯体内に嵌挿させた場合、全位置で線接触せずに、中央側で優先的に部分接触(線接触)したり、2点又は3点で部分接触(線接触)したりすると、ガタガタする場合がある。
【0004】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、車両の走行に対して十分な強度を確保しながら、側溝蓋のがたつきの発生防止、騒音防止及び側溝蓋の跳ね上り防止ができる側溝構造を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本第1発明の側溝構造は、対向する側溝壁内面に形成された上部傾斜面部、該上部傾斜面部に連続して下方に延設された湾曲面部及び該湾曲面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部傾斜面部に対し微小間隙を介して対峙される蓋上部傾斜面部、該蓋上部傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記湾曲面部に対し線接触しながら対峙される蓋湾曲面部及び該蓋湾曲面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隙を介して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋とを備え、該側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両側面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする。
【0006】
本第3発明の側溝構造は、対向する側溝壁内面に形成された上部垂直面部、該上部垂直面部に連続して下方に延設された傾斜面部及び該傾斜面部に連続して下方に延設された下部垂直面部を有する側溝躯体と、上記上部垂直面部に対し微小間隙を介して対峙される蓋上部垂直面部、該蓋上部垂直面部に連続して下方に延設されて、上記傾斜面部に対し線接触しながら対峙される蓋傾斜面部及び該蓋傾斜面部に連続して下方に延設されて、上記下部垂直面部に微小間隙を介して対峙される蓋下部垂直面部を有する側溝蓋とを備え、該側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする。上記各発明において、上記「略湾曲」とは、弓形に張られた形状のみならず、この変形形状、例えば、図11に示す階段状弓張り形状及び図12に示す傾斜状逆V字形状等をも含む意味に用いる。上記各発明において、上記湾曲は連続的であり且つ線対称を示すものとすることができる。尚、この湾曲を階段的という不連続的なものとすることもできるし、非対象とすることもできる。
【0007】
上記側溝蓋は、蓋下部垂直面部を有する側溝蓋において、該側溝蓋の両側面を該側溝蓋の両端面(側溝躯体と接触しない側の端面、即ち前後方向の端面をいう。)から中央にかけて該側溝蓋の内側に向けて湾曲させることを特徴とする。上記湾曲の程度は、所定の荷重(例えば自動車等)の負荷により接触することとなるものであればよく、例えば、0.5〜5mm程度、好ましくは1〜4mm程度、更に好ましくは1〜3mm程度である。
【0008】
上記側溝蓋は、上記蓋下部垂直面部に連続して上方に延設される蓋湾曲面部、及び該蓋湾曲面部に連続して上方に延設される蓋上部傾斜面部を備えるものとすることができる。また、上記側溝蓋は、上記蓋下部垂直面部に連続して上方に延設される蓋傾斜面部、及び該蓋傾斜面部に連続して上方に延設される蓋上部垂直面部を備えるものとすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により図面に基づいて具体的に説明する。
実施例1
