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審決分類 審判 全部無効 発明同一 無効としない H04L
管理番号 1118811
審判番号 無効2004-35094  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-02-18 
確定日 2005-06-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第3155240号「インターネット電話端末識別処理方法、その装置及びそのプログラムを記録した記録媒体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯

本件特許第3155240号に係る出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成10年2月13日(優先日、平成9年2月13日)の特許出願(特願平10-31535号)であって、平成13年2月2日に特許の設定登録(請求項の数13)がなされたものである。

これに対して、平成16年2月18日に請求人有限会社宮口研究所より、本件特許の請求項1乃至13に係る発明についての特許を無効とする、との審決を求める本件審判の請求がなされ、平成16年5月10日付けで被請求人(特許権者)日本電信電話株式会社より、本件審判の請求は成り立たない、との審決を求める答弁書が提出され、また平成16年8月4日付けで請求人より答弁書に対する弁駁書が提出されたものである。

【2】本件特許発明

本件特許の請求項1乃至13に係る発明は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
(1a) 複数のクライアント端末がそれぞれIPアドレスを有してLANに収容され、さらにLAN間が中継装置(ルーター)によって接続されるネットワークにおいて、
(1b)各LANにIPアドレスを有したサーバを接続するとともに、
(1c)各クライアント端末に対応した端末管理番号を、各サーバに対応したサーバ管理番号を付与し、
(1d)各サーバには同じLANに収容されたクライアント端末の端末管理番号とIPアドレスを対応づけた端末管理テーブル、ならびに異なるLANに設置されたサーバのサーバ管理番号とIPアドレスを対応づけたサーバ管理テーブルを設け、
(1e)第1のクライアント端末から同一LAN内の第2のクライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを同一LAN内のサーバに送信した場合には、前記同一LAN内のサーバは自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、該受信した問合せパケット中の端末管理番号に対応する第2のクライアント端末のIPアドレスを取得し、該取得した第2のクライアント端末のIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信し、
(1f)第1のクライアント端末から異なるLAN内の第2のクライアント端末を管理するサーバのサーバ管理番号を含む問合せパケットを同一LAN内のサーバに送信した場合には、前記同一LAN内のサーバは自サーバ内のサーバ管理テーブルを検索し、該受信した問合せパケット中のサーバ管理番号に対応する異なるLAN内の第2のクアイアント端末を管理するサーバのIPアドレスを取得し、該第2のクライアント端末を管理するサーバのIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信し、
(1g)次に、第1のクライアント端末は、中継装置を介して前記異なるLANのサーバに第2のクライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを送信すると、前記異なるLAN内のサーバは自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、該受信した問合せパケット中の端末管理番号に対応する第2のクライアント端末のIPアドレスを取得し、該取得した第2のクライアント端末のIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する
(1h)ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理方法。
【請求項2】
(2a)複数のクライアント端末がIPアドレスを有してLANに収容され、当該複数のクライアント端末のうちの少なくとも1つにおいて単一のIPアドレスを持つ端末接続装置にさらに複数個のアナログ通信機器が接続された機器により構成されるネットワークにおいて、
(2b)LANにIPアドレスを有したサーバを接続するとともに、
(2c)クライアント端末および前記端末接続装置に接続されたアナログ通信機器に対応して端末管理番号を、サーバに対応してサーバ管理番号を付与し、
(2d)サーバにはLANに収容されたクライアント端末および前記端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のIPアドレスとチャネル番号とを端末管理番号に対応づけた端末管理テーブルを設け、
(2e)第1のクライアント端末または端末接続装置に接続されたアナログ通信機器が、第2の端末接続装置に接続されたアナログ通信機器の端末管理番号を含んだ問合せパケットをサーバに送信すると、前記サーバは自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、該問合せパケット中の端末管理番号に対応するIPアドレスとチャネル番号とを取得し、該取得したIPアドレスとチャネル番号を含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する
(2f)ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理方法。
【請求項3】
(3a)請求項2におけるネットワークにおいて、
(3b)前記クライアント端末が、IPアドレスを持つ端末接続装置と複数のアナログ通信機器とからなり、
(3c)端末接続装置が、(3d)複数の前記アナログ通信機器を接続する手段と、(3e)自端末接続装置に接続された複数のアナログ通信機器を識別するためのチャネル番号を持ち、(3f)該チャネル番号毎に音声データの処理を行う手段と、(3g)該チャネル番号毎に異なるデータ通信用ポート番号を設定する手段とを持ち、(3h)自クライアント端末における1台のアナログ通信機器から通信を開始する時に、前記サーバに対し接続先クライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを送信し、(3i)該サーバからの前記相手クライアント端末である端末接続装置のIPアドレスと該相手側端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のチャネル番号を含んだ返答パケットを受信し、(3j)該返答パケット中のIPアドレスとチャネル番号のクライアント端末に対して自クライアント端末において使用するアナログ通信機器が受信時に使用するデータ受信用ポート番号を含む発呼パケットを送信し、(3k)該発呼パケット中に含めた受信用ポート番号にて相手クライアント端末からの音声データを受信し、(3l)該受信用ポート番号にて受信した音声データをアナログ音声に変換し、変換したアナログ音声を自端末接続装置内で該受信用ポート番号に対応したチャネル番号のアナログ通信機器に流し、(3m)自クライアント端末における該チャネル番号のアナログ機器から入力されたアナログ音声を音声データに変換し、該返答パケット中に含まれたIPアドレスの相手側端末接続装置に接続アナログ通信機器用の受信用ポート番号で相手クライアント端末に対し該音声データを送信するようにし、
(3n)サーバが、(3o)端末管理番号とこれに対応した端末接続装置のIPアドレスと該端末接続装置に接続された複数のアナログ機器を識別するチャネル番号とを記述し、(3p)端末接続装置および該端末接続装置に接続されたアナログ機器からなるクライアント端末から、相手クライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを受信し、(3q)該問合せパケット中の端末管理番号のIPアドレスとチャネル番号を検索し、(3r)該検索されたIPアドレスとチャネル番号とを含む返答パケットを問合せ元のクライアント端末に送信するようにした
(3s)ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理方法。
【請求項4】
(4a)請求項2におけるネットワークにおいて、
(4b)前記クライアント端末が、IPアドレスを持つ端末接続装置と複数のアナログ通信機器からなり、
(4c)端末接続装置が、(4d)自端末接続装置に接続されたアナログ通信機器にて入力された相手クライアント端末の番号が、端末管理番号かIPアドレス+チャネル番号かを判断する手段を持ち、(4e)該入力された相手クライアント端末の番号が端末管理番号と判断された場合には、サーバに対し相手クライアント端末のIPアドレスとチャネル番号の問合せを行い、(4f)該入力された相手クライアント端末の番号がIPアドレス+チャネル番号と判断された場合には、サーバへの問合せは行わず、入力されたIPアドレスとチャネル番号の相手側クライアント端末に、直接発呼パケットを送信するようにした
(4g)ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理方法。
【請求項5】 複数のクライアント端末がそれぞれIPアドレスを有してLANに収容され、さらにLAN間が中継装置(ルーター)によって接続されるネットワークにおいて、
各LANにIPアドレスを有したサーバが接続され、
各クライアント端末には、端末管理番号が、各サーバには、サーバ管理番号が付与されてなり、
各サーバが、
同じLANに収容されたクライアントの端末管理番号とIPアドレスを対応づけた端末管理テーブル、ならびに異なるLANに設置されたサーバのサーバ管理番号とIPアドレスを対応づけたサーバ管理テーブルを備えると共に、
第1のクライアント端末からの同一LAN内の第2のクライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを受信した場合には、自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、該問合せパケット内の端末管理番号に対応する第2のクライアント端末のIPアドレスを取得し、該取得した第2のクライアント端末のIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する手段と、
第1のクライアント端末からの異なるLAN内の第2のクライアント端末を管理するサーバのサーバ管理番号を含む問合せパケットを受信した場合には、自サーバ内のサーバ管理テーブルを検索し、当該サーバのサーバ管理番号に対応するIPアドレスを取得し、該取得した第2のクライアント端末を管理するサーバのIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する手段と、
異なるLANに収容されたクライアント端末からの中継装置を介して送られてきた自サーバが管理するクライアント端末の端末管理番号を受信した場合には、自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、当該端末の端末管理番号に対応するクライアント端末のIPアドレスを取得し、該取得したIPアドレスを含む返答パケットを問合せ元である、異なるLAN内のクライアント端末に返信する手段と
を備えた
ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理装置。
【請求項6】
(6a)複数のクライアント端末がIPアドレスを有してLANに収容され、当該複数のクライアント端末のうちの少なくとも1つが、1個のIPアドレスを持つ端末接続装置にさらに複数個のアナログ通信機器が接続された機器により構成されるネットワークにおいて、
(6b)LANにIPアドレスを有したサーバが接続され、
(6c)かつクライアント端末および前記端末接続装置に接続されたアナログ通信機器に対応して端末管理番号を、サーバに対応してサーバ管理番号を付与し、
(6d)サーバが、LANに収容されたクライアント端末および前記端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のIPアドレスとチャネル番号とを端末管理番号に対応づけた端末管理テーブルを備えると共に、
(6e)第1のクライアント端末または端末接続装置に接続されたアナログ通信機器からの第2の端末接続装置に接続されたアナログ通信機器の端末管理番号を含む問合せパケットを受信した際に、自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、該問合せパケット中の端末管理番号に対応するIPアドレスとチャネル番号とを取得し、該取得したIPアドレスとチャネル番号を第1のクライアント端末に返信する手段を備えた
(6f)ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理装置。
【請求項7】
(7a)請求項6におけるネットワークにおいて、
(7b)前記クライアント端末が、IPアドレスを持つ端末接続装置と複数のアナログ機器とからなり、
(7c)端末接続装置が、
(7d)複数の前記アナログ通信機器を接続する手段と、
(7e)自端末接続装置に接続された複数のアナログ通信機器を識別するためのチャネル番号を持ち、
(7f)該チャネル番号毎に音声データの処理を行う手段と、
(7g)該チャネル番号毎に異なるデータ通信用ポート番号を設定する手段と、
(7h)自クライアント端末における1台のアナログ通信機器から通信を開始する時に、前記サーバに対し接続先クライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを送信する手段と、
(7i)該サーバからの前記相手側端末接続装置のIPアドレスと該相手側端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のチャネル番号とを含んだ返答パケットを受信する手段と、
(7j)該返答パケット中のIPアドレスとチャネル番号のクライアント端末に対して自クライアント端末において使用するアナログ通信機器が受信時に使用するデータ受信用ポート番号を含む発呼パケットを送信する手段と、
(7k)該発呼パケット中に含めた受信用ポート番号にて相手クライアント端末からの音声データを受信する手段と、
(7l)該受信用ポート番号にて受信した音声データをアナログ音声に変換し、変換したアナログ音声を自端末接続装置内で該受信用ポート番号に対応したチャネル番号のアナログ通信機器に流す手段と、
(7m)自クライアント端末における該チャネル番号のアナログ通信機器から入力されたアナログ音声を音声データに変換し、該返答パケット中に含まれたIPアドレスの相手側端末接続装置に接続されたアナログ通信機器用の受信用ポート番号で相手クライアント端末に対し該音声データを送信する手段とを持つ
(7n)ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理装置。
【請求項8】
(8a)請求項6におけるネットワークにおいて、
(8b)前記クライアント端末が、IPアドレスを持つ端末接続装置と複数のアナログ通信機器とからなり、
(8c)サーバが、
(8d)端末接続装置のIPアドレスと該端末接続装置に接続された複数のアナログ通信機器を識別するチャネル番号とを、端末管理番号と対応させて記述する手段と、
(8e)クライアント端末または端末接続装置から、相手クライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを受信する手段と、
(8f)該問合せパケット中の端末管理番号により、相手クライアント端末のIPアドレスとチャネル番号を検索し取得する手段と、
(8g)該取得されたIPアドレスとチャネル番号を含む返答パケットを問合せ元のクライアント端末または端末接続装置に送信する手段とを持つ
(8h)ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理装置。
【請求項9】 請求項6におけるネットワークにおいて、
前記クライアント端末が、IPアドレスを持つ端末接続装置と複数のアナログ通信機器とからなり、
端末接続装置が、
自端末接続装置に接続されたアナログ通信機器にて入力された相手クライアント端末の番号が、端末管理番号かIPアドレス+チャネル番号かを判断する手段を持ち、
該入力された相手クライアント端末の番号が端末管理番号と判断された場合には、サーバに対し相手クライアント端末のIPアドレスとチャネル番号の問合せを行い、該入力された相手クライアント端末の番号がIPアドレス+チャネル番号と判断された場合には、サーバへの問合せは行わず、入力されたIPアドレスとチャネル番号の相手側クライアント端末に、発呼パケットを送信する手段を持つ
ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理装置。
【請求項10】 複数のクライアント端末およびサーバがそれぞれIPアドレスを有してLANに収容され、各クライアント端末に端末管理番号が、各サーバにサーバ管理番号が付与され、さらにLAN間が中継装置(ルーター)によって接続されるネットワークにおいて、クライアント端末およびサーバの処理方法が記録された記録媒体において、
当該記録媒体内に、
各サーバ用プログラムが、同じLANに収容されたクライアント端末の端末管理番号とIPアドレスとを対応づけた端末管理テーブル、ならびに異なるLANに設置されたサーバのサーバ管理番号とIPアドレスを対応づけたサーバ管理テーブルを持ち、
クライアント端末用プログラムが、第1のクライアント端末から同一LAN内の第2のクライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを同一LAN内のサーバに送信する機能を持ち、
サーバ用プログラムが、該問合せパケットを受信する機能と、端末管理テーブルを検索して該問合せパケット中の端末管理番号に対応する第2のクライアント端末のIPアドレスを取得する機能と、該取得したIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する機能を持ち、
クライアント端末用プログラムが、第1のクライアント端末から異なるLAN内の第2のクライアント端末を管理するサーバのサーバ管理番号を含む問合せパケットを同一LAN内のサーバに送信する機能を持ち、
サーバ用プログラムが、該問合せパケットを受信する機能と、サーバ管理テーブルを検索して該問合せパケット中のサーバ管理番号に対応する異なるLANのサーバのIPアドレスを取得する機能と、該取得したIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する機能を持ち、
サーバ用プログラムが、異なるLANのクライアント端末から端末管理番号を含む問合せパケットを受信した場合には、該問合せパケット中の端末管理番号に対応するIPアドレスを端末管理テーブルにて検索し、取得する機能と、該取得したIPアドレスを含む返答パケットをクライアント端末に返信する機能を持つ
ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理用プログラムを記録した記録媒体。
【請求項11】 複数のクライアント端末およびサーバがIPアドレスを有してLANに収容され、各クライアント端末に端末管理番号が、サーバにサーバ管理番号が付与され、当該複数のクライアント端末のうち少なくとも1つにおいて単一のIPアドレスを持つ端末接続装置に複数個のアナログ通信機器が接続された構成のネットワークにおいて、クライアント端末およびサーバの処理方法が記録された記録媒体において、
当該記録媒体内に、
サーバ用プログラムが、LANに収容されたクライアント端末および前記端末接続装置に接続されたアナログ通信機器に対応する端末管理番号と端末接続装置のIPアドレスと該端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のチャネル番号とを対応づけた端末管理テーブルを持ち、
クライアント端末用プログラムが、第1のクライアント端末から第2の端末接続装置に接続されたアナログ通信機器の端末管理番号を含む問合せパケットをサーバに送信する機能を持ち、
サーバ用プログラムが、端末管理テーブルを検索し、受信した該問合せパケット中の端末管理番号に対応する第2の端末接続装置のIPアドレスと該端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のチャネル番号を取得する機能と、該取得したIPアドレスとチャネル番号を含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する機能を持つ
ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理用プログラムを記録した記録媒体。
【請求項12】 請求項11におけるネットワークで、クライアント端末が、1つのIPアドレスを持つ端末接続装置と複数個のアナログ通信機器とから構成されるネットワークにおいて、端末接続装置およびサーバの処理方法が記録された記録媒体において、
当該記録媒体内に、
端末接続装置用プログラムが、端末接続装置に接続された複数のアナログ通信機器を識別するためのチャネル番号を設定する機能を持ち、該設定したチャネル番号毎に異なるデータ通信用ポート番号を設定する機能と、通信開始時にサーバに接続先の相手クライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを送信する機能と、該サーバからの前記相手クライアント端末のIPアドレスとチャネル番号を含んだ返答パケットを受信する機能と、該返答パケット中のIPアドレスとチャネル番号の相手クライアント端末に対し、自端末接続装置に接続されたアナログ通信機器が使用するデータ受信用ポート番号を含む発呼パケットを送信する機能と、該発呼パケット中に含まれるポート番号にて相手からの音声データを受信する機能と、該ポート番号にて受信した音声データをアナログ音声に変換し、変換したアナログ音声を自端末接続装置内で該受信用ポート番号に対応したチャネル番号のアナログ通信機器に流す機能を持ち、自端末接続装置に接続されたアナログ通信機器から入力されたアナログ音声を音声データに変換し、該返答パケット中に含まれたIPアドレスの相手側端末接続装置に接続されたアナログ通信機器用の受信用ポート番号で相手クライアント端末に対し該音声データを送信する機能を持ち、
サーバ用プログラムが、端末接続装置のIPアドレスと該端末接続装置に接続された複数のアナログ通信機器を識別するチャネル番号とを、端末管理番号と対応させて記述する機能と、クライアント端末または端末接続装置から、相手クライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを受信する機能と、該問合せパケット中の端末管理番号により、相手クライアント端末のIPアドレスとチャネル番号を検索し取得する機能と、該取得されたIPアドレスとチャネル番号とを含む返答パケットを問合せ元のクライアント端末または端末接続装置に送信する機能を持つ
ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理用プログラムを記録した記録媒体。
【請求項13】 請求項11におけるネットワークで、クライアント端末が、1つのIPアドレスを持つ端末接続装置と複数個のアナログ通信機器とから構成されるネットワークにおいて、端末接続装置およびサーバの処理方法が記録された記録媒体において、
当該記録媒体内に、
端末接続装置用プログラムが、自端末接続装置に接続されたアナログ通信機器にて入力された番号が、端末管理番号かIPアドレス+チャネル番号かを判断する機能を持ち、該入力された相手クライアント端末の番号が端末管理番号と判断された場合にはサーバに対し相手クライアント端末のIPアドレスとチャネル番号の問合せを行い、該入力された相手クライアント端末の番号がIPアドレス+チャネル番号と判断された場合には、サーバへの問合せは行わず、入力されたIPアドレスとチャネル番号の相手クライアント端末に発呼パケットを送信する機能を持つ
ことを特徴とするインターネット電話端末識別処理用プログラムを記録した記録媒体。」

