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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない G06F
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない G06F
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない G06F
管理番号 1119296
審判番号 訂正2005-39008  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-16 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-01-20 
確定日 2005-07-07 
事件の表示 特許第3327881号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3327881号発明(特願平7-19863号(平成7年1月13日出願)の分割出願、平成14年7月12日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち下記(1)ないし(17)のとおり訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項1
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり訂正する。
「【請求項1】 地図画像が格納された電子地図情報システムと利用者が所有する既存データベースとを利用して、該既存データベースの文字情報と前記地図画像とを合成して表示する文字情報と地図画像の合成方法であって、
下記のステップ(a)〜(d)により、文字情報,数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを前記電子地図情報システム内に持たずに、前記文字情報と前記地図画像との合成表示処理をすることを特徴とする文字情報と地図画像の合成方法。
(a)前記既存データベースの文字情報を付加する対象物の領域を前記地図画像上にて指定するステップ。
(b)前記利用者が所有する既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し、各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するステップ。
(c)入力された文字情報を検索キーとして前記文字情報記憶部に登録された文字情報群を検索し、検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記地図画像上での当該対象物の位置を求めるステップ。
(d)前記(c)のステップにより求めた位置情報に基づき、当該対象物を含む地図画像を読み出して表示すると共に、前記検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示するステップ。」
(2)訂正事項2
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2を以下のとおり訂正する。
「【請求項2】 前記(b)のステップは、文字情報を登録する際に、前記指定された一つの対象物に対して複数の異なる文字情報を対応付けて登録できる共に、前記指定された複数の対象物に対して同一の文字情報を対応付けて登録できるようになっている請求項1に記載の文字情報と地図画像の合成方法。」
(3)訂正事項3
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項5(訂正前)を以下のとおり訂正する。
「【請求項4】 前記地図画像が、地図,設計図,各種構造物の構造図を含む図形の画像である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の文字情報と地図画像の合成方法。」
(5)訂正事項5
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項6(訂正前)を以下のとおり訂正する。
「【請求項5】 簡易データベースを持たない電子地図情報システムと利用者が所有する既存データベースとを連結してデータベース機能を強化するデータベース機能向上支援システムであって、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法の発明を実現したことを特徴とするデータベース機能向上支援システム。」
(6)訂正事項6
本件特許明細書の段落0006を以下のとおり訂正する。
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、最近では情報源が多様化し、所望の情報をネットワークを介して取り込んだり、CD-ROM等の光ディスクから得たりなど、様々な情報を色々な形で入手することができる。また、利用者特有の情報を利用者自身が作成して利用者データベースに格納しておくなど、独自のユーザデータベースを構築していることが多い。しかしながら、上述した従来の地図情報システム、FM、ナビゲーション・システムなどの情報検索システムにおいては、図形・画像に関連する属性情報や検索キーは予め設定されており、利用者が持っている情報を利用することができなかった。例えば、地図,設計図,各種の構造図などの図形・画像に対して利用者の各種データベースの情報を関連づけて付加したい場合、付加する手段が存在しなかった。また、地図などの図形・画像に対し、該当の場所に関連する利用者の情報を合成して表示したり、利用者の設定情報をキーとして該当の場所を検索したりすることができなかった。」
(7)訂正事項7
本件特許明細書の段落0008を以下のとおり訂正する。
「【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、地図画像が格納された電子地図情報システムと利用者が所有する既存データベース(利用者の各種データベース)とを利用して、該既存データベースの文字情報と前記地図画像とを合成して表示する文字情報と地図画像の合成方法及びデータベース機能向上支援システムに関するものであり、本発明の上記目的は、文字情報と地図画像の合成方法の発明に関しては、下記のステップ(a)〜(d)、すなわち、(a)既存データベースの文字情報を付加する対象物の領域を前記地図画像上にて指定するステップ;(b)前記利用者が所有する既存のデータベースから抽出した文字情報群(指定された文字情報)から成るテキスト形式のファイル(文字情報)を入力(記録媒体に登録)し、各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するステップ;(c)入力された文字情報を検索キーとして前記文字情報記憶部に登録された文字情報群を検索し、検索された文字情報に対応して登録されている前記対象物の領域情報に基づき前記地図画像上での当該対象物の位置を求めるステップ;(d)前記(c)のステップにより求めた位置情報に基づき、当該対象物を含む地図画像を読み出して表示すると共に、前記検索された文字情報を前記当該対象物と関連付けて合成して表示するステップ;により、文字情報,数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを前記電子地図情報システム内に持たずに、前記文字情報と前記地図画像との合成表示処理をすることによって達成される。」
(8)訂正事項8
本件特許明細書の段落0009を以下のとおり訂正する。
