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審決分類 |
審判 全部申し立て 特174条1項 A01C 審判 全部申し立て 2項進歩性 A01C 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 A01C 審判 全部申し立て 発明同一 A01C |
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管理番号 | 1119387 |
異議申立番号 | 異議2003-71977 |
総通号数 | 68 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-07-08 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-04 |
確定日 | 2005-04-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3372738号「移動農機における肥料タンクの取付構造」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3372738号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3372738号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成7年12月21日に特許出願されたものであり、平成14年11月22日にその発明について特許権の設定登録がなされ、この特許に対し、特許異議の申立てがなされ、取消し理由を通知したところ、平成16年4月26日に訂正請求書とともに特許異議意見書が提出され、異議申立人に審尋したところ回答書が提出されたものである。 2.訂正請求について 2-1.訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は、次のとおりである(下線部分が訂正個所である)。 (1)訂正事項a 特許明細書における特許請求の範囲の請求項1に記載された「運転席(8)を備えた走行機体(1)の後方に作業機(11)を連結し、該作業機(11)側には走行機体(1)側に設けられた肥料タンク(31)内の肥料を施肥する施肥部(28)を設け、上記走行機体(1)側には運転席(8)の側方に運転席(8)から作業機(11)側への通路(23)を設けた移動農機において、前記通路(23)の上方に、通路(23)を挟んで肥料タンク(31)を左右回動自在に取付け、回動支点(47)を通路(23)を挟んだ肥料タンク(31)の後方位置であって、運転席(8)の座席(7)より後方に設け、上記肥料タンク(31)の内側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の最大横幅(L)より外側に突出しない状態で走行機体(1)の外側に略沿う格納姿勢(A)にし、肥料タンク(31)の前方の外側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の上記最大横幅(L)より外側に突出して、座席(7)の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢(B)にするように、肥料タンク(31)の回動限界位置を規制した移動農機における肥料タンクの取付構造。」を、 「運転席(8)を備えた走行機体(1)の後方に作業機(11)を連結し、該作業機(11)側には走行機体(1)側に設けられた肥料タンク(31)内の肥料を施肥する施肥部(28)を設け、上記走行機体(1)側には運転席(8)の側方に運転席(8)から作業機(11)側への通路(23)を設けた移動農機において、前記通路(23)の上方に、通路(23)を挟んで肥料タンク(31)を左右回動自在に取付け、回動支点(47)を通路(23)を挟んだ肥料タンク(31)の後方位置であって、運転席(8)の座席(7)の後方寄り側に設け、上記肥料タンク(31)の内側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の最大横幅(L)より外側に突出しない状態で走行機体(1)の外側に略沿う格納姿勢(A)にし、肥料タンク(31)の前方の外側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の上記最大横幅(L)より外側に突出し、且つ苗載せ台(9)の横幅(L’)を越えることをなくして、座席(7)の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢(B)にするように、肥料タンク(31)の回動限界位置を規制した移動農機における肥料タンクの取付構造。」と訂正する。 (2)訂正事項b 特許明細書の段落【0004】(特許公報2頁左欄20〜38行)の記載を次のとおりに訂正する。 「【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するための本発明の移動農機における肥料タンクの取付構造は、運転席8を備えた走行機体1の後方に作業機11を連結し、該作業機11側には走行機体1側に設けられた肥料タンク31内の肥料を施肥する施肥部28を設け、上記走行機体1側には運転席8の側方に運転席8から作業機11側への通路23を設けた移動農機において、前記通路23の上方に、通路23を挟んで肥料タンク31を左右回動自在に取付け、回動支点47を通路23を挟んだ肥料タンク31の後方位置であって、運転席8の座席7の後方寄り側に設け、上記肥料タンク31の内側方向回動時に、肥料タンク31の外側面が走行機体1の最大横幅Lより外側に突出しない状態で走行機体1の外側に略沿う格納姿勢Aにし、肥料タンク31の前方の外側方向回動時に、肥料タンク31の外側面が走行機体1の上記最大横幅Lより外側に突出し、且つ苗載せ台9の横幅L’を越えることをなくして、座席7の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢Bにするように、肥料タンク31の回動限界位置を規制したことを第1の特徴としている。」 2-2.訂正の適否 (1)訂正事項aについて 上記訂正事項aにおいて、「運転席(8)の座席(7)より後方に」を「運転席(8)の座席(7)の後方寄り側に」とする訂正は、特許査定時の「運転席(8)の座席(7)より後方に」が、「運転席(8)の座席(7)寄りの後方に」と「運転席(8)の座席(7)よりも後方に」の2通りに解釈でき、不明瞭であったものを、「運転席(8)の座席(7)の後方寄り側に」と明瞭にするものであるから、上記訂正事項aによる訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 また、上記訂正事項aにおいて、 「肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の上記最大横幅(L)より外側に突出して、座席(7)の側方に乗降用の空間を形成せしめる」を、「肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の上記最大横幅(L)より外側に突出し、且つ苗載せ台(9)の横幅(L’)を越えることをなくして、座席(7)の側方に乗降用の空間を形成せしめる」とする訂正は、「苗載せ台(9)の横幅(L’)を越えることをなくして」の構成を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、「苗載せ台(9)の横幅(L’)を越えることをなくして、座席(7)の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢(B)にするように、肥料タンク(31)の回動限界位置を規制」することについては、特許明細書に「リヤ施肥タンク31の揺動が規制(揺動角度が決定)されており、さらにこのとき(作業位置Bにおいて)リヤ施肥タンク31が、苗載せ台9の横幅L′を越えることもない。」