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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
管理番号 1121049
異議申立番号 異議2003-72400  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-05-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-29 
確定日 2004-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3392196号「偏光フイルムの製造法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3392196号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3392196号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年10月21日に特許出願され、平成15年1月24日にそれらの発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、株式会社クラレ、真板京子及び峰村節子より特許異議申立てがなされ、これを受けて平成16年3月4日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年5月17日に訂正請求書が提出されたが、この訂正請求はその後取り下げられ、さらに、平成16年7月13日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年7月28日に訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
a.特許請求の範囲の請求項1の「ハロゲン化リチウム」の次に「および有機溶剤」を挿入する。
b.特許請求の範囲の請求項1の「含まない」の次に「ポリビニルアルコール系樹脂水溶液から」を挿入する。
c.特許請求の範囲の請求項1の「製膜し、」の次に「該フイルムを」を挿入する。
d.特許請求の範囲の請求項1の「で染色後」を「の水溶液に浸漬して染色後、」と訂正する。
e.特許請求の範囲の請求項1の「ホウ素化合物で」の「で」を「の水溶液に浸漬」と訂正する。
f.特許請求の範囲の請求項1の「当たり、」と「下記(I)式」の間に
「上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液および上記染料の水溶液はいずれもホウ素化合物を含まないこと、上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液、上記染料の水溶液および上記ホウ素化合物の水溶液はいずれもジルコニウムイオンを含まないこと、および、」を挿入する。
g.特許請求の範囲の請求項1の「更にホウ素化合物処理工程で」の次に「40〜60℃で」を挿入する。
h.特許請求の範囲の請求項1の
「0.1<(a-1)/(ab-1) ・・・ (I)」を、
「0.47≦(a-1)/(ab-1)≦0.94 ・・・ (I)」と訂正する。
i.特許請求の範囲の請求項1の
「(但し、1.2≦a≦4,b>1)」を、
「(但し、2.2≦a≦3.8,b>1)」と訂正する。
j.明細書(特許掲載公報、以下単に明細書という)の3欄の段落0005の「ハロゲン化リチウム」の次に「および有機溶剤」を挿入する。
k.明細書の3欄の段落0005の「含まない」の次に「ポリビニルアルコール系樹脂水溶液から」を挿入する。
l.明細書の3欄の段落0005の「製膜し、」の次に「該フイルムを」を挿入する。
m.明細書(特許掲載公報、以下単に明細書という)の3欄の段落0005の「で染色後」を「の水溶液に浸漬して染色後、」と訂正する。
n.明細書の3欄の段落0005の「ホウ素化合物で」の「で」を「の水溶液に浸漬」と訂正する。
o.明細書の3欄の段落0005の「当たり、」と「下記(I)式」の間に
「上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液および上記染料の水溶液はいずれもホウ素化合物を含まないこと、上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液、上記染料の水溶液および上記ホウ素化合物の水溶液はいずれもジルコニウムイオンを含まないこと、および、」を挿入する。
p.明細書の3欄の段落0005の「更にホウ素化合物処理工程で」の次に「40〜60℃で」を挿入する。
q.明細書の3欄の段落0005の
「0.1<(a-1)/(ab-1) ・・・ (I)」を、
「0.47≦(a-1)/(ab-1)≦0.94 ・・・ (I)」と訂正する。
r.明細書の3欄の段落0005の
「(但し、1.2≦a≦4,b>1)」を、
「(但し、2.2≦a≦3.8,b>1)」と訂正する。
s.明細書の3欄の段落0006の「ホウ素化合物処理工程で」の次に「40〜60℃で」を挿入する。
t.明細書の3欄の段落0008の「公知の方法に従って」を「有機溶剤を含まないポリビニルアルコール系樹脂水溶液から」と訂正する。
u.明細書の3欄の段落0008の「、有機溶剤、水/有機溶剤混合溶剤等」を削除する。
v.明細書の3〜4欄の段落0008の「その他ポリビニルアルコールの溶液を凝固浴中に導入してフイルム化するいわゆるゲル製膜法等も実施可能である。」を削除する。
w.明細書の4欄の段落0009の第3文の「前後」を「前」と訂正する。
x.明細書の4欄の段落0009の第4文の「液体」を「水溶液」と訂正する。
y.明細書の4欄の段落0010の「接触手段としては、」の前に「このときの」を挿入する。
z.明細書の4欄の段落0010の「浸漬が好ましいが、塗布、噴霧等の任意の手段も適用出来る。」を「該フイルムを偏光素子の水溶液に浸漬する方法を採用する。」と訂正する。
A.明細書の4欄の段落0011の「通常aの倍率は、1.2〜4倍」を「そのときのaの倍率は、2.2〜3.8倍」と訂正する。
B.明細書の4欄の段落0011の「0.1より大きい」を「0.47〜0.94である」と訂正する。
C.明細書の4欄の段落0011の「で、好ましくは、0.15〜0.95の範囲」を削除する。
D.明細書の4欄の段落0013の「によって」を「の水溶液で40〜60℃で」と訂正する。
E.明細書の4欄の段落0013の「望ましいが勿論塗布法、噴霧法も実施可能である。」を「採用される。」と訂正する。
F.明細書の5欄の段落0018の「実施例1」を「参考例1」と訂正する。
G.明細書の6欄の段落0020の「実施例2〜5」を「実施例1〜2、参考例2〜3」と訂正する。
H.明細書の6欄の段落0020の「実施例1」を「参考例1」と訂正する。
I.明細書の6欄の段落0020の「実施例3」を「実施例1」と訂正する。
J.明細書の6欄の段落0020の「実施例4」を「参考例3」と訂正する。
