• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 発明同一  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1119426
異議申立番号 異議2002-73029  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-19 
確定日 2005-04-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3295685号「ケイ素含有難燃性樹脂組成物」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3295685号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3295685号の請求項1〜3に係る発明は、平成10年5月22日に特許出願され、平成14年4月5日にその特許権の設定登録がなされ、その後、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社より請求項1〜3に係る発明の特許に対して特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年11月4日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出され、それに対して訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月26日付けで意見書が提出され、再度取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年2月14日付けで平成15年11月4日付けの訂正請求書が取り下げられるとともに新たな訂正請求書が提出されたものである。
II.訂正請求について
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
請求項1に記載の
「【請求項1】(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂及び(B)下記式(1)で表されるケイ素含有化合物を含有する難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であることを特徴とするケイ素含有難燃性樹脂組成物。
【化1】

(但し、R1、R4は炭素数1〜20の炭化水素又は該炭化水素置換ケイ素であり、R2、R3は炭素数1〜20の炭化水素であり、p、qは0または1であり、nは1以上の整数である。)」を
「【請求項1】(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部及び(B)下記式(16)で表されるケイ素含有化合物1〜50重量部を含有し、更に難燃剤を含有した難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であることを特徴とするケイ素含有難燃性樹脂組成物。

(但し、R1〜R8はメチル基またはフェニル基であって、かつメチル基が3個、フェニル基が5個である。)」と訂正する。
(2)訂正事項b
請求項2、3を削除する。
(3)訂正事項c
明細書段落【0008】に記載の「即ち本発明は、(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂及び(B)下記式(1)で表されるケイ素含有化合物を含有する難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であることを特徴とするケイ素含有難燃性樹脂組成物を提供するものである。」を
「即ち本発明は、(1)(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部及び(B)下記式(16)で表されるケイ素含有化合物1〜50重量部を含有し、更に難燃剤を含有した難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であることを特徴とするケイ素含有難燃性樹脂組成物

(但し、R1〜R8はメチル基またはフェニル基であって、かつメチル基が3個、フェニル基が5個である。)
を提供するものである。」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書段落【0030】に記載の「例えば、下記式(2)で示されるポリオルガノシロキサンまたはポリオルガノシリケートである。」を
「例えば、下記式(16)で示されるポリオルガノシロキサンである。」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書段落【0031】に記載の

【化2】

」を


」と訂正する。
(6)訂正事項f
明細書段落【0032】に記載の「(但し、R1、R4は炭素数1〜20の炭化水素又は該炭化水素置換ケイ素であり、R2、R3は炭素数1〜20の炭化水素であり、p、qは0または1であり、nは1以上の整数である。)
ここで、R1〜R4の炭化水素は、炭素数1〜20の炭化水素であり、特にフェニル基、アルキル基置換フェニル基が(A)との相溶性の観点から好ましい。またR1〜R4は同一でも異なっていても良い。」を
「(但し、R1〜R8はメチル基またはフェニル基であって、かつメチル基が3個、フェニル基が5個である。)」と訂正する。
(7)訂正事項g
明細書段落【0098】に記載の「本発明の一つの難燃性樹脂成形材料の好ましい組成の一例としては次のものを挙げることができる。(A)熱可塑性樹脂50〜99重量部と、(B)メチルフェニルシリコーン 1〜50重量部。」を
「本発明の一つの難燃性樹脂成形材料の好ましい組成の一例としては次のものを挙げることができる。(A)スチレン樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部と、(B)前記式(16)を満足するメチルフェニルシリコーン1〜50重量部。」と訂正する。
(8)訂正事項h
明細書段落【0107】に記載中の「これを平均SP値とした。」を
「これを平均SP値とした。
本発明において、SP値とは前記算出方法により算出したものである。」と訂正する。
(9)訂正事項i
明細書段落【0121】の表1の記載を次のとおり訂正する。

2.訂正の適否について
訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載の熱可塑性樹脂の配合量を規定するものであり、また、ケイ素含有化合物を特定の化合物に限定するとともに配合量を規定するものであり、更に難燃剤の配合を規定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項bは、請求項2、3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項c〜iは、特許請求の範囲の訂正に伴い生じた、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、いずれの訂正事項も、明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.本件発明
訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部及び(B)下記式(16)で表されるケイ素含有化合物1〜50重量部を含有し、更に難燃剤を含有した難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であることを特徴とするケイ素含有難燃性樹脂組成物。

