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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1119374
異議申立番号 異議2003-73509  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-11-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-04-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3447422号「内視鏡装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3447422号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3447422号の発明は、平成7年4月25日に特許出願され、平成15年7月4日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、ペンタックス株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年11月1日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)[訂正の内容]
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
訂正事項a:
特許請求の範囲の請求項1において、「近接または密着」を「密着」と訂正する。
訂正事項b:
特許請求の範囲の請求項2において、「近接または密着」を「密着」と訂正する。
訂正事項c:
明細書の段落【0009】を、
「【課題を解決するための手段】本発明の内視鏡装置は、挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有し、前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部のうちの少なくとも2つに金属部材を有する電子内視鏡を備えた内視鏡装置において、
前記金属部材を互いに等電位になるように接続すると共に、前記固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、前記金属部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられた電磁妨害手段の電位と金属部材の電位とを等しくしたことを特徴とする。また、本発明による内視鏡装置は、挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有する電子内視鏡において、
前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部の少なくとも2つに導電性の金属部材、又は導電性を有する金属皮膜処理を施した部材で構成された外装部材を設け、前記外装部材を互いに等電位になるように接続すると共に、前記固体撮像素子からの電気信号を電送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、前記外装部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられる電磁妨害手段の電位と前記外装部材の電位とを等しくしたことを特徴とする。」と訂正する。
訂正事項d:
明細書の段落【0010】において、「近接または密着」を「密着」と訂正する。

(2)[訂正の目的の適否]
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、「近接または密着」を「密着」と限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項2において、「近接または密着」を「密着」と限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項c、dは、発明の詳細な説明の記載を上記特許請求の範囲の訂正に対応し、課題を解決するための手段を明確化したものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条第1項ただし書に規定する要件を満たすものである。

(3)[訂正の範囲の適否、拡張・変更の存否]
訂正事項a、bの「密着」と限定することは、特許明細書の段落番号【0022】の記載や図3の記載に基づくものである。
訂正事項c、dの訂正は、発明の詳細な説明の記載を上記特許請求の範囲の訂正に対応し、課題を解決するための手段を明確化したものである。
したがって、訂正事項aないしdは特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項aないしdは、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。

(4)[結び]
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)[申立ての理由の概要]
特許異議申立人ペンタックス株式会社は、下記甲第1号証〜甲第6号証を提出し、請求項1、2、4に係る発明の特許は、甲第1、2、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、請求項3に係る発明の特許は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨主張している。
甲第1号証:特開平6-142039号公報
甲第2号証:特公平5-40577号公報
甲第3号証:特開昭60-83633号公報
甲第4号証:実願昭62-141205号(実開昭64-46001号)のマイクロフィルム
甲第5号証:特開平1-137219号公報
甲第6号証:特開昭62-97524号公報

(2)[本件発明]
特許第3447422号の請求項1ないし4係る発明(以下、「本件発明1ないし4」という。)は、平成16年11月1日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】 挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有し、前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部のうちの少なくとも2つに金属部材を有する電子内視鏡を備えた内視鏡装置において、
前記金属部材を互いに等電位になるように接続すると共に、前記固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、前記金属部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられる電磁妨害手段の電位と金属部材の電位とを等しくしたことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】 挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有する電子内視鏡において、
前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部の少なくとも2つに導電性の金属部材、又は導電性を有する金属皮膜処理を施した部材で構成された外装部材を設け、前記外装部材を互いに等電位になるように接続すると共に、前記固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、前記外装部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられる電磁妨害手段の電位と前記外装部材の電位とを等しくしたことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項3】 前記操作部には操作部支持板が設けられ、この操作部支持板が前記金属部材又は外装部材に電気的に接続されることによって、前記電磁妨害手段と等電位にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡装置。
