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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない B01D
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない B01D
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない B01D
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない B01D
管理番号 1118566
審判番号 無効2004-80030  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-02-08 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-04-28 
確定日 2005-04-21 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2133999号発明「圧力変動吸着分離方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2133999号の請求項1及び2に係る発明は、平成1年6月29日に特許出願され、平成9年12月19日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、山陽電子工業株式会社から平成16年4月28日付けで請求項1及び2に係る発明の特許について無効審判の請求がなされたところ、その後の手続の経緯は、次のとおりである。
答弁書: 平成16年 8月31日
訂正請求: 平成16年 8月31日
口頭審理陳述要領書(請求人): 平成16年11月19日
口頭審理陳述要領書(被請求人): 平成16年11月19日
口頭審理: 平成16年11月19日
上申書(被請求人): 平成16年11月19日
上申書(被請求人): 平成16年12月20日
上申書(請求人): 平成17年 1月24日
II.訂正の適否
1.訂正の内容
訂正事項a
特許明細書の【特許請求の範囲】【請求項1】を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】吸着剤を充填した2筒の吸着筒を、吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程の4工程に順次切替えて空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法であって、前記均圧工程は、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させて、前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行い、前記再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出することで行うことを特徴とする圧力変動吸着分離方法。」
訂正事項b
特許明細書の第5頁1〜12行(特許公告公報第2頁第3欄41行〜第4欄1行)を次のとおりに訂正する。
「〔課題を解決するための手段〕 上記した目的を達成するために、本発明は、吸着剤を充填した2筒の吸着筒を、吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程の4工程に順次切替えて空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法であって、前記均圧工程は、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させて、前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行い、前記再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出することで行うことを特徴とし、特に、前記均圧工程の時間を、サイクルタイムの1/30乃至1/4としたことを特徴としている。
〔作用〕 上記のごとく、両吸着筒の原料供給弁をそれぞれ開いて、両吸着筒を原料供給端で連通させて極めて短時間で均圧操作を行うことにより、吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程の4工程に順次切替えて空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離のサイクルタイムを短くでき、装置の小型化が図れる。」
訂正事項c
特許明細書の第11頁下から14行〜下から11行(特許公告公報第3頁第6欄13〜16行)を次のとおりに訂正する。
「以上説明したように、本発明は、吸着剤を充填した2筒の吸着筒を、吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程の4工程に順次切替えて空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法であって、前記均圧工程は、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させて、前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行い、前記再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出することで行うから、」
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、「少なくとも2筒の吸着筒」を「2筒の吸着筒」に限定し、「均圧工程」について「前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行い」と限定し、「再生工程」について「前記再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出することで行う」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項b及びcは、上記訂正事項aと整合を図るとともに特許請求の範囲の記載と整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、訂正事項a〜cは、特許明細書第6頁第1行(特許公告公報第2頁第4欄9〜10行)の「2基の吸着筒A、B」、特許明細書第7頁11〜16行(特許公告公報第2頁第4欄36〜40行)の「B筒の排気弁7bが閉じられるとともに〜原料空気と共にB筒の原料供給弁5bからB筒内に導入される。」、特許明細書第7頁4〜6行(特許公告公報第2頁第4欄30〜31行)の「一方のB筒においては、排気弁7bを介して筒内のガスが大気に放出されて減圧される」及び第1、2図に記載されるのであるから、訂正事項a〜cは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
なお、請求人は、この訂正請求について、平成16年11月19日付けの口頭審理陳述要領書(第20頁下から3行〜第21頁5行)において「再生工程が大気放出さえ行っていれば、減圧パージの作用は不問になったから、特許請求の範囲の実質的な変更である」旨主張するので、この旨を検討すると、本件特許明細書【特許請求の範囲】の「吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程の4工程を順次」(特許公告公報補1頁)との記載から、「再生工程」は「吸着工程」を経た「均圧工程」と次の「均圧工程」間の工程であることは明らかであり、また、B筒の排気弁7bに着目して「均圧工程」をみると、特許公告公報第2頁第4欄20〜47行の記載から、均圧工程においては、該弁7bが閉となって均圧工程に入り、再生工程においては排気弁7bを開として筒内のガスが大気に放出されて減圧されているといえ、また、圧力変動吸着分離法では減圧することによって脱着再生させることは当業者にとって自明であることからみれば、「再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出する」との限定は、「再生工程」の構成を限定するものであって、「再生工程」の技術内容を変更するものとはいえず、その限定を以て特許請求の範囲を実質的に変更するとはいえない。
3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.本件訂正後の特許発明
本件無効審判請求の対象となった請求項1及び2に係る発明については、上記訂正を認容することができるから、本件訂正後の発明は、訂正明細書の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、それぞれ「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」という。)である。
【請求項1】吸着剤を充填した2筒の吸着筒を、吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程の4工程に順次切替えて空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法であって、前記均圧工程は、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させて、前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行い、前記再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出することで行うことを特徴とする圧力変動吸着分離方法。