(但し、R1〜R8はメチル基またはフェニル基であって、かつメチル基が3個、フェニル基が5個である。)」
IV.特許異議申立について
1.特許異議申立の概要
特許異議申立人 信越化学工業株式会社は、甲第1号証(特願平9-244971号の願書に最初に添付した明細書(特開平10-139964号公報参照)、以下、「先願明細書1」という。)、甲第2号証(特願平9-319039号の願書に最初に添付した明細書(特開平11-140294号公報参照)、以下、「先願明細書2」という。)、甲第3号証(「改訂版プラスチック入門」(株)工業調査会、1985年2月10日発行、第182〜183頁、以下、「刊行物1」という。)、甲第4号証(「シリコーンハンドブック」日刊工業新聞社、1990年8月31日発行、第140〜142頁、以下、「刊行物2」という。)、甲第5号証(「コーティングの基礎科学」槇書店、1980年6月30日発行、第48〜57頁、以下、「刊行物3」という。)、甲第6号証(特開昭54-102352号公報、以下、「刊行物4」という。)、甲第7号証(特開平6-192555号公報、以下、「刊行物5」という。)、甲第8号証(特開平4-298554号公報、以下、「刊行物6」という。)、甲第9号証(特開平6-306265号公報、以下、「刊行物7」という。)を提出して、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、本件出願の日前の他の特許出願であって、本件出願後に出願公開された前記甲第1または第2号証の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であるから、訂正前の請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第29条の2第1項の規定に違反してされたものであり(信越化学工業株式会社の申立理由1)、また、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、前記甲第6号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり(信越化学工業株式会社の申立理由2)、また、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、前記甲第6〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり(信越化学工業株式会社の申立理由3)、取り消されるべき旨主張し、
特許異議申立人 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社は、甲第1号証(刊行物4と同じ)、甲第2号証(刊行物6と同じ)、甲第3号証(特開平5-70680号公報、以下、「刊行物8」という。)、甲第4号証(特開昭51-100145号公報、以下、「刊行物9」という。)、甲第5号証(特公平6-89204号公報、以下、「刊行物10」という。)、甲第6号証(「接着 理論と応用」丸善(株)昭和41年11月20日発行、第415〜419頁、以下、「刊行物11」という。)、甲第7号証(「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社、1992年8月28日発行、第1〜2頁、167頁、222〜228頁、235頁、以下、「刊行物12」という。)、甲第8号証(「ポリマーブレンド-相溶性と界面-」株式会社シー エム シー、1991年5月25日発行、第142〜144頁、149頁、以下、「刊行物13」という。)、甲第9号証(特開平8-134342号公報、以下、「刊行物14」という。)を提出して、訂正前の請求項1〜2に係る発明は、前記甲第1、2、4、5号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1〜2に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社の申立理由1)、また、訂正前の請求項1〜3に係る発明は、前記甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社の申立理由2)、さらに、訂正前の請求項1〜3に係る発明の特許は、その明細書の記載が不備であるから、特許法第36条6項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社の申立理由3)、取り消されるべき旨主張している。
2.特許異議申立に対する判断
ア.特許法第29条の2第1項違反(信越化学工業株式会社の申立理由1)について
(1)先願明細書に記載された事項
◆先願明細書1(特許異議申立人 信越化学工業株式会社が提出した甲第1号証:特願平9-244971号の願書に最初に添付した明細書(特開平10-139964号公報参照)には、以下の事項について記載がされている。
「【請求項1】芳香環を含有する非シリコーン樹脂(A)及び、式R2SiO1.0で示される単位と式RSiO1.5で示される単位を持つシリコーン樹脂(B)を有し、前記シリコーン樹脂(B)の重量平均分子量が10,000以上270,000以下であり、かつ、前記Rが炭化水素基であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】前記芳香環を含有する非シリコーン樹脂(A)が、芳香族系ポリカーボネート樹脂、又は芳香族系ポリカーボネートのアロイ、又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合体(ABS)、又はポリスチレン樹脂、又は芳香環を含有するエポキシ樹脂、又はフェノール樹脂の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】前記シリコーン樹脂(B)中の前記RSiO1.5単位が、前記R2SiO1.0単位に対してモル比で0.5倍以上7倍未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】前記シリコーン樹脂(B)のRがメチル基とフェニル基からなることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】前記シリコーン樹脂(B)のRのうちフェニル基がモル比で40%以上80%未満であり、残りのRがメチル基であることを特徴とする請求項4に記載の難燃性樹脂組成物。」
「【0020】本発明で使用するシリコーン樹脂(B)は、式R2SiO1.0で示される単位(D単位)と式RSiO1.5で示される単位(T単位)を持ち、各Rはそれぞれ飽和又は芳香環の炭化水素基からなる群から選んだ基であり、シリコーン樹脂(B)の重量平均分子量は10,000以上から270,000以下のものである。
【0021】シリコーン樹脂(B)の分子量(重量平均分子量)は、10,000未満であると粘度が低すぎて、母材樹脂である非シリコーン樹脂(A)との混練が困難でかつ成形性も悪い。さらに、難燃効果、特に燃焼時の樹脂組成物の耐ドリップ(樹脂の溶融による滴下)性が低下する。また、シリコーン樹脂(B)の分子量が大きすぎる場合は、溶融粘度が高くなりすぎて、母材の非シリコーン樹脂(A)との混練性や成形性が低下する。さらに、成形時や燃焼時での非シリコーン樹脂表面へのシリコーン樹脂の移行性が低下してしまい、樹脂表面での耐炎皮膜の形成性が低下するため、難燃効果も低下する。特に270,000を超えると、この難燃効果は大幅に低下する。
【0022】また、本発明で使用するシリコーン樹脂(B)を構成するR2SiO1.0単位に対して、RSiO1.5単位は、好ましくはモル比で0.5倍以上7倍未満がよい。式RSiO1.5で示される単位が式R2SiO1.0で示される単位に対して0.5倍未満であると、シリコーン樹脂がオイル状になりやすいため、非シリコーン樹脂との混練が困難になり成形性も低下する。さらに、シリコーン樹脂自体の耐熱性が低下するため、非シリコーン樹脂への難燃効果が低くなりドリップも起こりやすくなる。また、式RSiO1.5で示される単位が式R2SiO1.0で示される単位に対して7倍以上であると、立体障害により非シリコーン樹脂への分散が悪くなり、また耐炎皮膜中でのシリコーン樹脂中のフェニル基同士の縮合も起こりにくくなり、シリコーン樹脂自体の耐炎性が低下する。このため、非シリコーン樹脂に対しての難燃効果が低下する。
【0023】シリコーン樹脂(B)のR2SiO1.0単位とRSiO1.5単位のRとしては、メチル基とフェニル基であり、さらに好ましくはフェニル基の割合がモル比で40%以上80%未満で、残りがメチル基である。フェニル基の割合がモル比で40%未満であると、芳香環を含有する非シリコーン樹脂との相溶性が低下するため、混練性が低下する。さらに、シリコーン自体の耐炎性が低下するために、非シリコーン樹脂への難燃効果も低くなる。一方、フェニル基の割合がモル比で80%以上であると、芳香環を含有する非シリコーン樹脂との相溶性が高くなりすぎるため、非シリコーン樹脂の成形時や燃焼時での、非シリコーン樹脂表面へのシリコーン樹脂の移行性が低下してしまい、樹脂表面での耐炎皮膜を形成しににくなるため、難燃効果が低下する。さらに、シリコーン樹脂中のフェニル基同士の立体障害により、耐炎皮膜中でのフェニル基同士の効率的な縮合が起こりにくくなり、皮膜の耐炎性が低下する。
【0024】また、シリコーン樹脂(B)は、式R2SiO1.0で示される単位(D単位)と式RSiO1.5で示される単位(T単位)に加えて、末端基が式R’3SiO0.5で示される単位(M単位)から構成されるのが耐燃化には好ましい。式中のR’は飽和炭化水素基及び/または芳香族炭化水素基、または飽和炭化水素基及び/または芳香族炭化水素基と水酸基及び/またはアルコキシ基の混合系が良く、特に好ましくは、水酸基及び/またはアルコキシ基がモル比で10%未満であり、残りがメチル基及び/またはフェニル基である。水酸基及び/またはアルコキシ基の割合が10%以上であると、非シリコーン樹脂との混練の際に、シリコーン樹脂の自己縮合が起こりやすくなり、その結果、非シリコーン樹脂中でのシリコーン樹脂の分散性や、樹脂組成物の成形時や燃焼時での非シリコーン樹脂表面へのシリコーン樹脂の移行性が低下してしまい、そのために難燃効果が低下する。」
「【0045】本発明の難燃性樹脂組成物に使用するシリコーン樹脂成分(B)は、その重量平均分子量が10,000以上270,000以下であり、式R2SiO1.0単位(D単位)と式RSiO1.5単位(T単位)の両方を有し、かつ前記Rが炭化水素基である。従って、本発明で使用することができるシリコーン樹脂成分は、表1のシリコーン樹脂6〜13、19〜27及び32〜37であり、シリコーン樹脂1〜5、14〜18及び28〜31は、比較例で使用するシリコーン樹脂である。」
そして、特許明細書段落【0044】の表1中には、シリコーン樹脂の構造特性として、シリコーン樹脂5について、分子量が40,000で、D:Tが1:0で(Dは式R2SiO1.0をTは式RSiO1.5を示す。)、フェニル:メチルが40:60(モル比)であることが記載されている。
◆先願明細書2(信越化学工業株式会社が提出した甲第2号証:特願平9-319039号の願書に最初に添付した明細書(特開平11-140294号公報参照)には、以下の事項について記載がされている。
「【請求項1】(a)芳香族ポリカーボネート樹脂 100重量部
(b)R1・SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を 50〜90モル%含有し、
R2R3・SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を 10〜50モル%含有し、
フェニル基を全有機置換基の中80モル%以上含有しているオルガノポリシロキサン 1〜10重量部
(但し、式中のR1,R2,R3は炭素数1〜10の非置換又は置換1価炭化水素基を表す)を含有してなることを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】(b)成分であるオルガノポリシロキサンが、R1・SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を60〜80モル%含有し、R2R3・SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を20〜40モル%含有している(但し、R1,R2,R3は上記と同様の意味を示す)ことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】(b)成分であるオルガノポリシロキサンに含有されるD単位中、ジメチルシロキサン単位(CH3)2SiO2/2の含有率が50モル%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】(a)芳香族ポリカーボネート樹脂 100重量部
(b’)R1・SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を
0〜89.99モル%含有し、
R2R3・SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を
10〜50モル%含有し、
SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を
0.01〜50モル%含有し、
フェニル基を全有機置換基の中80モル%以上含有しているオルガノポリシロキサン
1〜10重量部
(但し、式中のR1,R2,R3は炭素数1〜10の非置換又は置換1価炭化水素基を表す)を含有してなることを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。」
「【0024】即ち、シリコーン樹脂の構造は、一般的に3官能性シロキサン単位(T単位)と、2官能性シロキサン単位(D単位)と、4官能性シロキサン単位(Q単位)との組合せで構成されるが、本発明で良好な組合せはT/D系、T/D/Q系、D/Q系等のD単位を含有する系であり、これにより良好な難燃性が与えられる。D単位は、いずれの組合せの場合でも10〜50モル%含有される必要がある。D単位が10モル%未満であると、シリコーン樹脂に付与される可撓性が乏しく、その結果十分な難燃性が得られない。また、50モル%を超えると、芳香族ポリカーボネート樹脂との分散性・加工性が低下し、成形品の外観及び光学的透明度や強度が悪くなる。・・・・。」
(2)判断
【i】本件発明は、訂正後の請求項1に記載のとおり、「(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部及び(B)式(16)で表されるケイ素含有化合物1〜50重量部を含有し、更に難燃剤を含有した難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であることを特徴とするケイ素含有難燃性樹脂組成物」である。
【ii】先願明細書1には、芳香族ポリカーボネート樹脂に、シリコーン樹脂(B)を配合することが記載され、シリコーン樹脂(B)として、式R2SiO1.0で示される単位(D単位)と式RSiO1.5で示される単位(T単位)を持つものであることが記載され、シリコーン樹脂(B)のRのうちフェニル基がモル比で40%以上80%未満であり、残りのRがメチル基であるものが記載されていることから、先願明細書1に記載された発明においては、フェニル基:メチル基がモル比で40〜80:60〜20であるシリコーン樹脂が記載されており、しかも、シリコーン樹脂は、式RSiO1.5で示される単位(T単位)を含有することが必須であることも記載されているといえる。
一方、本件発明は、請求項1に記載のとおり、式(16)で示されるケイ素含有化合物を採用するものであって、式(16)で示されるケイ素含有化合物は、式RSiO1.5で示される単位(T単位)を含有するものではない。また、式(16)で示されるケイ素含有化合物が、式RSiO1.5で示される単位(T単位)を含有してもよいことは一切記載がされていない。
そうすると、両発明におけるケイ素含有化合物は、全く相違しており、同一の化合物ということはできない。
また、先願明細書1には、表1に記載のとおり、シリコーン樹脂として、式RSiO1.5で示される単位(T単位)を含有しないものを使用することが記載され、その構造特性として、フェニル:メチルの各比率がモル比で40:60であることが記載されている。
一方、本件発明は、請求項1に記載のとおり、式(16)で示されるケイ素含有化合物を採用するものであって、式(16)で示されるケイ素含有化合物においては、メチル基を3個、フェニル基を5個有するものであるから、これは、フェニル:メチルの各比率が5:3(モル比で62.5:37.5)となる。
そうすると、本件発明と先願明細書1に記載されたケイ素含有化合物とは、フェニル基とメチル基との各比率が異なるケイ素含有化合物であるから、これらは相違しており、同一の化合物ということはできない。
そうであれば、本件発明と先願明細書1に記載されたケイ素含有化合物は同一ということはできないから、本件発明は、先願明細書1に記載された発明と同一であるということはできない。
【iii】先願明細書2には、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b)R1・SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を50〜90モル%含有し、R2R3・SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を10〜50モル%含有し、フェニル基を全有機置換基の中80モル%以上含有しているオルガノポリシロキサン1〜10重量部を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が記載され、また、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部、(b’)R1・SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を0〜89.99モル%含有し、R2R3・SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を10〜50モル%含有し、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を0.01〜50モル%含有し、フェニル基を全有機置換基の中80モル%以上含有しているオルガノポリシロキサン1〜10重量部を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
そして、先願明細書2に記載された発明において採用されるオルガノポリシロキサンは、(b)として、R1・SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を50〜90モル%含有するものであるか、または、(b’)として、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を0.01〜50モル%含有するもののいずれかのオルガノポリシロキサンを必須とするものである。
一方、本件発明は、請求項1に記載のとおり、式(16)で示されるケイ素含有化合物を採用するものであって、式(16)で示されるケイ素含有化合物は、式RSiO1.5で示される単位(T単位)を含有するものでもなく、また、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含有するものでもない。また、式(16)で示されるケイ素含有化合物が、式RSiO1.5で示される単位(T単位)や、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含有していてもよいことは一切記載がされていない。
そうすると、両発明におけるケイ素含有化合物は、互いに相違しており、同一の化合物ということはできない。
そうであれば、本件発明と先願明細書2に記載されたケイ素含有化合物は同一ということはできないから、本件発明は、先願明細書2に記載された発明と同一であるということはできない。
イ.特許法第29条第1、2項違反(信越の申立理由2、3、東レダウの申立理由1、2)について
(1)刊行物1〜14に記載された事項
★刊行物1(特許異議申立人 信越化学工業株式会社が提出した甲第3号証(「改訂版プラスチック入門」(株)工業調査会、1985年2月10日発行、第182〜183頁)には、ポリカーボネートの製法に関して記載されている。
★刊行物2(特許異議申立人 信越化学工業株式会社が提出した甲第4号証(「シリコーンハンドブック」日刊工業新聞社、1990年8月31日発行、第140〜142頁)には、シリコーンオイルのSP値について、図5.32が示され、ジメチルシリコーンオイルのSP値は7.2であり、フェニル基含有量の増加とともに増大することが記載されている。
★刊行物3(特許異議申立人 信越化学工業株式会社が提出した甲第5号証(「コーティングの基礎科学」槇書店、1980年6月30日発行、第48〜57頁)には、溶解性パラメータの求め方について記載されている。
★刊行物4(特許異議申立人 信越化学工業株式会社が提出した甲第6号証及び東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社が提出した甲第1号証:特開昭54-102352号公報)には、以下の事項が記載されている。
「1.(a)高分子量芳香族カーボネート重合体と少量の(b)オリゴマー又は重合体状炭化水素オキシシロキサンを混合して含んだ安定化された熱可塑性組成物。
5.成分(b)が、式