K.明細書の6欄の段落0020の「実施例4、5」を「参考例3、実施例2」と訂正する。
L.明細書の3頁の段落0021の表1において、
「実施例1」を「参考例1」と、「 〃 2」を「参考例2」と、「 〃 3」を「実施例1」と、「 〃 4」を「参考例3」と、 「 〃 5」を「実施例2」と、それぞれ訂正する。
M.明細書の3〜4頁の段落0022の表2において、
「実施例1」を「参考例1」と、「 〃 2」を「参考例2」と、「 〃 3」を「実施例1」と、「 〃 4」を「参考例3」と、「 〃 5」を「実施例2」と、それぞれ訂正する。

(2)訂正の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(2-1)特許明細書の特許請求の範囲の訂正について
(1) 上記訂正事項aについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「ポリビニルアルコール系樹脂フイルムを製膜し、」の前に「および有機溶剤」を挿入することにより、製膜条件を限定しようとするものである。当該「および有機溶剤」は、本件特許明細書の段落0008、段落0018(実施例1)に記載されていたものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2) 上記訂正事項bについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「ポリビニルアルコール系樹脂フイルムを製膜し、」の前に「ポリビニルアルコール系樹脂水溶液から」を挿入することにより、製膜条件を限定しようとするものである。当該「ポリビニルアルコール系樹脂水溶液から」は、本件特許明細書の段落0008、段落0018(実施例1)に記載されていたものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項bは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3) 上記訂正事項cについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「製膜し、」の次に「該フイルムを」を挿入することにより、文法上の目的語を紛れのないものとしたものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項cは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(4) 上記訂正事項dについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「で染色後」をより下位概念である「の水溶液に浸漬して染色後、」と訂正することにより、染色条件を限定しようとするものである。当該「の水溶液に浸漬して染色後、」は、本件特許明細書の段落0018(実施例1)に記載されていたものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書を第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項dは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(5) 上記訂正事項eについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「ホウ素化合物で」の「で」をより下位概念である「の水溶液に浸漬」と限定することにより、ホウ素化合物による処理条件を限定しようとするものである。当該「の水溶液に浸漬」は、本件特許明細書の段落0013、段落0018(実施例1)に記載されていたものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書を第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項eは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(6) 上記訂正事項fについては、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「当たり、」と「下記(I)式」の間に、「上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液および上記染料の水溶液はいずれもホウ素化合物を含まないこと、
上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液、上記染料の水溶液および上記ホウ素化合物の水溶液はいずれもジルコニウムイオンを含まないこと、および、」を挿入したものである。
これらの、いわゆる「除くクレーム」は特許請求の範囲の減縮に相当する。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書を第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項fは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(7) 上記訂正事項gについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「b倍一軸延伸すること」の前に「40〜60℃で」を挿入することにより、ホウ素化合物処理工程での延伸条件を限定しようとするものである。当該「40〜60℃で」は、本件特許明細書の段落0018(実施例1)に記載されていたものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書を第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項gは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(8) 上記訂正事項hについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「0.1<(a-1)/(ab-1) ・・・ (I)」を、より下位概念である「0.47≦(a-1)/(ab-1)≦0.94 ・・・ (I)」と限定しようとするものである。当該「0.47≦(a-1)/(ab-1)≦0.94 ・・・ (I)」は、本件特許明細書の段落0021(表1)の実施例3および5に基く限定である。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書を第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項hは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(9) 上記訂正事項iについては、特許明細書の特許請求の範囲に記載された「(但し、1.2≦a≦4,b>1)」を、より下位概念である「(但し、2.2≦a≦3.8,b>1)」と限定しようとするものである。当該「(但し、2.2≦a≦3.8,b>1)」、すなわちaの範囲の訂正は、本件特許明細書の段落0021(表1)の実施例3および5の記載に基く限定である。なお、表1の実施例1、2、4は後述のように参考例1、2、3と訂正した。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書を第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項iは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2-2)特許明細書の発明の詳細な説明の訂正に関して
