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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1120032
審判番号 不服2004-3442  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-20 
確定日 2005-07-13 
事件の表示 平成 7年特許願第159824号「位相差フィルム及びその製造方法並びに積層偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月17日出願公開、特開平 8-334618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、出願日が平成7年6月2日である特願平7-159824号であって、平成16年1月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成16年2月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成16年3月18日付けで特許法第17条の2第1項第5号の規定に基づく明細書についての手続補正(以下、「本件手続補正」という。)がなされたものである。

2.平成16年3月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
(1)補正却下の決定の結論
平成16年3月18日付けの手続補正を却下する。

(2)理由
平成16年3月18日付け手続補正は、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】 分子配向度の部分的相違に基づいて位相差が部分的に相違する2種以上の位相差の分布特性を示す単層の連続延伸フィルムからなり、前記位相差の部分的相違に基づくパターンを有して、そのパターンが加熱式又は薬液噴射式のドットプリンタを介し熱又は薬液のドットを集合させて形成した筋の複数を所定の間隔で配置してなる縞状のものであることを特徴とする位相差フィルム。」
とする補正を含むものである。

本件手続補正後の請求項1には、「熱又は薬液のドットを集合させて形成した筋の複数を所定の間隔で配置してなる縞状のもの」との記載(以下、「記載A」という。)がある。

請求人は、前記記載Aは、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0015】、段落【0025】、及び図3に基づくと主張しているので、同段落及び図3の記載を検討する。

当初明細書の段落【0015】には、「位相差の分布状態は、位相差フィルムの使用目的などに応じて適宜に決定でき、例えば識別マーク状やストライプ状、格子状や市松模様状などのパターン分布など任意な分布状態にあってよい。」と記載されていて、位相差の分布状態が記載されているが、どのように位相差の分布状態を形成したのかは記載されていない。

また、当初明細書の段落【0025】には、「フィルムに0.4mj/dotの熱転写式プリンタを介して0.5mm間隔で加熱し、ストライプ状のパターンを付与して位相差フィルムを得た。この位相差フィルムのリタデーション値(△nd)を調べたところ、△ndが960nm(非加熱部)の部分と△ndが630nm(加熱部)の部分が0.5mm間隔でストライプ状のパターンを形成したものであった。そのパターン状態を図3に示した。」と記載されていて、図3の説明をするとともに加熱した箇所及びストライプ状のパターンの間隔が記載されているが、加熱した箇所及びストライプ状のパターンの面積及び形状については記載されていない。

以上から、前記記載Aが当初明細書の段落【0015】、【0025】、又は図3に記載されていたとも、また、それらの記載からみて自明とも認められない。そして、その他の当初明細書又は図面の記載をみても、前記記載Aは記載も示唆もされていない。

以上のとおり、本件手続補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内とは認められず、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本件審判請求についての当審の判断
(1)本願発明
平成16年3月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年11月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「分子配向度の部分的相違に基づいて位相差が部分的に相違する2種以上の位相差の分布特性を示す単層の連続延伸フィルムからなり、前記位相差の部分的相違に基づくパターンを有して、そのパターンが加熱式又は薬液噴射式のプリンタを介して形成されたものであることを特徴とする位相差フィルム。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-134322号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「複屈折性を利用した液晶表示装置において、液晶層と偏光子との間に、面内で2つ以上の異なるリターデーションの値を持つ複屈折層を設置したことを特徴とする液晶表示素子が提供される。(第2頁右上欄第9行乃至第12行)
(イ)「このような複屈折層には・・・延伸ポリマーを熱的、化学的あるいは機械的に部分的な厚みの変化、あるいは部分的な屈折率異方性の変化を与えたものを用いることができる。(第2頁左下欄第5行乃至第18行)
(ウ)「本発明の複屈折層32は、リターデーションが面内の位置により異なる」(第3頁左下欄第12行乃至第13行」
(エ)「面内で3種類のリターデーション値を持ち、液晶セルの画素に合わせてこの3つのリターデーションが分布している複屈折層を設置した」(第3頁右下欄第2行乃至第5行)
これらの記載によると、引用例には、「部分的な屈折率異方性の変化に基づいてリターデーションが面内の位置により2つ以上の異なるリターデーションの値を持つ延伸ポリマーからなり、その延伸ポリマーが熱的、化学的に屈折率の変化を与えられた複屈折層」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

