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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B |
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管理番号 | 1120648 |
審判番号 | 不服2004-18383 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-09-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-06 |
確定日 | 2005-08-03 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第510248号「異なる容量を有する2クラスのチャネルの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 4月 6日国際公開、WO95/09490、平成 8年 9月17日国内公表、特表平 8-508865〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1994年9月23日を国際出願日(パリ条約による優先権主張1993年9月27日、米国)とする出願であって、平成16年5月27日付けで拒絶査定がなされ、その後、平成16年9月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.平成16年9月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年9月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項12に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、 「 基地局から複数の移動局へ複数のチャネルクラスを経て信号を送信する手段であり、前記チャネルの各クラスが特有の送信周波数と関連している手段と、 基地局において複数の移動局から複数クラスのチャネルを経て信号を受信する手段と、 該受信された信号から移動局の位置を決定する手段であって、前記基地局が広アンテナローブを用い、第1の前記複数のチャネルクラスにより制御信号と同報情報信号を送信し、前記移動局の位置が決定された時には該基地局が狭アンテナローブを用い、第2の前記複数のチャネルクラスによりトラフィックデータ信号を送信し、第1の前記複数のチャネルクラスはセル全体に制御信号および同報情報信号を送信し、移動局から最初のアクセス信号を受信するために使用され、また、第1の前記複数のチャネルクラスは移動局が隣接する基地局から送信されるダウンリンクの信号の強度を測定するのを可能にするために使用され、また、基地局間の通話チャネル切替えの間、通話チャネル切替えのアクセスのために使用される、前記移動局の位置を決定する手段と、 を含む、アンテナアレイを有する少なくとも1つの基地局を含む通信システム。」 であると認められる。 本件補正は、平成16年3月8日付けの手続補正における特許請求の範囲の請求項12に記載された発明の構成に欠くことのできない事項である「第1の前記複数のチャネルクラス」について、「第1の前記複数のチャネルクラスはセル全体に制御信号および同報情報信号を送信し、移動局から最初のアクセス信号を受信するために使用され、また、第1の前記複数のチャネルクラスは移動局が隣接する基地局から送信されるダウンリンクの信号の強度を測定するのを可能にするために使用され、また、基地局間の通話チャネル切替えの間、通話チャネル切替えのアクセスのために使用される」ものであるとの限定を付加するものであるから、本件補正は、請求項12に記載された発明の構成に欠くことのできない事項を限定するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-202036号公報(以下、刊行物1という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (A)「2.特許請求の範囲 (1)基地局からの電波が到来する区域中で、複数の子局それぞれと前記基地局とが、通信を行なう無線通信システムにおいて、前期基地局は、指向性を可変可能なアンテナと、前記子局の位置又は方向を検出するための位置検出手段と、この位置検出手段によつて得られた位置又は方向に前記アンテナの指向性を向ける指向制御手段とを備えたことを特徴とする無線通信システム。 (2)位置検出手段は、前記指向制御部によって前記アンテナの指向性を可変させながら受信電力を測定する受信電力測定部を備え、この受信電力から子局の位置又は方向を検出することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。」 (第1頁左下欄第4行から同欄第17行) (B)「 (産業上の利用分野) 本発明は、子局と基地局とが通信を行なう無線通信システムにおいて、基地局の送信電力を低減することができる無線通信システムに関する。 (従来の技術) ゾーンで区分けされた区域を基地局といくつかの子局夫々との間で通信するシステムは、ポケットベル等のベージングシステムをはじめとする多くの無線通信システムで用いられている。この様なシステムでは、基地局と子局との間で相互通信を行なっている場合が多い。通信を行なおうとする時、例えば基地局が子局を呼び出し、子局を呼び出せれば、通信が行なえる。通信中は、子局と基地局との一対一の通信でありながら、基地局は、全方向に電波を放射している。これは、前記区域中にいる子局を基地局が呼び出そうとして、全区域に電波を放射し、この時と同様に通信中も全区域に電波を放射することで相互通信を可能にしているからである。以上述べた様に、子局と基地局の一対一での通信にも係らず、基地局が全方向に電波を放射して通信することは、送信電力の大部分が無駄に使われることになる。従って、基地局の送信電力は有効に用いられていないことになる。 (発明が解決しようとする課題) 以上述べてきたように、基地局は通信中通信置域の全方向に渡って電波を放射している為、子局と通信を行なうのに必要な送電電力よりもはるかに大きな送信電力を必要としていた。従って、基地局の送信電力は有効に用いられていないという欠点があった。 本発明は、これらの点を鑑みてなされたもので、あらかじめ子局の位置を基地局側で把握して、その方向に指向性を向けて子局と基地局との間で通信を行なう無線通信システムを提供することを目的とするものである。」 (第1頁右下欄第6行から第2頁左上欄第20行) (C)「 (作 用) ある区域は、基地局からの電波が到達する範囲となっている。この区域内で複数の子局が夫々基地局と通信が行なえる。基地局は、通信を行ないたい子局の位置を位置検出手段により検出する。この位置検出手段によって得られた子局の位置の方向に指向制御手段によって指向性を向は通信を行なう。この様に、ある方向だけに指向性を向ければよいので、基地局で必要な送信電力を大幅に減らすことができる。」 (第2頁右上欄第12行から同頁左下欄第1行) (D)「 (実施例) 以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。まず、TDM送信方式を構内選択無線呼出装置に用いた場合を一例として以下に説明する。第1図は、本発明による構内選択呼出装置の概略を示した図である。第2図は、第1図のシステムに対応するTDMフレームを示す。尚、同図のAフレームは、基地局2のフレームを示し、a、b、c、d、eは、子局3、4、5、6、7のタイムスロットを示している。また、B、C・・・・・・は、別区域の基地局フレームを示している。第1図に示す子局3、4、5、6、7が余り大きく移動せず、位置が変わらない場合について説明する。区域1には基地局2と子局3、4、5、6、7があるものとする。まず、基地局2は、区域1内の子局の位置を検出するがこの検知の仕方は後述する。各子局4、5、6、7にはスロットが第2図の様に割り当てられている。子局3はまだ通信をはじめていないものとする。基地局2は各子局4、5、6、7の対応するタイムスロットの送信時に、この子局4、5、6、7の位置する方向にアンテナ9の指向性を向は電波を放射する。子局3、4、5、6、7は自らのタイムスロット以外は受信部をOFFとするバッテリセービング動作を行なっており自分のタイムスロットの時間のみ子局内部の受信部をONとして基地局2からの電波を受信し、選択呼出信号の検出を行なっている。子局に対する選択呼出が行なわれる時は呼出を行なう子局のタイムスロットに呼出信号を送信する。子局側ではこの呼出信号を自分のタイムスロットより検出し、基地局2に対して確実に呼出を受けたことを送達確認信号として送り返してもよい。尚第1図と第2図では基地局2が子局4乃至7までアンテナ9の指向性を時計方向に一回転させながら電波を順番に放射する様になっているが、この放射の順序は全くランダムであっても差しつかえない。次に新たな電源をONとした子局に対して通信状態を確立するまでの手順について説明する。TDM送信方式において一般に子局に与えられるタイムスロットは子局の位置によって可変となり固定的ではないので子局の電源投入時にはまずタイムスロットを確定する必要がある。今新たに子局3が電源をONとした時子局3の受信部はONとなる。