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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B30B |
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管理番号 | 1120621 |
審判番号 | 不服2003-4412 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-05-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-18 |
確定日 | 2005-07-28 |
事件の表示 | 特願2000-339304「プレス装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月21日出願公開、特開2002-144098〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成12年11月7日に出願されたものであって、同15年2月10日付で拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し、同年3月18日に本件審判の請求がなされるとともに、同日付で手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 本件補正による特許請求の範囲の記載に関する補正事項は、以下のとおりである。 1 補正の内容及び補正発明 本件補正の内容は、下記(1)の補正前の特許請求の範囲の請求項1〜6を、下記(2)の補正後の特許請求の範囲の請求項1〜4に補正するものである。 (1)補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 平板状に形成された基板と、この基板に一方の端部が直交するように設けられたガイド体と、このガイド体の他方の端部にガイド体と直交するように設けられかつ平板状に形成された支持板と、この支持板に前記ガイド体と平行に支持されたねじ軸と、前記ねじ軸と螺合するナット部材と、可動体とによって構成すると共に、 前記可動体をその移動方向と交差する面で分割されかつ対向配置された第1の可動体と第2の可動体とによって形成し、 前記第1の可動体と第2の可動体とを、長手方向に沿う斜面部を有するように形成すると共に前記第1の可動体および第2の可動体に対して摺動係合可能に形成した差動部材を介して連結し、 かつ前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動可能に形成し、 前記差動部材の移動により前記第1の可動体および第2の可動体を前記可動体の移動方向に沿って相対移動可能に構成したことを特徴とするプレス装置。 【請求項2】 第1の可動体と第2の可動体との両側面に1対のガイドプレートを前記第1の可動体または第2の可動体と摺動係合可能に設け、前記第1の可動体および第2の可動体の相対移動方向と直交する方向の移動を拘束するように形成したことを特徴とする請求項1記載のプレス装置。 【請求項3】 基板と支持板とを水平面と平行に、ガイド体の軸線を垂直方向に夫々配設したことを特徴とする請求項1または2記載のプレス装置。 【請求項4】 ねじ軸とナット部材とをボールねじ係合としたことを特徴とする請求項1ないし3何れかに記載のプレス装置。 【請求項5】 ねじ軸および/または差動部材をパルスモータによって駆動するように構成したことを特徴とする請求項1ないし4何れかに記載のプレス装置。 【請求項6】 差動部材の移動による可動体の変位をねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺し、可動体の非作動時における基板と可動体との間隔を一定に保持するように構成したことを特徴とする請求項1ないし5何れかに記載のプレス装置。」 (2)補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 平板状に形成された基板と、 当該基板に一方の端部が直交するように設けられたガイド体と、 当該ガイド体の他方の端部にガイド体と直交するように設けられかつ平板状に形成された支持板と、 当該支持板に前記ガイド体と平行に支持されたねじ軸と、 当該ねじ軸と螺合するナット部材と、 可動体と、 前記可動体の前記ガイド体と平行な方向の移動と一緒に前記ガイド体と平行な方向に移動するスライドプレートと、 当該スライドプレートに取付けられる押圧子と、 被加工物が載置されるテーブルと、 前記押圧子を前記ガイド体と平行な方向に移動させて前記被加工物を押圧するモータと を備えると共に 前記ねじ軸と前記ナット部材とをボールねじ係合し、 前記可動体を、その移動方向と交差する面で分割されかつ対向配置された第1の可動体と第2の可動体とによって形成し、 前記第1の可動体と第2の可動体とを、長手方向に沿う斜面部を有するように形成すると共に前記第1の可動体および第2の可動体に対して摺動係合可能に形成した差動部材を介して連結し、 前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動可能に形成し、 前記差動部材の移動により前記第1の可動体および第2の可動体を前記可動体の移動方向に沿って相対移動可能に構成し、 かつ、前記第1の可動体が前記ナット部材に固定され 前記第2の可動体が前記スライドプレートに固定され、 前記差動部材が駆動源によって、前記第1の可動体および前記第2の可動体に対して摺動係合可能に駆動され てなることを特徴とするプレス装置。 