【請求項2】前記均圧工程の時間を、サイクルタイムの1/30乃至1/4としたことを特徴とする圧力変動吸着分離方法。
IV.請求人の主張と証拠方法
1.請求人の主張
請求人は、証拠方法として甲第1〜6号証および参考資料1,2を提出して、口頭審理(口頭陳述要領書を含む)及びその後の上申書において、これまでの主張を整理して次のとおり主張している。
(1)無効理由1:本件訂正発明1及び2は、甲第1号証と甲第3号証又は参考資料2の特開昭58-189022号公報(以下、「資料刊行物」という。)に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(2)無効理由2:本件訂正発明1及び2は、甲第2号証と甲第3号証又は資料刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(3)無効理由3:本件訂正発明1及び2は、甲第3号証に記載の発明と同一であるか、または当該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
特許法第29条第1項もしくは第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これら発明についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
(4)無効理由4:本件訂正発明1及び2は、(i)特許請求の範囲請求項1に記載される「吸着工程」、「再生工程」の意味が不明瞭であり、また(ii)「吸着工程を終えた」「再生工程を終えた」の「終えた」がいかなる意味を奏するのか不明瞭であるから、発明の構成に欠くことができない事項が記載されていなく、また、詳細な説明に当業者がその発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載がないから、特許法第36条第3項及び第4項の規定により特許を受けることができないものであるから、この発明についての特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきである。
なお、上記資料刊行物は請求時に提出された参考資料2に含まれていた公報であり、これを無効理由に加えることは訂正請求に伴い請求の趣旨を逸脱しない範囲内であるとの理由により、被請求人の承諾の下容認したものである。
2.証拠の記載事項
無効理由1〜4で引用されている甲第1号証〜甲第3号証及び資料刊行物には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)甲第1号証:特開昭60-132620号公報
(ア)「本発明はプレッシャースイング吸着(PSA)方式により、空気等の混合ガスから、特定ガスのみを濃縮する方法において、該特定ガスの純度をより向上させるための方法に関するものである。まず、従来のPSA(・・・)方式により空気から窒素を濃縮する方法について、・・・第1図においてI、IIは吸着塔、1〜8は弁を示す。吸着塔I、IIは酸素を選択的に吸着する吸着剤が充填されている。(工程A)吸着塔Iが吸着工程、吸着塔IIが脱着工程にあるとする。・・・(工程B)次に均圧化工程に入る。均圧化工程とは、吸着工程を終了した高圧の吸着筒と脱着工程を終了した低圧の吸着塔の圧力を一時的に連結させ、低圧の吸着塔の圧力を所定の吸着圧、脱着圧の中間圧まで昇圧する工程である。・・・通常吸着塔の出口側同士および入口側同士を連結して行なわれる。・・工程Aが完了した時点で弁1、3、6、7、8を閉じ、次いで弁1、2、3、4を開く。・・・吸着塔I、IIの圧力が均衡する。(・・)(工程C)次に、工程Aと逆に、吸着塔IIが吸着工程、吸着塔Iが脱着工程に入る。・・・残留ガスが脱着排気される。(・・)(工程D)再度均圧化工程に入り、弁2、4、5、7、8を閉じ、弁1、2、3、4を開くことにより、吸着工程の完了した吸着塔IIの上部から弁4、3を通って、また同時に吸着塔IIの下部から弁2、1を通って吸着筒II内の高圧のガスが低圧の吸着塔Iに移行し、吸着塔I、IIの圧力が均衡する。(・・) 以上、工程A〜Dを繰り返す。・・・連続的に製品ガスを取り出す方法である。」(第1頁右欄6行〜第2頁右上欄18行)
(イ)「排出の方法は、大気圧に開放してもよいし、また真空ポンプによって排気してもよい。」(第3頁右下欄9〜11行)
(ウ)第1図及び第2図には、上記(ア)の吸着塔I、II及び弁の構成、均圧化工程の様子が記載されている。(第5頁)
(2)甲第2号証:特開昭63-91119号公報
(ア)「このガス吸着の原理は更に水素、・・・、酸素および窒素のガス富化法に洗練された。更には周期的に加圧する2以上の吸着容器を用いる方法が開発され、広く圧力スイング吸着(・・)と称されるガス富化のための吸着法がもたらされた。」(第3頁右上欄1〜8行)」
(イ)「従来のガス富化のためのPSA法たとえば空気から窒素を富化する方法は、炭素モレキュラーシーブ材料を充填した2以上の吸着床を使用し、・・一般には明確に区別された四工程に付される。サイクルの第一工程では、一方の吸着床は加圧され、それに伴って窒素を生産し、他方の吸着床は排気などにより再生される。この吸着は、プロダクト品質ガス(「パージ」・・)を向流で流すことによっても再生される。第二工程は均圧化工程とも称されるが、そこでは複数の吸着床を相互接続して中間の圧力にする。サイクルの第三工程では、第一吸着床は第二床で用いた手順に従って再生され、第二床は生産工程に入る。サイクルの最終工程は、吸着床間で均圧化をはかることである。このような圧力スイングの間に、吸着床の圧力条件は、炭素モレキュラーシーブを用いる窒素の生産では・・・、結晶性ゼオライトを用いる酸素の生産では若干低目の圧力範囲で変動する。圧力スイング吸着法に酸素分離膜を用いることは・・・ゼオライト粒子を充填した吸着カラムを用いるPSA法により酸素を製造しており、各吸着カラムのパージサイクル時には酸素パージガスを通している。酸素パージガスは、各吸着カラムの生産サイクル時に酸素富化流をガス分離膜に通して得られる透過ガス流である。」(第3頁右上欄9行〜同頁左下欄18行)
(ウ)「本発明の一目的は、所要エネルギーの少ない・・・他の目的は、サイクル時間を長くできる改善されたPSA法および装置を提供することである。」(第3頁左下欄末行〜同頁右上欄5行)
(エ)「本発明の説明は、炭素モレキュラーシーブの吸着剤床を用いる空気の窒素富化に関して行うが、当業者には本発明の方法および装置が圧力スイング吸着技術を用いるガス富化そのものに適用可能なることが理解されるであろう。」(第4頁右上欄7〜12行)
(オ)「本発明の別の特徴は、基準点を突破して製品純度水準が低下した際にガス富化プロダクト流の一部を上方ガス拡散容器に導入し、不透過流すなわちプロダクトの設計基準に合致する純度のガス流と、パージおよび/またはバックフィル(・・)用に用いる透過流を形成することである。」(第5頁右上欄末行〜同頁左下欄5行)
(カ)「本発明のPSA法における均圧化工程は、通常のPSA法におけるものと同一であるが、ただ再生を受けている吸着容器からの排気を下方ガス拡散セルで処理したあと、および生産中の吸着容器からのテール-エンドプロダクトを上方ガス拡散セルで処理したあとで実施される。」(第6頁右下欄12〜17行)
(キ)「実施例III 下記実施例は、ガス拡散容器14からの透過流を用いて一方の吸着床をパージする窒素製造法でのサイクル時間を説明する。(弁-第1図)
工程 容器10 容器12 開放弁 代表時間
(秒)
1 新原料で加圧 大気へ直接排出 28,32,44,54 10
2 N2プロダクトの 大気へ直接排出 28,32,44,54,93,102, 100
生産 106
3 上方拡散セルでプ 上方拡散セルから 28,32,44,54,93,102, 35
ロダクトを精製、 の透過流で容器 114,116,121,136
容器12へパージ 12をパージ
ガスを提供
4 容器12と均圧化 容器10と均圧化 32,36,134,136 5
5 大気へ直接排出 新原料で加圧 28,36,40,54 10
6 大気へ直接排出 N2プロダクトの 28,36,40,54,95,102, 100
生産 106
7 上方拡散セルから 上方拡散セルで 28,36,40,54,95,102, 35
の透過流でパージ プロダクトを精製、114,116,121,134
容器10にパージ
ガスを提供
8 容器12と均圧化 容器10と均圧化 32,36,134,136 5
5分/サイクル」(第8頁右上欄)(なお、当審では、開放弁の符号「116」は導管であるとみれるので、「118」の誤記であると認める。)
(ク)第1図には「本発明の好適実施態様の概念的フロー図」が図示され、上記(キ)の容器10、容器12、上方ガス拡散セル14,弁などの構成が記載されている。
(3)甲第3号証:特開昭63-166702号公報
(ア)「本発明は、圧力変動吸着法(PSA法)を利用して空気の如き、酸素と窒素とアルゴンを含む混合ガスから窒素を吸着分離し、濃縮酸素ガスを得るものである。即ち、合成ゼオライト、天然ゼオライト等の窒素に対して選択吸着性を有する吸着剤を充填した3個の吸着筒に対し、以下に説明する各工程を順次繰り返しながら吸着剤に窒素を吸着させ酸素およびアルゴンを濃縮して製品ガスとして取り出す方法である。」(第4頁左上欄6〜15行)
(イ)「工程1. 弁1A、2Aが開かれブロアー9により加圧された空気がA筒の下部即ち原料端部より供給され、A筒に於て窒素を吸着分離された製品酸素ガスがA筒の上部即ち製品端部より管12を介して製品貯留タンク11に流出する。」(第4頁右上欄7〜12行)
(ウ)「工程2. 弁3B、5Bが閉じられると同時に弁4B、3Cが開かれ、パージ工程を終了したB筒の製品端部に製品貯留タンク11より管13を介して製品ガスが供給され、B筒は加圧される。」(第4頁左下欄2〜6行)
