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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1120563
審判番号 不服2002-16757  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-11-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-02 
確定日 2005-07-28 
事件の表示 平成 7年特許願第 96852号「蛍光ランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月 5日出願公開、特開平 8-293285〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成7年4月21日の出願であって、平成14年8月2日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月1日付で手続補正がなされたものである。

【2】平成14年10月1日付手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年10月1日付の手続補正を却下する。
[理由]
1.手続補正の内容
上記日付でした手続補正は、特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載を以下のように補正するものである。
「【請求項1】 水銀および希ガスを含む封入ガスが充填された透光性ガラス管と、この透光性ガラス管内壁面に設けられた蛍光体粒子を含む蛍光体層と、前記封入ガス中で陽光中放電を維持するための手段とを備える蛍光ランプにおいて、前記蛍光体層は、少なくとも近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と、それと共存する蛍光体を具備し、前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体の平均粒径が4.2μmから6.5μmであり、前記共存する蛍光体の平均粒径の2分の1以上2倍未満であることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】 前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と共存する蛍光体は、(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、MgAl11O19:Ce,Tb、Y(PV)O4:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn、Sr10(PO4)6FCl:Sb,Mn、(SrMg)2P2O7:Eu、Sr2P2O7:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb、MgWO4、(BaCa)5(PO4)3Cl:Eu、Sr4Al14O25:Eu、Zn2SiO4:Mn、BaSi2O5:Pb、SrB4O7:Eu、(CaZn)3(PO4)2:Tl及びLaPO4:Ceから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】 前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と共存する蛍光体は、450nm付近に発光ピークをもつ青色発光蛍光体、545nm付近に発光ピークをもつ緑色発光蛍光体、及び610nm付近に発光ピークをもつ赤色発光蛍光体からなる三波長混合蛍光体と(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、MgAl11O19:Ce,Tb、Y(PV)O4:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn、Sr10(PO4)6FCl:Sb,Mn、(SrMg)2P2O7:Eu、Sr2P2O7:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb、MgWO4、(BaCa)5(PO4)3Cl:Eu、Sr4Al14O25:Eu、Zn2SiO4:Mn、BaSi2O5:Pb、SrB4O7:Eu、(CaZn)3(PO4)2:Tl及びLaPO4:Ceから選ばれる少なくとも一種以上を混合した蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。」

2.検討事項
上記補正中、補正後の請求項3の内容が、願書に最初に添付された明細書又は図面(「以下、「当初明細書等」という。)に記載されたものであるか否かを検討する。

