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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1120085
審判番号 不服2002-17180  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-05 
確定日 2005-07-15 
事件の表示 平成9年特許願第241551号「コンタクトプローブおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年3月26日出願公開、特開平11-83897〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成9年9月5日の出願である平成9年特許願第241551号につき、拒絶査定が平成14年8月6日に発送され、平成14年9月5日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成14年10月7日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 平成14年10月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年10月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成14年10月7日付けの手続補正の内容
本件補正は、特許法第17条の2第1項第4号の規定に基づくものであって、平成14年2月1日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項3を削除するとともに、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2(以下、「補正前請求項1」及び「補正前請求項2」という。)を補正するものである。

2 補正の目的の適否
(1)請求項1に係る補正事項
請求項1についての補正は、補正前請求項1の発明特定事項である「複数のパターン配線が絶縁フィルム上に形成され」、「前記パターン配線は、その途中位置の先後で線幅が相違して設けられ、該パターン配線は、前記線幅に応じて線厚みが相違して設けられている」をそれぞれ「複数のパターン配線が絶縁フィルム上にメッキ処理により形成され」、「それぞれ、コンタクトピンとして機能する先端側の線幅が後端側よりも小さく、その線幅に応じて先端側の線厚みが後端側よりも大きく設けられる」と限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。
(2)請求項2に係る補正事項
請求項2についての補正は、補正前請求項2の発明特定事項である「複数のパターン配線が絶縁フィルム上に形成され」、「前記パターン配線は、その途中位置の先後で線幅が相違して設けられ」、「絶縁フィルムの厚みは、前記パターン配線の線幅に応じて相違して設けられている」をそれぞれ、「複数のパターン配線が絶縁フィルム上にメッキ処理により形成され」、「前記パターン配線は、それぞれ、コンタクトピンとして機能する先端側の線幅が後端側よりも小さく、」、「絶縁フィルムの厚みは、前記各パターン配線の線幅に応じて、該パターン配線の先端側よりも後端側で大きく設けられている」と限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

3 補正後の請求項1及び2に係る発明についての独立特許要件
補正後の請求項1及び2に係る発明(以下、「補正後発明1」、「補正後発明2」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第4条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成15年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について検討する。
(1)補正後発明1及び2
補正後発明1及び2は平成14年10月7日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

【請求項1】 複数のパターン配線が絶縁フィルム上にメッキ処理により形成されこれらのパターン配線の各先端が前記絶縁フィルムから突出状態に配されてコンタクトピンとされるコンタクトプローブであって、
前記絶縁フィルムの前記パターン配線が形成される面と反対側の面には、導電層が設けられ、
前記パターン配線は、それぞれ、コンタクトピンとして機能する先端側の線幅が後端側よりも小さく、その線幅に応じて先端側の線厚みが後端側よりも大きく設けられることを特徴とするコンタクトプローブ。
【請求項2】 複数のパターン配線が絶縁フィルム上にメッキ処理により形成されこれらパターン配線の各先端が前記絶縁フィルムから突出状態に配されてコンタクトピンとされるコンタクトプローブであって、
前記絶縁フィルムの前記パターン配線が形成される面と反対側の面には、導電層が設けられ、
前記パターン配線は、それぞれ、コンタクトピンとして機能する先端側の線幅が後端側よりも小さく、
前記絶縁フィルムの厚みは、前記各パターン配線の線幅に応じて、該パターン配線の先端側よりも後端側で大きく設けられていることを特徴とするコンタクトプローブ。

