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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1120901
審判番号 不服2002-20923  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-29 
確定日 2005-08-12 
事件の表示 平成 5年特許願第 30384号「平板状レンズアレイおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 9月 2日出願公開、特開平 6-242303〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年2月19日の出願であって、平成14年9月25日付けで拒絶査定がなされ、平成14年10月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年11月29日付けで手続補正書が提出されたが、当該手続補正に係る手続は補正期間経過後の手続であったため、特許法第133条の2第1項の規定により却下された。

2.本願発明
本願発明は、平成14年6月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という)。
「【請求項1】 ガラス基板表面に、ゾルゲルガラス材料のゾル状態をゲル化して体積収縮が大部分終了したゲル薄膜を形成し、該ゲル薄膜を成形することにより配列した略球面状または略円柱状の凸部または凹部のアレイを形成したことを特徴とする平板状レンズアレイ。」

3.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-240134号公報(以下、「刊行物1」という)には、次の(a1)〜(a4)の事項が記載されている。
(a1)「【請求項3】 金属アルコキシドの加水分解により得られる多孔質ゲルからなる基板の少なくとも一方の表面に半球状もしくは非球面状の形状を付与する方法において、表面上に機械加工もしくはフォトリソグラフィの手法を用いて円形開口を有するマスクを設け、エッチングにより半球状もしくは非球面状に凹面を有する穴を設けた平板を前記多孔質ゲルの少なくとも一方の表面に機械的に押しつけるか、前記多孔質ゲルを作製中に前記平板を型にして堆積させることにより、形状を付与することを特徴とする請求項1又は2記載の屈折率分布型レンズの製造方法。」(特許請求の範囲)
(a2)「【0002】
【従来技術】
透明媒質中の屈折率を変化させることによりレンズ作用を付与させたいわゆる屈折率分布型レンズは、通常の光学レンズに比して、平板状でレンズ作用を付与できること、端面上に結像できること、結像特性を自由に選択できること、レンズのアレイ化やマトリックス化が容易であること等の種々の利点を備えており、光通信分野において最近ことに注目されている。」
(a3)「【0009】
【構成】
本発明は、上記目的を達成するために、(1)、金属アルコキシドの加水分解により得られる多孔質ゲルを基板とし、少なくとも該基板の一方の表面に半球状もしくは非球面状の形状を物理的もしくは化学的方法により付与した後、多孔質ゲルもしくは該多孔質ゲルを乾燥して得られる多孔質ガラスを、電子分極率の大きな金属イオンの溶液を所定時間接触させて該金属イオンを多孔質ガラスもしくは多孔質ゲル内に表面より不均一拡散させ、次に前記多孔質ガラスもしくは多孔質ゲルを高温加熱処理をして屈折率分布型レンズを得ること、或いは、(2)金属アルコキシドの加水分解により得られる多孔質ゲルを基板とし、少なくとも該基板の一方の表面に半球状もしくは非球面状の形状を物理的もしくは化学的方法により付与した後、多孔質ゲルもしくは該多孔質ゲルを乾燥して得られる多孔質ガラスを、電子分極率の小きな金属イオンの溶液を所定時間接触させて該金属イオンを多孔質ガラスもしくは多孔質ゲル内に均一に拡散し、その後電子分極率の大きな金属イオンの溶液を所定時間接触させて該金属イオンを多孔質ガラスもしくは多孔質ゲル内に表面より不均一拡散させ、次に前記多孔質ガラスもしくは多孔質ゲルを高温加熱処理をして屈折率分布型レンズを得ること、更には、(3)前記(1)又は(2)において、金属アルコキシドの加水分解により得られる多孔質ゲルからなる基板の少なくとも一方の表面に半球状もしくは非球面状の形状を付与する方法において、表面上に機械加工もしくはフォトリソグラフィの手法を用いて円形開口を有するマスクを設け、エッチングにより半球状もしくは非球面状に凹面を有する穴を設けた平板を前記多孔質ゲルの少なくとも一方の表面に機械的に押しつけるか、前記多孔質ゲルを作製中に前記平板を型にして堆積させることにより、形状を付与すること、更には、(4)前記(1)又は(2)において、前記電子分極率の大きな金属イオンがタリウム又はセシウムイオンであることを特徴としたものである。