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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない C08F
管理番号 1120821
審判番号 訂正2005-39031  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-08-10 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-02-23 
確定日 2005-08-08 
事件の表示 特許第3232614号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 (1)訂正事項
本件訂正は、次のとおりである。
訂正事項a:
特許請求の範囲における請求項1を、以下の通り訂正する。
「【請求項1】グリシジルモノビニルエステル90〜30重量部と多価アルコールのポリビニルエステル10〜70重量部とを総量100重量部として水と相溶しない有機溶媒の存在下で水性懸濁重合させ得られた架橋重合体粒子に、イオン交換基となりかつグリシジル基と反応するエチレンジアミンを、架橋重合体粒子1重量部に対し0.05重量部以上反応させた後、残存するグリシジル基を加水分解することを特徴とする酵素の分離用イオン交換樹脂の製造法。」
(ii)訂正事項b
本件特許明細書の特許請求の範囲における請求項2を、削除する。
(iii)訂正事項c
本件特許明細書の特許請求の範囲における請求項3を、削除する。
(iv)訂正事項d
本件特許明細書の特許請求の範囲における請求項4を、特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明を目的として、以下の通り訂正する。
「【請求項2】グリシジルモノビニルエステル90〜30重量部と多価アルコールのポリビニルエステル10〜70重量部とを総量100重量部として水と相溶しない有機溶媒の存在下で水性懸濁重合させ得られた架橋重合体粒子に、イオン交換基となりかつグリシジル基と反応するエチレンジアミンを、架橋重合体粒子1重量部に対し0.05重量部以上反応させた後、残存するグリシジル基を加水分解することによって得られる酵素の分離用イオン交換樹脂。」
(2)訂正要件の判断
訂正事項aおよびdは、それぞれ、請求項1および4の「試薬」を「エチレンジアミン」に限定するとともに、イオン交換樹脂を「酵素の分離用イオン交換樹脂」に限定し、架橋重合体1重量部に対するエチレンジアミンの重量部の限定をしたものであり、さらに、訂正事項dにおいては訂正後の請求項2を独立形式にしたものである。
そして、訂正事項c及びdは、訂正事項a及びdにより不必要となった請求項を削除したものである。
本件特許明細書の段落【0016】には、「試薬」として、エチレンジアミンが例示され、実施例2(段落【0025】)では、具体的にエチレンジアミンが使用されている。
また、本件特許明細書の段落【0020】には、「本発明のイオン交換樹脂は、酵素等親水性生体関連物質の分離に適した液体クロマトグラフィー用充てん材等に好適である」こと、すなわち、本発明のイオン交換樹脂は「酵素の分離用」として用いられることが記載されており、実施例2(段落【0025】、【0028】)では、具体的にイオン交換樹脂が酵素の分離用として用いられている。
そして、本件特許明細書の段落【0017】には、架橋重合体粒子1重量部に対し、エチレンジアミン等の試薬(イオン交換基となりかつグリシジル基と反応する試薬)を0.05重量部以上用いることが記載されている。
したがって、訂正事項a,b,c,dは、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
以上のとおりであるから、上記訂正a,b.c,dは、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第126条第1項ただし書き、第2項の規定に適合する。
(3)独立特許要件の判断
そこで、訂正後の本件特許発明が、独立して特許を受けることができるものであるか否かを以下検討する。
(3-1)本件特許発明
本件特許の訂正後の請求項1、2に係る発明(以下、「訂正後の本件発明1,2」という。)の特許(平成4年1月28日出願、平成13年9月21日設定登録。)は、平成17年2月23日付け訂正請求書により訂正された特許明細書の記載からみて、その訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】グリシジルモノビニルエステル90〜30重量部と多価アルコールのポリビニルエステル10〜70重量部とを総量100重量部として水と相溶しない有機溶媒の存在下で水性懸濁重合させ得られた架橋重合体粒子に、イオン交換基となりかつグリシジル基と反応するエチレンジアミンを、架橋重合体粒子1重量部に対し0.05重量部以上反応させた後、残存するグリシジル基を加水分解することを特徴とする酵素の分離用イオン交換樹脂の製造法。