(2)刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-321170号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「【0038】図4、図5および図6は、それぞれ1個のプローブ翼体の調整可能な把持体を示した拡大断面図、およびプローブ翼体の平面図と側面図である。これらの図においてプローブ翼体は、接地面(グランド)の機能を有し、下部の導電性金属層から誘電体接着フィルム45によって分離された上部の導電層44を有し、この下部の導電性金属層は後述するように更に分割されて、誘電体フィルム45を越えて突出し、且つプローブ突起体46a(フィンガー)として終端するリードパターン46のようなプローブ翼体のリードパターンを形成している。上記スプール46の近傍には、リードパターン48,50のような複数のプローブ翼体があり、それぞれがフィルム45の端部を越えて突出し、それぞれプローブ突起体48a,50aとして終端している。プローブ突起体46a,48a,50aはほぼ直線状に形成されている。プローブ翼体のリードパターン46,48,50は扇型に広がり、符号46b,48b,50bにて図示のごとく、プローブ翼体20の他端にて終端している。明瞭に図示する関係から、リードパターン46,48,50は拡大して図示されており、その数も実際よりも少なめに図示されている。」
(b)「【0039】図4において、テストプローブカード10の上面には、終端部46b,48b,50bの間隔に対応させて隔設したリードパターン52が形成されている。それぞれのリードパターンは上部翼体把持体24と弾性パッド80によって電気的に結合した状態に保持されている。この弾性パッド80は、プローブテストカード10に埋設されたPEMナット54に螺合させたネジ26で保持される。下方翼体把持体28は枠体14の下部の切欠口28a(図1参照)にプローブ翼体の下方部を支持しており、この下方翼体把持体28は絶縁体で形成されてリードパターン間の短絡を防止している。枠体14は、導電性スペーサ58によってプローブカード10から離れており、この導電性スペーサ58は枠体14下面とプローブカード10との間に介装されてネジ18止めされている(図1参照)。」
(c)「【0040】図5と図6は典型的なプローブ翼体20を形成する好ましい方法を示している。プローブ翼体20は、前記の通り支持部20aと片持ち梁状の板バネ部20bとを備えた積層部材であり、この積層部材はプローブ突起体の先端が同一平面になるように調整するために、屈曲性を有している。図6の積層体の厚さと、図5のリードパターン46,48,50の間隔と幅とが説明のために拡大及び誇張されて図示してある。実際には、大型の集積回路には4百個以上の接続パッドがあり、四辺のそれぞれには100個以上が存在するものであり、1個のプローブ翼体20に100個以上のプローブ突起体が要求されている。成型パッドは一般的には 0.01cm (0.004インチ)平方で、パッド間のピッチを 0.013(0.005 インチ)としている。プローブ突起体はエッチングで形成され、極めて微細であって人間の頭髪とほぼ同じサイズであり、一般的なプローブ突起体の寸法は幅が 0.05mm 、厚さが0.03mm、長さが 0.76mm 程度である。プローブ翼体は次の方法で形成するのが望ましい。
【0041】接着性の誘電体フィルムで接着された2個の導電性金属板を使用して積層部材を起立させる。1個の金属板は比較的薄い(0.003cm )、厚さが均一なバネ性を有する銅合金シートとすることができる。これに接着剤を塗布してほぼ均一な厚さの誘電体フィルム層45とし、接地板(グランド)に対して適切な電気的インピーダンス特性を達成させている。好ましい接着材としては、改質(変性)型のアクリル系樹脂で、E.I.デュポン社の製品が望ましい。他の導電層44が第1の金属層の接着層に接着され、第2の層を 0.015cm(0.006 インチ)厚のバネ性銅合金製とし、これが接地面として機能させる。