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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01B
審判 全部申し立て 発明同一  H01B
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01B
管理番号 1119401
異議申立番号 異議2003-73334  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-09-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-22 
確定日 2005-04-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3454957号「アルミナ質焼結体」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3454957号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3454957号の手続の経緯は次のとおりである。
特許出願 平成 7年 2月28日
設定登録 平成15年 7月25日
特許掲載公報発行 平成15年10月 6日
特許異議申立(異議申立人:岩下由美子)平成15年12月22日
取消理由通知 平成16年 9月27日付け
訂正請求 平成16年12月 6日
特許異議意見書 平成16年12月 6日
審尋(申立人) 平成16年12月17日付け
(審尋に対する応答なし)

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
訂正の内容は、訂正請求書及びそれに添付された訂正明細書の記載からみて、下記(1)〜(4)のとおりである。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「CaがCaO換算で0.05〜0.5重量%」を、「CaがCaO換算で0.1〜0.5重量%」と訂正する。
(2)訂正事項b
明細書【0012】、【0014】、及び【0018】の「CaO換算で0.05〜0.5重量%」を、それぞれ「CaO換算で0.1〜0.5重量%」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書【0022】の表1において、試料No.2を削除するとともに、No.3〜12をNo.2〜11にそれぞれ繰り上げる。
(4)訂正事項d
明細書【0023】の「試料No.2〜5,8〜11」を「試料No.2〜4,7〜10」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、明細書【0022】の表1の試料No.3におけるCaO量「0.1」を根拠として、CaO量の下限値を0.05から0.1に引き上げることにより、請求項1におけるCaの含有量範囲を減縮するものである。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものでも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項b〜dについて
訂正事項b〜dは、訂正事項aと整合させるために発明の詳細な説明及び実施例の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、新規事項を追加するものでも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立についての判断
1.特許異議申立理由、取消理由の概要
特許異議申立人岩下由美子は、証拠方法として甲第1,2号証を提出し、以下の理由により本件特許は取り消されるべきであると主張をしている。
申立理由1:本件発明は、甲第1号証に掲載された、本件特許の出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願平6-195573号の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人がその出願前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
申立理由2:本件特許は、明細書及び図面の記載が特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由は、上記申立理由1と同趣旨である。

2.本件発明
上記訂正が認められるから、本件特許の請求項1に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「主成分としてのアルミナに、Na含有量がNa2O換算で70〜100ppm、CaがCaO換算で0.1〜0.5重量%、MgがMgO換算で0.03〜10重量%の割合で含有し、かつ、粒界相をX線回折測定した場合に、CaO・6Al2O3とMgAl2O4のピークが存在するとともに、測定周波数14GHzにおける誘電損失tanδが1×10-4以下であることを特徴とすることを特徴とするアルミナ質焼結体。」(以下、この発明を「本件発明」という。)

3.甲第1,2号証とその記載事項
(1)甲第1号証:特開平8-59338号公報
「Na及びKの含有量がNa2 O及びK2 O換算の総量で100ppm以下、Mgの含有量がMgO換算で100ppm以下もしくは1000〜50000ppmの範囲内で、残部がアルミナ及び不可避不純物からなることを特徴とするアルミナ磁器組成物。」(請求項1)に関し、「アルカリ金属であるNaとKとは、アルミナ磁器の誘電損失を増加させるため、その含有量をできるだけ少なくする必要があり、少なくともNa2 O及びK2 O換算でその総量が100ppm以下にする必要がある」(【0015】)こと、「MgOの含有量が1000ppmを超えるとアルミナとマグネシアとの化合物であるスピネルが優先的に生成するようになり、MgOの固溶による酸素欠陥の生成を抑制するため再びQ値は増加する」(【0017】)こと、「アルミナ磁器組成物中の不可避不純物としては、例えばSi、Fe、Ca、Ti等が挙げられ、この不純物の含有量はいずれも500ppm以下である」(【0018】)こと、「KとNaの総量が下記の表1に示した値を有する高純度アルミナ粉末(アルミナ純度 99.9wt%・・・)に、焼結助剤としてMgO(MgO純度 99.9wt%・・・)を表1に示す種々の含有量になるように添加し、さらに有機バインダーと水とを加えて混合することによりスラリー状にし、・・・造粒した。この造粒粉末を・・・成形した。次に、この成形体を大気中1500〜1650℃の温度で焼成してアルミナ磁器組成物の製造を完了した。得られたアルミナ磁器組成物の誘電特性の評価は、・・・誘電体共振器法により9GHzの周波数で測定した。」(【0020】〜【0021】)こと、【0023】の表1には実施例13として、MgO含有量が3000ppm、Na(Na2 O換算)+K(K2 O換算)含有量が100ppmで、Q値が10500であるアルミナ磁器組成物が記載されている。