(エ)「工程3. 弁2A、4Bが閉じられると同時に弁1Bが開かれA筒の原料端部からB筒の原料端部にA筒内のガスが原料空気とともに供給されA筒は向流方向に減圧される。・・・この操作は通常1〜7秒、好ましくはA筒の原料端部からB筒の原料端部へのガスの供給だけによる減圧の場合には3〜5秒であり同時にA筒の製品端部からB筒の製品端部にガスを供給する場合には1〜2秒の短時間で実施される。」(第4頁左下欄末行〜同頁右下欄14行)
(オ)「工程4. 弁1Aが閉じられると同時に弁5Cが開かれA筒の製品端部より濃縮酸素ガスがC筒の製品端部に供給され、C筒内を向流方向にパージしながら真空ポンプ10によって系外に排出される。」(第4頁右下欄16〜末行)
(カ)「工程5-1. 弁5Cが閉じられると同時に弁3Aが開かれA筒は真空ポンプ10によって原料端部から真空排気される。窒素を吸着した吸着剤から真空圧に吸引することによって窒素を脱着させて、吸着剤を再生する操作である。窒素を脱着させて吸着剤により大きな吸着容量を持たせるためには、真空圧力を出来るだけ低く、例えば100Torr以下、・・・まで真空排気する必要がある。・・・をC筒に導入してもよい。
工程5-2. 弁2B、4Cが閉じられると同時に弁1Cが開かれB筒の原料端部からC筒の原料端部にB筒内のガスが原料空気とともに供給されB筒は減圧される。あるいはこの操作の際同時に弁2Bを開いたままで弁2Cを開きB筒の製品端部からC筒の製品端部にB筒内からの濃縮酸素ガスを供給しても良い。一方、A筒は引き続き真空排気されている。」(第5頁左上欄14行〜同頁左下欄2行)
(キ)「工程6. 弁1Bが閉じられると同時に弁5Aが開かれB筒の製品端部より濃縮酸素ガスがA筒の製品端部に供給され、A筒内を向流方向にパージしながら真空ポンプ10によって排出される。」(第5頁左下欄3〜7行)
(ク)「工程7. 弁3A、5Aが閉じられると同時に弁4Aが開かれパージ工程を終了したA筒の製品端部へ製品貯留タンク11より製品ガスが供給され、A筒内は製品ガスにより加圧される。・・・製品加圧は、パージ工程が終了してまだ真空圧力下にある吸着筒に製品酸素ガスを製品端部より向流方向に導入することによって吸着筒の製品端部側から順次酸素分圧をより高め、パージ終了後も吸着筒製品端部側に吸着して残存している窒素ガスを脱着させて原料端部側に押しさげるとともに、一旦吸着筒製品端部より流出した製品ガスを再度吸着筒に戻して微量の窒素まで吸着剤に吸着させると考えられ、従って低窒素濃度(例えば1000ppm程度)の製品ガスを安定して得るためには欠く事の出来ない操作である。」(第5頁右下欄7行〜第6頁左上欄3行)
(ケ)「工程8. 弁2C、4Aが閉じられると同時に弁1Aが開かれC筒の原料端部からA筒の原料端部にC筒内のガスが原料空気とともに導入されA筒は加圧される。・・・その間、ブロアー9からも、同時に、原料端部に原料ガスが供給されるが、その原料ガスを低減せしめうることによって、酸素回収率を向上させる操作である。・・・時間は1〜7秒、好ましくは3〜5秒の短時間で実施される。」(第6頁左上欄13行〜同頁右上欄15行)
(コ)「本発明者等は・・・製品ガス発生量を出来るだけ減少させることなく製品ガス中の窒素の含有量を低減させる事に成功した。その大きな発明の第一は吸着工程終了後の各筒間における筒内ガスの回収の方法、すなわち吸着(工程2)の終了した筒から製品加圧(工程7)による再生を終了した筒へのガスの移動、均圧の操作である。」(第7頁右上欄16行〜同頁左下欄4行)
(サ)「本発明者らは更に検討を加え第1のケース即ち原料端部から原料端部へガスを移動させるのと同時に製品端部から製品端部へもガスを移動させる第2のケースを発明した。ガスを2筒間で移動させる均圧(工程3および工程8)は、原料ガスを導入しながら2筒間の圧力差がほぼ同一になる時間で行われる。そしてこのガスの移動は吸着筒の空隙部に存在する気相部分のガスを回収するのが目的であり、特に固相内に吸着されている選択吸着性の高い窒素が脱着しないうちに実施するのが好ましい。即ち吸着筒内の空隙部に存在するガス及び吸着剤から脱着し易いアルゴンや酸素だけを回収するのが目的であるから、出来るだけ短時間で行うのが好ましい。・・・第1のケースに於て1〜7秒・・第2のケースでは1〜3秒・・にする事が出来た。」(第8頁左上欄1〜19行)
(シ)「さらに製品加圧(工程7)すなわち製品の一部を加圧に使用することは、高濃度の酸素の濃縮、特に窒素濃度の低い製品ガスを発生させるためには不可欠なものであり、製品加圧量の増加とともに、低窒素濃度の製品ガス発生量は増加する。・・・真空排気到達圧力よりも250〜450Torr高い範囲の圧力まで製品加圧する事が好ましいことをつきとめた。」(第8頁左下欄19行〜同頁右下欄6行)
(ス)第1図Aには「本発明方法を説明するための系統図」が図示され、吸着筒A、B、C、製品貯留タンク11、弁の構成など記載されている。
(セ)第3図(第14頁)には上記(ア)の各工程、即ち次の内容が図示される。
「 吸着筒
工程 A B C
1 吸着 パージ 減圧
真空排気
2 吸着 製品ガス加圧 真空排気
3 均圧 均圧 真空排気
4 減圧 吸着 パージ
真空排気
5-1 真空排気 吸着 製品ガス加圧
5-2 真空排気 均圧 均圧
6 パージ 減圧 吸着
真空排気
7 製品ガス加圧 真空排気 吸着
8 均圧 真空排気 均圧 」
(4)資料刊行物:特開昭58-189022号公報
(ア)「本発明は、とくにモレキュラーシーブ類を使用する圧力揺動吸着(・・)(PSA)システムによって強化(・・)ガス流を提供する吸着プロセスに関するものである。」(第2頁右下欄10〜14行)
(イ)「空気からの強化窒素の製造のために、カーボンモレキュラーシーブ類を使用することは、既知の方法である。」(第3頁左下欄12〜14行)
(ウ)「本発明の方法に他のモレキュラーシーブ類が有用であろうことが予期される。すなわち、ゼオライト類およびこの分野で認められている他の選択的な吸着体類もまた本発明に使用されうる。図面を詳細にみると、まず2本の耐圧塔“A”および“B”があり、それぞれにはカーボンモレキュラーシーブ類が詰められている。」(第4頁右下欄3〜11行)
(エ)「各塔は吸着、部分均等化(・・)、降圧、パージ、生成物再加圧およびフィード再加圧の諸工程を経てサイクルされる。・・・塔の吸着サイクルの終了時に、ほとんど使い果されたカーボン塔は、その入口(または底部)で部分的に換気され、この換気ガスは再加圧されるべき塔の底部(または入口)へ送られる。この部分換気は、バルブ“1”または“2”を開くことによって吸着のために再生中である塔の正流フィードガス再加圧と実質的に同時に起こる。この部分“底部”均等化工程につづいて、このほとんど使い果たされたカーボン塔、“B”は隔離され、バルブ“4”を経由してその入口で大気圧にまで全体的に降圧される。それによって多量の副生放出物、すなわち、吸着された酸素を脱着および放出する。次に、この換気された塔は、生成物タンクからバルブ“7”を経由して導入される制御流下、・・の生成ガスで逆流的に洗い流され、バルブ“4”を経由してこのカーボン塔から余分の残渣および吸着された酸素をパージする。次に、この隔離された塔“B”は、バルブ“6”を経由する生成物タンクからの生成ガスを用いて吸着圧力の10%乃至30%まで再加圧されることによって部分再生される。再生された塔の最終再加圧は、その吸着サイクルをすでに完了した塔の底部からの換気ガスと、オープンバルブ“1”および“2”を経由する圧縮フィード空気との実質的同時導入により吸着圧力の40%乃至80%に達するまで行われ、その後バルブ“1”を閉める。このほとんど使い果たされた塔“A”の再加圧塔“B”への同時部分換気は、全フィード再加圧サイクルのごく短い部分である。・・・生成ガスがバルブ“5”を経由して生成物タンクへ導入されて吸着サイクルが始まる。・・・ついで塔“B”が強化窒素ガスを生成し、塔“A”が再生されるように反復される。」(第5頁左下欄17行〜第6頁右上欄2行)
(オ)第1表(第6頁)には、上記(エ)のサイクル操作が記載され、バルブ操作として「A:入口を降圧してBへ、B:Aからの入口再加圧およびフィードガス再加圧・・バルブ1,2が開、他のバルブは閉」、「A:Bからの入口再加圧およびフィードガス再加圧、B:入口脱圧してAへ・・バルブ1,2が開、他のバルブは閉」、並びに「A:生成物再加圧、B:が吸着・・・バルブ2、5及び6が開、他のバルブは閉」と記載されている。
なお、他の証拠の甲第4号証は判定2003-60085判定請求書であり、甲第5号証(特開昭64-70121号公報)は該判定請求書に添付された証拠書類であり、甲第6号証(特公昭51-40549号公報)は本件特許明細書に従来技術として記載されている公報である。この甲第4号証には「なお、特開昭64-70121号公報は、速度分離型により空気から窒素を分離する窒素PSAに関するものであるので、平衡分離型により空気から酸素を分離する酸素PSAとは分離型式を異にするものであるが、両PSAにおける吸着工程や再生工程や均圧工程の操作が同一であることは、本件特許発明の出願前の技術常識である」(判定請求書第8頁11〜15行)と記載されている。また、甲第6号証の第9頁右欄34〜39行には「例えば、カルシウムゼオライトAを吸着剤として特別に記載したが、好適な吸着剤の選択は分離されるべき供給ガスの組成と同じように周知の因子に依存し、したがって本発明の一部ではない。その他の周知の選択的吸着剤は活性炭及びシリカゲルを包含される」旨記載されている。また、口頭審理において、「医器学 Vol.52、No.9(1982)、p448〜449」、「『酸素関連医療技術からみた 呼吸、循環系医療機器技術の最新動向について』(株)フジ・テクノシステム、昭和58年」及び「特開昭59-199503号公報」を参考文献として提出した。これらの参考文献は、医療用の小型の酸素PSAが出願前に知られていたという技術水準を示す文献として提出されたものである(第1回口頭審理調書)。