【請求項2】グリシジルモノビニルエステル90〜30重量部と多価アルコールのポリビニルエステル10〜70重量部とを総量100重量部として水と 相溶しない有機溶媒の存在下で水性懸濁重合させ得られた架橋重合体粒子に、イオン交換基となりかつグリシジル基と反応するエチレンジアミンを、架橋重合体 粒子1重量部に対し0.05重量部以上反応させた後、残存するグリシジル基を加水分解することによって得られる酵素の分離用イオン交換樹脂。」
(3-2)引用刊行物の記載事項
そして、本件特許異議申立の取消理由に引用された刊行物1(特開昭58-24354号公報)、刊行物2(特開昭64-54004号公報)には、次のとおりの事項が記載されている。
刊行物1:
「多価アルコールのポリアクリル酸エステルおよびポリメタクリル酸エステルから選ばれた架橋剤と、一般式(1)

(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2およびR3は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を示す)で示されるアミノ基含有エステルと、一般式(2)

(式中、R1は水素原子またはメチル基を示す)
で示されるグリセリンエステルとから実質的になる構造を有する架橋共重合体であって、架橋剤の含有量が20(重量)%以上であり、イオン交換容量が0.1〜3meq/gである親水性の弱塩基性陰イオン交換樹脂。」(特許請求の範囲)
「多価アルコールのポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルとしては、通常、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート,1,3‐ブチレングリコールジメタクリレートおよびこれらに対応するアクリレートが単独でまたは混合して用いられる。好ましくはエチレングリコールのジアクリレートまたはジメタクリレートが用いられる。これらの架橋剤は樹脂中の20(重量)%以上を占めるべきである。好ましくは樹脂の20〜80(重量)%、特に30〜60(重量)%を占める。樹脂中に占める架橋剤の比率が小さ過ぎると樹脂の膨潤性が大きくなり、高速液体クロマトグラフィーの充填剤その他の用途に不適当となる。逆に架橋剤の比率が大きくなり過ぎると、アミノ基含有エステル部分の減少による交換容量の低下またはグリセリンエステル部分の減少による親水性の低下をもたらす。」(第2頁右上欄第16行〜左下欄末行)
「アミノ基含有エステルのアミノ基としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基・・・・・β-アミノエチルアミノ基、β-エチルアミノエチルアミノ基、β-(β-エチルアミノエチル)アミノエチルアミノ基など下記一般式(3)で示されるものが用いられる。

(式中、R2およびR3は、水素原子またはアルキル基を示し、アルキル基はさらにヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基で置換されていてもよい。)」(第2頁右下欄第1行〜第14行)(尚、この箇所は、昭和63年6月20日付け手続補正書により補正された補正後の記載である。)
「本発明に係る樹脂は、架橋剤とアクリル酸またはメタクリル酸のグリシジルエステルとを共重合させて架橋共重合体とし、次いでこれにアミンを反応させてグリシジルエステルの一部を3‐アミノ‐2‐ヒドロキシプロピルエステルに変化させたのち、グリシジルエステルのエポキシ環を水と反応させて開環させることにより容易に製造することができる。重合反応は公知の任意の方法で行ない得るが、通常は適当な分散安定剤を存在させた水性媒体中で懸濁重合方式で行ない、粒状の共重合体を得るのが好ましい。」(第3頁左上欄第16行〜右上欄第7行)
「重合反応は通常、攪拌下に50〜90℃で6〜20時間で完了する。また、この重合反応に際して多孔質の共重合体を生成させると、多孔質の親水性でかつ弱塩基性の陰イオン交換樹脂を得ることができる。多孔質の架橋共重合体の製法は公知であり、通常は、(1)反応原料中に、これに均一に混和するが、生成する架橋共重合体に対しては親和性の少ない溶媒を存在させて重合する方法。」(第3頁左下欄第4行〜第12行)
