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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
管理番号 1121059
異議申立番号 異議2003-73010  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-09 
確定日 2004-07-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3415393号「反射型液晶表示装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3415393号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
特許第3415393号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成9年6月6日に出願され、平成15年4月4日に設定登録され、その後、葛城 範子より特許異議の申立がなされ、取消理由通知に対して、平成16年4月26日に訂正請求がなされたものである。
【2】訂正の適否についての判断
【2-1】訂正の要旨
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
a.本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の4〜6行目に記載された「D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光を透過させる赤色のカラーフィルタを有することを特徴とする」とあるのを、
「D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光(ただし、(x,y)が(0.377,0.295)、(0.393,0.289)及び(0.426,0.283)の場合を除く)を透過させる赤色のカラーフィルタを有することを特徴とする」と訂正する。
b.本件明細書の段落0014の4〜7行目に記載された「D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光を透過させる赤色のカラーフィルタを有することを特徴とする」とあるのを、
「D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光(ただし、(x,y)が(0.377,0.295)、(0.393,0.289)及び(0.426,0.283)の場合を除く)を透過させる赤色のカラーフィルタを有することを特徴とする」と訂正する。
【2-2】訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aについて
訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1を減縮するものであり、先行技術としての文献に記載された事項のみを除外するものであるので、特許明細書に記載された範囲内においてする訂正である。
訂正事項bについて
訂正事項aの訂正に伴い、訂正された請求項1との整合をとるためにしたもので、明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。
また、上記訂正事項a,bは実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
【2-3】むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する同法126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
【3】特許異議の申立についての判断
【3-1】本件発明
上記【2】で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のものである。
「【請求項1】液晶層を挟んで対向する一対の基板の一方に反射電極が形成され、他方に透光性の対向電極及び赤、緑、青の三色からなるカラーフィルタが形成された反射型液晶表示装置において、
D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光(ただし、(x,y)が(0.377,0.295)、(0.393,0.289)及び(0.426,0.283)の場合を除く)を透過させる赤色のカラーフィルタを有することを特徴とする反射型液晶表示装置。
【請求項2】D65光源及び2°視野の条件において、前記カラーフィルタの加法混色によって得られる白色のXYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.28≦x≦0.31、及び0.29≦y≦0.33の各式を満たすことを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置。
