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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する H01L
管理番号 1119979
審判番号 訂正2004-39270  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-11-26 
確定日 2005-06-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3069533号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3069533号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3069533号に係る手続の経緯は以下のとおりである。
昭和63年 7月21日 特願昭63-182664(分割原出願)出願
平成 9年 6月16日 本件出願を分割
平成12年 5月19日 本件特許第3069533号設定登録
平成13年 1月24日 異議申立(2001-70283号)
平成13年 4月18日 請求項1に係る特許を維持するとの異議決定
平成15年 3月28日 日亜化学工業株式会社より無効審判2003-3 5118請求
平成15年12月19日 口頭審理
平成16年 7月23日 無効審判2003-35118につき、請求項1 に係る特許を無効にするとの審決
平成16年 9月 1日 無効審判2003-35118につきシャープ株 式会社出訴(平成17年(行ヶ)10019号)
平成16年11月26日 本件訂正審判2004-39270請求
平成17年 3月15日 訂正拒絶理由を通知
平成17年 4月14日 意見書及び手続補正書(訂正請求書)提出

2.訂正の補正の適否についての判断
2-1.補正の内容
(1)全文訂正明細書中の特許請求の範囲における、
「【請求項1】絶縁基板上に、少なくとも、発光層と前記発光層の下端面に接合して配設されたn型の第1導電型の導電層とを有する化合物半導体発光素子であって、紫外光から可視領域にわたるpn接合型の発光素子をなし、前記n型の…」
という記載を、
「【請求項1】絶縁基板上に、少なくとも、発光層と前記発光層の下端面に接合して配設されたn型の第1導電型の導電層とを有する化合物半導体発光素子であって、前記n型の…」と補正する。
(2)全文訂正明細書第3頁第14〜18行目の
「本発明による化合物半導体発光素子は、絶縁基板上に、少なくとも、発光層と前記発光層の下端面に接合して配設されたn型の第1導電型の導電層とを有する化合物半導体発光素子であって、紫外光から可視領域にわたるpn接合型の発光素子をなし、前記n型の…」
という記載を、
「本発明による化合物半導体発光素子は、絶縁基板上に、少なくとも、発光層と前記発光層の下端面に接合して配設されたn型の第1導電型の導電層とを有する化合物半導体発光素子であって、前記n型の…」と補正する。
2-2.補正の適否について
上記訂正請求書の補正は、補正前の訂正事項aのうち、「紫外光から可視領域にわたるpn接合型の発光素子をなし、」を削除するものである。
上記手続補正について判断すると、補正事項aは、上記記載を加入するとともに、請求項1における「第1導電型」をすべて「n型の第1導電型」という記載に訂正するものであったところ、訂正拒絶理由の指摘に基づき、そのうちの「紫外光から可視領域にわたるpn接合型の発光素子をなし、」との訂正事項を削除したものと認めることができるから、訂正事項の削除に相当する。
したがって、上記補正は、請求書の要旨を変更するものではないから、上記補正を認める。

3.訂正の適否についての判断
3-1.訂正事項
1)訂正事項a
本件特許第3069533号明細書の特許請求の範囲の請求項1の「第1導電型」という記載をすべて「n型の第1導電型」という記載に訂正する。

2)訂正事項b
本件特許第3069533号明細書の特許請求の範囲の請求項1の
「前記発光素子本体の側面を直接包囲する絶縁層と、」
という記載を、
「前記発光素子本体の側面を直接包囲する絶縁層と、該絶縁層を配設しうる基板上の領域と、」
と訂正する。

3)訂正事項c
本件特許第3069533号明細書の特許請求の範囲の請求項1の4行に記載された「第1導電型の一部領域」という記載を、添付の全文訂正明細書のとおり、「第1導電型の導電層の一部領域」という記載に訂正する。

4)訂正事項d
発明の詳細な説明の【0011】段落について、添付の全文訂正明細書に記載のとおり、上記訂正事項a〜cと整合性をとるための訂正を行う。

3-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
1)訂正事項aについて
訂正事項aは、特許請求の範囲を減縮するものであって、請求項1に係る化合物半導体発光素子における「第1導電型の導電層」をn型半導体からなる導電層に限定するものである。
上記訂正事項aの「第1導電型の導電層」をn型半導体からなる導電層に限定することについては、本件特許明細書の【0017】,【0080】〜【0082】段落の記載事項に基づくものである。
よって、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2)訂正事項bについて
訂正事項bは、請求項1に係る化合物半導体発光素子が、基板上に絶縁層を配設しうる領域を有することを限定するものであって、これは特許明細書の【0018】段落の記載事項に基づくものである。
よって、上記訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3)訂正事項cについて
訂正事項cは、請求項1の「前記第1導電型の一部領域」との事項がその前にある記載事項を引用しているところ、その前に正確に対応する用語がないことから、平仄を合わせて、「第1導電型の導電層の一部領域」と明記したもので、【0011】段落(特許明細書)の記載事項に基づいている。
よって、上記訂正事項cは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

4)訂正事項dについて
訂正事項dは、発明の詳細な説明の【0011】段落の記載を、前記訂正事項a〜cと整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

4.独立特許要件について
以下に、訂正後の発明が独立して特許を受けることができるかを検討する。
4-1.本件訂正発明
訂正請求された請求項に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のものである。
「【請求項1】絶縁基板上に、少なくとも、発光層と前記発光層の下端面に接合して配設されたn型の第1導電型の導電層とを有する化合物半導体発光素子であって、
前記n型の第1導電型の導電層の一部領域に立設され、少なくとも前記発光層を含む発光素子本体と、
前記発光素子本体の側面を直接包囲する絶縁層と、
該絶縁層を配設しうる基板上の領域と、 前記発光素子本体から舌状に接続した前記n型の第1導電型の導電層上の露出部分に設けられた第1の電極と、
前記発光素子本体の上方に、第2の電極を備えていることを特徴とする化合物半導体発光素子。」(以下、「本件訂正発明」という。)

4-2.引用例
独立特許要件を判断するに当たり、訂正拒絶理由において引用した以下の文献を引用例として検討する。
引用例1:特開昭62-60278号公報(甲第2号証)
引用例2:特開昭50-42785号公報(甲第10号証)
引用例3:特開昭59-228776号公報(甲第14号証)