【請求項2】 平板状に形成された基板と、 当該基板に一方の端部が直交するように設けられたガイド体と、 当該ガイド体の他方の端部にガイド体と直交するように設けられかつ平板状に形成された支持板と、 当該支持板に前記ガイド体と平行に支持されたねじ軸と、 当該ねじ軸と螺合するナット部材と、 可動体と、 前記可動体の前記ガイド体と平行な方向の移動と一緒に前記ガイド体と平行な方向に移動するスライドプレートと、 当該スライドプレートに取付けられる押圧子と、 被加工物が載置されるテーブルと、 前記押圧子を前記ガイド体と平行な方向に移動させて前記被加工物を押圧するモータと を備えると共に 前記ねじ軸と前記ナット部材とをボールねじ係合し、 前記可動体を、その移動方向と交差する面で分割されかつ対向配置された第1の可動体と第2の可動体とによって形成し、 前記第1の可動体と第2の可動体とを、長手方向に沿う斜面部を有するように形成すると共に前記第1の可動体および第2の可動体に対して摺動係合可能に形成した差動部材を介して連結し、 前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動可能に形成し、 前記差動部材の移動により前記第1の可動体および第2の可動体を前記可動体の移動方向に沿って相対移動可能に構成し、 前記押圧子にて前記被加工物を押圧する押圧動作の1回ごとあるいは予め定められた回数ごとに、前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動して、前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し、 かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が、前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され、前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成した ことを特徴とするプレス装置。 【請求項3】 第1の可動体と第2の可動体との両側面に1対のガイドプレートを前記第1の可動体または第2の可動体と摺動係合可能に設け、前記第1の可動体および第2の可動体の相対移動方向と直交する方向の移動を拘束するように形成したことを特徴とする請求項2記載のプレス装置。 【請求項4】 基板と支持板とを水平面と平行に、ガイド体の軸線を垂直方向に夫々配設したことを特徴とする請求項2または3記載のプレス装置。」 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項4〜6を削除し、請求項2〜3を請求項3〜4に繰り下げ、請求項1において、「スライドプレート」、「押圧子」、「テーブル」、「モータ」及び「ボールねじ係合」の構成を付加し、さらに、「前記第1の可動体が前記ナット部材に固定され、前記第2の可動体が前記スライドプレートに固定され、前記差動部材が駆動源によって、前記第1の可動体および前記第2の可動体に対して摺動係合可能に駆動され」る点を限定したものを請求項1とし、「前記押圧子にて前記被加工物を押圧する押圧動作の1回ごとあるいは予め定められた回数ごとに、前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動して、前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し、かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が、前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され、前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成した」点を限定したものを請求項2とし、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 2 刊行物記載事項 (1)原査定における拒絶の理由に引用した本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-218395号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されていると認める。 