なお、本件特許の請求項1乃至13に係る発明は、(i)インターネット電話端末識別処理方法に関する請求項1乃至4に係る発明、(ii)インターネット電話端末識別処理装置に関する請求項5乃至請求項9に係る発明、(iii)インターネット電話端末識別処理用プログラムを記録した記録媒体に関する請求項10乃至13という三つのカテゴリに分類され、請求項1、5、10に係る発明はカテゴリは異なるが実質的に同一の発明であり、同様に、請求項2、6、11に係る発明も、実質的に同一の発明であり、さらに、請求項3、12に係る発明も、実質的に同一の発明であり、請求項4、9、13に係る発明も、実質的に同一の発明であるから、便宜上、本件特許の請求項1乃至13に係る発明(以下、「本件特許発明1乃至13」という。)のうち、本件特許の請求項1〜4、7、8、及び、本件特許の請求項7、8が引用している本件特許の請求項6に係る発明については、請求人及び被請求人の主張を検討する際の便宜上、各請求項の発明を特定するための事項毎に、符号「(1a)〜(8h)」を付した。

【3】請求人の主張

(3-1)特許無効理由の要点(審判請求書2頁の「7.(2)特許無効理由の要点」の項参照)

請求人は、以下のような証拠方法を提出するとともに、特許無効理由の要点を、以下のとおり主張している。

本件特許第3155240号(以下、単に「本件特許」とする)は平成9(1997)年2月13日付け出願の特願平9-28659号を優先権として平成10(1998)年2月13日に出願されたものであり、その出願前に特許出願(平成9年12月5日)され、その出願後の平成11年3月30日に出願公開された特開平11-88438号公報(甲第1号証)に記載された発明と同一であると共に、その発明者及び出願人が相違しているので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない発明である。
よって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により特許無効とされるべきものである。

<証拠方法>

・甲第1号証…特願平9-350224号(特開平11-88438号公報参照)

(3-2)具体的理由の概要

(3-2-1)審判請求書における主張の概要

本件審判請求人は、審判請求書において、以下のとおり主張している。

i)証拠の説明(審判請求書21頁の「3-5.証拠の説明」の項参照)

甲第1号証(特開平11-88438号公報)は本件特許出願(平成10年2月13日)前の平成9年12月5日に出願され、平成11年3月30日に出願公開されたものであると共に、甲第1号証の優先日は平成8年12月5日であるのに対し、本件特許出願の優先日は平成9年2月13日である。

ii)本件特許発明1乃至13と甲第1号証との関係(審判請求書30〜31頁の「3-6-4.本件特許発明1乃至13と甲第1号証との関係」の項参照)

本件特許発明1、5及び10は、カテゴリーがそれぞれ方法、装置、媒体で相違しているが内容は実質的に同一であり、本件特許明細書(本件特許公報)に記載の実施例1に対応している。実施例1は甲第1号証の実施例10、18及び36と構成及び作用効果が同一であり、本件特許発明1、5及び10の内容は甲第1号証に記載の技術と同一である。なお、甲第1号証ではプログラムを記録した記録媒体には触れていないが、甲第1号証に示されている方法をソフト化して記録媒体に記録することは技術的に一般事項である。
また、本件特許発明2、6及び11は、カテゴリーがそれぞれ方法、装置、媒体で相違しているが内容は実質的に同一であり、本件特許公報に記載の実施例2に対応している。実施例2は甲第1号証の実施例10、18及び36と構成及び作用効果が同一であり、本件特許発明2、6及び11の内容は甲第1号証に記載の技術と同一である。
更に、本件特許発明3、7及び12は、カテゴリーがそれぞれ方法、装置、媒体で相違しているが内容は実質的に同一であり、本件特許公報に記載の実施例2及び3に対応している。実施例2及び3は甲第1号証の実施例10、18及び36と構成及び作用効果が同一であり、本件特許発明3、7及び12の内容は甲第1号証に記載の技術と同一である。なお、本件特許発明8は本件特許発明7に従属する装置であり、サーバ、記述手段、受信手段、検索取得手段及び送信手段が付加されているが、これらの手段はいずれも甲第1号証の実施例に開示されている。サーバの機能は、アクセス制御装置が変換表と協動して行っている。
更にまた、本件特許発明4、9、及び13はカテゴリーがそれぞれ方法、装置及び媒体で相違しているが内容は実質的に同一であり、本件特許公報に記載の実施例2及び3に対応している。実施例2及び3は甲第1号証の実施例10、18及び36と構成及び作用効果が同一であり、本件特許発明3、7、及び12の内容は甲第1号証に記載の技術と同一である。

(3-2-2)弁駁書における主張の概要

また、請求人は、弁駁書において、答弁書に対する反論として、概要、以下のとおり主張している。(なお、本件特許発明5、6、9〜13は、本件特許発明1〜4とカテゴリが異なるのみで、実質的に同一であるから、本件特許発明5、6、9〜13のみに関する部分は省略した。)

i)甲第1号証の実施例10、18、36について(弁駁書26頁28行〜27頁4行)

実施例18は甲第1号証に含まれており、実施例10における各種の通信回線間のIP通信を可能にするものであり、実施例10を基に実施例10の電話通信機能を発展させた発明である。甲第1号証においては、IPパケットを用いた電話通信システムは実施例10がその原型をなし、実施例18において電話端末は、電話回線或いは携帯電話回線などの各種の通信回線を経由して各種の端末とのIPパケットを用いた通信システムを発明し、実施例36は、変換表を発展させてドメイン名サーバを用いて電話番号を用いて通信相手先のIPアドレスの取得を行い、IPアドレスが付与されたIP端末間のIP電話通信を行い、IP端末と公衆電話網に接続された電話機との間の、より高度な電話通信の機能を備えた発明である。

ii)甲第1号証の実施例36に関する優先権の適用(弁駁書3頁下から3行〜4頁4行)

甲第1号証におけるIPパケットを用いた電話通信の発明は、甲第1号証の実施例10においてIPパケットを用いた電話通信の基本発明を行い、更に甲第1号証実施例10を基に、甲第1号証の実施例10のIPパケットを用いた電話通信技術に改善を加えて甲第1号証実施例36を発明したことは明らかである。従って、甲第1号証の実施例36は、特許法第41条第3項の規定による第29条の2本文が適用され、同適用に基づく『他の特許出願』に対して与えられる優先権が適用される。

iii)甲第1号証の実施例36におけるチャネル番号について(弁駁書6頁23行〜33行)

IP電話機20300-1は、通信相手先端末である電話機20520-1の電話番号を指定することにより、電話回線変換部20510-1が電話機20520-1と通信接続を行うためのチャネル番号を特定し、同時に、IP通信の技術規定であるRFCに規定されているポート番号がチャネル番号に対応付けられることを意味している。従って、本件特許におけるチャネル番号は、実施例36において実質的に発明されている。また、本件特許の実施例2乃至実施例4における端末管理テーブルのチャネル番号については、甲第1号証実施例36に記載の電話番号が電話機を識別するため、該電話番号は、電話回線変換部に接続する電話機を識別するチャネル番号と同等の識別子としての機能を含んでいる。

iv)甲第1号証実施例36におけるサーバ管理テーブルと端末管理テーブルについて(弁駁書7頁1行〜6行)

本件特許のサーバ管理番号及びサーバ管理テーブルは、実施例36のドメイン名サーバが管理するドメイン名であり、ドメイン名サーバが管理するドメイン名表である。本件特許の端末管理テーブルは、実施例36のドメイン名サーバにおけるチャネル番号の機能を含む電話番号をドメイン名として用いたドメイン名ツリーである。

v)本件特許発明1と甲第1号証の実施例10との対比(弁駁書28頁〜31頁の「(5)答弁書20〜34頁の「IV.件特許発明と甲第1号証との対比」に対する弁駁」の項参照)