上記引用例には、次のことが記載されている。
引用例1(特開昭62-60278号公報)には、図面とともに以下のことが記載されている。
(ア)「半絶縁性又はn型の電気導電型の半導体基板上に、活性層を有するダブルへテロ積層構造を備えた半導体発光ダイオードにおいて、直径約30μm以下の円板状に限定された活性層を有し、この円板状に限定された活性層全体を発光領域とし、この活性層に接し活性層とダブルへテロ積層構造を形成する2つの半導体層のうち、前記半導体基板に近接する側の半導体層の電気導電型をp型とし、他方の半導体層をn型としたことを特徴とする半導体発光ダイオ-ド。」(特許請求の範囲)
(イ)「本発明は、光通信システムの光源として有効な半導体発光ダイオード(以下LEDと呼ぶ。)・・LEDに関する。」(1頁左下欄1行〜右欄3行)
(ウ)「本発明によれば、半絶縁性又はn型の電気導電型の半導体基板上に、活性層を有するダブルへテロ積層構造を備えた半導体発光ダイオードによって、・・・円板状に限定された活性層を有し、・・・半導体発光ダイオードが得られる。」(2頁右上欄9行〜18行)
(エ)「第1図は本発明の素子断面構造の一例を示す図である。n型半導体基板11上にp型半導体クラッド層12、n型半導体活性層13、n型半導体クラッド層14が順に形成されておりダブルへテロ積層構造を呈している。又、活性層は、直径30μm以下の円板状活性領域13の直上部のn型クラッド層14の表面の大部分にn型電極17が形成されており、・・・全体が発光領域となるようにしている。」(2頁右上欄下から1行〜2頁左下欄9行)。
(オ)「さらに、活性層13に接する2つの半導体クラッド層のうち、半導体基板11に近接する側の半導体クラッド層12をP型に、他方の半導体クラッド層14をn型にしている。n型半導体の比抵抗は、P型に比べ数10分の1以下と著しく小さいため、電流の流路が狭いクラッド層14をn型とすることによりここでの電気抵抗を著しく小さくすることができる。さらに、n型半導体へのオーミック電極抵抗はP型に比べ小さいため、クラッド層14をn型とすることにより電極面積の小さいクラッド層14へのオーミック電極の抵抗を小さくすることができる。この様に活性層に対し、半導体基板と反対側のクラッド層14をn型とすることにより、素子抵抗を著しく低減することができ、直流動作時での発熱を低減し、光出力、信頼性を向上することができる。」(3頁左上欄8行〜同頁右上欄3行)
(カ)「(実施例)
第3図は本発明の第1の実施例を示す素子断面構造図である。n型InP基板11上にp型InPクラッド層12、n型InGaAsP活性層13、n型InPクラッド層14、n型InGaAsPコンタクト層15を順に・・・形成する。・・続いて・・・化学エッチッングにより・・・円形メサを形成し、活性層13が・・・円板状になるようにする。メサ側面にSiO2膜16を形成する。n型InGaAsPコンタクト層15の表面にAuGeNi膜を形成し、n型電極17とし、P型電極18とする。」(3頁右上欄9行〜同頁左下欄1行)
(キ)第3図には、SiO2膜16が水平部分を有して、p型クラッド層12上に形成されていることがみてとれる。また、p型InPクラッド層12は、エッチングにより形成された円形メサの下方部分から両側に延長されていることがみてとれ、さらにSiO2膜16が形成されていない両側延長部分の上にP型電極18が形成されていることがみてとれる。

引用例2(特開昭50-42785号公報)には、図面とともに以下のことが記載されている。
「実施例1
本例は気相エピタキシャル成長を用いてサファイヤ・・・面基板・・・上に電導型の異なる窒化ガリウムの第1図のようなn-i-n構造を有した多色発光ダイオードの例である。
・・・第1図のような構造に窒化ガリウムを順次成長させていく。・・・上記のように基板を設置したのち、まずn型窒化ガリウム・・・を・・・成長させる。次に・・・Znの塩化物を・・・送ってi型窒化ガリウム・・・を・・・成長させる。次にMgの塩化物を・・・送ってi型窒化ガリウム・・・を・・・成長させる。その後・・・n型窒化ガリウム・・・を・・・成長させる。以上のようにしてn-i-n構造を連続して成長させることができる。
次に・・・マスキングし、・・・第2図のような形にメサエッチし、GaN層2〜5にIn電極6をそれぞれ焼付ける。・・・それらの電極に白金線7〜9を陰極としたとき、まず8と7に電圧・・・おけると(「をかけると」の誤記:審決注)・・・紫色の発光が得られ、8と9に同じ電圧をかけると・・・緑色発光を得ることができた。」(2頁左上欄下から2行〜同頁右下欄10行)、
「実施例3
実施例1と同じように窒化ガリウムを成長させた後、第3図のような形・・・でエッチングをおこない、第3図6のよう位置にIn電極の焼付けをおこなう。・・・見かけの発光色は実施例1の場合とほとんど変わらなかった。」(3頁左上欄2行〜12行)
同引用例第2図には、窒化ガリウム層2,3,4の両側に電極6を焼き付けたものが、また第3図には、窒化ガリウム層2上の窒化ガリウム層3,4,5の左側部分が除去され、その上に電極6が形成されていることがみてとれる。

引用例3(特開昭59-228776号公報)には、図面とともに以下のことが記載されている。
「実施例1 第2図は絶縁性基板上に作成したシングル・ヘテロ接合素子の実施例の側断面図であって、3は絶縁性基板、4はn型GaNまたはn型AlxGa1-xN・・・膜、5はオーミック電極、6はp型n型AlyGa1-yN・・・膜である。」(2頁右上欄14〜18行)、
「実施例3 第4図はサファイア等の絶縁性基板上に作成したダブル・ヘテロ接合素子の実施例の側断面図であって、3,5は・・・絶縁性基板、オーミック電極、9はn+型AlxGa1-xN・・・、10はn+型Alx’Ga1-x’N・・・、11はn型またはp型AlyGa1-yN・・・、12はp+型Alx’Ga1-x’N・・・である。・・・p+型Alx’Ga1-x’N12とn+型AlxGa1-xN9の上に、第4図に示すように、Inオーミック電極5を真空蒸着により取り付ける。」(3頁左上欄下から2行〜同頁左下欄1行)
同引用例第2、4図には、絶縁性基板3上のn型AlxGa1-xN膜4、n+型Alx’Ga1-x’N膜10のシングル・ヘテロあるいはダブル・ヘテロ接合構造の形成されていない左側の部分にオーミック電極5が形成されていることがみてとれる。

4-3.対比
本件訂正発明と引用例1記載の発明とを対比する。
(1)引用例1の「半絶縁性基板11」と本件訂正発明の「絶縁基板」について
本件訂正発明の「絶縁基板」は、実施例ではZnSeバルク単結晶を低抵抗化せずに用いた絶縁性のZnSe基板を用いている。これに対し、引用例1のものは、実施例(第3図)では、基板11として具体的にn型InPを用いているものの、特許請求の範囲他の記載では、「半絶縁性又はn型」と選択的に記載されている。そして、第2の実施例では、半絶縁性の基板11が用いられている。
本件訂正発明のZnSeの絶縁層は、本件特許明細書によれば、「絶縁部としては、材料としてZnS、ZnSe・・・等の・・・絶縁層が挙げられる。・・・抵抗率としては1010〜1015Ω・cmが好ましく、1015Ω・cmがより好ましく」(【0020】)と記載されており、また引用例1では、第2実施例において、半絶縁性材料としてInPを用いてはいるが、半絶縁性の数値としては、107Ω・cm程度の数値が目安と理解される(例えば、「応用物理学用語大辞典」応用物理学会編、平成10年4月30日発行、参照)ことから、両者が、「基板」の点で一致するとしても、絶縁性の点で一致するとはいえない。
(2)引用例1の「活性層13」が、本件訂正発明の「発光層」に相当することは明らかである。
(3)「立設」及び「絶縁層を配設しうる基板上の領域」について
「立設」及び「絶縁層を配設しうる基板上の領域」につき、本件特許明細書には、
「【0018】次に、本願の請求項にかかる発明において、発光素子本体が実質的に基板の一部領域上に立設されるとは、基板が、発光素子本体を配設しうる第1領域と少なくとも発光素子本体の側面を包囲する絶縁部を配設しうる第2領域とを有することを意味するものであり、発光素子本体が基板の上面全体に渡って配設されていないことを意味する。」と記載されており、これから、「立設」とは、基板が、発光素子本体を配設しうる第1領域と発光素子本体の側面を包囲する絶縁部を配設しうる第2領域とを有することであることが把握できる。
引用例1には、「第3図は本発明の第1の実施例を示す素子断面構造図である。n型InP基板11上にp型InPクラッド層12、n型InGaAsP活性層13、n型InPクラッド層14、n型InGaAsPコンタクト層15を順に・・・形成する。・・続いて・・・化学エッチッングにより・・・円形メサを形成し、活性層13が・・・円板状になるようにする。メサ側面にSiO2膜16を形成する。」(記載事項(オ))と記載されており、このように基板上に形成されエッチングされた円形メサの領域は、「活性層13」を含み、「P型クラッド層12」上に形成されていることから、引用例1の「円形メサ」は、本件訂正発明の「少なくとも前記発光層を含む発光素子本体」に相当する。また、発光素子本体の側面を包囲する絶縁部(SiO2)を配設しうる領域があることは明らかであり、これは上記「第2領域」を示すものであり、本件訂正発明の「絶縁層を配設しうる基板上の領域」に相当する。
よって、「立設」及び「絶縁層を配設しうる基板上の領域」との点で、本件訂正発明及び引用例1のものは相違しない。
(4)引用例1のp型InPクラッド層12は、エッチングにより形成された円形メサの下方において、円形メサ(発光素子本体に相当)に接続されており、両側に延長部分を有していることから、引用例1の「p型InPクラッド層12」は、『「前記発光素子本体…に接続した」あるいは「発光層の下端面に接合して配設された」』、『第1導電型の導電層』に相当する。
(5)引用例1記載の発明の「SiO2膜16」「P型電極18」「n型電極17」「半導体発光ダイオード」が、それぞれ本件訂正発明の「前記発光素子本体の側面を直接包囲する絶縁層」「第1導電型の導電層上の露出部分に設けられた第1の電極」『「発光素子本体の上方」の「第2の電極」』「化合物半導体発光素子」に相当することは明らかである。