(10) 上記訂正事項jについては、特許明細書の3欄の段落0005の「ハロゲン化リチウム」の次に「および有機溶剤」を挿入したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項aの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項jは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(11) 上記訂正事項kについては、特許明細書の3欄の段落0005の「含まない」の次に「ポリビニルアルコール系樹脂水溶液から」を挿入したものである。この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項bの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項kは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(12) 上記訂正事項lについては、特許明細書の3欄の段落0005の「製膜し、」の次に「該フイルムを」を挿入したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項cの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項lは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(13) 上記訂正事項mについては、特許明細書の3欄の段落0005の「で染色後」を「の水溶液に浸漬して染色後、」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項dの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項mは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(14) 上記訂正事項nについては、特許明細書の3欄の段落0005の「ホウ素化合物で」の「で」を「の水溶液に浸漬」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項eの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項nは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(15) 上記訂正事項oについては、特許明細書の3欄の段落0005の「当たり、」と「下記(I)式」の間に、「上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液および上記染料の水溶液はいずれもホウ素化合物を含まないこと、
上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液、上記染料の水溶液および上記ホウ素化合物の水溶液はいずれもジルコニウムイオンを含まないこと、および、」を挿入したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項fの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項oは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(16) 上記訂正事項pについては、特許明細書の3欄の段落0005の「更にホウ素化合物処理工程で」の次に「40〜60℃で」を挿入したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項gの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項pは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(17) 上記訂正事項qについては、特許明細書の3欄の段落0005の「0.1<(a-1)/(ab-1) ・・・ (I)」を、「0.47≦(a-1)/(ab-1)≦0.94 ・・・ (I)」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項hの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項qは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(18) 上記訂正事項rについては、特許明細書の3欄の段落0005の「(但し、1.2≦a≦4,b>1)」を、「(但し、2.2≦a≦3.8,b>1)」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項iの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項rは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(19) 上記訂正事項sについては、特許明細書の3欄の段落0006の「ホウ素化合物処理工程で」の次に「40〜60℃で」を挿入したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項gの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項sは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(20) 上記訂正事項tについては、特許明細書の3欄の段落0008の「公知の方法に従って」を「有機溶剤を含まないポリビニルアルコール系樹脂水溶液から」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項aおよびbの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項tは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(21) 上記訂正事項uについては、特許明細書の3欄の段落0008の「、有機溶剤、水/有機溶剤混合溶剤等」を削除したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項aおよびbの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項uは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(22) 上記訂正事項vについては、特許明細書の3〜4欄の段落0008の「その他ポリビニルアルコールの溶液を凝固浴中に導入してフイルム化するいわゆるゲル製膜法等も実施可能である。」