V.被請求人の反論
被請求人は、請求人の上記主張に対して乙第1〜8号証を提示して、答弁書、口頭審理(口頭審理陳述要領書を含む)及び上申書を整理すると、次のとおり反論している。
(1)無効理由1〜3については、本件訂正発明1及び2は、甲第1号証または甲第2号証と甲第3号証あるいは資料刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないし、甲第3号証に記載の発明と同一であるか、または当該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)無効理由4については、「吸着工程」「再生工程」及び「それらの工程を終えた」は明細書の記載から明らかであり、請求人の主張の記載不備はない。
VI.乙号証について
(1)乙第1号証:「高圧ガス (1986 Vol.23 No.8)」昭和61年8月20日、高圧ガス保安協会発行、第9〜13頁、56頁
(2)乙第2号証:「ゼオライトの最新応用技術」1986年1月24日、株式会社シーエムシー発行、第127〜128頁
(3)乙第3号証:化学工学協会編「化学工学便覧(改訂五版)」昭和63年3月18日、丸善株式会社発行、第591頁
(4)乙第4号証:判定2003-60085に係る「判定」(平成16年2月9日)
(5)乙第5号証:「Industrial Gases」1997年、BLACKIE ACADEMIC & PROFESSIONAL発行、第98〜111頁
(6)乙第6号証:「Pressure Swing Adsorption」1994年、VCH Publishers、Inc.発行、第67〜83頁
(7)乙第7号証:「最新 吸着技術」平成5年11月24日、株式会社総合技術センター発行、第507〜518頁
(8)乙第8号証:「Advances in VSA technology for on-site oxygen production」1995年11月、BOC TECHNOKLOGY 発行、第29〜33頁
乙第1、2号証は「平衡分離型である酸素PSA法と、速度分離型である窒素PSA法との異同を説明するため」に、乙第3号証は「吸着剤MS-5Aの充填密度について」に、乙4号証は「再生工程を説明するため」に、乙第5、6号証は「医療用及び工業用酸素PSAを説明するため」に、乙第7号証は「医療用PSAを説明するため」に、乙第8号証は「工業用酸素PSAの技術改良を説明するため」に提出されたものである。
VII.当審の判断
1.無効理由1について
1-1.本件訂正発明1について
甲第1号証の記載事項アには、吸着塔Iに着目してみてみると、「プレッシャースイング吸着(PSA)方式により空気から窒素を分離する方法において、工程Aの吸着工程、工程Bの均圧化工程、工程Cの脱着工程、工程Dの均圧化工程を繰り返す」ことが記載され、この「均圧化工程」は、弁1、2、3、4を開くことによって行われることから「吸着塔の入口及び出口側同士を連結して行われる」ことが記載されるといえ、また、「均圧化工程」においては、空気を供給する弁7が閉じられていることから「原料空気の供給は止められている」とみれる。これらのことから、記載事項アを本件訂正発明1の記載振りに則して整理すると、甲第1号証には「吸着剤を充填した2塔の吸着塔を、吸着工程、均圧化工程、脱着工程、均圧化工程に順次切替えてプレッシャースイング吸着(PSA)方式により空気から窒素を分離する方法であって、均圧化工程は、原料空気の供給を止めて吸着筒の入口及び出口側同士を連結して行う方法」の発明(以下、「甲第1発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件訂正発明1と甲第1発明を対比すると、甲第1発明の「プレッシャースイング吸着(PSA)」、「均圧化工程」及び「脱着工程」は、夫々本件訂正発明1の「圧力変動吸着」、「均圧工程」及び「再生工程」に相当し、また、甲第1発明の「均圧化工程は、吸着筒の入口側同士を連結して行う」ことは、記載事項イを参酌すると、均圧化工程が、工程A、即ち吸着塔Iが吸着工程で、吸着塔IIが脱着工程、の完了後に原料供給弁1,2を開いて入口側同士を連結していることからみて、吸着工程を終えた吸着塔Iの原料供給弁と、脱着工程を終えた吸着塔IIの原料供給弁を開いて入口側同士を連結しているとみれるから、両者は、「吸着剤を充填した2筒の吸着筒を、吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程の4工程に順次切替えて空気から分離する圧力変動吸着分離方法であって、前記均圧工程は、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させる」点で一致し、次の点で相違している。
相違点a1:本件訂正発明1は「空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法」であるのに対し、甲第1発明は「空気から窒素を分離する」ものである点
相違点b1:本件訂正発明1は「均圧工程」が「前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行う」のに対し、甲第1発明では、「原料空気の供給を止めて吸着筒の入口及び出口側同士を連結して行う」点
相違点c1:本件訂正発明1は「前記再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出することで行う」のに対し、甲第1発明では、かかる構成が明らかでない点
そこで、これらの相違点について、順次検討する。
(a)相違点a1について、被請求人の提示する乙第1号証及び乙第2号証からみれば、空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法(酸素PSA)と空気から窒素を分離するもの(窒素PSA)とは、使用する吸着剤に違いがあり、その吸着剤は平衡分離型と速度分離型の特性の違いがないとはいえない。一方、酸素PSAと窒素PSAとで、吸着・均圧・再生・均圧工程の操作における各工程を全く同一の操作で行える根拠が明らかであるともいえない。しかしながら、酸素PSAと窒素PSAの互換性については、甲第2号証の記載事項イ及びエ、甲第4号証における上記「IV.2.」の「なお書き」、並びに資料刊行物の記載事項ウからみれば、夫々に応じた吸着剤の転換により窒素PSAを酸素PSAに転用することができないとまではいえない。
(b)相違点b1について、甲第3号証、資料刊行物に基づいて検討すると、
(b-1)甲第3号証の検討
甲第3号証の記載事項ア〜ケ及び記載事項セには「圧力変動吸着法(PSA法)により空気から窒素を選択的に吸着して酸素を分離する」方法に関し、吸着筒Aに着目すると「工程3及び工程8が均圧、工程7が製品ガス加圧」と記載され、「均圧」の工程について「吸着が終了した吸着筒と製品ガス加圧が終了した吸着筒の原料端部を連結して、原料ガスを導入しながら、前者の吸着筒から後者のものにガスを供給して両筒を均圧する」ことが、また「製品ガス加圧」の工程について「弁3A、5Aが閉じられ、弁4Aが開かれて、真空排気を止めるとともにパージ工程を終了したA筒の製品端部へ製品貯留タンクより製品ガスが供給されて加圧される」ことが記載されている。これらの記載からみると、甲第3号証には、均圧工程に関し「原料ガスを導入しながら、吸着が終了した吸着筒から製品ガス加圧が終了した吸着筒にガスを供給」することが記載されているといえる。これを操作手段という観点でみれば、甲第3号証には「原料ガスを導入すると共に吸着を終えた吸着筒のガスを導入する」均圧手段が開示されているとみれ、これは本件訂正発明1と共通するところもあるが、均圧工程においては吸着を終えた吸着筒の均圧対象となる筒は、甲第3号証では「製品ガス加圧が終了した筒」であるのに対し、本件訂正発明1の「再生を終えた筒」であり、また、甲第3号証の「製品ガス加圧」は「真空排気を止めて、製品ガスが供給されて加圧される」のであるのに対し、本件訂正発明1の「再生」は「吸着筒内のガスを大気に放出することで行う」(相違点c)のであるから、甲第3号証には、本件訂正発明1の相違点b1に係る構成が記載されているとはいえない。
このことについて、請求人は「製品ガス加圧工程」も再生工程として捉えられる旨主張(第1回口頭審理調書)するので、ここでみておくと、甲第3号証に記載された「製品ガス加圧」とは、記載事項クによれば「真空排気を止め、パージ工程を終了した吸着筒へ製品貯留タンクより製品ガスを供給し加圧する」ものであり、その操作によって「吸着筒の製品端部側から順次酸素分圧をより高め、パージ終了後も吸着筒製品端部側に吸着して残存している窒素ガスを脱着させて原料端部側に押しさげるとともに、一旦吸着筒製品端部より流出した製品ガスを再度吸着筒に戻して微量の窒素まで吸着剤に吸着させ」るものであり、「低窒素濃度の製品ガスを安定して得るためには欠く事の出来ない操作である」とみれることから、この「製品ガス加圧」は「吸着筒製品端部側に吸着して残存している窒素ガスを脱着させて原料端部側に押しさげる」意味合いにおいて再生をしているといえるが、そこでは「再生後の吸着筒が加圧され、製品ガスで加圧し、酸素分圧を高め、吸着筒製品端部より流出した製品ガスを再度吸着筒に戻して微量の窒素まで吸着剤に吸着させ」るものであるから、構成上の違いは上記したとおりであり、技術内容或いは技術的意義からみても甲第3号証の「製品ガス加圧工程」が本件訂正発明1の「再生工程」に相当しないことは明らかである。