第1の、即ち薄い方の金属層がプローブ翼体およびプローブ突起体として作用し、この金属層はフォトレジスト材を塗布され、従来の写真石版印刷技術により極めて微細なフォトネガティブとして感光させてエッチング用のリードパターンを画成し、引き続いてエッチング工程に入り、エッチングによりリードパターン46,48,50間の不必要な金属部分を取り除く。更に、エッチングによって誘電体フィルムを越えて延びたプローブ突起体22群を分離した状態にしている。上記突起体を丸みを帯びた先端部としたのは実施したエッチング法の特徴である。次いで、図6に示す通りプローブ翼体が形成された支持部20aと、一体形成の板バネ部20bとを形成する。図示の通り、接地板と接着フィルムは支持部20aを共通に覆い、更に板バネ部20bの主要部を覆い、プローブ突起体をその先端部近傍に支持している。プローブ突起体22の長さと剛性は、前記写真石版印刷技術とエッチングの工程において、誘電体フィルムと接地板とをプローブ突起体に対して接近させたり遠ざけたりして容易に変えることができる。」
(d)図5には、プローブ翼体20には、複数のリードパターン(46,48,50等)が形成され、リードパターンの各先端がプローブ翼体の一端からプローブ突起体46a,48a,50aとして突出しており、プローブ翼体の一端の線幅と他端の線幅が異なるように形成されており、一端側の線幅が他端側の線幅より小さく形成されている点が見てとれる。
(3)対比・判断
(3-1)補正後発明1について
ア 上記摘記事項(2)の(d)から、引用刊行物には、「複数のリードパターンが形成され、リードパターンの各先端がプローブ翼体の一端からプローブ突起体46a,48a,50aとして突出しており、プローブ翼体の一端の線幅と他端の線幅が異なるように形成されており、一端の線幅が他端の線幅より小さく形成されているプローブ翼体」の発明が記載されているものと認められる。
イ 上記摘記事項第(2)の(a)及び(b)より、引用刊行物に記載されたプローブ翼体は、誘電体フィルム45で分離された金属層44とリードパターン46を有していること、及び、同(c)より、プローブ翼体のリードパターン46は導電性金属板をエッチングすることにより形成されるものであること、及び、金属層44が銅合金板であって接地面として機能するものであることが読み取れる。
ウ 以上のことから、引用刊行物には、「複数のリードパターン(46,48,50)が誘電体フィルム45上に形成され、これらのリードパターンの各先端がプローブ突起体(46a,48a,50a)として突出しているプローブ翼体であって、前記誘電体フィルムの前記リードパターンが形成される面と反対側の面には、金属層44が設けられ、前記リードパターンは、それぞれ、一端側の線幅が他端側よりも小さく形成されていることを特徴とするプローブ翼体(20)」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
エ 補正後発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「リードパターン(46,48,50)」、「誘電体フィルム45」、「プローブ突起体(46a,48a,50a)」、
「プローブ翼体20」、「金属層44」、「一端側」、「他端側」は、それぞれ補正後発明1の「パターン配線」、「絶縁フィルム」、「コンタクトプローブ」、「コンタクトピン」、「導電層」、「先端側」、「後端側」に相当する。
オ そして、引用刊行物に記載された発明も「プローブ突起体」は、絶縁フィルムから突出状態に配されているものであり、プローブ突起体がコンタクトピンとして機能するものである。
カ したがって、補正後発明1と引用発明とは、「複数のパターン配線が絶縁フィルム上にメッキ処理により形成されこれらのパターン配線の各先端が前記絶縁フィルムから突出状態に配されてコンタクトピンとされるコンタクトプローブであって、前記絶縁フィルムの前記パターン配線が形成される面と反対側の面には、導電層が設けられ、前記パターン配線は、それぞれコンタクトピンとして機能する先端側の線幅が後端側よりも小さく設けられていることを特徴とするコンタクトプローブ」である点で一致し、つぎの相違点A及びBで相違する。