(2)甲第2号証:社団法人日本セラミックス協会「セラミックスの化学」(昭和57年11月1日)第74〜76頁
表III-1にナトリウムはカリウムよりイオン半径が小さいことが記載されている。

4.当審の判断
4-1.申立理由1に対して
(1)先願発明
上記甲第1号証の上記記載をまとめると、【0017】に記載の「アルミナとマグネシアとの化合物であるスピネル」とは、「MgAl2O4」に外ならず、【0023】に記載の実施例13のアルミナ磁器組成物においても、その粒界相をX線回折測定した場合には、MgAl2O4のピークが存在するといえるから、甲第1号証には、「主成分としてのアルミナに、Na及びKの含有量がNa2O及びK2 O換算の総量で100ppm、Caが500ppm以下、MgがMgO換算で3000ppmの割合で含有し、かつ、粒界相をX線回折測定した場合にMgAl2O4のピークが存在するとともに、測定周波数9GHzにおけるQ値が10500であるアルミナ質焼結体。」の発明が記載されているといえる(甲第1号証の記載は先願明細書の記載に相当するから、以下、この発明を「先願発明」という。)。

(2)対比
本件発明(前者)と、先願発明(後者)とを対比すると、前者の「Na」、「NaO」と、後者の「Na及びK」、「Na2O及びK2 O」とは、それぞれともに「アルカリ金属」、「アルカリ金属酸化物」であり、また、後者のCa含有量は、CaO換算で約0.07重量%(700ppm)以下であるから、両者は、「主成分としてのアルミナに、アルカリ金属含有量がアルカリ金属酸化物換算で100ppm、Ca、及びMgがMgO換算で0.3重量%の割合で含有し、かつ、粒界相をX線回折測定した場合に、MgAl2O4のピークが存在するアルミナ質焼結体」である点で一致し、下記の点で相違する。

相違点1:前者は、アルカリ金属として、NaをNa2O換算で70〜100ppm含有するのに対して、後者は、Na及びKをNa2O及びK2 O換算の総量で100ppm含有する点。
相違点2:前者は、Ca含有量がCaO換算で0.1〜0.5重量%であるのに対して、後者は、約0.07重量%以下である点。
相違点3:前者は、粒界相をX線回折測定した場合に、CaO・6Al2O3のピークが存在するのに対して、後者は、そのピークの存在が不明である点。
相違点4:前者は、測定周波数14GHzにおける誘電損失tanδが1×10-4以下であるのに対して、後者は、測定周波数9GHzにおけるQ値が10500(誘電損失tanδが1/10500=0.91×10-4)である点。

