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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 H04B |
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管理番号 | 1118563 |
審判番号 | 無効2004-80078 |
総通号数 | 68 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1987-06-17 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-06-16 |
確定日 | 2005-04-25 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1601672号発明「信号伝送装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第1601672号の発明についての出願は、昭和60年12月5日に出願され、平成3年2月18日にその発明について特許の設定登録がされたものである。 これに対して、請求人は、特許無効審判を請求し、本件発明は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると主張し、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 被請求人は、平成16年10月8日に訂正請求書を提出して訂正を求め、 これに対して、請求人は、平成16年10月28日に弁駁書を提出し、証拠方法として甲第3号証を提出して、訂正請求後の請求項1,2に係る発明は、依然として特許法第29条第2項の規定に違反していると主張すると共に特許法第36条の規定に違反するという新たな無効理由の主張を行った。 この請求の理由を追加する補正については、補正を許可する旨の補正許否の決定がなされ、被請求人は、平成16年12月28日に再度、訂正請求書を提出して訂正を求め、この訂正請求については、期間を指定して弁駁書の提出を求めたが、請求人からは何らの応答もない。 2.平成16年12月28日付けの訂正請求 上記訂正の内容は、本件特許発明の明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、訂正の内容は以下のとおりである。 訂正事項1:請求項1に、「能動用と受動用」とあるのを「運動体側と固定体側にそれぞれ装着される能動用と受動用」と訂正する。 訂正事項2:請求項1中に「回路を備えた」とあるのを「に際して、電力伝送の電磁波の周波数を、伝送したいクロック周波数と同一、又は、その整数倍にしておき、両モジュールのクロック周波数を共通にすると共に、前記モジュールの各伝送部が互いに対応した状態を検知する検出回路を備えることによって、その検知信号に基づき前記蓄電機器に対する充電の時間や前記データ信号の送信動作に関わる回路の駆動時間などのタイミングを司るようにした」と訂正する。 訂正事項3:請求項2と3を削除する。 訂正事項4:本件特許公報(特公平2-25297号公報)第3欄第38行に「能動用と受動用」とあるのを「運動体側と固定体側にそれぞれ装着される能動用と受動用」と訂正する。 訂正事項5:本件特許公報第4欄第7行に「回路を備えたことを特徴とするものである。」とあるのを「に際して、電力伝送の電磁波の周波数を、伝送したいクロック周波数と同一、又は、その整数倍にしておき、両モジュールのクロック周波数を共通にすると共に、前記モジュールの各伝送部が互いに対応した状態を検知する検出回路を備えることによって、その検知信号に基づき前記蓄電機器に対する充電の時間や前記データ信号の送信動作に関わる回路の駆動時間などのタイミングを司るようにしたことを特徴とするものである。」と訂正する。 訂正事項6:本件特許公報第4欄第30行〜第32行に「含むものであり、さらに紫外から赤外に至る光も伝送媒体として適用できるものである。」とあるのを「含むものである。」と訂正する。 訂正事項7:本件特許公報第7欄第39行〜第40行に「受動用モジュールB」とあるのを「受動用モジュールA」と訂正する。 訂正事項8:本件特許公報第10欄第1行に「FM復調回路7」とあるのを「FM復調回路18」と訂正する。 をする。 3.