「【0009】さらに、前記(b)のステップは、文字情報を登録する際に、前記指定された一つの対象物に対して複数の異なる文字情報を対応付けて登録できる共に、前記指定された複数の対象物に対して同一の文字情報を対応付けて登録できるようになっていること;前記文字情報と共に利用者のイメ-ジ情報を当該対象物の関連情報として付加できるようになっていること;前記地図画像が、地図,設計図,各種構造物の構造図を含む図形の画像であること;によって、それぞれ一層効果的に達成される。また、データベース機能向上支援システムの発明に関しては、簡易データベースを持たない電子地図情報システムと利用者が所有する既存データベースとを連結してデータベース機能を強化するデータベース機能向上支援システムであって、上記いずれかの方法の発明を実現することによって達成される。」
(9)訂正事項9
本件特許明細書の段落0015を以下のとおり訂正する。
「【0015】このような構成において、本発明に係る文字情報と画像の合成方法を図2のフローチャートを参照して説明する。ここでは、地図を例として、地図上の任意の場所に対してその場所に関連する利用者の情報を付加する手順について説明する。図4は、地図の画像情報が格納されている画像ファイル5のファイル構成例を示しており、表示される地図の部分は、頁指定,地名指定等により当該部分を表示した後、指定方向にスクロール表示させることにより、任意の部分を表示できるようになっている。」
(10)訂正事項10
本件特許明細書の段落0018を以下のとおり訂正する。
「【0018】続いて、利用者は、該当の場所P1に関連する文字情報の登録指示を行なう。図7は、関連情報をキーボード等から直接入力する場合の登録画面の一例を示す。登録したい関連情報(=検索キー情報:本発明では、当該文字情報が該当の場所P1の検索キーとなる)を、表示部2a内のテキストボックスWaの中に入力する。関連情報としては、例えば、地図の当該部分P1の住所を示す文字列「〜町〜丁目xxx」や顧客情報等、その場所を管理するための情報を表わす任意の文字列を入力する。同図において、図形G1に対する検索キーKEYG12を入力した後、追加ボタンを指示すると、検索キーKEYG12が登録され、図形G1に対する登録済み検索キー情報一覧を示す表示ウインドウWb内(同図では、KEYG11が既に登録済みの状態)に追加表示される(ステップS14)。」
(11)訂正事項11
本件特許明細書の段落0021を以下のとおり訂正する。
「【0021】同図の例では、図形情報G1に対応する文字情報がKEYG11,KEYG12、図形情報G2に対応する文字情報がKEYG21、図形情報G3に対応する文字情報がKEYG31,KEYG32である。このように、一つの図形情報に対して複数の文字情報(検索キー)を指定しても良く、複数の図形情報に対して同一の文字情報というように、図形情報と文字情報との対応は任意に指定して登録することができる(ステップS15)。」
(12)訂正事項12
本件特許明細書の段落0025を以下のとおり訂正する。
「【0025】そして、図形情報に基づいて画像上での当該位置を求め、画像ファイル5から該当の画像情報を読み込む。表示制御手段34では、図9(B)に示すように、当該位置P1が表示画面上の所定の位置(例えば表示部2a内の表示ウインドウの中央部)に配置されるように、表示領域を調整して地図の画像を表示する。その際、表示制御手段34は、図形G1の領域内を反転表示して該当の場所を明示する。ここで、該当の場所は、図形G1を合成して表示、或いは領域内を背景画像と異なる色で表示することで明示するようにしても良い。また、文字情報を別ウィンドウでなく、同一ウィンドウ内に該当の場所と対応付けて表示(引出し線,矢印,符号等での対応付けにより表示)するようにしても良い。」
(13)訂正事項13
本件特許明細書の段落0027を以下のとおり訂正する。
「【0027】次に、「ファイル指定」による登録手順、すなわち、複数の文字情報(検索キー情報)を指定して当該位置を順次登録する手順を具体例を示して説明する。例えば、図10(A)に示すような、データ(文字情報群)が格納されたユーザデータベースD1があり、同図において、それぞれ“KEYA”〜“KEYE”が、画像位置の関連情報となる文字情報であると仮定する。この場合は、先ず利用者は、データベースで管理しているデータの中から検索キーの部分KEYA,KEYB,……,KEYEだけを抽出し、例えば同図(B)に示すように、改行データを区分情報としてテキストファイルTX1に出力する。」
(14)訂正事項14
本件特許明細書の段落0028を以下の通り訂正する。
「【0028】利用者は、「ファイル指定」の登録コマンドを指示し、テキストファイルTX1のファイル名を入力(或いは既に登録されているファイル名を一覧表の中から選択)して登録指示を行なう。ファイル名が入力されると、文字情報登録手段32では、テキストファイルTX1から文字情報群を読み込み、区分情報で区分された各データを各検索キーと見なし、同図(C)に示すように、文字情報記憶部42に展開する。ここで、上記のようにテキストファイルから文字情報記憶部42に作成した登録する画像上の位置を表わす文字情報群を「検索キー情報」と呼び、テキストファイルから文字情報記憶部42に作成した作画図形に対して付加した文字情報群、すなわち、図8に示したように、管理コードが付与されて登録処理が成されている文字情報群を「登録済みキー情報」と呼ぶ。」
(15)訂正事項15
本件特許明細書の段落0030を以下のとおり訂正する。
「【0030】「ファイル指定」による検索開始指示がされると、画像位置検索手段33では、文字情報記憶部42内の「検索キー情報」の先頭(図10(C)の例では、KEYA)に位置付ける(ステップS21)。続いて、未チェックの検索キーがあれば、登録済みキー情報の先頭(図8の例では、KEYG11)に位置付ける(ステップS22,ステップS23)。そして、未チェックの登録済みキーがあるか否かを判定し(ステップS24)、なければ次の検索キー情報の位置に位置付け(ステップS25)、ステップS22に戻り、次の検索キー情報に対する処理を行なう。ステップS24において、未チェックの登録済みキーがあれば、検索キーと登録済みキーとが一致するか否かを判定し(ステップS26)、一致しない場合は、ステップS24に戻り、未チェックの登録済みキーに対する処理を繰り返す。」
(16)訂正事項16
本件特許明細書段落0033を以下のとおり訂正する。
「【0033】なお、上述した実施例においては、文字情報を関連情報として付加する場合を例として挙げたが、関連情報として任意のマーク等のイメージ情報、或いは色情報などを指定することも可能である。また、背景画像となる図形は任意であって、地図に限られるものではない。」
(17)訂正事項17
本件特許明細書の段落0034を以下のとおり訂正する。
「【0034】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、画像の任意の位置及び領域について任意の文字情報を関連情報として登録することができると共に、その関連情報を指示することにより、関連情報に対応する画像上での位置を求めることができる。そのため、画像の任意の位置に対して、利用者の情報を登録して管理することが可能となり、利用者が持っている情報を有効利用できるようになる。例えば、顧客管理ソフトなど既存のデータベースの住所データや顧客データを利用して、市街地図の上に当該位置を示す情報として表示することができるようになる。さらに、登録した文字情報を検索キーとして画像上での位置を検索して当該画像を表示することができるので、利用者の設定情報をキーとして該当の場所を検索する情報検索システムを容易に構築することが可能となる。また、地図情報システムと利用者の各種データベースとを完全に分離させ、且つ文字情報や数字情報のデータをつかさどる簡易データベースを持たずに文字情報と地図画像との合成表示処理をすることが可能となる。さらに、テキスト形式で対応するようにしているので、他のアプリケーションシステムの全てのデータベース(利用者の各種データベース)との連携を図ることができる。」