(但し、xは約2〜約10である)の単位からなる特許請求の範囲第1項乃至第4項記載の組成物。
7.成分(b)が式

である特許請求の範囲第1項乃至第4項記載の組成物。」(特許請求の範囲第1,5,7項)
「本発明は高分子量芳香族ポリカーボネート重合体と、少量のオリゴマー又は重合体状炭化水素オキシシロキサンとを、混合して含んだ熱酸化的に安定化されたポリカーボネート組成物に係わる。」(1頁右下欄末行〜2頁左上欄3行)
「ここに、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱酸化的安定性を改善するのに、少量で効果的量のオリゴマー又は重合体状炭化水素オキシシロキサンは単独で、並びに有機ホスフアイト・・・と組み合わせて、著しく効果的であることがわかつた。」(2頁左上欄17行〜右上欄2行)
「本発明の実施に使われる炭化水素オキシシロキサンの構造は広く変動していてよい。要件はただ、少なくとも1つのSi-O-Si結合と少なくとも1つのR-O-Si-結合を有することである。」(2頁右上欄8〜11行)
★刊行物5(特許異議申立人 信越化学工業株式会社が提出した甲第7号証:特開平6-192555号公報)には、以下の事項が記載されている。
「 ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、下記一般式;
【化1】(化学構造式記載省略)
で示される基であり、Xはハロゲン原子、Rは低級アルキル基、iおよびjは0〜5の範囲で且つ(i+j)<5となる整数、A2 は水素原子、A2またはグリシジル基、Bは炭素数1〜4のアルキレン基、アルキリデン基または-SO2-基、lおよびmは0〜4の範囲で且つ全部のlとmが0になることのない整数、平均重合度nは0〜5である)で表わされる難燃剤1〜15重量部と、有機シリコーン化合物0.1〜2.0重量部とを含有してなる難燃性樹脂組成物。」(請求項1)
「【0008】
【課題を解決するための手段】この発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、前記特定の化合物からなる難燃剤と有機シリコーン化合物とをポリカーボネート樹脂に併用配合することにより、この樹脂組成物を用いた成形品が1mm厚程度という薄い厚みであってもUL94のV-Oを充分に満足できる高い難燃性を付与でき、しかもポリカーボネート本来の優れた特性が損なわれないことを見い出し、この発明をなすに至った。」
「【0020】この発明において使用する有機シリコーン化合物としては、特に制限はないが、シリコーンオイルとして知られるような比較的低重合度で液状のオルガノポリシロキサン類が好適であり、例えばストレートシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等が挙げられる。」
「【0025】実施例1〜5,比較例1〜5
ビスフェノールAを原料とするポリカーボネート樹脂粉末(平均分子量27000)100重量部)に対し、前記で合成した難燃剤と有機シリコーン化合物の後記表1に示す部数を加えて均一に混合し、これをシリンダー温度270℃で溶解混練してポリカーボネート樹脂組成物のペレットを製造した。なお、表1中の有機シリコーン化合物Aはジメチルシリコーンオイル(東芝シリコーン社製の商品名TSF451)、同Bはメチルフェニルシリコーンオイル(東芝シリコーン社製の商品名TSF437)、同Cは高級脂肪酸変性シリコーンオイル(東芝シリコーン社製の商品名TSF410)である。」
★刊行物6(特許異議申立人 信越化学工業株式会社が提出した甲第8号証及び東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社が提出した甲第2号証:特開平4-298554号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】(A)ポリカーボネートおよび/または次式(化1):
【化1】(化学構造式記載省略)
および次式(化2):
【化2】(化学構造式記載省略)
上記式中、RおよびR´はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、一価の炭化水素基または炭化水素オキシ基であり、Wは二価の炭化水素基、-S-、-S-S-、-O-、-S(=O)-、-(O=)S(=O)-、または-C(=O)-であり、nおよびn´はそれぞれ独立して0〜4の整数であり、Xは炭素数6〜18を有する二価の脂肪族基であり、bは0または1である、で示される構造単位を有し、かつ前記(化2)の構造単位の量は(化1)および(化2)の構造単位の合計量の2〜30モル%を占めるところのコポリエステルカーボネート 1〜99重量部、
ならびに(B)(b-1)(a)ゴム質重合体、(b)芳香族ビニル単量体成分および(c)シアン化ビニル単量体成分を、共重合体の構成成分として含む共重合体、および/または(b-2)(b)芳香族ビニル単量体成分および(c)シアン化ビニル単量体成分を、共重合体の構成成分として含む共重合体を 99〜1重量部含み、かつ
(A)および(B)の合計100重量部に対して、
(C)リン酸エステル系化合物 1〜20重量部および
(D)ポリオルガノシロキサン 0.1〜10重量部を含む難燃性樹脂組成物。」
「【0038】
次に、本発明で使用する成分(D)ポリオルガノシロキサンは、それ自体は公知であり、例えば次の一般式(化7)で表すことができる。
【0039】