請求人の主張の概要 請求人は、本件請求項1に係る特許発明と甲第1号証に記載された発明とを比較すると、両者は、一方の回路から他方の回路へエネルギとデータを送受信する点で共通し、本件特許発明は、固定体と運動体間での信号とエネルギの授受に係り、甲第1号証は、固定体と脱着可能体間での信号とエネルギの授受に係るものである点で相違するが、 甲第2号証には、定置質問装置(1)と物体又は生物に固定された応答装置(2)間でエネルギとデータを送受信する点が記載されており、甲第2号証も応答信号の発生に関する技術であり、本件特許発明及び甲第1号証に記載された発明と技術分野を同一にするものであるから、甲第2号証に記載された上記の点の構成を甲第1号証に記載されたものに適用することは、当業者が容易に推考し得るものであるとして、 本件請求項1に係る特許発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2号の規定により特許を受けることができないものであると主張している。 4.訂正の可否に対する判断 訂正請求書での前記訂正事項について、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について判断すると、 上記の訂正事項1及び2は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、 また、上記の訂正事項3は、請求項2と3を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、 また、上記の訂正事項4〜6は、請求項1の訂正に対応して明細書の記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、 また、上記の訂正事項7、8は誤記の訂正を目的とするものである。 そこで、訂正請求後の請求項1に記載された発明(以下、「本件訂正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。 5.本件訂正発明 本件訂正発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】電気回路で構成した運動体側と固定体側にそれぞれ装着される能動用と受動用との複数のモジユ-ルのそれぞれに送信ヘッドと受信ヘッドとを有する伝送部を備え、他のモジユ-ルの伝送部と互いに対向した状態で、デジタルやアナログ的な各種のデ-タ信号を、電磁波を用いて互いに非接触で伝送することができ、その中の何れか一方のモジユ-ルの動作に必要な電力を他方のモジ-ルから電磁波により非接触で伝送するように構成された信号伝送装置において、前記電力を受電する側のモジユールにコンデンサや電池の如き蓄電機器を装備して受電電力により充電し、その充電状態を判定した上で、これを電源として所要のタイミングで間欠的に他方のモジユールにデ-タ信号の送信動作を行なうに際して、電力伝送の電磁波の周波数を、伝送したいクロック周波数と同一、又は、その整数倍にしておき、両モジュールのクロック周波数を共通にすると共に、前記モジュールの各伝送部が互いに対応した状態を検知する検出回路を備えることによって、その検知信号に基づき前記蓄電機器に対する充電の時間や前記データ信号の送信動作に関わる回路の駆動時間などのタイミングを司るようにしたことを特徴とする信号伝送装置。」 6.甲第1号証ないし甲第3号証 (1)甲第1号証[特開昭57-32144号公報]には、以下の事項が記載されている。 A.電気回路で構成した親局(データ解析装置40)と子局(データ収集装置10)のそれぞれに送信ヘッド(誘導コイル22、48)と受信ヘッド((誘導コイル24、48)とを有する伝送部を備える点。 B.親局(40)と子局(10)の伝送部を互いに対応させる点。 C.デジタルやアナログ的な各種のデータ信号を、電磁波により非接触で伝送する点。 D.子局(10)の動作に必要な電力を親局(40)から電磁波により非接触で伝送する点。 E.前記電力を受電する側の子局(10)にコンデンサ32を準備して受電電力により充電する点。 F.その充電状態を電圧チェック回路33で判定する点。 G.これを電源として所要のタイミングで間欠的に親局(40)にデータ信号の送信動作を行う回路(制御部13)を備えた点。 H.エネルギと共にデータを送受信している点。 (2)甲第2号証[特開昭56-140486号公報]には、以下の事項が記載されている。 I.定置質問装置(1)と物体又は生物に固定された応答装置(2)との間でエネルギとデータを送受信する点。 (3)請求人が弁駁書で提出した甲第3号証[特開昭58-131838号公報]には、以下の事項が記載されている。 J.電力伝送波の周波数を所定のクロック周波数と同一にし、更に電力伝送波の送信側と受信側でクロック周波数を共通にする点。 7.対比・検討 本件訂正発明と、甲第1号証〜甲第第3号証記載の発明とを対比すると、 甲各号証には、「前記モジュールの各伝送部が互いに対向した状態を検知する検出回路を備える」ことは記載されておらず、「その検知信号に基づき前記蓄電機器に対する充電の時間や前記データ信号の送信動作に係わる回路の駆動時間などのタイミングを司る」ことも記載されていない。 