を削除したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項bの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項vは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(23) 上記訂正事項wについては、特許明細書の3欄の段落0009の第3文の「前後」を「前」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲の「染色或いはそれ以前の工程において」と噛み合わないため発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項wは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(24) 上記訂正事項xについては、特許明細書の3欄の段落0009の第4文の「液体」を「水溶液」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項dの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項xは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(25) 上記訂正事項yについては、特許明細書の3〜4欄の段落0010の「接触手段としては、」の前に「このときの」を挿入したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項dの訂正を行ったことに対応し、文法上のつながりを明確にするためのものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項yは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(26) 上記訂正事項zについては、特許明細書の4欄の段落0010の「浸漬が好ましいが、塗布、噴霧等の任意の手段も適用出来る。」を「該フイルムを偏光素子の水溶液に浸漬する方法を採用する。」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項dの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項zは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(27) 上記訂正事項Aについては、特許明細書の4欄の段落0011の「通常aの倍率は、1.2〜4倍」を「そのときのaの倍率は、2.2〜3.8倍」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項iの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Aは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(28) 上記訂正事項Bについては、特許明細書の4欄の段落0011の「0.1より大きい」を「0.47〜0.94である」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項hの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Bは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(29) 上記訂正事項Cについては、特許明細書の4欄の段落0011の「で、好ましくは、0.15〜0.95の範囲」を削除したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項hの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Cは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(30) 上記訂正事項Dについては、特許明細書の4欄の段落0013の「によって」を「の水溶液で40〜60℃で」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項eおよびgの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Dは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(31) 上記訂正事項Eについては、特許明細書の4欄の段落0013の「望ましいが勿論塗布法、噴霧法も実施可能である。」を「採用される。」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項eの訂正を行ったことに対応して発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Eは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(32) 上記訂正事項Fについては、特許明細書の4欄の段落0018の「実施例1」を「参考例1」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項iの訂正を行ったことにより、「当初の実施例1」の延伸倍率aが「2.2≦a≦3.8」の規定から外れることになったため、それに対応して「当初の実施例1」を「参考例1」とすることにより発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Fは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(33) 上記訂正事項Gについては、特許明細書の6欄の段落0020の「実施例2〜5」を「実施例1〜2、参考例2〜3」と訂正したものである。
この訂正は、特許請求の範囲につき訂正事項iの訂正を行ったことにより、「当初の実施例1、2」の延伸倍率aが「2.2≦a≦3.8」の規定から外れることになったため、それに対応して「当初の実施例2」を「参考例2」に、「当初の実施例3」を「実施例1」に、「当初の実施例5」を「実施例2」にとすることにより発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