【請求項4】 前記信号ケーブルには、この信号ケーブルを被覆するシールドが設けられると共に、該シールドを回路上のグランドに接続したことを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡装置。

(3)[当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物]
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物、
刊行物1:特開平6-142039号公報(甲第1号証)
刊行物2:特公平5-40577号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開昭60-83633号公報(甲第3号証)
刊行物4:実願昭62-141205号(実開昭64-46001号)のマイクロフィルム(甲第4号証)
刊行物5:特開平4-183432号公報
刊行物1には、
「前記電子内視鏡2は、可撓性を有する細長の挿入部7の先端側に固体撮像素子としてのCCD8を内蔵し、前記挿入部7の後端(基端)には操作部9を形成している。前記操作部9の側方からはユニバーサルケーブル11が延出され、このユニバーサルケーブル11の末端には光源装置3に着脱自在に装着できる光源用コネクタ12が取付けられている。」(段落【0015】)、
「さらに、前記図3に示すように電子内視鏡2の駆動信号伝送線21a及びCCD出力信号伝送線21bを挿通する電子内視鏡2の挿入部7と、電子内視鏡2の駆動信号伝送線21a、CCD出力信号伝送線21b及び制御信号伝送線47を挿通するユニバーサルケーブル11との内周部には金属線を網状に編んで形成した電磁妨害対策手段としての電磁シールド層56が略全周に渡って設けられている。そして、この電磁シールド層56の一端をコネクタ受け22に導通させて接続している。また、前記電子内視鏡2の光源コネクタ12に設けたコネクタ受け22に信号ケーブル23の一端に設けたコネクタ24を接続し、信号ケーブル23の他端に設けたコネクタ25をCCUコネクタ受け26に装着して電子内視鏡2を覆う電磁シールド層56、コネクタ受け22、信号ケーブル23、コネクタ25及びCCUコネクタ受け26を電気的に等電位化すると共に、CCUコネクタ受け26を配設したCCU4を接地して導電層を形成する一方、この電磁シールド層56の内周面に絶縁層58を設けることによって患者回路系と電磁シールド層56との絶縁を保つようにしている。」(段落【0019】)、
「このように、本実施例によればユニバーサルコードで形成された電子内視鏡2の挿入部7、ユニバーサルケーブル11及び信号ケーブル23などを接地電位の電磁シールド層56で覆うことにより、コストを上昇させることなく、且つ、スペースを有効に活用して最も不要輻射ノイズを多く発生する電子内視鏡2から効果的に不要輻射ノイズの放射を防ぐことができると共に、電子内視鏡内への不要輻射ノイズの混入を防ぐことができるのでモニタ画像や自動調光の設定レベルなどに乱れを低減することができる。」(段落【0025】)、
「なお、本実施例では電子内視鏡2及び信号ケーブル23をCCU4に接地しているが、光源装置3に接地しても同様の効果が得られることは勿論である。また、電磁シールド層56を金属線を編み状に編んだもので形成しているが導電性の樹脂材料や蛇腹などで形成したり、外装部の内面に金属蒸着したものや絶縁層58の外表面に金属蒸着したものでも良い。なお、金属蒸着に限らず、金属溶射、スパッタリング、鍍金などでも良い。さらに、本実施例を患者回路系30を有する電子内視鏡装置1を用いて説明したが、2次回路35とアイソレーションされた患者回路を有していない電子内視鏡に適用しても同様の効果を得られることは勿論である。」(段落【0027】)
が記載されている。
刊行物3には、
「この内視鏡シース26の内壁面27には、金属製の網管27、および螺旋管28が順次積層される。」(2頁右上欄16行〜18行)、
「CCD21から導出された信号ライン24はシールドライン25でシールドされており、スネア12から発生された高周波ノイズがこの信号ライン24上に乗ることもない。
尚、第1の実施例において、網管27および螺旋管28とシールドライン25とを図中破線で示したように互いに接続すれば、信号ライン24は2重にシールドされることになり、高周波ノイズが信号ライン24に乗ることが更に防止できる。」(2頁左下欄12行〜右下欄1行)、
「第2図は他の実施例を示し、第1図と対応部分は同一の参照符号を付して詳細な説明は省略する。図において、高周波電源18の患者電極側出力端には、螺旋管17が接続されるとともに、網管27および螺旋管28も共通に接続される。このようにすると、鉗子チヤンネル11は、螺旋管17、螺旋管28および網管27により三重にシールドされることになり、鉗子チヤンネル11内に挿通されるスネアワイヤ13から発生される高周波ノイズが鉗子チヤンネル11から内視鏡シース26の外部へ漏れ出すことが略完全に防止できる。」(2頁右下欄2行〜13行)
が記載されている。
刊行物4には、
「また、前記操作部本体2及び把持部9内に渡り、金属よりなる地板24が配設されている。・・・。そして、前記地板24の一端は、その端部に形成した3つの固定座25を、前記支持金具22に折曲形成した舌片26に重ねると共に両者をビス止めすることにより固定されて、前記カバー部材2aに連結されている。
また、地板24と接続座21との間の絶縁(高周波処置等の使用に必要なもの)には、プラスチック、ゴム等の絶縁物30をビス23a、・・・のナット側座面に介在させて、座面及びビス23a、・・・の軸周囲を絶縁した構造が用いられている。」(7頁12行〜8頁5行)、
「そして、前記地板24に固定された一対のフレーム123、123は、分岐部本体125の主筒部126の内部まで延長しており、このフレーム123、123の先端部には、連結部本体127が連結されている。・・・。
前記連結部本体127の先端部は、その内径が先細となるようにテーパ134部に形成され、このテーパ部134には、前記挿入部3が連結されている。すなわち、前記挿入部3の基端部を構成する連結管体136には、挿入部3の挿入管体137の基部が連結されている。」(12頁1行〜17行)、
「第8図ないし第10図は本考案の第2実施例に係り、第8図は内視鏡装置の全体を示す側面図、第9図は電子内視鏡の先端部の断面図、第10図は操作部の把持部の横断面図である。」(17頁9行〜12行)、
「ところで、第10図に示すように、操作部15内には、第1実施例におけるイメージガイド16の代わりに、前記信号線220が挿通されている。・・・。
その他の構成、作用及び効果は、第1実施例と同様である。」(19頁13行〜20頁3行)
が記載されている。
刊行物5には、
「又、第4図に示すように、電子スコープ2を挿通されている駆動信号伝送線21a及びCCD出力信号伝送線21b及び制御信号伝送線47は、第5図に示すようにそれぞれ個別に(総合)シールド被覆線21a-1,21b-1,47-1でシールドするシールド手段が形成されている。・・・・。又、各シールド被覆線21a-1,21b-1,47-1は絶縁性の外被で覆われている。・・・・。
上記各伝送線21a,21b,47をそれぞれ個別にシールドすることにより、伝送線間でのノイズの混入を防止している。・・・・。
又、シールド被覆線21a-1,21b-1,47-1は、コネクタ受け22の金属製の外装枠を固定するねじで固定されたラグ52に1点接続されている。」(4頁左下欄13行〜5頁左上欄7行)、
「第4図に示すように電子スコープ2の挿入部8内には金属線を網状に編んだ網管(ブレードとも記す。)56がライトガイド13,伝送線21a,21b等を覆うように設けてあり、この網管56の後端(基端)にはリード線57の一端が接続されている。このリード線57はユニバーサルケーブル11内を挿通され、コネクタ12に設けた図示しないピンにその他端が接続されている。」(5頁右上欄6行〜13行)、