そして、本件訂正発明は、上記の「前記モジュールの各伝送部が互いに対応した状態を検知する検出回路を備えることによって、その検知信号に基づき前記蓄電機器に対する充電の時間や前記データ信号の送信動作に関わる回路の駆動時間などのタイミングを司るようにした」という構成により、拙悪な設置条件下においても無線伝送を安定に動作させ、また、良好な条件下においては無線の伝送距離を飛躍的に増大させ、且つ、回路構成を単純化できると共に動作の安定化をもたらすなどの効果を奏するものと認められるから、 甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に推考することができたとは言えず、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明でもない。 8.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る発明の特許を無効とすることができない。審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 信号伝送装置 (57)【特許請求の範囲】 (1) 電気回路で構成した運動体側と固定体側にそれぞれ装着される能動用と受動用との複数のモジュールのそれぞれに送信ヘッドと受信ヘッドとを有する伝送部を備え、他のモジュールの伝送部と互いに対向した状態で、デジタルやアナログ的な各種のデータ信号を、電磁波を用いて互いに非接触で伝送することができ、その中の何れか一方のモジュールの動作に必要な電力を他方のモジュールから電磁波により非接触で伝送するように構成された信号伝送装置において、前記電力を受電する側のモジュールにコンデンサや電池の如き蓄電機器を装備して受電電力により充電し、その充電状態を判定した上で、これを電源として所要のタイミングで間欠的に他方のモジュールにデータ信号の送信動作を行なうに際して、電力伝送の電磁波の周波数を、伝送したいクロック周波数と同一、又は、その整数倍にしておき、両モジュールのクロック周波数を共通にすると共に、前記モジュールの各伝送部が互いに対向した状態を検知する検出回路を備えることによって、その検知信号に基づき前記畜電機器に対する充電の時間や前記データ信号の送信動作に係わる回路の駆動時間などのタイミングを司るようにしたことを特徴とする信号伝送装置。 【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、デジタル信号やアナログ信号の形で得られる各種のデータ信号を、電磁波を用いて非接触で伝送する装置に関するもので、運動部分を有する各種の装置、例えば車両等の交通関係機器や、工作機械、ロボット装置、搬送装置その他諸種の自動機械などにおいて、装置本体の固定体側に受動用モジュールを、運動体側に能動用モジュールを装着しておく。そして運動体側から送信した各種のデジタル信号やデジタル化されたデータ信号あるいはアナログ信号、例えば形状、位置、歪、圧力、温度、色彩などに関するデータ信号を、固定体側に非接触で受信させるような場合に用いて好適なものである。 [従来の技術] 従来、この種の信号伝送装置としては、電磁波や光を伝送媒体としてFMテレメータやワイヤレスモデムなどが知られているが、何れも運動体側の送信部に寿命時間に限定のある電池などの電源を搭載する必要がある。従ってこれを例えば工作機械の機構内に組み込む場合は、その電池などを交換し易いように配慮して取り付けることが必要である。また一般に電池の消耗が激しく不経済であり、そのうえ本体に比べて電池の重量が大きい為に、回転体などに取り付けた場合には、ダイナミックバランスをとるのに多くの労力が必要であった。しかもその何れの場合にも回路構成が複雑で高価であるという欠点を有している。 また運動体側の送信部に対し電磁波を用いて非接触で電力を伝送するように構成された装置においても、送信部と受信部との双方の伝送距離が大きかったり、伝送に係わるアンテナやコイルなどの近傍に構造材の金属などが存在するために、渦流損や表皮作用などによる伝送損失が大きくなる場合など、設置条件によって伝送効率が著しく阻害される場合がある。その上、電力の送信出力が小さいものしか得られないような条件下においては、信号伝送を安定に行なうことが困難であった。 殊に損失の程度によってはそれを単に電力の送信出力の増大によって補うことも考えられるが、これは電波法にもとづく高周波出力についての制限により不可能な場合があり、また不経済でもある。 このように現用のこの種の装置では、殊に電源設備を搭載できない運動体側に対し、簡単に効率良く電力を供給する手段が要望されている。 [発明の目的] 本発明の目的は、運動体側あるいは固定体側に装着したモジュールの何れかが無電源で動作でき、かつ双方の距離がある程度大きい場合とか、周囲の設置環境条件などのために伝送効率が悪くなる場合、あるいは非接触で供給する送信電力を大きくできない場合などにおいても、信号の伝送を安定で効率良くかつ間欠的に行える信号伝送装置を提供することにある。 [発明の概要] 本発明の信号伝送装置は、電気回路で構成した運動体側と固定体側にそれぞれ装着される能動用と受動用との複数のモジュールのそれぞれに送信ヘッドと受信ヘッドとを有する伝送部を備え、他のモジュールの伝送部と互いに対向した状態で、デジタルやアナログ的な各種のデータ信号を、電磁波を用いて互いに非接触で伝送することができ、その中の何れか一方のモジュールの動作に必要な電力を他方のモジュールから電磁波により非接触で伝送するように構成された信号伝送装置において、前記電力を受電する側のモジュールにコンデンサや電池の如き蓄電機器を装備して受電電力により充電し、その充電状態を判定した上で、これを電源として所要のタイミングで間欠的に他方のモジュールにデータ信号の送信動作を行なうに際して、電力伝送の電磁波の周波数を、伝送したいクロック周波数と同一、又は、その整数倍にしておき、両モジュールのクロック周波数を共通にすると共に、前記モジュールの各伝送部が互いに対向した状態を検知する検出回路を備えることによって、その検知信号に基づき前記畜電機器に対する充電の時間や前記データ信号の送信動作に係わる回路の駆動時間などのタイミングを司るようにしたことを特徴とするものである。 [発明の構成] 本発明に係る信号伝送装置は、少なくともその一部に運動部分を有する機械装置の、固定体側に装着する受動用モジュールと運動体側に装着する能動用モジュールとから構成されている。 そして受動用モジュールは電灯線や電池、発電機または太陽電池等の発電素子などを直接電源として動作させ、能動用モジュールは受動用モジュールから電磁波によって非接触で供給された電力を一旦蓄電し、これを電源としてタイミングよく所定の動作を行なわせようとするものである。 即ち能動用モジュールに備えた送信ヘッドと受信ヘッドから、所定のデータ信号を受動用モジュールの受信ヘッドに対して電磁波により送信する、いわゆる単方向の非接触信号伝送が可能な構成になっている。あるいは能動用と受動用との各モジュールにそれぞれ送信ヘッドと受信ヘッドとの両者を備えた構成にしておき、モジュール間における各種のデータ信号の双方向伝送を可能にすることもできる。 この場合、電力やデータ信号を非接触で伝送するための媒体として適用する電磁波は、低周波からマイクロ波領域を含むものである。 本発明の信号伝送装置は、電磁波を媒体として伝送するのに不向きな設置条件などのために伝送効率が悪い場合とか、送信電力を大きくできない場合、あるいはその他の要因により従来の方法では伝送が不安定になる場合でも、安定に信号伝送を行なうことを可能にしたものである。 能動用モジュールの受信ヘッドは、受信用モジュールの送信ヘッドと互いに対向した状態において、その送信ヘッドから連続的に供給される電力をコンデンサや電池などの蓄電機器に充電する。そしてその電荷が適当な閾値に到達した状態にある時、所定のタイミングで間欠的にデータ信号の送信に係わる回路を動作させ、その送信ヘッドから受動用モジュールに対して比較的短時間に信号伝送が行なわれるようになっている。 このような回路構成を備えることにより、能動用モジュールが受電する平均電力が小さい場合でも、信号の送信動作を安定に司どることが可能になる。 この場合、受動用モジュールから能動用モジュールに対して伝送される電力量を略一定とすれば、その平均伝送電力が小さい場合ほど、前記蓄電機器の(放電時間)/(充電時間)の値即ちデューティ比は小さくなるが、これは特殊な場合を除いて一般にはあまり問題にはならない。 デューティ比を決定する方法として次に述べる如き回路の構成が考えられる。即ち (1)蓄電した電荷判定回路を用いて蓄電機器の充電状態を判別し、所要のタイミングで受動用モジュールにデータ信号の送信動作に係わる回路を駆動させる。 (2)蓄電機器に対する充電の時間と、データ信号の送信に係わる回路の駆動時間即ち放電時間のタイミングを決定するための適当なタイマー回路を構成する。 (3)上記のタイマー回路とは別の手段として、モジュールの各伝送部が互いに対向した状態を検知する検出回路を設け、その検知信号にもとづき充電時間と放電時間のタイミングを決定する。 また本発明に係る装置において、能動用と受動用との複数のモジュールを適用することによりマルチチャンネル信号伝送システムを構成することができる。