したがって、両者は、「基板上に、少なくとも、発光層と前記発光層の下端面に接合して配設された第1導電型の導電層とを有する化合物半導体発光素子であって、
前記第1導電型の導電層の一部領域に立設され、少なくとも前記発光層を含む発光素子本体と、
前記発光素子本体の側面を直接包囲する絶縁層と、
絶縁層を配設しうる基板上の領域と、
前記発光素子本体から接続した前記第1導電型の導電層上の露出部分に設けられた第1の電極と、
前記発光素子本体の上方に、第2の電極を備えている化合物半導体発光素子」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
基板が、本件訂正発明は、「絶縁」基板であるのに対し、引用例1のものは、「半絶縁性」基板である点。
相違点2:
本件訂正発明は、基板上に、「n型の」第1導電型の導電層を有し、該「n型の」第1導電型の導電層上に発光層を配設して形成された化合物半導体発光素子であるのに対し、引用例1のものは、基板上にp型の導電層を有し、該p型の導電層上に発光層が配設されているものであって、基板上の層がn型ではない点。
相違点3:
本件訂正発明は、前記発光素子本体から「舌状」に接続した前記第1導電型の導電層と規定されているのに対し、引用例1には、第1導電型の導電層が発光素子本体から舌状に接続されたものとは記載されていない点。

4-4.判断
上記相違点について検討する。
相違点1について:
引用例2,3を見ると、化合物半導体発光素子の基板として、サファイア等の絶縁性基板を用いることが周知技術であることが理解できる。
また、引用例1には、半導体発光ダイオードの基板11として半絶縁性のものを用いることが記載されているが、この半導体発光ダイオードは、P型電極18からp型InPクラッド層12、n型InGaAsP活性層13、n型InPクラッド層14、n型InGaAsPコンタクト層15を経由して、n型電極17に電流が流れるものであるから、基板自身は単に発光層構造を作るための基材となるものであって、電流経路としては使用しないものであることが理解できる。
してみれば、引用例1の基板11は、絶縁性でも良いことが明らかであるから、該基板として周知技術の絶縁性基板を用いることにより、上記相違点1の技術的事項とすることは、当業者が容易になし得る程度の事項である。
(なお、相違点1については、請求人は、本件訂正発明の特徴ではないとしている。請求書7頁8〜10行。)

相違点2及び相違点3について:
技術水準を参酌すれば、本件訂正発明の「舌状」との用語は、「或る部材を基部とみたたて、それから薄く突き出た層の形状」を示すものであることが理解でき、本件訂正発明の場合には、『基部に相当するのは「柱状の主要部」であって、それを基部に見立てて、該柱状の主要部に接続され薄く突き出たn型ZnSe導電層5を舌状と表現したもの』であることが理解できる。そして、本件訂正発明は、「発光素子本体から舌状に接続した前記第1導電型の導電層」との記載から、発光素子本体とほぼ同程度又はそれ以下の幅ということがおおよそ理解できる。
また、引用例1のものは、発光素子本体に相当する円形メサ及びその両側の側電極18に関する断面形状については、該引用例の記載及び図面から見てとることができ、その奥行き方向の形状については明確とはいえないが、引用例1に「n型半導体の比抵抗は、P型に比べ数10分の1以下と著しく小さいため、電流の流路が狭いクラッド層14をn型とすることによりここでの電気抵抗を著しく小さくすることができる。さらに、n型半導体へのオーミック電極抵抗はP型に比べ小さいため、クラッド層14をn型とすることにより電極面積の小さいクラッド層14へのオーミック電極の抵抗を小さくすることができる。」(上記(オ))と記載されていることからみて、オーミック電極の抵抗を小さくするために、基板側を比抵抗の大きいP型としたものであり、このような観点から、P型クラッド層及びP型電極も電気抵抗を小さくするような大きさ、少なくとも両側に延びた形状に形成されていることが理解できる。
ところで、引用例2,3を見ると、該文献には、積層された発光層部分(例えば、引用例3における、n+型Alx’Ga1-x’N膜10、nまたはp型AlyGa1-yN膜11、p+型Alx’Ga1-x’N膜12)からある導電型の導電層(同、n+型AlxGa1-xN膜9)が延長されており、該発光層部分が形成されていない前記導電層の延長部分に電極(同、オーミック電極5)が形成されていることから、「舌状」に関する上記考察に従えば、「発光素子本体から舌状に接続した前記第1導電型の導電層」といえるものが記載されており、また基板上にn型層が形成されている点では本件訂正発明と共通はするものの、引用例1とはn,pの関係が逆になっている。
そして上記のような関係のもとに、仮に、引用例2,3を引用例1に適用しようとすれば、引用例1のn,p層の関係を引用例2,3に倣って反転させ、かつそれにより基板上に配置されることになる層(n層)を引用例2,3のような舌状の構造にする必要があるが、引用例1においてn,p層の関係を引用例2,3に倣って反転させる必然性がないばかりでなく、上述した引用例1の記載(上記(オ))を勘案すると、電気抵抗が高いp層を電流の流路が狭いクラッド層として用いることが容易とはいえず、また電気抵抗を小さくするような大きさ(少なくとも両側に延びた形状)に形成されたクラッド層及び電極を、引用例1の目的に反して、一方向にそれも舌状に狭めるように形成することが容易ともいえない。