本実施例は、両端面から中央にかけて湾曲させた構造及び湾曲面を有する側溝蓋を用いた線接触型側溝構造に関するものである。図1は本側溝構造を示す縦断面図、図2は側溝蓋の正面図、図3は要部の部分拡大断面図、図4は側溝蓋の模式的底面図、図5は側溝蓋の模式的側面図、図6は両方向の湾曲状態を説明する説明図である。本実施例に係わる側溝構造は、側溝躯体1と側溝蓋8とからなる。
【0010】
上記側溝躯体1は、対向する各側溝壁2A,2B内面に形成された上部傾斜面部2a、2bと、これらの上部傾斜面部2a、2bに連続して下方に延設された湾面面部3a,3bと、これらの湾局面部3a,3bに連続して下方に延設された下部垂直面部4a,4bと、これらの各下部垂直面部4a,4bに連続する水平面部5a,5bと、これらの各水平面部5a,5bに連続する溝壁部6a,6bと、これらの溝壁部6a,6bに共通に連続する底面部7とで形成される。
【0011】
上記側溝蓋8は、図2、図4〜図6に示すように、蓋上部傾斜面部9a、9b、この蓋上部傾斜面部9a、9bに連続して下方に延設される蓋湾曲面部10a、10b、及びこの蓋湾曲面部10a、10bに連続して下方に延設される蓋下部垂直面部11a、11b、更には底面及び表面からなる。この側溝蓋8の各側面は、9a、10a、11aで示される左側面及び9b、10b、11bで示される右側面からなる。図3に示すように、蓋上部垂直面部9a、9bは、側溝躯体1の上部傾斜面部2a、2bに対し微小間隔G1を有して対峙するように配置される。蓋湾曲面部10a,10bは、側溝躯体1の湾曲面部3a,3bに対し線接触しながら対峙される。蓋下部垂直面部11a、11bは、側溝躯体1の下部垂直面部4a,4bに対して微小間隔G2を有して対峙される。
【0012】
そして、側溝蓋8において、図4及び図6に示すように、蓋下部垂直面部11a、11bを、側溝蓋8の両端面(側溝躯体と接触しない側の端面)13a、13bから中央にかけて側溝蓋8の内側に向けて(図4の9a、9bの中心線に向けて)、距離R(1〜3mm程度)だけ湾曲させている。尚、図6に示すように、この蓋下部垂直面部11a、11bの内側への湾曲に連れて、蓋湾曲面部10a、10b及び蓋上部傾斜面部9a、9bも、同方向に湾曲されている。この湾曲度は上方へ行くに従って小さくなっている。更に、図5及び図6に示すように、蓋下部垂直面部11a、11bを、側溝蓋8の両端面13a、13bから中央にかけて側溝蓋8の上方側に向けて(蓋8の上面側に向けて)、距離S(1〜3mm程度)だけ湾曲させている。この場合も、図6に示すように、この蓋下部垂直面部11a、11bの上方への湾曲に連れて、蓋湾曲面部10a、10b及び蓋上部傾斜面部9a、9bも、同方向に湾曲されている。この湾曲度は上方へ行くに従って小さくなっている。また、図3に示すように、側溝蓋8と側溝躯体1との接触部分はP点であり、このP点は蓋下部垂直面部11a、11bに近接した場所にあるので、このP点での内側及び上方への各湾曲距離は、蓋下部垂直面部の各湾曲距離(RとS)とほとんど同じである。尚、この湾曲の仕方は連続的で且つ線対象である。尚、側溝蓋8には、所定位置(底面から20mm、湾曲面部10a、10bの湾曲面から8mm、端面9aから約20mm)に鉄筋が配置されている(図示せず)。そして、線接触点P上にはこの鉄筋が配設されており、強度に優れた構造となっている。
【0013】
そして、側溝躯体1の湾曲面部3a、3bと側溝蓋8の蓋湾曲面部10a,10bとは、その下端Pで線接触している。この時、側溝躯体1の下部垂直面部4a、4bの方が側溝蓋8の蓋下部垂直面部11a,11bより長く形成され、側溝躯体1の水平面部5a、5bと側溝蓋8の下面との間には間隔G2が形成される。尚、上記側溝躯体1の水平面部5a、5bは、図示の実施の形態では傾斜面に形成されているが、これは水平面であっても良い。
【0014】