例えば受動用モジュールが要求するデータ信号に対応するチャンネル指定コマンドを、能動用モジュールに対して送信し、当該チャンネルのデータ信号を能動用モジュールから受動用モジュールに返送するような双方向信号伝送の形式に構成する。 この場合、受動用モジュールに電磁波による電力伝送専用の送信ヘッドを設け、コマンドの送信ヘッドとは別系統にする方式と、受動用モジュールの1個の送信ヘッドから電力を伝送すると共に、その電磁波に何らかの方法でコマンドを重畳して伝達する方式とがある。 そして単方向、双方向伝送に係わらず、受動用モジュールと能動用モジュールとに共通のクロックが必要な場合(例えばデータをシリアルで送る場合のボーレイトクロックを共用する場合など)、電力伝送の電磁波をその周波数で変調するか、または電力伝送の周波数を伝送したいクロック周波数の整数倍にしておくことにより、双方のモジュール間で容易にスケールを合わせることができ共通のクロックが得られるようにしておく。 以下に本発明の実施例を説明するが、説明の簡易化のために受動用モジュールから能動用モジュールに対して電力を伝送し、能動用モジュールはその電力によって動作し、所定のデータ信号を受動用モジュールに伝送する、いわゆる単方向伝送の場合について例示する。 [発明の実施例] 実施例 1 第1図において、Aは機械装置の固定体側に装着される受動用モジュール、Bは運動体側に装着される能動用モジュールのブロック図である。 受動用モジュールAの主な機能は、能動用モジュールBにその動作に必要な電力を電力用搬送波f1によって供給することと、能動用モジュールBにおいて取得したデータ信号によって変調された信号用搬送波f2を受信し、これを復調して出力することである。 他方、能動用モジュールBの主な機能は、受動用モジュールAから伝送されて来る電力用搬送波f1を受信し、整流平滑ののち各部の電源として供給することと、データ信号をFM(Frequency Modulation)波とした信号用搬送波f2を、受動用モジュールAに向けて送信することである。 以上の機能を具体的に説明すれば、次のようになる。 即ち電力用搬送波f1の整数分の一の周波数を発振するf1発振回路1の出力を、f1周波数逓倍回路2によって空間伝送に適した周波数の搬送波f1に逓倍し、f1電力アンプ3によって所要の電力に増幅したのち、電力送信ヘッド4から電磁波として放射する。 この電力用搬送波f1は、電力受信ヘッド5によって捕捉され整流平滑回路6により直流化され、コンデンサや電池などの蓄電機器7を充電する。この充電電圧は電圧コンパレータ8により参照電圧Vrと比較され、充電電圧がその閾値以上になった場合にトリガ回路9を導通させる。このようにしてf2電力アンプ14に間欠的に電荷を供給して充電し作動させる。 この場合、蓄電機器7がコンデンサであれば、その容量C、充電される電荷をQとすると、放電直前のQの値は、 Q=C・Vr となり、また充放電のインターバルに関係する充電時間の時定数Tは T=C・R・log(Vr/Vs) である。但しRは時定数回路を構成する抵抗または回路の等価インピーダンスであり、またVsはその時定数回路に印加される受動用モジュールAから伝送された電力による電源電圧である。 従って伝送に必要な電荷Qを一定とすると、伝送された電力の強度によって放電するまでのインターバル、即ち能動用モジュールBから受動用モジュールAに対して伝送する信号のインターバルが変動するが、一般的には能動用モジュールBにおいて取得されるデータ信号Dsの変化速度と比べた場合十分に速いので問題はない。 なおブロックダイアグラム中に点線で示した22,23,および24は、後述する別の実施例の回路を併記したもので、ここでは関係の無いものである。 何れにしてもこのようにして動作に必要な電力を確保した能動用モジュールBは、その外部から採取したデータ信号Dsを受動用モジュールAに伝送するために、まず入力バッファアンプ10により増幅し、信号用搬送波f2の整数分の一の周波数を発振するf2発振回路11によって駆動されるFM回路12へ入れ、データ信号Dsに対応したFM波にする。しかしこの周波数のままでは伝送効率の点で空間伝送には不適当であるのと、所要の周波数偏移を得るためにf2周波数逓倍回路13で周波数を高くする。そしてトリガ回路9が前述のようにして導通している場合であれば、f2電力アンプ14が作動して電力増幅を行ない、信号送信ヘッド15から電磁波として受動用モジュールAに向け放射する。 この信号用搬送波f2は、信号受信ヘッド16によって捕捉され高周波アンプ17により増幅したのち、FM復調回路18によりデータ信号Dsに対応した信号に復調されたのち、サンプルホールド機能を持つSH回路19と出力バッファアンプ20を経てデータとして出力される。 