そして、本件訂正発明は、上記相違点の構成により、明細書記載の作用効果(【0083】,【0084】)を奏するものである。

よって、本件訂正発明は、引用例1ないし3から容易になし得るものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定により「なお従前の例による」とされる、改正前の特許法第126条第1ないし3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
化合物半導体発光素子
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に、少なくとも、発光層と前記発光層の下端面に接合して配設されたn型の第1導電型の導電層とを有する化合物半導体発光素子であって、
前記n型の第1導電型の導電層の一部領域に立設され、少なくとも前記発光層を含む発光素子本体と、
前記発光素子本体の側面を直接包囲する絶縁層と、
該絶縁層を配設しうる基板上の領域と、
前記発光素子本体から舌状に接続した前記n型の第1導電型の導電層上の露出部分に設けられた第1の電極と、
前記発光素子本体の上方に、第2の電極を備えていることを特徴とする化合物半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は化合物半導体発光素子及びその製造方法に関し、特に青色発光ダイオードをはじめとする紫外光から可視領域にわたる化合物半導体発光素子及びその製造方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、II-VI族化合物半導体ZnS、ZnSe等は青色発光ダイオードをはじめとする紫外光から可視領域にわたる高効率発光素子用の材料である。
【0003】
このII-VI族化合物半導体を用いた発光素子において、従来用いられている構造の例を図17に示す。図中、71はハロゲン化学輸送法により成長させたZnSバルク単結晶を1000℃の溶融亜鉛中で100時間熱処理し、低抵抗したn型ZnS単結晶基板である。この低抵抗化n型ZnS基板71上に分子線エピタキシー(MBE)法、あるいは有機金属熱分解(MOCVD)法を用いてn型ZnSからなる発光層74、絶縁性ZnSからなる絶縁層75を順次エピタキシャル成長させ、上記絶縁層75上に金(Au)を蒸着して正電極77とし、低抵抗化n型基板71の裏面にインジウム(In)を用いたオーミック電極を形成し、これを負電極78として、MIS型発光素子が製作されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の発光素子の構造では、導電性基板を必要とした。しかし、青色発光素子などのワイドギャップ半導体においては、必ずしも導電性基板を得ることが容易でなかった。例えば、上述の従来の化合物発光素子では、基板の低抵抗化のために、溶融亜鉛中での熱処理工程が必要であった。高抵抗もしくは絶縁性の基板を用いる場合、発光素子の上面に正、負の両方の電極を形成することが考えられるが、この場合には発光を有効に取り出せないという問題が生じた。すなわち、電極や発光素子外部より電流を供給するために、電極に接続されるリード線により、発光の取り出しが遮られていた。特に、青色発光素子の場合、発光効率が小さいため、発光の取り出し効率を高めることは重要であった。
【0005】
また、正、負電極を両方とも発光素子の上面に形成する場合において、発光層の下層である導電層を露出させる必要があるが、青色発光素子などのワイドギャップ半導体において、ドライエッチングにより露出したp型半導体表面に電極を形成すると、電極部分での抵抗が高くなるという問題が判明した。これは、青色発光素子などのワイドギャップ半導体においては、良好な正電極の形成が難しく、正電極を接続する半導体表面は適切に形成される必要があるためである。
【0006】
本発明は係る点に鑑みてなされたもので、発光の取り出し効率の高い化合物半導体発光素子と、その化合物半導体発光素子の電極における抵抗を小さくした製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
さらに、上述の従来の発光素子の構造では、発光層を含む主要部、つまり発光素子本体に電流が必ずしも狭窄されないという問題があった。これは発光素子本体側面を電流がリークするからである。本発明は係る点に鑑みてなされたもので、発光素子本体に電流を狭窄し、発光層に高密度の電流を注入することを特徴とする。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明による化合物半導体発光素子は、絶縁基板上に、少なくとも、発光層と前記発光層の下端面に接合して配設されたn型の第1導電型の導電層とを有する化合物半導体発光素子であって、
前記n型の第1導電型の導電層の一部領域に立設され、少なくとも前記発光層を含む発光素子本体と、前記発光素子本体の側面を直接包囲する絶縁層と、該絶縁層を配設しうる基板上の領域と、前記発光素子本体から舌状に接続した前記n型の第1導電型の導電層上の露出部分に設けられた第1の電極と、前記発光素子本体の上方に、第2の電極を備えている化合物半導体発光素子であることを特徴とする。
【0012】
【0013】
この発明における基板としては、低抵抗n型ZnS、低抵抗n型ZnSeあるいは低抵抗n型ZnSxSe1-x等からなるものや、絶縁性ZnS、絶縁性ZnSeあるいは絶縁性ZnSxSe1-x等からなるものが好ましいものとして挙げられる。また、GaAsやGaPあるいはSi等の材料も適用可能である。
【0014】
そして、例えば、低抵抗n型ZnS基板(や低抵抗n型ZnSe基板あるいは低抵抗n型ZnSxSe1-x基板)としては、ハロゲン化学輸送法により成長させたZnSバルク単結晶(やZnSeバルク単結晶あるいはZnSxSe1-xバルク単結晶)を1000℃の溶融亜鉛中で約100時間熱処理することにより、それぞれ以下に示す抵抗率を有する低抵抗化した基板を用いるのが好ましい。
ZnS:抵抗率(Ω・cm)として1〜10が好ましく、1程度がより好ましい。
ZnSe:10-2〜10が好ましく、1程度がより好ましい。
ZnSxSe1-x:1〜10が好ましく、1程度がより好ましい。
この際、上記各基板を作成する上でn型不純物としては、Al,Ga等やCl,Brが用いられ、InやI等も適用可能である。
【0015】
また、絶縁性ZnS[絶縁性ZnSe(あるいは絶縁性ZnSxSe1-x)]は、ハロゲン輸送法、昇華法あるいは高圧溶融法により成長させたZnSバルク単結晶(やZnSeバルク単結晶あるいはZnSxSe1-xバルク単結晶)をそれぞれ低抵抗化処理せずに用いるのが好ましい。
【0016】
この発明における発光部としては、n型ZnSあるいはn型ZnSe等からなる。いわゆるZnS MIS型あるいはZnSe MIS型の発光素子を構成する発光層や、一対のn型ZnSeおよびp型ZnSe等からなる、いわゆるプレーナ構造を含むモノリシック素子構造のpn接合発光素子を構成する発光層が好ましいものとして挙げられる。
【0017】
導電層ならびに発光層を作成する上でn型不純物としては、III族元素のホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等を、あるいはVII族元素の塩素(Cl)、臭素(Br)、フッ素(F)、ヨウ素(I)等のうち少なくとも一つ、あるいは上記のIII族元素とVII族元素とを少なくとも一つずつ組み合わせたものが用いられる。一方、p型不純物としては、Ia族元素のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等や、Ib族元素の銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)を、あるいはIII族元素のタリウム(Tl)やV族元素の窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等のうち少なくとも一つ、あるいは上記のIa族、Ib族ならびにV族の元素と、III族ならびにVII族とを少なくとも一つずつ組み合わせたものが用いられる。
【0018】
次に、本願の請求項にかかる発明において、発光素子本体が実質的に基板の一部領域上に立設されるとは、基板が、発光素子本体を配設しうる第1領域と少なくとも発光素子本体の側面を包囲する絶縁部を配設しうる第2領域とを有することを意味するものであり、発光素子本体が基板の上面全体に渡って配設されていないことを意味する。