請求人は、本件特許発明1の各構成要件について甲第1号証の実施例10と対比し、次のように主張している。

(1a)の構成要件について(弁駁書28頁〜29頁の「(5-1)(A1)に対して」の項参照)
実施例10における図35に記載のICSフレームインタフェース網は中継装置(ルータ)を有し、実施例10に記載のアクセス制御装置は1以上の電話機或いはISDN電話端末を収容し、IPアドレスが付与されている。従って、実施例10は(1a)の構成要件を全て具備している。

(1b)の構成要件について(弁駁書29頁の「(5-2)(A2)に対して」の項参照)
本件特許のサーバと実施例10の変換表は同一のものであり、同変換表はIPアドレスが付与されたアドレス制御装置内に存在している。従って、実質的に実施例10は(1b)の構成要件を全て具備している。

(1c)、(1d)の構成要件について(弁駁書29頁の「(5-3)(A3)に対して」の項、弁駁書29頁〜30頁の「(5-4)(A4)に対して」の項参照)
実施例10における図36で明らかなように、アクセス制御装置1010-1内にある処理装置1012-1は、ユーザ1060-1から送られた電話番号を基に、一次変換表1014-1ではなく変換表1013-1を識別して特定し、変換表1013-1から着信ICSネットワークアドレスを読み取る(甲第1号証段落[0120])。従って、実施例10においては、サーバ管理番号と実質的に同一の機能を「電話番号を基に変換表を識別する機能を有する処理装置1060-1」が備え、サーバ管理番号及びサーバ管理番号を管理するサーバ管理テーブルの機能と実質的に同一の機能を「電話番号を基に変換表を識別する機能を有する処理装置1060-1」が備え、実質的に(1c)、(1d)の構成要件を全て具備している。

(1e)の構成要件について(弁駁書30頁の「(5-5)(A5)に対して」の項参照)
甲第1号証の段落[0120]には、「…電話番号の情報を受け取った処理装置1012-1は、変換表1013-1の…着信ISCネットワークアドレス“5521”を読み取る。」と記述され、『取得した第2のクライアント端末のIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信』することと実質的に同一の機能を甲第1号証は有している。従って、実質的に実施例10は(1e)の構成要件を全て具備している。

(1f)、(1g)の構成要件について(弁駁書30頁の「(5-6)(A6)に対して」の項、弁駁書30頁〜31頁の「(5-7)(A7)に対して」の項参照)
実施例10における図35に記載のICSフレームインタフェース網は甲第1号証の実施例1乃至実施例9及び図1乃至図33で明らかなように中継装置を含み、そのため複数のIP通信回線、即ちLANで図34乃至図37に記載の機器が接続されている。例えば複数のアクセス制御装置はそれぞれ別々のIP通信回線、即ちLANと接続している。従って、甲第1号証の実施例1乃至10において、「同一LAN、異なるLAN」を全体として開示している。
また、甲第1号証は全体として『第1のクライアント端末は…返信する』構成要件(1f)や、『第1のクライアント端末は、中継装置を介して前記異なる…送信する』構成要件(1g)を備えている。

vi)本件特許発明1と甲第1号証の実施例36との対比(弁駁書31頁〜34頁の「(7)答弁書21〜22頁の(C)に対する弁駁」の項参照)

請求人は、本件特許発明1の各構成要件について甲第1号証の実施例36と対比し、次のように主張している。

(1a)、(1b)、(1c)の構成要件について(弁駁書31頁〜32頁の「(7-1)(C1)に対して」の項参照)
本件特許におけるサーバ管理番号と、実施例36に記載のドメイン名サーバが備えている他のドメイン名サーバを識別するドメイン名は同一のものである。
実施例36におけるIPパケットを用いた電話通信は、端末からの呼接続要求に伴う宛先電話番号を基に宛先端末のIPアドレスを取得するための端末とドメイン名サーバとの通信、及び端末間の電話通信に用いられるIPアドレスはICSユーザアドレスである。従って、本件特許のIPアドレスは甲第1号証のICSユーザアドレスに1対1で対応付けられ、本件特許のIPアドレスと甲第1号証のICSユーザアドレスは同一である。

(1d)の構成要件について(弁駁書32頁の「(7-2)(C2)に対して」の項参照)
甲第1号証段落[0395]に、「…変換表サーバ20040-1はICSユーザフレームP1201のデータ部に含まれる電話番号“1234-5678”をもとに、ドメイン名サーバ20130-1,20140-1,…に次々と問い合わせて、…ICSネットワークアドレスを取得する。…」と記載されており、ドメイン名サーバは他のドメイン名サーバを識別するドメイン名を識別子として備えている。従って、本件特許におけるサーバ管理番号と、ドメイン名サーバが備えている他のドメイン名サーバを識別するドメイン名は同一であり、サーバ管理番号の概念も開示されている。
同様に、本件特許のサーバ管理テーブルを持つサーバは、実施例36の変換表サーバ及び複数のドメイン名サーバである。
即ち、甲第1号証の図151の変換表サーバ20040-1は本件特許のサーバ管理テーブルを備えており、ドメイン名サーバ20130-1は本件特許のサーバ管理テーブルと端末管理テーブルの両方の機能を備えている。

(1f)、(1g)の構成要件について(弁駁書32頁〜33頁の「(7-3)(C3)に対して」の項、弁駁書33頁〜34頁の「(7-4)(C4)に対して」の項参照)
甲第1号証の図151には、ドメイン名サーバはそれぞれ中継装置で区切られた異なるIP通信回線(LAN)に接続されている。また、実施例36の段落[0395]に、「…変換表サーバ20040-1はICSユーザフレームP1201のデータ部に含まれる電話番号“1234-5678″をもとに、ドメイン名サーバ20130-1、…に次々と問い合わせて、…ICSユーザアドレスを取得する。…」と記載されている。実施例36の段落[0397]には、「…他の実施例で説明していると同様の原理により送信される。…」と記述されており、実施例36は『同一LAN内のサーバは…第1のクライアント端末に返信』する構成要件(1f)、『異なるLAN内のサーバは…第1のクライアント端末に返信』する構成要件(1g)を備えている。

vii)本件特許発明2と甲第1号証の実施例10との対比(弁駁書39頁〜41頁の「(10)答弁書25頁の(H)に対する弁駁」の項参照)

請求人は、本件特許発明2が実施例10に開示されている発明と実質上同一である理由として、次のように主張している。

アクセス制御装置(端末接続装置乃至クライアント端末に相当(本件特許において、端末接続装置とクライアント端末とは同等の装置))が、統合情報通信網ICS1000(大規模なLANに相当)に収容されており、アクセス制御装置1010-1や1010-2の内部のISDN回線変換部1029-1及び1029-2は少なくとも1つのIPアドレスを持ち、ISDN回線変換部からISDN回線を経由して端末1061-1及び1061-2に接続されており、端末1061-1及び1061-2はISDN端末であり、それらISDN端末の内部に複数の機器(アナログ通信機器)を含むネットワークとなっている。
また、ISDN端末としての1061-1及びユーザ1061-2は、複数のアナログ機器(アナログ電話機やファックス機器)を接続乃至収容できる。ISDN回線のチャネル識別子(例えば、B1、B2、Dチャネル)を切替えることにより、1061-1はそれぞれの内部の機器を切替えることができることは、公知の技術からみて自明である。甲第1号証において、1061-1内部の3つの機器に付与する電話番号がいずれも“03-5555-1111”の例であるが、“03-5555-1111”乃至“03-5555-1113”というように変更しても良い。1061-2内部の3つの機器に付与する電話番号も同様である。以上述べたように、実施例10における電話通信においてIPアドレスとチャネル番号とが管理されており、IPアドレスとチャネル識別子(チャネル番号)とを用いて1061-1及び1061-2の間の電話通信の処理手順が開示されている。

viii)本件特許発明2と甲第1号証の実施例36との対比(弁駁書36頁〜39頁の「(9)答弁書23〜24頁の(G)に対する弁駁」の項、弁駁書41頁〜43頁の「(11)答弁書25〜26頁の(I)に対する弁駁」の項、弁駁書43頁〜44頁の「(12)答弁書26〜27頁の(J)に対する弁駁」の項参照)

請求人は、本件特許発明2の各構成要件について甲第1号証の実施例36と対比し、次のように主張している。

(2a)の構成要件について(弁駁書36頁〜37頁の「(9-1)(G1)に対して」の項、弁駁書41頁〜42頁の「(11-1)(I1)に対して」の項参照)
電話回線変換部20510-1は他の実施例(例えば実施例10)で説明していると同様な機能と説明されており、また、実施例10の電話回線変換部1030-1の内部にIPアドレス“7721”が格納されていることから、電話回線変換部20510-1内部にIPアドレスが格納されていることは自明である。以上の説明から、アクセス制御装置20010-1(端末接続装置に相当)の内の電話回線変換部20510-1内部にIPアドレスが付与されており、電話回線変換部20510-1から電話回線20530-1を経て電話機20520-1(アナログ通信機器)に接続され、さらに、電話回線変換部20510-1から電話回線20530-2を経て構内交換機20600-1(アナログ通信機器)に接続される構成が示される。要約すると、単一のIPアドレスを有する端末接続装置から複数のアナログ通信機器に接続する例が開示されている。

(2b)の構成要件について(弁駁書37頁の「(9-2)(G2)に対して」の項参照)
甲第1号証の実施例36の段落[0394]乃至[0395]及び図151において、IP電話機20300-1は、「…ICSユーザフレームP1201をICSユーザアドレス“4600”の指す変換表サーバ20040-1に送る。…変換表サーバ20040-1は…電話番号“1234-5678″をもとにドメイン名サーバ20130-1…に次々と問い合わせて…ICSユーザアドレスを取得する。…」とある。
従って、『LANにIPアドレスを有したサーバ』は、変換表サーバ、或いはドメイン名サーバである。

(2c)の構成要件について(弁駁書37頁〜38頁の「(9-3)(G3)に対して」の項参照)
電話回線変換部20510-1は、アナログ通信機器に対応して端末管理番号を管理していることが開示されている。また、段落[0395]には、「…ドメイン名サーバ…に次々問い合わせて…」とあり、実施例36の各サーバに対応してサーバ管理番号は、各ドメインサーバを示すドメイン名として各ドメイン名サーバが保持していることが開示されている。

(2d)の構成要件について(弁駁書38頁〜39頁の「(9-4)(G4)に対して」の項、弁駁書42頁の「(11-2)(I2)に対して」の項参照)
本件特許の「LANに収容されたクライアント端末」は、甲第1号証の実施例36のIP電話端末等であり、本件特許の端末管理番号は甲第1号証実施例36の電話番号であり、本件特許の「アナログ機器のIPアドレスとチャネル番号とを端末管理番号に対応付けた」構成は実施例36に開示されている。
段落[0400]において電話回線変換部20510-1はISDN回線に接続できることが開示されており、更に、ISDN回線は例えば2B+D回線の例ではB1チャネル、B2チャネル、Dチャネル(公知技術)等の論理通信回線としてのチャネルの利用を提供している。このことから、アクセス制御装置20010-1内部の変換表20013-1(端末管理テーブルに相当)にチャネル識別子(B1チャネル、B2チャネル、Dチャネル)を追加することは容易に想到できる。

(2e)の構成要件について(弁駁書43頁の「(11-3)(I3)に対して」の項参照)
実施例36の電話番号はチャネル番号の機能を含んでおり、実質的にチャネル番号を含む返答パケットを受け取っている。

ix)本件特許発明3と甲第1号証の実施例10との対比(弁駁書45頁〜49頁の「(13-6)(K)、(K1)乃至(K5)に対して」の項参照)

請求人は、本件特許発明3の各構成要件について甲第1号証の実施例10と対比し、次のように主張している。

(3g)の構成要件について(弁駁書46頁下から2行〜47頁15行参照)
アクセス制御装置1010-1及びアクセス制御装置1010-2は、IPパケットを形成し送信し及び受信する機能を有しており、アクセス制御装置は前記IP通信装置に該当し、従って、アクセス制御装置1010-1とアクセス制御装置1010-2は、データ通信用ポート番号を付与する手段を有することは自ずと明らかである。
更に、ユーザ1061-1及び1061-2は、図34及び図31に示されるように、ISDN回線に接続しているISDN端末である。ISDN端末が複数の機器、例えばアナログ通信機器(アナログ電話機やアナログファックス機器)を収容できることは公知技術であり、ISDN端末1061-1及び1061-2がアナログ機器を収容していることは図34及び図31に示されている。ユーザ1061-1からユーザ1061-2への通信のとき、通信相手となるアクセス制御装置1010-2(端末接続装置相当)の前記IPアドレス“5522”と相手側となるアクセス制御装置1010-2(端末接続装置相当)にISDN回線経由で接続されるユーザ1061-1内部のアナログ通信機器のチャネル識別子(チャネル番号)は、ISDN回線内のチャネル(B1、B2、Dチャネル等)を認識して通信しているISDN回線接続部1029-1から取得できることは、ISDN端末が普及を始めた1990年当時において公知であるから、アクセス制御装置1010-1の内部においてチャネル識別子(チャネル番号)が記録されて用いられていることは明白である。以上のようになっているので、アクセス制御装置1010-1及びアクセス制御装置1010-2は、その内部に「チャネル番号毎に異なるデータ通信用ポート番号の設定する手段を有する」ことは自明である。