(上記式中、Rxはそれぞれ独立して、水素原子、芳香族基、脂肪族基または脂環式基であり、mは0または1以上の整数である)
Rxの具体例としては、芳香族基の場合には、フェニル基、・・・等のアリール基;・・・が挙げられ、脂肪族基の場合には、メチル、・・・等のアルキル基;・・・等が挙げられる。Rxは、すべて同じであっても、異なっていても良い。Rxは好ましくはメチル基、フェニル基およびビニル基から選択される。上記式(化7)で示されるポリオルガノシロキサンの一部に、反応性の官能基、・・・等を付加したもの、あるいは上記式(化7)で示されるポリオルガノシロキサンをポリオレフィン系樹脂などと混練して得られる混練物も、成分(D)として使用できる。このような混練物は、・・・ケイ素原子に有機基が結合したポリシロキサン、例えばトスパール(商標、東芝シリコーン株式会社製)なども本発明における成分(D)に含まれる。
【0040】
成分(D)は、成分(A)および(B)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部使用する。上記の範囲より少ないと発明の効果が十分発揮されない。」
「【0046】
・・・成分(D)
TSF-437:商標、東芝シリコーン株式会社製、ポリメチルフェニルシロキサン
シリグラフト-210:商標、日本ユニカー株式会社製、低密度ポリエチレン変性ポリシロキサン、シリコーン含有率60%・・・」
★刊行物7(特許異議申立人 信越化学工業株式会社が提出した甲第9号証:特開平6-306265号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】芳香族ポリカーボネートと、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩と、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンとを必須成分として含有し、前記芳香族ポリカーボネート100重量部に対する前記パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の割合が0.03〜0.3重量部で、前記有機シロキサンの割合が0.05〜2.0重量部であることを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。」
「【0015】本発明の難燃性PC樹脂組成物は、芳香族PCおよびパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩以外の必須成分として、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンを前記芳香族PC100重量部に対して0.05〜2.0重量部の割合で含有する。この有機シロキサンは、シロキサン結合の主鎖または側鎖の末端のケイ素がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基を有し、さらにシロキサン結合の任意のケイ素の箇所にビニル基を有するほか、分子中のケイ素の二つの結合手がフェニル基と任意の割合で置換されたものである。有機シロキサンは1種のみ用いてもよいし、複数種用いてもよい。
【0016】この有機シロキサンの割合を芳香族PC 100重量部に対して0.05〜2.0重量部に限定する理由は、0.05重量部未満では燃焼時の滴下を防止することが困難となるからであり、2.0重量部を超えると滴下防止効果の更なる向上が期待できなくなるばかりでなく、得られる難燃性PC樹脂組成物に対して衝撃強度等の物性の低下をもたらすからである。前記有機シロキサンの望ましい割合は、芳香族PC100重量部に対して0.1〜0.5重量部である。」
「【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
芳香族PCとして直鎖状PC[出光石油化学(株)製:A2500。以下、直鎖PCと略記する。]を、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としてC4F9SO3K[大日本インキ化学(株)製のF114(商品名)]を、アルコキシ基(メトキシ基)、ビニル基、およびフェニル基を有する有機シロキサンとして信越化学(株)製のKR219(商品名)(以下、有機シロキサンAという。)をそれぞれ用意し、これらを乾燥した後、直鎖PC100重量部に対してC4F9SO3Kを0.1重量部、有機シロキサンAを0.3重量部の割合でそれぞれ配合して押出機に供給し、温度280℃で混練して、ペレット状の難燃性PC樹脂組成物を得た。」
「【0028】比較例2
有機シロキサンAに代えて、フェニル基のみを有する有機シロキサン[信越化学(株)製のKF56(商品名)。以下、有機シロキサンBという。]を0.3重量部用いた以外は実施例2と同様にして、難燃性PC樹脂組成物を得た。そして、得られた難燃性PC樹脂組成物について前記〈1〉〜〈4〉(注:原文は○の中に数字が記載されたものであるが、〈 〉に代える。以下同じ。)の評価を実施例2と同様にして行った。これらの結果を表1に示す。
「【0029】比較例3
有機シロキサンAに代えてメトキシ基のみを有する有機シロキサン[信越化学(株)製のKF851(商品名)。以下、有機シロキサンCという。]を0.3重量部用いた以外は実施例1と同様にして、難燃性PC樹脂組成物を得た。そして、得られた難燃性PC樹脂組成物について前記前記〈1〉〜〈4〉の評価を実施例1と同様にして行った。これらの結果を表1に示す。」
★刊行物8(特許異議申立人 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社が提出した甲第3号証:特開平5-70680号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】ポリフェニレンエーテルを該ポリフェニレンエーテル100重量部あたり2乃至15重量部のフェニルシロキサン流体とブレンドすることから成るポリフェニレンエーテルの難燃性を改良し、そしてピーク煙放出速度及び総煙量を低減する方法であって、前記フェニルシロキサン流体が約800乃至100,000の範囲の分子量を有し、そして式:
(a) (C6H5)2SiO、
(b) CH3(C6H5)SiO及び
(c) (CH3)2SiO
の化学結合単位から本質的に成り、前記フェニルシロキサン流体中に、(a)、(b)及び(c)の総モル数を基準として20乃至40モル%の(a)、又は40乃至80モル%の(b)、又は21乃至79モル%の(a)及び(b)が存在する方法。」
「【0017】当業者が本発明をより良く実施できる様に、以下の実施例を限定のためにではなく例証のために示す。全ての部は、重量部である。
実施例1
市販のフェニルシロキサンと、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル単位を含む市販のポリフェニレンエーテルとのブレンドを、密封容器内で前記フェニルシロキサンを直接、予め乾燥させたポリフェニレンエーテル粉末に添加することにより調製した。混合物を、セラミックボールを使って1乃至2時間ロール混合した。使用したフェニルシロキサン流体を、下記表中に示した。ここで、「Φ」はフェニルであり、「Me」はメチルであり、「D」は平均の縮合ジオルガノシロキシ単位数であり、「Term.」は末端単位であり、そして「TMS」はトリメチルシロキシである。」
★刊行物9(特許異議申立人 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社が提出した甲第4号証:特開昭51-100145号公報)には、以下の事項が記載されている。
「ジエン系ゴム質重合体に、アルケニル芳香族化合物とこれと共重合可能な少なくとも1種の単量体とからなるビニル単量体混合物を、溶液重合法、塊状重合法あるいは塊状-懸濁重合法によりグラフト重合して得られた熱可塑性樹脂100重量部に、有機シロキサンを0.01〜2.0重量部配合したことを特徴とする表面光沢の優れた熱可塑性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
「本発明は、優れた表面光沢と機械的特性を有する熱可塑性樹脂組成物に関する。・・・本発明者らは有機シロキサンが流動性とともに表面光沢をすばらしく改良できることを見いだし本発明に到達した。」(1頁左下欄下から4行〜2頁左上欄11行)
「本発明で用いる有機シロキサンは、具体的には、・・・ポリメチルフエニルシロキサン、・・・等があげられる。」(2頁右下欄1〜6行)
そして、4頁左上欄には、実施例9として、ポリメチルフエニルシロキサン(500cs)が記載され、これは東芝シリコーンKK製TSF433であることが記載されている。
★刊行物10(特許異議申立人 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社が提出した甲第5号証:特公平6-89204号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】(a)スチレン系重合体とゴム状重合体とからなるゴム変性スチレン系樹脂組成物100重量部と(b)25℃における粘度が500〜100,000センチストークスのポリジメチルシロキサン又はポリメチルフェニルシロキサン1〜3.5重量部からなる組成物であって、かつ、前記(a)成分におけるゴム状重合体は、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体ゴム単独、或いはポリブタジエンゴムを40重量%以下の割合で配合した、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体ゴムとポリブタジエンゴムとの混合物であり、その面積平均粒子径(直径)が0.4〜0.6μmであって、分散ゴム形態が、一つのゴム粒子中に、コアがスチレン系重合体で、シェルがゴム状重合体からなる内包オクルージョンが5個以下含まれており、かつそのうちの少なくとも50%以上が内包オクルージョンが1個であるオクルージョン構造を、70%以上有するものであることを特徴とするスチレン系樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
「[産業上の利用分野]
本発明は新規なスチレン系樹脂組成物に関するさらに詳しくいえば、本発明は、OA機器部品などの素材や摺動材料として好適な高い衝撃強度、かつ優れた光沢及び摺動性を有するなど物性バランスに優れるスチレン系樹脂組成物に関する。」(1頁右欄5〜10行)
「本発明においては(b)成分として25℃における粘度が500〜100,000センチストークスのポリジメチルシロキサン又はポリメチルフェニルシロキサンを用いる。
本発明に用いるポリジメチルシロキサン又はポリメチルフェニルシロキサンは、25℃における粘度が500〜100,000センチストークスであることが必要であるが、好ましくは800〜80,000センチストークスの範囲である。この粘度が500センチストークス未満では本発明の目的が十分に達せられないし、100,000を超えると組成物中に均一に分散させることが極めて困難になる。」(3頁右欄18行〜27行)
「実施例3
実施例1において、製造例1で得られたゴム変性ポリスチレン組成物の代わりに製造例2て得られたゴム変性ポリスチレン組成物を使用し、25℃での粘度が10,000センチストークスのポリジメチルシロキサンの代わりに25℃での粘度が5,000センチストークスのポリメチルフェニルシロキサン(東レシリコーン社製 SH-700オイル)3.5重量部を使用したこと以外は実施例1と同様に行った。得られた試験片の物性を第1表に示した。」(4頁右欄15〜23行)
★刊行物11(特許異議申立人 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社が提出した甲第6号証(「接着 理論と応用」丸善(株)昭和41年11月20日発行、第415〜419頁)には、「3.溶解度パラメーターによる溶剤の選択」として、ポリスチレンのSPは9.1であること、また、418頁の第2表には、ポリマーおよびエラストマーの凝集エネルギー密度、として、GR-S(ブタジエン/スチレン)85:15、75:25、60:40がそれぞれ8.5、8.6、8.7であることが記載されている。
★刊行物12(特許異議申立人 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社が提出した甲第7号証(「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社、1992年8月28日発行、第1〜2頁、167頁、222〜228頁、235頁)には、ポリカーボネートは工業的に生産されるのはビスフェノールAを原料とするものが中心であること、ポリカーボネートの溶解度パラメーターは9.8〜10、9.5〜10.5であることが記載されている。
★刊行物13(特許異議申立人 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社が提出した甲第8号証(「ポリマーブレンド-相溶性と界面-」株式会社シー エム シー、1991年5月25日発行、第142〜144頁、149頁)には、表2・25に「高分子の溶解性パラメータ(Gardon)」として、種々のポリマーについてのδ値が記載されている。
★刊行物14(特許異議申立人 東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社が提出した甲第9号証:特開平8-134342号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はリン系難燃剤を用いたポリカーボネート含有樹脂組成物に関する。更に詳しくは難燃性、成形加工性(流動性)、耐熱性及び衝撃強度のバランス特性に優れたリン系難燃剤を用いたポリカーボネート含有スチレン系樹脂組成物に関する。」
「【0047】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。尚、実施例、比較例における測定は以下の方法もしくは測定機を用いて行った。
(1)SP値(δ)〔溶解性パラメーター(Solubility Parameter)〕
Polymer Engineering and Science,14,(2),147(1974)に記載のFedors式により算出した。
【0048】
【数1】δ=√[Σ(Δel)/Σ(Δvl)]
【0049】{ここで、△el:各単位官能基当りの凝集エネルギー、△vl:各単位官能基当りの分子容を示す。δ〔単位:(cal/cm3)1/2〕}
尚共重合体またはブレンド物のSP値は加成則が成立すると仮定し、単量体ユニットまたはブレンド物の各成分のSP値の重量比の比例配分により算出した。・・・。」
「【0022】本発明のポリカーボネート含有樹脂組成物は、更に一層高度な難燃性が要求される場合には必要に応じて、〈1〉トリアジン骨格含有化合物、〈2〉ノボラック樹脂、〈3〉含金属化合物、〈4〉シリコーン樹脂、〈5〉シリコーンオイル、〈6〉シリカ、〈7〉アラミド繊維、〈8〉フッ素系樹脂、〈9〉ポリアクリロニトリル繊維から選ばれる一種以上の難燃助剤(F成分)を配合することができる。・・・。」
「【0028】前記〈4〉シリコーン樹脂はSiO2、RSiO3/2、R2SiO、R3SiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有するシリコーン樹脂である。ここでRはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、あるいはフェニル基、ベンジル基等の芳香族基、又は上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。ここで特にビニル基を含有したシリコーン樹脂が好ましい。このようなシリコーン樹脂は、上記の構造単位に対応するオルガノハロシランを共加水分解して重合することにより得られる。前記〈5〉シリコーンオイルは下記式(12)に示される化学結合単位からなるポリジオルガノシロキサンである。
【0029】
【化6】-Si(-R)2-O- (12)
【0030】上式中のRはC1〜8のアルキル基、C6〜13のアリール基、下記式(13),(14)で示される含ビニル基から選ばれる一種または二種以上の置換基であり、ここで特に分子中ビニル基を含有することが好ましい。」
「【0032】前記シリコーンオイルの粘度は600〜1000000センチポイズ(25℃)が好ましく、さらに好ましくは90000〜150000センチポイズ(25℃)である。・・・」
(2)判断
本件発明が、(イ)前記刊行物に記載された発明であるか否か、あるいは(ロ)前記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるか否か検討する。
(イ)について
本件発明は、請求項1に記載のとおり、ケイ素含有難燃性樹脂組成物において、「(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部及び(B)式(16)で表されるケイ素含有化合物1〜50重量部を含有し、更に難燃剤を含有した難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であること」を必須の構成とするものである。
●刊行物1〜3、11〜13には、熱可塑性樹脂がケイ素含有化合物を含有することについては何ら記載はされておらず、従って、本件発明が記載されているとはいえない。
●刊行物4には、高分子量芳香族カーボネート重合体と少量のオリゴマー又は重合体状炭化水素オキシシロキサンを混合して含んだ安定化された熱可塑性組成物が記載され、更に、オリゴマー又は重合体状炭化水素オキシシロキサンとして、少なくとも1つのSi-O-Si結合と少なくとも1つのR-O-Si-結合を有するものであることが記載されているから、刊行物4に記載の炭化水素オキシシロキサンは、R-O-Si-結合を必ず有する化合物である。
一方、本件発明は、請求項1に記載のとおり、ケイ素含有化合物は式16で示されるものであって、R-O-Si-結合を有する化合物ではない。
そうすると、本件発明におけるケイ素含有化合物と刊行物4に記載のケイ素含有化合物とではR-O-Si-結合の有無の点で相違しているといえる。また、刊行物4には、本件発明のケイ素含有化合物であるメチル基を3個、フェニル基を5個含有するケイ素含有化合物に相当するものは何ら示されていない。
そうであれば、本件発明と刊行物4に記載された発明とは、採用するケイ素含有化合物において相違しているから、本件発明が刊行物4に記載された発明ということはできない。
●刊行物5には、ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、難燃剤1〜15重量部と、有機シリコーン化合物0.1〜2.0重量部とを含有してなる難燃性樹脂組成物が記載されている。そして、有機シリコーン化合物として、メチルフェニルシリコーンオイルが例示され、具体的にはメチルフェニルシリコーンオイルとして、東芝シリコーン社製の商品名TSF437であるメチルフェニルシリコーンオイルが示されている。
しかしながら、東芝シリコーン社製の商品名TSF437が、どのようなメチルフェニルシリコーンオイルであるのか不明であるから、該東芝シリコーン社製の商品名TSF437であるメチルフェニルシリコーンオイルが、メチル基及びフェニル基を有しているとしても、それらの置換基の数がどのような割合で結合しているのか不明といわざるをえない。
そうすると、刊行物5に記載されたメチルフェニルシリコーンオイルが、本件発明のメチル基を3個、フェニル基を5個含有するケイ素含有化合物に相当するものであるということはできない。また、その他に本件発明のケイ素含有化合物に相当するものが示されているともいえない。
そうであれば、本件発明と刊行物5に記載された発明とは、採用するケイ素含有化合物が同一であるということはできないから、本件発明は刊行物5に記載された発明ということはできない。
●刊行物6には、ポリカーボネートおよび/またはコポリエステルカーボネート1〜99重量部、ならびに(B)(b-1)(a)ゴム質重合体、(b)芳香族ビニル単量体成分および(c)シアン化ビニル単量体成分を、共重合体の構成成分として含む共重合体、および/または(b-2)(b)芳香族ビニル単量体成分および(c)シアン化ビニル単量体成分を、共重合体の構成成分として含む共重合体を99〜1重量部含み、かつ
(A)および(B)の合計100重量部に対して、
(C)リン酸エステル系化合物 1〜20重量部および
(D)ポリオルガノシロキサン 0.1〜10重量部を含む難燃性樹脂組成物に関して記載されている。
そして、前記(D)ポリオルガノシロキサンとして、段落【0038】に【化7】が示され、Rxは、異なっていてもよく、メチル基、フェニル基およびビニル基から選択されることが記載され、具体的には、「TSF-437:商標、東芝シリコーン株式会社製、ポリメチルフェニルシロキサン」と記載されている。
しかしながら、東芝シリコーン株式会社製の商標TSF-437が、どのようなメチルフェニルシロキサンであるのか不明であるから、該東芝シリコーン株式会社製の商標TSF-437であるメチルフェニルシロキサンが、メチル基及びフェニル基を有しているとしても、それらの置換基の数がどのような割合で結合しているのか不明といわざるをえない。
そうすると、刊行物6に記載されたメチルフェニルシリコーンオイルが、本件発明のメチル基を3個、フェニル基を5個含有するケイ素含有化合物に相当するものであるということはできない。また、その他に本件発明のケイ素含有化合物に相当するものが示されているともいえない。
そうであれば、本件発明と刊行物6に記載された発明とは、採用するケイ素含有化合物が同一であるということはできないから、本件発明は刊行物6に記載された発明ということはできない。
●刊行物7には、芳香族ポリカーボネートと、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩と、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンとを必須成分として含有し、前記芳香族ポリカーボネート100重量部に対する前記パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩の割合が0.03〜0.3重量部で、前記有機シロキサンの割合が0.05〜2.0重量部である難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
そして、必須成分として含有する有機シロキサンとして、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有するものであることが記載され、具体的には、有機シロキサンは、シロキサン結合の主鎖または側鎖の末端のケイ素がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基を有し、さらにシロキサン結合の任意のケイ素の箇所にビニル基を有するほか、分子中のケイ素の二つの結合手がフェニル基と任意の割合で置換されたものであることが記載されている。また、比較例としてではあるが、フェニル基のみを有する有機シロキサン、メトキシ基のみを有する有機シロキサンが記載されている。
そうすると、刊行物7には、分子中にアルコキシ基及びビニル基を有することを必須のものとする有機シロキサンであるか、フェニル基のみあるいはメトキシ基のみを有する有機シロキサンが記載されているのみで、本件発明の式16で示されるメチル基を3個、フェニル基を5個含有するケイ素含有化合物に相当するものが記載されているということはできない。また、その他に本件発明のケイ素含有化合物に相当するものが示されているともいえない。
そうであれば、本件発明と刊行物7に記載された発明とは、採用するケイ素含有化合物が相違するものであるから、本件発明は刊行物7に記載された発明ということはできない。
●刊行物8には、ポリフェニレンエーテルを該ポリフェニレンエーテル100重量部あたり2乃至15重量部のフェニルシロキサン流体とブレンドすることから成るポリフェニレンエーテルの難燃性を改良し、そしてピーク煙放出速度及び総煙量を低減する方法であって、前記フェニルシロキサン流体が約800乃至100,000の範囲の分子量を有し、そして式:
(a) (C6H5)2SiO、
(b) CH3(C6H5)SiO及び
(c) (CH3)2SiO
の化学結合単位から本質的に成り、前記フェニルシロキサン流体中に、(a)、(b)及び(c)の総モル数を基準として20乃至40モル%の(a)、又は40乃至80モル%の(b)、又は21乃至79モル%の(a)及び(b)が存在する方法が記載されている。
そして、フェニルシロキサン流体として、具体的には表1に記載され、フェニルシロキサン流体の11として、流体の構造(換算モル比)の欄に90φMe:10Me2、粘度(センチストークス)の欄に500、重量平均分子量〈Mw〉の欄に2600、Term.の欄にTMSと記載されたものが採用されている。
しかしながら、刊行物8に記載のフェニルシロキサン流体11は、その表1の記載から明らかなとおり、メチル基の含有量がフェニル基の含有量より多くなっている。また、他のフェニルシロキサン流体についても、メチル基の含有量がフェニル基の含有量より多いものばかりである。
そうすると、刊行物8に記載されているケイ素含有化合物であるフェニルシロキサン流体は、本件発明のメチル基を3個、フェニル基を5個含有するケイ素含有化合物に相当するものということはできない。また、その他に本件発明のケイ素含有化合物に相当するものが示されているともいえない。
したがって、本件発明と刊行物8に記載された発明とは、採用するケイ素含有化合物が同一であるということはできないから、本件発明は刊行物8に記載された発明ということはできない。
●刊行物9には、ジエン系ゴム質重合体に、アルケニル芳香族化合物とこれと共重合可能な少なくとも1種の単量体とからなるビニル単量体混合物を、グラフト重合して得られた熱可塑性樹脂100重量部に、有機シロキサンを0.01〜2.0重量部配合した表面光沢の優れた熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
そして、有機シロキサンとして、ポリメチルフェニルシロキサンが記載され、具体的には、東芝シリコーンKK製TSF433であるポリメチルフェニルシロキサン(500cs)が記載されている。
しかしながら、刊行物9に記載の、東芝シリコーンKK製TSF433であるポリメチルフェニルシロキサン(500cs)が、どのようなメチルフェニルシロキサンであるのか不明であるから、東芝シリコーンKK製TSF433であるポリメチルフェニルシロキサン(500cs)がメチル基及びフェニル基を有しているとしても、どのような数の割合で置換しているかは不明であるから、該東芝シリコーンKK製TSF433が、本件発明のメチル基を3個、フェニル基を5個含有するケイ素含有化合物に相当するものであるということはできない。また、その他に本件発明のケイ素含有化合物に相当するものが示されているともいえない。
そうであれば、本件発明と刊行物9に記載された発明とは、採用するケイ素含有化合物が同一であるということはできないから、本件発明は刊行物9に記載された発明ということはできない。
●刊行物10には、(a)スチレン系重合体とゴム状重合体とからなるゴム変性スチレン系樹脂組成物100重量部と(b)25℃における粘度が500〜100,000センチストークスのポリジメチルシロキサン又はポリメチルフェニルシロキサン1〜3.5重量部からなるスチレン系樹脂組成物に関して記載されている。
そして、(b)25℃における粘度が500〜100,000センチストークスのポリジメチルシロキサン又はポリメチルフェニルシロキサンとして、具体的には、25℃での粘度が5,000センチストークスのポリメチルフェニルシロキサン(東レシリコーン社製 SH-700オイル)を採用したことが示されている。
しかしながら、東レシリコーン社製のSH-700オイルが、どのようなポリメチルフェニルシロキサンであるのか不明であるから、該東レシリコーン社製のSH-700であるポリメチルフェニルシリコーンオイルが、メチル基及びフェニル基を有しているとしても、どのような数の割合で置換しているのか不明といわざるをえない。
そうすると、刊行物10に記載されたポリメチルフェニルシロキサンが、本件発明のメチル基を3個、フェニル基を5個含有するケイ素含有化合物に相当するものであるということはできない。また、その他に本件発明のケイ素含有化合物に相当するものが示されているともいえない。
そうであれば、本件発明と刊行物10に記載された発明とは、採用するケイ素含有化合物が同一であるということはできないから、本件発明は刊行物10に記載された発明ということはできない。
●刊行物14には、リン系難燃剤を用いたポリカーボネート含有スチレン系樹脂組成物が記載され、ポリカーボネート含有樹脂組成物は、更に一層高度な難燃性が要求される場合には必要に応じて、シリコーンオイルを配合することができることが記載され、シリコーンオイルとして、「-Si(-R)2-O-」で示される化学結合単位からなるポリジオルガノシロキサンであること、RはC1〜8のアルキル基、C6〜13のアリール基であることが記載されているが、具体的なシリコーンオイル化合物については記載がされていないし、Rの置換割合についても記載がされていない。
そうすると、刊行物14に記載のシリコーンオイルは、メチル基とフェニル基が結合しているとしても、どのような割合で結合しているのか不明であるから、本件発明のメチル基を3個、フェニル基を5個含有するケイ素含有化合物に相当するものが記載されているということはできない。また、その他に本件発明のケイ素含有化合物に相当するものが示されているともいえない。
そうであれば、本件発明と刊行物14に記載された発明とは、採用するケイ素含有化合物が同一であるということはできないから、本件発明は刊行物14に記載された発明ということはできない。
(ロ)について
本件発明は、樹脂に対して、特定の相溶性を有するケイ素化合物を配合することにより、すなわち、本件発明の構成である、(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部及び(B)式(16)で表されるケイ素含有化合物1〜50重量部を含有し、更に難燃剤を含有した難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であるとすることにより、従来相分離傾向にある(B)が(A)に微分散する結果、ケイ素含有難燃性樹脂組成物の難燃性が飛躍的に向上することを見出したものである。
一方、前記(イ)に記載のとおり、刊行物4には、樹脂にケイ素含有化合物を配合することが示されているが、その目的とするところは、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱酸化的安定性を改善するためのものであり、刊行物9においては、有機シロキサンの配合は熱可塑性樹脂組成物に流動性と優れた表面光沢を与えるものであり、刊行物10においては、ポリメチルフェニルシロキサンを配合しても、OA機器部品などの素材や摺動材料として好適な高い衝撃強度、かつ優れた光沢及び摺動性を有するなど物性バランスに優れるスチレン系樹脂組成物が得られるものであって、樹脂を難燃化する技術に関しては何ら記載がされておらず、刊行物4、9、10に記載されている発明と本件発明とは発明の目的及び解決する手段を異にするものである。
また、樹脂の難燃化について記載されている刊行物5、6、7、8、14についてみると、刊行物7においては、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩と、アルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンとを必須成分として含有することにより難燃化するものであるから、本件発明とはそのケイ素含有化合物が相違しており、問題を解決する手段を異にしているといえる。また、刊行物14においては、シリコーンオイルとして、「-Si(-R)2-O-」で示される化学結合単位からなるポリジオルガノシロキサンを配合できることが記載されてはいるが、RはC1〜8のアルキル基、C6〜13のアリール基であることが記載されており、更に、分子中にビニル基を含有することが好ましいと記載されており、具体的なシリコーンオイル化合物については記載がされていないし、Rの置換割合についても記載がされていないのであるから、刊行物14に記載された事項から、本件発明の特定の構成を導くことは予測できないことといえる。
さらに、刊行物5、6、8にメチルフェニルシリコーンを配合することにより樹脂を難燃化することが記載されているが、メチルフェニルシリコーンについては前記(イ)で述べたとおり、本件発明のケイ素含有化合物とは同一のものとはいえないのであり、しかも、本件発明は、樹脂とケイ素含有化合物の「溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であること」とするものであるから、たとえ、メチルフェニルシリコーンを配合することにより樹脂を難燃化することが記載されているとしても、これらの刊行物5、6、8には、樹脂とメチルフェニルシリコーンとの溶解性パラメーターに関する事項については何ら記載がされていないのであるから、前記刊行物5、6、8に記載された事項から、本件発明の特定の構成を導くことは容易に想到し得ないものというべきである。
確かに、刊行物2、3、11、12、13、14には、溶解性、溶解性パラメーター、溶解度パラメーターについて記載がされ、11、14には、SP値が近似するときは、最もよく溶解あるいは相溶することが記載さているが、SP値と樹脂を難燃化することとの関係についてはいずれの刊行物にも記載がされていない。
そうであれば、刊行物2、3、11、12、13、14に記載の事項から、ケイ素含有化合物及び樹脂のSP値を知ることができたとしても、SP値と樹脂を難燃化することとの関係については、いずれの刊行物にも記載がされていないのであるから、刊行物2、3、11、12、13、14に記載の事項を、刊行物5、6、8に記載された発明に適用すること自体予測できないことというべきである。
結局、刊行物1〜14に記載の事項を合わせ検討しても、本件発明はこれらの刊行物1〜14に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明を想到できたとすることはできない。
そして、本件発明は、請求項1に記載の特定の構成とすることにより、樹脂に対して、特定の相溶性を有する特定の構造のケイ素化合物を配合することにより、より難燃性を向上させるという特許明細書に記載の格別の効果を奏するものといえる。
(3)以上のとおり、本件発明は刊行物1〜14に記載された発明ということはできないし、刊行物1〜14に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
ウ.特許法第36条違反(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社の申立理由3)について
1.特許異議申立理由の概要
訂正前の請求項1には、溶解性パラメーター差が規定されているが、溶解性パラメーターは同一物でも測定方法(算出方法)により数値が異なるから、溶解性パラメーターの測定方法(算出方法)が記載されていない本件特許は、溶解性パラメーター差が2.5以下であるといってもきわめて不明確であり、特許請求の範囲には発明が明確に記載されておらず、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2.判断
訂正後の本件特許明細書段落【0106】、【0107】には、溶解性パラメーターについて、
「【0106】(3)SP値(δ)〔溶解性パラメーター(Solubility Parameter)〕と平均SP値
SP値は Polymer Engineering and Science、14、(2)、147(1974)に記載のFedors式、及び該文献に纏められているΔe1とΔv1のデータから算出した。
【0107】δ=√〔Σ(Δe1)/Σ(Δv1)〕
[ここで、Δe1は各単位官能基当たりの凝集エネルギー、Δv1は各単位官能基当たりの分子容を示し、δの単位は(cal/cm3)1/2である。]尚、共重合体またはブレンド物のSP値は、加成則が成立すると仮定し、共重合体の場合は単量体ユニット、またはブレンド物の場合は各成分のSP値の重量比の比例配分により算出し、これを平均SP値とした。本発明において、SP値とは前記算出方法により算出したものである。」と記載されている。
そして、刊行物3、11、14にも、SP値の求め方は記載されているように本出願前公知の事項であるし、本件特許明細書において、「SP値は Polymer Engineering and Science、14、(2)、147(1974)に記載のFedors式、及び該文献に纏められているΔe1とΔv1のデータから算出した」と明確に記載しているのであるから、格別SP値の測定方法が不明確とまではいえない。
したがって、本件特許は、明細書の記載が不備である特許出願に対してされたものであるとまではいうことができない。
V.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ケイ素含有難燃性樹脂組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部及び(B)下記式(16)で表されるケイ素含有化合物1〜50重量部を含有し、更に難燃剤を含有した難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であることを特徴とするケイ素含有難燃性樹脂組成物。
【化1】