ア 第3欄第15〜38行 「電動プレスによれば、騒音を発生することなく定点加工を行ない得るのであるが、・・ねじ軸47とナット体49とには常に同一の相対位置において、上記押圧力に相当する反力が作用する・・ボールとボール溝とに同一相対位置において多数回に亘って上記反力が作用すると、ボールおよび/またはボール溝が局部的に摩耗することとなり、加工精度が低下すると共に寿命が短いという問題点がある。・・本発明は、上記従来技術に存在する問題点を解決し、加工精度が高く、長寿命である定点加工用のプレス装置を提供することを課題とするものである。」 イ 第4欄第23行〜第5欄第3行 「図1は本発明の実施の形態を示す要部縦断面正面図・・である。・・1は基板であり、例えば長方形の平板状に形成されており、例えばその四隅には円柱状のガイドバー2が立設される。このガイドバー2の上端部には、例えば長方形の平板状に形成された支持板3が、例えば締結部材4を介して固着されている。・・次に5はねじ軸であり、支持板3の中央部に軸受部材6を介しかつ支持板3を貫通するように正逆回転可能に支持されている。7は可動体であり、前記ガイドバー2と、その軸線方向に移動可能に係合されている。8はナット部材であり、つば部9を有するナット部10と中空円筒状に形成された円筒部11とを一体に結合して形成される。なおナット部10は前記ねじ軸5とボールねじ係合により螺合させると共に、円筒部11の外周面には差動用おねじ13を設ける。・・14は差動部材であり、中空円筒状に形成し、内周面に前記差動用おねじ13と螺合する差動用めねじ15を設ける。16はウオームホイールであり、前記差動部材14に一体に固着され、かつウオーム17と係合するように形成する。18,19は各々ラジアル軸受およびスラスト軸受であり、可動体7内に設けられ、各々差動部材14およびウオームホイール16を支持するものである。・・20はウオーム軸であり、ウオーム17の中心部に挿通固着されると共に、両端部を可動体7内に設けられた軸受21,21によって回転可能に支持される。22,23は各々パルスモータであり、各々前記ねじ軸5およびウオーム軸20を回転させ得るように設けられる。24は押圧子であり、前記可動体7の中央部下面に着脱可能に設けられる。」 ウ 第5欄第17〜40行 「定点加工が予め設定された回数に到達すると、図1に示す位置、すなわち押圧子24の初期高さH0 の位置においてパルスモータ22の作動を停止させ、パルスモータ23に予め設定されたパルス数を印加する。これによりパルスモータ23が所定数だけ回転し、ウオーム軸20、ウオーム17およびウオームホイール16を介して差動部材14が所定中心角度だけ回動する。この差動部材14の回動により、ナット部材8が停止しかつロックされた状態、すなわち停止した差動用おねじ13に対して差動用めねじ15が回動するから、可動体7が変位する。・・可動体7の変位により、押圧子24の初期高さH0 も当然に変化するから、このままねじ軸5を回転させると、所定の定点加工が実行できない。このため、次にパルスモータ22に制御された若干のパルス数を印加してねじ軸5を微小回動させ、前記の可動体7および押圧子24の変位を相殺し、押圧子24の初期高さH0 を一定に保持する操作を行なう。・・上記のねじ軸5の回動により、ねじ軸5とナット部10との相対位置が変化する。すなわちボールねじ係合に形成されたボールとボール溝との相対位置を変化させることができ、定点加工を確保しつつ、ボールおよび/またはボール溝の局部的摩耗を防止することができるのである。」 エ 図1 「被加工物Wがテーブルに載置されている」点が看取される。 以上のとおりであるので、刊行物1には、次の「プレス装置」が記載されていると認める。 平板状に形成された基板1と、当該基板1に一方の端部が直交するように設けられたガイドバー2と、当該ガイドバー2の他方の端部にガイドバー2と直交するように設けられかつ平板状に形成された支持板3と、当該支持板3に前記ガイドバー2と平行に支持されたねじ軸5と、当該ねじ軸5と螺合するナット部材8と、前記ガイドバー2と平行な方向に移動する可動体7と、前記可動体7に取付けられる押圧子24と、被加工物Wが載置されるテーブルと、前記押圧子24を前記ガイドバー2と平行な方向に移動させて前記被加工物Wを押圧するパルスモータ22とを備えると共に、前記ねじ5軸と前記ナット部材8とをボールねじ係合し、可動体7と分割されかつ対向配置された円筒部11を形成し、円筒部11と可動体7とを、差動用めねじ15を有するように形成すると共に前記円筒部11および可動体7に対して摺動係合可能に形成した差動部材14を介して連結し、前記差動部材14を前記可動体7に対して回転する方向に移動可能に形成し、前記差動部材14の移動により前記円筒部11に対して前記可動体7を前記可動体7の移動方向に沿って相対移動可能に構成し、前記押圧子24にて前記被加工物Wを押圧する押圧動作の予め定められた回数ごとに、前記差動部材14を前記可動体7に対して回転する方向に移動して、前記円筒部11と前記可動体7とを前記相対移動し、かつ前記差動部材14の移動による前記相対移動による変位が、前記ボールねじ係合されるねじ軸5とナット部材8との相対回動によって相殺され、前記可動体7の非作動時における前記押圧子24と前記基板1との間隔が一定に保持されるよう構成したプレス装置。