かかる構成になる側溝構造にあっては、側溝蓋8を側溝躯体1に嵌挿すると、その側溝蓋8の蓋湾曲面部10a、10bが、これの湾曲(曲率)度より小さい湾曲度で湾曲する側溝躯体1の湾曲面部3a、3bに下端Pにて線接触するようにして支持される。ここで、この線接触がなされる側溝躯体1の上記下端P位置までの側溝蓋8の有効厚さは十分な強度が得られる厚さであり、この側溝蓋8上に車両が走行するようなことがあっても、十分に耐えられるものとなる。また、側溝躯体1及び側溝蓋8の、上部傾斜面部2a、2bと蓋上部傾斜面部9a,9bとの傾斜角、湾曲面部3aと蓋湾曲面部10a、10bとの上記のような線接触及び湾曲度によって、これらの湾曲面部3a、3b及び10a、10bが相互に一方が他方に対し食い込むようなクサビ効果を呈するため、側溝蓋8は側溝躯体1内において全くがたつきを生じることがなく、騒音公害の発生を確実に回避することができる。
【0015】
そして、上記側溝蓋8の蓋下部垂直面部11a、11bは、上記線接触する下端Pより下方に位置し、且つ側溝躯体1の下部垂直面部4a,4bとの間に微小間隔G2を保っているため、車両の車輪がその側溝蓋8上に乗り上げ、その一部に集中的に荷重が作用して、その側溝蓋8が跳ね上がろうとする場合があっても、その蓋下部垂直面部11a、11bの角部が対向する下部垂直面部4a、4bに衝合することとなるため、それ以上の跳ね上がりが規制される。
【0016】
また、側溝蓋8の蓋上部垂直面部9a、9bと側溝躯体1の上部傾斜面部2a,2bとの間には間隔G1があるため、これらの間に砂や土が入ることがあっても、その間隔G1を利用することで、側溝蓋8の開閉操作が容易になる。尚、上記側溝躯体1の線接触する下端Pを含む所定幅の領域及び/又はその領域に対応する側溝蓋8の蓋湾曲面部10a、10bに、予めプラスチックや鋼材などからなる補強部材(図示せず)を設けておくことで、閉蓋時における上記線接触部位での摩耗や欠落を確実に防止できる。
【0017】
また、側溝蓋を側溝躯体内に嵌挿させた状態で、図3、図5及び図6に示すように、側溝蓋8の蓋湾曲面部11a、11bの下方部(P点)は、まず、その接触予定線部分のうちの四隅部分が側溝躯体の湾曲面部3a、3bに線接触又は点様接触をして、中間部分はそれよりも湾曲面部3a、3bから逃げて離れている。1〜3点部分での支持ではなく、隅部分でしかも四点(線接触部)での支持のため、側溝蓋がガタガタすることがない。この場合の接触部は線接触を示すので、クサビ効果に優れる。更に、側溝蓋の上を車両が走行等して、側溝蓋に荷重が負荷されると、この荷重により四隅のみならず全ての接触予定線で接触するようになる。この場合も線接触となるので、同様にクサビ効果に優れる。以上より、いずれの場合もクサビ効果により、がたつき音を発生しない。
【0018】
実施例2
本実施例は、傾斜面を有する側溝蓋及び側溝躯体からなる線接触型側溝構造に関するものである。図7は本側溝構造を示す縦断面図、図8は側溝蓋の正面図、図9は要部の部分拡大断面図、図10は側溝蓋の模式的底面図である。本実施例は、上記実施例1に示す側溝蓋8の蓋湾曲面部10a、10bを蓋傾斜面部10a’、10b’に、同様に、側溝躯体1の湾曲面部3a、3bを傾斜面部3a’、3b’に、上部傾斜面部2a、2bを上部垂直面部2a’、2b’に、蓋上部傾斜面部9a、9bを蓋上部垂直面部9a’、9b’に置き換えるものである。即ち、側溝躯体1は、図7及び9に示すように、対向する各側溝壁2A,2B内面に形成された上部垂直面部2a’、2b’と、これらの上部垂直面部2a’、2b’に連続して下方に延設された傾斜面部3a,3bと、これらの傾斜面部3a,3bに連続して下方に延設された下部垂直面部4a,4bと、これらの各下部垂直面部4a,4bに連続する水平面部5a,5bと、これらの各水平面部5a,5bに連続する溝壁部6a,6bと、これらの溝壁部6a,6bに共通に連続する底面部7とで形成される。
【0019】