3.当初明細書等の記載
当初明細書等には、上記の請求項3の補正内容の点に関連し、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 水銀および希ガスを含む封入ガスが充填された透光性ガラス管と、この透光性ガラス管内壁面に設けられた蛍光体粒子を含む蛍光体層と、前記封入ガス中で陽光中放電を維持するための手段とを備える蛍光ランプにおいて、前記蛍光体層は、少なくとも近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と、それと共存する蛍光体を具備し、前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体の平均粒径が、前記共存する蛍光体の平均粒径の2分の1以上であることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】 前記蛍光体層において、前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と共存する蛍光体として白色発光蛍光体を具備することを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】 前記白色発光蛍光体は、450nm付近に発光ピークをもつ青色発光蛍光体、545nm付近に発光ピークをもつ緑色発光蛍光体、及び610nm付近に発光ピークをもつ赤色発光蛍光体からなる三波長混合蛍光体であることを特徴とする請求項2に記載の蛍光ランプ
・・・
【0012】蛍光ランプの蛍光体層を占める近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と共存する蛍光体は、蛍光ランプ用蛍光体として通常用いられるものであれば適用できる。蛍光ランプ用蛍光体として、例えば、(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu、BaMg2A16O27:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、LaPO4:Ce,Tb、MgAl11O19:Ce,Tb、Y2O3:Eu、Y(PV)O4:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn、Sr10(PO4)6FCl:Sb,Mn、(SrMg)2P2O7:Eu、Sr2P2O7:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb、MgWO4、(BaCa)5(PO4)3Cl:Eu、Sr4Al14O25:Eu、Zn2SiO4:Mn、BaSi2O5:Pb、SrB4O7:Eu、(CaZn)3(PO4)2:Tl、LaPO4:Ce等が使用できる。
【0013】近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体は735nm付近に発光ピークをもち、これと、450nm付近に発光ピークをもつ青色発光蛍光体、545nm付近に発光ピークをもつ緑色発光蛍光体、及び610nm付近に発光ピークをもつ赤色発光蛍光体からなる三波長混合蛍光体を混合することで、特に植物育成用の蛍光ランプとして有用であり、青色発光蛍光体として(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu、及びBaMg2A16O27:Euが、緑色発光蛍光体として、LaPO4:Ce,Tb、及びMgAl11O19:Ce,Tb蛍光体が、赤色発光蛍光体として、Y2O3:Euが好ましく使用できる。
・・・
【0027】[実施例1]蛍光体原料として、炭酸リチウム121.9g、アルミナ169.0g、硝酸第一鉄9水和物8.1gを秤量し、これらをアルミナボールを入れた容量500mlの磁性ポットに入れ、ローラーの上で5時間ローリングすることで粉砕混合し原料混合物を得た。次に、これをアルミナルツボに充填し、蓋をした後、空気雰囲気中、1200℃で2時間焼成した。焼成品を粉砕して300メッシュのフルイを通すことにより、735nmに発光ピークをもつ平均粒径4.2μmの近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体を得た。
【0028】
得られたLiAlO2:Fe蛍光体と、453nmに発光ピークをもつ(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu青色発光蛍光体を30%、544nmに発光ピークをもつLaPO4:Ce,Tb緑色発光蛍光体を30%、及び611nmに発光ピークをもつY2O3:Eu赤色発光蛍光体を40%混合して得られる平均粒径4.2μmの三波長混合蛍光体を、1:4の比率で十分に混合する。
・・・
【0031】[実施例2]1300℃で2時間焼成する以外は実施例1と同様にして、平均粒径6.5μmのLiAlO2:Fe蛍光体を得、実施例1と全く同じ方法で蛍光ランプを作製した。平均粒径1.9μmのLiAlO2:Fe蛍光体を混合する以外全く同じ方法で作製した従来の蛍光ランプと比較すると、近赤外域の出力はほぼ同等であったが、可視域は約19%の向上が見られた。
【0032】[実施例3]実施例2で示したものと同じLiAlO2:Fe蛍光体と、三波長混合蛍光体と平均粒径4.2μの色温度5000Kを達成できるハロリン酸カルシウム蛍光体Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mnを1:2:2の割合で混合し実施例1と全く同じ方法で蛍光ランプを作製した。平均粒径1.9μmのLiAlO2:Fe蛍光体を混合する以外全く同じ方法で作製した従来の蛍光ランプを比較すると、近赤外域の出力はほぼ同等であったが、可視域は約15%の向上が見られた。」

4.当審の判断
当初明細書等には、LiAlO2:Fe蛍光体と453nmに発光ピークをもつ(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu青色発光蛍光体を30%、544nmに発光ピークをもつLaPO4:Ce,Tb緑色発光蛍光体を30%、及び611nmに発光ピークをもつY2O3:Eu赤色発光蛍光体を40%混合して得られる三波長混合蛍光体とハロリン酸カルシウム蛍光体Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mnを1:2:2の割合で混合することは示されているものの(段落【0032】等)、補正後の請求項3に記載されるような、LiAlO2:Fe蛍光体と三波長混合蛍光体と、「(SrCaBaMg)5(PO4)3Cl:Eu、Sr5(PO4)3Cl:Eu、MgAl11O19:Ce,Tb、Y(PV)O4:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn、Sr10(PO4)6FCl:Sb,Mn、(SrMg)2P2O7:Eu、Sr2P2O7:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb、MgWO4、(BaCa)5(PO4)3Cl:Eu、Sr4Al14O25:Eu、Zn2SiO4:Mn、BaSi2O5:Pb、SrB4O7:Eu、(CaZn)3(PO4)2:Tl及びLaPO4:Ceから選ばれる少なくとも一種以上」の蛍光体とを混合する点に関しては、LiAlO2:Fe蛍光体と三波長混合蛍光体とハロリン酸カルシウム蛍光体Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mnとを混合するもののみしか記載されておらず、また、当初明細書等の記載からみて、ハロリン酸カルシウム蛍光体Ca10(PO4)6FCl:Sb,Mn以外の蛍光体をLiAlO2:Fe蛍光体と三波長混合蛍光体に混合することが自明な事項とも認められない。
したがって、上記補正後の請求項3の内容は、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、上記日付でした手続補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされた同法による改正前の特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願発明について
1.本願発明の認定
平成14年10月1日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成14年6月20日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】水銀および希ガスを含む封入ガスが充填された透光性ガラス管と、この透光性ガラス管内壁面に設けられた蛍光体粒子を含む蛍光体層と、前記封入ガス中で陽光中放電を維持するための手段とを備える蛍光ランプにおいて、前記蛍光体層は、少なくとも近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と、それと共存する蛍光体を具備し、前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体の平均粒径が、前記共存する蛍光体の平均粒径の2分の1以上2倍未満であり、前記共存する蛍光体近傍に前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体の存在確率が低下していることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】前記ガラス管内壁面に保護膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
【請求項3】前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と共存する蛍光体は、450nm付近に発光ピークをもつ青色発光蛍光体、545nm付近に発光ピークをもつ緑色発光蛍光体、及び610nm付近に発光ピークをもつ赤色発光蛍光体からなる三波長混合蛍光体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光ランプ」