(以下「刊行物1記載の発明」という。) (2)原査定における拒絶の理由に引用した本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭60-26274号(実開昭61-143799号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されていると認める。 ア 明細書第3頁第13行〜第4頁第3行 「ダイハイト調整装置Aはスライド1の下面に固定されたホルダ2を備えており、ホルダ2にはウエッジ収容部16が設けてあり、ウエッジ収容部16内には上側ウエッジ3が水平方向に移動可能に、また下側ウエッジ4が上下動可能に設けてあり、また下側ウエッジ4の下面にはダイセット取付プレート5がボルト6で取付けてあって、この取付プレート5はウエッジクランパ7によりホルダ2に保持されていて上側ウエッジ3の下面の斜面17に下側ウエッジ4の上面の斜面18が摺接されている。」 イ 明細書第5頁第12〜19行 「ウオーム13を回転することによりウオームホイール11を介してナット部材10を回転し、スクリュ8を水平方向(左右方向)に移動し、ピン9を介して上側ウエッジ3を水平方向に移動する。この上側ウエッジ3の移動により下側ウエッジ2(当審注:4)を上下方向に移動し、ダイセット取付プレート5を上下方向に移動してスライド1のダイハイト寸法を調整する。」 以上のとおりであるので、刊行物2には、「プレス機械」において、次の技術的事項が記載されていると認める。 スライド1の先端を、その移動方向と交差する面で分割されかつ対向配置されたスライド1とダイセット取付プレート5とによって形成し、スライド1とダイセット取付プレート5とを、長手方向に沿う斜面部を有するように形成すると共にホルダ2を有するスライド1および下側ウエッジ4を有するダイセット取付プレート5に対して摺動係合可能に形成した上側ウエッジ3を介して連結し、前記上側ウエッジ3をスライド1の移動方向と直交する方向に移動可能に形成し、前記上側ウエッジ3の移動によりスライド1およびダイセット取付プレート5を前記スライド1の移動方向に沿って相対移動可能に構成した点。(以下「刊行物2記載の事項」という。) 3 対比・判断 補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「ガイドバー2」は、前者の「ガイド体」に、同様に、「パルスモータ22」は、「モータ」に、それぞれ相当していることが明らかであり、後者の「可動体7」は、前者の「第2の可動体」に相当するとともに、可動体のガイド体と平行な方向の移動と一緒にガイド体と平行な方向に移動し、押圧子が取り付けられている「スライドプレート」にも相当している。 また、後者の「円筒部11」及び「可動体7」は、ともに、前者の「可動体」を形成していることは明らかであり、それぞれ「分割されかつ対向配置され」ている限りにおいて、前者の「第1の可動体」及び「第2の可動体」と共通している。そして、後者の「差動部材14」は、「前記第1の可動体と第2の可動体とを連結し」、「前記第1の可動体および第2の可動体に対して摺動係合可能」かつ「移動可能」に形成されている限りにおいて、前者の「差動部材」と共通している。 以上のとおりであるので、両者は、次の一致点及び相違点を有している。 <一致点> 平板状に形成された基板と、当該基板に一方の端部が直交するように設けられたガイド体と、当該ガイド体の他方の端部にガイド体と直交するように設けられかつ平板状に形成された支持板と、当該支持板に前記ガイド体と平行に支持されたねじ軸と、当該ねじ軸と螺合するナット部材と、可動体と、前記可動体の前記ガイド体と平行な方向の移動と一緒に前記ガイド体と平行な方向に移動するスライドプレートと、当該スライドプレートに取り付けられる押圧子と、被加工物が載置されるテーブルと、前記押圧子を前記ガイド体と平行な方向に移動させて前記被加工物を押圧するモータとを備えると共に、前記ねじ軸と前記ナット部材とをボールねじ係合し、前記可動体を、分割されかつ対向配置された第1の可動体と第2の可動体とによって形成し、前記第1の可動体と第2の可動体とを、前記第1の可動体および第2の可動体に対して摺動係合可能に形成した差動部材を介して連結し、前記差動部材を移動可能に形成し、前記差動部材の移動により前記第1の可動体および第2の可動体を前記可動体の移動方向に沿って相対移動可能に構成し、前記押圧子にて前記被加工物を押圧する押圧動作の予め定められた回数ごとに、前記差動部材を移動して、前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し、かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が、前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され、前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成したプレス装置。 <相違点> 前者では、第1の可動体と第2の可動体とを、「その移動方向と交差する面」で分割されたものとし、「長手方向に沿う斜面部を有」し、「可動体の移動方向と直交する方向に移動」する差動部材を介して連結するのに対し、後者では、第1の可動体と第2の可動体とが、「その移動方向と交差する面」で分割されたものでなく、差動用めねじを有し、可動体に対して回転する方向に移動する差動部材を介して連結する点。 上記相違点について検討する。 <相違点について> 上記刊行物2記載の事項に示すとおり、補正発明の「第1の可動体」に当たるスライド1と「第2の可動体」に当たるダイセット取付プレート5とを、その移動方向と交差する面で分割すること、そして補正発明の「差動部材」に当たる、長手方向に沿う斜面部を有し、可動体の移動方向と直交する方向に移動する上側ウエッジ3の移動により、第1の可動体および第2の可動体を、その移動方向に沿って相対移動可能に構成することが、刊行物2に記載されている。 そして、刊行物1記載の発明と刊行物2記載のものとは、プレス装置(または機械)という技術分野で共通しており、また、上記刊行物2記載の「差動部材」の構成を、刊行物1記載の発明における差動部材のように、第1の可動体と第2の可動体とを、ボールとボール溝との相対位置を変化させる程度の微小移動させるものに適用し得ないとする特段の事情も見出すことができない。 してみると、刊行物1記載の発明において、第1の可動体と第2の可動体とを、その移動方向と交差する面で分割するとともに、差動用めねじを有し、可動体に対して回転する方向に移動する差動部材にかえて、長手方向に沿う斜面部を有し、可動体の移動方向と直交する方向に移動する差動部材を用い、上記相違点に係る補正発明の構成とすることは、刊行物2記載の事項から、当業者が容易に想到することができたことである。 また、補正発明の効果は、上記刊行物1記載の発明および刊行物2記載の事項から予測しうる程度のものであり、格別なものではない。 以上のとおりであるので、補正発明は、本件出願前に日本国内において頒布された上記刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであるので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下する。 第3 本件発明について 1 本件発明 上記のとおり本件補正は却下されたので、本件出願の請求項1〜6に係る発明は、平成14年12月11日付手続補正書により補正がなされた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記第2の1の(1)の請求項1に記載されたとおりのものである。 2 刊行物記載事項 上記刊行物記載事項は、上記第2の2のとおりである。 3 対比・判断 本件発明は、上記第2の1のとおり、補正発明から、「スライドプレート」、「押圧子」、「テーブル」、「モータ」及び「ボールねじ係合」の構成、並びに、「前記押圧子にて前記被加工物を押圧する押圧動作の1回ごとあるいは予め定められた回数ごとに、前記差動部材を前記可動体の移動方向と直交する方向に移動して、前記第1の可動体と前記第2の可動体とを前記相対移動し、かつ前記差動部材の移動による前記相対移動による変位が、前記ボールねじ係合されるねじ軸とナット部材との相対回動によって相殺され、前記スライドプレートの非作動時における前記押圧子と前記基板との間隔が一定に保持されるよう構成した」点を省いたものである。 そうすると、本件発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する補正発明が、上記第2の3のとおり、上記刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるので、本件発明は、上記刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件出願の請求項2〜6に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-04-06 |
結審通知日 | 2004-04-13 |
審決日 | 2004-04-26 |
出願番号 | 特願2000-339304(P2000-339304) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B30B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 敏史 |
特許庁審判長 |
宮崎 侑久 |
特許庁審判官 |
神崎 孝之 上原 徹 |
発明の名称 | プレス装置 |
代理人 | 森田 寛 |