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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1120369 |
審判番号 | 不服2003-9229 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-05-22 |
確定日 | 2005-07-22 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第210352号「サ-マルヘッド制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月23日出願公開、特開平11- 48515〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成9年8月5日の出願であって、平成15年4月14日付けで拒絶の査定がされたため、同年5月22日付けで本件審判請求がされるとともに、同年6月20日付けで明細書についての手続補正(平成14年改正前特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成15年6月20日付け手続補正を却下する。 [理由] 1.補正目的違反 (1)本件補正前後の特許請求の範囲は、いずれも請求項1〜請求項3からなっており、これら請求項はすべて独立形式で記載された請求項である。そうである以上、本件補正後の請求項1〜3は本件補正前の請求項1〜3と1対1に対応していなければならない。 本件補正前の請求項2に係る発明は、小電力通電モード解除につき「小電力通電モード中に前記同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n2(<n)以下のラインがm1ライン以上となったときに小電力通電モードを解除する」としていたのに対し、本件補正後の請求項1〜3はいずれも「同時に通電される前記印字素子の個数がn1(>n)となったとき」としているから、本件補正前の請求項2に対応する本件補正後の請求項は存在しない。また、本件補正前の請求項3に係る発明は「印字率が大きいときにはデューティ比60%のパルス信号で、印字率が小さいときにはデューティ比40%のパルス信号で前記通電時間を調整しているサーマルヘッド制御装置」との限定を付していたのに対し、同限定を付した本件補正後の請求項は存在しない。より詳細に、本件補正前後の特許請求の範囲の記載を比較すると、請求項1は何の補正もされておらず、本件補正後の請求項2及び請求項3に対応する本件補正前の請求項をあえて求めるならば、請求項1でしかない。そうすると、本件補正は補正前請求項2,3の削除と、新たな請求項2,3の新設を目的としているというべきであり、請求項の新設が特許法17条の2第4項1号〜4号のいずれを目的とするものでもないことは明らかである(増項補正を禁じた判決として、東京高判平成15年(行ケ)第230号(平成16年4月14日判決言い渡し)及び知財高判平成17年(行ケ)第10192号(平成17年4月25日判決言い渡し)をあげておく。)。 (2)本件補正後の請求項3に係る発明(以下「補正発明」という。)は、補正前の請求項1に係る発明(以下「補正前発明」という。)を限定的に減縮したものではない。その理由は次のとおりである。 補正前発明の課題は、印字率が大きい印字が連続的に続く際、ドットが大きく形成され印字品質が損なわれたり、インクリボンに皺を発生させたりすることを回避する(段落【0027】〜【0030】。「印字時に選択された同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以上のラインがmライン以上連続して形成されたとき、通電時間をmラインのときよりも小さい小電力通電モード」とすることによって、この課題が解決されている。)とともに、「今まで発熱していない領域の印字素子に通電して、通電電力が不足して印字かすれを引き起こすことを防止する」(段落【0061】。「同時に通電される前記印字素子の個数がn1(>n)となったとき前記小電力通電モードを解除する」ことことによって、この課題が解決されている。)ことにある。そして、n以下の印字率の連続的なライン数がmに達したとしても、そのことによってドットが大きく形成され印字品質が損なわれたり、インクリボンに皺を発生させたりすることは考えられないから、補正発明の「n以下の印字率の連続的なライン数をカウントするカウンタ」、「前記カウンタが印字時に選択された同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以下のライン数mをカウントすると信号Hレベルを出力する第2の信号出力手段」及び「前記第2の信号出力手段の出力により第2の小電力通電モードとする温度保持期選択部」は、補正前発明の課題とは別の課題(その課題が何であるかは、後記3.で述べるように不明である。)を解決するために採用されたと解さなければならない。 特許法17条の2第4項2号は、特許請求の範囲の減縮について、「補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。」