(3i)の構成要件について(弁駁書47頁〜48頁の「(3)(K2)に対して」の項参照)
送信側となるアクセス制御装置(端末接続装置相当)が、通信相手となるアクセス制御装置(端末接続装置相当)の内部にあるISDN回線変換部1029-2内部に設定するIPアドレス“5522”を取得し、更にISDN回線の接続先(通信相手)のユーザ1061-2内部の3つの機器(図31内)がISDN回線内のチャネル識別子が用いられて区分され、通信要求元へ返信して通信可能となっていることは自明である。

(3j)の構成要件について(弁駁書48頁の「(4)(K3)に対して」の項参照)
ユーザ1061-1からユーザ1061-2へ通信するとき、アクセス制御装置1010-1がユーザ1061-1内のアナログ通信機器を区別した上で、受信側アクセス制御装置1010-2に向けて、データ受信用ポート番号を含む通信を開始するIPパケット(発呼パケット)を送信するようになっていることは自明である。

(3m)の構成要件について(弁駁書48頁の「(5)(K4)に対して」の項参照)
送信側のアクセス制御装置1010-1はユーザ1061-1内のアナログ通信機器、更に通信相手となるユーザ1061-2内のアナログ通信機器とを区別した上で、受信側のアクセス制御装置1010-2に対して、データ受信用ポート番号を含むIPパケットに音声データを格納して送るようになっている。ユーザ1061-2の側からみると受信用ポート番号により指定された位置に、音声データを含むIPパケットが送られるようになっていることは自明である。

(3o)の構成要件について(弁駁書48頁の「(6)(K5)に対して」の項参照)
通信相手1061-2の電話番号“03-5555-2222”(端末管理番号に相当)とこれに対応したアクセス制御装置(端末接続装置に相当)のIPアドレス“5522”とに対して、1061-2内の複数のアナログ機器をチャネルにより区分できるISDN回線を経由して通信できるようになっていることは自明である。

x)本件特許発明3と甲第1号証の実施例36との対比(弁駁書49頁の「(14)答弁書28〜29頁の(L)に対する弁駁」の項参照)

請求人は、本件特許発明3の各構成要件について甲第1号証の実施例36と対比し、次のように主張している。

(3g)、(3i)、(3j)、(3m)の構成要件について(弁駁書49頁の「(14-1)(L1)に対して)」〜「(14-4)(L4)に対して)」の項参照)
甲第1号証の実施例36は、本件特許発明3の「…端末接続装置が、『該チャネル番号毎に異なるデータ通信用ポート番号を設定する手段』を持つこと」、「…端末接続装置が、サーバからの返答パケットによって『相手クライアント端末である端末接続装置のIPアドレス』と『相手側端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のチャネル番号』とを受信すること」、「…端末接続装置が、相手側となるクライアント端末に対して『自クライアント端末において使用するアナログ通信機器が受信時に使用するデータ受信用ポート番号を含む発呼パケット』を送信すること」、「…端末接続装置が、相手側の『アナログ通信機器が受信用ポート番号で相手クライアント端末に対して』音声データを送信すること」を実質的に開示している。

xi)本件特許発明4と甲第1号証の実施例10との対比(弁駁書49頁〜50頁の「(15)答弁書29〜30頁の(M)に対する弁駁」の項参照)

請求人は、本件特許発明4の各構成要件について甲第1号証の実施例10と対比し、次のように主張している。

(4d)、(4e)、(4f)の構成要件について(弁駁書50頁の「(15-2)(M1)〜(M3)に対して」の項参照)
アクセス制御装置(端末接続装置に相当)は、IPアドレス及びチャネル番号かを判断する手段を持つことが自明であり、アクセス制御装置(端末接続装置に相当)が、通信相手のアクセス制御装置内部に設定するIPアドレスとISDN端末が使うチャネル番号の問い合わせを行えることは自明である。また、アクセス制御装置1010-1(端末接続装置に相当)が変換表1013-1を用いて、IPアドレスとチャネル番号を取得してIPパケットを送信するようになっている。

xii)本件特許発明4と甲第1号証の実施例36との対比(弁駁書50頁〜51頁の「(16)答弁書30〜31頁の(N)に対する弁駁」の項参照)

請求人は、本件特許発明4の各構成要件について甲第1号証の実施例36と対比し、次のように主張している。

(4d)、(4e)、(4f)の構成要件について(弁駁書50頁〜51頁の「(16-1)(N1)に対して」乃至「(16-3)(N3)に対して」の項参照)
実施例36の段落[0396]には、「電話番号“1234-5678”を…投入する。…ドメイン名サーバ…に次々と問い合わせて…ICSユーザアドレス“4520”を取得する。…」とあり、ここでは、IP端末(本件特許の電話機+端末接続装置)がドメイン名サーバ及び相手先の電話回線部と連携して相手端末の番号が電話番号であると判断し、実質的にIPアドレス+チャネル番号と判断して電話通信を行っている。
また、実施例36の図151において、IP端末20300-1は、本件特許の電話機+端末接続装置及び本件特許の図7のクライアント端末A2に相当する。実施例36の発明当時(出願時)において、インターネットのWEB検索にIPアドレスを直接入力することに見られるように、通信相手先と通信を行う際に、IP端末が直接通信相手先のIPアドレスを入力することは公知の事実であり、IP端末20300-1が同様の機能をも持つと解することが相当である。
さらに、IP端末20300-1は電話番号入力部20310-1を備えており、実施例36の段落[0395]乃至[0397]においては、通信相手先の電話番号を入力して電話通信を行うようになっている。従って、IP端末20300-1は、本件特許の「入力番号を基にサーバへ問い合わせるか、或いはサーバへ問い合わせずに直接発呼パケットを送信する機能を有すると解される。
よって、(4d)、(4e)、(4f)の構成と甲第1号証は同一である。

xiii)本件特許発明7、8と甲第1号証の実施例10又は36との対比(弁駁書51頁〜52頁の「(17)答弁書31頁の(O)に対する弁駁」の項、弁駁書52頁〜53頁の「(18)答弁書32頁の(P)に対する弁駁」の項、及び弁駁書53頁の「(19)答弁書33頁の(Q)に対する弁駁」の項、弁駁書53頁〜54頁の「(20)答弁書33〜34頁の(R)に対する弁駁」の項参照)

これらの弁駁は、本件特許発明7、8(本件特許発明3の方法発明に対応する装置発明)に関するものであって、本件特許発明3に関する弁駁(上記「ix)本件特許発明3と甲第1号証の実施例10との対比」、「x)「本件特許発明3と甲第1号証の実施例36との対比」の項)と同様である。

xiv)請求項の記載不備(弁駁書54頁の「(21)請求項の記載不備に関して」の項参照)

請求項2、6には、「…アナログ通信機器のIPアドレスとチャネル番号とを端末管理番号に対応づけた端末管理テーブルを設け」…なる記載があるが、アナログ通信機器にディジタル通信機器向けのIPアドレスを実施することは技術的にみて意味が無いと考えられ、更に本件特許の実施例にも記載がない。

【4】被請求人の主張

(4-1)答弁の概要(答弁書3頁20行〜24行)

被請求人(特許権者)は、答弁書において、概要、以下のとおり答弁している。

請求人は、本件特許発明の各請求項に記載された技術的事項の各構成要素が、甲第1号証のどの部分の記載事項に対応するかを明らかにしてはおらず、本件特許発明は特許法第29条の2の規定にもとづいて、特許法第123条第1項第2号の規定により特許無効とされるべきものである旨の主張は、受け入れることができないものである。

(4-2)優先権主張の効果について(答弁書18頁〜19頁の「III.甲第1号証開示の実施例10と実施例36について」の項参照)

甲第1号証実施例10は、第3回目の国内優先による出願が行われた際に、図34におけるユーザ1061-2内の電話番号と図37におけるユーザ1061-1内の電話番号とに関して補正が行われているものである。即ち、第3回目の国内優先による出願がなされる以前においては、ユーザ1061-1において電話番号「03-5555-1111」が3個分記載され、ユーザ1061-2において電話番号「06-5555-2222」が3個分記載されていたもの(平成9年3月10日付けの出願の図34、図37参照)が、前記ユーザ1061-1において電話番号「03-5555-1111」と「03-5555-1112」と「03-5555-1113」とのように独立した異なる3個の電話番号が存在しているように補正され、かつ前記ユーザ1061-2において電話番号「06-5555-2222」と「06-5555-2223」と「06-5555-2224」とのように独立した異なる3個の電話番号が存在しているように補正されたもの(平成9年12月5日付けの出願の図34、図37参照)である。
また、甲第1号証の図151や図156の如き図面とそれに関連する説明からなる実施例36は、第3回目の国内優先による出願が行われた際に付加された実施例である。言うまでもなく、当該第3回目の国内優先による出願は平成9年12月5日になされている。
したがって、甲第1号証実施例36については、特許法第41条第3項の規定による第29条の2本文の規定の適用における『他の特許出願』に対して与えられる優先権主張の効果が認められるものではなく、現実の出願日である平成9年12月5日が、第29条の2本文における『他の特許出願』の出願日として認められるべきものである。
それに対して、本件特許発明も国内優先による出願がなされているが、本件特許発明の最初の出願である平成9年2月13日付けの特許出願の明細書等(乙第1号証)に示される(i)図12は本件特許発明の図12に該当し、(ii)特許請求の範囲[請求項2]は本件特許発明の[請求項1]に該当している。また(iii)同様に乙第1号証に示される[請求項3]は本件特許発明の[請求項2]に該当している。
したがって、甲第1号証実施例10と実施例36とは、本件特許発明の請求項1の発明と請求項2の発明とに対して、特許法第29条の2に言う、本件特許発明を「特許を受けることができない」ものとするに足る根拠とはなり得ない。

【5】当審の判断

(5-1)本件特許発明

本件特許発明1乃至13は、前記【2】の請求項1乃至13に記載されたとおりのものである。

(5-1-1)本件特許発明1、5、10の優先日について

本件特許発明1は、本件特許明細書に記載の実施例1(図7〜図11、段落【0039】〜【0051】参照)に対応し、本件特許明細書に記載の実施例1は、本件特許の優先権主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書等(乙第1号証)において、実施例2(図7〜図11、段落【0039】〜【0051】参照)として記載されていたものであり、両者の実施例は実質的に同一の内容である。
そして、本件特許発明1、5、10はカテゴリは異なるが実質的に同一の発明である。
よって、先の出願の願書に最初に添付した明細書等(乙第1号証)において、実施例2として記載されていた発明である本件特許発明1、5、10についての特許法第29条の2本文の規定の適用については、優先権の主張の効果が認められ、本件特許の優先日、平成9年2月13日に出願されたものとみなされる。

(5-1-2)本件特許発明2、6、11の優先日について

本件特許発明2は、本件特許明細書に記載の実施例2(図12、図13、段落【0052】〜【0058】参照)に対応し、本件特許明細書に記載の実施例2は、本件特許の優先権主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書等(乙第1号証)において、実施例3(図12、図13、段落【0052】〜【0059】参照)として記載されていたものに相当し、「ポート番号」を「チャネル番号」に変更しただけあるから、両者の実施例は実質的に同一の内容である。
そして、本件特許発明2、6、11はカテゴリは異なるが実質的に同一の発明である。
よって、先の出願の願書に最初に添付した明細書等(乙第1号証)において、実施例3として記載されていた発明である本件特許発明2、6、11についての特許法第29条の2本文の規定の適用については、優先権の主張の効果が認められ、本件特許の優先日、平成9年2月13日に出願されたものとみなされる。

(5-1-3)本件特許発明3、7、8、12、及び本件特許発明4、9、13の優先日について

本件特許発明3の(3c)〜(3m)におけるポート番号とチャネル番号に関する構成、本件特許発明4の(4c)〜(4f)におけるアナログ通信機器にて入力された相手クライアント端末の番号に関する構成は、それぞれ、本件特許の優先権主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書等(乙第1号証)には記載されていない事項であるから、本件特許発明3と本件特許発明4は、いずれも、先の出願の願書に最初に添付した明細書等(乙第1号証)には記載されていない発明である。
また、本件特許発明7と8とは、本件特許発明3の技術内容を端末接続装置の構成とサーバの構成とに分離したものであるから、本件特許発明3と同様、先の出願の願書に最初に添付した明細書等(乙第1号証)には記載されていない発明である。
そして、本件特許発明3、12はカテゴリは異なるが実質的に同一の発明であり、同様に、本件特許発明4、9、13も、実質的に同一の発明である。
よって、先の出願の願書に最初に添付した明細書等(乙第1号証)に記載されていない本件特許発明3、7、8、12、及び本件特許発明4、9、13についての特許法第29条の2本文の規定の適用については、優先権の主張の効果が認められず、本件特許の現実の出願日、平成10年2月13日に出願されたものとして扱う。

(5-2)証拠方法

(5-2-1) 甲第1号証(特願平9-350224号(特開平11-88438号公報参照))について

甲第1号証(特願平9-350224号(特開平11-88438号公報参照))の出願(以下、「先願」という。)は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成9年12月5日(優先日、平成8年12月6日、平成9年3月10日、平成9年7月8日)の特許出願であって、先願の優先権主張の基礎とされた平成8年12月6日付けの先の出願(丙第1号証:特願平8-326736号)(以下、単に「先の出願」という。)が本件特許出願前にされ、本件特許出願後に出願公開されている。
そして、先願の願書に最初に添付した明細書等には、以下のとおりの記載が認められる。

