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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01C
管理番号 1121065
異議申立番号 異議2003-73815  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-05-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3459666号「田植機の操作構造」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3459666号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3459666号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年8月5日に特許出願され、平成15年8月8日にその発明について特許権の設定がなされた後、その特許について、井関農機株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由を通知したところ、その指定期間内である平成16年9月30日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許明細書(平成15年6月20日付けで補正された明細書)を以下のaないしhのように訂正する(下線部は訂正個所である。)。
訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の
「走行機体(1)に備えられた苗植付装置(3)を昇降駆動するリフトシリンダ(4)と、前記苗植付装置(3)を作動及び停止状態とする植付クラッチ(12)とを備えて、
機体操縦部のステアリングハンドル(23)の下側に、人為的に操作される操作具(36)を備え、前記操作具(36)の向きを平面視で横外方向きに設定して、前記操作具(36)を中立位置から上下方向に操作するように構成し、前記操作具(36)が中立位置に戻し付勢されるように構成すると共に、
前記植付クラッチ(12)の切り操作を伴って前記苗植付装置(3)を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、前記苗植付装置(3)を接地するまで下降させる下降作動、及び前記植付クラッチ(12)を入り操作する植付クラッチ入り作動が、前記操作具(36)を上下方向に操作することによって行われるように構成してある田植機の操作構造。」の記載を、
「走行機体(1)に備えられた苗植付装置(3)を昇降駆動するリフトシリンダ(4)と、前記苗植付装置(3)を作動及び停止状態とする植付クラッチ(12)とを備えて、
機体操縦部のステアリングハンドル(23)の下側に、人為的に操作される操作具(36)を備え、前記操作具(36)の向きを平面視で横外方向きに設定して、前記操作具(36)を中立位置から上下方向に操作するように構成し、前記操作具(36)が付勢手段により中立位置に戻し付勢されるように構成すると共に、
前記植付クラッチ(12)の切り操作を伴って前記苗植付装置(3)を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、前記苗植付装置(3)を接地するまで下降させる下降作動、及び前記植付クラッチ(12)を入り操作する植付クラッチ入り作動が、前記操作具(36)を上下方向に操作することによって行われるように構成し、前記操作具(36)により前記苗植付装置(3)を上昇作動させる操作をした後、当該操作具(36)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置(3)の上昇が継続され、前記操作具(36)により前記苗植付装置(3)を下降作動させる操作をした後、当該操作具(36)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置(3)の下降が継続され、又、当該操作具(36)により前記植付クラッチ(12)を入り作動させる操作をした後、当該操作具(36)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記植付クラッチ(12)の入り状態を保っているとともに、苗を植付けている前進走行作業状態のときに変速レバー(16)の操作により走行機体(1)が後進することを検出すると、この検出に基づいて前記植付クラッチ(12)が切り操作されるとともに前記苗植付装置(3)が上昇駆動されることを特徴とする田植機の操作構造。」に訂正する。

訂正事項b
特許明細書の段落【0006】(特許公報第2頁第4欄第3-16行)の記載を、
「【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は田植機の操作構造において次のように構成することにある。
走行機体に備えられた苗植付装置を昇降駆動するリフトシリンダと、苗植付装置を作動及び停止状態とする植付クラッチとを備える。機体操縦部のステアリングハンドルの下側に、人為的に操作される操作具を備え、操作具の向きを平面視で横外方向きに設定して、操作具を中立位置から上下方向に操作するように構成し、操作具が付勢手段により中立位置に戻し付勢されるように構成する。植付クラッチの切り操作を伴って苗植付装置を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、苗植付装置を接地するまで下降させる下降作動及び植付クラッチを入り操作する植付クラッチ入り作動が操作具を上下方向に操作することによって行われるように構成し、前記操作具により前記苗植付装置を上昇作動させる操作をした後、当該操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置の上昇が継続され、前記操作具により前記苗植付装置を下降作動させる操作をした後、当該操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置の下降が継続され、又、当該操作具により前記植付クラッチを入り作動させる操作をした後、当該操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記植付クラッチの入り状態を保っているとともに、苗を植付けている前進走行作業状態のときに変速レバーの操作により走行機体が後進することを検出すると、この検出に基づいて前記植付クラッチが切り操作されるとともに前記苗植付装置が上昇駆動されることを特徴とする。」に訂正する。

訂正事項c
特許明細書の段落【0008】の末尾(特許公報第2頁第4欄第43行目)に、
「そして、苗植付装置の上昇は操作具を操作した後、操作具から手を離し操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で苗植付装置が最大上昇位置に上昇するまで継続される。」を挿入する。

訂正事項d
特許明細書の段落【0010】の末尾(特許公報第3頁第5欄第13行目)に、
「そして、苗植付装置の下降は操作具を操作した後、操作具から手を離し操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で苗植付装置が接地するまで継続される。」を挿入する。

訂正事項e
特許明細書の段落【0016】の末尾(特許公報第3頁第6欄第13行目)に、
「又、請求項1の特徴によると、操作具により苗植付装置を上昇作動させる操作をした後、操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で苗植付装置の上昇が継続され、操作具により苗植付装置を下降作動させる操作をした後、操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で苗植付装置の下降が継続され、又、操作具により植付クラッチを入り作動させる操作をした後、操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で植付クラッチの入り状態を保っている。そして、苗を植付けている前進走行作業状態のときに変速レバーの操作により走行機体が後進することを検出すると、この検出に基づいて植付クラッチが切り操作されるとともに苗植付装置が上昇駆動される。」を挿入する。