「架橋共重合体とアミンとの反応は、(3)式に対応する1級または2級アミンを水、メタノール、ジオキサン、トルエン等の溶媒に溶解し、これに架橋共重合体を懸濁させて、40〜100℃で3〜10時間反応させればよい。エポキシ環のアミノ化の程度は、反応条件を選択することにより容易に調節することができる。エポキシ環の開環反応は、上記によりアミノ化した架橋共重合体を、硫酸か燐酸を含む水中に懸濁させ、30〜100℃で5〜20時間保持すればよい。」(第3頁右下欄第1行〜第11行)
「本発明に係る弱塩基性陰イオン交換樹脂は、その内部にグリセリンモノエステル構造を含んでいるので親水性に富んでいる。また、架橋剤を含めて全体が脂肪族成分で構成されていて芳香族成分を含まないので、蛋白質その他の種々の有機物に対する疎水結合に起因する物理的吸着が少ない。さらに本発明に係る弱塩基性陰イオン交換樹脂は、遊離塩基形と負荷形との間における体積変化が少なく、かつ硬くてカラムに充填したときに圧力損失が少ない。従って本発明に係る弱塩基性の陰イオン交換樹脂はクロマトグラフィー、特に高速液体クロマトグラフィーの充填剤として有用である。」(第3頁右下欄第12行〜第4頁左上欄第4行)
「実施例1 グリシジルメタクリレート210g、エチレングリコールジメタクリレート90g、トルエン300gおよび2,2’‐アゾビス‐2,4‐ジメチルバレロニトリル3gの混合物を、イオン交換水680mlにポリビニルアルコール21gと塩化ナトリウム168gを溶解した溶液に加え、高速で攪拌しながら70℃で8時間懸濁重合させた。反応物を冷却したのち生成した共重合体粒子を濾取し、水洗した。次いでこの共重合体を、トルエン1125mlと水375mlとの混合液中に入れ、室温で3時間攪拌した後濾過した。更に、この共重合体を1.5lのメタノールに投入して攪拌することを2回反復したのち、80℃で8時間乾燥した。以上の操作を経た粒子を篩い分して、粒径50〜100μの共重合体粒子258gを得た。この共重合体粒子50gをメタノール250ml中に入れ、攪拌しながらこれに8%のジメチルアミンを含むメタノール溶液25mlを加え、引続き60℃で6時間反応させた。反応物を濾取し、イオン交換水で洗浄した。次に、これを10%硫酸水溶液250ml中に入れ、攪拌しながら90℃で5時間保持した。冷却後、反応物を濾取し、水洗した。次いで、これをカラムに詰め、2規定の水酸化ナトリウム水溶液250mlを2時間かけて流し、次いで脱塩水1000mlを流して水洗した。」(第4頁左下欄第6行〜右下欄第12行)
刊行物2:
「グリシジルモノビニルエステルまたはグリシジルモノビニルエーテルと、多価アルコールのポリビニルエステルまたは多価アルコールのポリビニルエーテルを、水と相溶しない有機溶媒の存在下で、水性懸濁共重合させて得られるゲル粒子のグリシジル基を、・・・・・陰イオン交換体の製造方法。」(特許請求の範囲、請求項1)
「本発明で用いられる水と相溶しない有機溶媒は、ゲルを多孔性にするために用いられこれらは25℃で水100gに対しての溶解量が15g以下のものであり、例えば、トルエン、ジエチルベンゼン、ドデカン、イソアミルアルコール、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等がある。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの使用量は、単量体総量に対して50〜300重量%使用されるのが好ましい。この水と相溶しない有機溶媒が少なすぎると、得られる粒子を多孔性にしにくくなり、多すぎると得られる粒子の空隙率が大きくなり耐圧性が乏しくなる傾向にある。」(第3頁左上欄第7行〜第13行)
(3-3)対比・判断
訂正後の本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比・検討する。
刊行物1において、架橋剤は多価アルコールのポリアクリル酸エステルおよびポリメタクリル酸エステルであるので、多価アルコールのポリビニルエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸のグリシジルエステルからなるグリシジルモノビニルエステルとを共重合させること、また、架橋剤の使用量に関し、「樹脂中の20(重量)%以上を占めるべきである。好ましくは樹脂の20〜80(重量)%、特に30〜60(重量)%を占める」と記載(第3頁左下欄第11〜14行)されており、これは原料の「架橋剤とアクリル酸またはメタアクリル酸のグリシジルエステル」中における架橋剤の割合を示すもので、架橋剤と(メタ)アクリル酸のグリシジルエステルとから共重合体を製造するに際し、架橋剤を20〜80(重量)%、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステルを80〜20(重量)%使用することを教示しているもので、実施例1においては、グリシジルメタクリレート210g(70wt.%)及びエチレングリコールジメタクリレート90g(30wt.%)を共重合させている。