但し能動用モジュールBの信号伝送に係わる出力は前述の如く間欠的に行なわれるので、高周波アンプ17による受信信号の増幅出力をf2強度検出回路21で検出し、その値があるレベル以上になったタイミングにおいてゲートパルスを発生させサンプルホールドを行なうように構成しておく。 実施例 2 使用条件によっては、前記のインターバルが一定でないと周囲の装置と適合しない場合がある。そのような場合には適当なタイマー回路により、充電の時間と信号の送信に係わる回路の駆動時間などのタイミングを決定するような構成にしておけばよい。 これは例えば第1図における8と21の代わりに、点線で併示したAカウンタ22とBカウンタ23とをそれぞれ接続することによって達成することができる。 即ち受動用モジュールAのf1発振回路1の発振周波数を電力用搬送波f1の周波数の整数分の一にしておき、その周波数をf1周波数逓倍回路2により整数倍して電力用搬送波f1を送信する。と同時に、f1発振回路1の発振周波数をAカウンタ22によって逓減するように構成しておく。他方、能動用モジュールBの電力受信ヘッド5で捕捉された電力用搬送波f1の周波数を、Bカウンタ23によって整数分の一に逓減した周波数として得るようにする。 この場合、Aカウンタ22とBカウンタ23の周波数逓減比を選ぶことによって、双方のモジュールに共通の周波数を得ることができるから、その逆数を共通のインターバルにすることができる。 依って前例と同様に信号受信ヘッド16で受信したデータ信号について、当該インターバルに係わる受信タイミングによりSH回路19を駆動してサンプルホールドを行ない、出力バッファアンプ20を経て出力する。 但しインターバルについては前例と異なりAカウンタおよびBカウンタによって一義的に決定されてしまうので、能動用モジュールBの設置条件などにより影響される受電電力即ち充電時間に予め余裕をみておかないと、信号送信時の電力に不足を生じ動作が不安定になる場合も起こり得るので、これに対しては適切な対策をとるようにする。 実施例 3 前記2つの実施例は電荷の充電に係わる時定数やタイマー回路によって当該インターバルを決定していたが、使用条件によっては不適当な場合がある。例えば運動体側が固定体側に対して相対的な往復運動や擦れ違い動作を行なうような機構をもった装置の場合である。 即ち第2図に例示したように、矢印の方向に移動する台車25に装着した能動用モジュールB(送、受信ヘッドのみを分離して装着する場合もあり得る)によって採取したデータ信号を、その送信ヘッドから固定体側に装着した受動用モジュールAの受信ヘッドに伝送できるタイミングは、その送信ヘッドと受信ヘッドとが互いに対向した状態の時である。 殊に運動体側が高速度で移動するような場合には、両者が対向した瞬間に信号の授受を行なわなければならない。 このような場合には、両者が対向した瞬間を検知し、この検知信号にもとづいて動作する内部回路などを用い、前記蓄電機器に対する充電時間および当該信号の送信動作に係わる回路の駆動時間などに関するタイミングを得るようにする。 その実施例として、第1図における22,23及び8を除き、その代わりにf2強度検出回路21とf1強度検出回路24とを接続して成る検出回路を用いる方法について説明する。 受動用モジュールAから能動用モジュールBに対して伝送される電力用搬送波f1の電磁界は、電力送信ヘッド4と電力受信ヘッド5とが対向した状態の時に最も大きくなる。従ってf1強度検出回路24の出力があるレベル以上の値になった時に、トリガ回路9を駆動し蓄電機器7に充電された電荷をf2電力アンプ14に供給して作動させる。 他方、受動用モジュールAにおいても信号用搬送波f2の電磁界が最も大きくなるのは、信号送信ヘッド15と信号受信ヘッド16とが対向した状態の時である。従って、高周波アンプ17の出力をf2強度検出回路21で検知し、その検知信号があるレベル以上の値になった時にSH回路19を駆動して、FM復調回路18の出力をサンプルホールドし出力バッファアンプ20を経てデータ信号Dsを出力する。 このように双方のモジュールの各伝送部が互いに対向した状態を検知する手段により、所定の信号伝送を行なわせることができる。 このような効果は、上述のような内部回路によって行なう以外に、例えば各伝送部に適当なセンサやスイッチなどのタイミング検知素子を付加して成る検出回路を適用してもよく、或いはそれらを適当に組み合わせた回路構成にしても同様の効果を得ることができる。 以上の実施例では、複数のモジュールのうち、Aを受動用、Bを能動用として説明したが、双方とも受動用又は能動用とする場合もあり得る。 また実施例では変調方式にFM変調方式を用いたが、これは通常の無線通信に用いられる各種の変調方式が殆ど適用できることは自明である。