【0019】
すなわち、発光素子本体は、例えば、300μm×300μmの素子(チップ)寸法に対して、図13、図14に示すように、直径D1が30〜100μm程度(より好ましくは50μm)の円柱構造を有するものが好ましいものとして挙げられる。
【0020】
また、絶縁部としては、材料としてZnS、ZnSe、ZnSxSe1-x等のII-VI族化合物半導体からなる絶縁層が挙げられる。CaSやCaSe、SrSあるいはSrSeも適用可能である。そして、抵抗率としては1010〜1015Ω・cmが好ましく、1015Ω・cmがより好ましく、その絶縁層における上記発光素子本体の側面を包囲する部分である包囲壁の肉厚W(図13参照)は2〜10μmが好ましく、5μmがより好ましい。
【0021】
さらに、本願の請求項にかかる発明においては、導電部は、電子濃度1018cm-3以上(あるいは正孔濃度1017cm-3以上)の低抵抗(抵抗率として10-1〜10-3Ω・cmが好ましく、5×10-3Ω・cmがより好ましい)の、例えば、n型(あるいはp型)ZnSe層やZnSxSe1-x層から構成される。そして、発光部は、n型発光層の場合、電子濃度として1015〜1018cm-3が好ましく、p型発光層の場合では、正孔濃度として1014〜1017cm-3が好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下図に示す実施例にもとづいてこの発明を詳述する。なお、これによってこの発明は限定を受けるものではない。図1は本発明の第1の実施例の発光素子を模式的に示した断面図である。同図において、1は抵抗率1Ωcmの低抵抗n型ZnS基板、2は低抵抗n型ZnSからなる第1導電層、3は第1導電層2よりも高いキャリア濃度をもつ低抵抗n型ZnSからなる第2導電層、4はn型ZnS発光層、5は絶縁性ZnSからなる正孔注入用絶縁層、7は正電極、8は負電極である。
【0023】
この素子において、第1導電層2、発光層4、正孔注入用絶縁層5はMBE法を用いて基板1上に順次エピタキシャル成長させた単結晶半導体層である。
【0024】
そして、第1導電層2より高いキャリア濃度を有する第2導電層3は、第1導電層2の成長時に、成長層表面の一部に光(例えば波長193nmのArFエキシマレーザ光)を照射することにより形成される。すなわち、光を照射しながら成長することにより、光照射部分に不純物元素が高濃度に添加され、非照射部と比較して約1桁キャリア濃度の高い領域を形成することができた。第1導電層2は厚さ5μm、電子濃度1018cm-3とし、第2導電層3は第1導電層2のほぼ全層にわたって形成し、電子濃度を上記の成長法を用いて第1導電層1の約10倍の1019cm-3程度とした。この場合抵抗率は第1導電層2が5×10-2Ωcm、第2導電層3のそれは5×10-3Ωcmであった。
【0025】
この際、第2導電層3は電流が十分に狭窄されるように、例えば、300μm×300μmの素子(チップ)寸法に対して、径d1を50μm程度に設定する。発光層4は厚さ2μm、電子濃度1017cm-3とし、正孔注入用の絶縁層5は20〜700Åの厚さとした。
【0026】
そして、正孔注入用の絶縁層5としては、不純物を添加せずに成長させた絶縁性のZnS、あるいは上述したn型不純物とV族元素の窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)等のp型不純物を同時に添加して成長させた絶縁性ZnSを用いることにより安定した特性が得られた。
【0027】
正電極7は絶縁層5上の第2導電層3の直上の位置に金(Au)を500〜1000Å蒸着して形成した。負電極8は、基板1の裏側全面にインジウム-水銀(In-Hg)を塗布し、高純度水素(H2)中で約400℃(30sec)加熱することにより形成したオーミック電極である。
【0028】
以上のZnS MIS型発光素子において、素子内の電流経路は第1および第2導電層2および3中において、高キャリア濃度で、より低い抵抗率をもつ第2導電層3中に狭窄され、発光層4へ高密度の電流を注入することが可能となり、従来のZnS MIS型発光素子と比較して5〜10倍の輝度を有する青色発光が正電極7、絶縁層5ならびに素子端面を通して観察された。
【0029】
図2は上記実施例の発光素子において、高キャリア濃度の第2導電層をリング状に形成した、第2の実施例であるZnS MIS型発光素子を模式的に示す断面図である。同図において基板1、第1導電層2、発光層4、絶縁層5は上記実施例に示す発光素子と同様のものであり、第2導電層13は、第1導電層2を成長する際にArFレーザー光をリング状に照射することで形成した内径d230μm、外径d3100μmのリング状の高キャリア濃度層である。各層の膜厚ならびにキャリア濃度は、上記第1実施例の発光素子と同程度に設定した。正電極7として、直径30〜100μmのAu蒸着電極を絶縁層5上の第2導電層13の直上の位置に形成し、負電極8として、基板1裏面にIn-Hgを用い、リング状のオーミック電極を形成した。
【0030】
この場合においても、第2導電層13により発光層4に流れる電流が狭窄され、高輝度の青色発光が得られた。さらに、高いキャリア濃度をもつ第2導電層13は第1導電層2に対して低い屈折率をもつため、発光層4の正電極7と第2導電層13に挟まれた発光部より生じた光は、リング状の第2導電層13に囲まれた、より高い屈折率を持つ第1導電層2中に閉じ込められ、素子端面より漏れることなく基板1の裏面より素子外部へ効率良く取り出すことができた。本実施例により高輝度でしかも高い取り出し効率をもつZnS MIS型発光素子を実現することができた。
【0031】
図3は本発明による第3の実施例の発光素子を模式的に示す断面図である。同図において、21は絶縁性ZnSe基板、22は低抵抗n型ZnSeからなる第1導電層、23は第1導電層22より高キャリア濃度のn型ZnSeからなる第2導電層、24はn型ZnSe発光層、25はp型ZnSe発光層、26は低抵抗p型ZnSeからなる導電層、7は正電極、8は負電極である。
【0032】
この素子において、絶縁性ZnSe基板21としては、ハロゲン輸送法、昇華法、あるいは高圧溶融法により成長させたZnSeバルク単結晶を低抵抗化処理せずに用い、この基板21上にMBE法を用いて各半導体層を順次エピタキシャル成長させる。n型ZnSeからなる導電層22,23、発光層24は実施例1のZnS MIS型発光素子とほぼ同様の形状、寸法、特性とし、この上にp型ZnSeからなる厚さ2μm、正孔濃度5×1016cm-3の発光層25、厚さ5μm、正孔濃度5×1017cm-3の低抵抗p型ZnSe導電層26を形成し、p型ZnSe導電層26の端部にAuを蒸着して正電極7とし、成長層の一部を化学エッチングあるいは反応性イオンエッチング(RIE)等を用いて除去し、露出させたn型ZnSeからなる第1導電層22上にInを蒸着して負電極8とし、プレーナ構造のZnSe pn接合発光素子とした。
【0033】
この際、p型ZnSeからなる発光層25ならびに導電層26に対するp型不純物としては、Ia族元素のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、Ib族の銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、III族元素のタリウム(Tl)、V族元素の窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等を用いた。
【0034】
正電極7をp型ZnSe導電層26の端部に形成することによって、電極が発光を遮ることを最小限にすることができ、発光を発光素子上部より有効に取り出すことができた。なお、基板21として昇華法で成長させた無色透明の絶縁性ZnSSe単結晶基板を用いることにより、基板側からも高輝度の発光を取り出すことができた。
【0035】
この青色発光素子のようにワイドギャップ半導体を用いた場合には、n型半導体を反応性イオンエッチングによって露出させることによって、負電極を形成しているので、抵抗の低い、電極部での発熱の小さく、信頼性の高い化合物半導体発光素子が得られた。
【0036】
また、絶縁性基板21を用いたプレーナ構造とすることにより、基板結晶の低抵抗化処理が不要となり、素子作成プロセスが大幅に簡素化されるとともに、素子抵抗の低減により、素子の低損失化が可能となった。本実施例により、高輝度のpn接合型発光素子を実現することができた。
【0037】