(段落【0024】)と記載されており、前記訂正はこの記載に基づくものであるから、訂正事項aによる訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項bについて 上記訂正事項bは、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項bによる訂正は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて 3-1.異議申立て理由の概要 異議申立人は、下記の証拠方法を提示し、本件の特許は次の理由により特許法第113条第1号、第2号及び第4号の規定により取り消されるべきである旨主張している。 (1)本件明細書における査定前にされた補正は本件の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内において成されたものでないから、本件請求項1及び2の特許は特許法第17条の2の規定に違反して特許されたものである(以下、「取消理由1」という。)。 (2)本件請求項1に係る発明は明確でないから、その特許は特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものである(以下、「取消理由2」という。)。 (3)本件請求項1に係る発明は、先願明細書(甲第1号証)に記載された発明と実質的に同一であるから、その特許は特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものである(以下、「取消理由3」という。)。 (4)本件請求項1に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第2及び3号証に記載された発明並びに甲第4及び5号証に示された周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(以下、「取消理由4」という。)。 記 甲第1号証:特開平9-56215号公報 甲第2号証:実願昭58-82846号(実開昭59-187921号)のマイクロフイルム 甲第3号証:実公昭56-5856号公報 甲第4号証:実開平3-117412号公報 甲第5号証:特開平6-327326号公報(拒絶理由で引用) 甲第6号証:実公平7-42262号公報 甲第7号証:特開昭61-177908号公報 甲第8号証:特開昭63-22772号公報 甲第9号証:特開平7-274647号公報 甲第10号証:特開平2-231276号公報 資料1:特開平9-172829号公報 資料2:本件出願(特願平7-349720号)の発送番号144210の拒絶理由通知書に対する意見書 3-2.本件特許発明 上記「2.訂正請求について」で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1及び2に係るに係る発明は、訂正後の特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】運転席(8)を備えた走行機体(1)の後方に作業機(11)を連結し、該作業機(11)側には走行機体(1)側に設けられた肥料タンク(31)内の肥料を施肥する施肥部(28)を設け、上記走行機体(1)側には運転席(8)の側方に運転席(8)から作業機(11)側への通路(23)を設けた移動農機において、前記通路(23)の上方に、通路(23)を挟んで肥料タンク(31)を左右回動自在に取付け、回動支点(47)を通路(23)を挟んだ肥料タンク(31)の後方位置であって、運転席(8)の座席(7)の後方寄り側に設け、上記肥料タンク(31)の内側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の最大横幅(L)より外側に突出しない状態で走行機体(1)の外側に略沿う格納姿勢(A)にし、肥料タンク(31)の前方の外側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の上記最大横幅(L)より外側に突出して、且つ苗載せ台9の横幅(L’)を越えることをなくして、座席(7)の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢(B)にするように、肥料タンク(31)の回動限界位置を規制した移動農機における肥料タンクの取付構造。 【請求項2】肥料タンク(31)の回動支点(47)を平面視で作業機(11)の前端より前方位置に設け、回動範囲を肥料タンク(31)の後方部分が回動支点(47)の後方に突出しない範囲に規制した請求項1の移動農機における肥料タンクの取付構造。」(以下、請求項1に係る発明を「本件発明」という。) 3-3.特許法第17条の2の規定違反(取消理由1)について 異議申立人は、平成14年7月29日付けの手続補正で補正された、特許請求の範囲における「回動支点(47)を・・・運転席(8)の座席(7)より後方に設け」た構成は、本件の出願当初の明細書または図面に記載されておらず、本件請求項1及び2に係る発明は、特許法第17条の2第3項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は特許法第113条第1号の規定により取り消されるべきである旨主張する。 しかしながら、上記「2-2.訂正の適否」における「(1)訂正事項aについて」に記載したとおり、「回動支点(47)を・・・運転席(8)の座席(7)より後方に設け」を、「回動支点(47)を・・・運転席(8)の座席(7)の後方寄り側に設け、」とする訂正が認められるから、異議申立人が主張する取消理由は解消された。 3-4.特許法第36条の規定違反(取消理由2)について 異議申立人は、特許請求の範囲に記載された「回動支点(47)を通路(23)を挟んだ肥料タンク(31)の後方位置であって、運転席(8)の座席(7)より後方に設け、」における「肥料タンク(31)の後方位置」は、「肥料タンク(31)の範囲内のうちの後方位置」と「肥料タンク(31)よりも後方位置に」との二通りの意味を含むような解釈をすることができるから、特許請求の範囲の記載が不明瞭である旨主張する。 しかしながら、特許請求の範囲に記載された「肥料タンク(31)の後方位置」は、出願当初から記載されていて、肥料タンク(31)の後の方の位置の意味であって明確であり、しかも、本件発明の作用効果を奏するものであるから、明細書の記載が不備であるとはいえない。 3-5.特許法第29条の2の規定違反(取消理由3)について 3-5-1.先願明細書記載の発明 特願平7-215563号(特開平9-56215号公報(甲第1号証))の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、次の記載が認められる。 (a)「ペースト肥料を圃場に供給する肥料供給部(23)が備えられた苗植付装置(10)を自走機体の後部に昇降操作自在に連結してある施肥装置付き田植え機であって、 前記肥料供給部(23)に肥料供給するための肥料タンク(T2)を前記自走機体の運転座席(4)の横側と乗降用口(9)の横側とにわたって位置する第1取り付け姿勢と、前記乗降用口(9)の横側を開放する第2取り付け姿勢とに切り換え自在に前記自走機体に取り付けてある施肥装置付き田植え機。」