【請求項3】D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.29≦x≦0.33、及び0.37≦y≦0.43の各式を満たす光を透過させる緑色のカラーフィルタと、0.17≦x≦0.22、及びx+0.04≦y≦x+0.08の各式を満たす光を透過させる青色のカラーフィルタと、を有することを特徴とする請求項1、2記載の反射型液晶表示装置。」
【3-2】刊行物の記載事項
当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物(特開平6-235813号公報、以下、「引用例」という。)には、
「【0010】以下、本発明の構成について更に詳述する。
【0011】図1は反射型のカラー液晶表示装置の一例を示す断面図であり、これによると、2枚のガラス板1,6の間に、Al層2、液晶層3、透明電極ITO4及びカラーフィルター層5を内装した構成となっている。」、
「【0019】 染色終了後、水洗、定着、固着等の後処理を行なう。こうして1色目のフィルター部が出来上がる。
【0020】例えば、3色のフィルターの場合には、以上と全く同様の工程を繰り返して行なうことにより、2色目及び3色目のフィルター部を順次形成する。本発明はフィルターの色数の制限はなく何色のフィルターでも製造することが出来る。」、
「【0026】使用した染色液の配合、染色時間を以下に示す。
(a)配合
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(b)染色時間
赤色 1〜8分
緑色 1〜8分
青色 0.5〜5分」、
「【0028】本発明の製造方法により得られたカラーフィルター及び比較用のカラーフィルターのそれぞれについて染色時間を変えた場合の各色毎の分光特性を図2(赤色,Red)、図3(緑色,Green)及び図4(青色,Blue )に示した。・・・・・・・・・・」
との記載がある。
【3-3】対比・判断
【3-3-1】本件発明1
上記引用例には、その記載及び図1からみて以下の技術事項が記載されている。
「液晶層3を挟んで対向する一対のガラス板1,6の一方にAl層2が形成され、他方に透明電極ITO4及びカラーフィルター層5が形成された反射型液晶表示装置。」(以下、「引用例発明」という。)
ここで、引用例発明における「ガラス板1,6」、「Al層2」、「透明電極ITO4」、「カラーフィルター層5」は、それぞれ本件発明1の「基板」、「反射電極」、「透光性の対向電極」、「赤、緑、青の三色からなるカラーフィルタ」に相当することは明らかであるので、両者は、
「液晶層を挟んで対向する一対の基板の一方に反射電極が形成され、他方に透光性の対向電極及び赤、緑、青の三色からなるカラーフィルタが形成された反射型液晶表示装置」の点で一致し、以下の点で一応相違する。
【相違点1】:本件発明1は、赤色のカラーフィルタが、D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光(ただし、(x,y)が(0.377,0.295)、(0.393,0.289)及び(0.426,0.283)の場合を除く)を透過させるものであるのに対して、引用例発明では、この点につき特に明記されていない点。
ところで、上記引用例の図2(a)には、染色時間1,2または3分のカラーフィルターの赤色部分の分光特性(以下、それぞれ、R1,R2,R3という。)が記載されているところ、該分光特性からそれぞれ計算すると、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)は、R1:(0.377,0.295)、R2:(0.393,0.289)、R3:(0.426,0.283)となる。(異議申立人の提出した、参考資料1の4頁「3.甲第1号証に記載されたカラーフィルターの赤色部の分光特性から計算」〜12頁、及び参考資料2,3を参照。)
この点に関し、特許権者は、請求項1に記載の発明において上記R1〜R3の3座標を除外している。しかしながら、上記引用例の図2(a)において、染色時間は1,2または3分以外にもその中間値の例えば0.5分の場合のものも当然存在するから(青色のカラーフィルタについては0.5〜5分の染色時間となっている。)、図2(a)の分光特性を表す曲線には、単に染色時間が1,2または3分の3本の曲線のみならず、該3本の曲線の間に、例えば、0.5分刻みの染色時間に応じた多数の曲線も含むものと考えられる。そして、R1〜R3の3座標の(x,y)の値は、直線的に増加(x)、あるいは直線的に減少(y)していることから、これら想定された多数の曲線から計算される色度座標(x,y)は、R1〜R3の3座標の近傍の値をとることは明らかであるので、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす蓋然性は極めて高い。
してみると、両者は、色度座標(x,y)である、R1:(0.377,0.295)、R2:(0.393,0.289)及びR3:(0.426,0.283)以外の0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32に含まれる色度座標で、共通する色度座標を有するので、この点で実質的な差異は存在しない。