(但し、R1〜R8はメチル基またはフェニル基であって、かつメチル基が3個、フェニル基が5個である。)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はケイ素含有難燃性成形材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の樹脂は、金属またはガラスに比較して、軽量で、耐衝撃性に優れていることから、自動車部品、家電部品、OA機器部品を始めとする多岐の分野で使用されているが、樹脂の易燃性のためにその用途が制限されている。
【0003】
樹脂の難燃化の方法としては、ハロゲン系、リン系、無機系の難燃剤を樹脂に添加することが知られており、それによりある程度難燃化が達成されている。しかしながら、近年火災に対する安全性の要求がとみにクローズアップされ、更に高度な難燃化技術の開発と共に、環境上の問題や機械的性質の低下のない技術開発が強く望まれている。
【0004】
一方、有機ケイ素化合物として、ジメチルシリコーンを含有する難燃性樹脂組成物が開示されている(特公昭63-10184、特開昭64-4656、米国特許4497925、4387176、特開平2-133464号公報)。上記公報のシリコーンは、樹脂との相溶性が低く樹脂と相分離するために、難燃性、機械的特性が充分ではなく、実用的使用に耐えることができない。
【0005】
また油拡散ポンプ用オイルとしてメチルフェニルシリコーンが知られているが、上記シリコーンは熱可塑性樹脂、特にスチレン系樹脂との相溶性に優れる結果として、優れた難燃性を付与可能であることを本発明者が発見した。しかし上記シリコーンは油拡散ポンプ用オイルであって難燃剤ではなく、従来より難燃性向上効果は知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち卓越した難燃性を有する成形材料を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは難燃性の卓越した難燃性樹脂成形材料を鋭意検討した結果、樹脂に対して、特定の相溶性を有するケイ素化合物を配合する事により、驚くべきことに難燃性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち本発明は、(1)(A)スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部及び(B)下記式(16)で表されるケイ素含有化合物1〜50重量部を含有し、更に難燃剤を含有した難燃性樹脂組成物であって、(A)と(B)の溶解性パラメーター(SP値)の差△SPが2.5(cal/cm3)0.5以下であることを特徴とするケイ素含有難燃性樹脂組成物
【化1】