また、「当初の実施例4」は染色処理工程後にa倍の延伸処理を行っている例であって、特許請求の範囲の「染色或いはそれ以前の工程において」と噛み合わないため、これを「参考例3」とすることにより発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、上記の訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Gは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(34) 上記訂正事項Hについては、特許明細書の6欄の段落0020の「実施例1」を「参考例1」と訂正したものである。
この訂正は、明細書につき訂正事項Fの訂正を行ったことに対応して、「当初の実施例1」を「参考例1」とすることにより発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Hは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(35) 上記訂正事項Iについては、特許明細書の6欄の段落0020の「実施例3」を「実施例1」と訂正したものである。
この訂正は、明細書につき訂正事項Gの訂正を行ったことにより、「当初の実施例1、2」が「参考例1、2」になったので、「当初の実施例3」を新たに「実施例1」とすることにより発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Iは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(36) 上記訂正事項Jについては、特許明細書の6欄の段落0020の「実施例4」を「参考例3」と訂正したものである。
「当初の実施例4」は染色処理工程後にa倍の延伸処理を行っており、特許請求の範囲の「染色或いはそれ以前の工程において」と噛み合わないため、これを「参考例3」とすることにより発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。 従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Jは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(37) 上記訂正事項Kについては、特許明細書の6欄の段落0020の「実施例4、5」を「参考例3、実施例2」と訂正したものである。
この訂正は、明細書につき訂正事項Gの訂正を行ったことにより、「当初の実施例1、2」が「参考例1、2」になり、かつ「当初の実施例4」が「参考例3」になったので、「当初の実施例5」を新たに「実施例2」とすることにより発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Kは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(38) 上記訂正事項Lについては、明細書の6〜7欄の段落0021の表1において、「実施例1」を「参考例1」と、「 〃 2」を「参考例2」と、「 〃 3」を「実施例1」と、「 〃 4」を「参考例3」と、「 〃 5」を「実施例2」と、それぞれ訂正したものである。
この訂正は、明細書につき訂正事項FおよびGの訂正を行ったことに合わせて、表1の実施例番号を参考例番号および新たな実施例番号に整理することにより発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Lは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。
(39) 上記訂正事項Mについては、特許明細書の6〜7欄の段落0022の表2において、「実施例1」を「参考例1」と、「 〃 2」を「参考例2」と、「 〃 3」を「実施例1」と、「 〃 4」を「参考例3」と、「 〃 5」を「実施例2」と、それぞれ訂正したものである。
この訂正は、明細書につき訂正事項Lの訂正を行ったことに合わせて、表2の実施例番号を参考例番号および新たな実施例番号に整理することにより発明の詳細な説明の欄を整合化したものである。
従って、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
また、上記訂正事項Mは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。

(4)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正は認められるから、本件特許の請求項1係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
ハロゲン化リチウムおよび有機溶剤を含まないポリビニルアルコール系樹脂水溶液からポリビニルアルコール系樹脂フイルムを製膜し、該フイルムをヨウ素染料又は二色性染料の水溶液に浸漬して染色後、ホウ素化合物の水溶液に浸漬処理して最終延伸倍率ab倍の偏光フイルムを製造するに当たり、
上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液および上記染料の水溶液はいずれもホウ素化合物を含まないこと、
上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液、上記染料の水溶液および上記ホウ素化合物の水溶液はいずれもジルコニウムイオンを含まないこと、および、
下記(I)式を満足するように染色或いはそれ以前の工程において30〜70℃でa倍一軸延伸し、更にホウ素化合物処理工程で40〜60℃でb倍一軸延伸すること
を特徴とする偏光フイルムの製造法。
0.47≦(a-1)/(ab-1)≦0.94 ・・・ (I)
(但し、2.2≦a≦3.8,b>1)」

(2)平成16年3月4日付け取消理由通知の概要
[理由A]特許法第36条第4項および同条第5項違反について
(ア)異議申立人峯村節子が提出した特許異議申立書に記載される理由により、本件特許明細書には記載不備があるから、本件は特許法第36条第4項および同条第5項の規定に違反する。
(イ)異議申立人株式会社クラレが提出した特許異議申立書に記載される理由により、本件特許明細書には記載不備があるから、本件は特許法第36条第4項および同条第5項の規定に違反する。

[理由B]特許法第29条第1項第3号および同条第2項違反について
刊行物1.特開平4-204907号公報(異議申立人峯村節子及び株式会社クラレが提出した甲第2号証、異議申立人真板京子が提出した甲第1号証)
刊行物2.特開平4-351640号公報(異議申立人真板京子が提出した甲第2号証)
刊行物3.特開平4-173125号公報(異議申立人峯村節子及び株式会社クラレが提出した甲第1号証)