(3)判断
上記相違点2について検討する。
本件発明において、Ca含有量の下限値を「CaO換算で0.1重量%」とするのは、本件明細書【0011】の記載によると「CaOを添加せず、粒界にCaO・6Al2O3が生成しないと、緻密化が阻害され、焼成温度が高くなり生産上好ましくない。」ためであるから、本件発明におけるCa含有量の下限値の技術的意義は、粒界にCaO・6Al2O3を生成して、緻密化を阻害することなく焼結温度を下げ、生産効率を上げる点にあるといえる。
これに対して、先願明細書には、Caが不可避不純物として「CaO換算で0.07重量%以下」含有されることしか記載されていないから、Ca含有量の下限値を不可避不純物レベルを越える「CaO換算で0.1重量%」に引き上げることにより、粒界にCaO・6Al2O3 を生成したり、該生成物により緻密化を阻害することなく焼結温度を下げ、生産効率を上げたりすることは、記載も示唆もされていないというべきである。
そうすると、相違点2における本件発明のCa含有量は、先願明細書に記載されたものとはいえない。
したがって、相違点1,3,4について検討するまでもなく、本件発明は先願発明と同一であるとはいえない。

4-2.申立理由2に対して
申立理由2の具体的な内容は、発明の詳細な説明の記載によると、本件発明はCaを積極的に添加しているにもかかわらず、請求項1の記載によると、Caの下限値は「CaO換算で0.05重量%」であって、甲第1号証記載の不可避不純物量と区別ができない範囲を含んでおり、本件発明におけるCaの添加による技術的意義が不明確であるというものであるが、上記訂正により、訂正後の本件発明のCa含有量は、先願発明の不可避不純物レベルの含有量と区別される範囲となり、その技術的意義も明確であるから、本件明細書の記載が不備であるとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アルミナ質焼結体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】主成分としてのアルミナに、Na含有量がNa2O換算で70〜100ppm、CaがCaO換算で0.1〜0.5重量%、MgがMgO換算で0.03〜10重量%の割合で含有し、かつ、粒界相をX線回折測定した場合に、CaO・6Al2O3とMgAl2O4のピークが存在するとともに、測定周波数14GHzにおける誘電損失tanδが1×10-4以下であることを特徴とすることを特徴とするアルミナ質焼結体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミナ質焼結体に関するものであり、特に、例えば、通信用MIC基板やMICパッケージ、マイクロ波コンデンサ、マイクロ波通信装置用部品、高エネルギー粒子加速装置のマイクロ波透過窓等に用いることができる高周波低損失性のアルミナ質焼結体に関する。
【0002】
【従来技術】従来、例えば、通信用MIC基板やMICパッケージ、マイクロ波コンデンサ、マイクロ波通信用装置用部品、高エネルギー粒子加速装置のマイクロ波透過窓に用いられるアルミナ質焼結体では、誘電損失は10GHz程度のマイクロ波帯において1×10-4以下であることが求められる。
【0003】このようなアルミナ質焼結体としては、従来、誘電損失を1×10-4以下にするために、不純物の含有量を元素基準のppm単位で、Siを80ppm以下、Mgを60ppm以下、Si/Mgを1〜5、かつ他の金属やアルカリ成分等を総量70ppm以下としたアルミナ質焼結体が知られている(特開平1-213910号公報)。
【0004】また、特開平4-356922号公報では、マイクロ波透過窓として、マイクロ波を透過させる性質を持たせるため、含有しているアルカリ金属(Na2O、K2O)の総量を150ppm以下に抑制し、マイクロ波帯の誘電損失を1×10-3以下としたアルミナ質焼結体が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする問題点】一般に、アルミナ質焼結体の誘電損失の増加に粒界相のガラス質が大きく寄与していると言われている。このため、低損失磁器を得るためには、粒界相の生成を制御する必要がある。一般に粒界相の生成を極力さける目的で、生成原因となる不純物を避けるために、高純度の原料を用いて不純物の総量を規制している。