(特許請求の範囲の請求項1)、 (b)「図1に示すように、前車輪1および後車輪2を駆動可能に備え、機体前部に位置するエンジンボンネット3を有した原動部、この原動部の後方に位置する運転座席4を有した運転部、前記エンジンボンネット3の両横側に位置する第1肥料タンクT1および予備苗載せ台5、前記運転部の横側に位置する第2肥料タンクT2を備えた自走機体の後部に、リフトシリンダ6によって上下に揺動操作されるリンク機構7を介して昇降操作するように構成して苗植付装置10を連結するとともに、自走機体から回転軸8によって苗植付装置10に動力伝達するように構成してある。」(2頁右欄21〜31行)、 (c)「図1および図6に示すように、自走機体の後輪フェンダー40などを形成している上部構造体にタンク支持体41を備え、前記第2肥料タンクT2から延出している取付け杆43を前記タンク支持体41の後輪フェンダー40から後車輪2の上方に突出しているタンク取付け部42の支持筒部42aに連結することにより、第2肥料タンクT2を自走機体に取り付けてある。前記取付け杆43を前記支持筒部42aに対して自走機体上下方向の軸芯Xまわりで回動するように構成することにより、第2肥料タンクT2を自走機体に対して前記軸芯Xまわりで回動操作でき、この回動操作を行うことにより、第2肥料タンクT2の自走機体に対する取り付け姿勢が図5に実線で示す第1取付け姿勢と、同図に仮想線で示す第2取付け姿勢とに切り換えられるようにしてある。前記第1取付け姿勢として、第2肥料タンクT2の長手方向が自走機体の前後向きになるとともに第2肥料タンクT2の前記ホース30bが連結している一端側が後方側になる状態で前記運転座席4の横側と、運転座席4と原動部の間の乗降用口9とにわたって位置し、第2肥料タンクT2が機体横外側への突出が少なくなるように機体内側に寄って位置するとともに第2肥料タンクT2の一端側と他端側のいずれの蓋付き投入口部Cにも運転座席4から手が容易に届く取り付け姿勢を設定してある。前記第2取付け姿勢として、第2肥料タンクT2の長手方向が自走機体の横向きになって前記乗降口9を開放し、運転部に乗ったり運転部から降りたりすることの障害にならない取付け姿勢を設定してある。第2肥料タンクT2を第1取付け姿勢や第2取付け姿勢に切り換えた際には、前記タンク取付け部42に摺動自在に備えてあるロックピン44をロックばね45の付勢力によって前記取付け杆43のピン孔に入り込ませて取付け杆43を回動しないようにロックすることにより、第2肥料タンクT2を第1取付け姿勢や第2取付け姿勢に固定できる。そして、第2肥料タンクT2の姿勢切り換えを行う際には、前記タンク取付け部42に取り付けてあるロック解除レバー46を揺動操作し、ロックピン44をロックばね45に抗して取付け杆43から抜き外すことにより、第2肥料タンクT2の回動ロックを解除できる。」(4頁左欄6〜44行)、 (d)図1、図5及び図6の記載からみて、運転座席4と収納状態にある第2肥料タンクT2との間に運転部から苗植付装置10側へ移動できる空間が存在していることが示されている。 上記の記載及び図面の記載からみて、先願明細書には、 運転部を備えた自走機体の後方に苗植付装置(10)を連結し、該苗植付装置(10)側には自走機体側に設けられた第2肥料タンク(T2)内の肥料を施肥する肥料供給部(23)を設け、 上記自走機体側には運転席の側方に運転部から苗植付装置(10)側へ移動できる空間を設けた田植え機において、 前記移動空間を形成する機体上面よりも上方で、移動空間を挟んで第2肥料タンク(T2)を左右回動自在に取付け、 第2肥料タンク(T2)の回動軸芯(X)を移動空間を挟んだ第2肥料タンク(T2)の後方位置であって、運転部の運転座席(4)の後方寄り側に設け、 上記第2肥料タンク(T2)の内側方向回動時に、第2肥料タンク(T2)の外側面が、両側に位置する第1肥料タンク(T1)より外側に突出しない状態で自走機体に略沿う格納姿勢にし、第2肥料タンク(T2)の前方の外側方向回動時に、第2肥料タンク(T2)の外側面が、第1肥料タンク(T1)より外側に突出して、運転座席(4)の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢にするように、第2肥料タンク(T2)の回動する乗用型田植機における肥料タンクの取付構造(以下、「先願明細書の発明」という。)が記載されていると認められる。 3-5-2.対比・判断 本件発明と先願明細書の発明とを対比すると、両者は、 本件発明が、「肥料タンク(31)の前方の外側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体の上記最大横幅(L)より外側に突出し、且つ苗載せ台(9)の横幅(L’)を越えることをなくして、座席(7)の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢(B)にするように、肥料タンク(3)の回動限界位置を規制し」ているのに対し、先願明細書の発明は、肥料タンク(第2肥料タンクT2)の前方の外側方向回動時に、肥料タンクの外側面が走行機体(自走機体)の上記最大横幅(L)より外側に突出し、且つ苗載せ台(苗載せ台14)の横幅を越えて回動する点で構成が相違する。 上記相違点について検討するに、運転席(8)の側方に左右回動自在に取付けた肥料タンク31を外側方向に回動する際に、肥料タンクの外側面が苗載せ台の横幅を越えないように回動限界位置を規制することは、異議申立人が提示した、甲第3号証、特開平3-244303号公報(回答書で提示した資料3)、特開平5-304805号公報(回答書で提示した資料4)をみても、周知技術ということができないから、本件発明が、先願明細書の発明と同一であるとすることはできない。 3-6.特許法第29条第2項の規定違反(取消理由4)について 3-6-1.甲号各証記載の発明 (1)甲第2号証(実願昭58-82846号(実開昭59-187921号)のマイクロフイルム)には、次の記載が認められる。 (1-a)「8は走行機体1の後方に支架された田植装置であって、・・・リンク12により上下方向に昇降可能に構成されている。」(3頁4〜8行)、 (1-b)「17,17は座席5の左右両側方に設けた液体肥料施肥用のタンクで、ポンプ18、インジケーター19及びフロート11下方に突出させたノズル20間はそれぞれパイプにより連結されていて、タンク17内の肥料がポンプ18により土中に吐出されるようになっている。」(第4頁7〜12行)、 (1-c)「タンク17は前記補強部材15の連結基部である連結補強板13aを利用して、これに取付けて上方に延出させた前後2本の支柱21,22の先端にタンクベース25を介して支持されており、これを詳説すると、前後の支柱21の下部に設けたナット付座21aが前記補強板13aの前端部にボルト23により螺着されており、後部の支柱22に設けたナット付座22aが連結補強板13aの後端部にボルト24により螺着されている。」(4頁13行〜5頁1行)、 (1-d)「また、本考案の実施例では液体肥料のタンクを付設したものについて述べたが、タンクに替えて補助苗台を付設するものでもよい。」(7頁6〜8行)。 上記記載及び図面の記載からみて、甲第2号証には、 座席5を備えた走行機体1の後方に田植装置8を連結し、該田植装置側には走行機体側に設けられた液体肥料施肥用のタンク17内の肥料を施肥するノズル20を設け、上記走行機体1の座席5の側方に、肥料タンク17を取付けた乗用農機における肥料タンクの取付構造が記載されていると認められる。 (2) 甲第3号証(実公昭56-5856号公報)には、次の記載が認められる。 (2-a)「機体に操縦席と苗植装置とを備え、且つ前記機体の左右両側に補助苗aを予め載置する補助苗乗せ枠を備えた乗用田植機において、前記補助苗乗せ枠を複数段に設けるとともに夫々を独立旋回可能に設け、前記補助苗乗せ枠を、前記操縦席5をガードすべく操縦席5の両側に機体からはみ出ることなく固定可能に設けたことを特徴とする乗用型田植機。」