(但し、R1〜R8はメチル基またはフェニル基であって、かつメチル基が3個、フェニル基が5個である。)
を提供するものである。
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0010】
本発明は、(A)樹脂及び(B)特定のケイ素化合物とからなる難燃性成形材料である。
【0011】
ここで、(B)はケイ素原子を有することが重要である。ケイ素原子の存在により、燃焼時にシリカ被膜を形成し難燃性が向上する。
【0012】
次いで、(A)と(B)のSP値の差が2.5(cal/cm3)0.5以下であることが必須である。上記SP値差が2.5(cal/cm3)0.5以下であることにより、従来相分離傾向にある(B)が(A)に微分散する結果、飛躍的に難燃性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明において(A)樹脂は、スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂である。
【0014】
上記(A)の一つのスチレン系樹脂(A-1)は、ゴム変性スチレン系樹脂及び/またはゴム非変性スチレン系樹脂であり、特にゴム変性スチレン系樹脂単独またはゴム変性スチレン系樹脂とゴム非変性スチレン系樹脂からなることが好ましく、(B)と相溶もしくは均一分散し得るものであれば特に制限はない。また、ゴム変性スチレン系樹脂は、ビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体及び必要に応じ、これと共重合可能なビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の重合方法により得られる。
【0015】
このような樹脂の例としては、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0016】
ここで、前記ゴム状重合体は、ガラス転移温度(Tg)が-30℃以下であることが好ましく、-30℃を越えると耐衝撃性が低下する傾向にある。
【0017】
このようなゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン-ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)等のジエン系ゴム及び上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム及びエチレン-プロピレン-ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0018】
上記のゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト重合可能な単量体混合物中の必須成分の芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン等であり、スチレンが最も好ましいが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビニル単量体を共重合してもよい。
【0019】
また、(A-1)の中のゴム変性スチレン系樹脂の成分として必要に応じて、芳香族ビニル単量体に共重合可能な単量体成分を一種以上導入することができる。耐油性を高める必要のある場合は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体を用いることができる。
【0020】
そして、ブレンド時の溶融粘度を低下させる必要のある場合は、炭素数が1〜8のアルキル基からなるアクリル酸エステルを用いることができる。また更に、樹脂組成物の耐熱性を更に高める必要のある場合は、α-メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N-置換マレイミド等の単量体を共重合してもよい。単量体混合物中に占める上記ビニル芳香族単量体と共重合可能なビニル単量体の含量は0〜40重量%である。
【0021】
ゴム変性スチレン系樹脂におけるゴム状重合体は、好ましくは5〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%、グラフト重合可能な単量体混合物は、好ましくは95〜20重量%、更に好ましくは90〜50重量%の範囲にある。この範囲内では、目的とする樹脂組成物の耐衝撃性と剛性のバランスが向上する。更には、スチレン系重合体のゴム粒子径は、0.1〜5.0μmが好ましく、特に0.2〜3.0μmが好適である。上記範囲内では、特に耐衝撃性が向上する。
【0022】
ゴム変性スチレン系樹脂の分子量の尺度である樹脂部分の還元粘度ηsp/c(0.5g/dl、30℃測定:マトリックス樹脂がポリスチレンの場合はトルエン溶液、マトリックス樹脂が不飽和ニトリル-芳香族ビニル共重合体の場合はメチルエチルケトン)は、0.30〜0.80dl/gの範囲にあることが好ましく、0.40〜0.60dl/gの範囲にあることがより好ましい。ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度ηsp/cに関する上記要件を満たすための手段としては、重合開始剤量、重合温度、連鎖移動剤量の調整等を挙げることができる。
【0023】
本発明において、スチレン系樹脂(A-1)としては、さらに前記に述べたスチレン系樹脂に加えて、これとポリフェニレンエーテル(A-2)との組み合わせも有用である。このようなポリフェニレンエーテル(A-2)は、下記式(1)で示される結合単位からなる単独重合体及び/又は共重合体である。
【0024】
【化2】

【0025】
但し、R1、R2、R3、R4は、それぞれ水素、炭化水素、または置換炭化水素基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0026】
このポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体等が好ましく、中でもポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が好ましい。かかるポリフェニレンエーテルの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号明細書記載の方法による第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば2,6キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3,306,875号明細書、米国特許第3,257,357号明細書、米国特許3,257,358号明細書、及び特公昭52-17880号公報、特開昭50-51197号公報に記載された方法で容易に製造できる。本発明にて用いる上記ポリフェニレンエーテルの還元粘度ηsp/c(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.20〜0.70dl/gの範囲にあることが好ましく、0.30〜0.60dl/gの範囲にあることがより好ましい。ポリフェニレンエーテルの還元粘度ηsp/cに関する上記要件を満たすための手段としては、前記ポリフェニレンエーテルの製造の際の触媒量の調整などを挙げることができる。
【0027】
本発明における、好ましい熱可塑性樹脂の組み合わせの一つの(A-1)(A-2)からなる樹脂成分100重量部中の、前記(A-2)の占める量は、1〜99重量%であり、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは、3〜40重量%、最も好ましくは、5〜25重量%である。
【0028】
本発明における(A)熱可塑性樹脂の一つの芳香族ポリカーボネートは、芳香族ホモポリカーボネートと芳香族コポリカーボネートより選ぶことができる。製造方法としては、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは、例えば、二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法を挙げることができる。該芳香族ポリカーボネートは粘度平均分子量が1万〜10万の範囲が好適である。ここで、上記2官能フェノール系化合物は、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジフェニル)ブタン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1-フェニル-1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等であり、特に2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕が好ましい。本発明において、2官能フェノール系化合物は、単独で用いてもよいし、あるいはそれらを併用してもよい。
【0029】
本発明において、(B)特定のケイ素化合物は、(A)と(B)のSP値の差が2.5(cal/cm3)0.5以下の条件を満足するケイ素化合物であれば特に制限されない。
【0030】
例えば、下記式(16)で示されるポリオルガノシロキサンである。
【0031】
【化3】

【0032】
(但し、R1〜R8はメチル基またはフェニル基であって、かつメチル基が3個、フェニル基が5個である。)」
【0033】
本発明において更に高度な難燃性を付与する場合は、(C)難燃剤として、ハロゲン系、リン系または無機系難燃剤を配合することができる。
【0034】
上記(C)としてのハロゲン系難燃剤は、ハロゲン化ビスフェノール、芳香族ハロゲン化合物、ハロゲン化ポリカーボネート、ハロゲン化芳香族ビニル系重合体、ハロゲン化シアヌレート樹脂、ハロゲン化ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、好ましくはデカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールAのオリゴマー、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系ポリカーボネート、ブロム化ポリスチレン、ブロム化架橋ポリスチレン、ブロム化ポリフェニレンオキサイド、ポリジブロムフェニレンオキサイド、デカブロムジフェニルオキサイドビスフェノール縮合物、含ハロゲンリン酸エステル及びフッ素系樹脂等である。
【0035】
前記(C)の中のリン系難燃剤としては、有機リン化合物、赤リン、無機系リン酸塩等が挙げられる。
【0036】
上記有機リン化合物の例としては、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ビホスフィン、ホスホニウム塩、ホスフィン酸塩、リン酸エステル、亜リン酸エステル等である。より具体的には、トリフェニルフォスフェート、メチルネオペンチルフォスファイト、ヘンタエリスリトールジエチルジフォスファイト、メチルネオペンチルフォスフォネート、フェニルネオペンチルフォスフェート、ペンタエリスリトールジフェニルジフォスフェート、ジシクロペンチルハイポジフォスフェート、ジネオペンチルハイポフォスファイト、フェニルピロカテコールフォスファイト、エチルピロカテコールフォスフェート、ジピロカテコールハイポジフォスフェートである。
【0037】
ここで、特に有機リン化合物として、下記式(3)で示される芳香族系リン酸エステル単量体、下記式(4)で示される芳香族系リン酸エステル縮合体が好ましい。
【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
(但し、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Ar7、Ar8はそれぞれ独立に無置換または炭素数1〜10の炭化水素基で少なくとも一つ置換されたフェニル基から選ばれる芳香族基である。Ar6は炭素数6〜20の二価の芳香族基である。mは1以上の整数を表わす。)
上記芳香族系リン酸エステル単量体の中でも、特にヒドロキシル基含有芳香族系リン酸エステル単量体、例えば、トリクレジルフォスフェートやトリフェニルフォスフェート等に1個または2個以上のフェノール性水酸基を含有したリン酸エステル単量体、または下記式(5)に示した芳香族リン酸エステル単量体が好ましい。
【0041】
【化6】

【0042】
(式中、a、b、cは1から3、R1、R2、R3は水素または炭素数が1から30のアルキル基であり、化合物全体として、置換基R1、R2、R3の炭素数の合計が平均12から30である。ここで、異なった置換基を有する、複数の芳香族リン酸エステルからなる場合には、上記難燃剤の置換基R1、R2、R3の炭素数の合計は、数平均で表し、上記難燃剤中の各芳香族リン酸エステル成分の重量分率と、各成分の置換基の炭素数の合計との積の和である。)
本発明において、芳香族リン酸エステル単量体の中でも、置換基R1、R2、R3の炭素数合計の数平均は、15〜30が好ましく、さらには20〜30が好ましく、25〜30が最も好ましい。
【0043】
具体的な置換基として、ノニル基、t-ブチル基等のブチル基、t-アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オタデシル基、ノナデシル基、オクタドデシル基等が挙げられ、特開平1-95149号公報、特開平3-294284号公報等に開示された公知の方法により製造することができる。例えば、アルキルフェノールとオキシ塩化リンと触媒の無水塩化アルミニウムを加熱下に反応する方法、または亜リン酸トリエステルを酸素で酸化して、対応する芳香族リン酸エステルに転換する方法がある。
【0044】
また前記芳香族リン酸エステル縮合体の中でも、特にビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)、ビスフェノールAビス(ジクレジルフォスフェート)等が好ましい。
【0045】
本発明において前記(C)として使用する、もう一つの好ましい芳香族リン酸エステル縮合体は、下記式(6)で示される。
【0046】
【化7】