また、本願の出願日前である平成5年2月5日に頒布された特開平5-27113号公報(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
「加熱方法としては、感熱ヘッドで加熱する方法やレーザーで加熱する方法を用いることができる」
(段落【0023】)

また、本願の出願日前である平成5年11月12日に頒布された特開平5-297218号公報(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「発熱抵抗体23b、23b‘...は、1ライン分のドットの各々に対応して設けられたものであり、サーマルヘッド23における各ドットに対応した位置に配置される。」(段落【0012】)

また、本願の出願日前である平成5年6月11日に頒布された特開平5-142417号公報(以下、「周知例3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「得られたカラーフィルタ用基板にインクジェットプリンタを用いてカラーフィルタの赤、青、緑の各画素パターンを描画した。」(段落【0022】)

また、本願の出願日前である平成6年3月25日に頒布された特開平6-82784号公報(以下、「周知例4」という。)には、以下の事項が記
載されている。
「図12では、配向膜36の上層側の配向材料52の材料を線状に吐出する手段としてインクジェットを応用した吐出装置128が使用される例を示している。」(段落【0033】)

また、本願の出願日前である平成7年5月12日に頒布された特開平7-120611号公報(以下、「周知例5」という。)には、以下の事項が記
載されている。
「インクジェットプリンタを用いて顔料インクによりR、G、Bのマトリクスパターンを着色した」(段落【0025】)

(3)対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「リターデーション」は、本願発明の「位相差」に、引用発明の「面内の位置により」は、本願発明の「部分的に相違する」に、引用発明の「2つ以上」は、本願発明の「2種以上」、引用発明の「異なるリターデーションの値を持つ」は、本願発明の「分布特性を示す」に、引用発明の「延伸ポリマー」は、本願発明の「延伸フィルム」に、引用発明の「複屈折層」は、本願発明の「位相差フィルム」に、それぞれ相当するものであるから、両者は、
「位相差が部分的に相違する2種以上の位相差の分布特性を示す延伸フィルムからなる位相差フィルム」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]位相差の部分的相違に関して、本願発明に係る延伸フィルムが、分子配向度の部分的相違に基づいて位相差が部分的に相違し、前記位相差の部分的相違に基づくパターンを有しているのに対して、引用発明に係る延伸フィルムが、部分的な屈折率異方性の変化に基づいて位相差が部分的に相違している点。
[相違点2]延伸フィルムに関して、本願発明が、単層の連続延伸フィルムであるのに対して、引用発明が、そのような構成でない点。
[相違点3]本願発明が、パターンが加熱式又は薬液噴射式のプリンタを介して形成されたものであるのに対して、引用発明が、延伸フィルムが熱的、化学的に屈折率の変化を与えられたものである点。

(4)当審の判断
[相違点1]について
引用例のものは、延伸フィルムに熱的又は化学的に延伸ポリマーの屈折率異方性の変化を与えたものであるから、屈折率異方性の変化は分子配向度の変化によるものであることは、当業者にとって明らかである。また、前記引用例の記載事項(エ)により、引用例のものも前記位相差の部分的相違に基づくパターンを有しているものである。よって、両者は実質的な差異はないものである。
[相違点2]について
前記引用例の記載事項(イ)、及び図1の記載により、引用例のものも単層で且つ本願発明でいう連続とするものであり、両者は実質的な差異はないものである。
[相違点3]について
相違点1で記述したように、引用例のものも位相差の部分的相違に基づくパターンを有している。そして、延伸ポリマーに屈折率の変化を与える手段として熱的、化学的な手段を用いることについて、液晶セル用光学部材のパターンの形成のために感熱ヘッドやサーマルヘッドを用いること、及び薬液噴射式のインクジェットプリンタを用いることは、従来周知であり(例えば、周知例1、周知例2、周知例3、周知例4、周知例5等参照。)、熱的又は化学的にパターンを形成する手段として、加熱式又は薬液噴射式のプリンタを用いることは、当業者が容易に想到し得たものと言うべきである。
そして、本願発明の作用効果も引用例及び従来周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-27 
結審通知日 2005-05-10 
審決日 2005-05-23 
出願番号 特願平7-159824
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 561- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森内 正明  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 青木 和夫
井口 猶二
発明の名称 位相差フィルム及びその製造方法並びに積層偏光板  
代理人 藤本 勉  

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