図4は、本発明による第4の実施例であるZnSe pn接合型発光素子の断面模式図を示す。基本的な素子構造は上記第3の実施例と同様であるが、低抵抗n型ZnSeからなる第1導電層22中にこの第1導電層22より高いキャリア濃度の低抵抗n型ZnSeからなる第2導電層33が複数形成されている。
【0038】
この場合、個々の第2導電層33の位置で電流が狭窄され高輝度の発光が生じる。10μm×10μm程度以上の微小寸法からなる矩形の第2導電層33を複数、任意の形状に配列することにより、第2導電層33の配列に対応した形状の高輝度の発光が得られた。
【0039】
さらに、本発明の発光素子の第5の実施例の概略図を図5に示す。図中、1はn型ZnS単結晶基板である。この低抵抗n型ZnS基板1上に、低抵抗n型ZnS層ならびに低抵抗n型イオウ・セレン化亜鉛合金(ZnSxSe1-x)層を連続にエピタキシャル成長させ、その後、化学エッチングあるいは反応性イオンエッチング(RIE)等のエッチング法により、上記n型ZnSxSe1-x層を、発光部の下部に相当する部分を残して除去し、低抵抗n型ZnS層を再び成長させ、n型ZnSからなる第1導電層2と、この第1導電層2中にn型ZnSxSe1-xからなる第2導電層131とを形成する。ZnSの屈折率は2.4であり、ZnSxSe1-xの屈折率はイオウ(S)組成(x)に応じてZnSの屈折率2.7からZnSeの屈折率2.4まで連続的に変化し、第1導電層2に対し、第2導電層131は高い屈折率をもつ。さらに、この第1導電層2上にn型ZnSからなる発光層4ならびに絶縁性のZnSからなる絶縁層5を積層し、絶縁層5上にAu電極を蒸着し、正電極7とし、低抵抗化n型ZnS基板1裏面にInオーミック電極を形成し、負電極8とし、MIS型発光素子とする。
【0040】
各半導体層のエピタキシャル成長には、MBE法、あるいはMOCVD法を用いる。すなわち、いずれの成長法においても、供給する原料の種類、量を変えることにより各層を制御性良く成長させることができた。また、ZnS絶縁層5は不純物を添加しないことで得られるが、絶縁性の低い高抵抗n型ZnSとなる場合は、p型ZnS形成用の不純物であるIa族元素のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、Ib族元素の銅、銀、金、III族元素タリウム、V族元素リン、砒素、アンチモン、ビスマスうち少なくとも一つ、あるいは、上記のIa族、Ib族ならびにV族の元素と、III族の元素とを少なくとも一つずつ組み合わせたものを添加することにより、高い絶縁性を示すZnSを成長させることができた。
【0041】
そして、第1導電層2及び第2導電層131は素子の電気抵抗を下げるために電子濃度を略約1018〜1019cm-3として抵抗率を小さく(例えば5×10-2〜5×16-3Ωcm)設定する。この場合、第2導電層131の抵抗率を第1導電層2のそれより小さくすることにより電流は第2導電層131中を主に流れ、発光層4中に高密度の電流注入が生じることにより高輝度の青色発光を得ることが可能となる。第2導電層131を形成するZnSxSe1-xは第1導電層1にたいして十分大きな屈折率となるように、イオウ(S)の組成(x)を0.5以下とし、発光層から放射された光が効率良く基板側に導かれるように厚さを10μm程度とする。第1導電層2の厚さは、第2導電層131との間において、界面の歪が緩和されるよう各2μm程度とする。
【0042】
発光層4は高い発光効率を得るために、電子濃度を1017cm-3程度に、導電層より低く抑えた高い結晶性を有するn型ZnS層で形成し、厚さは約1〜5μmとする。絶縁層5は電流注入の効率を最大とする範囲で薄くし、20〜700Åとする。
【0043】
正電極7は発光層から上方へ放射された光が基板側へ全反射されるように2000〜3000Åの厚さとし、これを第2導電層131の直上に形成する。負電極8は、青色発光が基板裏面より取り出せるようにリング状に形成する。
【0044】
本実施例において、発光層4より放射された光は導電層中を透過する際に、屈折率の高い第2導電層131中に閉じ込められ、基板側に効率良く取り出すことが可能となり、従来構造の素子と比較して1桁高い取り出し効率を有するZnSMIS型青色発光素子を実現することができた。
【0045】
なお、本実施例において、n型ZnS発光層4の上に、絶縁層5のかわりに正孔濃度1014〜1017cm-3p型ZnSからなる発光層を積層することにより、上述のMIS型発光素子の場合と同様に、従来のpn接合型あるいはTln接合型の素子と比較してさらに約1桁高い取り出し効率を有するZnS pn接合型発光素子を実現できた。
【0046】
図6はZnS MIS型発光素子において、第2導電層131を凸レンズ状の形状とした本発明による発光素子の第6の実施例を示す概略図である。同図において、各層は、MOCVD法を用い、成長層であるZnSあるいはZnSxSe1-xの禁制帯幅よりも大きなエネルギーをもつ光、例えば波長193nmのArFエキシマレーザ光、あるいは、分光出力50mW/nm/cm2のキセノンランプより分光した単色光等を基板に照射しながら成長を行う。光照射により、光を照射しない通常の場合には、ほとんど成長の生じない(0.001μm/h以下)低い成長温度(200〜350℃)においても十分な成長が得られ、しかも光の強度により、概数0.01μm/h〜10μm/hにわたる広い範囲で成長速度を制御することができる。
【0047】
この光照射成長法を用い、まず低抵抗化n型ZnS基板1上に図7の実線Aで示される強度分布をもつ光の照射下で低抵抗のn型ZnSを成長させ、中央部での厚さが約2μm、端部での厚さが約7μmの中央部にすり鉢状の凹部を有する第1導電層の下部層12aを形成する。続けて図7の破線Bで示される強度分布をもつ光の照射下で低抵抗のn型ZnSxSe1-xを成長させ、上記の第1導電層の下部層12aに形成された凹部上に中央部の厚さが約10μmの凸レンズ状の第2導電層131を形成し、再び図7の実線Aで示される強度分布の光照射下で低抵抗n型ZnSを成長させて第1導電層の上部層12bを形成し、導電層とする。
【0048】
次にこの導電層上にn型ZnS発光層4、絶縁性ZnSからなる絶縁層5を成長させ、絶縁層5に正電極7、低抵抗化n型ZnS基板1の裏面に負電極8を形成し、ZnS MIS型発光素子とする。
【0049】
このような構成では、第1導電層12a、12bより高い屈折率をもつ第2導電層131が凸レンズ状の形状を有することから、発光層4から生じた光に集光性ならびに指向性を持たせることが可能となり、発光を素子外部の任意の方向にさらに効率良く取り出すことができた。
【0050】
次に、本発明による第7の実施例の概略図を図8に示す。同図において、基板は、ハロゲン化学輸送法で成長させたZnSxSe1-xバルク単結晶を低抵抗化処理せずに用いた絶縁性ZnSxSe1-x基板21aであり、この基板上に低抵抗n型ZnSySe1-yからなる第1導電層32と、低抵抗n型ZnSeからなり、第1導電層32より屈折率の高い第2導電層33とを形成する。この場合、第1導電層32にたいして第2導電層23が十分に高い屈折率を持つように第1導電層32を形成するZnSySe1-yのイオウ(S)組成(y)を0.5以上とする。
【0051】
次にこの導電層上にn型ZnSeからなる発光層24ならびにp型ZnSeからなる発光層25を形成し、p型ZnSe発光層25にAuを用いたオーミック電極を形成し正電極7とし、発光層の一部をエッチングにより除去し露出させたn型ZnSySe1-yからなる第1導電層32にInを用いたオーミック電極を形成し、負電極8とし、pn接合型発光素子とする。この素子は基板がZnSe発光層よりソイドギャップであり、基板による再吸収が無く、さらにプレーナ型構造であるため、基板21a裏面に電極が形成されず、発光を有効に取り出すことが可能である。
【0052】
本実施例においてさらに高い取り出し効率を有するZnSe pn接合型発光素子と実現することができた。次に本発明による第8の実施例の概略図を図9に示す。同図において、基板はハロゲン化学輸送法により成長させたZnSeバルク単結晶を低抵抗化せずに用いた絶縁性のZnSe基板21である。この基板21上に低抵抗p型ZnSeからなる導電層38、p型ZnSe発光層25、n型ZnSe発光層24エピタキシャル成長させた後、層厚10μmの低抵抗n型ZnSySe1-yからなる第1導電層32ならびに第1導電層32中に低抵抗n型ZnSkSe1-k(k<y)からなる第2導電層133とを形成し、第1導電層32上にInを用いた負電極8を、エッチングにより露出させたP型ZnSe導電層38にAuを用いた正電極7を、それぞれ形成し、pn接合型発光素子とする。