また、側溝蓋8は、図7〜図9に示すように、これが上記上部垂直面部2a’、2b’に対し微小間隔G1を有して対峙するように配置される蓋上部垂直面部9a’、9b’と、これらの蓋上部垂直面部9a’、9b’に連続して下方に延設されて、上記傾斜面部3a,3bに対し線接触しながら対峙される蓋傾斜面部10a’,10b’と、これらの蓋傾斜面部10a’、10b’に連続して下方に延設されて上記下部垂直面部4a,4bに対して微小間隔G2を有して対峙される蓋下部垂直面部11a、11bと、底面及び表面とから構成される。そして、側溝蓋8において、図10に示すように、蓋下部垂直面部11a、11bを、側溝蓋8の両端面13a、13bから中央にかけて側溝蓋8の内側に向けて、距離R(1〜3mm程度)だけ湾曲させている。この場合も実施例1と同様に、接触点における湾曲距離は、蓋下部垂直面部11a、11bの湾曲距離とほとんど同じとされる。この湾曲の仕方は連続的で且つ線対称である。
【0020】
ここで、側溝蓋8の厚みを例えば100mmとした場合には、上記上部垂直面部2a’、2b’及び蓋上部垂直面9aの幅(高さ)は共に等しい、例えば30mmとされ、また、傾斜面部3a’、3b’に対して蓋傾斜面部10a’、10b’が長く形成されている。また、この傾斜面部3a’、3b’の傾斜角度は40〜80°の間の例えば64°とされ、蓋傾斜面部10a’、10b’の傾斜角度は例えば65°とされる。従って、各傾斜面部3a’、3b’と各下部垂直面部4a、4bとが接触部分Pで、線接触している。更に、線接触部Pから水平面部5a、5bまでの高さは例えば11mmとされ、その線接触部Pから側溝蓋8の下面までの高さは9mmとされる。従って、この下面と上記水平面部5a、5bとの間には2mmの間隙G3が残されることになる。ここで、水平面部5a、5bの水平方向の幅は例えば23mmとされる。そして、上記下部垂直面部11a、11bは、蓋傾斜面部10a’、10b’の下端から3mm分、下方に突出するように延設されている。
【0021】
かかる構成になる側溝構造にあっては、側溝蓋8を側溝躯体1に嵌挿すると、その側溝蓋8の蓋傾斜面部10a’、10b’が、これの傾斜角度より小さい角度で傾斜する傾斜面部3a’、3b’に上記接触部Pにて線接触するようにして支持される。ここで、この線接触がなされる側溝躯体1の上記下端P位置までの側溝蓋8の有効厚さは十分な強度が得られる厚さであり、この側溝蓋8上に車両が走行するようなことがあっても、十分に耐えられるものとなる。
【0022】
また、本実施例においても、蓋傾斜面部10a’、10b’と傾斜面部3a’、3b’との上記のような線接触及び傾斜角によって、これらの傾斜面部3a’、3b’が相互に一方が他方に対し食い込むようなクサビ効果を呈する。従って、本実施例においても、実施例1と同様に、側溝蓋8は側溝躯体1内において全くがたつきを生じることがなく、騒音公害の発生を確実に回避することができる。更に、四隅部分の線接触部支持のため、荷重の負荷前であっても側溝蓋がガタガタすることがないし、その荷重の負荷によっては全ての接触予定線で接触するようになるので、クサビ効果によりがたつき音を発生しない。
【0023】
尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例において、側溝蓋の蓋下部垂直面部及び接触予定部Pの湾曲形状は連続的で且つ線対称であるが、これに限らず、非連続的、例えば図11に示すような階段状(4段)とすることができる。この階段形状はこの図に示す数、その各段の長さ及びその高さに限らず、目的等により種々変更できる。例えば、両端部の四隅のみ突出しており、他は凹部になったもの(即ち2段階段状といえる。)、この2段の場合でも両端部側の段長さを比較的長くしたり、又は4段以上の段数等とすることができる。また、図12に示すように、中央にかけて傾斜状に窪む形状(傾斜状逆V字形状)とすることもできる。更に、この湾曲の深さ(R、S)も、1〜3mm以外のもの、例えば.0.5mm程度又は4〜6mm程度とすることもできる。尚、これが大きいと荷重が負荷されても接触しなくなる場合があり、また、あまり小さいと精度良く製作することが困難となるし、精度が悪い場合には四隅で接触せずに、中間部で接触することもありうるので、好ましくない。好ましくは、この湾曲深さ(R、S)は、1〜4mm程度、更に好ましくは1〜3mm程度である。また、湾曲の態様(種類)は、上記実施例1及び上記実施例2に示す場合以外とすることもできる。