2.引用刊行物
2-1.刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-217556号公報(「以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
1a.「【特許請求の範囲】
【請求項1】ガラス管内壁に発光ピーク波長が440 〜460nm 、540 〜560 、600 〜620nm および700 〜800nm にある4種類の蛍光体よりなる蛍光体層を有し、かつ600 〜700nm の波長帯に含まれる光量子束(PF.Photon Flux )と700 〜800nm の波長帯に含まれるPFの比が0.8 〜1.2 であることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】440 〜460nm に発光ピークを有する蛍光体として2価ユーロピウム付活希土類蛍光体、540 〜560nm に発光ピークを有する蛍光体としてセリウムおよびテルビウムで付活された希土類蛍光体、600 〜620nm に発光ピークを有する蛍光体として3価ユーロピウム付活希土類蛍光体、700 〜800nm に発光ピークを有する蛍光体として鉄付活アルミン酸リチウム蛍光体を用いることを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプ。」
1b.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は植物生育用蛍光ランプに関するものである。」
1c.「【0010】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。440 〜460nm の波長域に発光する蛍光体として2価ユーロピウム付活アルミン酸バリウムマグネシウム(BAM)を、540 〜560nm に発光する蛍光体としてセリウムおよびテルビウム付活りん酸ランタン(LAP)を、600 〜620nm に発光する蛍光体として3価ユーロピウム付活酸化イットリウム(YOX)を、また700 〜800nm に発光する蛍光体として鉄付活アルミン酸リチウム(ALF)からなる蛍光体懸濁液をBAM16%、LAP32%、YOX32%、ALF20%の重量比で作成し、この蛍光体懸濁液を用いてガラス管内壁に通常の方法で蛍光体層を形成し、コンパクト形55ワット蛍光ランプを作製する。このように作製された蛍光ランプの分光分布を図1に示す。」

2-2.刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭58-175252号公報(「以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
2a.「本発明は青色,緑色,赤色の三原色の狭帯域発光希土類蛍光体を混合された混合蛍光体(以下、「蛍光体A」と称する。)とアンチモン,マンガン付活ハロりん酸カルシウム蛍光体(以下、「蛍光体B」と称する。)とを混合された蛍光体を主体としてなり,蛍光体Aの平均粒径をdA,蛍光体Bの平均粒径をdBとしたときに,dAはdBと等価または小であり,dBがdAの1.3倍を超えないときは蛍光体Bの重量は蛍光体総重量の25重量%以下であり,・・・蛍光体の蛍光体被膜を透光性外囲器内面に被着されていることを特徴とする蛍光ランプである。」(2頁左下欄17行〜右下欄9行)
2b.「曲線VIのように蛍光体Bの・・・重量%の多いものは蛍光体Bと蛍光体Aとの平均粒径比を2.5以上に大きくしなければ蛍光体Aの三原色狭帯域発光希土類蛍光体の少なくとも95%以上の初光束を得ることは困難であり,このように平均粒径を大きくすることは蛍光体被膜の剥離が発生するおそれがあるので不可である。また、蛍光体Bの平均粒径が蛍光体Aの平均粒径より小さくなる・・・と初光束の低下がいちじるしくなるおそれがあるので本発明ではdAをdBと等価または小の範囲に規制した。」(3頁左下欄最下行〜右下欄12行)
2c.「本発明者らは上記した平均粒径4μの蛍光体Aを使用した場合のほか,蛍光体Aの平均粒径を3.5μ,4.5μのものについて同様の実験を行なった結果,平均粒径が4μの蛍光体Aを使用した蛍光ランプと同様の結果を得ることができた。」(4頁右上欄8行〜12行)