【0047】
(式中、a,b,c,d,eは0から3であり、R1からR5は炭素数が1から10の炭化水素であり、nは1〜3の整数を表す。)
上記難燃剤は、特に2,6位に置換された芳香族リン酸エステル縮合体が好ましく、特開平5-1079号公報等に開示された公知の方法により製造することができる。例えば、2,6位に置換された単官能フェノールとオキシハロゲン化リンとルイス酸触媒の存在下で反応させ、ジアリールホスホロハライドを得、次いでこれと二官能フェノールをルイス酸触媒の存在下で反応する方法がある。
【0048】
前記(C)において、リン系難燃剤の一つの赤リンは、一般の赤リンの他に、その表面をあらかじめ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンよりえらばれる金属水酸化物の被膜で被覆処理されたもの、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンより選ばれる金属水酸化物及び熱硬化性樹脂よりなる被膜で被覆処理されたもの、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンより選ばれる金属水酸化物の被膜の上に熱硬化性樹脂の被膜で二重に被覆処理されたものなどである。
【0049】
前記(C)において、リン系難燃剤の一つの無機系リン酸塩は、ポリリン酸アンモニウムが代表的である。
【0050】
そして、前記(C)としての無機系難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズの水和物等の無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、ムーカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。これらは、1種でも2種以上を併用してもよい。この中で特に、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトからなる群から選ばれたものが難燃効果が良く、経済的にも有利である。
【0051】
本発明における前記(C)の添加量は,(A)100重量部に対して、1〜100重量部であり、好ましくは1〜50重量部、更に好ましくは、3〜20重量部、最も好ましくは、5〜15重量部である。
【0052】
本発明において、特に難燃性と耐熱性の更なる向上が必要な場合には、(D)ノボラック樹脂を配合することができる。(D)は、芳香族リン酸エステルと併用する場合には、流動性と耐熱性の向上剤でもあり、樹脂成分と芳香族リン酸エステルとの間の相溶性をやや低下させる。そして、その樹脂は、フェノール類とアルデヒド類を硫酸または塩酸のような酸触媒の存在下で縮合して得られる熱可塑性樹脂であり、その製造方法は、「高分子実験学5『重縮合と重付加』p.437〜455(共立出版(株))」に記載されている。
【0053】
ノボラック樹脂製造の一例を下記式(7)、(8)に示す。
【0054】
【化8】

【0055】
上記フェノール類は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,5-ジメチル-、3,5-ジメチル-、2,3,5-トリメチル-、3,4,5-トリメチル-、p-t-ブチル-、p-n-オクチル-、p-ステアリル-、p-フェニル-、p-(2-フェニルエチル)-、o-イソプロピル-、p-イソプロピル-、m-イソプロピル-、p-メトキシ-、及びp-フェノキシフェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、サリチルアルデヒド、サルチル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、p-シアノ-、及びo-シアノフェノール、p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、p-ヒドロキシベンゼンスルホンアミド、シクロヘキシルp-ヒドロキシベンゼンスルホネート、4-ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、メチル4-ヒドロキシフェニルフェニルホスフィネート、4-ヒドロキシフェニルホスホン酸、エチル4-ヒドロキシフェニルホスホネート、ジフェニル4-ヒドロキシフェニルホスホネート等である。
【0056】
上記アルデヒド類は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、n-プロパナール、n-ブタナール、イソプロパナール、イソブチルアルデヒド、3-メチル-n-ブタナール、ベンズアルデヒド、p-トリルアルデヒド、2-フェニルアセトアルデヒド等である。
【0057】
本発明において必要に応じて、飽和高級脂肪族のカルボン酸またはそれらの金属塩、カルボン酸エステル系ワックス、オルガノシロキサン系ワックス、ポリオレフィンワックス、ポリカプロラクトンから選ばれる一種または二種以上の化合物等の(E)離型剤を配合することができる。
【0058】
上記(E)の中でも、飽和高級脂肪族のカルボン酸またはそれらの金属塩から選ばれた1種または2種以上の化合物が好ましい。
【0059】
飽和高級脂肪酸のカルボン酸としては炭素数12〜42の直鎖飽和モノカルボン酸が好ましい。例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられる。これらの金属塩の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛等があり、特にステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムが特に好ましい。
【0060】
(E)の量は、(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、更に好ましくは、0.1〜5重量部、最も好ましくは、0.3〜1重量部である。
【0061】
本発明において、必要に応じて、トリアジン骨格含有化合物、含金属化合物、シリカ、アラミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、フッ素系樹脂から選ばれる一種以上の難燃助剤(F)を配合することができる。
【0062】
(F)の量は、(A)100重量部に対して、好ましくは0.001〜40重量部、更に好ましくは、1〜20重量部、最も好ましくは、5〜10重量部である。
【0063】
(F)としてのトリアジン骨格含有化合物は、リン系難燃剤の難燃助剤として一層の難燃性を向上させるための成分である。その具体例としては、メラミン、下記式(9)で示されるメラム、下記式(10)で示されるメレム、メロン(600□以上でメレム3分子から3分子の脱アンモニアによる生成物)、下記式(11)で示されるメラミンシアヌレート、下記式(12)で示されるリン酸メラミン、下記式(13)で示されるサクシノグアナミン、アジポグアナミン、メチルグルタログアナミン、下記式(14)で示されるメラミン樹脂、下記式(15)で示されるBTレジンを挙げることができるが、低揮発性の観点から特にメラミンシアヌレートが好ましい。
【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
【化13】

【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
(F)としての含金属化合物は、金属酸化物及び/または金属粉である。上記金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等の単体または、それらの複合体(合金)であり、上記金属粉は、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ、アンチモン等の単体または、それらの複合体である。
【0072】
(F)としてのシリカは、無定形の二酸化ケイ素であり、特にシリカ表面に炭化水素系化合物系のシランカップリング剤で処理した炭化水素系化合物被覆シリカが好ましく、更にはビニル基を含有した炭化水素系化合物被覆シリカが好ましい。
【0073】
上記シランカップリング剤は、p-スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、Y-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニル基含有シラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、Y-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、Y-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、及びN-β(アミノエチル)Y-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)Y-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、Y-アミノプロピルトリエトキシシシラン、N-フェニル-Y-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシランである。ここで、特に熱可塑性樹脂と構造が類似した単位を有するシランカップリング剤が好ましく、例えば、スチレン系樹脂に対しては、p-スチリルトリメトキシシランが好適である。
【0074】
シリカ表面へのシランカップリング剤の処理は、湿式法と乾式法に大別される。湿式法は、シリカをシランカップリング剤溶液中で処理し、その後乾燥させる方法であり、乾式法は、ヘンシェルミキサーのような高速撹はん可能な機器の中にシリカを仕込み、撹はんしながらシランカップリング剤液をゆっくり滴下し、その後熱処理する方法である。
【0075】
(F)としてのアラミド繊維は、平均直径が1〜500μmで平均繊維長が0.1〜10mmであることが好ましく、イソフタルアミド、またはポリパラフェニレンテレフタルアミドをアミド系極性溶媒または硫酸に溶解し、湿式または乾式法で溶液紡糸することにより製造することができる。
【0076】
(F)としてのポリアクリロニトリル繊維は、平均直径が1〜500μmで平均繊維長が0.1〜10mmであることが好ましく、ジメチルホルムアミド等の溶媒に重合体を溶解し、400℃の空気流中に乾式紡糸する乾式紡糸、または硝酸等の溶媒に重合体を溶解し水中に湿式紡糸する湿式紡糸法により製造される。
【0077】
(F)としてのフッ素系樹脂は、樹脂中にフッ素原子を含有する樹脂である。その具体例として、ポリモノフルオロエチレン、ポリジフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を挙げることができる。また、必要に応じて上記含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーとを併用してもよい。
【0078】
これらのフッ素系樹脂の製造方法は、米国特許第2,393,697号明細書及び米国特許第2,534,058号明細書に開示され、例えばテトラフルオロエチレンを水性媒体中で過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等のラジカル開始剤を用いて、7〜70kg/cm2の加圧下、0〜200の温度で重合し、次いで懸濁液、分散液または乳濁液から凝析により、または沈殿によりポリテトラフルオロエチレン粉末が得られる。
【0079】
フッ素系樹脂の配合方法は、フッ素系樹脂と熱可塑性樹脂と必要に応じて分散剤を、溶融混練してマスターバッチを作製してから、熱可塑性樹脂、難燃剤と溶融混練する二段プロセス法、または、サイドフィード可能な二ゾーンからなる押出機を用い、前段で熱可塑性樹脂とフッ素系樹脂と必要に応じて分散剤を、溶融混練し、後段で溶融温度を下げて難燃剤をフィード、溶融混練する一段プロセス法、またはフッ素系樹脂を含む全成分をメインフィーダーにフィード、溶融混練する一段プロセス等がある。ここで、難燃性の観点からマスターバッチを作製する二段プロセスが好ましい。
【0080】
本発明において、必要に応じて、芳香族ビニル単位とアクリル酸エステル単位からなる共重合樹脂、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪族アルコール、または金属石鹸から選ばれる一種または二種以上の流動性向上剤(G)を配合することができる。
【0081】
(G)の量は、(A)100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、更に好ましくは、0.5〜10重量部、最も好ましくは、1〜5重量部である。
【0082】
(G)としての共重合樹脂の芳香族ビニル単位は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、2,4,5-トリブロモスチレン等であり、スチレンが最も好ましいが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビニル単量体を共重合してもよい。そして、アクリル酸エステル単位は、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等の炭素数が1〜8のアルキル基からなるアクリル酸エステルである。
【0083】
ここで、共重合樹脂中のアクリル酸エステル単位の含量は、3〜40重量%が好ましく、更には、5〜20重量%が好適である。また、上記共重合樹脂の分子量の指標である溶液粘度(樹脂10重量%のMEK溶液、測定温度25℃)が、2〜10cP(センチポアズ)であることが好ましい。溶液粘度が2cP未満では、衝撃強度が低下し、一方、10cPを越えると流動性の向上効果が低下する。
【0084】
(G)としての脂肪族炭化水素系加工助剤は、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、ポリオレフィンワックス、合成パラフィン、及びこれらの部分酸化物、あるいはフッ化物、塩化物等である。
【0085】
(G)としての高級脂肪酸は、(E)離型剤の項で述べたもの以外の飽和脂肪酸、及びリシノール酸、リシンベライジン酸、9-オキシ12オクタデセン酸等の不飽和脂肪酸等である。
【0086】
(G)としての高級脂肪酸エステルは、フェニルステアリン酸メチル、フェニルステアリン酸ブチル等の脂肪酸の1価アルコールエステル、及びフタル酸ジフェニルステアリルのフタル酸ジエステル等の多塩基酸の1価アルコールエステルであり、さらに、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスキオレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、カプリン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライド等のグリセリン単量体の脂肪酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル等のポリグリセリンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート等のポリアルキレンエーテルユニットを有する脂肪酸エステル、及びネオペンチルポリオールジステアリン酸エステル等のネオペンチルポリオール脂肪酸エステル等である。
【0087】
(G)としての高級脂肪酸アミドは、フェニルステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸のモノアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、及びヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のN,N’-2置換モノアミド等であり、さらに、メチレンビス(12-ヒドロキシフェニル)ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビス(12-ヒドロキシフェニル)ステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス(12-ヒドロキシフェニル)ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド、及びm-キシリレンビス(12-ヒドロキシフェニル)ステアリン酸アミド等の芳香族系ビスアミドである。
【0088】
(G)としての高級脂肪族アルコールは、ステアリルアルコールやセチルアルコール等の1価のアルコール、ソルビトールやマンニトール等の多価アルコール、及びポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンボクタデシルアミン等であり、さらに、ポリオキシエチレンアリル化エーテル等のポリアルキレンエーテルユニットを有するアリル化エーテル、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリドデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエピクロルヒドリンエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンエチレングリコール、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル等のポリアルキレンエーテルユニットを有する2価アルコールである。
【0089】
(G)としての金属石鹸は、上記ステアリン酸等の高級脂肪酸の、バリウムやカルシウムや亜鉛やアルミニウムやマグネシウム等の金属塩である。
【0090】
本発明において、必要に応じて、熱可塑性エラストマー(H)を配合することができ、例えば、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、1,2-ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系等であり、特にポリスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0091】
(H)の量は、(A)100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、更に好ましくは、1〜10重量部、最も好ましくは、2〜5重量部である。
【0092】
上記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル単位と共役ジエン単位からなるブロック共重合体、または上記共役ジエン単位部分が部分的に水素添加されたブたブロック共重合体である。
【0093】
上記ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、2,4,5-トリブロモスチレン等であり、スチレンが最も好ましいが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビニル単量体を共重合してもよい。
【0094】
また、上記ブロック共重合体を構成する共役ジエン単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン等を挙げることができる。
【0095】
そして、ブロック共重合体のブロック構造は、芳香族ビニル単位からなる重合体ブロックをSで表示し、共役ジエン及び/またはその部分的に水素添加された単位からなる重合体ブロックをBで表示する場合、SB、S(BS)n、(但し、nは1〜3の整数)、S(BSB)n、(但し、nは1〜2の整数)のリニア-ブロック共重合体や、(SB)nX(但し、nは3〜6の整数。Xは四塩化ケイ素、四塩化スズ、ポリエポキシ化合物等のカップリング剤残基。)で表示される、B部分を結合中心とする星状(スター)ブロック共重合体であることが好ましい。なかでもSBの2型、SBSの3型、SBSBの4型のリニア-ブロック共重合体が好ましい。
【0096】
本発明において、耐光性が要求される場合には、必要に応じて、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、酸化防止剤、ハロゲン捕捉剤、遮光剤、金属不活性剤、または消光剤から選ばれる一種または二種以上の耐光性改良剤(I)を配合することができる。
【0097】
(I)の量は、(A)100重量部に対して、好ましくは0.05〜20重量部、更に好ましくは、0.1〜10重量部、最も好ましくは、1〜5重量部である。
【0098】
本発明の一つの難燃性樹脂成形材料の好ましい組成の一例としては次のものを挙げることができる。(A)スチレン樹脂、芳香族ポリカーボネートから選ばれる熱可塑性樹脂50〜99重量部と、(B)前記式(16)を満足するメチルフェニルシリコーン1〜50重量部。
【0099】
上記組成の場合には、優れた難燃性を有している。
【0100】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0101】
尚、実施例、比較例における測定は、以下の方法もしくは測定機を用いて行なった。
【0102】
(1)ゴム変性スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテルの還元粘度ηsp/Cゴム変性スチレン系樹脂1gにメチルエチルケトン18mlとメタノール2mlの混合溶媒を加え、25℃で2時間振とうし、5℃、18000rpmで30分間遠心分離する。上澄み液を取り出しメタノールで樹脂分を析出させた後、乾燥した。
【0103】
このようにして得られた樹脂0.1gを、ゴム変性ポリスチレンの場合はトルエンに溶解し、ゴム変性アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂の場合はメチルエチルケトンに溶解し、濃度0.5g/dlの溶液とし、この溶液10mlをキャノン-フェンスケ型粘度計に入れ、30℃でこの溶液落下時間T1(秒)を測定した。一方、別に同じ粘度計で純トルエンまたは純メチルエチルケトンの落下時間T0(秒)を測定し、以下の数式により算出した。
【0104】
ηsp/C=(T1/T0-1)/CC:ポリマー濃度(g/dl)
一方、ポリフェニレンエーテルの還元粘度ηsp/Cについては、0.1gをクロロホルムに溶解し、濃度0.5g/dlの溶液とし、上記と同様に測定した。
【0105】
(2)組成物の分析樹脂組成物5gを100mlのメチルエチルケトンに溶解し、超遠心分離機を用いて分離する(20000rpm、1時間)。次いで、分離して得られた上澄み液に2倍量のメタノールを添加して樹脂成分を析出させ、溶液部分と樹脂部分を超遠心分離機を用いて分離した。溶液部分については、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)〔日本国東ソー(株)製、装置本体(RI屈折率検出器付き)HLC-8020;カラム 東ソー(株)製、G1000HXL2本;移動相 テトラヒドロフラン;流量0.8ml/分;圧力60kgf/cm2;温度INLET35℃,OVEN40℃,RI35℃;サンプルループ100ml;注入サンプル量0.08g/20ml〕で分析し、クロマトグラム上の各成分の面積比を各成分の重量分率と仮定し、面積比からリン酸エステルの組成と量を求めた。一方、上記の樹脂部分については、フーリエ変換核磁気共鳴装置(プロトン-FT-NMR)を用いて、芳香族プロトンまたは脂肪族プロトンの積分値の比を求め、ゴム変性スチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂の量を求めた。
【0106】
(3)SP値(δ)〔溶解性パラメーター(Solubility Parameter)〕と平均SP値SP値はPolymer Engineering and Science、14、(2)、147(1974)に記載のFedors式、及び該文献に纏められているΔe1とΔv1のデータから算出した。
【0107】
δ=√〔Σ(Δe1)/Σ(Δv1)〕
[ここで、Δe1は各単位官能基当たりの凝集エネルギー、Δv1は各単位官能基当たりの分子容を示し、δの単位は(cal/cm3)1/2である。]尚、共重合体またはブレンド物のSP値は、加成則が成立すると仮定し、共重合体の場合は単量体ユニット、またはブレンド物の場合は各成分のSP値の重量比の比例配分により算出し、これを平均SP値とした。
本発明において、SP値とは前記算出方法により算出したものである。
【0108】
(4)難燃性UL-94に準拠したVB(Vertical Burning)法により、自己消火性の評価を行った。(1/8インチ厚み試験片)
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
【0109】
(イ)メチルフェニルシリコーン信越化学工業(株)製の油拡散ポンプ用メチルフェニルシリコーン(商品名信越シリコーンHIVACシリーズ)を用いた。ここで下記式(16)のR1〜R8はメチル基(Me)またはフェニル基(Ph)であり、Meが3個、Phが5個をMPh(5)シリコーンと称し、Meが7個、Phが1個をMPh(1)シリコーンと称する。またMPh(5)、MPh(1)のSP値はそれぞれ9.9、7.9(cal/cm3)0.5である。
【0110】
【化16】