そして、更に請求人は、口頭陳述要領書第12頁14〜23行で「甲第3号証の『A筒の原料端部からB筒の原料端部にA筒内のガスが原料空気とともに供給され』との下部均圧の動作を甲第1号証に適用することは格別困難を有しない」旨主張するので、この点も検討すると、確かに甲第3号証には上記主張の技術的事項が開示されていることは前述(均圧手段)のとおりであるが、甲第3号証の記載事項コに「製品ガス中の窒素の含有量を低減させる事・・その大きな発明の第一は吸着工程終了後の各筒間における筒内ガスの回収の方法、すなわち吸着(工程2)の終了した筒から製品加圧(工程7)による再生を終了した筒へのガスの移動、均圧の操作である」と製品ガス加圧と均圧操作との密接な関係が記載され、また、甲第3号証の「製品ガス加圧」の工程は、上記したとおり「低窒素濃度の製品ガスを安定して得るためには欠く事の出来ない操作である」ことからみて、製品ガス加圧操作を抜きにして均圧工程を採用することを予定するものでないことは明らかであるから、圧力変動吸着分離法が共通するからといって、甲第3号証の上記した「原料ガスを導入すると共に吸着を終えた吸着筒のガスを導入する」という均圧手段を直ちに製品ガス加圧のない甲第1発明に適用することができるとはいえない。
(b-2)資料刊行物の検討
資料刊行物の記載事項ア、イには「圧力揺動吸着法により空気から窒素を製造する」ことが記載される。また、記載事項エに「各塔は吸着、部分均等化、降圧、パージ、生成物再加圧およびフィード再加圧の諸工程を経てサイクルされる。・・・この部分”底部”均等化工程につづいて・・・」と記載され、この記載中「この部分”底部”均等化工程につづいて」の前段の記載からみて「部分均等化工程」が「部分換気とともにフィード再加圧」によって行われる均圧工程といえ、また、「部分均等化工程」は「降圧、パージ、生成物再加圧の工程」を経たものいえる。その「部分均等化工程」については同事項エに「再生された塔の最終加圧は、その吸着サイクルをすでに完了した塔の底部からの換気ガスと、オープンバルブ”1”および”2”を経由する圧縮フィード空気との実質的同時導入により吸着圧力の40%乃至80%に達するまで行われる」と記載される。また、記載事項ウには「ゼオライト類も使用されうる」旨が記載されている。これらのことから、ゼオライト類が使用できる「圧力揺動吸着法」において「均圧工程は、下部均圧であって原料空気と共に吸着工程の完了した塔内のガスを導入する」ことが資料刊行物に記載されているといえる。しかしながら、下部均圧する塔は、上記したとおり、再生である降圧、パージの工程に生成物再加圧を経た塔であり、また「生成物再加圧」は、記載事項エ及びオから吸着塔Aに着目してみると「バルブ2、5、6を開けて、生成物再加圧となり、その時にはバルブ1及び3が閉じられ」、その状態でバルブ6の開により「吸着塔Aは生成物タンクからの生成ガスにより再加圧されている」とみれる。そうすると、資料刊行物の「生成物再加圧」は実質的に甲第3号証に記載される「製品ガス加圧」と同じであるから、資料刊行物に記載された技術的事項を甲第1発明に適用するには、上記「(b-1)」で述べたと同じ阻害要因があり、困難と云わざるを得ない。
(b-3)なお、相違点b1に関し、請求人は、口頭審理陳述要領書第12頁下から3行〜第13頁11行で「本件特許明細書(特許公報)の第3頁左欄36行〜40行には『状態均圧工程において、原料空気の供給を継続しながら均圧を実施することにより、原料空気の供給分だけ筒内圧力を高めることができるが、原料空気を止めても均圧工程が短時間であるから同様の作用効果を得ることができる』旨記載されている。このことは、下部均圧工程における原料空気の供給の要否は、作用効果上格別の差異は無いことを意味している。・・・よって本件特許発明の下部均圧工程は、甲第1号証のPSAにおける下部均圧工程に、甲第3号証に記載のような、原料空気と共に導入する技術を適用することにより当業者に容易に行える」旨主張している。しかしながら、上記主張は、「短時間である」ことの前提を欠いたものであり、その記載から請求人が主張する「原料空気の供給の要否は、作用効果上格別の差異は無い」とは直ちにいえない。また、仮に「短時間」を前提にその様に云えたとしても、本件特許明細書の記載があるからといって、出願前に知られていたものではないし、また上記事項が出願前に周知のものであるともいえないのであるから、甲第1号証のPSAにおける下部均圧工程に、甲第3号証に記載の「原料空気と共に導入する技術」を適用することにより当業者に容易に行えることにはならない。
また、請求人は、口頭審理において「甲第3号証に短時間で行うとの記載があるから、組み合わせは容易である」旨(第1回口頭審理調書)主張する。そこで、甲第3号証をみると記載事項サに「窒素が脱着しないうちに出来るだけ短時間で行う」旨が記載され、第1ケース即ち原料端部から原料端部へガスを移動させるときには「1〜7秒で2筒間の圧力差を0.01kg/cm3に出来る」と記載されている。しかしながら、甲第3号証は、前述したとおり「製品ガス加圧」を行った後で均圧を行うものであるのであり、また、記載事項サからみると「原料端部から原料端部へガスを移動させるのに加えて、製品端部から製品端部へもガスを移動させる第2のケース」によって更に短時間に行えると示唆されているとみれ、甲第1発明において甲第3号証の「短時間に」行うようにしようとすると、入口側端と出口側端を双方連結して均圧を行っているものをわざわざ入口側端に変更しないとみる方が自然であるから、この主張も認めることができない。
また更に、請求人は、上申書第6頁10〜20行において「下部均圧は窒素PSAにも酸素PSAにも適用されていること、また下部均圧は、4工程からなるPSAにも5工程或いはそれ以上の工程数からなるPSAにも適用されていること。更に下部均圧の前段階の工程が、吸着工程や再生工程のPSAであろうと、或いは生成物再加圧工程のPSAであろうと適用されていること。逆に言えば、下部均圧工程において原料空気と同時に導入することは参考資料2のように5工程からなるPSAのみに実現される技術ではないこと、及びその前段階が生成物再加圧工程であるPSAのみに実現される技術でもないことは、明らかである」と主張している。しかしながら、「5工程からなるPSAのみに実現される技術でもない」とか「前段階が生成物再加圧工程であるPSAのみに実現される技術でもない」とかは「下部均圧」についていえても、「下部均圧工程において原料空気と同時に導入すること」についての根拠は依然不明であるから、この主張も認めることはできない。
(c)相違点c1について、相違点c1に係る「再生工程は、吸着筒内のガスの放出」については、甲第1号証の記載事項アには「脱着排気」とあるのみで、具体的な排気については記載がない。しかしながら、甲第1号証の記載事項ウに「排気の方法は、大気圧に開放してもよいし、また真空ポンプによって排気してもよい」旨記載されている。この記載は、甲第1発明に係る従来技術においてのものではないが、排気を大気開放で行うことが普通に行われていることを示すものであり、また、そのことは、排気手段として資料刊行物の記載事項エや乙第2号証の第128頁18〜20行の「現在実用化されているPSA酸素製造装置は、・・(1)加圧型(大気圧減圧、パージ脱着型) (2)真空型(真空脱着または真空パージ脱着型)」にみられるように周知慣用の常套手段であるので、大気圧排気と真空排気とが再生・吸着効率等で設計上違いがあるにせよ、甲第1発明において、大気開放とすることに格別困難があるとはいえない。
(d)以上したことに加え全体的にみると、相違点a1及びc1は独自にみれば上記(a)及び(c)でみたとおりであるが、本件訂正発明1は、圧力変動吸着分離法により酸素を製造する方法において、上記相違点b1の構成を採ることにより、相違点a1及びc1の構成と相俟って、均圧工程を短時間で終了させ、次の減圧パージ工程の時間をサイクルタイムに比べて十分に長く取ることにより、再生度を高め、製品酸素の純度を高めるとともに純度の安定性や回収率を向上させ、ひいては少ない吸着剤量で従来と同等以上の製品量を得ることができ、吸着筒や空気圧縮機等の小形化が図れ、装置全体を大幅に小形化するものであり、こうした技術思想は甲第1号証、甲第3号証及び資料刊行物のいずれからも見出すことはできないし、また、かかる構成によって上記したとおりの本件特許明細書に記載の効果を奏するものといえる。
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は甲第1発明と甲第3号証或いは資料刊行物に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
1-2.本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用し、本件訂正発明1の構成に加え、更に「均圧工程の時間」の構成を付加するものであるから、上記「1-1.」と同様の理由があることは明白であるから、甲第1発明と甲第3号証或いは資料刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
2.無効理由2について
2-1.本件訂正発明1について