「第9図に示すように、このコネクタ受け本体81からCCU4側に引き出される接続線もケーブル23内の伝送線21a,21b,・・・と同様に信号系ごとに総合シールド被覆線84a,84b,84c,・・・でシールドされ、各シールド被覆線84a,84b,84c,・・・は導体83のラグ85と導線でそれぞれ接続されている。つまり、各シールド被覆線84i(i=a,b,c,・・・)患者回路30のGNDに1点接続され、不要輻射ノイズの発生等を防止すると共に、1点接続により、1点接続にしない場合に生じる電位差のため電流路の形成によるノイズの発生等を防止している。」(6頁左上欄10行〜右上欄2行)
が記載されている。

(4)[対比・判断]
[本件発明1について]
本件発明1と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1記載の発明の「ユニバーサルケーブル」、「信号ケーブル用コネクタ」、「電磁シールド層」、「CCD出力信号伝送線」は、本件発明1の「ユニバーサルコード」、「電気コネクタ部」、「金属部材」、「信号ケーブル」に相当するから、
両者は、「挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有し、前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部のうちの少なくとも2つに金属部材を有する電子内視鏡を備えた内視鏡装置において、前記金属部材を互いに等電位になるように接続したことを特徴とする内視鏡装置。」である点で一致し、
本件発明1では、「固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、金属部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられる電磁妨害手段の電位と金属部材の電位とを等しくした」という構成を有しているのに対して、刊行物1記載の発明では、そのような構成を有していない点で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
刊行物3には、第1実施例に係る図1に関して、「この内視鏡シース26の内壁面27には、金属製の網管27、および螺旋管28が順次積層される。」、および「CCD21から導出された信号ライン24はシールドライン25でシールドされており、・・・。 尚、第1の実施例において、網管27および螺旋管28とシールドライン25とを図中波線で示したように互いに接続する」という記載がある。そして、前記の網管27、および螺旋管28が順次積層されるという記載から、網管27と螺旋管28とは密着した状態であると解するのが相当である。ところで、他の実施例に係るものではあるが、図2に関する記載として、「鉗子チヤンネル11は、螺旋管17、螺旋管28および網管27により三重にシールドされることになり、鉗子チヤンネル11内に挿通されるスネアワイヤ13から発生される高周波ノイズが鉗子チヤンネルから内視鏡シース26の外部へ漏れ出すことが略完全に防止できる。」ということが示されているから、図1の第1実施例ものにおいても、網管27および螺旋管28を備えることにより高周波ノイズを二重にシールドする機能を有していると認められる。
そして、刊行物1記載発明の電子内視鏡内からの不要輻射ノイズの放射を防ぐために設けられた電磁シールド層を、刊行物3に示される網管27および螺旋管28のように二重化することにより、高周波ノイズを二重にシールドする構成とすることに当業者が格別困難性を要したとは認められないから、この相違点に係る構成は刊行物1記載発明に刊行物3に記載の技術思想を適用することにより当業者が容易に想到しえたものと認められる。
結局、本件発明1は、刊行物1、3に記載の各技術事項に基づいて当業者が容易に推考できたものと認められ、上記発明の奏する効果も、刊行物1、3に記載の各技術事項が奏する効果以上のものが期待できるとも認められない。
したがって、本件発明1は、刊行物1、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

[本件発明2について]
本件発明2と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1記載の発明の「ユニバーサルケーブル」、「信号ケーブル用コネクタ」、「電磁シールド層」、「内面に金属蒸着したもの」、「外装部」、「CCD出力信号伝送線」は、本件発明2の「ユニバーサルコード」、「電気コネクタ部」、「金属部材」、「導電性を有する金属皮膜処理を施した部材」、「外装部材」、「信号ケーブル」に相当するから、
両者は、「挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有する電子内視鏡において、前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部の少なくとも2つに導電性の金属部材、又は導電性を有する金属皮膜処理を施した部材で構成された外装部材を設け、前記外装部材を互いに等電位になるように接続したことを特徴とする内視鏡装置。」である点で一致し、「固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、外装部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられる電磁妨害手段の電位と前記外装部材の電位とを等しくした」という構成を有しているのに対して、刊行物1記載の発明では、そのような構成を有していない点で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
本件発明2の「外装部材」、「金属部材」、「導電性を有する金属皮膜処理を施した部材」に相当する部材は、いずれも刊行物1に記載される事項であり、しかもこの相違点に係る「外装部材」は、「金属部材」、又は「導電性を有する金属皮膜処理を施した部材」で構成された部材であるから、この相違点は、前記した[本件発明1について]で説示したのと同様の理由により当業者が容易に想到しえたものと認められ、上記発明の奏する効果も、刊行物1、3に記載の各技術事項が奏する効果以上のものが期待できるとも認められない。
したがって、本件発明2は、刊行物1、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

[本件発明3について]
本件発明3は、本件発明1又は2の構成要件を全て含み、さらに操作部について「操作部には操作部支持板が設けられ、この操作部支持板が前記金属部材又は外装部材に電気的に接続されることによって、前記電磁妨害手段と等電位にした」という構成要件を付加したものに相当する。
そして、刊行物4には、第8図〜第10図に示される、第2実施例である電子内視鏡においても、操作部15内には、金属よりなる地板24が、一対のフレーム123、連結部本体127、テーパ134部を介して、挿入部3の挿入管体137まで連結されている旨の記載があり、さらに、第1実施例におけるイメージガイド16の代わりに、前記信号線220が挿通される構成が示されていると認められる。
ところで、刊行物4と同種の内視鏡において、操作部内から挿入部まで連結されている地板と地板に連結される部材のそれぞれを金属製とすることは周知(特開平4-227224号公報、特開昭59-34238号公報等を参照)の技術的事項である。
してみると、本件発明3の操作部支持板に相当する前記刊行物4の地板24とこの地板24から挿入部内まで連結される部材のそれぞれを金属製とすることにより、本件発明3の前記した「操作部には操作部支持板が設けられ、この操作部支持板が前記金属部材又は外装部材に電気的に接続される」という構成とすることは当業者が容易に想到しえたものと認められる。
結局、本件発明3は刊行物1記載発明に刊行物3、4に記載の技術思想及び周知技術を適用することにより当業者が容易に想到しえたものと認められ、上記発明の奏する効果も、刊行物1、3、4に記載の各技術事項及び周知技術が奏する効果以上のものが期待できるとも認められない。
したがって、本件発明3は、刊行物1、3、4及び周知技術に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明3の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

[本件発明4について]
本件発明4は、本件発明1又は2の構成要件を全て含み、さらに信号ケーブルについて「信号ケーブルを被覆するシールドが設けられると共に、該シールドを回路上のグランドに接続した」という構成要件を付加したものに相当する。