刊行物4.特開平3-175404号公報(異議申立人真板京子が提出した甲第3号証)
刊行物5.特開平4-215603号公報(同甲第4号証)
刊行物6.特開平4-223404号公報(同甲第5号証)
(ア)異議申立人峯村節子、株式会社クラレ及び真板京子が提出した各特許異議申立書に記載される理由により、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明である。
(イ)異議申立人真板京子が提出した特許異議申立書に記載される理由により、本件発明は、上記刊行物2に記載された発明である。
(ウ)異議申立人峯村節子及び株式会社クラレが提出した各特許異議申立書に記載される理由により、本件発明は、上記刊行物3に記載された発明である。
(エ)異議申立人峯村節子、株式会社クラレ及び真板京子が提出した各特許異議申立書に記載される理由により、本件発明は、刊行物1乃至3に記載された発明のいずれかの発明に基いて当業者が容易になし得た発明であるか、刊行物1乃至3に記載された発明を組み合わせて当業者が容易になし得た発明である。
(オ)本件発明は、刊行物1乃至3に記載された発明と刊行物4乃至6に記載された発明とを組み合わせて当業者が容易になし得た発明である。

(4)刊行物に記載の発明の概要
刊行物1(特開平4-204907号公報)について
刊行物1に記載の発明は、二色性色素を吸着配向させる「基材フィルム」を構成する高分子セグメントの非晶領域の配向係数および「基材フィルム」のホウ素化合物による架橋指数を特定する発明に関するものであって、基材フィルムの製膜を、ホウ酸を含有するポリビニルアルコール溶液を用いて行うか、又は、ポリビニルアルコールの水溶液からフィルムを得、このフィルムをホウ酸水溶液に浸漬するものである。
刊行物2(特開平4-351640号公報)について
刊行物2の発明は、ジルコニウム含有ポリビニルアルコール系フィルムにかかるものであって、ジルコニウムイオンとヨウ素イオンとのコンプレックスを形成する手段として、刊行物2においては、延伸されたポリビニルアルコール系フィルムをジルコニウムイオンとヨウ素イオンを含む液中に浸漬し、次いで延伸する方法が代表的な方法としてあげられている。
刊行物3(特開平4-173125号公報)について
刊行物3の発明は、原反フイルムとして熱水中での完溶温度が65〜90℃のポリビニルアルコール系フイルムを用いる発明にかかるものであって、3頁左上欄には「偏光フイルムは最終的には2〜8倍、好ましくは3〜6倍に一軸延伸するのであるが、この延伸は両工程にわたって実施するのが実用的であり、両工程において延伸する場合、染色工程で1.2〜2倍、好ましくは1.2〜1.5倍、ホウ素化合物処理工程で2〜6倍、好ましくは、2〜4倍が望ましい。」との記載がある。
刊行物4(特開平3-175404号公報)について
刊行物4の発明は、偏光フイルムの基材として、ポリビニルアルコール重合体の1,2-グリコール結合量が1.5モル%以下のものを用いるものであって、5頁左上欄には「吸着操作と延伸操作は同時に行なっても別々に行なっても問題はなく、その順序も任意である。また原反フイルムへの二色性物質の吸着を強固にすることを目的にホウ酸やホウ砂等のホウ素化合物を添加することがあるが、これは吸着や延伸と同時に実施しても、これら操作の前後の間のどの時点で実施しても任意である。」との記載がある。
刊行物5(特開平4-215603号公報)について
刊行物5の発明は、製膜工程→ヨウ素染色工程→ホウ素化合物処理工程をこの順序で行うにあたり、最後のホウ素化合物処理工程中でまず4.5倍以下に一軸延伸し、続いて2倍以下に一軸延伸することを特徴とするものであって、段落0011には「本発明ではかかる処理(ホウ素化合物処理のこと)工程中でフイルムを2段階延伸するのが特徴である。まず第1段階では4.5倍以下、好ましくは1.1〜4.5倍の範囲に一軸延伸し、ついで第2段階では2倍以下、好ましくは1.1〜2倍に一軸延伸する。本発明では第2段階の延伸倍率を第1段階の延伸倍率よりも小さくすることも必要である。」との記載がある。
刊行物6(特開平4-223404号公報)について
刊行物6の発明は、「平均重合度2600以上の高重合度ポリビニルアルコールにハロゲン化リチウムを配合した混合物からなるフイルムを一軸延伸してなる偏光フイルム。」であって(請求項1)、塩化リチウムを配合して製膜した原反フイルムをヨウ素を含む水溶液に浸漬して染色し、ついでホウ酸を含む水溶液に浸漬すると共に6.0倍に一軸延伸してホウ酸処理と延伸とを同時に行っている。

(4)当審の判断
[理由A]
(ア)異議申立人峯村節子は、『本件公報の段落0011には、「該延伸処理における延伸時の温度は30〜70℃であることが必要で、」と記載されている。しかしながら、第1段目の延伸時の温度を30〜70℃に限定した技術的な意味や臨界的な意義について、一般的な説明は勿論のこと、具体例などによる裏付けも一切なされていない。』こと、及び『本件発明で規定している関係式(I)に関して、実施例1〜5に記載されているのは、最終倍率abが3.52〜4.05倍という極めて限られた狭い範囲内のものであるので、本件特許権者の出願にかかる刊行物3(特開平4-173125号公報)の3頁左上欄15〜16行に記載されている「最終延伸倍率2〜8倍、好ましくは3〜6倍」という記載にてらしても極めて狭い範囲であり、本件発明の関係式(I)の規定は技術的かつ臨界的意義のある規定であるとは言えない。』こと、から本件明細書の発明の詳細な説明が、当業者が実施できる程度に記載されておらず、特許法第36条第4項及び第6項の規定に違反する旨主張する。
しかしながら、本件の出願当初の明細書の段落0011には、ホウ素化合物処理前の原反フイルムの一軸延伸(つまり第1段目の延伸)に関して、「該延伸処理における延伸時の温度は30〜70℃であることが好ましい」旨の明示的な記載がある以上、実施例が好ましい態様を示すべき例であって、前記温度範囲に属する実施例を全て開示しなければならないことはないから、本件明細書の発明の詳細な説明が、当業者が実施できる程度に記載されていないとまではいうことはできず、また、「刊行物3の記載にてらしても極めて狭い範囲であり」との上記異議申立人の主張は、そもそも本件発明と刊行物3の発明とは別出願にかかる別発明であるから、本件発明が刊行物3の発明との関係で不備があるとする異議申立人の主張は、理由がない。
(イ)異議申立人クラレは、刊行物3(甲第1号証)との対比で、本件発明の式(I)は必須要件ではなく、有っても無くてもよい要件であるから、刊行物3の記載と矛盾していると解釈することもでき、本件特許明細書の特許請求の範囲および発明の詳細な説明の欄には記載上の不備がある旨を主張している。
しかしながら、本件発明と刊行物3の発明とは別出願にかかる別発明であって、本件発明を刊行物3の発明とを関連付けて主張する異議申立人の主張は、理由がない。異議申立人は、本件発明と刊行物3の発明とは別出願にかかる別発明であるから、本件発明が刊行物3の発明との関係で不備があるとする異議申立人の主張は、理由がない。