即ち受信可能な状態となり基地局2からの電波放射を待つ。基地局2から発射される電波はタイムスロット毎に各子局4、5、6、7に割り当てられている。しかし基地局2が電波をカバーする区域1の中では、子局3のタイムスロットを割り当てることができる。基地局2からの電波を受信した子局3は直ちに自らのID番号を含む送達確認信号を基地局2に送り返す。この送達確認信号を受信した基地局2では自らの発射した電波の方向から子局3の位置を検知し、子局3に対しても通信を行なうことができる。このためには、子局3からの送達確認信号を受信した方向に電波を放射する。(区域8参照)」 (第2頁左下欄第2行から第3頁左上欄第17行) (E)「 尚、基地局が子局の位置を検知する方法として一定周期で基地局が走査のための電波を全方向に送信し、この電波を受信した子局が基地局に電波を送り返すやり方がある。 ここで、基地局と子局の構成について第3図(a)、(b)を用いて以下に説明する。第3図(a)には、基地局の構成が示されている。第3図(b)には子局の構成が示されている。基地局19のアンテナは、例えば、アレーアンテナ等のいくつかのアンテナ素子16、17、18から電波が送受信される。はじめに、子局29の位置を検出する方法を述べる。送受信部11からRF信号を出力させ、このRF信号を変復調部12で変調して指向特性制御部10によりアンテナ素子16、17、18夫々から電波を全方向に送信する。子局20は、この電波をアンテナ21で受けて、送受信部22で受信する。そして、送受信部22から電波をアンテナ21を介して基地局19に送信する。基地局19では、この電波をアンテナ素子16、17、18等で受信する。この時、受信電力測定部13で、アンテナ素子16、17、18夫々の受信電力を測定する。この測定値の中で、一番強い受信電力値を示したアンテナ素子16に制御部14により指向性特性制御部10の指向特性をアンテナ素子16に指向特性を向けさせる。これと同時に、制御部14により記憶部15に子局20の位置、即ち、指向性の方向等を記憶させる。この記憶部15は、子局の位置を記憶させておいて次回の送信時の指向特性方向の決定付けに用いる。尚受信電力測定部13は、随時測定して、この測定値に応じて制御部14が指向特性制御10を制御させて、あるアンテナ素子の方向に、随時指向特性を可変させている。以上の構成により、電波の送受信が行なわれている。」 (第3頁左下欄第15行から第4頁左上欄第6行) (F)「新たな子局が送受をはじめる場合について第5図を用いて以下に説明する。この場合もタイムスロットを用いての送受信を行なう方法を用いている。まず、子局が電源をONにして、基地局より電波を待つ。基地局より信号を受信した子局は、IDを含むアクノレッジ(送達信号)を基地局へ返す。子局からのアクノレッジを受信した基地局は、自らが発射した電波の方向から子局の位置を検出し、新たなタイムスロットを用意する。基地局は、子局からアクノレッジを受信した方向に電波を放射する。そして、基地局は、子局のタイムスロットの時間に子局の方向に電波を放射する。」 (第4頁右上欄第4行から同欄第15行) したがって、前記(A)から(F)の記載によれば、刊行物1には、下記の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されている。 複数の子局へ位置検出用の電波及び子局に割り当てられたタイムスロットによる相互通信用の電波を送信するとともに、前記位置検出用の電波を受けた子局から送信されるアクノレッジ及び前記タイムスロットが割り当てられた子局から送信される相互通信用の電波を受信する送受信部及び変復調部と、 アレーアンテナの全アンテナ素子から区域内の全方向に前記位置検出用の電波を送信し、前記アクノレッジを前記アレーアンテナの各アンテナ素子で受信し、前記タイムスロットによる相互通信用の電波を前記相互通信を行う子局の位置に対応する前記アレーアンテナのアンテナ素子から送信するように前記アレーアンテナを制御する指向特性制御部と、 前記アクノレッジの受信電力値が一番強い前記アンテナ素子の指向性方向を前記子局の位置として検出する受信電力測定部及び制御部とを有し、 前記制御部は位置が検出された子局に対してタイムスロットを割り当て、前記検出された位置に対応する前記アレーアンテナのアンテナ素子から前記子局の方向に前記タイムスロットによる相互通信用の電波を送受信するように前記指向特性制御部を制御するものである アレーアンテナを有する少なくとも1つの基地局を含む無線通信システム。 (3)対比・判断 本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。 