ところで、電子内視鏡装置に係るものである刊行物5には、本件発明4の「信号ケーブル」に対応する「CCD出力信号伝送線21b」が総合シールド被覆線84bでシールドされ、さらに、この総合シールド被覆線84bが患者回路30のGNDに接続された構成が示されている。そして、この刊行物5に示される技術思想を限定的に付加することに当業者が格別困難性を要するとは認められないから、本件発明4は刊行物1記載発明に刊行物3、5に記載の技術思想を適用することにより当業者が容易に想到しえたものと認められ、上記発明の奏する効果も、刊行物1、3、5に記載の各技術事項が奏する効果以上のものが期待できるとも認められない。
したがって、本件発明4は、刊行物1、3、5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(5)[結び]
したがって、本件の請求項1ないし4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
内視鏡装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有し、前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部のうちの少なくとも2つに金属部材を有する電子内視鏡を備えた内視鏡装置において、
前記金属部材を互いに等電位になるように接続すると共に、前記固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、前記金属部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられる電磁妨害手段の電位と金属部材の電位とを等しくしたことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】 挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有する電子内視鏡において、
前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部の少なくとも2つに導電性の金属部材、又は導電性を有する金属皮膜処理を施した部材で構成された外装部材を設け、前記外装部材を互いに等電位になるように接続すると共に、前記固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、前記外装部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられる電磁妨害手段の電位と前記外装部材の電位とを等しくしたことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項3】 前記操作部には操作部支持板が設けられ、この操作部支持板が前記金属部材又は外装部材に電気的に接続されることによって、前記電磁妨害手段と等電位にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡装置。
【請求項4】 前記信号ケーブルには、この信号ケーブルを被覆するシールドが設けられると共に、該シールドを回路上のグランドに接続したことを特徴とする請求項1又は2記載の内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子内視鏡からの不要輻射ノイズの放射を低減する内視鏡装置に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より、細長の挿入部を体腔内に挿入することによって体腔内の患部等を観察したり、必要に応じて処置具を内視鏡の鉗子チャンネル内に挿通して治療処置のできる内視鏡が広く用いられている。前記内視鏡としては、例えば、挿入部の先端部にCCD等の固体撮像素子を内蔵し、この固体撮像素子で光電変換した信号を信号ケーブルで伝送し、信号処理手段であるビデオプロセッサで変換した映像信号をモニタ装置にカラー表示するようにした電子内視鏡装置が使用されている。
【0003】
前記固体撮像素子からビデオプロセッサに信号ケーブルを介して伝送される電気信号は、高周波信号になっている。このため、電気信号を伝送する信号ケーブルからはノイズが輻射され易い状態になっている。また、内視鏡は、導電性を有する金属部材を多様に組み込んで形成されており、これら複数の金属部材に信号ケーブルやライドガイド等を内蔵させて内視鏡が構成されている。
【0004】
しかし、内視鏡を構成する際、これら内蔵物の金属部材に対する配置位置等についての考慮がなされておらず、組み立て時の作業性を考慮した上での規則性が優先されていた。このため、内視鏡組み立て後に、信号ケーブルなどが外装を形成する金属部材から離れて、ノイズの輻射が増加する傾向にあった。
【0005】
そこで、特開平4-183432号公報にはフェライトコア等の不要輻射ノイズ低減部材をノイズ発生源に設けて不要輻射ノイズの放射を防ぐようにした電子内視鏡装置が示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平4-183432号公報に示された電子内視鏡装置を構成するためには不要輻射ノイズ低減部材をノイズが発生するライン毎にそれぞれ設ける必要があるので大幅なコストアップを招くばかりでなく、不要輻射ノイズ低減部材を取り付けるための空間も必要になり、デッドスペースが増えて装置が大型化するという不具合が生じる。このため、不要輻射ノイズ低減部材の使用数を制限しなければならなくなる。
【0007】
一方、電子内視鏡を備える内視鏡装置では、一般とレベルの異なる各種信号が扱われるので電子内視鏡から放射する不要な輻射ノイズをできるだけ抑制すること、すなわち、電気機器装置に対するEMI(電磁妨害を与える問題)対策を十分に施すことが望まれている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、固体撮像素子を有する電子内視鏡からの不要輻射ノイズの放射を低減する内視鏡装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の内視鏡装置は、挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有し、前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部のうちの少なくとも2つに金属部材を有する電子内視鏡を備えた内視鏡装置において、前記金属部材を互いに等電位になるように接続すると共に、前記固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、前記金属部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられる電磁妨害手段の電位と金属部材の電位とを等しくしたことを特徴とする。
また、本発明による内視鏡装置は、挿入部と操作部を有し、前記挿入部に固体撮像素子が内蔵される電子内視鏡と、該電子内視鏡から延出するユニバーサルコードと、このユニバーサルコードに設けられる電気コネクタ部とを有する電子内視鏡において、前記挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部の少なくとも2つに導電性の金属部材、又は導電性を有する金属皮膜処理を施した部材で構成された外装部材を設け、前記外装部材を互いに等電位になるように接続すると共に、前記固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を、前記外装部材に密着させることによって、前記信号ケーブルに設けられる電磁妨害手段の電位と前記外装部材の電位とを等しくしたことを特徴とし、また、前記操作部には操作部支持板が設けられ、この操作部支持板が前記金属部材又は外装部材に電気的に接続されることによって、前記電磁妨害手段と等電位にしたことを特徴とし、更に、前記信号ケーブルには、この信号ケーブルを被覆するシールドが設けられると共に、該シールドを回路上のグランドに接続したことを特徴とする。
【0010】
【作 用】