【0053】
なお、第1導電層32を形成するZnSySe1-yのイオウ(S)組成(y)は、ZnSkSe1-kで形成される第2導電層133の屈折率が第1導電層32の屈折率より十分に大きくなるようにy>k+0.5とする。
【0054】
本実施例においては、絶縁性のZnSe基板21を用いたプレーナ構造とすることにより、基板結晶の低抵抗化処理が不要となり、素子作製プロセスが簡素化された。また、負電極8を低抵抗n型ZnSySe1-y層32の端部に形成することによって、負電極8が発光を遮ることを最小限にすることができ、発光素子上部より発光を有効に取り出すことができた。更に、発光素子外部より電流を発光素子に供給する為の各リード線を電極に形成する場合には、正電極に対して負電極が低抵抗n型ZnSySe1-y層32上の最も離間した端部位置に設けられているので、発光素子上部より取り出される発光を遮ることなく、リード線を発光素子の外側に向かって引き出すことができた。
【0055】
また、本実施例の発光素子においては、発光層上方の負電極が、発光層下部のp型ZnSeからなる導電層38の露出部に設けられた正電極7とは最も離間した端部位置に設けられたので、中央付近を含めて発光層のほぼ全体に電流が流れて発光するので、発光素子上部より発光を有効に取り出すことができた。
【0056】
次に本発明による第9の実施例の概略図を図10に示す。同図において、基本的な構造は、上述したZnS MIS型発光素子と同様であるが、第2導電層43はイオウ(S)とセレン(Se)の組成比が厚さ方向(Y方向)に段階的あるいは連続的に変化するn型ZnSx(l)Se1-x(l)[l:第2導電層43の底面43aから厚さ方向(Y方向)へ向かう変位量]より形成されている。
【0057】
すなわち、この第2導電層43のS組成[x(l)]は第1導電層2との界面(l=0,l=L,L:第2導電層43の厚み)でx(0)=x(L)=1とし、中央部(l=L/2)で最小となるようにする。このときの最小値X(X=x(L/2))は第2導電層43が第1導電層2に対して十分高い屈折率を持つようにX<0.5とする。
【0058】
このように、第2導電層43の組成が第1導電層2との界面よりZnSからZnSxSe1-xまで連続的に変化しているため、界面での各層の格子定数の違いによる欠陥の発生を完全に抑えることができる。本実施例においても、高い取り出し効率をもつZnS MIS型あるいはpn接合型発光素子を実現することができた。
【0059】
次に、本発明による第10の実施例の概略図を図11に示す。同図において、基本的な構造は上述したZnS MIS型発光素子と同様であるが、第2の導電層131が台形状の断面を有し、幅方向に中央部に対して両端部の厚みが小さくなっている。
【0060】
この場合、低抵抗化n型ZnS基本1上に低抵抗n型ZnSxSe1-x層の第2導電層131を順次エピタキシャル成長させた後、低抵抗n型ZnSxSe1-x層を台形状にエッチングし、その上に再び低抵抗n型ZnS層をエピタキシャル成長させ、第1導電層2および第2導電層131を形成する。
【0061】
このような構成では、第2導電層131は第1の導電層2に対して高い屈折率をもち、第2の導電層131の端部、すなわち、第1の導電層2と第2導電層131の界面が発光層に対して傾斜した部分において、入射した光は中央部に向かって屈折するため、発光層より放射される光を基板側へ向かって集光させることが可能となり、さらに取り出し効率を向上させることができる。本実施例においてさらに取り出し効率の高いZnS MIS型あるいはpn接合型発光素子を実現することができた。
【0062】
なお、上記実施例7、8および9の発光素子においても本実施例と同様に第2導電層を台形状とすることで、発光層より放射される光に集光性を持たせることが可能となり、発光を素子外部へ効率良く取り出すことができた。
【0063】
さらに第2導電層131の形状を図12に示す本発明による第11の実施例のように、フレネルレンズ構造とすることにより、発光層から生じる光に高い集光性ならびに指向性を与えることが可能となり、発光を素子外部に任意の方向に高い効率で取り出すことができる発光素子を実現することができる。
【0064】
このように、上記第5〜第11の実施例によれば、発光の集光性、指向性、ならびに取り出効率を大幅に高めた高効率の化合物半導体発光素子を実現することができ、情報表示処理用高輝度青色発光装置をはじめとして、極めて有用なオプトエレクトロニクス用光源を提供することが可能となった。
【0065】
さらに、発光素子の第12の実施例の概略図を図13に示す。図中、1aはハロゲン化学輸送法により成長させたZnSeバルク単結晶を1000℃の溶融亜鉛中で100時間熱処理し、低抵抗化した抵抗率約1Ωcmのn型ZnSe基板である。この低抵抗化n型ZnSe基板1a上に直径30〜100μmの円形孔をもつマスクを設置し、MBE法により電子濃度1018cm-3以上の低抵抗n型ZnSeからなる導電層53、電子濃度が5×1016cm-3程度のn型ZnSeからなる発光層42、絶縁性のZnSeからなる正孔注入用絶縁層144を順次エピタキシャル成長させ、続けて金(Au)からなる正電極7を堆積させる。
【0066】
この際、MBE法では原料分子線が方向性をもつため、基板を各原料分子線の入射方向に対して垂直に配置することにより基板上のマスクの円形孔に対応した位置に直径30〜100μmの円柱状の発光素子主要部を制御性よく部分成長させることができた。
【0067】
次に、マスクを除去し、絶縁性のZnSeからなる絶縁層115をエピタキシャル成長させる。この際、基板を各分子線の入射方向に対して傾斜させて配置し、基板を回転させながら成長を行い、円柱構造の側面に厚く成長させる。
【0068】
その後、正電極7上に堆積した余剰の絶縁性ZnSeを化学エッチング等により除去し、低抵抗化n型ZnSe基板1aの裏面にInを用いたリング状のオーミック電極を負電極8として形成し、MIS型発光素子とする。
【0069】
本実施例においては、素子内の電流は円柱状の主要部に狭窄され発光層に高密度の電流を注入することが可能となり、高輝度のZnSe MIS型発光素子を実現することができた。なお、本実施例における発光素子の基板ならびに発光層をはじめとする各半導体をZnSあるいはイオウ・セレン化亜鉛合金(ZnSxSe1-x)により構成したMIS型発光素子においても高輝度の発光を得ることができた。
【0070】
次に、第13の実施例の概略図を図14に示す。同図において、上記第1実施例と同様の低抵抗化ZnSe基板1a上にMOCVD法あるいはMBE法を用いて電子濃度1018cm-3のn型ZnSeからなる導電層53、電子濃度1017cm-3のn型ZnSeからなる発光層24、ならびに正孔濃度が1016cm-3のp型ZnSeからなる発光層25を順次エピタキシャル成長させる。
【0071】
次に、化学エッチングあるいは反応性イオンビームエッチング等により、上記成長層を低抵抗化n型ZnSe基板1の一部とともに直径50μmの円柱状にエッチングし、発光素子の主要部(発光素子本体)を形成した後、絶縁性のZnSxSe1-xをエピタキシャル成長させてこれを絶縁層125とする。この絶縁性ZnSxSe1-xは、発光層24、25を含む主要部を構成するZnSeに対して十分屈折率が低く、かつ格子定数の差が大きくならないようにイオウ(S)組成(x)を0.3〜0.7程度とする。
【0072】
次に、p型ZnSe発光層25上に成長した絶縁性ZnSxSe1-xをエッチングにより除去し、露出したp型ZnSe発光層25上にAuを用いたオーミック電極を形成し正電極7とし、低抵抗化n型ZnSe基板1aの裏面にInを用いたオーミック電極を形成し負電極8とし、pn接合型発光素子とする。
【0073】
本実施例においては、上記第12の実施例と同様に発光層における電流密度を上げることが可能となるとともに、絶縁層が発光層を含む主要部より低い屈折率をもつため、発光層で生じた光が主要部内に閉じ込められ、発光を基板側から効率良くとり出すことが可能となり、高輝度でしかも高い取り出し効率を有するZnSe pn接合型発光素子を実現することができた。
【0074】
なお、本実施例において、基板ならびに発光層を含む主要部をZnSySe1-y(0.5>y>0)で、絶縁層を上記ZnSySe1-yよりS組成(z)が0.5程度大きいZnSzSe1-zで構成することにより、同様に高輝度で高い取り出し効率を有するZnSySe1-ypn接合型発光素子を実現することができた。