【0111】
(ロ)シリコーン信越化学工業(株)製のポリジメチルシロキサン(商品名 信越シリコーンKF96シリーズ 動粘度100CS)を用いた(MEシリコーンと称する)。
【0112】
SP値は7.4(cal/cm3)0.5である。
【0113】
(ハ)ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)
ポリブタジエン{(シス1,4結合/トランス1,4結合/ビニル1,2結合重量比=95/2/3)(日本ゼオン(株)製、商品名Nipol 122 OSL)}を、以下の混合液に溶解し、均一な溶液とした。
【0114】
ポリブタジエン10.5重量%スチレン74.2重量%エチルベンゼン15.0重量%α-メチルスチレン2量体0.27重量%t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.03重量%次いで、上記混合液を撹拌機付の直列4段式反応機に連続的に送液して、第1段は撹拌数190rpm、126℃、第2段は50rpm、133℃、第3段は20rpm、140℃、第4段は20rpm、155℃で重合を行った。引き続きこの固形分73%の重合液を脱揮装置に導き、未反応単量体及び溶媒を除去し、ゴム変性芳香族ビニル樹脂を得た(HIPSと称する)。得られたゴム変性芳香族ビニル樹脂を分析した結果、ゴム含量は12.1重量%、ゴムの重量平均粒子径は1.5μm、還元粘度ηsp/cは0.53dl/gであった。
【0115】
SP値は10.3(cal/cm3)0.5である。
【0116】
(ニ)ポリフェニレンエーテル(PPE)
酸素吹き込み口を反応機底部に有し、内部に冷却用コイル、撹拌羽根を有するステンレス製反応機の内部を窒素で充分置換したのち、臭化第2銅54.8g、ジ-n-ブチルアミン1110g、及びトルエン20リットル、n-ブタノール16リットル、メタノール4リットルの混合溶媒に2,6-キシレノール8.75kgを溶解して反応機に仕込んだ。撹拌しながら反応機内部に酸素を吹き込み続け、内温を30℃に制御しながら90分間重合を行った。重合終了後、析出したポリマーを濾別した。これにメタノール/塩酸混合液を添加し、ポリマー中の残存触媒を分解し、さらにメタノールを用いて充分洗浄した後乾燥し、粉末状のポリフェニレンエーテルを得た(PPEと称する)。還元粘度ηsp/Cは0.41dl/gであった。
【0117】
SP値は11.2(cal/cm3)0.5である。
【0118】
(ホ)難燃剤:1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)(FR)市販の、レゾルシン由来の芳香族縮合リン酸エステル{大八化学工業(株)製、商品名 CR733S(FR-1と称する)}を用いた。また、上記芳香族縮合リン酸エステルは、GPC分析によると、下記式(17)で表わされるTPPダイマー(n=1)とTPPオリゴマー(n≧2)とからなり、重量比でそれぞれ65/35であった。
【0119】
【化17】

【0120】
実施例1〜4、比較例1〜5表1、2記載の量比で機械的に混合し、東洋精機製作所製ラボプラストミルを用いて、溶融温度230℃、回転数50rpmで5分間溶融した。このようにして得られた樹脂組成物から圧縮成形法により1/8インチ厚の試験片を作製し、難燃性の評価を行なった。その結果を表1、2に記載した。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
表1、2によると、有機ケイ素化合物の中でフェニル基を含有するシリコーンは樹脂との相溶性が高いために難燃性に優れていることが分かる。
【0124】
【発明の効果】
本発明はケイ素含有難燃性成形材料に関するものである。
【0125】
本発明の成形材料は、VTR、分電盤、テレビ、オーディオプレーヤー、コンデンサ、家庭用コンセント、ラジカセ、ビデオカセット、ビデオディスクプレイヤー、エアコンディショナー、加湿機、電気温風機械等の家電ハウジング、シャーシまたは部品、CD-ROMのメインフレーム(メカシャーシ)、プリンター、ファックス、PPC、CRT、ワープロ複写機、電子式金銭登録機、オフィスコンピューターシステム、フロッピーディスクドライブ、キーボード、タイプ、ECR、電卓、トナーカートリッジ、電話等のOA機器ハウジング、シャーシまたは部品、コネクタ、コイルボビン、スイッチ、リレー、リレーソケット、LED、バリコン、ACアダップター、FBT高圧ボビン、FBTケース、IFTコイルボビン、ジャック、ボリュウムシャフト、モーター部品等の電子・電気材料、そして、インスツルメントパネル、ラジエーターグリル、クラスター、スピーカーグリル、ルーバー、コンソールボックス、デフロスターガーニッシュ、オーナメント、ヒューズボックス、リレーケース、コネクタシフトテープ等の自動車材料等に好適であり、これら産業界に果たす役割は大きい。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-04-07 
出願番号 特願平10-141268
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C08L)
P 1 651・ 161- YA (C08L)
P 1 651・ 537- YA (C08L)
P 1 651・ 121- YA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤本 保  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 船岡 嘉彦
大熊 幸治
登録日 2002-04-05 
登録番号 特許第3295685号(P3295685)
権利者 旭化成ケミカルズ株式会社
発明の名称 ケイ素含有難燃性樹脂組成物  
代理人 加々美 紀雄  
代理人 小松 純  
代理人 重松 沙織  
代理人 久保田 芳譽  
代理人 小林 克成  
代理人 小島 隆司  
代理人 小松 純  
代理人 加々美 紀雄  
代理人 酒井 正己  
代理人 酒井 正己  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