上記構成においては、信号ケーブルに設けられている電磁妨害手段が、挿入部、操作部、ユニバーサルコード、及び電気コネクタ部のうちの少なくとも2つの金属部材に密着して内視鏡内部からの不要輻射ノイズの放射が低減される。
【0011】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1ないし図5は本発明の一実施例に係り、図1は内視鏡装置の概略構成を示す説明図、図2は信号ケーブルへの電磁妨害手段の電気結線図、図3は図1のA-A断面図、図4は図1のB-B断面図、図5は図1のC-C断面図である。
【0012】
図1に示すように内視鏡装置1は、固体撮像素子2を内蔵した電子内視鏡3と、この電子内視鏡3に照明光を供給する光源装置4と、前記電子内視鏡内の固体撮像素子2の駆動及びこの固体撮像素子2から出力される信号の処理を行うビデオプロセッサ5などで構成されている。なお、符号16は後述する鉗子口金である。
【0013】
前記電子内視鏡3は、細長で例えば可撓性を有する挿入部6を備え、この挿入部6の後端に太径の操作部7を連設している。前記操作部7の側方からは、可撓性を有するユニバーサルケーブル8が延出しており、このユニバーサルケーブル8の先端部分には前記光源装置4に着脱自在な接続部となるスコープコネクタ部9が設けられている。このスコープコネクタ部9の側部には前記ビデオプロセッサ5に接続される接続ケーブル10の接続部となる電気コネクタ部11が設けられている。また、前記操作部7にはモニタ画面に表示される内視鏡像のフリーズ等、前記ビデオプロセッサ5に対するコントロールを行うスイッチ部12が設けられている。
【0014】
この電子内視鏡3の挿入部6の先端部に内蔵されている固体撮像子2から延出する信号ケーブル13は、挿入部6,操作部7及びユニバーサルコード8の内部を挿通してスコープコネクター部5の電気コネクタ部11に接続している。前記信号ケーブル13にはシールド性強化のため電磁妨害手段として第1のシールド21が全長に渡って被せてある。
【0015】
前記電子内視鏡の挿入部6、操作部7,スイッチ部12,ユニバーサルコード8及び電気コネクタ部11のそれぞれの外装は、導電性を有する金属部材、もしくは、導電性を有する金属被膜処理を施した部材で構成されている。
【0016】
そして、前記挿入部6と操作部7との接続部,操作部7とスイッチ部12との接続部,スイッチ部12とユニバーサルコード8との接続部及びユニバーサルコード8と電気コネクタ部11との接続部は、それぞれ導電面同志を接触させて電気的な導通を確保した構造になっている。このため、前記電子内視鏡3の内蔵物は、等電位に接続された金属部材によって包囲されている。
【0017】
図2に示すように前記固体撮像素子2で光電変換された電気信号は、信号ケーブル内の芯線14,14…を伝送されて、ビデオプロセッサ5の内部に配設されている回路基板15に接続されている。
【0018】
前記固体撮像素子2から出力される電気信号を伝送する信号ケーブル13は、複数の芯線14,14…で形成されているので、各芯線14には種々の駆動周波数を有する電気信号が伝送されていく。このため、信号線同志のノイズ干渉が考えられるので各芯線14に第2のシールド22を被せて、擬似的な同軸線24を構成することでノイズの干渉を回避するようにしている。すなわち、前記芯線14と第2のシールド22とにより同軸線24が構成されることにより、前記信号ケーブル13は、複数の同軸線24,24…から形成されることになる。
【0019】
前記信号ケーブル13を構成する各同軸線24は、前記第2のシールド22によってシールドされてはいるが、この同軸線24からノイズが漏れることも考えられるので前記複数の同軸線24,24…に第3のシールド23を被覆している。そして、前記第2のシールド22及び第3のシールド23を回路上のGNDに接続している。
【0020】
また、前記第2のシールド22及び第3のシールド23で抑えきれない信号線同志の電位差が原因となる静電結合によるノイズや信号の電流が原因となる電磁誘導によるノイズ等の不要輻射ノイズをシールドするため、前記信号ケーブル13の最外層に第1のシールド21を被せる一方、この第1のシールド21を電子内視鏡2を構成する金属部材25に接続している。
【0021】
なお、この第1のシールド21は、高周波処置時などでの患者への電気安全性を考慮して前記芯線14,第2のシールド22及び第3のシール19に対して絶縁されている。また、前記第1のシールド21は例えば、密度50%以上のシールド用金属ブレードであり、内視鏡内部の充填量が許す限り信号ケーブル13に何重に被せても構わない。
【0022】
図3に示すように電子内視鏡2の挿入部6の内部にはライトガイド26,信号ケーブル13,吸引管路27,送気・送水管路28などが配設されている。これら内蔵物を挿通するための内部空間29を挿入部6に形成するため、この挿入部6を構成する最内層部には挿入部6の骨組みを兼ねると共に、挿入部6の外装金属となる挿入部用金属部材31を配設している。そして、電位差によって発生するノイズを低減するため、前記信号ケーブル13を被覆する第1のシールド21を前記挿入部用金属部材31に対して密接する位置または近接する位置に配置している。なお、符号41は内視鏡の湾曲部を上下左右方向に湾曲させるための操作ワイヤである。
【0023】
また、図4に示すようにユニバーサルコード8の内部にも前記挿入部6と略同様にライトガイド26,信号ケーブル13,吸引管路27,送気・送水管路28などが配設されている。これら内蔵物を挿通するための内部空間30をユニバーサルコード8に形成するため、このユニバーサルコード8を構成する最内層部にはユニバーサルコード8の骨組みを兼ねると共に、ユニバーサルコード8の外装金属となるユニバーサルコード用金属部材32を配設している。そして、電位差によって発生するノイズを低減するため、前記信号ケーブル13を被覆する第1のシールド21を前記ユニバーサルコード用金属部材32に対して密接する位置または近接する位置に配置している。
【0024】
さらに、図5に示すように前記操作部7の樹脂製の操作部ケーシング33とこの操作部7の外装金属となる操作部支持板34とで形成される空間部35にはライトガイド26,信号ケーブル13,吸引管路27,送気・送水管路28などが配設されている。
【0025】
この操作部7には前記挿入部6の先端側に設けた図示しない湾曲部を上下左右方向に湾曲操作するための湾曲制御部42が二点鎖線に示す複数のアングルノブによって形成されている。この湾曲制御部42には支持体として操作部7の外装金属となるアングル用軸36が用いられており、このアングル用軸36が前記操作部支持板34に固定されている。
【0026】
また、前記操作部7の樹脂製の操作部ケーシング33の内面には導電性被膜処理が施されており、内面全面に渡って操作部7の外装金属となる導電性被膜37が形成されている。この導電性被膜37は、前記操作部支持板34の側部に設けた弾性を有する押圧部材38によって常に導電性被膜37と操作部支持板34とが接触した状態になっているので、操作部7に設けられているの外装金属部材である操作部支持板34,アングル用軸36及び導電性被膜37が等電位になっている。
【0027】
そして、この操作部7においても電位差によるノイズの発生を低減するため、前記信号ケーブル13を被っている第1のシールド21を操作部支持板34、導電性被膜37あるいはアングル用軸36に対して密接する位置または近接する位置に配置している。
【0028】
なお、前記挿入部6、操作部7及びユニバーサルコード8以外の部分においても前記信号ケーブル13を被覆している第1のシールド21は、金属部材、もしくは導電性被膜などの外装金属となる金属部材に対して密接する位置または近接する位置に配置されている。
【0029】
このように、信号ケーブルを全長にわたって被っている第1のシールドを、電子内視鏡を構成する挿入部、操作部及びユニバーサルコードの金属部材や導電性被膜など金属部材同士が等電位に接続された外装金属に対して密接する位置または近接する位置に配置されていることにより、内視鏡を用いて検査・処置を行う際、前記第1のシールドの一部が必ず電子内視鏡を構成する挿入部、操作部及びユニバーサルコードの外装金属と電気的に等電位になることにより、電位差によって発生するノイズを低減することができる。
【0030】