甲第2号証には、記載事項キに実施例IIIとして「2つの容器10、12が8つの工程を行って圧力スイング法により窒素を製造する方法」が記載され、この「8つの工程」は容器10に着目すると「1:新原料で加圧、2:N2プロダクトの生産、3:上方拡散セルでプロダクトを精製、容器12へパージガスを提供、4:容器12と均圧化、5:大気へ直接排出、6:大気へ直接排出、7:上方拡散セルからの透過流でパージ、8:容器12と均圧化」であり、記載事項イを参酌して作用や弁動作からみれば「1:新原料で加圧、2:N2プロダクトの生産、3:上方拡散セルでプロダクトを精製、容器12へパージガスを提供、」が「吸着工程」に、「4:容器12と均圧化」が「均圧工程」に、「5:大気へ直接排出、6:大気へ直接排出、7:上方拡散セルからの透過流でパージ」が「再生工程」に、「8:容器12と均圧化」が「均圧工程」に相当するとみれる。そして、この「均圧工程」では、記載事項キ、クの実施例IIIの弁動作からみると「弁28が閉鎖され、弁32及び弁36が開放され、弁134及び弁136が開放されている」ので、「容器10は原料空気が止められ、原料の入口側同士と出口側同士の双方で均圧している」とみれる。また、「再生工程」では「弁40及び弁54が開放されて、その状態で弁121及び弁134が開放され、弁114、弁118が開放される」ので、「容器10は大気へ直接排気された後、その状態で上方拡散セルからの透過流でパージされる」とみれる。これらのことから、甲第2号証には、記載事項ア〜キを本件訂正発明1の記載振りに則して整理すると、「吸着剤を充填した2つの吸着容器を、吸着工程、均圧化工程、脱着工程、均圧工程に順次切替えて圧力スイング法により空気から窒素を分離する方法であって、均圧工程は、原料空気を止めて吸着容器筒の原料の入口側同士と出口側同士の双方を連結して行い、再生工程は直接大気排出して行う方法」の発明(以下、「甲第2発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件訂正発明1と甲第2発明を対比すると、甲第2発明の「圧力スイング」は、本件訂正発明1の「圧力変動吸着」に相当し、「均圧工程」については実施例IIIの記載から「吸着工程を終えた吸着筒と、前記再生工程を終えた吸着筒を均圧」していることは明らかであるから、両者は、「吸着剤を充填した2筒の吸着筒を、吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程の4工程に順次切替えて空気から分離する圧力変動吸着分離方法であって、前記均圧工程は、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させ、再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出する」点で一致し、次の点で相違している。
相違点a2:本件訂正発明1は「空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法」であるのに対し、甲第2発明では「空気から窒素を分離する」ものである点
相違点b2:本件訂正発明1は「均圧工程」が「吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に再生工程を終えた吸着筒に導入することで行う」のに対し、甲第2発明では「原料空気の供給を止めて吸着筒の入口側同士を連結して行う」と共に「出口側同士でも連結して行う」点
そこで、これらの相違点について検討すると、相違点a2については、上記「1.無効理由1について」の相違点a1と同じであるから、上記「1-1.(a)」でみたとおり、相違点a2は格別のものとはいえない。しかしながら、相違点b2については、前記「1.無効理由1について」の相違点b1と同じであるから、上記「1-1.(b)及び(d)」で述べた理由により、本件訂正発明1は、甲第2発明と甲第3号証或いは資料刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
2-2.本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用し、本件訂正発明1の構成に加え、更に「均圧工程の時間」の構成を付加するものであるから、上記「2-2.」と同様の理由があることは明白であるから、甲第2発明と甲第3号証或いは資料刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
3.無効理由3について
3-1.本件訂正発明1について
甲第3号証の記載事項アには、「本発明は、圧力変動吸着法を利用して空気から濃縮酸素ガスを得るためのものである」こと、また、「吸着剤を充填した3個の吸着筒A、B,Cに対し、以下の各工程を順次繰り返す」ことが記載され、その「以下の各工程」として、記載事項イ〜ケに「8つの工程」が記載されている。吸着筒Aに着目して、これらの記載事項ア〜ケ及びセをみてみると、この「8つの工程」は、「工程1:吸着、工程2:吸着、工程3:均圧、工程4:減圧、工程5:真空排気、工程6:パージ、工程7:製品ガス加圧、工程8:均圧」といえる。また「均圧」の「工程3」及び「工程8」は、記載事項エ及びケから「吸着を終えた吸着筒の原料端部から製品ガス加圧を終えた吸着筒の原料端部に原料空気とともに供給して」実施しているものといえる。そして、「工程5」にみられるように排気は真空ポンプにより「真空排気」されている(記載事項カ)。以上のことから、甲第3号証には、記載事項ア〜ク及びセを、本件訂正発明1の記載振りに則して整理すると、「吸着剤を充填した3個の吸着筒を、工程1:吸着、工程2:吸着、工程3:均圧、工程4:減圧、工程5:真空排気、工程6:パージ、工程7:製品ガス加圧、工程8:均圧の8つの工程を順次繰り返して圧力変動吸着方法により空気から酸素を分離する方法であって、均圧は吸着を終えた吸着筒の原料端部から製品ガス加圧を終えた吸着筒の原料端部に原料空気とともに供給して行い、排気は真空排気で行う方法」の発明(以下、「甲第3発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件訂正発明1と甲第3発明を対比すると、「工程」の作用や弁操作からみて甲第3発明の「工程1、2」は「製品ガスを流出している」ことから本件訂正発明1の「吸着工程」に相当し、また、「工程3、8」は「吸着が終了した吸着筒と製品ガス加圧が終了した吸着筒の原料端部を連結して、原料ガスを導入しながら、前者から後者にガスを供給して両筒を均圧する」ことから「均圧工程」とはいえる。しかしながら、この均圧工程については上記「1-1.(b)」で述べたとおり、本件訂正発明1とは均圧対象となる吸着筒の状態に違いがある。また、甲第3発明の「工程4〜7」については、「工程4」では、吸着筒Aは、弁1Aが閉じられて原料ガスの供給を止め、弁5Cの開放によりA筒の濃縮酸素ガスがC筒にパージさせながら真空排気され、A筒は減圧され、「工程5」では、弁5Cが閉じられ、弁3Aが開かれるので、A筒は真空排気される。「工程6」では、弁1Bが閉じられて弁5Aが開かれることから、B筒の製品端部から濃縮酸素ガスが供給され、パージされながら真空排気される。そして、「工程7」では、弁3A、5Aが閉じられ、弁4Aが開かれて、真空排気を止めるとともにパージ工程を終了したA筒の製品端部へ製品貯留タンクより製品ガスが供給されて加圧される。つまり、「工程4〜6」は真空排気によって減圧・排気・パージを行って脱着させて再生しているものとみれる。その意味で「工程4〜6」は、排気・パージを行う本件訂正発明1の「再生工程」に相当するものといえるが、「工程7」は排気を止めて製品ガスにより加圧するものであるから、「再生工程」とは別の工程としての「製品ガス加圧工程」を有するものとみれる。以上のことから、両者は「吸着剤を充填した吸着筒を、吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程を切替えて空気から分離する圧力変動吸着分離方法であって、均圧工程は、前記吸着を終えた吸着筒の原料供給弁と、吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させて、吸着を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に吸着筒に導入することで行う」点で一致し、次の点で相違している。
相違点a3:本件訂正発明1は「2筒の吸着筒を、吸着工程、均圧工程、再生工程、均圧工程の4工程に順次切替え」るのに対し、甲第3発明では「3個の吸着筒を、吸着工程、均圧工程、再生工程、製品ガス加圧工程、吸着工程の5つの工程を順次繰り返」す点
相違点b3:本件訂正発明1は「前記均圧工程は、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させて、前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行う」のに対し、甲1発明では「均圧は吸着を終えた吸着筒の原料端部から再生工程の後の製品ガス加圧工程を終えた吸着筒の原料端部に原料空気とともに供給して行う」点
相違点c3:本件訂正発明1は「前記再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出することで行う」のに対し、甲第3発明では、「排気は真空排気で行う」のである点
そこで、これら相違点について、さらに甲第3号証をみてみると、
相違点a3、b3については、いずれも甲第3発明が「製品ガス加圧工程」を有することに起因するので、併せて検討すると、甲第3発明の「製品ガス加圧」とは、記載事項カによれば「パージ工程を終了した吸着筒へ製品貯留タンクより製品ガスを供給し加圧する」ものであり、その操作により「吸着筒の製品端部側から順次酸素分圧をより高め、パージ終了後も吸着筒製品端部側に吸着して残存している窒素ガスを脱着させて原料端部側に押しさげるとともに、一旦吸着筒製品端部より流出した製品ガスを再度吸着筒に戻して微量の窒素まで吸着剤に吸着させ」るものであって、「低窒素濃度の製品ガスを安定して得るためには欠く事の出来ない操作」(記載事項シ)であり、また記載事項コで「発明の第一は吸着(工程2)の終了した筒から製品加圧(工程7)による再生を終了した筒へのガスの移動、均圧の操作である」と述べているように、製品加圧と均圧操作とは密接な関係を有し、甲第3発明は、製品ガス加圧操作を前提としたものであることは明らかであるから、甲第3発明において「製品ガス加圧工程」を除くことには、阻害要因があるといわざるを得ない。また、本件訂正発明1と甲第3発明とは、前記「1-1.(b)」でみたとおり「製品ガス加圧工程」それに伴い均圧工程の意味合いの違いがあるのであるから、「製品ガス加圧工程」を除き「再生工程を終えた段階」で上記した均圧操作を行うことが容易に想到し得るといえることにはならない。