以下、本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1(a),(b)は、本発明による屈折率分布型レンズの一実施例を説明するための構成図で、図2は、その製造方法を説明するための工程図である。図中、1はガラス基板、2はゲル表面(ガラス表面)、3は多孔質ゲル、4は型、5は濃度分布、6は硝酸カリウム水溶液、7は多孔質ガラス、8は屈折率分布、9は入射光、10は硝酸セシウム水溶液である。
【0011】
本発明による屈折率分布型レンズの製作方法では、金属アルコキシドの加水分解により得られる多孔質ゲル3を基板1として用い、少なくとも一方の表面2に半球もしくは非球面の形状を物理的もしくは化学的方法により付与した後、多孔質ゲル3もしくは該多孔質ゲル3を乾燥して得られる多孔質ガラスを、電子分極率の大きな金属イオンの溶液を所定時間接触させて該金属イオンを多孔質ガラスもしくは多孔質ゲル内に表面より不均一拡散させるか、もしくは電子分極率の小さな金属イオンの溶液を所定時間接触させて該金属イオンを多孔質ガラスもしくは多孔質ゲル内に均一に拡散し、その後電子分極率の大きな金属イオンの溶液を所定時間接触させて該金属イオンを多孔質ガラスもしくは多孔質ゲル内に表面より不均一拡散させて、次に前記多孔質ガラスもしくは多孔質ゲル3を高温加熱処理をして図1(a),(b)に示すような屈折率分布型レンズを得る。
【0012】
本発明の実施例では、シリコンアルコキシドとしてシリコンテトラメトキシド(TMOS)を用いて得られるSiO2系の多孔質ゲル3を基板とする。先ず、シリコンテトラメトキシド(TMOS)の混合アルコール溶液(混合するアルコールには、例えば、メチル、エチル、プロピルアルコール等がある)を調整し、この溶液に水を添加して(必要ならば、塩酸やアンモニアなども触媒として添加)アルコキシドの加水分解と縮合反応により多孔質ゲル3を作製する。この多孔質ゲルに、表面上に機械加工もしくはフォトリソグラフィの手法を用いて円形開口を有するマスクを設け、エッチングにより半球状もしくは非球面状の凹面を有する穴をアレイ状に設けたガラス基板4を、一方のゲル表面に機械的に押しつけるか、該多孔質ゲル3を作製中に前記ガラス基板4上に堆積させることにより、図(a)に示すような多孔質ゲル3の表面に形状2を転写する。」
(a4)「【0016】
【効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によると、以下のような効果がある。
(1)請求項1,2に対応する効果;ゾルゲル法により多孔質ゲルの基板の作製および加工が比較的簡便にでき、また得られるレンズは、表面に半球状もしくは非球面状の形状と構成成分の濃度分布に起因する屈折率分布とを有しており、その光学特性を表面での屈折率差及びその形状と屈折率分布により制御することができる。
(2)請求項3に対応する効果;機械加工もしくはフォトリソグラフィの手法とエッチングにより、表面上に半球状もしくは非球面状の凹面を有する穴をアレイ状に設けた平板を用い、比較的簡単で精度の良い型を得ることができ、しかも、より容易に多孔質ゲルの表面にその形状を精度良く転写することができる。」
上記(a1)〜(a4)の記載から、刊行物1には、「レンズアレイ化が容易な屈折率分布型レンズの製造装置において、シリコンテトラメトキシド(TMOS)の混合アルコール溶液を調整し、この溶液に水を添加して(必要ならば、塩酸やアンモニアなども触媒として添加)アルコキシドの加水分解と縮合反応により多孔質ゲル3を作製し、この多孔質ゲルに、半球状もしくは非球面状の凹面を有するアレイ状に設けたガラス基板4を、一方のゲル表面に機械的に押しつけることによる屈折率分布型レンズの作成装置。」についての発明が記載されている。