(実用新案登録請求の範囲)、 (2-b)「19は補助苗aを予め載置する補助苗乗せ枠で、その外側後端部に支持アーム21を設け、支持アーム21を操縦席5の両横側に固設した支持柱23に嵌装して複数個重設しそれぞれ独立に前後方向へ旋回可能に支持されている。」(1頁右欄35行〜2頁左欄2行)、 (2-c)「また、補助苗乗せ枠19を前方に旋回させて、操縦席5の両側に固定したときには、補助苗乗せ枠19の外側が、機体の外側、例えば駆動車輪7の外側へはみ出ないように構成されているものである。従って、路上走行時には、補助苗乗せ枠19を操縦席5の両側に固定して、操縦席5のガードをすることができるものである。」(2頁左欄7〜14行)。 (3)甲第4号証(実開平3-117412号公報)には、「前記肥料タンクを該エンジン及びミッションケースの左右側方に配置すると共に、これら肥料タンクを前部を支軸として側方に回動可能に構成し、・・・ エンジン出力軸側の肥料タンクの回動を、他方の肥料タンクに比して大きく側方へ回動可能に構成した、 ことを特徴とする施肥作業機。」(1頁左下欄11〜22行)と記載されている。 (4)甲第5号証(特開平6-327326号公報)には、「苗植付けに伴って圃場に撒くペースト状肥料を貯留するタンク(9)を機体前部に機体横側方に沿う状態で配置し、前記タンク(9)を前端寄りの縦向き軸芯(P)周りで回動操作自在に取付け、前記タンク(9)の肥料補給口(9a)を後端寄りに配置してある施肥装置付き田植機。」(特許請求の範囲)と記載されている。 (5)甲第6号証(実公平7-42262号公報)には、 (5-a)「座席7の前側にはステップ8が形成されており、」(2頁左欄32行)、 (5-b)「第1図に示すように、送出装置21はステップ8の左下側に固定され、」(2頁左欄44〜45行)、 (5-c)「支持プレート69の右側面にはタンク支持フレーム70が溶着され、該タンク支持フレーム70はリヤステップ10を回避して上方に伸び、肥料タンク41の後端を支持する。」(2頁右欄37〜39行)、と記載されている。 (6)甲第7号証(特開昭61-177908号公報)の第1図ないし第3図には、操縦席(3)と苗収容枠(5)との間に通路としてのステップ(4)が形成されている構成が示されている。 (7)甲第8号証(特開昭63-22772号公報)には、「予備苗載台49,49より苗を取って着座したまま後方を向きフェンダー27a上に足をおいて楽な姿勢で苗を供給できる。」(3頁右上欄16〜19行)と記載されており、第2図には、操縦席13と予備苗載台49,49との間にステップ27が形成されている構成が示されている。 (8)甲第9号証(特開平7-274647号公報)の図1及び図2には、操縦席13と予備苗載台装置31との間に通路としてのステップ9が形成されている構成が示されている。 (9)甲第10号証(特開平2-231276号公報)の第2図及び第3図には、運転席26の側部に、運転ステップ20及びリヤステップ33が形成されていることが示されている。 3-6-2.対比・判断 本件発明と甲第2号証記載の発明とを対比すると、次の点で両者は構成が相違している。 (A)本件発明では、「走行機体(1)側には運転席(8)の側方に運転席(8)から作業機(11)側への通路(23)を設け」ているのに対し、甲第2号証記載の発明では、通路が設けられているか不明である点。 (B)運転席の側方に取付けた肥料タンクを、本件発明では、「左右回動自在に取付け、回動支点(47)を通路(23)を挟んだ肥料タンク(31)の後方位置であって、運転席(8)の座席(7)の後方寄り側に設け、上記肥料タンク(31)の内側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の最大横幅(L)より外側に突出しない状態で走行機体(1)の外側に略沿う格納姿勢(A)にし、肥料タンク(31)の前方の外側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の上記最大横幅(L)より外側に突出し、且つ苗載せ台(9)の横幅(L’)を越えることをなくして、座席(7)の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢(B)にするように、肥料タンク(3)の回動限界位置を規制し」ているのに対し、甲第2号証記載の発明では、回動するように構成していない点。 まず、上記相違点(A)について検討するに、走行機体の運転席の側方に運転席から作業機側への通路を設けることは甲第6ないし10号証にも示されているように周知であるから、甲第2号証記載の発明において、走行機体の運転席(座席5)の側方に運転席から作業機(田植装置8)側への通路を設けることは当業者が容易にできることである。 次に、上記相違点(B)について検討するに、甲第3号証には、乗用型田植機において、操縦席5の両側に補助苗乗せ枠19を旋回可能に設け、前記補助苗乗せ枠を、操縦席5をガードすべく操縦席5の両側に機体からはみ出ることなく固定可能に設けることが記載されており、甲第4及び5号証には、肥料タンクを回動可能に構成することが記載されている。 しかしながら、甲第3号証記載のものは、補助苗乗せ枠19を回動させるときに、補助苗乗せ枠19の外側面が苗載せ台(苗箱15)の横幅を越えることになるから、甲第3号証には、補助苗乗せ枠の外側面が苗載せ台(苗箱15)の横幅を越えないように苗載せ台の回動限界位置を規制する構成が記載されているとはいえず、結局、運転席の側方に左右回動自在に取付けた肥料タンクを外側方向に回動する際に、肥料タンクの外側面が苗載せ台の横幅を越えないように回動限界位置を規制することは、甲第3ないし10号証、特開平3-244303号公報(回答書で提示した資料3)及び特開平5-304805号公報(回答書で提示した資料4)に記載されているとはいえない。 そして、本件発明は、「作業位置Bにおいてリヤ施肥タンク31が苗載せ台9の横幅L′を越えることがないため、植付作業中にリヤ施肥タンク31を作業位置Bにセットしてもリヤ施肥タンク31によって乗用田植機全体の横幅が増加することがなく、植付作業は従来同様に行うことができる。」という明細書記載の効果を奏するものである。 したがって、本件発明が上記甲第2ないし4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 3-7.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 移動農機における肥料タンクの取付構造 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 運転席(8)を備えた走行機体(1)の後方に作業機(11)を連結し、該作業機(11)側には走行機体(1)側に設けられた肥料タンク(31)内の肥料を施肥する施肥部(28)を設け、上記走行機体(1)側には運転席(8)の側方に運転席(8)から作業機(11)側への通路(23)を設けた移動農機において、前記通路(23)の上方に、通路(23)を挟んで肥料タンク(31)を左右回動自在に取付け、回動支点(47)を通路(23)を挟んだ肥料タンク(31)の後方位置であって、運転席(8)の座席(7)の後方寄り側に設け、上記肥料タンク(31)の内側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の最大横幅(L)より外側に突出しない状態で走行機体(1)の外側に略沿う格納姿勢(A)にし、肥料タンク(31)の前方の外側方向回動時に、肥料タンク(31)の外側面が走行機体(1)の上記最大横幅(L)より外側に突出し、且つ苗載せ台(9)の横幅(L’)を越えることをなくして、座席(7)の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢(B)にするように、肥料タンク(31)の回動限界位置を規制した移動農機における肥料タンクの取付構造。 