したがって、相違点b3は上記以外にも吸着筒の数の違いがみられるが、これについては、圧力変動吸着法において2個以上の吸着筒で行うことは周知であるから、システム構築上工夫を要するとしても3個の吸着筒における工程操作を2個のものに適用できないとまではいえないし、また、相違点c3については、上記「1.無効理由1について」の相違点c1についての上記「1-1.(c)」で検討しているとおり、相違点c3については格別のものとはいえないものの、本件訂正発明1は、圧力変動吸着分離法により酸素を製造する方法において、上記相違点a3、b3の構成を採用することによって、相違点c3の構成と相俟って、酸素少ない吸着剤量で従来と同等以上の製品量を得ることができ、吸着筒や空気圧縮機等の小形化が図れ、装置全体を大幅に小形化することができる等本件特許明細書に記載する効果を奏するものといえる。
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は甲第3発明と同一であるとも、甲第3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
3-2.本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用し、本件訂正発明1の構成に加え、更に「均圧工程の時間」の構成を付加するものであるから、上記「3-1.」と同様の理由があることは明白であるから、本件訂正発明2は甲第3発明であるとも、甲第3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともすることができない。
4.無効理由4について
請求人は(i)特許請求の範囲請求項1に記載される「吸着工程」、「再生工程」の意味が不明瞭であり、また(ii)「吸着工程を終えた」「再生工程を終えた」の「終えた」がいかなる意味を奏するのか不明瞭である、と主張している。
(i)「吸着工程」及び「再生工程」に関し、本件特許明細書には「まず、初期の30秒間(工程1)は、一方の吸着筒A(以下、A筒と称する。)が吸着工程、他方の吸着筒B(以下、B筒と称する。)が再生工程の一部である減圧パージステップにある。この間、空気圧縮機2で所定圧力に圧縮された原料空気は、原料空気弁5aを介してA筒に導入されており、該空気中の窒素が吸着剤に吸着され、弱吸着成分である酸素が製品導出端から導出されている。A筒から導出された酸素は、一部がオリフィス4を経由してB筒の製品導出端からB筒内に導入され、残部が製品酸素となり製品導出弁6aを介して製品槽3に貯留される。一方B筒においては・・・前記オリフィス4を介して導入される酸素により筒内がパージされる。この時、B筒の原料供給弁5bと製品導出弁6a及びA筒の排気弁7aが閉じられている。」(特許公告公報第2頁第4欄20〜34行、記載x)、「6秒間の均圧工程を終えた後は、B筒が30秒間の吸着工程に入り、A筒が減圧パージ工程に入る(工程3)。即ち、B筒の原料供給弁5bと製品導出弁6b及びA筒の排気弁7aが開となり、他の弁が閉じられる。」(特許公告公報第2頁第4欄43〜46行、記載y)、及び第2図には「工程1でA筒が『吸着』、B筒が『減圧パージ』、工程3でA筒が『減圧パージ』、B筒が『吸着』」(特許公告公報第4頁、記載z)と記載されている。これらの記載からみれば、「吸着工程」は「原料空気を吸着筒に導入し、空気中の窒素を吸着剤に吸着し、弱吸着成分である酸素を製品導出端から導出する」ものといえる。一方、「再生工程」については、上記記載xの「再生工程の一部である減圧パージステップ」、上記記載yの「減圧パージ工程」並びに上記記載xの「減圧パージ」の記載のみからみると、「再生工程」と「減圧パージ工程」の関係が必ずしも明確とはいえない。しかしながら、口頭審理において被請求人は「再生工程の一部に減圧パージステップがあり、再生工程には、減圧をした後に減圧パージステップに入ってゆく意味合いで、減圧パージ工程と再生工程は同じ」旨(第1回口頭審理調書参照)釈明しており、更に、上記記載x及びyの弁の開閉をもみると「吸着筒Aでは、排気弁7aが開で他の弁、すなわち原料空気弁5aが閉じられている」ことから、「再生工程」は「原料供給端が閉鎖され、排気弁が大気に開放されている」もので「減圧パージ工程」と解することができる。以上のことから、「吸着工程」及び「再生工程」について当業者がその発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載がないとはいえない。
(ii)「吸着工程を終えた」「再生工程を終えた」の「終えた」の意味については、いずれも「均圧工程」に関連した構成であるので、「均圧工程」をみておくと、「均圧工程」については、特許明細書には「次の6秒間(工程2)は、両筒の原料供給端を連通させる均圧工程である。即ち、B筒の排気弁7bが閉じられるとともに両原料供給弁5a、5bが開かれてA筒内に所定圧力で充圧されていたガスがA筒の原料供給弁5aを逆流して空気圧縮機2から供給される原料空気と共にB筒の原料供給弁5bからB筒内に導入される。この時、A筒の製品導出弁6aは、開あるいは閉いずれの状態でも差支えない。」(特許公告公報第2頁第4欄35〜42行、記載w)と記載されている。この記載wからみると「吸着工程を終えた」とは「均圧工程に入る時点のB筒の排気弁7bを閉、A・B筒の原料供給弁5a、5bが開に操作された」とき、すなわち「A筒内のガスが逆流を開始した」ときを意味し、同様に「再生工程を終えた」とは「均圧工程に入る時点のB筒の排気弁7bを閉、A・B筒の原料供給弁5a、5bが開に操作された」とき、すなわち「排出が停止されて原料空気がA筒内のガスとともに導入された」ときとみれる。してみると、「吸着工程を終えた」「再生工程を終えた」についても、当業者がその発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載がないとはいえない。したがって、請求人の上記した記載不備の主張は採用することができない。
VIII.結び
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正後の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169状第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
圧力変動吸着分離方法
(57)【特許請求の範囲】
1.吸着剤を充填した2筒の吸着筒を、吸着工程,均圧工程,再生工程,均圧工程の4工程に順次切替えて空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法であって、前記均圧工程は、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させて、前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行い、前記再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出することで行うことを特徴とする圧力変動吸着分離方法。
2.前記均圧工程の時間を、サイクルタイムの1/30乃至1/4としたことを特徴とする請求項1記載の圧力変動吸着分離方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、圧力変動吸着分離方法に関し、特に医療用あるいは小型オゾナイザーの原料酸素の供給源として使用する小型の酸素発生装置に適した圧力変動吸着分離装置の運転方法に関する。
〔従来の技術〕
従来から、ゼオライトを吸着剤として使用し、加圧下での吸着と減圧下での再生(脱着)を交互に繰返すことにより、空気から酸素を分離できることが知られている。この方法は、いわゆる圧力変動吸着分離法(PSA法)として工業分野で広く使用されている。
上記PSA法の初期ものは、2個の吸着筒を用いて加圧吸着工程と減圧再生工程とをそれぞれの筒で交互に繰返す単純なものであり、製品の回収率も10〜20%程度であった。そのため、特公昭51-40549号公報には、吸着工程終了後の吸着筒の製品出口端に存在する製品品位のガスを、原料空気の供給を断った状態で徐々に抜取る工程(圧力均等化,並流減圧)を採用することで、それまでの2筒式のPSA法に比べて高い製品純度と回収率の向上が得られる方法が記載されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上述の公報に記載されたPSA法は、たとえば数m3/h以上の大量の酸素を製造する工業用を目的として開発されたものであり、経済性を高めるために回収率を極限まで高める配慮が成されている。即ち、筒内のガスの濃度分布を乱すことなく製品を取出すために、比較的ゆっくりとしたサイクルタイムを採用するとともに、再加圧にも長時間をかけてゆっくりと加圧することにより、筒内にシャープな濃度分布を形成するように配慮している。
そのため、一般的なPSA法による処理ガス量と吸着剤量及びサイクルタイムとの関係から上記方法では大量の吸着剤を必要とすることになる。
即ち、下記の式,

(上記式中、Wは吸着剤量[kg],Qは吸着容量[m3/kg],θはサイクルタイム[h]を示す。)
に示されるように、処理ガス量を一定とした場合、サイクルタイムを例えば2倍にすると吸着剤量が略2倍必要となるために、上記のごとく長いサイクルタイムで操作すると性能的には向上するものの、大型の吸着筒を必要とし、装置全体もかなり大型化するとともに、各種流量計や制御弁等を必要とし、配管も複雑化する。
一方、このPSA法が高濃度の酸素を連続的に、しかも安価に得られるという利点を有しているため、近年、医療用あるいは小型オゾナイザーの原料用の酸素源として注目されている。ところが、上述のごとく、従来行われてきたPSA法は、工業的な大型の装置が主体であって、このような装置をそのまま病院内や家庭内に持込むことはできず、またオゾナイザーに比べて酸素発生器の方がはるかに大きいという不都合があった。またこのようなPSA法をそのまま小形のPSA装置に適用しても所望の性能を得ることは困難であった。