2.訂正拒絶の理由
一方、平成17年3月25日付けで通知した訂正の拒絶の理由の概要は、上記訂正事項1、2、4、5、7、8、10、13、14、16について平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書きの規定に適合せず、同項ただし書き各号のいずれにも該当せず、あるいは同条第3項の規定に違反するものであるから、本件訂正は認められない、というものである。

3.判断
(1)訂正事項1について
新規事項の追加について
訂正後の「(b)前記利用者が所有する既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し、各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するステップ」は、以下のとおり、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項とも、これら事項から自明のこととも言えないから、訂正事項1は願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものとは認められない。
発明の詳細な説明を検討すると、
(ア)段落0027、及び図10の記載について
段落0027の前後の文脈をみてみると、段落0024には「検索の操作には、単一の検索キーを指定する「文字列指定」の操作と、複数の検索キーを指定する「ファイル指定」とがある。先ず、「文字列指定」がされた場合の検索手順について説明する。」とあり、段落0026まで、「文字列指定」の検索手順が記載されており、これに続いて段落0027は、「次に、「ファイル指定」による検索手順・・・を具体例を示して説明する。」との記載から始まり、段落0032まで一貫して、図10を参照しながら「ファイル指定」による検索手順の記載がなされているのである。
ここでは、「ファイル指定」による検索については記載されているが、訂正後のステップ(b)「前記利用者が所有する既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力し、各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録するステップ」については、記載されていない。
また、この文脈から同記載が自明であるとは認められない。
明細書の【図面の簡単な説明】の項には「【図10】本発明における文字情報の登録方法の第2の例を説明するための図である。」との記載があるが、上記文脈の整合性を考慮すれば、図10は「ファイル指定」による検索手順の説明と解することが自然であり、図10を文字情報の登録方法が説明されているものと解することはできない。
また、図10(c)の文字情報記憶部42に作成した文字情報群は、図8の文字情報記憶部42に登録されている文字情報群(段落0019参照)とは明らかにデータ構造が違うものであり、当業者が、「図10は文字情報の登録方法をも表している」と解釈するとは考え難い。
(イ)段落0013の記載について
段落0013には、「入力装置1を介してユーザデータベースDB等から入力された文字情報は、文字情報登録手段32によって情報記憶部4内の文字情報記憶部42に登録される。」と記載されているだけである。そして、「各文字情報を各対象物の領域情報と対応付けて文字情報記憶部に登録する」ことは記載されていない。同段落には、「登録された図形情報と文字情報との対応は、情報記憶部4内の管理テーブル43に登録されて管理される。」と記載されているだけである。
さらに、これらの記載には、「テキスト形式のファイル」についていっさい言及がなく、どのようすれば「利用者が所有する既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイル」から、「登録された図形情報」と「文字情報」との対応を登録することができるのかについて、当業者が理解できる程度に記載されていない。
(ウ)段落0019について
段落0019の前後の文脈をみると、段落0018には、関連情報をキーボード等から直接入力する場合のことが記載されており、段落0019における関連情報の入力も、キーボード等から直接入力することが想定されてるものと認められる。さらに同段落には、「利用者により登録指示がされると、文字情報登録手段32では、該当の図形情報と文字情報との対応付けを行ない、文字情報を文字情報記憶部42に登録する」と記載されており、「利用者による登録指示」を前提としているから、「テキスト形式のファイル」を入力することとは整合しない。
したがって、段落0019に「利用者が所有する既存のデータベースから抽出した文字情報群から成るテキスト形式のファイルを入力」することが記載されているとすることはできない。
(エ)このように、発明の詳細な説明には、請求項1の訂正後のステップ(b)は記載されていない。