また必要となれば能動用モジュールに電池等の補助電源を付加する場合もあり得る。 なお電力送信ヘッド4、電力受信ヘッド5および信号送信ヘッド15や信号受信ヘッド16は色々な方式のものを用い得るが、一般にはコンデンサを並列接続したコイルを用いることができる。この場合、各ヘッドのコイルをそれぞれ単捲コイルに対して2対分を構成してもよいが、一つの磁性体コアに2つのコイルをそれぞれ捲いて一方を送信用、他方を受信用として使用すれば一対のみで済み全体の形を小さくすることができる。 また例えば第3図に示す如き設置例において、本発明に係る能動用モジュールBがある機構上のシャフト26と共に装着され、第1図における電力受信ヘッド5と信号送信ヘッド15とに相当する、電力受信コイル27と信号送信コイル28とがそれぞれその外周に巻き付けられている。 他方、受動用モジュールAの各伝送部が、機構上の制約などからシャフト26の外周のある範囲しか占有できないような設置条件の場合には、図示の如く強磁性体を伴った電力送信ヘッド4と信号受信ヘッド16とを分離して設置すればよい。 また本発明に係る各伝送部の構造は、上述のコイルの如き閉鎖状のものではなくてもよい。例えば一般のアンテナの如き開放状のものでも、信号伝送に係わる周波数の選定や、信号受信系の感度・選択度を向上させるなどの処置によって十分に適用できる。 第4図は信号伝送系に信号送信アンテナ29と信号受信アンテナ30を使用して、本発明を実施する例である。このような場合には電力伝送系から信号伝送系に対する誘導の影響も少なくなるので、たとえ信号受信アンテナ30を電力送信ヘッド4の近傍に設置したり、信号伝送アンテナ29を電力受信コイル27の極く近傍に設置、あるいは一緒に巻き付けるなどしても安定に動作させることができる。 [発明の効果] 従来、この種の信号伝送装置は高価なものが多く、また設置する環境条件などによっては使用できない場合が多かったが、非接触伝送回路系の無電源側のモジュールに蓄電機器を備え、その充電状態を判定した伝送系全体を所定のインターバルで間欠的に動作させ得るようにした本発明の構成によって、拙悪な設置条件下においても安定に動作させ得るので、その適用範囲が大幅に増大するという効用がある。 また良好な条件下においては、従来のこの種の装置ではみられなかった伝送距離の飛躍的な増大をもたらすという極めて大きい効果がある。 また能動用モジュール側で得た充電電力により発振し又は送信する周波数を、受動用モジュール側のそれと合わせ相互の基準クロックとすることにより、回路構成を単純化できると共に動作の安定化をもたらすなど、実用上いくつかの効用がある。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明に係る信号伝送装置の実施例を示すブロックダイアグラムであり、第2図、第3図および第4図は設置例を示す斜視図である。 Aは受動用モジュール、Bは能動用モジュール、符号1はf1発振回路、2はf1周波数逓倍回路、3はf1電力アンプ、4は電力送信ヘッド、5は電力受信ヘッド、6は整流平滑回路、7は蓄電機器、8は電圧コンパレータ、9はトリガ回路、10は入力バッファアンプ、11はf2発振回路、12はFM回路、13はf2周波数逓倍回路、14はf2電力アンプ、15は信号送信ヘッド、16は信号受信ヘッド、17は高周波アンプ、18はFM復調回路、19はSH回路、20は出力バッファアンプ、21はf2強度検出回路、22はAカウンタ、23はBカウンタ、24はf1強度検出回路、25は台車、26はシャフト、27は電力受信コイル、28は信号送信コイル、29は信号送信アンテナ、30は信号受信アンテナ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2005-03-03 |
結審通知日 | 2005-03-04 |
審決日 | 2005-03-15 |
出願番号 | 特願昭60-273645 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(H04B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川名 幹夫、梅沢 俊 |
特許庁審判長 |
西川 正俊 |
特許庁審判官 |
山中 実 橋本 正弘 |
登録日 | 1991-02-18 |
登録番号 | 特許第1601672号(P1601672) |
発明の名称 | 信号伝送装置 |
代理人 | 高矢 諭 |
代理人 | 牧野 剛博 |
代理人 | 牧野 剛博 |
代理人 | 榎並 智和 |
代理人 | 牧野 剛博 |
代理人 | 高矢 諭 |
代理人 | 布施 行夫 |
代理人 | 松山 圭佑 |
代理人 | 松山 圭佑 |
代理人 | 高矢 諭 |
代理人 | 松山 圭佑 |