よって、本件発明1は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号の規定に違反して特許されたものである。
【3-3-2】本件発明2
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて引用し、「前記カラーフィルタの加法混色によって得られる白色のXYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.28≦x≦0.31、及び0.29≦y≦0.33の各式を満たす」との限定を付加したものである。
ところで、上記引用例の図2(a)には、染色時間1,2または3分のカラーフィルターの赤色部分の分光特性(以下、それぞれ、R1,R2,R3という。)、図3(a)には、染色時間1,2または3分のカラーフィルターの緑色部分の分光特性(以下、それぞれ、G1,G2,G3という。)、及び図4(a)には、染色時間3,4または5分のカラーフィルターの青色部分の分光特性(以下、それぞれ、B3,B4,B5という。)が記載されているところ、上記引用例の段落0019,0020にも記載のとおり、各染色は実質的に別工程で行われるものであるから、R、G、Bの組合せに制約はなく、それらの組合せも当業者の設計事項と言うべきである。そして、該分光特性からなる幾つかの組合せの加法混色によって得られる白色の色度座標を計算すると、XYZ表色系色度図におけるそれぞれの色度座標(x,y)は、R1,G1,B3:(0.305,0.315)、R1,G1,B4:(0.302,0.310)、R1,G1,B5:(0.300,0.306)、R1,G2,B3:(0.306,0.324)、R1,G2,B4:(0.303,0.318)、R1,G2,B5:(0.301,0.315)、R1,G3,B3:(0.305,0.328)、R1,G3,B4:(0.302,0.322)、R1,G3,B5:(0.300,0.319)、R2,G1,B3:(0.307,0.314)、R2,G1,B4:(0.305,0.309)、R2,G1,B5:(0.302,0.305)、R2,G2,B3:(0.308,0.324)、R2,G2,B4:(0.305,0.318)、R2,G2,B5:(0.303,0.314)、R2,G3,B3:(0.308,0.328)、R2,G3,B4:(0.305,0.322)、R2,G3,B5:(0.302,0.318)、R3,G1,B4:(0.308,0.308)、R3,G1,B5:(0.305,0.305)、R3,G2,B4:(0.309,0.318)、R3,G2,B5:(0.306,0.314)、R3,G3,B4:(0.308,0.322)、R3,G3,B5:(0.305,0.319)となる。(異議申立人の提出した、参考資料1の28頁「5.加法混色によって得られる白色に関する計算」〜34頁、及び参考資料2,3を参照。)つまり、これら色度座標はいずれも、0.28≦x≦0.31、及び0.29≦y≦0.33の各式を満たしている。
してみると、両者に実質的な差異は存在しない。
よって、本件発明2は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号の規定に違反して特許されたものである。
【3-3-3】本件発明3
本件発明3は、本件発明1または本件発明2の構成をすべて引用し、「XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.29≦x≦0.33、及び0.37≦y≦0.43の各式を満たす光を透過させる緑色のカラーフィルタと、0.17≦x≦0.22、及びx+0.04≦y≦x+0.08の各式を満たす光を透過させる青色のカラーフィルタと、を有する」との限定を付加したものである。
ところで、上記引用例の図3(a)には、染色時間1分のカラーフィルターの緑色部の分光特性(以下、G1という。)は、G1:(0.325,0.376)であり(参考資料1の12頁「4.甲第1号証に記載されたカラーフィルターの緑色部の分光特性からの計算」〜14頁、及び参考資料2,3を参照。)、これは、色度座標(x,y)が、0.29≦x≦0.33、及び0.37≦y≦0.43の各式を満たしている。
また、同じく図4(a)には、染色時間3分のカラーフィルターの青色部の分光特性(以下、B3という。)は、B3:(0.214,0.256)であり(参考資料1の20頁「5.甲第1号証に記載されたカラーフィルターの青色部の分光特性からの計算」〜22頁、及び参考資料2,3を参照。)、これは、色度座標(x,y)が、0.17≦x≦0.22、及びx+0.04≦y≦x+0.08の各式を満たしている。
してみると、両者に実質的な差異は存在しない。
よって、本件発明3は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号の規定に違反して特許されたものである。