【0075】
次に、第14の実施例の概略図を図15に示す。同図において、基板は、ハロゲン化学輸送法により成長させたZnSxSe1-xバルク単結晶を1000℃の溶融亜鉛中で100時間熱処理し、低抵抗化した抵抗率約1Ωcmのn型ZnSxSe1-x基板121であり、この基板上にMOCVD法あるいはMBE法を用いて電子濃度1019cm-3のn型ZnSxSe1-x導電層63、電子濃度1017cm-3のn型ZnSeからなる発光層24、正孔濃度1016cm-3のp型ZnSeからなる発光層25ならびに5×1017cm-3の正孔濃度をもつp型ZnSxSe1-xからなる導電層27を順次エピタキシャル成長させる。
【0076】
次に上記第13の実施例と同様に上記成長層を円柱状にエッチングし、絶縁性のZnSySe1-yからなる絶縁層135、Auを用いた正電極7ならびにInを用いた負電極8を形成してpn接合型発光素子とする。この際、n型およびp型導電層63、27を形成するZnSxSe1-xのS組成(x)を発光層24、25を形成するZnSeに対して禁制帯幅が0.1eV程度大きくなるようにx=0.1程度とし、絶縁層135を形成するZnSySe1-yのS組成(y)は主要部に対して十分に低い屈折率が得られ、かつ格子定数の差が大きくならないようにy=0.3〜0.7程度とする。
【0077】
本実施例において上記第13の実施例と同様に、電流狭窄ならびに発光の閉じ込めが可能となるとともに、ZnSeからなる発光層がZnSeより禁制帯幅の大きいZnSxSe1-xからなる導電層で狭まれており、キャリアが発光層中に閉じ込められるため、高い発光効率を得ることが可能となり、高輝度、高効率のZnSe pn接合型発光素子を実現することができた。
【0078】
なお、本実施例においては、発光層をS組成(z)が0.5以下のZnSzSe1-zにより形成した場合においても導電層ならびに絶縁層のS組成をそれぞれzだけ増加させることにより、高輝度、高効率のZnSSe pn接合型発光素子を実現することができた。
【0079】
第12〜第14の実施例においては、発光素子本体が一部領域に立設され、発光素子本体の側面が絶縁層で直接覆われているので、発光素子本体側面にダメージが生じにくくなり、発光素子本体側面付近のダメージや側面に付着した汚れを通じて、発光に寄与しないリーク電流が発生することが抑制され、つまり、電流狭窄が実現され、発光層における電流密度を高めることができた。
【0080】
次に、第15の実施例の概略図を図16に示す。図中、21はハロゲン化学輸送法により成長させたZnSeバルク単結晶を低抵抗化せずに用いた絶縁性のZnSe基板である。この絶縁性ZnSe基板21上に上記第2の実施例と同様の方法でn型ZnSe導電層53、n型ZnSe発光層24ならびにp型ZnSe発光層25を順次エピタキシャル成長した後、成長層をn型ZnSe導電層が露出するまで柱状にエッチングする。
【0081】
次にn型ZnSe導電層の一部を残してさらに成長層を基板の一部とともに柱状にエッチングし、柱状の主要部と、主要部から舌状に接続したn型ZnSe導電層53の負電極形成部53aを作成する。
【0082】
さらに、この上にS組成(x)が0.3〜0.7程度の値をもつ、絶縁性のZnSxSe1-xを成長させてこれを絶縁層125とし、p型ZnSe発光層25ならびにn型ZnSe導電層53の舌状部に堆積した絶縁性ZnSxSe1-xをエッチングにより除去し、露出したp型ZnSe発光層25上ならびにn型ZnSe導電層53上に、それぞれ、Auを用いた正電極7、Inを用いた負電極8を形成し、プレーナ型のpn接合型発光素子とする。
【0083】
発光素子本体が一部領域に立設され、発光素子本体の側面が絶縁層で直接覆われているので、発光素子本体側面にダメージが生じにくくなり、発光素子本体側面付近のダメージや側面に付着した汚れを通じて、発光に寄与しないリーク電流が発生することが抑制され、つまり、電流狭窄が実現され、発光層における電流密度を高めることができた。また、本実施例の発光素子においては、プレーナ型の発光素子であるにもかからわず、発光素子本体が一部領域に立設され、その側面を含めて正負電極間の導電層表面が、絶縁膜で覆われているので、正負電極間付近のダメージや正、負電極間の導電層に付着した汚れを通じて、発光に寄与しないリーク電流が発生することが抑制され、つまり、電流狭窄が実現され、発光層における電流密度を高めることができた。
【0084】
このように第12〜15の実施例によれば、高輝度で高い外部効率を有する青色発光を含む化合物半導体発光素子を実現することが可能となり、各種表示装置あるいはプリンタ、ファクシミリ等の高エネルギーかつ高輝度の光源として極めて有用である。
【0085】
【発明の効果】
本願発明の化合物半導体発光素子は、発光素子本体の側面が絶縁部で覆われているので、発光素子本体を保護するとともに、発光素子側面や側面に付着した付着物などを通じて発光層を通過しない電流、つまりリーク電流の発生を抑えることができる。また、発光素子本体が、基板上あるいは第1の導電型の導電層上の一部領域に立設されているので、ウェハーから素子に分離するダイシングの工程などで発光素子本体にダメージを及ぼさないようにすることができる。
【0086】
【0087】
【0088】
【図面の簡単な説明】
【図1】
発明の実施例1を示す構成説明図である。
【図2】
発明の第2の実施例を示す構成説明図である。
【図3】
発明の第3の実施例を示す構成説明図である。
【図4】
発明の第4の実施例を示す構成説明図である。
【図5】
発明の第5の実施例を示す構成説明図である。
【図6】
発明の第6の実施例を示す構成説明図である。
【図7】
上記第6の実施例の発光素子を作成する上で用いた光照射成長における照射光の強度分布を示す模式図である。
【図8】
発明の第7の実施例を示す構成説明図である。
【図9】
発明の第8の実施例を示す構成説明図である。
【図10】
発明の第9の実施例を示す構成説明図である。
【図11】
発明の第10の実施例を示す構成説明図である。
【図12】
発明の第11の実施例を示す構成説明図である。
【図13】
発明の第12の実施例を示す構成説明図である。
【図14】
発明の第13の実施例を示す構成説明図である。
【図15】
発明の第14の実施例を示す構成説明図である。
【図16】
発明の第15の実施例を示す構成説明図である。
【図17】
従来例を示す構成説明図である。
【符号の説明】
1、71 低抵抗n型ZnS基板
1a 低抵抗n型ZnSe基板
2 n型ZnS第1導電層
3、13 n型ZnS第2導電層
4、74 n型ZnS発光層
5、75 ZnS絶縁層
7、77 正電極
8、78 負電極
12a n型ZnS第1導電層の下層部分
12b n型ZnS第1導電層の上層部分
21 絶縁性ZnSe基板
21a 絶縁性ZnSxSe1-x基板
22 n型第ZnSe第1導電層
23 n型ZnSe第2導電層
24 n型ZnSe発光層
25 p型ZnSe発光層
26、38 p型ZnSe導電層
27 p型ZnSxSe1-x導電層
32 n型ZnSySe1-y第1導電層
33 n型ZnSe第2導電層
42 n型ZnSe発光層
43 n型ZnSx(l)Se1-x(l)第2導電層
53 n型ZnSe導電層
63 n型ZnSxSe1-x導電層
115 ZnSe絶縁層
121 低抵抗n型ZnSxSe1-x基板
125 ZnSxSe1-x絶縁層
131 n型ZnSxSe1-x第2導電層
133 n型ZnSkSe1-k第2導電層
135 ZnSySe1-y絶縁層
144 ZnSe正孔活入用絶縁層
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-06-07 
出願番号 特願平9-158325
審決分類 P 1 41・ 121- Y (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 時男吉野 三寛  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 向後 晋一
稲積 義登
登録日 2000-05-19 
登録番号 特許第3069533号(P3069533)
発明の名称 化合物半導体発光素子  
代理人 原 謙三  
代理人 原 謙三  
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