刊行物1に記載された発明における、「子局」、「子局に割り当てられたタイムスロットによる相互通信用の電波」、「アクノレッジ」、「区域」、「アレーアンテナ」は、それぞれ本件補正発明における、「移動局」、「トラフィックデータ信号」、「移動局からの最初のアクセス信号」、「セル」、「アンテナアレイ」に相当する。 刊行物1に記載された発明における「位置検出用の電波」は、基地局と子局の間で相互通信される信号以外の、システムの制御に使用される信号であるから、本件補正発明における「制御信号」の一種であると認められる。 前記(2)の(E)、(F)の記載から明らかなように、刊行物1に記載された発明における基地局での位置検出用の電波の送信及びそれを受信した子局からのアクノレッジの受信は、当該子局に対しタイムスロットを割り当てる前に行われているから、前記位置検出用の電波及び前記アクノレッジは、前記割り当てられるタイムスロットに対応するチャネルとは別のチャネルにより送受信されているものと認められる。そして、本件補正発明における「第1の前記複数のチャネルクラス」及び「第2の前記複数のチャネルクラス」とは、発明の詳細な説明の記載から見て、複数の利用可能なトラヒックチャネルを広アンテナローブで送受信されるグループと狭アンテナローブで送受信されるグループの2つに便宜上分類した際に前記各グループそれぞれに与えられた呼称であると認められる。したがって、刊行物1に記載された発明において、全方向に送受信される「位置検出用の電波」及び「アクノレッジ」のためのチャネルは、本件補正発明における「第1の前記複数のチャネルクラス」に、刊行物1に記載された発明において、特定の子局方向に送受信される「基地局が前記子局に割り当てたタイムスロットによる相互通信用の電波」のためのチャネルは、本件補正発明における「第2の前記複数のチャネルクラス」に、それぞれ対応する。 刊行物1に記載された発明における、「送受信部」及び「変復調部」の機能は、基地局から複数の移動局に複数のチャネルクラスを経て信号を送信及び受信する点において、本件補正発明における、「送信する手段」及び「受信する手段」の機能に対応する。 刊行物1に記載された発明における、「指向特性制御部」、「受信電力測定部」及び「制御部」の機能は、基地局が、アレーアンテナの全アンテナ素子、すなわち広アンテナローブを用い、第1の前記複数のチャネルクラスにより制御信号を送信し、前記移動局の位置が決定された時には前記基地局が、アレーアンテナの前記移動局の位置に対応するアンテナ素子、すなわち狭アンテナローブを用い、第2の前記複数のチャネルクラスによりトラフィックデータ信号を送信する点において、本件補正発明における「移動局の位置を決定する手段」の機能に対応する。 したがって、本件補正発明と刊行物1に記載された発明とは、 基地局から複数の移動局へ複数のチャネルクラスを経て信号を送信する手段と、 基地局において複数の移動局から複数クラスのチャネルを経て信号を受信する手段と、 該受信された信号から移動局の位置を決定する手段であって、前記基地局が広アンテナローブを用い、第1の前記複数のチャネルクラスにより制御信号を送信し、前記移動局の位置が決定された時には該基地局が狭アンテナローブを用い、第2の前記複数のチャネルクラスによりトラフィックデータ信号を送信し、第1の前記複数のチャネルクラスはセル全体に制御信号を送信し、移動局から最初のアクセス信号を受信するために使用される、前記移動局の位置を決定する手段と、 を含む、アンテナアレイを有する少なくとも1つの基地局を含む通信システム である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本件補正発明においては、複数のチャネルクラスの各クラスが特有の送信周波数と関連しているのに対し、刊行物1に記載された発明においてはこの点について明示がない点。 [相違点2] 本件補正発明においては、第1の前記複数のチャネルクラスは制御信号に加えて同報情報信号も送信するために使用されるのに対し、刊行物1に記載された発明においてはこの点について明示がない点。 [相違点3] 本件補正発明においては、第1の前記複数のチャネルクラスは移動局が隣接する基地局から送信されるダウンリンクの信号の強度を測定するのを可能にするために使用され、また、基地局間の通話チャネル切替えの間、通話チャネル切替えのアクセスのために使用されるのに対し、刊行物1に記載された発明においてはこの点について明示がない点。 上記各相違点について検討する。 [相違点1について] 周波数を異ならしめることにより複数の通信チャネルを形成することは通信分野における周知技術であるから(必要があれば、例えば、特開平3-123129号公報の特に第2頁右上欄第2行から第17行の記載参照。)