と規定しているのだから、本件補正後の請求項3が、本件補正前の請求項1を限定的に減縮したものでないことは明らかである。 2.新規事項追加 補正発明の「n以下の印字率の連続的なライン数をカウントするカウンタ」、「前記カウンタが印字時に選択された同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以下のライン数mをカウントすると信号Hレベルを出力する第2の信号出力手段」及び「前記第2の信号出力手段の出力により第2の小電力通電モードとする温度保持期選択部」(以下、これらをまとめて、「補正発明の構成」という。)について、個々の構成が願書に最初に添付した明細書(以下、添付図面と併せて「当初明細書」という。)の段落【0043】、段落【0045】及び段落【0055】〜【0056】に記載されていることは認める。 しかし、これら当初明細書の記載は【発明の実施の形態】における記載であって、 「前記カウンタ部14は、1ライン中( 1280ビット中 )の印字するドットのデータ( 1 )の個数をカウントし、予め設定された個数以上の場合には、印字率大を示す切換信号( ローレベル信号 )を前記温度保持期選択部15へ出力する。これ以降の動作においては、1ライン中に印字するドットのデ-タ数が予め設定された個数以上の場合で、切換信号が温度保持期選択部15に出力され、温度保持期選択部15により60%パルスが選択されている状態を想定して説明する。」(段落【0050】)、 「同時に通電される印字素子数がn以上の印字率のラインが4ライン連続した際には、mラインカウンタ103は信号aをHレベルとする。・・・この結果、温度保持期選択部15はイネ-ブル信号出力部13にそれまで出力していた60%パルスに代えて50%パルスを出力する。つまり、小電力通電モ-ドAとなる。」(段落【0051】〜段落【0052】)及び 「同時に通電される印字素子数がn以下の印字率のラインが4ライン連続した場合には、mラインカウンタ103から信号bがHレベルとして、温度保持期選択部15に出力される。・・・この信号bを受けて、温度保持期選択部15は、4ライン目までは40%パルスをイネ-ブル信号出力部13に出力していたのに代えて、30%パルスをイネ-ブル信号出力部13に出力する。つまり、小電力通電モ-ドBとなる。」(段落【0055】〜段落【0056】) と記載されているとおり、小電力通電モードに移行する前において、1ライン中に印字するドットのデ-タ数が設定個数以上の場合は60%パルスが選択され、設定個数以下の場合は40%パルスが選択されていたため、小電力通電モードに移行した際に、それぞれ50%パルス及び30%パルスとしたものである。すなわち、小電力通電モードに移行前の通電時間が1ライン中に印字するドットのデ-タ数に応じて2種類用意されているため、小電力通電モードに移行した際に、移行前の通電時間に応じて、移行後の通電時間が2種類存在すると理解するよりない。 ところが、本件補正後の請求項3には、小電力通電モードでない場合に、印字率に応じて、通電時間を異ならせる旨の限定はなく、そのことを離れて補正発明の構成を採用することが当初明細書に記載されていると認めることはできない。 すなわち、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反している。 3.補正発明の独立特許要件欠如 仮に、補正発明が補正前発明の限定的減縮に当たるとしても、補正発明は独立特許要件を欠如している。その理由は次のとおりである。 補正発明において、「n以上の印字率の連続的なライン数をカウント」すること、「同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以上のライン数mをカウントすると信号Hレベルを出力する」こと及び「第1の信号出力手段の出力により第1の小電力通電モードとする」ことは、蓄熱の進行を防止する上で明確に理解できるものである。 しかし、補正発明の構成については、その課題及び技術的意義を理解することができない。なぜなら、印字率がn以下とは、1ラインでの印字数が0の場合も含んでおり、そのようなラインがmライン連続したからといって、サーマルヘッドは蓄熱していないからである。蓄熱していない状態で、小電力通電モードに移行すれば、通電電力が不足して印字かすれを引き起こしかねない。 さらに、実施例(小電力通電モード移行前において、1ライン中に印字するドットのデ-タ数に応じて通電時間が2種類用意されている)に限定して解釈すれば、補正発明はなお一層不明確である。なぜなら、第2の小電力通電モードにある段階で、同時に通電される印字素子の個数がnとn1の間になったとしても、小電力通電モードの解除条件に該当しないから小電力通電モードは解除されない(実施例における60%パルスにならない。小電力通電モードが解除されるのなら、解除条件を正しく記載していない。)。他方、第1の小電力通電モードへの移行条件も満たされていないから、第1の小電力通電モードに移行することもない(実施例における50%パルスにならない。)。