【4】むすび
以上のとおり、本件の請求項1〜3に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものに対して特許されたものであるものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
反射型液晶表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 液晶層を挟んで対向する一対の基板の一方に反射電極が形成され、他方に透光性の対向電極及び赤、緑、青の三色からなるカラーフィルタが形成された反射型液晶表示装置において、
D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光(ただし、(x,y)が(0.377,0.295)、(0.393,0.289)及び(0.426,0.283)の場合を除く)を透過させる赤色のカラーフィルタを有することを特徴とする反射型液晶表示装置。
【請求項2】 D65光源及び2°視野の条件において、前記カラーフィルタの加法混色によって得られる白色のXYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.28≦x≦0.31、及び0.29≦y≦0.33の各色を満たすことを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示装置。
【請求項3】 D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.29≦x≦0.33、及び0.37≦y≦0.43の各式を満たす光を透過させる緑色のカラーフィルタと、0.17≦x≦0.22、及びx+0.04≦y≦x+0.08の各式を満たす光を透過させる青色のカラーフィルタと、を有することを特徴とする請求項1、2記載の反射型液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型で低消費電力の反射型液晶表示装置に関し、特に明るく視認性の良い赤色を再現するカラー表示の反射型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から情報端末機器のディスプレイとして液晶表示装置が用いられている。この液晶表示装置は、光源としてのバックライトシステムを塔載し、明るい表示を可能とする透過型のものと、周囲光を反射させて表示を行う反射型のものとがある。
【0003】
上述した透過型液晶表示装置は、明るい表示ができるもののバックライトを搭載しているため重量が大きくなり、かつ消費電力も大きくなる等の問題点があった。これに対し、反射型液晶表示装置は、バックライトを用いる必要がないため、軽量でかつ低消費電力であるといったメリットがある。従って、反射型液晶表示装置は、特に携帯用の情報端末機器のディスプレイに多く用いられている。
【0004】
ところで、反射型液晶表示装置としては、TN、STNモード等によるモノクロ表示のものが多く実用化されている。また、カラー化を実現するために、各画素にRGBのマイクロカラーフィルタを設けた反射型液晶表示装置についても開発が進められている。
【0005】
一般的に反射型の液晶表示装置においては、周囲光がカラーフィルタを2回通過するために、透過型の液晶表示装置に用いられているカラーフィルタをそのまま適用すると、光の透過率が極端に低下し、表示が暗くなってしまうという問題点があった。そのため、従来の反射型液晶表示装置に用いるカラーフィルタは、光の透過率が高いものを用いていた。
【0006】
具体例として、透過型及び反射型の液晶表示装置に用いる赤色のカラーフィルタについて、その波長-透過率特性を示す。図10において、61は透過型液晶表示装置に用いられるカラーフィルタに対応し、62は反射型液晶表示装置に用いられるカラーフィルタに対応する。
【0007】
図10から分かるように、透過型液晶表示装置に用いられる赤色のカラーフィルタが580nm以下の波長領域の光を効率よく吸収しているのに対し、反射型液晶表示装置に用いられる赤色のカラーフィルタは、580nm以下の波長領域の光の透過率が、透過型液晶表示装置に用いられる赤色のカラーフィルタに比べて高くなっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の反射型液晶表示装置に用いられるカラーフィルタでは、明るさを確保するために、580nm以下の波長領域の光の透過率を単に向上させただけであるため、色相が微妙に変化してしまうという問題点があった。このような色相の変化は赤、緑、青の何れのカラーフィルタにも発生し、赤はオレンジ方向に、緑は黄緑方向に、青はシアン方向にそれぞれ変化してしまう。また、これらの加法混色により表示される白色も、黄色や青みがかった表示となってしまう。特に、赤色がオレンジ味を帯びることは視認性を著しく低下させる原因となっていた。
【0009】
また、フルカラー表示を行う場合には、赤、緑、青の色相の変化に伴って色バランスが崩れてしまうため、所望の表示色を再現することができず、表示品位の低下を招いていた。