イ)「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は統合情報通信システムに関し、本発明の上記目的は、外部の複数のコンピュータ通信網ないしは情報通信機器を個々に接続するアクセス制御装置と、前記アクセス制御装置をネットワークする中継装置とを設け、一元的なアドレス体系で情報を転送してルーティングする機能を有し、前記複数のコンピュータ通信網ないしは情報通信機器の間で相互に通信できる構成とすることによって達成される。本発明は、従来例として示す図165に示す企業内部及び企業間の通信で用いられていた専用線の範囲を、破線で示す共通通信網として置き換えたIP技術をベースとするコンピュータ通信網に相当する。…
【0009】
【発明の実施の形態】図1は本発明の基本原理を模式的に示しており、本発明の統合情報通信システム(Integrated Information/Communication System:以下略して“ICS”とする)1は、コンピュータ情報/通信アドレスとして独自に定めたアドレスの付与規則を持っている。」(公報12欄33行〜13欄25行)

ロ)「【0111】実施例-10(X.25、FR、ATM、衛星通信での伝送と電話回線、ISDN回線、CATV回線、衛星回線、IPXフレームの収容): 本発明のICSにおけるユーザからのデータの形式は、RFC791又はRFC1883の規定に従うICSユーザフレームに限定されるものではなく、電話回線、ISDN回線、CATV回線、衛星回線、IPXの収容も可能である。また、ICSネットワーク内におけるICSネットワークフレームの中継網もX.25、FR、ATM、衛星通信等に対応が可能である。本発明においては、ATM交換機はセルリレー交換機を含み、ATM網はセルリレー網を含んでいる。
【0112】図34〜図37は本発明のICS1000におけるインタフェース変換の一例を示すものであり、アクセス制御装置1010-1及び1010-2、ICSフレームインタフェース網1050、X.25網1040、FR網1041、ATM網1042、衛星通信網1043、X.25/ICSネットワークフレーム変換部1031-1及び1031-2、FR/ICSネットワークフレーム変換部1032-1及び1032-2、ATM/ICSネットワークフレーム変換部1033-1及び1033-2、衛星/ICSネットワークフレーム変換部1034-1及び1034-2、電話回線変換部1030-1及び1030-2、ISDN回線変換部1029-1及び1029-2、CATV回線変換部1028-1及び1028-2、衛星回線変換部1027-1及び27-2、IPX変換部1026-1及び1026-2で構成されている。
【0113】ICSフレームインタフェース網1050は、RFC791又はRFC1883の規定に従うICSネットワークフレームをそのままの形式で転送する中継網である。X.25網1040はX.25形式のフレームを転送する中継網であり、ICSネットワークフレームをX.25形式のフレームに変換及び逆変換するためのX.25/ICSネットワークフレーム変換部1031-1及び1031-2を入出力部に持っている。FR網1041はフレームリレー形式のフレームを転送する中継網であり、ICSネットワークフレームをフレームリレー形式のフレームに変換及び逆変換するためのFR/ICSネットワークフレーム変換部1032-1及び1032-2を入出力部に持っている。ATM網1042はATM形式のフレームを転送する中継網であり、ICSネットワークフレームをATM形式のフレームに変換及び逆変換するためのATM/ICSネットワークフレーム変換部1033-1及び1033-2を入出力部に持っている。衛星通信網1043は衛星を利用して情報を転送する中継網であり、ICSネットワークフレームを衛星通信網のインタフェースに変換及び逆変換するための衛星/ICSネットワークフレーム変換部1034-1及び1034-2を入出力部に持っている。電話回線変換部1030-1及び1030-2は、電話回線とアクセス制御装置との間の物理層やデータリンク層(OSI通信プロトコルの第1層及び第2層)に相当する機能の変換及び逆変換する機能を有している。ISDN回線変換部1029-1及び1029-2は、ISDN回線とアクセス制御装置との間の物理層やデータリンク層に相当する機能の変換及び逆変換する機能を有している。CATV回線変換部1028-1及び1028-2は、CATV回線とアクセス制御装置との間の物理層やデータリンク層に相当する機能の変換及び逆変換する機能を有している。衛星回線変換部1027-1及び1027-2は、衛星回線とアクセス制御装置との間の物理層やデータリンク層に相当する機能の変換及び逆変換する機能を有している。IPX変換部1026-1及び1026-2は、IPXとアクセス制御装置との間の物理層やデータリンク層に相当する機能の変換及び逆変換する機能を有している。」(公報45欄34行〜46欄50行)

ハ)「【0118】(5)アクセス制御装置1010-1の電話回線変換部1030-1に接続されたユーザ1060-1が発信し、アクセス制御装置1010-2の電話回線変換部1030-2に接続されたユーザ1060-2との間で電話回線のインタフェースで通信を行う場合の動作を説明する。
【0119】ユーザ1060-1はVAN運用者に電話回線接続を申込む。VAN運用者はユーザ1060-1を接続するアクセス制御装置1010-1を特定し、ICS論理端子のICSネットワークアドレス“7721”を決定する。次にVAN運用者は、アクセス制御装置1010-1の変換表1013-1に発信ICSネットワークアドレス“7721”、送信者電話番号“03-5555-1234”、受信者電話番号“06-5555-9876”、着信ICSネットワークアドレス“5521”及び要求種別等の情報の設定を行う。本例では要求種別“5”を電話回線接続とした例を示している。同様に、アクセス制御装置1010-2の変換表1013-2に発信ICSネットワークアドレス“5521”、送信者電話番号“06-5555-9876”、受信者電話番号“03-5555-1234”、着信ICSネットワークアドレス“7721”及び要求種別等の情報の設定を行う。
【0120】ユーザ1060は電話番号“06-5555-9876”を送出する。電話回線変換部1030-1は、受信した電話番号を処理装置1012-1の読取り形式に変換して処理装置1012-1に送出する。ICSネットワークアドレス“7721”の電話回線変換部1030-1から電話番号の情報を受け取った処理装置1012-1は、変換表1013-1の発信ICSネットワークアドレス“7721”の要求種別を参照し、電話回線接続であることを認識し、着信電話番号“06-5555-9876”から着信ICSネットワークアドレス“5521”を読取る。アクセス制御装置1010-1は、着信ICSネットワークアドレスを“5521”、発信ICSネットワークアドレスを“7721”に設定されたネットワーク制御部と、電話の着信があることを伝えるための情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームとを作成し、ICS1000のネットワーク内に送出する。アクセス制御装置1010-1から送出されたICSネットワークフレームはICS1000のネットワーク内を転送され、アクセス制御装置1010-2に到達する。着信があることを伝えるための情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームを受信したアクセス制御装置1010-2は、ICSネットワークアドレス“5521”の電話回線変換部1030-2からユーザ1060-2に対し、着信を知らせるための信号を送出する。そして、ユーザ1060-2が応答の信号を送出する。
【0121】電話回線変換部1030-2は応答の信号を受信すると、ICS1000のネットワーク内を転送できる形式に変換する。アクセス制御装置1010-2は、着信ICSネットワークアドレスを“7721”、発信ICSネットワークアドレスを“5521”に設定されたネットワーク制御部と、電話の応答があったことを伝えるための情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームとを作成し、ICSネットワーク内に送出する。アクセス制御装置1010-2から送出されたICSネットワークフレームはICSネットワーク内を転送され、アクセス制御装置1010-1に到達する。応答があったことを伝えるための情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームを受信したアクセス制御装置1010-2は、ICSネットワークアドレス“7721”の電話回線変換部1030-1からユーザ1060-1に対して、応答を知らせるための信号を送出する。これにより、ユーザ1060-1とユーザ1060-2はアナログ信号(音声等)による全二重通信を開始し、ユーザ1060-1はアナログ信号を送出する。アナログ信号を受信した電話回線変換部1030-1は、アナログ信号をICSネットワーク内を転送可能なアナログ情報形式に変換する。
【0122】アクセス制御装置1010-1は、着信ICSネットワークアドレスを“5521”、発信ICSネットワークアドレスを“7721”に設定されたネットワーク制御部と、アナログ情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームとを作成し、ICS1000のネットワーク内に送出する。アクセス制御装置1010-1から送出されたICSネットワークフレームは、ICS1000のネットワーク内を転送されてアクセス制御装置1010-2に到達する。アナログ情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームを受信したアクセス制御装置1010-2は、ICSネットワークアドレス“5521”の電話回線変換部1030-2において、アナログ情報を電話回線のインタフェースに変換したアナログ信号としてユーザ1060-2に送出する。ユーザ1060-2から送出されたアナログ信号も同様の手順でユーザ1060-1に転送される。
【0123】
(6)アクセス制御装置1010-1のISDN回線変換部1029-1に接続されたユーザ1061-1が発信し、アクセス制御装置1010-2のISDN回線変換部1029-2に接続されたユーザ1061-2との間で、ISDN回線のインタフェースで通信を行う場合の動作を説明する。
【0124】ユーザ1061-1はVAN運用者にISDN回線接続の申込み、VAN運用者はユーザ1061-1を接続するアクセス制御装置1010-1を特定し、ICS論理端子のICSネットワークアドレス“7722”を決定する。次にVAN運用者は、アクセス制御装置1010-1の変換表1013-1に発信ICSネットワークアドレス“7722”、送信者ISDN番号“03-5555-1111”、受信者ISDN番号“06-5555-2222”、着信ICSネットワークアドレス“5522”及び要求種別等の情報の設定を行う。本例では、要求種別の“6”をISDN回線接続とした例を示している。同様にアクセス制御装置1010-2の変換表1013-2に発信ICSネットワークアドレス“5522”、送信者ISDN番号“06-5555-2222”受信者ISDN番号“03-5555-1111”、着信ICSネットワークアドレス“7722”及び要求種別等の情報の設定を行う。
【0125】ユーザ1061-1はISDN番号“06-5555-2222”を送出する。ISDN回線変換部1029-1は、受信したISDN番号を処理装置1012-1の読取り形式に変換して処理装置1012-1に送出する。ICSネットワークアドレス“7722”のISDN回線変換部1029-1からISDN番号の情報を受け取った処理装置1012-1は、変換表1013-1の発信ICSネットワークアドレス“7722”の要求種別を参照してISDN回線接続であることを認識し、着信ISDN番号“06-5555-2222”から着信ICSネットワークアドレス“5522”を読取る。アクセス制御装置1010-1は着信ICSネットワークアドレスを“5522”、発信ICSネットワークアドレスを“7722”に設定したネットワーク制御部と、ISDNの着信があることを伝えるための情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームとを作成し、ICS1000のネットワーク内に送出する。
【0126】アクセス制御装置1010-1から送出されたICSネットワークフレームはICS1000内を転送され、アクセス制御装置1010-2に到達する。着信があることを伝えるための情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームを受信したアクセス制御装置1010-2は、ICSネットワークアドレス“5522”のISDN回線変換部1029-2からユーザ1061-2に対して着信を知らせるための信号を送出する。そして、ユーザ1061-2が応答信号を送出する。ISDN回線変換部1029-2は、応答信号を受信するとICS1000内を転送できる形式に変換する。アクセス制御装置1010-2は、着信ICSネットワークアドレスを“7722”、発信ICSネットワークアドレスを“5522”にそれぞれ設定されたネットワーク制御部と、ISDNの応答があったことを伝えるための情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームとを作成し、ICS1000のネットワーク内に送出する。
【0127】アクセス制御装置1010-2から送出されたICSネットワークフレームはICS1000内を転送され、アクセス制御装置1010-1に到達する。応答があったことを伝えるための情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームを受信したアクセス制御装置1010-2は、ICSネットワークアドレス“7722”のISDN回線変換部1029-1からユーザ1061-1に対し、応答を知らせるための信号を送出する。これにより、ユーザ1061-1とユーザ1061-2はディジタル信号(音声等)による全二重通信を開始し、ユーザ1061-1はディジタル信号を送出する。アナログ信号を受信したISDN回線変換部1029-1は、アナログ信号をICS1000内を転送可能なディジタル情報形式に変換する。
【0128】アクセス制御装置1010-1は、着信ICSネットワークアドレ“5522”、発信ICSネットワークアドレスを“7722”にそれぞれ設定されたネットワーク制御部と、ディジタル情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームとを作成し、ICS1000に送出する。アクセス制御装置1010-1から送出されたICSネットワークフレームはICS1000内を転送され、アクセス制御装置1010-2に到達する。ディジタル情報を記述したネットワークデータ部を持つICSネットワークフレームを受信したアクセス制御装置1010-2は、ICSネットワークアドレス“5522”のISDN回線変換部1029-2において、ディジタル情報をISDN回線のインタフェースに変換したディジタル信号としてユーザ1061-2に送出する。逆にユーザ1061-2から送出されたディジタル信号も、同様の手順でユーザ1061-1に転送される。」(公報48欄41行〜52欄20行)