そうすると、通電時間としては、第2の小電力通電モード(実施例における30%パルス)にならざるを得ないが、同時に通電される印字素子の個数がn以上であるのだから、著しく不自然であり、そのようにする技術的意義を理解することができない。 したがって、本件補正後の明細書の記載は、平成14年改正前特許法36条4項(同項は「経済産業省令で定めるところにより」と規定しているところ、経済産業省令では「発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」(特許法施行規則24条の2)と規定している。)及び6項に規定する要件を満たしていない。 以上のとおりであるから、補正発明は独立して特許を受けることができないので、本件補正は平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反している。 [補正の却下の決定のむすび] 以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第3項及び4項の規定又は同条5項で準用する同法126条4項の規定に違反しているから、平成15年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての当審の判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年8月13日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「抵抗要素電子部品を備え、この抵抗要素電子部品に予め設定された時間で必要な電力の通電時間を行って1ドットを印字する印字素子を複数個使用したサーマルヘッドを制御するサーマルヘッド制御装置において、 印字時に選択された同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以上のラインがmライン以上連続して形成されたとき、通電時間をmラインのときよりも小さい小電力通電モードとし、その小電力通電モード中に前記同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n2(<n)以下のラインがm1ライン以上となったときに小電力通電モードを解除する通電調整手段を備えたことを特徴とするサーマルヘッド制御装置。」 2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-212895号公報(以下「引用例」という。)には、次のア〜サの記載又は図示がある。 ア.「【産業上の利用分野】本発明は、パルスモータを介してサーマル印字ヘッドと印字媒体とを相対移動させつつこのサーマル印字ヘッドにより印字媒体上に文字等のキャラクタを印字するサーマルプリンタに関し、特にその文字等の印字パターンによってある数以上あるいは以下の同時通電ドットが何回か続いた場合にその通電ドットの印字エネルギーを制御する方法に関するものである。」(段落【0001】) イ.「図4にそのフローチャートを示す。初めに各カウンタが初期化された状態(ステップ1)から縦ラインの印字パターンが決定される(ステップ2)。」(段落【0038】) ウ.「この状態から現在の縦ラインの同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )以上かどうかが判断される(ステップ3)。そこでYESと判断されれば、連続ドットカウンタがインクリメントされる(ステップ4)。」(段落【0039】) エ.「次にそのインクリメントされた連続ドットカウンタの値が4以上かどうかが判断され(ステップ5)、NOであれば、通常の通電エネルギーで印字が行われる(ステップ6)し、YESであればリセットカウンタが零に戻される(ステップ7)とともに、「エネルギーを制限したデータで」印字が行われる(ステップ8)。」(段落【0040】) オ.「一方前記ステップ3において、同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )以上でないと判断された場合にはリセットカウンタがインクリメントされる(ステップ9)。」(段落【0041】) カ.「そしてそのインクリメントされたリセットカウンタの値が3以上かどうかが判断され(ステップ10)、NOであれば「前述のエネルギーを制限したデータで」の印字が継続され(ステップ11)、YESであれば連続ドットカウンタの値を零に戻す(ステップ12)とともに、通常の通電エネルギーでの印字が行われる(ステップ6)。」(段落【0042】) キ.「図5は具体的なドット印字状態を拡大して示した図である。その下には各ドットライン毎の通電時間の長短を示している。この図では最初から4ドット目までは同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )を越えており、続く3ドットは同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )以下である場合を示す。」(段落【0043】) ク.「前述のフローチャートに従えば、最初の3ドット目までは通常の通電エネルギーで印字が行われ、次の4ドット目では制限されたエネルギーで印字が行われる。