、刊行物1に記載された発明において、全方向に送受信される位置検出用の電波及びアクノレッジのためのチャネルクラスと、特定の子局方向に送受信される相互通信用の電波のためのチャネルクラスとに特有の周波数を関連付けることは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。 [相違点2について] 制御チャネルを移動局の位置検出や同報情報信号の送信に用いることは通信分野における周知技術であるから(必要があれば、例えば、山田吉英外1名、「小ゾーン構成におけるアンテナ技術とチャネル利用法」、電子情報通信学会技術研究報告SSE92-69〜82、 Vol.92、 No.279 、1992年10月22日、pp.59〜63 の特に「3.チャネルの有効利用」の欄の記載参照。)、刊行物1に記載された発明において、全方向に送受信される位置検出用の電波すなわち制御信号の属するチャネルクラスを用いて同報情報信号を送信することは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。 [相違点3について] 基地局間での通話チャネルの切替えの際に、制御チャネルを用いて、移動局による隣接基地局の送信する信号の強度測定及び前記切替えのための制御信号の伝送を行うことは、通信分野における周知技術であるから(必要があれば、例えば、特開平4-185026号公報の特許請求の範囲の記載等参照。)、刊行物1に記載された発明において、全方向に送受信される位置検出用の電波すなわち制御信号の属するチャネルクラスを用いて、移動局が隣接する基地局から送信されるダウンリンクの信号の強度を測定し、基地局間の通話チャネル切替えの間、通話チャネル切替えのアクセスを行うことは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。 したがって、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成16年9月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項12に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年3月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「 基地局から複数の移動局へ複数のチャネルクラスを経て信号を送信する手段であり、前記チャネルの各クラスが特有の送信周波数と関連している手段と、 基地局において複数の移動局から複数クラスのチャネルを経て信号を受信する手段と、 該受信された信号から移動局の位置を決定する手段であって、前記基地局が広アンテナローブを用い、第1の前記複数のチャネルクラスにより制御信号と同報情報信号を送信し、前記移動局の位置が決定された時には該基地局が狭アンテナローブを用い、第2の前記複数のチャネルクラスによりトラフィックデータ信号を送信する、前記移動局の位置を決定する手段と、 を含む、アンテナアレイを有する少なくとも1つの基地局を含む通信システム。」 (1)刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本件補正発明から、「第1の前記複数のチャネルクラス」について、「移動局から最初のアクセス信号を受信するために使用され、また、第1の前記複数のチャネルクラスは移動局が隣接する基地局から送信されるダウンリンクの信号の強度を測定するのを可能にするために使用され、また、基地局間の通話チャネル切替えの間、通話チャネル切替えのアクセスのために使用される」ものであるとの構成を削除したものである。そして、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の発明の構成に欠くことのできない事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-08 |
結審通知日 | 2005-03-11 |
審決日 | 2005-03-24 |
出願番号 | 特願平7-510248 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 望月 章俊、佐藤 聡史 |
特許庁審判長 |
西川 正俊 |
特許庁審判官 |
松浦 功 橋本 正弘 |
発明の名称 | 異なる容量を有する2クラスのチャネルの使用 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 林 鉐三 |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 清水 邦明 |