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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 B65D |
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管理番号 | 1120247 |
審判番号 | 無効2004-80220 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-11-19 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-11-08 |
確定日 | 2005-07-13 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2073646号発明「手提部」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第2073646号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2073646号に係る発明についての出願は、昭和63年5月10日に出願した特願昭63-114408号の一部を平成4年10月26日に新たな特許出願とする旨の主張を伴って出願されたものであって、平成8年7月25日にその発明について特許の設定登録がなされた。 これに対し、平成16年11月8日に請求人平紐工業株式会社より無効審判の請求がなされ、平成17年1月27日に被請求人より答弁書が提出され、その後、平成17年5月24日に口頭審理が行われたものである。 II.本件発明 本件請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という)は、明細書の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】ポリプロピレン樹脂を主原料とし、これに無機充填材と少量の添加剤を配合して二軸延伸フィルム成形法により製造された多層構造の合成紙をベースとし、この合成紙ベースの表面に印刷を施し、また、この合成紙ベースの裏面となる接着側前面には熱可塑性樹脂系の接着剤を均一に塗布し、これにポリプロピレンを低発泡させた帯紐状手提片を上部をカールさせたまま接着取付部分が略平行になる状態で接着させ、かつその上に離型紙を貼付しておくことを特徴とする手提部。」 III.請求人及び被請求人の主張の概略 1.請求人の主張 請求人の主張は、甲第1乃至8号証を提出して、本件特許の請求項1に係る発明は、以下の4つの理由により、特許を受けることができない旨主張するものであるが、その主張の内容は概略以下の通りである。 (1)理由A:本件第2073646号特許(以下、本件特許という)の発明(以下、本件特許発明という)の構成要件「熱可塑性樹脂系の接着剤」なる技術的思想又はそれを示唆する技術的思想は、原出願(特願昭63一114408号)に係る明細書、拒絶理由通知に対する意見書とか特許異議申立てに対する答弁書における出願人の技術的主張中にも見出すことができないから、分割出願の要件を満たしていない不適法な分割出願である。従って、分割出願の手続き日への出願日の繰り下がりが相当と思料され、該繰り下がりに基づき、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定に該当する。 (2)理由B:分割出願に係る本件特許及び原出願に係る特許の各特許請求の範囲に記載の発明は、発明の構成において実質的に同一であり、又本件特許及び原出願に係る特許の各特許請求の範囲に記載の発明についてのそれぞれの実施例は実質的に同一であり、両発明は実施例同一であると言わざるを得ず、しかもこれら発明の同一については同一出願人にも適用されるという解釈が定着しており、いずれも特許法第39条第2項の規定に該当し、特許法第123条第1項第2号の規定に該当する。 (3)理由C:本件特許発明の構成要件「二軸延伸フィルム成形法により製造された多層構造の合成紙」に係る発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項の規定を満たしていないので、特許法第123条第1項第4号の規定に該当する。 (4)理由D:本件特許発明は、その特許出願前にいわゆる公知であった発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから特許法第29条第2項に規定する発明であり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当する。 〈証拠方法〉 甲第1号証:特公平7-94257号公報(特許第2073646号)(本件特許公報) 甲第2号証:特開平1-294447号公報(本件の原出願公開公報) 甲第3号証:特公平3-79267号公報(本件の原出願特許公報) 甲第4号証:特公昭54-40271号公報 甲第5号証:実公昭57-9233号公報 甲第6号証:実公昭58-24829号公報 甲第7号証:実願昭51-47949号(実開昭52-140567号) のマイクロフイルム 甲第8号証:特開昭63一22641号公報 2.被請求人の主張 これに対して、被請求人の主張は、以下の通りである。 (1)本件特許発明は、分割出願の要件を満たしたものであり、分割出願の手続き日への繰り下がりは相当ではなく、特許法123条第1項第3号の規定に該当しない。 (2)分割出願に係る本件特許及び原出願に係る特許の各特許請求の範囲に記載の発明は、発明の構成において実質的に同一ではなく、特許法39条第2項の規定に該当しないことから、特許法123条第1項第2号の規定に該当しない。 (3)本件特許発明の構成要件の記載は特許法36条第4項の規定を満たしたものであり、特許法123条第1項第4号の規定に該当しない。 (4)本件特許発明は、その特許出願前にいわゆる公知であった発明に基づいて当業者が容易になし得た発明ではなく、進歩性を有するものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当せず、特許法123条第1項第2号の規定に該当するものではない。 IV.当審の判断 1.請求人の主張(1)について [本件特許の分割の適否について] 本件特許は分割出願であって、その特許請求の範囲中の「熱可塑性樹脂系の接着剤」という語は本件分割出願を行う際に「エチレンー酢酸ビニル(EVA)系エマルジョンの接着剤」という語を補正して加えられた語である。 無効審判請求人は、この「熱可塑性樹脂系の接着剤」は、原出願である特願昭63-114408号の当初明細書には記載されておらず、また、「熱可塑性樹脂系の接着剤」という語は「エチレンー酢酸ビニル(EVA)系エマルジョンの接着剤」以外の「熱可塑性樹脂系の接着剤」を包含することになるので、不適法な分割である旨主張している。 一方、被請求人はこの点に関し、「エチレンー酢酸ビニル(EVA)系エマルジョンの接着剤」と「熱可塑性樹脂系の接着剤」は当業者において同義語であり、本件特許発明は原出願の明細書に記載の内容を拡張または変更するものではない旨主張している。 エチレンー酢酸ビニル(EVA)系エマルジョンが熱可塑性樹脂系の接着剤の内の一つであることは明らかであるが、熱可塑性樹脂系の接着剤には、エチレンー酢酸ビニル(EVA)系エマルジョン以外の種々の接着剤が包含されることは周知の事項であるし、また、請求人が口頭陳述要領書と共に提出した各参考資料からも明らかである。 そして、被請求人は乙第1号証を提出してホットメルトの接着剤として挙げられているものが唯一、エチレンー酢酸ビニル系の接着剤であることを理由として両者は当業者において同義語である旨主張しているが、被請求人が引用する乙第1号証の表5.37は「使用方法による接着剤の分類」を表としたものであって、エチレンー酢酸ビニル系の接着剤がホットメルトとして使用されることを示すものにすぎず、この表をもって「エチレンー酢酸ビニル(EVA)系エマルジョンの接着剤」と「熱可塑性樹脂系の接着剤」は当業者において同義語であるとは言えないし、また、このことを立証する客観的な証拠があるものでもない。 してみれば、本件分割出願は原出願の当初明細書に記載されていない事項を含むものであるから、適法な分割出願であるとは認められない。 [本件特許の新規性・進歩性について] 上記のように本件分割出願は適法な分割出願とは認められないから、現実の出願日である平成4年10月26日を基準として特許法第29条に係る判断をすべきである。 (1)甲第2号証(特開平1-294447号公報)(平成1年11月28日)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 記載事項a:手提片3はポリプロピレンの低発泡体で構成された帯紐で、上部がカールしたまま接着取付部分5,5′が左右略平行になる状態でベース2に接着されている。 ベース2はポリプロピレン樹脂を主原料とし、これに無機充填材と少量の添加剤を配合して二軸延伸フィルム成形法により製造された三層構造の合成紙〔王子油化合成紙(株)、商品名“ユポ”〕を用い、その接着側前面にはエチレン-酢酸ビニル(EVA)系エマルジョンの接着剤〔王子油化合成紙(株)、“ユポFPG”〕を均一に塗布し、これに前記した手提片3が接着されている。 ベース2の接着面には、通常離型紙4を貼付しておき、使用時にこれを剥がして紙袋本体6の上端部に接着される。(第2頁右下欄第2行〜第16行、第1図〜第4図) 記載事項b:また、文字を印刷したベース2を用いたところ、印刷は鮮明でこの部分が汚損されることはなかった。(第3頁左上欄第1行〜第3行) 上記記載事項a及びbを総合すると、甲第2号証には、「ポリプロピレン樹脂を主原料とし、これに無機充填材と少量の添加剤を配合して二軸延伸フィルム成形法により製造された多層構造の合成紙をベースとし、この合成紙ベースの表面に印刷を施し、また、この合成紙ベースの裏面となる接着側前面にはエチレン-酢酸ビニル(EVA)系エマルジョンの接着剤を均一に塗布し、これにポリプロピレンを低発泡させた帯紐状手提片を上部をカールさせたまま接着取付部分が略平行になる状態で接着させ、かつその上に離型紙を貼付しておくことを特徴とする手提部」が記載されている。 (対比・判断) 甲第2号証に記載の発明において用いられている接着剤は、エチレン-酢酸ビニル(EVA)系エマルジョンの接着剤であるが、これは熱可塑性樹脂系の接着剤の一つであることは明らかであるから、本件特許発明は甲第2号証に記載された発明であるものと認められる。 V.むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2005-06-01 |
出願番号 | 特願平4-311393 |
審決分類 |
P
1
113・
113-
Z
(B65D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 泰彦、桜井 義宏、林 直生樹 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
中西 一友 宮崎 敏長 |
登録日 | 1996-07-25 |
登録番号 | 特許第2073646号(P2073646) |
発明の名称 | 手提部 |
代理人 | 久保 司 |
代理人 | 広瀬 文彦 |