ニ)「【0394】実施例-36(電話番号による通信相手呼出し): 本実施例は電話番号をICSドメイン名として用いることにより、通信相手先とICSユーザIPフレームを送受することができ、ユーザIPフレームの内部にはディジタル化した音声が格納されており、これによって電話による公衆通信が出来る例を示す。本実施例では、日本・東京の電話番号“81-3-1234-5678”をドメイン名“5678.34.12.3.81”と見なす例により説明する。ここで、 “3”は東京を表わし、“81”は日本を表わす。図151により説明する。ICS20000-1はアクセス制御装置20010-1、20020-1、20030-1、中継装置20080-1、20090-1、ドメイン名サーバ20110-1、 20120-1、 20130-1、 20140-1、20150-1を含み、アクセス制御装置20010-1は回線部20011-1、処理装置20012-1、変換表20013-1、変換表サーバ20040-1を含む。変換表サーバ20040-1はアクセス制御装置20010-1の内部にあり、ICSネットワークアドレスは“7800”、ポート番号は“600”が付与されている。変換表サーバ20040-1は、ICS20000-1の外部からはICSユーザアドレス“4600”が付与されており、ドメイン名を入力するとICSユーザアドレスに変換して返送すると共に、ICSネットワークアドレスをアクセス制御装置20010-1の内部の変換表20013-1に登録する機能を有するICSサーバに見える。20210-1はLANであり、20211-1及び20300-1はICSユーザフレームを送受する機能を有するIP端末であり、それぞれICSユーザユーザアドレス“4520”、 “1200”を有し、ICSユーザ論理通信回線を経てICS20000-1に接続している。なお、IP端末20300-1は電話機として使用できるのでIP電話機と呼ぶ。IP電話機20300-1は電話番号入力部20310-1、IPアドレス蓄積部20320-1、音声デ一夕送受部20330-1、入力ボタン20340-1、音声入出力部20350-1を含む。
【0395】<<電話番号によるICSユーザアドレスの取得>> 電話番号“1234-5678”を入力ボタン20340-1から電話番号入力部20310-1へ投入する。電話番号入力部20310-1はICSユーザフレームP1201を生成し、ICSユーザ論理通信回線を経由してアクセス制御装置20010-1に届ける。ここで、ICSユーザフレームP1201は送信者ICSユーザアドレス“1200”、受信者ICSユーザアドレス“ 4600”であり、そのデータ部には入力ボタン20340-1から入力した電話番号“1234-5678”が含まれる。処理装置20010-1は変換表20013-1を見て、ICSユーザフレームP1201をICSユーザアドレス“4600”の指す変換表サーバ20040-1に送る。なお、本実施例の場合、変換表サーバ20040-1はアクセス制御装置20010-1の内部にあるので、ICS網通信機能を使わなくともよい。変換表サーバ20040-1はICSユーザフレームP1201のデータ部に含まれる電話番号“1234-5678”をもとに、ドメイン名サーバ20130-1、20140-1、20150-1に次々と問い合わせて、電話番号“1234-5678”をドメイン名と見なしたときの通信相手先の端末20211-1のICSネットワークアドレス“7920"及びICSユーザアドレス“4520”を取得する。
【0396】次に、変換表サーバ20040-1はここで取得した2つのアドレス“7920”及び “4520”を用いて変換表新規項目20030-1を作成し、ICSユーザアドレス“4520”についてはICSユーザフレームP1202を生成し、その内部にICSユーザアドレス“4520”を書込み、IP電話機20300-1に送信する。IP電話機20300-1は、受信したICSユーザフレームP1202に含まれるICSユーザアドレス“4520”と、始めに問い合わせている電話番号“1234-5678”とを組み合わせてIPアドレス記憶部20320-1に保持し、後日に電話番号“1234-5678” に対応するICSユーザアドレス“4520”が必要になった時点で用いる。前述の変換表新規項目20030-1は、ICSネットワークアドレス“7820”及びICSユーザアドレス “1200”を有するIP電話機20300-1と、電話番号“1234-5678”で指定される宛先の端末20211-1とを関係付ける。変換表新規項目20030-1は変換表20013-1の新しい要素として使用される。
【0397】<<ICSユーザアドレスを用いた通信>>音声入出力部20350-1から音声を入力し、その音声は音声データ送受部20330-1においてディジタルデータに変換されて、ICSユーザフレームP1210に格納され、電話番号“1234-5678”で指定される宛先、つまりICSユーザアドレス“4520”により定まる宛先の端末20211-1へ、他の実施例で説明していると同様の原理により送信される。以降は2つの端末20211-1及び20211-1の間で、ICSユーザフレームの送受による電話通信を行う。
【0398】<<ドメイン名サーバの詳細説明>>上記説明のうち、変換表サーバがドメイン名サーバに電話番号“1234-5678”を提示して、ICSネットワークアドレス“7920”及びICSユーザアドレス“4520”を取得する方法を詳しく説明する。図152は、国際電話番号をベースにしている階層数6の“ドメイン名トリー”の一実施例を示す図であり、トリーのレベル1に、ルートドメイン名“root-tel”を設け、その下位のトリーのレベル2に、ドメイン名“1”・・“44”・・“81”・・“90”・・が存在し、次に、例えばドメイン名“81”の下位にレベル3のドメイン名・・“3”・・“6”・・が存在し、次に、例えばドメイン名“3”の下位にレベル4のドメイン名・・“11”、“12”、“13”・・が存在し、次に、例えばドメイン名“12”の下位にレベル5のドメイン名・・“33”、“34”、“35”、・・が存在し、次に例えばドメイン名“34”の下位にレベル6のドメイン名・・“5677”、“5678”、“5679”・・が存在することを示している。図153は、ドメイン名“3”を扱うドメイン名サーバ20130-1の内部表20131-1を示しており、例えばドメイン名“3”の下位にドメイン名“12”を扱うドメインサーバ20140-1のICSネットワークアドレスが“8720”、ポート番号が“440”であることを示している。図154は、ドメイン名“12”を扱うドメイン名サーバ20140-1の内部表20141-1を示しており、例えばドメイン名“12”の下位のドメイン名“34”を扱うドメインサーバ20150-1のICSネットワークアドレスが“8820”、ポート番号が“440”であることを示している。また、図155は、ドメイン名“34”を扱うドメイン名サーバ20150-1の内部表20151-1を示しており、例えばドメイン名“5678”は、内部表20151-1の端点欄の表示が“YES”であることから、その下位のドメイン名が存在せず、この例ではドメイン名“5678.34.12.3.18.”に対応するICSネットワークアドレスが“8920”、ICSユーザアドレスが“4520”であることを示している。
【0399】<<ドメイン名サーバの呼び出し>>図156を参照して、変換表サーバ20040-1がドメイン名サーバ20130-1、20140-1、20150-1を呼び出して、ドメイン名“5678.34.12.3.81.”に対応するICSネットワークアドレス及びICSユーザアドレスを検索する手順を説明する。ここで、リゾルバ20041-1は、図153に示すレベル1のドメイン“root-tel”を扱うドメイン名サーバのICSネットワークアドレスをその内部に保持している。また、レベル2やレベル3のドメインを扱うドメイン名サーバと通信することが多い場合は、それら上位側のドメイン名サーバのICSネットワークアドレスをリゾルバ20041-1の内部に保持している。変換表サーバ20040-1は、内部のリゾルバ20041-1にドメイン名“5678.34.12.”を入力する。リゾルバ20041-1は、日本“81”の東京“3”を指すドメイン名“3.81.”を受け持つサーバのICSネットワークアドレス“8610”を保持しており、ICS網通信機能を用いて、ドメイン名“3”の配下にあるドメイン名“12”を含むICSフレーム20135-1をICSドメイン名サーバ20130-1へ送ると、ドメイン名“12”を扱うICSドメイン名サーバ20140-1のICSネットワークアドレス“8720”を含むICSフレーム20136-1を返信する。次に、リゾルバ20041-1は、ドメイン名“34”を含むICSフレーム20145-1をICSドメイン名サーバ20140-1へ送ると、ドメイン名“34”を扱うICSドメイン名サーバのICSネットワークアドレス“8820”を含むICSフレーム20146-1を返信する。次に、リゾルバ20041-1は、ドメイン名“5678”を含むICSフレーム20155-1をICSドメイン名サーバ20150-1へ送ると、ドメイン名“5678”に対応するICSネットワークアドレス“7920”及びICSユーザアドレス“4520”を含むICSフレーム20156-1を返信する。以上の手続きにより、変換表サーバ20040-1は、ドメイン名“5678.34.12.3.81.”に対応するICSネットワークアドレス“7920”とICSユーザアドレス“4520”を取得する。
【0400】<<電話回線接続>>回線部200011-1の内部に電話回線変換部20510-1があり、電話機20520-1は電話回線20530-1を経て電話回線変換部20510-1に接続される。電話回線変換部20510-1は他の実施例で説明していると同様な機能であり、電話回線20530-1から送信されて来る音声をディジタル化した音声に変換すると共に、データ部に格納したICSユーザフレームを生成する。また、逆の伝送方向、つまりICS網内から送られ、アクセス制御の回線部を経由するICSユーザフレームは、そのデータ部に格納されているディジタル化した音声が電話回線変換部20510-1においてアナログ音声に変換され、或いはISDN回線の場合はそのディジタル化した音声に変換される。このようになっているから、ICSドメイン名が付与されているIP端末20300-1と電話機20520-1とは、電話音声による通信を行うことができる。
(公衆電話網への接続)さらに、電話回線変換部20510-1と構内交換機20600-1は、電話回線20530-2により接続されている。構内交換機20600-1から出た構内電話回線20540-1から、電話機20520-2や20520-3が接続されており、例えば電話機20520-2とIP電話機20300-1との間で、電話による通信が可能である。また、構内交換機20600-1から電話回線20670-1を経て、公衆電話網あるいは国際電話網20680-1に接続できる。このようになっているから、電話機20520-4とIP電話機20300-1との間で、電話による通信が可能である。」(公報153欄11行〜157欄7行)

ホ)図34、図37には、電話回線変換部1030-1に接続されたユーザ1060-1に、「03-5555-1234」という1個の電話番号を付与し、かつ電話回線変換部1030-2に接続されたユーザ1060-2に、「06-5555-9876」という1個の電話番号を付与することが示されている。
また、図34、図37には、ISDN回線変換部1029-1に接続されたユーザ1061-1に、「03-5555-1111」、「03-5555-1112」、「03-5555-1113」という3個の異なるISDN番号を付与し、かつISDN回線変換部1029-2に接続されたユーザ1061-2に、「06-5555-2222」、「06-5555-2223」、「06-5555-2224」という3個の異なるISDN番号を付与することが示されている。

以上の記載によれば、先願の願書に最初に添付した明細書等には、実施例10に関する記載に基づく発明及び実施例36の記載に基づく発明として、次のような発明が記載されている。

実施例10に関する記載に基づく発明(以下、「先願発明1」という。)

「(10a)企業内部及び企業間の通信で用いられていた専用線の範囲を共通通信網として置き換えたIP技術をベースとする統合情報通信システム(Integrated Information/Communication System:以下略して“ICS”とする)において、
(10b)アクセス制御装置の電話回線変換部やISDN回線変換部に接続されたユーザに電話番号やISDN番号を付与し、
(10c)電話回線変換部やISDN回線変換部のICSネットワークアドレスを電話番号やISDN番号に対応づけたアクセス制御装置内の変換表を設け、
(10d)アクセス制御装置内の処理装置は、自電話回線変換部やISDN回線変換部に接続されたユーザからの異なるアクセス制御装置内の相手電話回線変換部やISDN回線変換部に接続されたユーザの電話番号やISDN番号を受け取ると、アクセス制御装置内の変換表を検索し、該電話番号やISDN番号に対応するICSネットワークアドレスを取得し、
(10e)アクセス制御装置は、
相手電話回線変換部に着信があることを伝えるICSネットワークフレームを送信し、
相手電話回線変換部からのアナログ信号をICSネットワーク内を転送可能なアナログ情報形式で受信し、
受信したアナログ情報を電話回線のインタフェースに変換したアナログ信号として自電話回線変換部に接続されたユーザに送出し、
自電話回線変換部に接続されたユーザから送出されたアナログ信号をICSネットワーク内を転送可能なアナログ情報形式に変換してICSネットワークアドレスの相手電話回線変換部に対し送信する、
(10f)電話通信方法。」

実施例36に関する記載に基づく発明(以下、「先願発明2」という。)

「(36a)企業内部及び企業間の通信で用いられていた専用線の範囲を共通通信網として置き換えたIP技術をベースとする統合情報通信システム(Integrated Information/Communication System:以下略して“ICS”とする)において、
(36b)アクセス制御装置にICSネットワークアドレスとICSユーザアドレスを有する変換表サーバを接続するとともに、
(36c)アクセス制御装置の回線部に接続されたIP電話機に電話番号を付与し、
(36d)ドメイン名サーバは、国際電話番号をベースにしている階層数6の“ドメイン名トリー”を構成し、各階層のドメイン名を扱うドメイン名サーバの内部表には、下位のドメイン名を扱うドメイン名サーバのICSネットワークアドレスとポート番号が対応付けられ、終点のドメイン名サーバの内部表には、下位のドメイン名にICSネットワークアドレスとICSユーザアドレスが対応付けられ、
(36e)第1の回線部に接続されたIP電話機が、第2の回線部に接続されたIP電話機の電話番号を含んだICSユーザフレームP1201を変換表サーバに送信すると、
前記変換表サーバは、ドメイン名サーバに問い合わせて、ドメイン名サーバ20130-1、20140-1、20150-1に次々と問い合わせて、該ICSユーザフレームP1201中の電話番号のICSネットワークアドレスとICSユーザアドレスを検索し、該問合せパケット中の電話番号に対応するICSネットワークアドレスとICSユーザアドレスとを取得し、該取得したICSネットワークアドレスとICSユーザアドレスを含むICSユーザフレームP1202をIP電話機に返信する、
(36f)電話通信方法。」