イ 審判請求人の主張について
審判請求人は、図7が本発明における文字情報の登録方法の第1の例を説明するための図であることを根拠に、図10及びこれを引用する段落0027及び0028が文字情報の登録方法の第2の例を説明するものであると解するのが自然である旨主張している(17年4月13日付け意見書3頁10行〜4頁1行)。しかし、段落0027に「次に、『ファイル指定』による検索手順・・・を具体例を示して説明する。例えば図10(A)に示すような、・・・ユーザデータベースD1があり、・・・例えば同図(B)に示すように、改行データを区分情報としてテキストファイルTX1に出力する。」と記載されており、かつ段落0024に「検索の操作には、単一の検索キーを指定する『文字列指定』の操作と、複数の検索キーを指定する『ファイル指定』とがある。先ず、『文字列指定』がされた場合の検索手順について説明する。」と記載されていることからみて、図10の「第2の例」である「ファイル指定」に対応する「第1の例」は、段落0024ないし0026に記載された「文字列指定」であり、段落0018、0019及び図7に記載された「第1の登録例」ではないから、前記主張は根拠がない。
そもそも、明細書の記載は形式的にのみ判断するものではなく、当業者の技術常識に照らして解釈すべき(特許法第36条第4項参照)であり、この観点から上記訂正拒絶の理由の一つとして「図10(c)の文字情報記憶部42に作成した文字情報群は、図8の文字情報記憶部42に登録されている文字情報群(段落0019参照。)とは明らかにデータ構造が違うのであり、当業者が、図10は文字情報の登録方法をも表していると解釈するとは認められない。」と通知したにもかかわらず、審判請求人は「データ構造の違い」について何ら実質的な釈明をしていない。
また、審判請求人は、技術的な流れとして登録の後に検索がくることは当業者にとって自明な事項であり、段落0029には、「続いて、『ファイル指定』による検索開始が指示された場合の検索処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。」と記述されていることを根拠に、その前の段落0027及び0028は登録について説明していると判断するのが相当である旨主張している(同意見書4頁2〜11行)。しかし、段落0029の上記記述は、段落0027及び0028に記載された「ファイル指定」による「検索手順」の具体例の説明(段落0027の1〜4行参照)に「続いて」、同「検索手順」を「図3のフローチャートを用いて説明する」ものと読むべきであるから、請求人の上記主張は根拠がない。