【0006】その中でも、ガラス相を形成しやすいアルカリ成分は極力避ける必要がある。
【0007】しかしながら、実際には高純度アルミナ原料(純度99.999%程度)を用いても、必ずしも誘電損失が1×10-4以下にならないという問題があった。
【0008】また、特開平1-213910号公報に開示されるアルミナ質焼結体では、アルカリ金属酸化物以外の不純物含有量も減少させ、全体的に磁器を高純度化させる必要があるため、生産性が低下するという問題があった。さらに焼成温度が高くなりがちであった。
【0009】さらに、特開平4-356922号公報に開示されるアルミナ質焼結体では、低誘電損失化させるためアルカリ金属(Na2O、K2O)総量を抑制しているが、この場合でも必ずしも1×10-4以下の誘電損失を達成できるとは限らないという問題があった。
【0010】本発明は、高純度アルミナ原料を用いることなく、誘電損失を確実に1×10-4以下とすることができるとともに、生産性および焼結性を向上することができるアルミナ質焼結体を提供することを目的とする。
【0011】
【問題点を解決するための手段】本発明者は、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、アルミナ質焼結体中に生成する粒界相には様々な結晶相があり、そのすべてが誘電損失を増加させているわけではなく、誘電損失増加の原因としてはNa含有量だけでなく、粒界相中の析出結晶相のうちCaO・6Al2O3の存在も、アルミナ質焼結体の誘電損失を増加させていることを見出した。また、Caはアルミナに殆ど固溶せず、粒界にCaO・6Al2O3として析出するため、アルミナ質焼結体の誘電損失を低下させるためには、Ca量を減少させ、粒界相中におけるCaO・6Al2O3の析出量を少なくすれば良いことを見出した。さらに、MgOは、微量添加(0.03〜10重量%)で粒界にMgAl2O4を生成し、アルミナの焼結性を促進する効果があることが知られている。しかし、CaOを添加せず、粒界にCaO・6Al2O3が生成しないと、緻密化が阻害され、焼成温度が高くなり生産上好ましくない。このため、アルミナ焼結体の粒界相中にMgAl2O4とCaO・6Al2O3を析出させるとともに、Na含有量を一定以下に抑制することにより、アルミナ質焼結体の誘電損失を確実に1×10-4以下とすることができるとともに、生産性および焼結性を向上することができることを見出し、本発明に至った。
【0012】即ち、本発明のアルミナ質焼結体は、主成分としてのアルミナに、Na含有量がNa2O換算で70〜100ppm、CaがCaO換算で0.1〜0.5重量%、MgがMgO換算で0.03〜10重量%の割合で含有し、かつ、粒界相をX線回折測定した場合に、CaO・6Al2O3とMgAl2O4のピークが存在するとともに、測定周波数14GHzにおける誘電損失tanδが1×10-4以下であることを特徴とすることを特徴とするものである。
【0013】本発明のアルミナ質焼結体では、Na含有量をNa2O換算で100ppm以下としたのは、Na含有量がNa2O換算で100ppmよりも大きくなると、誘電損失が1×10-4よりも大きくなるからである。Na含有量は少ない方が良く、Naを含む結晶相のピークは、X線回折測定ではピークが実質的に存在しないことが望ましいが、本発明によれば、Na量が70ppm以上であっても誘電損失を低減することができる。
【0014】また、CaをCaO換算で0.5重量%以下としたのは、0.5重量%よりも多い場合にはCaO・6Al2O3の析出量が多く、誘電損失が1×10-4よりも大きくなるからである。CaはCaO換算で0.1〜0.5重量%とする。
【0015】さらに、MgをMgO換算で0.03重量%以上としたのは、0.03重量%よりも少ない場合には焼成温度が高くなり、誘電損失が1×10-4以上となるからである。MgはMgO換算で0.03〜10重量%であることが誘電損失の点から必要である。
【0016】そして、粒界相をX線回折測定した場合に、CaO・6Al2O3とMgAl2O4のピークを存在させた理由は、上記したように誘電損失を1×10-4以下にし、さらにアルミナ質焼結体の焼結性を向上するためである。CaO・6Al2O3が多いと誘電損失が高くなるため、なるべく少なくする必要がある。X線回折測は、例えば、波長λ=1.5418ÅのCuKα線により行う。