【請求項2】 肥料タンク(31)の回動支点(47)を平面視で作業機(11)の前端より前方位置に設け、回動範囲を肥料タンク(31)の後方部分が回動支点(47)の後方に突出しない範囲に規制した請求項1の移動農機における肥料タンクの取付構造。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は施肥機構を備えた田植機等の移動農機における肥料タンクの取付構造に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来施肥タンク付きの乗用田植機等では肥料用タンクを運転席側方の左右両側に取り付け支持されているものが知られており、特に深層施肥と浅層施肥の2種類の施肥を行うものでは、いずれか一方(通常は深層用)が運転席の両側に設置されていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 そして一般に肥料用タンクを運転席両側に取り付ける場合、肥料用タンクが植付機の苗載せ台等に当接したり、苗補給の妨げになったりしないように、肥料用タンクは植付機(苗載せ台)より前方に取り付けられる。このため運転席側方の空間が肥料用タンクによって小さくなり、作業者の運転席への乗降の妨げになるだけでなく、特にボンネットの両側に補助苗載せ台が取り付けられている場合は、補助苗載せ台からの補助苗の取り出し作業の妨げになるという欠点がある。 【0004】 【課題を解決するための手段】 上記問題点を解決するための本発明の移動農機における肥料タンクの取付構造は、運転席8を備えた走行機体1の後方に作業機11を連結し、該作業機11側には走行機体1側に設けられた肥料タンク31内の肥料を施肥する施肥部28を設け、上記走行機体1側には運転席8の側方に運転席8から作業機11側への通路23を設けた移動農機において、前記通路23の上方に、通路23を挟んで肥料タンク31を左右回動自在に取付け、回動支点47を通路23を挟んだ肥料タンク31の後方位置であって、運転席8の座席7の後方寄り側に設け、上記肥料タンク31の内側方向回動時に、肥料タンク31の外側面が走行機体1の最大横幅Lより外側に突出しない状態で走行機体1の外側に略沿う格納姿勢Aにし、肥料タンク31の前方の外側方向回動時に、肥料タンク31の外側面が走行機体1の上記最大横幅Lより外側に突出し、且つ苗載せ台9の横幅L’を越えることをなくして、座席7の側方に乗降用の空間を形成せしめる作業姿勢Bにするように、肥料タンク31の回動限界位置を規制したことを第1の特徴としている。 【0005】 また肥料タンク31の回動支点47を平面視で作業機11の前端より前方位置に設け、回動範囲を肥料タンク31の後方部分が回動支点47の後方に突出しない範囲に規制したことを第2の特徴としている。 【0006】 【発明の実施の形態】 本発明の1実施形態について図面に基づいて説明する。図1,図2は本発明を応用した乗用田植機の平面図及び左側面図である。走行機体1が前輪2及び後輪3に支持される機体フレーム4上に構成されており、該走行機体1には前方のボンネット6内にエンジン(図示せず)が内装されているとともに、該エンジンの後方に座席7等を備えた運転席8が配設されている。そして該運転席8の後方には苗載せ台9を斜設した植付機11が、アッパーリンク12及び左右のロアリンク13a,13bで構成される昇降リンク14を介して昇降自在に、且つローリング可能に連結されている。 【0007】 上記運転席8には座席7の前方にハンドル16等を備えた操作パネル17が設けられており、該操作パネル17と座席7の間にセンターステップ18が機体フレーム4側に固定されて設けられている。そして該センターステップ18及び座席7の左右側方には、センターステップ18のほぼ前端から座席7の前後方向のほぼ中央位置に至るまでサイドステップ19が、該サイドステップ19後端から座席7の後方に至るまでリヤステップ21がそれぞれ機体フレーム4側に固定されて設けられている。さらに左右のリヤステップ21の外側方には、平面視でサイドステップ19より外側に突出して拡張ステップ22が設けられているとともに、左右のリヤステップ21間にはリヤセンターステップ20が設けられている。 【0008】 このときセンターステップ18とサイドステップ19の上面はほぼ同一面をなしているが、リヤステップ21における座席7より後方に位置する部分の上面はサイドステップ19(センターステップ18)の上面に対して平行に高くなって踏部21aを形成しており、リヤステップ21における該踏部21aの前方部分は傾斜して踏部21aとサイドステップ19とを連結している。またリヤセンターステップ20の上面は踏部21aと同一面となっている。 【0009】 そして上記各ステップによって、座席7の両側方から後方を囲むように運転席8から植付機11側への通路23が形成されている。なおセンターステップ18,サイドストップ19,リヤステップ21,リヤセンターステップ20は走行機体1を覆う機体カバーを兼ねており、換言すると機体カバー上に上記各ステップが形成されている。特にリヤステップ21は後輪3のフェンダーも兼ねており、上記のような後方が高くなった形状をなしている。 【0010】 次に植付機11の構造について説明する。植付機11は従来の乗用田植機に付設されるものと同様の構造であり、昇降リンク14が下降した作業状態で、フロート24によって圃場面に接地支持され、植付部26によって植付作業を行うとともに、フロート24の圃場への接地に際して圃場内に挿入されるフロート24の下面から突出した施肥ノズル(施肥部)によって肥料タンク(ともに後述する)内の肥料を施肥するものである。 【0011】 このとき植付機11は従来同様にフロート24を上下させることで植付深さ及び施肥深さを調節することができる。なお本実施形態では、施肥ノズルは比較的圃場の浅い位置に肥料を施肥する浅層用施肥ノズル27と、比較的圃場の深い位置に肥料を施肥する深層用施肥ノズル28とで構成されており、植付部26が2つ設けられた各フロート24に浅層用施肥ノズル27と、深層用施肥ノズル28がそれぞれ設けられている。 【0012】 一方肥料タンクも浅層用施肥ノズル27側に肥料を供給するフロント施肥タンク29と、深層用施肥ノズル28側に肥料を供給するリヤ施肥タンク31で構成されており、上記フロント施肥タンク29はボンネット6下方の左右に、リヤ施肥タンク31は座席7の左右側方にそれぞれ設けられている。また本実施形態の植付機11における苗載せ台9は、走行機体1の横幅L(後述するように左右の拡張ステップ22の外側面間の距離となる)を越える横幅L′を有するとともに、上端側が運転席8側に延出している。そして苗載せ台9は両端部分の折り畳みが不可能なタイプであり、植付機11は乗用田植機運搬時に、走行機体1(昇降リンク14)から取り外されてトレーラ等で運搬される。つまり走行機体1は単体で運搬される。 【0013】 またボンネット6の左右には機体フレーム4側から立設したステー32に支持されて補助苗載せ台33が複数段設けられており、該補助苗載せ台33のうち少なくとも1つには補助苗載せ台33から補助苗を取り出すための苗出し板34が載置されている。このとき左右の補助苗載せ台33の外側面は拡張ステップ22の外側面より内側に入っている。 【0014】 次に上記深層用施肥ノズル28,リヤ施肥タンク31等で構成される深層施肥機構の構造について説明する。該深層施肥機構は、前述のリヤ施肥タンク31と、該リヤ施肥タンク31内の肥料(ペースト肥料)を先端から吐出する前述の深層用施肥ノズル28と、該深層用施肥ノズル28とリヤ施肥タンク31との間に設けられペースト肥料をリヤ施肥タンク31から深層用施肥ノズル28側に送り出すポンプ36と、該ポンプ36と深層用施肥ノズル28間に設けられペースト肥料の深層用施肥ノズル28側への送り出し又は停止の選択を行うとともに、ペースト肥料を送り出す場合にその動作の確認を行う機構のインジケータ37等で構成されており、それぞれリヤサクションホース38および入力施肥パイプ39a,出力施肥パイプ39b等で配管(接続)されている。 