2-3.刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-93187号公報(「以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
3a.「【0002】
【従来の技術】一般に、植物育成用の光源用蛍光ランプとして可視光を発する通常の蛍光ランプの他に、近赤外線を発する赤外線蛍光ランプが使用されている。その赤外線蛍光ランプに使用される蛍光体には、一般式、RXO2:Fea(但し、RはLi、Na、KおよびRbよりなる群の少なくとも一種、XはAl、Gaの内の少なくとも一種、aは0.001〜0.1グラム原子の3価のFeイオン)で表される蛍光体(以下、赤外発光蛍光体という。)が知られている。例えば、LiAlO2:Feで知られている鉄付活アルミン酸リチウム蛍光体はその中でも最も多用されている蛍光体である。
【0003】赤外発光蛍光体は253.7nmの紫外線で励起され、740nm付近に発光ピークを持つ近赤外線発光蛍光体である。この蛍光体はその一般式を見ても分かるようにLi、Na等のアルカリ金属を含有するため、これを用いた蛍光ランプはガラスバルブ中でアルカリ金属とHgとが化合しアマルガムを作りやすく、また付活剤であるFeも蛍光体中において不安定であるため、蛍光ランプの光束劣化が非常に激しいという欠点がある。さらにアルカリ金属がガラスバルブと反応しやすいため、ガラスが脆くなって破損しやすいという欠点もある。」
3b.「【0027】[実施例1]蛍光体原料として、炭酸リチウム(Li2CO3)121.9g、アルミナ(Al2O3)169g、硝酸第二鉄9水和物{Fe(NO3)3・9H2O}8.1gを秤量し、これらをアルミナボールを入れた300mlの磁性ポット中で、メタノール約50mlと共に、5時間ローリングして粉砕混合した。乾燥後、この粉砕混合物をアルミナ坩堝に充填し蓋をした後、空気雰囲気中、1200℃で3時間焼成した。焼成終了後、得られた蛍光体を粉砕し、300メッシュの篩を通すことにより、平均粒径5μmのLiAlO2:Fe蛍光体を得た。」

3.対比・判断
上記刊行物1についてみると、440 〜460nm 、540 〜560nm、600 〜620nm、700 〜800nmの波長域に発光する蛍光体は、それぞれ、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、赤色発光蛍光体、近赤外発光蛍光体であること、刊行物1に明示はないものの、蛍光灯は、通常、水銀及び希ガスを含む封入ガスが透光性のガラス管に充填されており、封入ガス中で放電を維持するための電圧が印加されるフィラメントを備えていることを勘案すれば、上記1a.ないし1c.の記載から、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「水銀および希ガスを含む封入ガスが充填された透光性ガラス管と、この透光性ガラス管内壁面に設けられた蛍光体層と、前記封入ガス中で放電を維持するための電圧が印加されるフィラメントとを備える蛍光ランプにおいて、前記蛍光体層は、近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体(鉄付活アルミン酸リチウム蛍光体)と440 〜460nmの波長域に発光する青色発光蛍光体、540 〜560nmの波長域に発光する緑色発光蛍光体、600 〜620nmの波長域に発光する赤色発光蛍光体の4種類の蛍光体からなる蛍光ランプ。」