相違点A 補正後発明1の「複数のパターン配線」は「メッキ処理」により形成されるものであるのに対して、引用発明の「リードパターン」は「エッチング」により形成されるものである点

相違点B 補正後発明1の「パターン配線」は、「線幅に応じて先端側の線厚みが後端側よりも大きく設けられる」のに対して、引用発明は、そのような構成を有しない点

キ 相違点Aについて検討するに、コンタクトプローブのパターン配線をメッキ処理により形成することは、例えば特公平7-82027号公報に記載されているように周知の技術であり、引用発明の「リードパターン」を周知技術であるメッキ処理により形成するようにすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る程度の設計的事項にすぎない。
ク 相違点Bについて検討するに、例えば、特開平5-206591号公報や特開平9-107210号公報に記載されているように、配線パターンの幅を一部相違するようにした場合にはインピーダンスの不整合が生じ、信号の反射や伝送遅延を発生させてしまうという技術的課題や、その技術的課題を解決するために配線パターンの幅が一部相違する場合に、それらのインピーダンス調整を行うことは従来周知(以下、「周知技術1」という。)である。
また、原査定の拒絶理由通知において引用された特開平4-304646号公報及び特開平2-242165号公報に記載されているように、絶縁フィルム上に形成された配線パターンと絶縁フィルムの配線パターンが形成される面と反対側の面に導電層が設けられている構成(いわゆるストリップライン)の配線パターンインピーダンスが、絶縁フィルムの厚み、配線パターンの幅、配線パターンの厚みを調整することにより変更可能であることは、従来周知の技術(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明のリードパターンの幅が相違する場合に、インピーダンス不整合が生じること、それを解決するためにはインピーダンス整合を行なえば良いことは、上記周知技術1からみて、当業者であれば容易に想到し得る技術的事項にすぎず、その際、インピーダンス整合を行うために、配線パターンの幅に応じて配線パターンの厚みを調整するようにすることも上記周知技術2から当業者であれば、適宜なし得る程度のことにすぎない。
してみると、引用発明に周知技術1及び2を適用して、リードパターンの「線幅に応じて先端側の線厚みが後端側よりも大きく設けられる」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることというべきものである。
なお、この点につき請求人は、請求の理由において、「上記刊行物(当審注:引用刊行物、特開平4-304646号公報及び特開平2-242165号公報)には、○1(当審注:○囲み数字を代替(以下同じ。))パターン配線の線幅や線厚み、絶縁フィルムの誘電率や厚みを適宜調整すればインピーダンス整合が得られる点、○2パターン配線の線幅が途中で変更される形状、の2点については記載されています。しかしながら、これらの刊行物には、「コンタクトピンとして機能する先端側の線幅が後端側よりも小さく、その線幅に応じて先端側の線厚みが後端側よりも大きく設けられる」という本願特有の構成についての記載や、この構成に想到する契機となりうる技術思想についての開示はありません。 つまり、本願発明は、パターン配線がその先端側では極めて線幅が小さく狭ピッチであることを求められるのに対して、後端側では先端側ほど線幅が小さい必要も狭ピッチである必要もない点に着目したことにより、歩留まりの低下防止、導体損による信号の損失防止のために線幅を途中位置変更すると「先端側と後端側とで特性インピーダンス値が一定にならない」という特有の課題を有するものであり、インピーダンスマッチングおよびコンタクトピンの多ピン狭ピッチ化に加えて直流抵抗の増大を抑制する・・・という各刊行物に記載の技術にはない特有の課題を有する本願発明でこそ想到される構成を有しています。 したがって、本願発明の構成は、後端部側での線幅を大きくすることにより歩留まり低下および導体損による信号損失を防止できるという点に着目しない限り想到できず、このような課題を有していない各刊行物に記載の技術から容易に想到されるものではありません。」と主張しているが、配線パターンの幅を一部相違するようにした場合にはインピーダンスの不整合が生じ、信号の反射や伝送遅延を発生させてしまうという技術的課題や、その技術的課題を解決するために配線パターンの幅が一部相違する場合に、それらのインピーダンス調整を行うことが従来周知である以上、請求人の主張は理由がなく、採用することができない。
また、補正後発明1の効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
したがって、補正後発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3-2)補正後発明2について
補正後発明2と引用発明とを対比すると、両者は「複数のパターン配線が絶縁フィルム上にメッキ処理により形成されこれらのパターン配線の各先端が前記絶縁フィルムから突出状態に配されてコンタクトピンとされるコンタクトプローブであって、前記絶縁フィルムの前記パターン配線が形成される面と反対側の面には、導電層が設けられ、前記パターン配線は、それぞれコンタクトピンとして機能する先端側の線幅が後端側よりも小さく設けられていることを特徴とするコンタクトプローブ」である点で一致し、つぎの相違点A及びCで相違する。

相違点A 補正後発明2の「複数のパターン配線」は「メッキ処理」により形成されるものであるのに対して、引用発明の「リードパターン」は「エッチング」により形成されるものである点

相違点C 補正後発明2の「絶縁フィルムの厚み」は、「前記各パターンの線幅に応じて、外パターンの配線の先端側よりも後端側で大きく設けられている」のに対して、引用発明は、そのような構成を有しない点