【0024】
尚、上記側溝躯体1の線接触する下端Pを含む所定幅の領域及び/又はその領域に対応する側溝蓋8の蓋湾曲面部10a、10bに、予めプラスチックや鋼材などからなる補強部材(図示せず)を設けておくことで、閉蓋時における上記線接触部位での摩耗や欠落を確実に防止できる。
【0025】
【発明の効果】
本第1乃至第4発明の各側溝構造によれば、まず、その側溝蓋の四隅の線接触部分が確実に接触するので、クサビ効果を有するとともに4点支持のため、側溝蓋がガタガタすることがない。更に、側溝蓋に荷重が負荷されると、全ての接触予定線部分で線接触となるので、同様にクサビ効果により、がたつき音を発生しない。また、本第1乃至第4発明の各側溝構造によれば、側溝躯体1の下部垂直面部4a,4bとの間に微小間隔G2を保っており、且つこの下部垂直面部4a,4bの角には角部があるので、車両の車輪がその側溝蓋上に乗り上げ、その一部に集中的に荷重が作用して、その蓋下部垂直面部の角部が対向する下部垂直面部に衝合することとなり、そのため、それ以上の跳ね上がりが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例1に係る側溝構造を示す縦断面図である。
【図2】
実施例1に係る側溝蓋の正面図である。
【図3】
図1に示す側溝構造の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】
図2に示す側溝蓋の模式的底面図である。
【図5】
図2に示す側溝蓋の模式的側面図である。
【図6】
図2に示す側溝蓋の両方向への湾曲状態を説明する説明図である。
【図7】
実施例2に係る側溝構造を示す縦断面図である。
【図8】
実施例2に係る側溝蓋の正面図である。
【図9】
図7に示す側溝構造の要部を拡大して示す断面図である。
【図10】
図8に示す側溝蓋の模式的底面図である。
【図11】
他の湾曲態様(階段状湾曲)を示す側溝蓋の模式的側面図である。
【図12】
更に他の湾曲態様(傾斜状逆V字形状湾曲)を示す側溝蓋の模式的底面図である。
【符号の説明】
1;側溝躯体、2A,2B;側溝壁、2a,2b;上部傾斜面部、3a,3b;湾曲面部、4a,4b;下部垂直面部、8;側溝蓋、9a,9b;蓋上部傾斜面部、10a,10b;蓋湾曲面部、11a,11b;蓋下部垂直面部、13a,13b;端部、2a’,2b’;上部垂直面部、3a’,3b’;湾曲面部、9a’,9b’;蓋上部垂直面部、10a’,10b’;蓋傾斜面部、G1,G2,G3;微小間隙。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-04-22 
結審通知日 2003-04-25 
審決日 2003-05-08 
出願番号 特願平9-209632
審決分類 P 1 112・ 112- ZA (E03F)
P 1 112・ 121- ZA (E03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 伸二  
特許庁審判長 山 田 忠 夫
特許庁審判官 田 中 弘 満
南 澤 弘 明
登録日 1998-12-11 
登録番号 特許第2863151号(P2863151)
発明の名称 側溝構造  
代理人 前田 勘次  
代理人 谷口 直也  
代理人 小島 清路  
代理人 谷口 直也  
代理人 小島 清路  
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