これは、訂正後の本件発明1の構成要件である「グリシジルモノビニルエステル90〜30重量部と多価アルコールのポリビニルエステル10〜70重量部とを総量100重量部として」に該当する。
また、刊行物1の共重合反応は、公知の任意の方法で行い得るもので、水性媒体中の懸濁重合方式で行われることが記載され(同号証第3頁右上欄第4〜7行)、同時に、重合反応において、多孔質の架橋共重合体を生成させると、多孔質の親水性イオン交換樹脂が得られることを示し、多孔質の共重合体の製法の一例として、「反応原料中に、これに均一に混和するが、生成する架橋共重合体に対しては親和性の少ない溶媒を存在させて重合する方法」を挙げており(第3頁左下欄第5〜12行)、そして、実施例1においては、グリシジルメタクリレート及びエチレングリコールジメタクリレートをトルエン中で共重合させている。
一方、訂正後の本件発明1における水性懸濁重合は、水と相溶しない有機溶媒の存在下で行うことを必須とし、該有機溶媒は「生成した粒子を多孔性にし、粒子の表面積を大きくするために必要である細孔調節剤」であることが記載されているが(段落【0012】)、この有機溶媒が「水と相溶しない」とは、単に水に不溶ないしは難溶性であることが示されているに過ぎず、格別の定義はなされていない。
しかして、刊行物2には、グリシジルモノビニルエステルと多価アルコールのポリビニルエステルとの共重合体に多孔性を付与する水と相溶しない有機溶媒が記載され、具体的に例示されたトルエン、ジエチルベンゼン、ドデカン、イソアミルアルコール、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等、本件発明1で使用される有機溶媒と重複していることから、本件発明1の有機溶媒は刊行物2の有機溶媒と同等といえるし、刊行物1において共重合体を製造するのに使用されているトルエン溶媒が訂正後の本件発明1の水と相溶しない有機溶媒に該当すると解するのが相当である。
したがって、訂正後の本件発明1の構成要件である「水と相溶しない有機溶媒の存在下で水性懸濁重合させ得られた架橋重合体粒子に」を示唆する記載が刊行物1にあるといえる。
また、訂正後の本件発明1では、水性懸濁重合により得られた架橋共重合体粒子にイオン交換基となり、且つグリシジル基と反応する試薬であるエチレンジアミンを反応させることを要するが、かかる反応は粒子にイオン交換基を導入する反応であり、試薬としては、ジエチルアミンなどのアミン類が挙げられている(段落【0016】)。一方、刊行物1においては、懸濁重合により得られた架橋共重合体粒子にアミンを反応させ、一般式(1)で示されるアミノ基含有エステル成分を形成しており、これは陰イオン交換能を与える成分である(第2頁右上欄第11〜12行)。刊行物1に例示されたアミノ基(第2頁右下欄第1行〜第14行)を形成するのに使用されるアミン類が、その実施例1でジメチルアミンを使用していることからも、本件発明1で使用されるアミン類に相当するものである。
そして、刊行物1において、一般式(1)で示されるアミノ基含有エステル成分を形成するために、エポキシ環にアミンを反応させるが、このアミノ基含有エステル成分は、陰イオン交換能を与える成分であることが明示されている。
したがって、刊行物1のアミンが訂正後の本件発明1における「イオン交換基となり、かつグリシジル基と反応する試薬」としてのアミンに相当するものであり、かかる特定により何等差異を生ずるものではない。
さらに、アミンとの反応で形成されるアミノ基として「β-アミノエチルアミノ基」があげられているが、この基はエチレンジアミンにより形成されのであるから、アミンとしてエチレンジアミンの使用を開示していることは明らかである。
したがって、「イオン交換基となりかつグリシジル基と反応する試薬」をエチレンジアミンに特定することによっては、訂正後の本件発明1と刊行物1に記載された発明とを技術的に区別し得ないものである。
尚、特許権者は、審判請求書において、訂正後の本件発明1と刊行物1に記載された発明との反応を推測して両者の架橋構造の違いを説明するとともに、刊行物1には「β-アミノエチルアミノ基」が記載されてはいるが、それが製造できるように記載されておらず、エチレンジアミンの使用を開示しているということはできない旨の主張をしている。
しかし、特許権者の主張は、特許明細書の記載や刊行物1の記載に基づくものではなく、推測によるものであり、また、刊行物1に、アミンとの反応で形成されるアミノ基として「β-アミノエチルアミノ基」が明記され、この基はエチレンジアミンにより形成されるのが技術常識であるから、それについての具体的な製造法が記載されていないとの理由でこの記載を無意味とすることはできず、特許権者の主張は採用できない。