ウ 訂正の目的の適否
上記アのとおり訂正後のステップ(b)は訂正前の本件特許明細書に記載されていないから、訂正事項1についての訂正は、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認めることはできない。また、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められないから、平成6年改正前特許法第126条ただし書き各号に規定されたいずれの目的にも該当しない。

エ むすび
以上のとおりであるから、その余の理由について検討するまでもなく、訂正事項1についての訂正は認められない。

(2)訂正事項2について
請求項2は、請求項1を引用しており、請求項1の(b)のステップは、上記(1)で述べたように、本件特許明細書に記載されていないのであるから、これを更に限定する記載となる訂正後の請求項2も同様に本件特許明細書に記載されておらず、訂正事項2を誤記の訂正を目的とするものとは認めることができない。また、明りょうでない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められないから、平成6年改正前特許法第126条ただし書き各号に規定されたいずれの目的にも該当しない。

(3)訂正事項4について
訂正事項4についての訂正は、訂正事項3による訂正前の請求項4の削除に伴い、訂正前の請求項5の記載を形式的に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(4)訂正事項5について
訂正事項4についての訂正は、訂正事項3による訂正前の請求項4の削除に伴い、訂正前の請求項6の記載を形式的に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(5)訂正事項7について
ステップ(b)については、上記(1)で述べたように、本件特許明細書に記載されていないのであるから、これを詳述することになる訂正事項7を誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであると認めることはできない。また、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められないから、平成6年改正前特許法第126条ただし書き各号に規定されたいずれの目的にも該当しない。

(6)訂正事項8について
ステップ(b)については、上記(1)で述べたように、本件特許明細書に記載されていないのであるから、訂正事項8を誤記の訂正を目的とするものとは認めることができない。また、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められないから、平成6年改正前特許法第126条ただし書き各号に規定されたいずれの目的にも該当しない。

(7)訂正事項10について
訂正前の、「図7は、関連情報をキーボード等から直接入力する場合の登録画面の一例を示しており、登録したい関連情報(=検索キー情報:本発明では、当該文字情報が該当の場所P1の検索キーとなる)を、表示部2a内のテキストボックスWaの中に入力する。」は不明瞭な記載ではない。不明瞭でない記載を訂正することは明りょうでない記載の釈明であるとは認められない。したがって、訂正事項10は明りょうでない記載の釈明を目的とするものとは認められない。また、特許請求の範囲の減縮又は誤記の訂正を目的とするものとも認められないから、平成6年改正前特許法第126条ただし書き各号に規定されたいずれの目的にも該当しない。
請求人は、本訂正は主語を明りょうにするものである旨主張している(同意見書7頁2〜8行)が、訂正前の記載は主語が省略されていた(当然主語は直前の文の主語である「利用者」である。)のであり、訂正後でも主語が省略されていることには変わりなく、この訂正が認められても明りょうでない記載の釈明にはならない。