【0015】 上記リヤ施肥タンク31は、図1,図2に示されるように通路23を挟んで座席7の左右両側に、機体フレーム4側に取り付けられたステー41を介して走行機体1側に支持されて設けられており、前述の通路23におけるサイドステップ19の後側からリヤステップ21の踏部21aの前側に至る部分の上方に位置している。つまりリヤ施肥タンク31はサイドステップ19における座席7側方の上方と、座席7前方及び座席7後方の間の通路23の高さ変化部分の上方に位置する。またリヤ施肥タンク31は平面視において、縦方向の長さ(全長)に対して横幅(全幅)が短くなった形状をなしており、縦方向を前後にして走行機体1に取り付けられている。このとき全幅は通路23の幅に対して短くなっている。 【0016】 そして上記ステー41は機体フレーム4側に左右揺動自在に取り付けられており、これによってリヤ施肥タンク31は走行機体1に左右揺動自在に支持されている。このときリヤ施肥タンク31は植付機11の昇降のすべての範囲において苗載せ台9と当接しないとともに、苗載せ台9への苗補給時の妨げにならず、左右揺動時においても後述するようにその揺動範囲内では該苗載せ台9との上記条件が保たれる。 【0017】 次に上記ステー41の構造について説明する。ステー41は図1〜図3に示されるように、リヤ施肥タンク31を保持する側面視で略U字状に上方が開口した保持ステー42と、機体フレーム4側に固定された取付部材43と、該取付部材43に左右回動自在に支持された支持アーム44とで構成されている。そして取付部材43は平面視において前面43aが円弧状となった扇形であって、下方が開口したコ字状断面を有している。また該前面43aにおける上部は開口しており、該開口部分46からは後端側が取付部材43に軸47を介して回動自在に取り付けられた支持アーム44が突出している。これによって支持アーム44は開口部分46の左右方向の開口範囲内で左右揺動自在となっている。 【0018】 このとき支持アーム44における取付部材43から突出した部分の下方にはコ字状断面のブラケット48が前後方向に固定されており、該ブラケット48には側面視で略L字状のロッド49が前後スライド自在に挿入されている。そして該ロッド49は、前端及びL字状に湾曲した後端がブラケット48の前後端から突出しており、ブラケット48内においてスプリング51がロッド49に外嵌して設けられているとともに、該スプリング51によってロッド49が取付部材43側に付勢されている。 【0019】 一方取付部材43の前面43a下部における、支持アーム44を揺動させたときのロッド49先端の軌跡に対応する部分には、所定間隔でロッド49の前端側を嵌入させることができる位置決め孔52が複数設けられており、ロッド49を該位置決め孔52にスプリング51の付勢力によって挿入することで、取付部材43に対する支持アーム44の位置(揺動角度)が固定される。そして上記スプリング51の付勢力に抗してロッド49を後方にスライドさせて位置決め孔52から外し、支持アーム44を揺動させ、その後他の位置決め孔52にロッド49を挿入することで支持アーム44の取付部材43に対する角度を変更することができる。 【0020】 そして支持アーム44の先端側にはブラケット53を介して保持ステー42の下端が取り付けられており、取付部材43がリヤステップ21を支持するフレーム4aに取り付けられることで、上記構造のステー41が走行機体1側に取り付けられている。このとき取付部材43はリヤステップ21の外側方に突出するようにフレーム4aに取り付けられているが、平面視において拡張ステップ22より外側には突出していない。 【0021】 そして保持ステー42の前後端にリヤ施肥タンク31の前後端が取り付けられることでステー41にリヤ施肥タンク31が取り付けられ、リヤ施肥タンク31が前述のように前後方向に走行機体1側に取り付けられる。そして上記のように支持アーム44を取付部材43に対して左右揺動させることで、リヤ施肥タンク31が走行機体1に対して左右揺動する。なお本実施形態ではリヤ施肥タンク31の位置を、図3(b)に示す格納位置Aと作業位置Bに切り換えることができる構造(位置決め孔52は2つ)になっており、必要に応じてロッド49を2つのうちのいずれかの位置決め孔52に挿入することで、リヤ施肥タンク31を格納位置A,作業位置Bいずれかの位置にセットすることができる。つまりリヤ施肥タンク31の揺動範囲は格納位置Aと作業位置Bとの間となる。 【0022】 このときリヤ施肥タンク31の回動支点となる軸47は、図3(b)に示されるようにリヤステップ21の外側方におけるリヤ施肥タンク31の後方に位置し、リヤ施肥タンク31の後端つまり保持ステー42の後端と平面視で近接している。また平面視において苗載せ台9前端より前方に位置している。これによって上記ステー41を含んだリヤ施肥タンク31のアッセンブルは、前後方向の長さが施肥タンク31のみの長さとほぼ変わらないため、走行機体1上に比較的コンパクトに搭載される。 【0023】 そして格納位置Aではリヤ施肥タンク31の内側が前述の通路23の外側に沿うとともに、リヤ施肥タンク31の外側が拡張ステップ21の外側を越えないようにリヤ施肥タンク31が位置する。すなわち両拡張ステップ22外側間が走行機体1の最大横幅Lとなり、リヤ施肥タンク31は、その外側が走行機体1の外側に沿って上記走行機体1の横幅Lからはみだすことはない。なお上記状態はリヤ施肥タンク31の横幅が、通路23の幅に対して小さいことによって得られている。 【0024】 また作業位置Bではリヤ施肥タンク31(リヤ施肥タンク31のアッセンブル)の後方部分が回動支点軸47の後方に突出しないように、リヤ施肥タンク31の揺動が規制(揺動角度が決定)されており、さらにこのとき(作業位置Bにおいて)リヤ施肥タンク31が、苗載せ台9の横幅L′を越えることもない。これにより格納位置Aにおいてリヤ施肥タンク31のアッセンブルが植付機11の昇降に際して、苗載せ台9等に当接しないように設定することで、作業位置Bにおいてもリヤ施肥タンク31のアッセンブルが苗載せ台9等に当接することはない。すなわちリヤ施肥タンク31は前述の苗載せ台9と当接しない等の条件と、上記格納位置Aにおいてその外側が走行機体1の外側に沿い、作業位置Bにおいて苗載せ台9の横幅L′を越えない等の条件を兼ね備えた範囲に揺動範囲が規制されている。 【0025】 以上によりリヤ施肥タンク31は常に通路23の外側に位置するとともに、特に格納位置Aにおいては、リヤ施肥タンク31の外側が走行機体1の横幅Lを越えないだけでなく、走行機体1の横幅Lをリヤ施肥タンク31のために広くすることなく、座席7とリヤ施肥タンク31との間の空間54を従来より広く確保でき、通路23の通行が容易になる。なおリヤ施肥タンク31の揺動支点軸47がリヤ施肥タンク31の後方に位置しているので、リヤ施肥タンク31の揺動時にリヤ施肥タンク31の後部が通路23内に突出することがなく、リヤ施肥タンク31が通路23の通行の妨げになることはない。 【0026】 つまり揺動支点軸47がリヤ施肥タンク31のほぼ後端位置にあることで、上記効果とコンパクト搭載という効果を同時に且つ容易に得ることができる。さらに上記のようにリヤ施肥タンク31のアッセンブルの後方部分が、リヤ施肥タンク31が作業位置Bにあるときに回動支点軸47の後方に突出しないため、植付機9が昇降する際に苗載せ台9とリヤ施肥タンク31が当接することはなく、又リヤ施肥タンク31が植付機9の昇降を妨げることもない。 【0027】 また本実施形態の乗用田植機を運搬する際には、前述のように植付機11が走行機体1から取り外されて運搬されるため、走行機体1は単独で輸送される。