【0017】本発明のアルミナ質焼結体は、例えば、高純度アルミナ粉末にMg(OH)2粉末およびCaCO3粉末を所定量添加し、イソプロピルアルコール(IPA)と混合し、アルミナボールで粉砕混合する。混合後のスラリーを乾燥し、仮焼して得られた粉末を、例えば、金型プレスで成形し、焼結助剤によっても異なるが、例えば、大気中において1500〜1600℃で0.5〜4時間焼成することにより、本発明のアルミナ質焼結体が得られる。
【0018】
【作用】本発明のアルミナ質焼結体では、Na含有量がNa2O換算で70〜100ppmであっても、CaをCaO換算で0.1〜0.5重量%、MgをMgO換算で0.03〜10重量%とし、粒界相にCaO・6Al2O3とMgAl2O4を存在させることにより、焼結体の誘電損失を1×10-4以下とすることが可能となる。
【0019】また、本発明のアルミナ質焼結体では、高純度のアルミナ原料を用いなくてもよく、アルミナ純度99.9%程度の汎用原料を用いても1×10-4以下の誘電損失が得られるため、適切な焼結助剤を用いて焼成温度を低下させることが可能となり、焼結性および生産性を向上することができる。
【0020】
【実施例】Na2O含有量の異なるアルミナ原料(純度99.9%)と、CaCO3及びMg(OH)2を、表1の組成となるように秤量し、この混合粉末を、純度99.9%のアルミナボール、イソプロピルアルコール(IPA)と共に1リットルポリポットに投入し、42時間回転ミル台にて混合した。混合後のスラリーにバインダーとしてパラフィンワックスを6重量%加え混合攪拌した。このスラリーを80℃大気中にて乾燥し、評価粉末得た。尚、表1では、CaCO3はCaOに換算し、また、Mg(OH)2はMgOに換算して記載した。
【0021】この粉末を金型プレスにて1000kg/cm2で直径12mm、厚み8mmに成形した。成形体は、大気中において400℃で2時間脱脂を行い、その後、表1に示す焼成温度で2時間保持して焼成した。焼結体は、直径10mm、厚み5mmに加工研磨した。この試料の高周波誘電損失を測定周波数14GHzで測定した。また、波長λ=1.5418ÅのCuKα線によるX線回折測により試料の結晶相を同定した。これらの結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】この表1から、粒界相中にCaO・6Al2O3の他に、MgAl2O4が析出した本発明の試料については、1×10-4以下の低誘電損失を示すことが判る(試料No.2〜4,7〜10)。また、本発明の試料では、焼成温度が1600℃以下となっており、従来よりも低温で焼成できることが判る。さらに、CaOの添加量が増加するにしたがって誘電損失が増加し、MgO添加量が増加するに伴い焼成温度が低下することが判る。
【0024】
【発明の効果】以上のように、本発明のアルミナ質焼結体ではNa含有量をNa2O換算で100ppm以下とし、CaおよびMgを所定量含有させ、さらに、粒界相にCaO・6Al2O3とMgAl2O4を存在させることにより、焼結体の誘電損失を確実に1×10-4以下とすることができるとともに、高純度のアルミナ原料を用いなくても、純度99.9%程度の汎用原料を用いても1×10-4以下の誘電損失を得ることができるため、焼結性および生産性を向上することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-03-28 
出願番号 特願平7-39793
審決分類 P 1 651・ 534- YA (H01B)
P 1 651・ 531- YA (H01B)
P 1 651・ 161- YA (H01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小川 進  
特許庁審判長 中村 朝幸
特許庁審判官 吉水 純子
酒井 美知子
登録日 2003-07-25 
登録番号 特許第3454957号(P3454957)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 アルミナ質焼結体  

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