4.対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載の発明では、レンズのアレイ化が容易な「屈折率分布型レンズ」を作製する目的を有するもので、かつ、図1〜図3には平板状のレンズアレイが示されていることは明らかであるから、刊行物1の発明に係る屈折率分布型レンズも平板状レンズアレイといえるものである。してみれば、本願発明と刊行物1に記載の発明は、「配列した略球面状または略円柱状の凸部または凹部のアレイが形成された平板状レンズアレイ。」である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本願発明では、レンズアレイがガラス基板表面に、ゾルゲルガラス材料のゾル状態をゲル化して体積収縮が大部分終了したゲル薄膜を形成し、該ゲル薄膜を成形することにより形成されるのに対し、刊行物1に記載の発明ではその点について明示的な記載はない点。

5.当審の判断
[相違点]について
まず、レンズアレイがガラス基板面に形成される点について検討するに、レンズアレイを作製する際にレンズアレイを透明基板の表面に形成することは、当該技術分野において周知であり(周知例として特開平5-27104号公報、特開平4-348301号公報、特開平4-329501号公報を参照のこと。)、そして、基板をガラス基板と特定することも、レンズアレイが組み込まれる光学装置の構成、レンズアレイの使用態様、等に応じて当業者が適宜選択しえる程度のもので、単なる設計事項にすぎないものである。
次に、刊行物1に記載の発明には、本願発明に係る「基板表面に、ゾルゲルガラス材料のゾル状態をゲル化して体積収縮が大部分終了したゲル薄膜を形成し、ゲル薄膜を成形する」点の明示的な記載はないものであるが、刊行物1に記載の発明に係る「シリコンテトラメトキシド(TMOS)の混合アルコール溶液を調整し、この溶液に水を添加して(必要ならば、塩酸やアンモニアなども触媒として添加)」なる工程はゾル状溶液を形成する工程に実実質的に等しく、さらに、アルコキシドの加水分解と縮合反応により多孔質ゲル3をを作製する工程はゲル膜を形成する工程に実質的に等しいものであるから、刊行物1に記載の発明においても、ゾルゲルガラス材料のゾル状態をゲル化してゲル膜を形成し、ゲル膜を成形するものである。そして、刊行物1に記載の発明では、ゲル膜を薄膜とする点についての記載はないが、薄膜とする点は、透明基板表面にレンズアレイを作成する際に、レンズアレイのサイズ、屈折率等に応じて当業者が当然設定しうる事項にすぎず、また、刊行物1に記載の発明においても、その製造工程から、ゲル膜は大部分体積収縮が終了したものと解される。
したがって、本願発明に係る上記相違点の構成は、当業者が刊行物1に記載の発明及び周知技術から容易に想到することができたものである。
また、請求人が主張する作用効果も、刊行物1及び周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は審判請求理由の手続補正書(平成14年11月29日提出)において、要するに「刊行物1において対象としているレンズは、屈折率分布型レンズであって、多孔質基板を得るのが目的であるのに対し、本願発明は成形体の収縮による形状変化を低減することを目的としているため、使用材料も異なっている。」(上記手続補正書4頁)と主張しているが、本願発明は材料について特定しておらず、請求人の上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、また、刊行物1に記載の発明においてもゲル化の際には、収縮率の大小はともかく、一定程度体積収縮が生じるものと解される。以上から、上記手続補正書の内容を参酌しても、上記容易想到性に関する当審の判断に影響を与えるものではない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-02 
結審通知日 2005-06-07 
審決日 2005-06-22 
出願番号 特願平5-30384
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横井 康真  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 辻 徹二
前川 慎喜
発明の名称 平板状レンズアレイおよびその製造方法  
代理人 伊藤 俊哉  

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