本願発明1(前者)と刊行物1記載の発明(後者)とを対比する。
後者のガラス管内壁面に設けられた蛍光体層については、「蛍光体懸濁液を用いてガラス管内壁に通常の方法で蛍光体層を形成」(上記「1c.」の記載参照)していることから、ガラス管内壁面に設けられた蛍光体層に蛍光体粒子が含まれていることは明らかであり、また、後者のフィラメントは前者の「封入ガス中で陽光中放電を維持するための手段」に相当するものであるから、後者の「水銀および希ガスを含む封入ガスが充填された透光性ガラス管と、この透光性ガラス管内壁面に設けられた蛍光体層と、前記封入ガス中で放電を維持するための電圧が印加されるフィラメントとを備える蛍光ランプ」は、前者の「水銀および希ガスを含む封入ガスが充填された透光性ガラス管と、この透光性ガラス管内壁面に設けられた蛍光体粒子を含む蛍光体層と、前記封入ガス中で陽光中放電を維持するための手段とを備える蛍光ランプ」に相当する。また、後者の近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体(鉄付活アルミン酸リチウム蛍光体)とともに蛍光体層を構成する「440 〜460nmの波長域に発光する青色発光蛍光体、540 〜560nmの波長域に発光する緑色発光蛍光体、600 〜620nmの波長域に発光する赤色発光蛍光体」は、通常、三波長域発光型蛍光ランプにおいて三波長混合蛍光体として用いられるものであり、前者の「近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と共存する蛍光体」に相当するものである。
以上から、両者は、
「水銀および希ガスを含む封入ガスが充填された透光性ガラス管と、この透光性ガラス管内壁面に設けられた蛍光体粒子を含む蛍光体層と、前記封入ガス中で陽光中放電を維持するための手段とを備える蛍光ランプにおいて、前記蛍光体層は、少なくとも近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と、それと共存する蛍光体を具備する蛍光ランプ」の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
前者が、「近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体の平均粒径が、前記共存する蛍光体の平均粒径の2分の1以上2倍未満であり、前記共存する蛍光体近傍に前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体の存在確率が低下している」のに対し、後者には、このような平均粒径に関する記載がない点。

そこで、上記相違点について検討する。
刊行物2には、本願発明1の「近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体と共存する蛍光体」に相当する三原色混合蛍光体(「蛍光体A」)とそれに混合する蛍光体(「蛍光体B」)の平均粒径比に関して、「蛍光体Bと蛍光体Aとの平均粒径比を2.5以上に・・・大きくすることは蛍光体被膜の剥離が発生するおそれがあるので不可である。また、蛍光体Bの平均粒径が蛍光体Aの平均粒径より小さくなる・・・と初光束の低下がいちじるしくなるおそれがあるので・・・dAをdBと等価または小の範囲に規制した。」(上記「2-2」の「2b.」の記載参照)旨記載されており、また、三原色蛍光体の実施例として、平均粒径が3.5μ、4μ、4.5μのものが示されている(上記「2-2」の「2c.」の記載参照)。また、LiAlO2:Fe蛍光体として平均粒径5μm程度のものを使用することは、刊行物3の実施例に示されるように普通に行われること(上記「2-3」の「3b.」の記載参照)と認められる。
刊行物2には、三原色混合蛍光体に混合する蛍光体として近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体は示されてはいないものの、刊行物2の上記のような記載からみて、三原色混合蛍光体に近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体を混合する際、両者の平均粒径比を所定の範囲に収めることは当業者が当然考慮すべき事項と認められ、上記刊行物2及び3の実施例に示された普通に使用される蛍光体の粒径についてみれば、その粒径比が2分の1以上2倍未満の範囲に収まっているところからみても、刊行物1記載の発明において「近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体の平均粒径が、共存する蛍光体の平均粒径の2分の1以上2倍未満」の範囲とすることは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。
また、本願発明1の「共存する蛍光体近傍に前記近赤外発光LiAlO2:Fe蛍光体の存在確率が低下している」点に関しては、本願明細書には「【0023】蛍光体層中のLiAlO2:Fe蛍光体の粒径が小さくなると、共存する他の蛍光体近傍にLiAlO2:Fe蛍光体の存在確率が高くなり、・・・【0024】一方、蛍光体層中のLiAlO2:Feと共存する蛍光体の粒径が大きいと、比表面積が小さくなり、近傍のLiAlO2:Fe蛍光体の存在確率が増加する・・・共存する蛍光体が小さいと、比表面積が増えることで、近傍のLiAlO2:Fe蛍光体の存在確率が低下し、」と記載されており、本願発明1の上記存在確率の点の記載は、このような粒径比と存在確率との間に存在する相関関係を考慮して、粒径比範囲について存在確率により補足的に記述したものであって、それによって本願発明1に記載された平均粒径比の範囲を特に変更するものではない。
なお、審判請求人は、平成14年10月1日付の手続補正を前提に、審判請求書の請求の理由において、本願発明1に特有の作用効果を主張しているが、この補正は、上記のとおり却下されたので、審判請求人の上記主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明(本願発明2及び3)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-24 
結審通知日 2005-05-31 
審決日 2005-06-13 
出願番号 特願平7-96852
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也渡戸 正義波多江 進  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 山川 雅也
杉野 裕幸
発明の名称 蛍光ランプ  
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