【0010】
このような色相の変化が生ずる理由について、赤色のカラーフィルタを例にとって説明する。
【0011】
図10の(b)に示したような赤色のカラーフィルタでは、透過率を向上させるために緑色の波長領域(540nm付近)及び青色の波長領域(450nm付近)の光の透過率をほぼ均等に大きくしているので、色相は緑方向及び青方向に若干ずれることになる。青方向へのずれは殆ど問題にされないが、緑方向へのずれは、赤が黄味を帯びるように認識され、その結果、色相がオレンジ方向へ変化して認識されてしまう。
【0012】
上述した色相の変化は、特に赤色及び白色に顕著に表れていた。
【0013】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、色相の変化を抑え、視認性の良好なカラー表示を行うことのできる反射型液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の反射型液晶表示装置は、液晶層を挟んで対向する一対の基板の一方に反射電極が形成され、他方に透光性の対向電極及び赤、緑、青の三色からなるカラーフィルタが形成された反射型液晶表示装置において、D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光(ただし、(x,y)が(0.377,0.295)、(0.393,0.289)及び(0.426,0.283)の場合を除く)を透過させる赤色のカラーフィルタを有することを特徴とするものである。
【0015】
上述した各式を満たす光は、緑の波長領域の光の透過率が低く抑えられているので、色相の変化が生ずることを防ぐことができると共に、青の波長領域の光の透過率が大きくなっているので、明るさを損なうことなく、視認性の良い赤色を再現することが可能となる。
【0016】
また、前記反射型液晶表示装置において、前記カラーフィルタの加法混色によって得られる白色のXYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.28≦x≦0.31、及び0.29≦y≦0.33の各式を満たすように緑色及び青色のカラーフィルタを設定すれば、色付きの無い白色を再現することが可能となる。
【0017】
更に、0.29≦x≦0.33、及び0.37≦y≦0.43の各式を満たす光を透過させる緑色のカラーフィルタと、0.17≦x≦0.22、及びx+0.04≦y≦x+0.08の各式を満たす光を透過させる青色のカラーフィルタと、を有することによって、緑色及び青色についても色相の変化が生ずることを防ぐことができ、視認性の良い緑色及び青色を再現することが可能となる。
【0018】
特に、フルカラー表示を行う場合には、赤、緑、青の色相の変化に伴って色バランスが崩れることが無くなり、所望の色を再現することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図6は本発明の一実施形態である反射型液晶表示装置30の断面図である。一方の基板31には公知の技術を用いてTFT40が形成されている。更に、ここでは凹凸の有機絶縁膜42a、42bを形成し、コンタクトホール43を介してTFT40に電気的に接続されるように反射電極38を形成した。更に、その上には配向膜44が形成されている。
【0021】
もう一方の基板である対向基板の構成は以下の通りである。基板45上には、カラーフィルタ46が形成されている。該カラーフィルタ46は、基板31の反射電極38に対応する領域に赤色、緑色、青色の何れかのカラーフィルタ46aが形成されており、反射電極38に対応しない領域には黒色のフィルタ46bが形成されている。このカラーフィルタ46の全面には、図示しない保護膜が形成され、その上にITO等からなる透明電極47が150nmの厚みに形成され、更にその上には配向膜48が形成されている。
【0022】
このような構成の基板45と前記基板31とは、赤色、緑色、青色のフィルタのうちの一つと反射電極38との位置が一致するように対向して貼り合わされる。
【0023】
液晶層49としては、例えば黒色色素を混入したゲストホスト液晶(メルク社製、商品名ZLI-2327)に、光学活性物質(メルク社製、商品名S811)を4.5%混入させたものを用いる。本実施形態では、図7に示すような電気光学特性を有する液晶を用いて液晶層49を形成した。
【0024】
液晶層は、理想的には暗状態の反射率がより低く、明状態の反射率がより高い光学特性を有するものが望ましい。特に、暗状態の反射率が15%以下であればコントラストが高く、彩度の高い色表示が実現できる。また、明状態の反射率が40%以上であれば、3色のカラーフィルタが適用可能となる。
【0025】
本実施形態では、液晶層にゲストホスト液晶を用いたが、暗状態及び明状態の反射率が上述した程度であれば、その他のTNやSTN等の偏光板を必要とする液晶を用いても構わない。
【0026】