更に、訂正後の本件発明1では架橋共重合体に試薬(アミン類)を反応させた後、残存するグリシジル基を加水分解することを必須とし、加水分解は常法によりおこなわれ、硫酸、過塩素酸等の酸の存在下行うことが出来るとしている(段落【0019】)。これに対し、刊行物1においても、架橋共重合体にアミンを反応させて得た反応物を、次いでグリシジルエステルのエポキシ環を水と反応させて開環させ、それによって親水性を与える一般式(2)で示されるグリセリンエステル成分となすことが記載されている。刊行物1の「エポキシ環の開環反応」は、グリシジル基の加水分解反応であり、実施例1でもアミン反応物を硫酸水溶液中で加熱加水分解しているので、これは訂正後の本件発明1の構成要件「残存するグリシジル基を加水分解する」と実質的に一致しており、両者間に差異は存しない。
以上のとおり、訂正後の本件発明1に係るイオン交換樹脂の製造法と刊行物1に記載の弱塩基性陰イオン交換樹脂の製造法とは、その製造法を構成する要件を共通にしており、その点で一致するものである。
そして、訂正後の本件発明1は、エチレンジアミンの量の下限を限定すること、そして酵素の分離用イオン交換樹脂と限定するのに対し、刊行物1にはそのような記載がない点で相違するものである。
そこで、これらの相違点について検討する。
エチレンジアミンの量については、イオン交換性を有する程度に量を調整することは当業者が適宜容易になしうるものであり格別のものとはいえない。
酵素の分離用イオン交換樹脂と限定する点については、刊行物1のもイオン交換樹脂であり、その分離対象は「蛋白質その他の種々の有機物」であり、酵素も蛋白質である点では相違するものではない。
本件特許明細書の実施例と比較例をみると、加水分解の有無により酵素回収率に差異があることは認められるものの、刊行物1のも加水分解しているのであるから、格別の構成とする裏付けとはいえない。
また、訂正審判請求書において、蛋白質回収率と酵素回収率の測定結果を示して、その相関関係がないことを酵素の分離用イオン交換樹脂と限定としたことによる進歩性の根拠と主張している。 しかしながら、これは特許明細書の記載に基づかない主張であるし、酵素としてはグルコースー6-りん酸デヒドロゲナーゼのみ、蛋白質としては、牛血清γーグルブミンのみの実験結果であり、他の広範な活性や構造の異なる酵素や蛋白質に一般化できるとはいえないものであることから、特許権者の主張は採用できない。
したがって、上記相違点は、格別のものとはいえず、当業者が容易に想到しうるものといえる。
したがって、本件発明1は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
訂正後の本件発明2は、本件発明1に記載の製造法によって得られるイオン交換樹脂に係るものである。
しかして、上記の通り訂正後の本件発明1の製造法は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それにより得られる訂正後の本件発明2のイオン交換樹脂は、訂正後の本件発明1と同様の理由により、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。
尚、特許権者は、訂正拒絶理由に対する平成17年5月16日付け意見書で、訂正拒絶理由について反論しているが、いずれも上記訂正審判請求書の理由と同趣旨の主張であり、上記判断を変更する理由は見当たらない。
(3-4)結論
以上のとおり、訂正後の本件発明1及び本件発明2は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるので特許法第29条第2項の規定に該当して、独立して特許を受けることができない。
よって、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第126条第3項の規定に適合せず認められない。
 
審理終結日 2005-06-08 
結審通知日 2005-06-13 
審決日 2005-06-27 
出願番号 特願平4-12496
審決分類 P 1 41・ 121- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 邦彦  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 石井 あき子
船岡 嘉彦
登録日 2001-09-21 
登録番号 特許第3232614号(P3232614)
発明の名称 イオン交換樹脂及びその製造法  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 寺崎 史朗  
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