[理由B]
本件発明1は、「最終延伸倍率ab倍の偏光フイルムを製造するに当たり」、「下記(I)式を満足するように染色或いはそれ以前の工程において30〜70℃でa倍一軸延伸し、更にホウ素化合物処理工程で40〜60℃でb倍一軸延伸することを特徴とする偏光フイルムの製造法。
0.47≦(a-1)/(ab-1)≦0.94 ・・・ (I)
(但し、2.2≦a≦3.8,b>1)」であることを特徴とするものであるが、刊行物1乃至6には、本件発明が特徴とする上記構成について、開示されていないばかりか、それを示唆する記載もない。そして、本件発明は、この構成により、「偏光性能に優れ、かつ高温時の寸法安定性にも優れた」偏光フィルムを得ることができるという、顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1が刊行物1乃至3に記載された発明であるとすることはできず、また、刊行物1乃至6に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものとすることもできない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また他にこの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
偏光フイルムの製造法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化リチウムおよび有機溶剤を含まないポリビニルアルコール系樹脂水溶液からポリビニルアルコール系樹脂フイルムを製膜し、該フイルムをヨウ素染料又は二色性染料の水溶液に浸漬して染色後、ホウ素化合物の水溶液に浸漬処理して最終延伸倍率ab倍の偏光フイルムを製造するに当たり、
上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液および上記染料の水溶液はいずれもホウ素化合物を含まないこと、
上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液、上記染料の水溶液および上記ホウ素化合物の水溶液はいずれもジルコニウムイオンを含まないこと、および、
下記(I)式を満足するように染色或いはそれ以前の工程において30〜70℃でa倍一軸延伸し、更にホウ素化合物処理工程で40〜60℃でb倍一軸延伸すること
を特徴とする偏光フイルムの製造法。
0.47≦(a-1)/(ab-1)≦0.94 ・・・ (I)
(但し、2.2≦a≦3.8,b>1)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂偏光フイルムの製造法に関し、更に詳しくは、光学耐久性に優れ、かつ耐熱寸法安定性にも優れたポリビニルアルコール系樹脂偏光フイルムの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、卓上電子計算機、電子時計、ワープロ、自動車や機械類の計器類等に液晶表示装置が用いられ、これに伴い偏光板の需要も増大している。
特に、精度な計器類には高偏光度のフイルムが要請されている。
【0003】
現在、知られている代表的な偏光フイルムの一つにポリビニルアルコール系偏光フイルムがあり、該偏光フイルムはポリビニルアルコール系フイルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあり、これはポリビニルアルコールの水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久化処理を行うことによって製造されている。
そこで、上記の如き延伸工程において、より高度の偏光性能をもつフイルムを製造するための本出願人は、ホウ素化合物処理工程中に4.5倍以下で一軸延伸した後、続いて2倍以下で一軸延伸する2段延伸法を提案した。(特願平2-417681号)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法により得られたポリビニルアルコール系偏光フイルムの場合、偏光性能については十分良好なものが得られるものの、高温時の寸法安定性についてはまだまだ改善の余地があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、
ハロゲン化リチウムおよび有機溶剤を含まないポリビニルアルコール系樹脂水溶液からポリビニルアルコール系樹脂フイルムを製膜し、該フイルムをヨウ素染料又は二色性染料の水溶液に浸漬して染色後、ホウ素化合物の水溶液に浸漬処理して最終延伸倍率ab倍の偏光フイルムを製造するに当たり、
上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液および上記染料の水溶液はいずれもホウ素化合物を含まないこと、
上記製膜に供するポリビニルアルコール系樹脂水溶液、上記染料の水溶液および上記ホウ素化合物の水溶液はいずれもジルコニウムイオンを含まないこと、および、
下記(I)式を満足するように染色或いはそれ以前の工程において30〜70℃でa倍一軸延伸し、更にホウ素化合物処理工程で40〜60℃でb倍一軸延伸する場合、
偏光性能に優れ、かつ高温時の寸法安定性に優れた偏光フイルムが得られることを見いだし本発明を完成するに到った。
0.47≦(a-1)/(ab-1)≦0.94 ・・・ (I)
(但し、2.2≦a≦3.8,b>1)
【0006】
本発明のかかる効果は、上記したようにホウ素化合物での処理工程より前にまず30〜70℃で一軸延伸し、ホウ素化合物処理工程で40〜60℃で最終延伸倍率に達するように一軸延伸するという、特定の延伸条件を採用することによって得られるものである。
以下本発明を具体的に説明する。
【0007】
本発明の偏光フイルムは、ハロゲン化リチウムを含まないポリビニルアルコール系樹脂フイルムの一軸延伸フイルムである。かかるポリビニルアルコールは通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していても良い。かかるポリビニルアルコールにおける平均ケン化度は85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%が実用的である。
【0008】
本発明の効果を得るためには、平均重合度が500〜5000のいずれであっても良いが、通常は500〜4000が有利である。
該ポリビニルアルコールは、有機溶剤を含まないポリビニルアルコール系樹脂水溶液から製膜される。ポリビニルアルコールを水に溶解し流延する方法が一般的である。溶液の濃度は5〜20重量%程度が実用的である。原反フイルムとしてその膜厚は40〜120μが適当である。
【0009】
次に、上記の原反フイルムを染色し、ホウ素化合物処理するのであるが、該ホウ素化合物処理をする前に原反フイルムの延伸倍率aとホウ素化合物処理時の延伸倍率bの関係が上記の(I)式の関係を満たすように一軸延伸しておく必要がある。