次に、カラーフィルタ46の構成について説明する。カラーフィルタ46は上述したように、色画素を形成する赤色、緑色、青色のカラーフィルタ46a及び遮光部を形成する黒色のフィルタ46bとから構成されている。
【0027】
図1は本実施形態に用いた赤色のカラーフィルタの分光透過率特性11及び従来の反射型液晶表示装置に用いられていた赤色のカラーフィルタの分光透過率特性12を示したものである。この図から分かるように、従来の赤色のカラーフィルタに比べて、緑色の波長領域の光の透過率が抑えられており、青色の波長領域の光の透過率が大きくなっていることが分かる。図1の12で示される分光透過率特性を色度座標(x,y)で示すと(0.392,0.301)となる。なお、カラーフィルタの分光透過率の測定はマイクロカラーアナライザ(大塚電子社製)を使用し、測定条件はD65光源で2°視野の透過率で測定した。なお、透過率は、7059ガラス(コーニング社製)の光の透過率を100%として求めたものである。
【0028】
ここで、D65光源及び2°視野について説明する。
D65光源とは、昼光で照らされている光と同じで、物体色の測定用に用いられている光源であり、図8に示されるような波長成分を有している。なお、このD65光源はCIE,ISOの基準光である。また、2°視野とは、図9の(a)に示すように、人間の目が1°〜4°の視野角度でものを認識するときの感覚のことである。図9の(b)に示すように、4°より大きい視野角度でものを認識するときの感覚は10°視野と呼ばれる。これらの感覚は、何れも人間の色感覚を標準化すべく設けられたものである。
【0029】
次に、赤色のカラーフィルタに対応する反射電極に電圧を印加し、表示画面の明るさ、赤色の視認性を調べた。本実施形態の反射型液晶表示装置に用いた赤色のカラーフィルタは、図1の12に示されるように、緑色の波長領域の光の透過率が抑えられていると共に青色の波長領域の光の透過率が大きくなっているため、色相がオレンジ色に変化することを防ぐことができ、視認性の良い赤色を再現することができた。また、青色の波長領域の光の透過率が大きくなっているので、緑色の波長領域の光の透過率を抑えたことによって全体の透過率が減少し、明るさが損なわれてしまうことを防ぐことができ、明るい表示を行うことができた。
【0030】
このように、明るくかつ視認性の良い赤色を得るためには、XYZ表色系色度図において、図2の斜線領域内の光を透過するカラーフィルタであれば良い。つまり、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光を透過するカラーフィルタであれば良い。
【0031】
この領域よりもxが小さくなってしまうと、表示色が淡くなりぼやけてしまう。また、xが大きくなってしまうと、鮮やかな赤色が表示できるものの表示が暗くなってしまうため、反射型液晶表示装置には適さなくなってしまう。
【0032】
また、前記領域からyの値が外れてしまうと色調バランスが崩れてしまうため、フルカラー表示には適さなくなってしまう。特に、yの値が大きくなってしまうと色相がオレンジに変化し、これが顕著に認識されてしまい、視認性が低下してしまう。
【0033】
なお、前記赤色のカラーフィルタは、XYZ表色系における三刺激値のうち、反射時のYの値が40以上65以下であれば十分な明るさが得られる。
【0034】
(実施の形態2)
実施形態1と同様の構成を有する反射型液晶表示装置において、実施形態1で用いた赤色のカラーフィルタを用いて、緑色及び青色のカラーフィルタの分光特性を、これらの加法混色によって得られる白色が、XYZ表色系における色度座標(x,y)が、図5に示す斜線領域内、つまり0.28≦x≦0.31、及び0.29≦y≦0.33の各式を満たすように設定した。更に、XYZ表色系における三刺激値のうち、Yの値が50以上70以下であれば十分な明るさが得られる。
【0035】
なお、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、ITO等の透明導電薄膜や保護膜等を積層させる必要があるので、これらの薄膜による干渉のため、特に白色の色相が変化することが知られている。したがって、XYZ表色系における理論上の白点は(0.313,0.329)とされているが、この色相の変化分を予め差し引いて図5の斜線領域内に白色を設定することにより、カラーフィルタとして用いたときに色づきの無い良好な白色を再現することができる。
【0036】
本実施形態では、緑色のカラーフィルタを、XYZ表色系における色度座標(x,y)が、図3の斜線領域内の光、つまり0.29≦x≦0.33、及び0.37≦y≦0.43の各式を満たす光を透過させるカラーフィルタとし、青色のカラーフィルタを、XYZ表色系における色度座標(x,y)が、図4に示す斜線領域内の光、つまり0.17≦x≦0.22、及びx+0.04≦y≦x+0.08の各式を満たす光を透過させるカラーフィルタとした。これにより、全面点灯して白表示を行った場合、色づきが無く良好な白色を再現することができた。更に、明るくかつ視認性の良い緑色及び青色を再現することができた。
【0037】