このとき上記のようにリヤ施肥タンク31を格納位置Aにセットすることによって走行機体1の横幅Lよりリヤ施肥タンク31が突出することはないので、走行機体1の運搬は容易である。なお植付機には苗載せ台の左右端部を内側に折り畳むことができる機種(図示しない)があり、この苗載せ台を搭載した植付機が取り付けられている乗用田植機は、一般には苗載せ台を折り畳んで走行機体と植付機を一体に運搬する。 【0028】 そして上記折り畳み可能な苗載せ台は、折り畳むとその横幅が走行機体の横幅とほぼ同じになるように構成されている。このためリヤ施肥タンクを格納位置Aにセットし、走行機体1の横幅よりリヤ施肥タンク31を突出させないようにすることで、上記折り畳み式の苗載せ台が搭載された植付機11が取り付けられた乗用田植機の運搬を容易に行うことができる。またこのタイプ(折り畳み式)の植付機(苗載せ台)は、上端側の運転席側への延出が少ない。 【0029】 さらに特にリヤ施肥タンク31が格納位置Aにある場合、リヤ施肥タンク31が上記のようにサイドステップ19及びリヤステップ21の側方に位置するため、リヤ施肥タンク31は通路23におけるサイドステップ19及びリヤステップ21の側方のガードとして機能し、作業者(オペレータ)は通路23の移動に際してサイドステップ19及びリヤステップ21等の端部に特に注意を払う必要なく、また移動中にバランスを崩しても体勢の確保が容易となり、通路23の移動を容易に行うことができる。特に本実施形態では前述のように通路23に段差があり、該段差上方にリヤ施肥タンク31が位置するため、リヤ施肥タンク31は通路23における段差部分のガードとなる。またリヤ施肥タンク31はステー41も含め、通路23のてすりとしても機能する。 【0030】 またリヤ施肥タンク31を作業位置Bにセットすることによって、補助苗載せ台33とリヤ施肥タンク31前端との間の距離を、リヤ施肥タンク31が格納位置Aにあるときよりも大きくとることができる。これにより苗出し板34によって補助苗載せ台33から補助苗を取り出す作業をより容易に行うことができ、円滑に苗載せ台9への苗補給作業を行うことができる。また上記のように補助苗載せ台33とリヤ施肥タンク31前端との間の距離(空間)56が広くなるため、作業者は運転席8,各ステップ等への乗降が容易となる。 【0031】 なお作業位置Bにおいてリヤ施肥タンク31が苗載せ台9の横幅L′を越えることがないため、植付作業中にリヤ施肥タンク31を作業位置Bにセットしてもリヤ施肥タンク31によって乗用田植機全体の横幅が増加することがなく、植付作業は従来同様に行うことができる。またリヤ施肥タンク31を上記のように回動式に形成せず、図4に示すように取付部材43を介さず支持アーム44を直接機体フレーム4に固定することで、格納位置Aの位置に非回動に取り付けても良い。 【0032】 この場合は苗補給作業用のスペース及び乗降用のスペースは若干少なくなるが、リヤ施肥タンク31が格納位置Aにある場合の効果と同様の効果は得ることができる。また乗用田植機には、特別にステップが設けられておらず、機体カバーが通路23となっている機種もあるが、この場合も以上に示すものと同様の効果を得ることができる。 【0033】 ここでステー41の形状についてさらに詳細に説明する。図2に示されるようにサイドステップ19,リヤステップ21,支持アーム44,保持ステー42によって運転席8(ステップ上方)には側面視で略コ字状の空間57が形成されている。このとき保持ステー42は前方が斜めに屈曲しており、上記空間57の前方上方が広くなっている。そしてこの構造によって作業者は空間57の前方を有効に利用することができる。 【0034】 また保持ステー42の後方も斜めに屈曲しており、これによって平面視において、リヤ施肥タンク31(保持ステー42)とリヤステップ21が重複していても、図5に示されるように作業者はリヤステップ21(踏部21a)全面を使用することができ、踏部21aにおいてリヤ施肥タンク31を有しない機種とほぼ同程度の作業性を保つことができる。 【0035】 次に深層施肥機構を構成する前述のポンプ36及びリヤサクションホース38について説明する。該ポンプ36は図1,図2に示されるようにリヤステップ19及びリヤサイドステップ20後方に設けられており、左右両リヤ施肥タンク31とリヤサクションホース38によって接続されている。すなわちリヤ施肥タンク31内のペースト肥料はリヤサクションホース38内を通ってポンプ36に送られる構造となっており、リヤサクションホース38はリヤ施肥タンク31内のペースト肥料を施肥部(深層用施肥ノズル28)側に繰り出す送肥ホースである。 【0036】 なおポンプ36は入力が共通の複数の単ポンプがユニットとなって構成されており、例えば本実施形態では深層用施肥ノズル28の数と同数の単ポンプによってポンプ36が構成されている。このときリヤサクションホース38はリヤステップ19の側方及び後方、リヤサイドステップ20の後方を通ってポンプ36に連結されており、リヤサクションホース38の上面はリヤステップ19の上面から突出している。つまりリヤサクションホース38は座席7側方及び後方の通路23の外周上面に沿って設けられている。またリヤサクションホース38は左右のリヤステップ21及びリヤセンターステップ20側に取付部25を介して安定的に(空間的な配管とならないように)取り付けられている。 【0037】 リヤサクションホース38の上記配管構造により、リヤサクションホース38はペースト肥料のポンプ36への送出しホースとしての機能以外に、通路23外周のガードとしても機能し、また表面を樹脂,ゴム等の滑止め効果のある材料で形成することによって、通路23(リヤステップ19)外周における滑止めのストッパーとしての働きも行う。 【0038】 以上のようなリヤサクションホース38の働きによって、作業者は特にリヤステップ19側の通路23上を円滑に移動することができるので、作業性も従来に比較して向上する。そして前述のようにサイドステップ19の側方がリヤ施肥タンク31及びステー41等によってガードされているため、通路23は全体的にガードされ作業者はほぼ通路23全体において、通路23の外端に特別に注意を払うことなく円滑に移動することができる。 【0039】 一方リヤサクションホース38は通路23の外側周縁(リヤステップ21及びリヤセンターステップ20)に沿って安定して取り付けられているため、従来のような空間的な配管とはならず、リヤサクションホース38が他の機構やメンテナンス等の妨げにならないだけでなく、走行機体1の走行等による振動等によって揺れて他の機構に悪影響を与えることもない。また通路23内にリヤサクションホース38が突出することがないため、作業者は通路23(サイドステップ19,リヤステップ21及びリヤセンターステップ20)全体を使用することができ、各ステップでの作業性が向上する。 【0040】 またリヤ施肥タンク31が、前述のようにリヤ施肥タンク31のアッセンブル後方部分が回動支点軸47より後方に突出しない範囲に揺動範囲が規制されているため、リヤサクションホース38におけるリヤステップ19の側方付近に位置する部分は、リヤ施肥タンク31が揺動しても極端に湾曲することはない。つまりリヤ施肥タンク31が格納位置Aにあるときに、通路23(リヤステップ21及びリヤセンターステップ20)に沿って滑らかに湾曲してリヤ施肥タンク31とポンプ36を接続しているリヤサクションホース38は、リヤ施肥タンク31を作業位置Bに揺動させても、リヤ施肥タンク31からリヤステップ21後方までほぼ直線状に滑らかな状態を保つ。 【0041】 このためリヤ施肥タンク31の揺動に伴ったリヤサクションホース38の動きはスムーズで、リヤサクションホース38がリヤ施肥タンク31の揺動を妨げることもない。