すなわち最初の3ドット目までは通常の発熱時間が付与され、次の4ドット目では「短い発熱時間」が付与される。」(段落【0044】) ケ.「このようなドット印字の通電エネルギーの制御状態においては、同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )を越えるドット印字の状態が4回以上続いても4回目からは通電エネルギー量が制限されているので印字ヘッド自体が加熱状態になることは回避されて印字が濃すぎるということは生じない。」(段落【0047】) コ.「またその通電エネルギー量の制御状態は、同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )以下のドット印字の状態が3回以上続く場合にはその3回目からは元の通電エネルギー量に戻されるので印字ヘッドが冷えることも回避されて印字が薄過ぎることもない。」(段落【0048】) サ.7頁【図4】には、連続ドットカウンタの値が4以上であれば、リセットカウンタをリセットするとともに、制限したエネルギーで印字を行うこと、及びリセットカウンタの値が3以上であれば、連続ドットカウンタをリセットするとともに、通常エネルギーで印字を行うことが記載されている。 3.引用例記載の発明の認定 引用例の記載キ,ク及び【図5】によれば、通電エネルギーの制御は通電時間によって制御されていることが明らかであり、記載エ,クの「通常の通電エネルギーで印字」とは、予め設定された通電時間通電することを意味し、記載クの「制限されたエネルギーで印字」とは予め設定された通電時間よりも短時間通電することを意味することが明らかである。 したがって、記載又は図示ア〜サを含む引用例の全記載及び図示によれば、引用例には「サーマルヘッド制御装置」として次のような発明が記載されていると認めることができる。 「連続ドットカウンタ及びリセットカウンタを有し、 縦ラインの同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )以上であれば連続ドットカウンタをインクリメントし、同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )以上でなければリセットカウンタをインクリメントし、 連続ドットカウンタの値が4以上であれば、リセットカウンタをリセットするとともに、通電時間を予め設定された時間よりも短くすることにより制限されたエネルギーで印字を行い、 リセットカウンタの値が3以上であれば、連続ドットカウンタをリセットするとともに、通電時間を予め設定された時間とすることにより通常のエネルギーで印字を行うサーマルヘッド制御装置。」(以下「引用発明」という。) 4.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定 引用発明の制御対象たる「サーマルヘッド」が「抵抗要素電子部品を備え、この抵抗要素電子部品に予め設定された時間で必要な電力の通電時間を行って1ドットを印字する印字素子を複数個使用したサーマルヘッド」であることは自明である。 引用発明の「縦ラインの同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )以上」と本願発明の「印字時に選択された同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以上」に相違はない(設定個数を表す文字が異なるだけである。)。 引用発明の「連続ドットカウンタの値が4以上」と本願発明の「印字時に選択された同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以上のラインがmライン以上連続して形成」とは、「印字時に選択された同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以上となることがm回以上連続して形成」の点で一致する。なお、引用発明では、同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )未満となることがあっても(ただし2回まで)連続ドットカウンタの値は0に戻されないから、4回連続して縦ラインの同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )以上とならなくとも制限されたエネルギーで印字を行うことになるから、本願発明の「印字時に選択された同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以上のラインがmライン以上連続して形成されたとき」が「連続して形成されたとき」のみを小電力通電モード移行条件とする趣旨(そのように限定解釈することはできないが)であれば、小電力通電モード移行条件が本願発明と引用発明において異なることになる。しかし、引用例には「第1判定手段によりm個以上と判定される印字がn(nは1以上の整数)個以上連続するか否かを判定する第2判定手段」(【請求項1】)との記載もあるから、「連続して形成されたとき」のみを小電力通電モード移行条件とすることは設計事項というべきであり、進歩性の判断に影響を及ぼすほどのものではない。 