また、信号ケーブルを被覆する第2のシールド及び第3のシールドを回路上のGNDに接続しているので、このGNDにより第2のシールド及び第3のシールドに乗ったノイズが逃がされるので、システムの信号系に悪影響を及ぼすことがない。
【0031】
図6及び図7を参照して前記実施例の変形例を説明する。
図6に示すように本実施例の電子内視鏡3の挿入部6は、先端部61,湾曲部62、軟性部63を連接している。前記先端部61は、前部ブロック64と後部ブロック65とにより形成され、撮像部66及び鉗子挿通口67を配置できるような加工が施されている。そして、先端部61を形成する後部ブロック65には、湾曲部62を形成する湾曲部第1関節駒62aが嵌挿されている。一方、前記湾曲部62を形成する湾曲部最終関節駒62zは、軟性部63の湾曲部固定用口金68に嵌挿されている。なお、前記先端部61の後端部,湾曲部62の全体及び軟性部63の先端側一部の外表面は弾性を有する湾曲部被覆部材69によって覆われている。
【0032】
前記湾曲部第1関節駒62aには先端部61を所望の方向に向けるために連接されている湾曲部62を湾曲させるアングルワイヤ41が接続されている。このアングルワイヤ41は、内視鏡先端面を上下左右に湾曲させるため複数設置することが可能である。このアングルワイヤ41が挿通する軟性部63には摩擦による悪影響が軟性部63に及ばないように前記アングルワイヤ41を挿通させるアングルコイルパイプ70が設けられている。このアングルコイルパイプ70及び前記アングルワイヤ41は導電性材質で形成されている。
【0033】
図7に示すようにアングルコイルパイプ70の先端部は、前記湾曲部固定用口金68の内径側円周面の任意の位置に半田等で確実に密着して固定されるようになっており、ライドガイト9、送気・送水管路28、鉗子挿入口67などとの干渉を回避するように配設されている。なお、アングルコイルパイプ70の他端部は、操作部7の操作部支持板34などに導通するように接続されている。
【0034】
前記撮像部66からは電気信号を伝送するための信号ケーブル13が延出されており、この信号ケーブル13を1つのアングルコイルパイプ70の中にアングルワイヤ41と共に挿通している。このため、信号ケーブル13とアングルワイヤ41とを挿通するアングルコイルパイプ70aは他のアングルコイルパイプ70より太径になっている。なお、この信号ケーブル13は、撮像部66に設けられている固体撮像素子の特性によって1束ないし複数束の設定がなされる。本実施例においては信号ケーブル13を1束として説明している。その他の構成は前記実施例と同様であり、同部材には同符号を付して説明を省略する。
【0035】
このように、信号ケーブルを導電性を有する金属部材で形成されたアングルコイルパイプ内を挿通させることにより、信号ケーブルより輻射するノイズがアングルコイルパイプを介してGNDに逃がされるので信号ケーブルから輻射するノイズを低減することができる。その他の作用及び効果は前記実施例と同様である。
【0036】
なお、図8及び図9に示すように湾曲用のアングルワイヤ41を挿通させるアングルコイルパイプ70と信号ケーブル13を挿通させるアングルコイルパイプ70とを別々に構成し、それぞれのアングルコイルパイプ70を前記図6及び図7に示したと同様に湾曲部固定用口金68の内径側円周面の任意の位置に半田等で確実に密着させて固定している。このことにより、信号ケーブル13及びアングルワイヤ41の本数の増加に対応することが可能である。
【0037】
図10を参照して前記実施例の他の変形例を説明する。
図に示すように本実施例の操作部7に設けられている操作部支持板34には挿入部6及びユニバーサルコード8が電気的に接続されている。この操作部支持板34は、導電性を有し、電子内視鏡を構成する各種部材が固定されるため、他の部材よりも形状的に大きく、強固な部材になっている。このため、この操作部支持板34は、一種のコンデンサーになっている。また、この操作部支持板34の形状が大きいことから電気容量の大きいコンデンサーと等価することができる。
【0038】
電子内視鏡内を挿通する信号ケーブル13には電磁妨害手段として第1のシールド21が信号ケーブル13の全長、もしくは、ノイズを大量に輻射する部分に被せるようになっている。例えば、ノイズを大量に輻射する操作部内部に第1のシールド21を被せる場合など、前記第1のシールド21を保持するため、末端部に熱収縮チューブ71を被せる。この熱収縮チューブ71を被せる際、第1のシールド21の末端にジャンパー線72の一端を半田付け等で接続する一方、ジャンパー線72の他端をビス73によって操作部支持板34に接続して、前記第1のシールド21と操作部支持板34とを等電位に設定している。
【0039】
また、この第1のシールド21の被さっている信号ケーブル13は、挿入部側、あるいはユニバーサルコード側から引っ張られた際、引張力による信号ケーブル13の断線を回避するため、操作部支持板34に係止されている固定部材74の周囲にケーブルループ部75を形成して組み付けている。その他の構成は前記実施例と同様であり、同部材には同符号を付して説明を省略する。
【0040】
このように、信号ケーブルを被覆している第1のシールドが操作部内の操作部支持板に電気的に確実に接続されて等電位に設定されているので、信号ケーブルから輻射するノイズの発生が抑えられて輻射ノイズが低減する。また、信号ケーブルを被覆している第1のシールドが接続されている操作部支持板が電気容量の大きな金属部材であるため、信号ケーブルに混入したノイズが操作部支持板に貯積されて放出され難くなって輻射量が低減する。その他の作用及び効果は前記実施例と同様である。
【0041】
ところで、従来より電子内視鏡を構成する挿入部、操作部及びユニバーサルコードなどを形成する金属部材を、互いに面接触させてビスなどで固定し、電気的な導通を図って内視鏡全体を導通経路にすることにより、信号ケーブルからの不要輻射ノイズをGNDへ逃がしてノイズを抑えるようにする方法がある。しかし、面接触部分の接触面積が不十分で非導通になったり、部材同士を接続する固定用ビスの螺合部分の接触にばらつきが生じて非導通になることがあった。
【0042】
また、部材同士の接続部に接着剤を用いたものではこの接着層が絶縁膜になって非導通状態を招くことがあった。さらに、金属部材同士が離れて設置された場合には非導通状態の部分ができ、この部分に浮遊容量が発生して不要輻射ノイズを放射する可能性があった。このため、不要輻射ノイズを減少させるため、電子内視鏡の挿入部先端からスコープコネクター部までの金属部材同士を確実に電気的に導通させて接続することが望まれていた。
【0043】
そこでまず、操作部7での部材同士の電気的な導通を確実に取るための接続方法を説明する。
図11に示すように本実施例では操作部支持板34とアングル用軸36とを接続する際、前記操作部支持板34に形成してある軸孔34aにアングル用軸36の軸部36aを挿入し、操作部支持板34に形成してあるビス穴76とアングル用軸36に形成してある皿孔部77とを一致させ、ビス78を螺合して操作部支持板34とアングル用軸36とを密着固定している。このとき、前記アングル用軸36の下部に設けてあるフランジ部36bの上面と操作部支持板34の下面とが接触面79になるので、この接触面79の密着性を向上させるためフランジ部36bの上面と操作部支持板34の下面とを滑らかに仕上げている。このことにより、操作部支持板とアングル用軸と接触面が安定して導通をより確実にすることができる。
【0044】
また、図12に示すようにビス78を螺合させる際の前処理として、ビス78のネジ山部78a及び皿部78bの全周に導電性接着剤80を塗布しておくことにより、前記操作部支持板34とアングル用軸36とをビス78を螺合して密着させている。このことにより、ビスに塗布した導電性接着剤に配合されている導電材がビスとビス穴及びビスと皿孔部との間に侵入して密着性がさらに向上するので導通がより確実になる。
【0045】
さらに、図13に示すように操作部7に設けた送気・送水制御部を形成する送気・送水シリンダ81及び吸引制御部を形成する吸引シリンダ82を、それぞれジャンパー線72を介して操作部支持板34に電気的に接続している。このことにより、設置位置が離れた金属部材同士がジャンパー線を介して確実に電気的に接続される。
【0046】
ここで、操作部7に配設されているスイッチ部12について説明する。