(8)訂正事項13
「検索手順」を「登録手順」と訂正し、また、「順次検索」を「順次登録」に訂正してるが、段落0027ないし0032には、「ファイル指定」による検索が記載されており、この記載内容を全く無視して訂正していることになる。このように、「検索手順」を「登録手順」と、また、「順次検索」を「順次登録」と訂正することは、誤記の訂正を目的とするものとは認めることができない。また、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められないから、平成6年改正前特許法第126条ただし書き各号に規定されたいずれの目的にも該当しない。
出願人は多義的な理解がされる記載を無用な誤解を避けるために、正しく訂正するものである旨の主張をしている(同意見書7頁13〜15行)が、「ファイル指定」による「登録」が特許明細書に記載されていなかったことは(1)で示したとおりであるから、これを記載することになる本訂正は、「正しく」訂正するものとすることはできない。

(9)訂正事項14について
訂正事項14についての訂正は、「検索コマンド」を「登録コマンド」と訂正し、「検索指示」を「登録指示」と訂正し、「画像位置検索手段33」を「文字情報登録手段32」と訂正し、「上記のようにテキストファイルから文字情報記憶部42に作成した、検索する画像上の位置を表わす文字情報群を「検索キー情報」と呼び、作画した図形に対して付加した文字情報群、すなわち、図8に示したように、管理コードが付与されて登録処理が成されている文字情報群を「登録済みキー情報」と呼ぶ。」を、「上記のようにテキストファイルから文字情報記憶部42に作成した登録する画像上の位置を表わす文字情報群を「検索キー情報」と呼び、テキストファイルから文字情報記憶部42に作成した作図図形に対して付加した文字情報群、すなわち、図8に示したように、管理コードが付与されて登録処理が成されている文字情報群を「登録済みキー情報」と呼ぶ。」と訂正するものである。しかし、これらの訂正は、段落0027ないし0032に記載された「ファイル指定」による検索についての記載内容を全く無視しての訂正である。
したがって、訂正事項14を誤記の訂正を目的とするものと認めることができない。また、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められないから、平成6年改正前特許法第126条ただし書き各号に規定されたいずれの目的にも該当しない。
審判請求人は、訂正前の「テキストファイルから文字情報登録部42に作成した」という句の後に読点があったこと及び図8に関する記載を根拠に、上記句がその後の「検索する画像上の位置を表す文字情報群」だけでなく、その後段の「作画した図形に対して付加した文字情報群」にもかかると主張している(同意見書8頁14〜9頁7行)が、読点は意味の一応の切れめにも挿入されることから上記根拠は客観的に成立しない。
なお、請求人は何の根拠もなく図10(B)及び(C)と図8の内容が同様である旨主張しているが、図8の参照符号42で示される「KEYG11、KEYG12・・・」と図10(B)及び(C)の「KEYA、KEYB・・・」は、明らかに内容が異なるし、さらに両者の構成が異なることは上記(1)で指摘したとおりである。

(10)訂正事項16について
「任意のマーク等のイメージ情報、或いは色情報などを関連情報として指定することも可能である。また、背景画像となる図形は任意であって、地図に限るものでない。」を、「関連情報として任意のマーク等のイメージ情報、或いは色情報などを指定することも可能である。また、背景画像となる図形は任意であって、地図に限られるものではない。」と訂正することは、もともと、不明りょうな記載でないものを訂正するのであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるとは認めることができない。また、特許請求の範囲の減縮又は誤記の訂正を目的とするものとも認められないから、平成6年改正前特許法第126条ただし書き各号に規定されたいずれの目的にも該当しない。
審判請求人は、「指定する」の目的語が何であるかが不明確であると主張しているが、目的語は「任意のマーク等のイメージ情報、或いは色情報などを」であることは明確で、語の順序を入れ替えたからといってこれが更に明確になるものでもない。
特許法は、訂正後の特許明細書により特許権が設定登録されたものとみなされるという重大な効果が生じること(128条)を鑑みて、訂正の目的を「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」、「明りょうでない記載の釈明」に限って認めているのであり、これらの目的以外の不必要な訂正を認める趣旨でないことはいうまでもないことである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書きの規定に適合せず、同項ただし書き各号のいずれにも該当しないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-09 
結審通知日 2005-05-12 
審決日 2005-05-26 
出願番号 特願平11-318428
審決分類 P 1 41・ 853- Z (G06F)
P 1 41・ 852- Z (G06F)
P 1 41・ 841- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡本 俊威  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 田口 英雄
深沢 正志
登録日 2002-07-12 
登録番号 特許第3327881号(P3327881)
発明の名称 文字情報と地図画像の合成方法及びデータベース機能向上支援システム  
代理人 安形 雄三  

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