相違点Aについては、上記(3-1)において検討済みである。
つぎに、相違点Cについて検討すると、引用発明のリードパターンの幅が相違する場合に、インピーダンス不整合が生じること、それを解決するためにはインピーダンス整合を行なえば良いことは、上記周知技術1からみて、当業者であれば容易に想到し得る技術的事項にすぎず、その際、インピーダンス整合を行うために、配線パターンの幅に応じて絶縁フィルムの厚みを調整するようにすることも上記周知技術2から当業者であれば、適宜なし得る程度のことにすぎない。
してみると、引用発明に周知技術1及び2を適用して、「絶縁フィルムの厚み」を「前記各パターンの線幅に応じて、外パターンの配線の先端側よりも後端側で大きく設けられている」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることというべきものである。
また、補正後発明2の効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
したがって、補正後発明2は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(4)補正却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正による補正後の請求項1及び2に係る発明は独立して特許を受けることができないものであるので平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成14年10月7日付の手続補正は、上記のとおり却下したので、本願発明の請求項1ないし3に係る発明は、平成14年2月1日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)はつぎのとおりのものである。

【請求項1】複数のパターン配線が絶縁フィルム上に形成されこれらのパターン配線の各先端が前記絶縁フィルムから突出状態に配されてコンタクトピンとされるコンタクトプローブであって、
前記絶縁フィルムの前記パターン配線が形成される面と反対側の面には、導電層が設けられ、
前記パターン配線は、その途中位置の先後で線幅が相違して設けられ、 該パターン配線は、前記線幅に応じて線厚みが相違して設けられていることを特徴とするコンタクトプローブ。
【請求項2】 複数のパターン配線が絶縁フィルム上に形成されこれらのパターン配線の各先端が前記絶縁フィルムから突出状態に配されてコンタクトピンとされるコンタクトプローブであって、
前記絶縁フィルムの前記パターン配線が形成される面と反対側の面には、導電層が設けられ、
前記パターン配線は、その途中位置の先後で線幅が相違して設けられ、
前記絶縁フィルムの厚みは、前記パターン配線の線幅に応じて相違して設けられていることを特徴とするコンタクトプローブ。

2 引用刊行物に記載された事項
原審の拒絶理由通知において引用された引用刊行物の記載事項は、上記「第2」の「4(2)」に記載したとおりである。

3 対比判断
(1)本願発明1について
本願発明1と引用発明(上記「第2」の「(3-1)ウ」参照。)とを対比すると、引用発明の「リードパターン(46,48,50)」、「誘電体フィルム45」、「プローブ突起体(46a,48a,50a)」、「プローブ翼体20」、「金属層44」は、それぞれ本願発明1の「パターン配線」、「絶縁フィルム」、「コンタクトプローブ」、「コンタクトピン」、「導電層」に相当する。
そして、引用刊行物に記載された発明も「プローブ突起体」は、絶縁フィルムから突出状態に配されているものであり、プローブ突起体がコンタクトピンとして機能するものである。
さらに、引用発明の「リードパターン」は、「それぞれ、一端側の線幅が他端側よりも小さく形成されている」ものであり、「リードパターン」の「途中位置の先後」では、その「線幅」が「相違する」ものであるので、本願発明1の「パターン配線は、その途中位置の先後で線幅が相違して設けられ」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明とは、つぎの一致点(あ)で一致し、相違点B(上記「第2」の(3-1)参照)で相違する。

一致点(あ)
「複数のパターン配線が絶縁フィルム上に形成されこれらのパターン配線の各先端が前記絶縁フィルムから突出状態に配されてコンタクトピンとされるコンタクトプローブであって、前記絶縁フィルムの前記パターン配線が形成される面と反対側の面には、導電層が設けられ、前記パターン配線は、パターン配線は、その途中位置の先後で線幅が相違して設けられていることを特徴とするコンタクトプローブ」

上記相違点Bについては、上記「第2」の(3-1)において既に検討済みである。
また、本願発明1の効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本願発明2について
本願発明2と引用発明とを対比すると、上記の一致点(あ)で一致し、相違点C(上記「第2」の(3-2)参照)で相違する。
上記相違点Cについては、上記「第2」の(3-2)において既に検討済みである。
また、本願発明2の効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
したがって、本願発明2は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1及び本願発明2は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明1及び2が特許を受けることができないものであるから、本願発明3について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-17 
結審通知日 2005-05-18 
審決日 2005-05-31 
出願番号 特願平9-241551
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01R)
P 1 8・ 121- Z (G01R)
P 1 8・ 572- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 瀧 廣往
特許庁審判官 尾崎 淳史
後藤 時男
発明の名称 コンタクトプローブおよびその製造方法  
代理人 磯野 道造  

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