図14に示すように、従来の電子内視鏡3の操作部7に設けられているスイッチ作動用弾性部材83には台座87の第1の開口部84の下部に位置する図示しない制御部材を押圧するための部材として第1の支持体85が埋め込まれている。このスイッチ作動用弾性部材83と操作部ケーシング33とを一体成型することは困難である。このため、前記スイッチ作動用弾性部材83の内側部に形成してある空間部86に金属製の台座87を挿入し、この台座87の下部に設けてあるネジ部87aに固定用ナット88を螺合させて、スイッチ作動用弾性部材83を操作部ケーシング33に固定していたが、隙間89ができてしまうため、この隙間89から内部からの輻射ノイズが漏れてしまったり、ノイズが混入していた。
【0047】
このため、図15に示すように図14に示した第1の支持体85の代わりに第2の支持体90を配設するようにしている。この第1の支持体85に代わる第2の支持体90は、前記台座87に形成してある第1の開口部84に対して摺動可能な摺動面91を有している。その他の構成は図14と同様であり、同部材には同符号を付して説明を省略する。
【0048】
このように、スイッチ作動用弾性部材に埋め込む第2の支持体を台座の第1の開口部に対して摺動する構造にすることにより隙間が無くなり、輻射ノイズの漏れや外部からの混入ノイズを低減することができる。
【0049】
なお、図16に示すように前記スイッチ作動用弾性部材83を粉末状ノイズ吸収体92を含有した樹脂材料を用いて型成形により製作している。この粉末状ノイズ吸収体92としてはカーボンブラック、フェライト、アクリロニトリル-硫化銅複合体繊維、カーボニル鉄系材料等、電波吸収性を有するものである。このことにより、操作部7の内側からの輻射ノイズ、スイッチ部12の外部からの混入ノイズが粉末状ノイズ吸収体103によって吸収される。その他の構成及び作用・効果は図15に示すものと同様である。
【0050】
次に、挿入部6の先端部61での部材同士の電気的な導通を確実に取るための接続方法を説明する。
図17及び図18に示すように挿入部6の先端部61は、撮像部66及び鉗子挿通口67を設けた後部ブロック65と、この後部ブロック65及び撮像部66の先端を保護する前部ブロック64とにより形成されている。そして、先端部61を形成する後部ブロック65の後端部には、湾曲部62を形成する湾曲部第1関節駒62aが嵌挿されている。そして、前記先端部61の後端部及び湾曲部第1関節駒62aの外表面は弾性を有する湾曲部被覆部材69によって覆われている。なお、符号95は湾曲部第1関節駒62aを後部ブロック65に接続するためのビスである。
【0051】
図19に示すように湾曲部第1関節駒62aを後部ブロック65に接続する際、この後部ブロック65の第1駒嵌合部96と湾曲部第1関節駒62aのブロック嵌合部97にそれぞれ導電性接着剤80を適量塗布してから互いを嵌合させる。このことにより、後部ブロック65に湾曲部第1関節駒62aを嵌合させたとき、万一、嵌合部の径寸法のばらつきによって隙間が生じた場合、この隙間に導電性接着剤80が侵入して、この導電性接着剤80に配合されている導電材を介して湾曲部第1関節駒62aのブロック嵌合部97と後部ブロック65の第1駒嵌合部96の間の隙間を埋めることで電気的な導通を確保することができる。
【0052】
ところで、上述のように部材の一部同士を使用して電気的導通を図る場合、特に、表面処理によって電気的に非導通な部材を組み合わせて導通を図るとき、一方の部材に段差部を設け、この段差部の壁部の表面処理部をマスキング等の方法で剥がすと共に、前記部材の壁部に対向する部分の表面処理部を剥がし、双方を突き当て、この突き当て面より離れた位置をビス固定する構造が用いられている。このとき、壁部の突き当てを確保するため、壁部を基準に、一方の部材の皿穴の中心線から壁部までの長さと、他方の部材のネジ部の中心線から壁部までの長さとを等しくなるように設定していた。しかし、図20及び図21に示すように部材101,102の出来上がり具合によっては、各中心線の設定位置がばらついてビス103による固定を施した際突き当たらず、隙間xが発生し、突き当て面による電気的導通が困難もしくは図22に示すように不安定になるものがあった。このため、確実な突き当てを行い、隙間xの発生を抑え、且つ電気的な導通を安定して得られる構造が望まれていた。
【0053】
まず、図23に示すように本実施例では湾曲部第1関節駒62aの先端面を突き当てる構成にするため後部ブロック65に段差部110を設けて壁部111を形成する。このことにより、前記湾曲部第1関節駒62aの先端面が突き当る付き当て部111aが設けられる。
【0054】
次に、図24に示すように後部ブロック65の壁部111を基準にして、湾曲部第1関節駒62aのa寸法の位置を中心線112にして皿穴113を形成し、後部ブロック65のb寸法の位置を中心線114にしてビス穴115を形成する。このとき、a寸法とb寸法との間には、必ずa>bの関係が成立し、a-bがビス95のおよそネジ山の高さになるように設定している。このため、図25に示すように皿穴113の壁部111から中心線112までの距離aと、ビス穴115の壁部111から中心線114までの距離bとの間には位置ズレが生じている。
【0055】
上述のように形成した後部ブロック65と湾曲部第1関節駒62aとをビス95で螺合固定する際、まず、後部ブロック65に湾曲部第1関節駒62aを嵌合した後、皿穴の中心線112とビス穴の中心線114とを略一致させる。次に、このビス95を皿穴113に挿通し後部ブロック65に形成してあるビス穴115に螺合していく。すると、皿穴113の中心線112までの距離aとビス穴115の中心線114までの距離bとの間に位置ズレが生じていることから、湾曲部第1関節駒62aが突き当て部111a方向に押圧されていく。そして、ビス95が完全に螺合されたとき、前記湾曲部第1関節駒62aが突き当て部111aで確実に突き当たって、隙間1の発生が抑えられてガタがなくなるので確実で安定した導通を得ることができる。また、ビス95を締め込んでいくことによってビス95のビス山の螺合による押圧力で図23に示すような接触部116が生じて電気的な導通が得られる。
【0056】
なお、図26に示すように後部ブロック65と湾曲部第1関節駒62aとをビス95で螺合固定する代わりにピン117で固定するようにしても同様の作用及び効果を得ることができる。なお、このとき、皿穴113とビス穴115の代わりにピン117を圧入するための透孔118及びピン穴119を形成する。
【0057】
次いで、操作部7の鉗子口金16での電気的な導通を確実に取るための接続方法を説明する。
図27に示すように鉗子口金16には図示しない鉗子を挿通するための鉗子挿通用孔121が形成されており、吸引管路27に連通している。この鉗子口金16から挿通される鉗子は、鉗子挿通用孔121,吸引管路27を通り挿入部6を経て先端部61から突出する。
【0058】
前記吸引管路27と鉗子挿通用孔121とは略Y字形状の吸引管路分岐部材122で連結され、この吸引管路分岐部材122のもう一方の開口にはスコープコネクタ部9まで延出する吸引管路27が連結されている。前記鉗子挿通用孔121と吸引管路分岐部材122とは鉗子口金部123とを介して連結されており、この鉗子口金部123は吸引管路分岐部材122に接続している。この吸引管路分岐部材122は、導電性部材で形成されており、絶縁処理を施した金属部材124に設置されている。この絶縁処理を施した金属部材124は、操作部7の上部側に配設されている導電性部材125に操作部接続部材126を介して設置されている。そして、前記金属部材124と吸引管路分岐部材122及び金属部材124と導電性部材125とはビス127により固定されている。
【0059】
図28を参照して前記金属部材124と吸引管路分岐部材122との固定部及び金属部材124と導電性部材125との固定部での絶縁処理を施した金属部材に対して導電性を確保するための方法を説明する。
【0060】