引用発明の「通電時間を予め設定された時間よりも短くすることにより制限されたエネルギーで印字」と本願発明の「mラインのときよりも小さい小電力通電モード」は、「m回の印字時よりも小さい小電力通電モード」である点で一致する。引用発明において、リセットカウンタは同時通電ドット数(m)が設定値(m0 )以上でない時、すなわち(m0-1)以下の時にインクリメントされ、(m0-1)以下であることと本願発明でいう「同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n2(<n)以下」に相違はなく、引用発明のリセットカウンタは「連続ドットカウンタの値が4以上」、すなわち本願発明でいうところの「小電力通電モード」になることでリセットされるのだから、引用発明の「リセットカウンタの値が3以上」と本願発明の「小電力通電モード中に前記同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n2(<n)以下のラインがm1ライン以上」とは、「小電力通電モード中に前記同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n2(<n)以下となることがm1回以上」である点で一致する。 引用発明で「縦ライン」と表現されているものと、本願発明で「ライン」と表現されているものとは、ある方向に並んだ複数の印字素子総体である点で一致するものの、通常単に「ライン」といえば、記録媒体に印字された際に「ライン」と認識できるものを意味し、本願明細書に「ラインサーマルヘッドは、印字素子としての1280個の発熱抵抗体1-1〜1-1280 を一列に配列して構成されている。」(段落【0007】)との記載も、それを裏付けるものであるから、引用発明の「縦ライン」と本願発明の「ライン」が同一であるとまではいえない。 引用発明について、本願発明でいう「通電調整手段」を備えると称し得ることは明らかであるから、結局本願発明と引用発明とは、 「抵抗要素電子部品を備え、この抵抗要素電子部品に予め設定された時間で必要な電力の通電時間を行って1ドットを印字する印字素子を複数個使用したサーマルヘッドを制御するサーマルヘッド制御装置において、 印字時に選択された同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n以上となることがm回以上連続して形成されたとき、通電時間をm回の印字時よりも小さい小電力通電モードとし、その小電力通電モード中に前記同時に通電される前記印字素子の個数が予め設定された個数n2(<n)以下となることがm1回以上となったときに小電力通電モードを解除する通電調整手段を備えたサーマルヘッド制御装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉小電力通電モードにつき、本願発明が「通電時間をmラインのときよりも小さい小電力通電モード」と規定し、小電力通電モードへの移行及び解除条件について、「mライン以上」及び「m1ライン以上」と規定しているのに対し、引用発明は「ライン」を基準とした規定になっていない(「縦ライン」を基準とする規定である。)点。 5.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断 本願出願当時、記録媒体の全幅を概略覆うように印字素子を配列した、いわゆるラインサーマルヘッドは周知であり、引用発明で採用されている通電時間の制御が、この周知のラインサーマルヘッドには適用できないとか、不適当であるとか解すべき理由はない。 そして、ラインサーマルヘッドであれば、同時に1ライン印字されるから、「通電時間をm回の印字時よりも小さい小電力通電モード」は「通電時間をmラインのときよりも小さい小電力通電モード」となるし、小電力通電モードへの移行及び解除条件は自然と「mライン以上」及び「m1ライン以上」となる。 すなわち、相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明の制御対象たるサーマルヘッドを周知のラインサーマルヘッドとすることにより、当業者が容易に想到できたものである。そして、この発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-05-06 |
結審通知日 | 2005-05-17 |
審決日 | 2005-05-31 |
出願番号 | 特願平9-210352 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B41J)
P 1 8・ 56- Z (B41J) P 1 8・ 572- Z (B41J) P 1 8・ 561- Z (B41J) P 1 8・ 121- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 立澤 正樹 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 砂川 克 |
発明の名称 | サ-マルヘッド制御装置 |
代理人 | 井上 正則 |