そこで、本発明は、医療用等として用いるのに適した小形のPSA装置を簡単な構成で効率よく運転することのできる圧力変動吸着分離方法を提供することを目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
上記した目的を達成するために、本発明は、吸着剤を充填した2筒の吸着筒を、吸着工程,均圧工程,再生工程,均圧工程の4工程に順次切替えて空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法であって、前記均圧工程は、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させて、前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行い、前記再生工程は、吸着筒内のガスを大気に放出することで行うことを特徴とし、特に、前記均圧工程の時間を、サイクルタイムの1/30乃至1/4としたことを特徴としている。
〔作用〕
上記のごとく、両吸着筒の原料供給弁をそれぞれ開いて、両吸着筒を原料供給端で連通させて極めて短時間で均圧操作を行うことにより、吸着工程,均圧工程,再生工程,均圧工程の4工程に順次切替えて空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離のサイクルタイムを短くでき、装置の小形化が図れる。
〔実施例〕
以下、本発明を図面に基づいて、さらに詳細に説明する。
第1図は本発明を適用した圧力変動吸着分離装置の一実施例を示すもので、第2図はそのタイムスケジュールの一例である。
この圧力変動吸着分離装置1は、空気中の窒素を吸着する吸着剤、例えばゼオライトを充填した2基の吸着筒A,Bと、該吸着筒A,Bに原料空気(Air)を供給する空気圧縮機2と、生成した酸素ガス(O2)を貯留する製品槽3と、両吸着筒A,Bの製品導出端間を接続するオリフィス4、及び両吸着筒A,Bを吸着工程と再生工程とに切替えるために各吸着筒A,Bにそれぞれ設けられた原料供給弁5a,5b、製品導出弁6a,6b、排気弁7a,7bとにより構成されている。
以下、上記圧力変動吸着分離装置1の操作方法を、1サイクルタイムを72秒とした第2図に示すタイムスケジュールを参照しながら説明する。
まず、初期の30秒間(工程▲1▼は、一方の吸着筒A(以下、A筒と称する。)が吸着工程、他方の吸着筒B(以下、B筒と称する。)が再生工程の一部である減圧パージステップにある。この間、空気圧縮機2で所定圧力に圧縮された原料空気は、原料供給弁5aを介してA筒に導入されており、該空気中の窒素が吸着剤に吸着され、弱吸着成分である酸素が製品導出端から導出されている。
A筒から導出された酸素は、一部がオリフィス4を経由してB筒の製品導出端からB筒内に導入され、残部が製品酸素となり製品導出弁6aを介して製品槽3に貯留される。一方のB筒においては、排気弁7bを介して筒内のガスが大気に放出されて減圧されるとともに、前記オリフィス4を介して導入される酸素により筒内がパージされる。この時、B筒の原料供給弁5bと製品導出弁6b及びA筒の排気弁7aは閉じられている。
次の6秒間(工程▲2▼)は、両筒の原料供給端を連通させる均圧工程である。即ち、B筒の排気弁7bが閉じられるとともに両原料供給弁5a,5bが開かれてA筒内に所定圧力で充圧されていたガスがA筒の原料供給弁5aを逆流して空気圧縮機2から供給される原料空気と共にB筒の原料供給弁5bからB筒内に導入される。この時、A筒の製品導出弁6aは、開あるいは閉いずれの状態でも差支えない。
6秒間の均圧工程を終えた後は、B筒が30秒間の吸着工程に入り、A筒が減圧パージ工程に入る(工程▲3▼)。即ち、B筒の原料供給弁5bと製品導出弁6b及びA筒の排気弁7aが開となり、他の弁が閉じられる。そして30秒後に、上記同様の6秒間の均圧工程(工程▲4▼)に入る。以下順次この工程を繰返して空気中の酸素を分離して製品酸素を得る。
製品酸素(O2)は、前記製品槽3内の一部の酸素が製品として所定量連続的に導出されており、いずれか一方の吸着筒A,Bが吸着工程にあるとき(工程▲1▼,▲3▼)に製品槽3内の充圧が行われ、均圧工程(工程▲2▼,▲4▼)にあるときには、製品槽3内に充圧された酸素を放出する。従って、この製品槽3は、製品酸素供給先への製品圧力及び純度の安定のために必要なもので、上記均圧工程の間だけ製品の流量を維持できる容積を有していれば十分であり、均圧工程が短時間であることから小形のものを用いることができる。尚、供給先が適宜なバッファタンクを備えている場合には省略することもできる。
上記のごとく、吸着工程を終えた吸着筒と再生工程を終えた吸着筒とを両吸着筒の原料供給端で連通させて均圧工程を行うことにより、従来製品出口端側からゆっくりと時間をかけて行っていた均圧工程を極めて短時間で行うことが可能となる。加えて、均圧工程を短時間て終了させることにより、次の減圧パージ工程の時間をサイクルタイムに比べて十分に長く取ることが可能となる。これにより、筒内の吸着剤の再生度を高めることができ、製品純度を高めるとともに、純度の安定性や回収率も向上させることができる。
この均圧工程の時間は、吸着筒の容積や操作圧力,サイクルタイム等、即ち所望する製品量により異なるが、通常は、配管や弁等の抵抗を考慮しても2〜6秒間行えば十分であり、サイクルタイムの1/30乃至1/4とすることが好ましい。また、サイクルタイムは、吸着剤の再生時間を考慮すると10〜60秒、好ましくは30〜40秒が適当であり、製品量及び所望する装置の大きさ等により適宜選定することができる。
また、吸着工程に入る際に、従来の単純なPSA法では大気圧状態で切替えが行われ、吸着圧力が大きく変動するため、製品圧力を一定にして供給できるのは、0.3kg/cm2G程度であったが、本発明のごとく均圧工程を実施することにより吸着工程開始時の筒内圧力を高くできるので製品圧力を0.8kg/cm2G程度まで高めることができる。
さらに、上記均圧工程において、原料空気の供給を継続しながら均圧を実施することにより、原料空気の供給分だけ筒内圧力を高めることができるが、原料空気の供給を止めても均圧工程が短時間であるから同様の作用効果を得ることができる。
ここで、従来の単純なPSA法と本発明のPSA法とを比較した実験を行った結果を説明する。圧力変動吸着分離装置の運転条件は、吸着剤はMS-5Aを2.5kg,吸着圧力は1.5kg/cm2G,サイクルタイムは30秒とし、本発明方法においてのみ、サイクルタイム内にそれぞれ3秒間の原料供給均圧工程を実施した。その結果を次表に示す。

〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明は、吸着剤を充填した2筒の吸着筒を、吸着工程,均圧工程,再生工程,均圧工程の4工程に順次切替えて空気から酸素を分離する圧力変動吸着分離方法であって、前記均圧工程を、前記吸着工程を終えた吸着筒の原料供給弁と、前記再生工程を終えた吸着筒の原料供給弁とをそれぞれ開いて両吸着筒の原料供給端同士を連通させて、前記吸着工程を終えた吸着筒内に充圧されていたガスを、空気圧縮機から供給される原料空気と共に前記再生工程を終えた吸着筒に導入することで行い、前記再生工程を、吸着筒内のガスを大気に放出することで行うから、サイクルタイムを短くしても吸着剤を再生するのに十分な時間を取ることが可能となる。即ち、サイクルタイムを短くすることで、少ない吸着剤量で従来と同等以上の製品量を得ることができ、吸着筒や空気圧縮機等の小形化を図れ、装置全体を大幅に小形化することができる。
また均圧工程は、両吸着筒の原料供給端側の弁を開放して連通させることにより行うことができるので、均圧に細かい流量調製等を必要とせず、装置を単純化することができる。さらに吸着工程前の均圧工程により、吸着工程に入る吸着筒内の圧力を高めているので製品圧力も高くすることができる。
従って、本発明の方法を適用することにより、圧力変動吸着分離装置の大幅な小形化を図ることができ、医療用あるいは小型オゾナイザーの原料酸素の供給源として使用する小型の酸素発生装置として適した圧力変動吸着分離装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明を適用した圧力変動吸着分離装置の一実施例を示す系統図、第2図はそのタイムスケジュールである。
1…圧力変動吸着分離装置、2…空気圧縮機、3…製品槽、4…オリフィス、5a,5b…原料供給弁、6a,6b…製品導出弁、7a,7b…排気弁、A,B…吸着筒
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-02-24 
結審通知日 2005-02-25 
審決日 2005-03-09 
出願番号 特願平1-167307
審決分類 P 1 112・ 113- YA (B01D)
P 1 112・ 531- YA (B01D)
P 1 112・ 121- YA (B01D)
P 1 112・ 534- YA (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大熊 幸治  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 野田 直人
中村 泰三
登録日 1997-12-19 
登録番号 特許第2133999号(P2133999)
発明の名称 圧力変動吸着分離方法  
代理人 木戸 一彦  
代理人 木戸 良彦  
代理人 小川 勝男  
代理人 木戸 一彦  
代理人 木戸 良彦  
代理人 木崎 邦彦  

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