さらにポンプ36がリヤステップ19の後方に位置しているとともに、リヤサクションホース38がリヤステップ19の後方を通っているため、リヤステップ19における踏部21aの全体を使用することができ、作業者のリヤステップ19上での作業性が向上する。 【0042】 次に前述のインジケータ37について説明する。インジケータ37は図1に示されるように右側のロアリンク13bに取り付けられており、入力側がポンプ36に入力施肥パイプ39aで、出力側が深層用施肥ノズル28に出力施肥パイプ39bで接続されている。このときインジケータ37は各深層用施肥ノズル28毎に設けられており、各インジケータ37の入力端とポンプ36における各単ポンプの出力端が入力施肥パイプ39aによって接続されているとともに、各インジケータ37の出力端と各深層用施肥ノズル28の入力端が出力施肥パイプ39bによって接続されている。なおインジケータ37の構造及び機能は従来のものと同様である。 【0043】 このとき図1に示されるように、ポンプ36の中心を通る前後方向の直線lとインジケータ37の入力端を通る前後方向の直線l′が平面視で重ならないように、インジケータ37とポンプ36が互いにオフセットされて設けられている。これによって入力施肥パイプ39aは平面視において略Z形状でポンプ36とインジケータ37を接続するため、その接続経路は比較的長いものとなる。このため昇降リンク14(ロアリンク13b)の上下動によって植付機11とともにインジケータ37が上下揺動しても、入力施肥パイプ39aの長さ不足が発生せず、入力施肥パイプ39aはインジケータ37の上下動に追従し、昇降リンク14の上下動も円滑に行われる。 【0044】 なお本実施形態では、リヤ施肥タンク31内に、流動性肥料の1種類であるペースト肥料が収容されている例について説明したが、液状の肥料(液肥)等の他の流動性肥料が収容されていても良く、また他の液状肥料及び粒状肥料を施肥する施肥装置の肥料タンクのレイアウトに、上記リヤ施肥タンク31のレイアウトを応用してもよい。 【0045】 また本実施形態ではサイドステップ19の側方に昇降用の補助ステップ58を設けている。該補助ステップ58は図1、図2に示されるようにリヤ施肥タンク31の外側方における前方に位置して前後方向に設けられており、サイドステップ31側に挿脱自在に取り付けられている。そして補助ステップ31はサイドステップ19等の各ステップへの昇降の際にサイドステップ19側に装着されることで走行機体1側に取り付けられるが、この状態において植付機11の横幅L′を越えない。また補助ステップ58の前端とリヤ施肥タンク31の前端はほぼ一致している。 【0046】 上記構造により補助ステップ58によってサイドステップ19又はセンターステップ18への昇降が容易となるとともに、リヤ施肥タンク31の後方に位置する拡張ステップ22への昇降も容易となるため、昇降の作業性及びサイドステップ19上での作業性共に向上する。 【0047】 次に前述の浅層用施肥ノズル27,フロント施肥タンク29等で構成される浅層施肥機構について説明する。浅層施肥機構は従来の乗用田植機に備えられているものと同様であり、前述の深層施肥機構とほぼ同様の構成となっている。そしてフロント施肥タンク29がボンネット6下方に内装されているとともに、ポンプ59が機体フレーム4下方における前輪2と後輪3の略中央位置に設けられており、インジケータ62が左側のロアリンク13aに取り付けられている。 【0048】 そしてフロント施肥タンク29からポンプ59へはフロントサクションホース61で接続されているとともに、図2,図6に示されるようにポンプ59からインジケータ62へは入力施肥パイプ63aによって、インジケータ62から浅層用施肥ノズル27へは出力施肥パイプ63bによってそれぞれ接続されている。 【0049】 このときポンプ59とインジケータ62を接続している出力施肥パイプ63bには図6,図7に示されるように走行機体1内側に向かって水平な部分を有した形状の出力施肥パイプ63b-1が設けられており、これによってポンプ59からインジケータ62までの出力施肥パイプ63b群全体の幅をコンパクトにすることができ、ロッド67等の他部材の配置が容易になる。すなわちスペースαが出力施肥パイプ63b-1の形状によって創出される。そして以上により走行機体1全体の幅をコンパクトにすることができる。 【0050】 またフロントサクションホース61は図2,図8に示されるようにトランスミッション68側方に設けられており、機体フレーム4側とトランスミッション68側に取り付けられたガイド64によって保持されているが、該ガイド64内には油圧パイプ66も通っている。このため前輪2等によって持ち廻られた土塊が油圧パイプ66の近傍に落下しても、ガイド64とフロントサクションホース61によってガードされて、土塊の油圧パイプ66への影響が少ない。 【0051】 【発明の効果】 以上のように構成される本発明によれば、肥料タンクを後方の支点を中心に回動させて運転席から遠ざけることによって、肥料タンク前方に比較的大きな乗降用の空間を確保することができ、作業者の運転席への乗降が容易になるという効果があるだけでなく、肥料タンクを内側方向に回動させて最も運転席側に近付けた場合でも、座席と肥料タンクとの間の空間が確保でき通路の通行が容易になる他、肥料タンクが通路の外側方に位置するため、肥料タンクが通路のガードとして機能するという利点もある。そして特にボンネットの両側に補助苗載せ台が取り付けられている場合、肥料タンク前方の比較的大きな空間によって、補助苗載せ台から補助苗を取り出す作業をより容易に行うことができるという効果もある。 【0052】 また全ての回動範囲において肥料タンクの後方部分が平面視で作業機の前端より前方に設けられた回動支点より後方に突出しないように回動範囲を規制した場合は、肥料タンクを全回動範囲で作業機に当接することがない位置に容易に取り付けることができるだけでなく、回動支点と肥料タンクの後端部分を近接させることによって、肥料タンクを走行機体側にコンパクトに搭載することもできる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 乗用田植機の平面図である。 【図2】 乗用田植機の左側面図である。 【図3】 (a),(b)はリヤ施肥タンク部分の左側面図及び平面図である。 【図4】 (a),(b)は固定状態のリヤ施肥タンクの左側面図及び平面図である。 【図5】 リヤステップのユーティリティーを示す側面図である。 【図6】 浅層施肥機構用のインジケータ部分の平面図である。 【図7】 (a),(b)は浅層施肥機構の入力施肥パイプの平面図及び側面図である。 【図8】 フロントサクションホース部分の背面断面図である。 【符号の説明】 1 走行機体 8 運転席 11 作業機 23 通路 28 深層用施肥ノズル(施肥部) 31 リヤ施肥タンク(肥料タンク) 47 軸(回動支点) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-04-14 |
出願番号 | 特願平7-349720 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(A01C)
P 1 651・ 55- YA (A01C) P 1 651・ 161- YA (A01C) P 1 651・ 534- YA (A01C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 関根 裕 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
川島 陵司 渡戸 正義 |
登録日 | 2002-11-22 |
登録番号 | 特許第3372738号(P3372738) |
権利者 | 三菱農機株式会社 |
発明の名称 | 移動農機における肥料タンクの取付構造 |
代理人 | 北村 修一郎 |