先願の願書に最初に添付した明細書等に記載の実施例10(図34〜図37、段落【0111】〜【0137】参照)は、先の出願において、実施例10(図31〜図34、段落【0109】〜【0140】参照)として記載されていたものである。
先の出願の願書に最初に添付した明細書等の記載をみると、「アクセス制御装置に接続されたユーザに電話番号やISDN番号を付与」という構成要件(10b)について、ユーザ1061-1に付与される「03-5555-1111」、「03-5555-1112」、「03-5555-1113」という3個の異なるISDN番号や、ユーザ1061-2に付与される「06-5555-2222」、「06-5555-2223」、「06-5555-2224」という3個の異なるISDN番号(甲第1号証の図34、図37参照)が、それぞれ、「03-5555-1111」という3個の同じISDN番号や、「06-5555-2222」という3個の同じISDN番号(甲第2号証の図31、図34参照)になっている点で先願と先の出願の願書に最初に添付した明細書等の記載が相違している。
しかし、「アクセス制御装置に接続されたユーザに電話番号やISDN番号を付与」という意味では、両者の記載内容は実質的に同一であり、先願と先の出願の双方の願書に最初に添付した明細書等に記載されていたと認められるから、先願発明1については、先の出願(優先日、平成8年12月6日)を他の出願として特許法第29条の2本文の規定を適用する。
また、先願の願書に最初に添付した明細書等に記載の実施例36(図151〜図156参照)は、先願の出願の際に付加されたものであり、先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載されていたものではないから、先願発明2については、先の出願(優先日、平成8年12月6日)ではなく、先願(出願日、平成9年12月5日)を他の出願として特許法第29条の2本文の規定を適用する。

(5-3)対比・判断

(5-3-1)本件特許発明1と先願発明1

(対比)

先願発明1の「アクセス制御装置」、「電話番号やISDN番号」、「変換表」は、それぞれ本件特許発明1の「クライアント端末」、「端末管理番号」、「端末管理テーブル」に相当している。
また、先願発明1は、企業内部及び企業間の通信で用いられていた専用線の範囲を共通通信網として置き換えたものであるから、「統合情報通信システム」が、本件特許発明1の「LAN」に相当していることは明らかである。
さらに、先願発明1の「電話通信方法」は、本件特許発明1と同様にIP技術をベースとする統合情報通信システムにおいて電話番号やISDN番号に対応づけた変換表を設けているから、本件特許発明1と同様、「インターネット電話端末識別処理方法」を伴うものであり、先願発明1の「ICSネットワークアドレス」が、本件特許発明1の「IPアドレス」に相当していることは明らかである。

しかしながら、本件特許発明1と先願発明1とは、少なくとも、以下の2点で相違している。

相違点1:
本件特許発明1では、
(1c)各クライアント端末に対応した端末管理番号を、各サーバに対応したサーバ管理番号を付与し、
(1d)各サーバには同じLANに収容されたクライアント端末の端末管理番号とIPアドレスを対応づけた端末管理テーブル、ならびに異なるLANに設置されたサーバのサーバ管理番号とIPアドレスを対応づけたサーバ管理テーブルを設けているのに対して、
先願発明1では、
異なるLANに設置されたサーバのサーバ管理番号とIPアドレスを対応づけたサーバ管理テーブルがない点。

相違点2:
本件特許発明1では、
(1f)第1のクライアント端末から異なるLAN内の第2のクライアント端末を管理するサーバのサーバ管理番号を含む問合せパケットを同一LAN内のサーバに送信した場合には、前記同一LAN内のサーバは自サーバ内のサーバ管理テーブルを検索し、該受信した問合せパケット中のサーバ管理番号に対応する異なるLAN内の第2のクアイアント端末を管理するサーバのIPアドレスを取得し、該第2のクライアント端末を管理するサーバのIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信し、
(1g)次に、第1のクライアント端末は、中継装置を介して前記異なるLANのサーバに第2のクライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケットを送信すると、前記異なるLAN内のサーバは自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、該受信した問合せパケット中の端末管理番号に対応する第2のクライアント端末のIPアドレスを取得し、該取得した第2のクライアント端末のIPアドレスを含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する
のに対して、
先願発明1では、
クラアント端末の端末管理番号に対応するIPアドレスを問合わせているが、異なるLAN内のクラアント端末の端末管理番号に対応するIPアドレスを問合わせる前に、そのクライアント端末を管理する異なるLANのサーバのIPアドレスを問合わせるという二段階のIPアドレスの問い合わせをしていない点。

(検討)

本件特許発明1の「サーバ管理番号」に関する(1c)、(1d)の構成要件、及び「異なるLAN」に関する(1f)、(1g)の構成要件についての請求人の主張は、要するに、次のようなものである(上記「(3-2-2)v)本件特許発明1と甲第1号証の実施例10との対比」の項参照)。

(1c)、(1d)の構成要件について
実施例10における図36で明らかなように、アクセス制御装置1010-1内にある処理装置1012-1は、ユーザ1060-1から送られた電話番号を基に、一次変換表1014-1ではなく変換表1013-1を識別して特定し、変換表1013-1から着信ICSネットワークアドレスを読み取る(甲第1号証段落[0120])。従って、実施例10においては、サーバ管理番号と実質的に同一の機能を「電話番号を基に変換表を識別する機能を有する処理装置1060-1」が備え、サーバ管理番号及びサーバ管理番号を管理するサーバ管理テーブルの機能と実質的に同一の機能を「電話番号を基に変換表を識別する機能を有する処理装置1060-1」が備え、実質的に(1c)、(1d)の構成要件を全て具備している。

(1f)、(1g)の構成要件について
実施例10における図35に記載のICSフレームインタフェース網は甲第1号証の実施例1乃至実施例9及び図1乃至図33で明らかなように中継装置を含み、そのため複数のIP通信回線、即ちLANで図34乃至図37に記載の機器が接続されている。例えば複数のアクセス制御装置はそれぞれ別々のIP通信回線、即ちLANと接続している。従って、甲第1号証の実施例1乃至10において、「同一LAN、異なるLAN」を全体として開示している。
また、甲第1号証は全体として『第1のクライアント端末は…返信する』構成要件(1f)や、『第1のクライアント端末は、中継装置を介して前記異なる…送信する』構成要件(1g)を備えている。

しかし、先願の実施例1乃至10において、「同一LAN、異なるLAN」を全体として開示しているとしても、先願の段落[0120]の「…電話番号の情報を受け取った処理装置1012-1は、変換表1013-1の…着信ICSネットワークアドレス“5521”を読み取る。」とは、電話番号に対応する着信ICSネットワークアドレスを問い合わせる一段階のIPアドレスの問合わせであって、先願発明1の「アクセス制御装置内の処理装置」は、内蔵している変換表(本願の「クライアント端末を管理するサーバ」に相当)にIPアドレスを問い合わせているだけであり、異なるLAN内の第2のクライアント端末の端末管理番号に対応するIPアドレスを取得するために、異なるLAN内のサーバのIPアドレスの問い合わせ後に、そのサーバに異なるLAN内のクライアント端末のIPアドレスを問い合わせるという二段階のIPアドレスの問い合わせを行っていない。
しかも、本件特許発明1は、そのような二段階のIPアドレスの問い合わせを、「異なるLAN内の第2のクライアント端末を管理するサーバのサーバ管理番号を含む問合せパケット」、「異なるLAN内の第2のクアイアント端末を管理するサーバのIPアドレスを含む返答パケット」、「異なるLAN内の第2のクライアント端末の端末管理番号を含む問合せパケット」、「第2のクライアント端末のIPアドレスを含む返答パケット」という問い合わせ・応答パケットにより行っている。

そして、これらの相違点によって、本件特許発明1は、インターネット電話等を利用する場合に、LAN内電話番号(サーバー管理番号+端末管理番号)という電話番号的な数字を入力することで相手端末を指定することが可能となるという新たな効果を奏するものであり、これらの相違点は、技術常識を参酌することにより先願と先の出願の双方の願書に最初に添付した明細書等に記載されていた事項から導き出せるものでなく、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であるという証拠もないから、本件特許発明1と先願発明1とは実質的に同一であるとは認められない。

(5-3-2)本件特許発明2と先願発明1

(対比)

先願発明1の「アクセス制御装置」、「電話回線変換部やISDN回線変換部」、「ユーザ」、「電話番号やISDN番号」、「変換表」は、それぞれ本件特許発明2の「クライアント端末」、「端末接続装置」、「アナログ通信機器」、「端末管理番号」、「端末管理テーブル」に相当している。
また、先願発明1は、企業内部及び企業間の通信で用いられていた専用線の範囲を共通通信網として置き換えたものであるから、「統合情報通信システム」が、本件特許発明2の「LAN」に相当していることは明らかである。
さらに、先願発明1の「電話通信方法」は、本件特許発明2と同様にIP技術をベースとする統合情報通信システムにおいて電話番号やISDN番号に対応づけた変換表を設けているから、本件特許発明2と同様、「インターネット電話端末識別処理方法」を伴うものであり、先願発明1の「ICSネットワークアドレス」が、本件特許発明2の「IPアドレス」に相当していることは明らかである。

しかしながら、本件特許発明2と先願発明1とは、少なくとも、以下の点で相違している。

相違点:
本件特許発明2では、
(2d)サーバにはLANに収容されたクライアント端末および前記端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のIPアドレスとチャネル番号とを端末管理番号に対応づけた端末管理テーブルを設け、
(2e)第1のクライアント端末または端末接続装置に接続されたアナログ通信機器が、第2の端末接続装置に接続されたアナログ通信機器の端末管理番号を含んだ問合せパケットをサーバに送信すると、前記サーバは自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、該問合せパケット中の端末管理番号に対応するIPアドレスとチャネル番号とを取得し、該取得したIPアドレスとチャネル番号を含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する
のに対して、
先願発明1では、
サーバが、クライアント端末および前記端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のIPアドレスを端末管理番号に対応づけ、端末管理番号に対応するIPアドレスを取得しているが、チャネル番号を端末管理番号に対応づけておらず端末管理番号に対応するチャネル番号を取得していない点。

(検討)

本件特許発明2の「チャネル番号」に関する(2d)、(2e)の構成要件についての請求人の主張は、要するに、次のようなものである(上記「(3-2-2)vii)本件特許発明2と甲第1号証の実施例10との対比」の項参照)。

ISDN回線のチャネル識別子(例えば、B1、B2、Dチャネル)を切替えることにより、ユーザ1061-1はそれぞれの内部の機器を切替えることができることは、公知の技術からみて自明であるから、実施例10における電話通信においてIPアドレスとチャネル番号とが管理されており、IPアドレスとチャネル識別子(チャネル番号)とを用いてISDN端末1061-1及び1061-2の間の電話通信の処理手順が開示されている。

しかし、先願発明1において、ISDN回線のチャネル識別子(例えば、B1、B2、Dチャネル)を切替えることにより、ユーザ1061-1はそれぞれの内部の機器を切替えることが自明だとしても、先願発明1のアクセス制御装置の処理装置内の変換表(本願の「クライアント端末を管理するサーバ」に相当)ではチャネル番号を端末管理番号に対応付けていない。
しかも、本件特許発明2のサーバは、自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、端末管理番号に対応するIPアドレスとチャネル番号を取得し、該取得したIPアドレスとチャネル番号を含む返答パケットを返信している。
そして、この相違点によって、本件特許発明2は、1個のIPアドレスを持つ1台の端末接続装置に接続した複数のインターネット電話端末とLAN電話番号を端末接続装置のIPアドレスとチャネル番号により管理することで、1個のIPアドレスを持つ1台の端末接続装置に接続した複数のインターネット電話端末を正しく識別することが可能となるという新たな効果を奏するものであり、この相違点は、技術常識を参酌することにより先願と先の出願の双方の願書に最初に添付した明細書等に記載されていた事項から導き出せるものでなく、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であるという証拠もないから、本件特許発明2と先願発明1とは、実質的に同一であるとは認められない。

(5-3-3)本件特許発明3、4と先願発明1

本件特許発明3、4は、それぞれ、本件特許発明2を特定するために必要な事項を全て含み、さらに「クライアント端末」、「端末接続装置」、「サーバ」について、発明を特定するために必要な事項を限定したものに相当するから、上記「(5-3-2)本件特許発明2と先願発明1」の項で述べた理由により、本件特許発明3、4は先願発明1と実質的に同一の発明であるとは認められない。

(5-3-4)本件特許発明7、8と先願発明1

本件特許発明7、8は、本件特許発明2と実質的に同一である本件特許発明6を特定するために必要な事項を全て含み、それぞれ、「クライアント端末」、「サーバ」について、発明を特定するために必要な事項を限定したものに相当するから、上記「(5-3-2)本件特許発明2と先願発明1」の項で述べた理由により、本件特許発明7、8は先願発明1と実質的に同一の発明であるとは認められない。