換言すれば、所望される最終延伸倍率abを基にして、上記の(I)式の関係を満たすように延伸倍率aを設定するのである。
該延伸は、染色の前或いは染色中のいずれでもよい。
該フイルムへのヨード染色つまり偏光素子の吸着は、フイルムに偏光素子を含有する水溶液を接触させることによって行なわれる。通常はヨウ素-ヨウ化カリの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/l、ヨウ化カリの濃度は10〜50g/l、ヨウ素/ヨウ化カリの重量比は20〜100が適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させても差し支えない。
【0010】
このときの接触手段としては、該フイルムを偏光素子の水溶液に浸漬する方法を採用する。
【0011】
本発明におけるホウ素化合物処理前の原反フイルムは上記の如く一軸延伸されるのであるが、そのときのaの倍率は、2.2〜3.8倍の範囲から選択される。
本発明においては、最終延伸倍率abと該延伸倍率aが、上記の(I)式を満足するように延伸することを特徴とするもので、つまり、(I)式の値が0.47〜0.94であることが必須条件である。
該範囲よりも、小さいと耐熱寸法安定性に劣るようになり、逆に大きいと偏光度変化や透過率変化の光学耐久性に劣る。
該延伸処理における延伸時の温度は30〜70℃であることが必要で、処理時間は60〜600秒程度が好ましく、又必要に応じて処理後前に多少の延伸操作を行っても良い。
【0012】
かかる範囲に延伸するにはロール延伸、テンター延伸等の任意の方法が実施されるが、通常は前者が行われる。ロール延伸は一段式、多段式のいずれも実施可能である。
【0013】
このように延伸及び染色処理されたフイルムは、次いでホウ素化合物の水溶液で40〜60℃で処理される。ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ砂が実用的である。ホウ素化合物は水溶液又は水-有機溶媒混合液の形で濃度0.5〜2モル/l程度で用いられ、液中には少量のヨウ化カリを共存させるのが実用上望ましい。処理法は浸漬法が採用される。
該ホウ素化合物処理時に該フイルムは、最終延伸倍率abになるまで再度延伸されて偏光フイルムとなる。
該延伸時においても、ホウ素化合物処理前の延伸方法が同様に採用することができる。
こうして得られた偏光フイルムは、常法に従って適宜洗浄、乾燥、熱処理後その両面あるいは片面に光学的透明度と機械的強度に優れた保護膜を貼合、乾燥して偏光板として使用される。保護膜としては、従来から知られているセルロースアセテート系フイルム、アクリル系フイルム、ポリエスエル系樹脂フイルム、ポリオレフィン系樹脂フイルム、ポリカーボネート系フイルム、ポリエーテルケトン系フイルム、ポリスルホン系フイルムが挙げられる。
【0014】
【作用】
本発明の偏光フイルムは、特別な延伸方法により製造されているため、偏光性能に優れ、かつ高温時の寸法安定性にも優れており、かかる特性を利用して液晶表示体の用途に用いられ、特に車両用途、各種工業計器類、家庭用電化製品の表示等に有用である。
【0015】
【実施例】
次に実例をあげて本発明の偏光フイルムを更に詳しく説明する。
尚、本発明で言う偏光度は次式で示される。
【0016】
〔(H11-H1)/(H11+H1)〕1/2×100(%)
【0017】
ここでH11は2枚の偏光フイルムサンプルの重ね合わせ時において、偏光フイルムの配向方向が同一方向になる様に重ね合わせた状態で分光光度計を用いて測定した透過率(%)、H1は2枚のサンプルの重ね合わせ時において、偏光フイルムの配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で測定した透過率(%)である。
【0018】
参考例1
平均重合度1700、平均ケン化度99.5モル%のポリビニルアルコールを水に溶解し、5.0重量%濃度の水溶液を得た。該液をポリエチレンテレフタレートフイルム上に流延後、乾燥して膜厚60μのフイルムを得た。このフイルムを10cm巾に切断しチャックに装着した。該フイルムをヨウ素0.2g/l、ヨウ化カリ50g/lよりなる水溶液中に30℃にて1.5倍に一軸延伸し、ついでホウ酸60g/l、ヨウ化カリ30g/lの組成の水溶液に浸漬すると共に、40〜60℃の温度にて2.7倍(最終延伸倍率4.05倍)に一軸延伸した。
最後に室温にて24時間乾燥させて本発明の偏光フイルムを得た。
該偏光フイルムの偏光性能を測定するために、該フイルムの両面にアクリル系接着剤を介して膜厚80μのトリアセチルセルロースフイルムを貼着し50℃で乾燥して偏光板を得た。
【0019】
この偏光板の偏光度は99.8%、単体透過率は41.5%であった。
更に、該偏光板を70℃90%RHの条件下に20日間放置した後に同様に測定を行ったところ、偏光度は99.5%、単体透過率は41.8%で、偏光度変化は-0.3%、単体透過率変化は0.3%であった。
また、該偏光フイルム(MD×TD=180mm×25mm)を105℃(ドライ)で2時間放置してMD方向の寸法変化率を測定したところ-1.1%であった。
【0020】
実施例1〜2、参考例2〜3及び比較例1〜3
ホウ素化合物処理前の延伸条件及びホウ素化合物処理時の延伸条件を表1のごとく変化させて、参考例1に準じて偏光フイルムを作製して同様に評価を行った。
但し、実施例1では、染色処理工程前にa倍の延伸処理を行い、参考例3では、染色処理工程後にa倍の延伸処理を行った。又、参考例3、実施例2では平均重合度3800のポリビニルアルコールを用いた。
評価結果を表2に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【発明の効果】
本発明の偏光フイルムは、特別な延伸方法により製造されているため、偏光性能に優れ、かつ高温時の寸法安定性にも優れており、かかる特性を利用して液晶表示体の用途に用いられ、特に車両用途、各種工業計器類、家庭用電化製品の表示等に有用である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-11-17 
出願番号 特願平5-287610
審決分類 P 1 651・ 536- YA (G02B)
P 1 651・ 121- YA (G02B)
P 1 651・ 113- YA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森内 正明  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 末政 清滋
青木 和夫
登録日 2003-01-24 
登録番号 特許第3392196号(P3392196)
権利者 日本合成化学工業株式会社
発明の名称 偏光フイルムの製造法  
代理人 大石 征郎  
代理人 辻 邦夫  
代理人 大石 征郎  
代理人 辻 良子  

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