前記金属部材124は、導電性を有する母材128に絶縁被膜129の処理を施したものであり、一部に固定用のビス皿穴部130が形成されている。このビス皿穴部130の皿部131にも絶縁被膜129が被覆されている。このため、まず、皿部131の絶縁被膜129を剥がすため、ドリル132を用いて絶縁被膜129の切削を行う。そして、図29に示すように前記ドリル107による加工により、皿穴部130の皿部131の絶縁被膜129を剥がした絶縁処理剥離部133を形成することにより、絶縁被膜129で被われた母材128の一部が露出する。なお、ドリルを用いて絶縁被膜を切削する代わりに、マスキングによって絶縁処理剥離部を形成するようにしてもよい。
【0061】
次に、図30に示すように絶縁処理剥離部133を設けた金属部材124の皿穴部130と吸引管路分岐部材122もしくは導電性部材125のビス穴の位置とを合わせてビス127をトルクドライバー134で締め付ける。このときの締付力量としては3kgf・cm以上が適当であり、この締付力量で締め付けることによって確実に固定できると共に、確実に安定した電気的導通を図れる。なお、この締付力量は、内視鏡内において、固定と電気的導通を両立させる部分にも適用できる。
【0062】
このように、絶縁被膜を剥離して適量で締付固定することにより、確実な固定と、安定した電気的導通性が得られる。
【0063】
最後に、スコープコネクタ部9での部材同士の電気的な導通を確実に取るための接続方法を説明する。
図31に示すように樹脂材料で形成されているスコープコネクタ部9のコネクタケース140には第1開口部141,第2開口部142及び第3開口部143が設けられている。前記第2開口部142には、ベース144が嵌挿され、前記第1開口部141、第3開口部143にはそれぞれ第1ブロック145、第2ブロック146が嵌挿されている。前記第1ブロック145及び第2ブロック146はベース144に密接している。
【0064】
前記第3開口部143に嵌挿している第2ブロック146は、ベース144に密接した状態で蓋体147を介して導通ビス148によってねじ込み固定されている。このとき、コネクタケース140には導通ビス148のねじ込みによる応力が働いていない。なお、前記ベース144,導通ビス148及び蓋体147は導電性材料で形成されている。また、反対側の第1開口部141についても同様の固定方法及び材料を使用している。
【0065】
なお、前記第2開口部142には、電気コネクタ部11が挿入されていて、ベース144に止めビス149によって固定されている。また、前記第2ブロック146には吸引管路27を外部タンクに接続する為の吸引管路口金150が埋設されている。さらに、高周波処置による患者への漏れ電流によって害を与えないため、ターミナル受け部151を形成し、ユニバーサルコード8に内装されたグランド線152に接続されているターミナル153を止め金具154と端子155とで圧接している。前記端子155,グランド線152,ターミナル153及び止め金具154は導電性を有する材料である。又、前記第2ブロック146は非導電性で例えばモールド成形品である。これは、高周波電流を用いた処置を行う場合、患者の安全を確保するため、操作部7,挿入部6からの漏れ電流を外部へ逃がすためグランド線152と端子155を介して逃がすことにしているためであり、このためには前記第2ブロック146が非導電性でなければならない。したがって、この部分は、絶縁状態となるので、導通ビス148を介して蓋体147とベース144とを導通させている。
【0066】
このように、非導電性部材を介している場合には、固定するための固定部材を導電性部材にすることにより、固定したときに電気的導通を図ることができる。
【0067】
[付記]
1.挿入部先端部に固体撮像素子を内蔵した電子内視鏡において、前記内視鏡に配設される複数の金属部材同士を等電位に接続すると共に、前記固体撮像素子からの電気信号を伝送する信号ケーブルに設ける電磁妨害手段を前記金属部材に近接または密着させると共に、前記金属部材とを等電位にした内視鏡装置。
【0068】
2.少くとも挿入部内において、電磁妨害手段と金属部材とを近接または密着させている付記1記載の内視鏡装置。
【0069】
3.少くとも操作部内において、電磁妨害手段と金属部材とを近接または密着させている付記1記載の内視鏡装置。
【0070】
4.少くともユニバーサルコード内において、電磁妨害手段と金属部材とを近接または密着させている付記1記載の内視鏡装置。
【0071】
5.段差部と係止穴を有する第1の部材と、この第1の部材の係止穴に略一致する透孔及び前記第1の部材の段差部に突き当たる突き当て面を有する第2の部材との接続において、前記第1の部材の段差部から係止穴までの距離を、前記第2の部材の突き当て面から透孔までの距離より短く設定した接続手段。
このことにより、第1の部材の段差部と第2の部材の突き当て面とが面接触する。
【0072】
6.前記第1の部材の係止穴をビス穴とし、第2の部材の透孔を皿穴とした付記5記載の接続手段。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、固体撮像素子を有する電子内視鏡からの不要輻射ノイズの放射を低減する内視鏡装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1ないし図5は本発明の一実施例に係り、図1は内視鏡装置の概略構成を示す説明図
【図2】信号ケーブルへの電磁妨害手段の電気結線図
【図3】図1のA-A断面図
【図4】図1のB-B断面図
【図5】図1のC-C断面図
【図6】図6及び図7は前記実施例の変形例に係り、図6は挿入部の先端側の構成を示す断面図
【図7】図6のD-D断面図
【図8】図8及び図9は前記変形例の応用例に係り、図8は挿入部の先端側の構成を示す断面図
【図9】前記図6のD-D断面と同一での図8の断面図
【図10】図10は前記実施例の別の変形例に係る操作部内を挿通する信号ケーブルを説明する断面図
【図11】図11ないし図13は操作部での電気的導通を図るための接続方法に係り、図11は操作部支持板とアングル用軸との接続部を説明する断面図
【図12】ビスの導電性接着剤塗布位置を示す説明図
【図13】送気・送水制御部と操作部支持板との接続を示す説明図
【図14】図14ないし図16は操作部のスイッチ部の接続方法に係り、図14は従来のスイッチ部の操作部への接続方法を説明する断面図
【図15】スイッチ部の操作部への接続方法を説明する断面図
【図16】材質を変更したスイッチ部の操作部への接続を示す断面図
【図17】図17ないし図26は挿入部先端部での電気的導通を図るための接続方法に係り、図17は先端部の概略構成を説明する断面図
【図18】図17のE-E断面図
【図19】後部ブロックと湾曲部第1関節駒との接続部を説明する図
【図20】接続部の接続不良状態を示す図
【図21】図20のF矢視図
【図22】接続不良状態の接続部の作用を示す図
【図23】後部ブロックと湾曲部第1関節駒とのビスを用いての接続状態の良い状態を示す断面図
【図24】後部ブロックと湾曲部第1関節駒との寸法設定を説明する図
【図25】後部ブロックと湾曲部第1関節駒とのビス固定の作用を示す図
【図26】後部ブロックと湾曲部第1関節駒とをピンで固定したときの図
【図27】図27ないし図30は鉗子口金の電気的導通を図るための接続方法に係り、図27は鉗子口金近傍を説明する断面図
【図28】金属部材の絶縁被膜を剥離するときの説明図
【図29】絶縁被膜を剥離した金属部材を示す断面図
【図30】接続状態を説明する図
【図31】図31はスコープコネクタ部の電気的導通を図るための接続方法を示す図
【符号の説明】
2…固体撮像素子
3…電子内視鏡
21…第1のシールド(電磁妨害手段)
25…金属部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-02-23 
出願番号 特願平7-101337
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G02B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 森口 良子  
特許庁審判長 上野 信
特許庁審判官 瀬川 勝久
青木 和夫
登録日 2003-07-04 
登録番号 特許第3447422号(P3447422)
権利者 オリンパス株式会社
発明の名称 内視鏡装置  
代理人 伊藤 進  
代理人 伊藤 進  
代理人 三井 和彦  

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