(5-3-5)本件特許発明1、2と先願発明2
上記「(5-1-1)本件特許発明1、5、10の優先日について」の項と「(5-1-2)本件特許発明2、6、11の優先日について」の項で説明したように、本件特許発明1、2は、優先権の主張の効果が認められ、本件特許の優先日(平成9年2月13日)に出願されたものとみなされるが、上記「(5-2-1) 甲第1号証(特願平9-350224号(特開平11-88438号公報参照))について」の項で説明したように、先願発明2については、先の出願(優先日、平成8年12月6日)ではなく、先願(出願日、平成9年12月5日)を他の出願として特許法第29条の2の規定を適用する。
そして、先願(出願日、平成9年12月5日)が、本件特許の優先日(平成9年2月13日)の後に出願されているため、本件特許発明1、2と先願発明2について特許法第29条の2の規定が適用できないことは明らかである。

(5-3-6)本件特許発明3、4と先願発明2

本件特許発明3、4は、それぞれ、本件特許発明2を特定するために必要な事項を全て含み、さらに「クライアント端末」、「端末接続装置」、「サーバ」について、発明を特定するために必要な事項を限定したものに相当するから、本件特許発明2と先願発明2とが同一でなければ、本件特許発明3、4と先願発明2とが同一でないことは明らかである。
そこで、本件特許発明2と先願発明2とを対比し、相違点について検討する。

(対比)

先願発明2の「IP電話機」、「統合情報通信システム」、「終点のドメイン名サーバ」、「電話番号」、「電話機の電話番号を含んだICSユーザフレームP1201」は、それぞれ本件特許発明2の「アナログ通信機器」、「ネットワーク」、「サーバ」、「端末管理番号」、「アナログ通信機器の端末管理番号を含んだ問合せパケット」に相当する。
また、先願発明2の「電話通信方法」は、本件特許発明2と同様にIP技術をベースとする統合情報通信システムにおいて電話番号に対応づけた変換表を設けているから、本件特許発明2のような「インターネット電話端末識別処理方法」を伴うものであり、先願発明2の「ICSネットワークアドレスとICSユーザアドレス」が、本件特許発明2の「IPアドレス」に相当し、先願発明2は、企業内部及び企業間の通信で用いられていた専用線の範囲を共通通信網として置き換えたものであるから、「統合情報通信システム」が、本件特許発明2の「LAN」に相当していることは明らかである。
さらに、先願発明2は、本件特許発明2と同様にIP技術をベースとする統合情報通信システムであるから、先願発明2の「該取得したICSネットワークアドレスとICSユーザアドレスを含むICSユーザフレームP1202」と、本件特許発明2の「該取得したIPアドレスとチャネル番号を含む返答パケット」とは、「該取得したIPアドレスを含む返答パケット」である点で一致している。
なお、先願発明2の「回線部」の詳細は不明であるが、先願発明1の「回線部」のように、電話機に接続される電話回線変換部やユーザが接続されるISDN回線変換部等の、単一のIPアドレスを持つ複数の回線変換部から構成されていると考えられ、この「ISDN回線変換部」が、本件特許発明2の「複数個のアナログ通信機器が接続された機器端末接続装置」に相当している。

したがって、本件特許発明2と先願発明2とは、少なくとも、以下の点で相違している。

相違点:
本件特許発明2では、
(2d)サーバにはLANに収容されたクライアント端末および前記端末接続装置に接続されたアナログ通信機器のIPアドレスとチャネル番号とを端末管理番号に対応づけた端末管理テーブルを設け、
(2e)第1のクライアント端末または端末接続装置に接続されたアナログ通信機器が、第2の端末接続装置に接続されたアナログ通信機器の端末管理番号を含んだ問合せパケットをサーバに送信すると、前記サーバは自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、該問合せパケット中の端末管理番号に対応するIPアドレスとチャネル番号とを取得し、該取得したIPアドレスとチャネル番号を含む返答パケットを第1のクライアント端末に返信する
のに対して、
先願発明2では、
サーバが、クライアント端末および端末接続装置のIPアドレスを端末管理番号に対応づけ、端末管理番号に対応するIPアドレスを取得しているが、チャネル番号を端末管理番号に対応づけておらず、端末管理番号に対応するチャネル番号を取得していない点。

(検討)

先願発明2におけるチャネル番号、端末管理テーブルについての請求人の主張(上記「(3-2-2)iii)甲第1号証の実施例36におけるチャネル番号について」の項、「(3-2-2)iv)甲第1号証実施例36におけるサーバ管理テーブルと端末管理テーブルについて」の項参照)や、本件特許発明2の「チャネル番号」に関する(2d)、(2e)の構成要件についての請求人の主張(上記「(3-2-2)viii)本件特許発明2と甲第1号証の実施例36との対比」の項参照)は、要するに、次のようなものである。

チャネル番号について
端末管理テーブルのチャネル番号については、甲第1号証実施例36に記載の電話番号が電話回線変換部に接続する電話機を識別するチャネル番号と同等の識別子としての機能を含んでいる。

端末管理テーブルについて
本件特許の端末管理テーブルは、実施例36のドメイン名サーバにおけるチャネル番号の機能を含む電話番号をドメイン名として用いたドメイン名ツリーである。

(2d)の構成要件について
本件特許の「LANに収容されたクライアント端末」は、甲第1号証の実施例36のIP電話端末等であり、本件特許の端末管理番号は甲第1号証実施例36の電話番号であり、本件特許の「アナログ機器のIPアドレスとチャネル番号とを端末管理番号に対応付けた」構成は実施例36に開示されている。

(2e)の構成要件について
実施例36の電話番号はチャネル番号の機能を含んでおり、実質的にチャネル番号を含む返答パケットを受け取っている。

しかし、請求人が主張するように、実施例36の電話番号はチャネル番号の機能を含み、電話番号にチャネル番号が対応付けられているとしても、先願発明2の「終点のドメイン名サーバ」(本件特許発明2の「端末管理テーブル」に相当)は、チャネル番号を対応付けていないことは明らかである。
しかも、本件特許発明2のサーバは、自サーバ内の端末管理テーブルを検索し、端末管理番号に対応するIPアドレスとチャネル番号を取得し、該取得したIPアドレスとチャネル番号を含む返答パケットを返信している。
そして、この相違点によって、本件特許発明2は、1個のIPアドレスを持つ1台の端末接続装置に接続した複数のインターネット電話端末とLAN電話番号を端末接続装置のIPアドレスとチャネル番号により管理することで、1個のIPアドレスを持つ1台の端末接続装置に接続した複数のインターネット電話端末を正しく識別することが可能となるという新たな効果を奏するものであり、この相違点は、技術常識を参酌することにより先願の願書に最初に添付した明細書等に記載されていた事項から導き出せるものでなく、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であるという証拠もないから、本件特許発明2と先願発明2とは、実質的に同一であるとは認められない。

したがって、本件特許発明3、4は、それぞれ、本件特許発明2を特定するために必要な事項を全て含み、さらに「クライアント端末」、「端末接続装置」、「サーバ」について、発明を特定するために必要な事項を限定したものに相当するから、本件特許発明3、4も先願発明2と実質的に同一でないことは明らかである。

(5-3-7)本件特許発明7、8と先願発明2

本件特許発明7、8は、本件特許発明2と実質的に同一である本件特許発明6を特定するために必要な事項を全て含み、それぞれ、「クライアント端末」、「サーバ」について、発明を特定するために必要な事項を限定したものに相当するから、本件特許発明2と先願発明2とが同一でなければ、本件特許発明7、8と先願発明2とが同一でないことは明らかである。
したがって、上記「(5-3-6)本件特許発明3、4と先願発明2」の項で述べたように、本件特許発明2と先願発明2とは、実質的に同一であるとは認められないから、本件特許発明7、8も先願発明2と実質的に同一の発明であるとは認められない。

(5-3-8)まとめ

本件特許発明1、2、5、6、10、11は、優先権の主張の効果が認められ、本件特許の優先日、平成9年2月13日に出願されたものとみなされ、先願発明1のみが、先の出願(優先日、平成8年12月6日)を他の出願として特許法第29条の2本文の規定を適用できる。

しかし、上記「(5-3-1)本件特許発明1と先願発明1」の項、及び「(5-3-2)本件特許発明2と先願発明1」の項で述べた理由により、本件特許発明1、2は先願発明1とは実質的に同一の発明であるとは認められず、本件特許発明5、10は、本件特許発明1とカテゴリが異なるのみで、実質的に同一であり、本件特許発明6、11は、本件特許発明2とカテゴリが異なるのみで、実質的に同一であるから、同様の理由により、本件特許発明5、6、10、11も先願発明1とは実質的に同一の発明であるとは認められない。

また、優先権の主張の効果が認められない本件特許発明3、4、7、8、9、12、13については、先の出願(優先日、平成8年12月6日)を他の出願として特許法第29条の2本文の規定を適用できる先願発明1だけでなく、先願発明2も、先願(出願日、平成9年12月5日)を他の出願として特許法第29条の2の規定を適用できる。

しかし、上記「(5-3-4)」〜「(5-3-7)」の項で述べた理由により、本件特許発明3、4、7、8は、先願発明1、2のいずれとも実質的に同一の発明であるとは認められず、本件特許発明12は、本件特許発明3とカテゴリが異なるのみで、実質的に同一であり、本件特許発明9、13は、本件特許発明4とカテゴリが異なるのみで、実質的に同一であるから、同様の理由により、本件特許発明9、12、13も先願発明1、2のいずれとも実質的に同一の発明であるとは認められない。

したがって、本件特許の請求項1乃至13に係る発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものとすることはできない。

(5-4)その他の請求人の主張

請求人は、他に、審判請求書及び弁駁書において次のような主張をしているので、これらについても検討する。

i)甲第1号証の実施例18に関する主張(上記「(3-2―1)ii)本特許発明1乃至13と甲第1号証との関係」の項参照。)

本件特許発明1乃至13は、甲第1号証の実施例18と構成及び作用効果が同一である。

ii)請求項の記載不備に関する主張(上記「(3-2―2)xiv)請求項の記載不備」の項参照。)

請求項2、6には、「…アナログ通信機器のIPアドレスとチャネル番号とを端末管理番号に対応づけた端末管理テーブルを設け」…なる記載があるが、アナログ通信機器にディジタル通信機器向けのIPアドレスを実施することは技術的にみて意味がないことと考えられ、更に本件特許の実施例にも記載がない。

(5-4-1)その他の請求人の主張についての当審の判断

i)甲第1号証の実施例18に関する主張について
先願(甲第1号証)の願書に最初に添付された明細書等に記載の実施例18は、先願の優先権主張の基礎とされた平成9年7月8日付けの出願の際に付加されたものであり、先の出願の願書に最初に添付した明細書等に記載されていたものではない。
したがって、実施例18に関する発明については、平成9年2月13日に出願されたものとみなされる本件特許発明1、2、5、6、10、11に対し、その出願を他の出願として特許法第29条の2本文の規定を適用できず、本件特許の現実の出願日、平成10年2月13日に出願されたものとして扱われる本件特許発明3、4、7、8、9、12、13に対してのみ実施例18に関する発明について、その出願を他の出願として特許法第29条の2本文の規定を適用できる。
しかし、上記「(5-3)対比・判断」の項で、既に説明したように、本件特許発明3、4、7、8、9、12、13は、先願発明1(実施例10に関する記載に基づく発明)と実質的に同一の発明であるとは認められず、実施例10を基に実施例10の電話通信機能を発展させ、電話回線或いは携帯電話回線などの各種の通信回線のIP通信を可能にするものである実施例18に関する発明と対比しても、「チャネル番号」に関する構成要件(2d)、(2e)について相違するから、同様の理由で、実質的に同一の発明であるとは認められない。

ii)請求項の記載不備に関する主張について

請求人は、請求項2、6の記載不備に関して、アナログ通信機器にディジタル通信機器向けのIPアドレスを実施することは技術的にみて意味がないことと考えられ、更に本件特許の実施例にも記載がない旨を主張しているが、請求項2、6には、「単一のIPアドレスを持つ端末接続装置にさらに複数個のアナログ通信機器が接続された」と記載されていること、本件特許明細書に記載された第2の実施例(本件特許発明2、6及び11に対応している。)における図13の「1個のIPアドレスで複数の端末管理番号を持った場合の端末管理テーブル(1408)の例」に、各アナログ通信機器の端末管理番号に「IPアドレス」(複数個のアナログ通信機器が接続された「端末接続装置」が持つもの)と「チャネル番号」(アナログ通信機器が持つもの)との組を対応させた例が明示されていることから、請求項2、6に記載されている「アナログ通信機器のIPアドレス」とは、「アナログ通信機器が接続されている端末接続装置が持つIPアドレス」と解釈すべきであり、上記請求人の主張が請求項2、6の理解を誤ったものであることは明らかである。
よって、請求項2、6の記載不備に関する請求人の主張は、根拠のないものであり、認めることはできない。

【6】まとめ

以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1乃至13に係る発明の特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-19 
結審通知日 2005-04-21 
審決日 2005-05-11 
出願番号 特願平10-31535
審決分類 P 1 112・ 161- Y (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中木 努  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 浜野 友茂
野元 久道
登録日 2001-02-02 
登録番号 特許第3155240号(P3155240)
発明の名称 インターネット電話端末識別処理方法、その装置及びそのプログラムを記録した記録媒体  
代理人 五十嵐 貞喜  
代理人 星 公弘  
代理人 森田 寛  
代理人 小笠原 吉義  

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