緑色のカラーフィルタについては、図3に示した斜線領域よりもxが小さくなってしまうと色相がシアンに変化し、xが大きくなってしまうと色相が黄緑に変化してしまう。また、yが小さくなってしまうと、表示色が淡くなりぼやけてしまい、yが大きくなってしまうと、鮮やかな緑色が表示できるものの表示が暗くなってしまうため、反射型液晶表示装置には適さなくなってしまう。
【0038】
青色のカラーフィルタについては、図4に示した斜線領域よりもxが小さくなってしまうと、鮮やかな青色が表示できるものの表示が暗くなってしまうため、反射型液晶表示装置には適さなくなってしまう。xが大きくなってしまうと、色相がシアンに変化し、表示色も淡くぼやけてしまう。また、yが小さくなってしまうと色相がマゼンタに変化してしまい、yが大きくなってしまうと色相がシアンに変化してしまう。
【0039】
なお、前記緑色のカラーフィルタは、XYZ表色系における三刺激値のうち、反射時のYの値が75以上90以下であれば十分な明るさが得られ、前記青色のカラーフィルタは、XYZ表色系における三刺激値のうち、反射時のYの値が35以上60以下であれば十分な明るさが得られる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の反射型液晶表示装置は、液晶層を挟んで対向する一対の基板の一方に反射電極が形成され、他方に透光性の対向電極及び赤、緑、青の三色からなるカラーフィルタが形成された反射型液晶表示装置において、D65光源及び2°視野の条件において、XYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.37≦x≦0.43、及び0.28≦y≦0.32の各式を満たす光を透過させる赤色のカラーフィルタを有しているので、色相の変化が生ずることを防ぐことができると共に、明るく視認性の良い赤色を再現することができるという効果を奏する。
【0041】
また、前記反射型液晶表示装置において、前記カラーフィルタの加法混色によって得られる白色のXYZ表色系色度図における色度座標(x,y)が、0.28≦x≦0.31、及び0.29≦y≦0.33の各式を満たすように緑色及び青色のカラーフィルタを設定することによって、色付きの無い白色を再現することができるという効果を奏する。
【0042】
更に、0.29≦x≦0.33、及び0.37≦y≦0.43の各式を満たす光を透過させる緑色のカラーフィルタと、0.17≦x≦0.22、及びx+0.04≦y≦x+0.08の各式を満たす光を透過させる青色のカラーフィルタと、を有することによって、緑色及び青色についても色相の変化が生ずることを防ぐことができ、視認性の良い緑色及び青色を再現することができるという効果を奏する。特に、フルカラー表示を行う場合には、赤、緑、青の色相の変化に伴って色バランスが崩れることが無くなり、所望の色を再現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による赤色のカラーフィルタの分光透過率特性を示した図である。
【図2】
本発明による赤色のカラーフィルタの色度座標を示した図である。
【図3】
本発明による緑色のカラーフィルタの色度座標を示した図である。
【図4】
本発明による青色のカラーフィルタの色度座標を示した図である。
【図5】
本発明によるカラーフィルタ単体による加法混色によって得られる白色の色度座標を示した図である。
【図6】
本発明の反射型液晶表示装置の断面構成図である。
【図7】
本発明の反射型液晶表示装置に用いる液晶層の電気光学特性を示した図である。
【図8】
D65光源の分光分布図である。
【図9】
2°視野及び10°視野を説明した図である。
【図10】
従来の液晶表示装置に用いられている赤色のカラーフィルタの分光透過率特性を示した図である。
【符号の説明】
11 本発明の反射型液晶表示装置に用いる赤色のカラーフィルタ
12 従来の反射型液晶表示装置に用いる赤色のカラーフィルタ
30 反射型液晶表示装置
31 基板
38 反射電極
40 TFT
42 有機絶縁膜
43 コンタクトホール
44 配向膜
45 基板
46 カラーフィルタ
49 液晶層
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-25 
出願番号 特願平9-148760
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G02F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 瀧本 十良三
特許庁審判官 山下 崇
平井 良憲
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3415393号(P3415393)
権利者 シャープ株式会社
発明の名称 反射型液晶表示装置  
代理人 田畑 昌男  
代理人 小池 隆彌  
代理人 田畑 昌男  
代理人 小池 隆彌  

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