訂正事項f
特許公報第6頁第11欄第39行目)の
「ステップ#19」を「ステップ#10」に訂正する。

訂正事項g
特許公報第6頁第12欄第45行目)の
「ステップ#56〜#60」を「ステップ#57〜#60」に訂正する。

訂正事項h
図13の
「ステップ#43」の「DWSOL:OFF」を「DWSOL:ON」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許明細書における特許請求の範囲に、同特許明細書の段落【0030】、【0040】、【0045】〜【0048】の記載に基く限定構成を付加することにより、特許請求の範囲の記載をより下位の概念に限定する、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当しており、また訂正事項bないしeは訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に、訂正事項fないしhは誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に、それぞれ該当しており、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
特許異議申立人井関農機株式会社は、証拠方法として下記の甲第1号証及び甲第2号証を提示し、本件の請求項1に係る発明は甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである旨主張している。
甲第1号証:特開平2-100607号公報
甲第2号証:実願昭50-155294号(実開昭52-67814号)の 願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィ ルム
また、同特許異議申立人は、本件請求項1に記載された構成は、実施例の構成と異なるものを特定したものであるから、本件の明細書の記載は、特許法第36条第3項ないし第5項の規定に違反しており、本件発明の特許は取り消されるべきである旨主張している。

(2)本件の請求項1に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのつぎのものである。
「走行機体(1)に備えられた苗植付装置(3)を昇降駆動するリフトシリンダ(4)と、前記苗植付装置(3)を作動及び停止状態とする植付クラッチ(12)とを備えて、
機体操縦部のステアリングハンドル(23)の下側に、人為的に操作される操作具(36)を備え、前記操作具(36)の向きを平面視で横外方向きに設定して、前記操作具(36)を中立位置から上下方向に操作するように構成し、前記操作具(36)が付勢手段により中立位置に戻し付勢されるように構成すると共に、
前記植付クラッチ(12)の切り操作を伴って前記苗植付装置(3)を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、前記苗植付装置(3)を接地するまで下降させる下降作動、及び前記植付クラッチ(12)を入り操作する植付クラッチ入り作動が、前記操作具(36)を上下方向に操作することによって行われるように構成し、前記操作具(36)により前記苗植付装置(3)を上昇作動させる操作をした後、当該操作具(36)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置(3)の上昇が継続され、前記操作具(36)により前記苗植付装置(3)を下降作動させる操作をした後、当該操作具(36)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置(3)の下降が継続され、又、当該操作具(36)により前記植付クラッチ(12)を入り作動させる操作をした後、当該操作具(36)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記植付クラッチ(12)の入り状態を保っているとともに、苗を植付けている前進走行作業状態のときに変速レバー(16)の操作により走行機体(1)が後進することを検出すると、この検出に基づいて前記植付クラッチ(12)が切り操作されるとともに前記苗植付装置(3)が上昇駆動されることを特徴とする田植機の操作構造。」
(3)特許法第29条第2項違反について
(3-1) 引用刊行物に記載の発明
引用刊行物
刊行物1:実公昭63-29373号公報
刊行物2:特開平2-100607号公報(甲第1号証) 刊行物3:実願昭50-155294号(実開昭52-67814号)の 願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィ ルム(甲第2号証)
当審が通知した取り消しの理由で引用した上記の刊行物1ないし3には、つぎの発明が記載されていると認められる。
刊行物1:実公昭63-29373号公報
刊行物1には、つぎの記載が認められる。
1-a「運転席3を備えた車体の前部又は後部に、・・・苗のせ台5を備えた苗植付装置を、駆動装置10によって昇降駆動されるリンク機構9を介して昇降可能に連結し・・・た乗用型田植機。」(実用新案登録請求の範囲)
1-b「エンジンEの出力が伝達される走行ミッションケース22内に、前記苗植付部の駆動を断続する入り姿勢の植付クラッチ・・・を設け、・・・電磁力にて短縮状態に操作保持可能な電磁操作式伸縮体23を、前記植付クラッチの揺動操作アーム24に対して、それを付勢力に抗して入り位置(ON)から切り位置(OFF)に揺動操作できるように連結し、もって、前記伸縮体23を短縮状態に切換えることにより、前記苗植付部を停止できるように構成してある。・・・ステアリングハンドル4の支柱に、前記両伸縮体16,23及び前記両電磁ソレノイド21,21の起動スイッチを内装するスイッチケース25を取付け、スイッチ操作レバー26を、前記ケース25に対して、上方位置Aと下方位置Bとに上下揺動可能に・・・枢支し、そして、レバー26を上方位置Aに揺動させると、前記両伸縮体16,23を作動させて前記苗植付部を上昇操作させるとともに前記植付クラッチを切り操作し、下方位置Bに揺動させると、前記両伸縮体16,23の作動を停止させて前記苗植付部を前記フロート7の情報に基づいて自動昇降操作させるとともに前記植付クラッチを入り操作し、・・・前記レバー26と前記ケース25内の各スイッチとを連係し、もって、1つのレバー26の揺動操作にて、苗植付部昇降操作、植付クラッチ入切操作・・・を容易且つ迅速に行なえるようにしてある。」(第2頁第4欄第33行-第3頁第5欄第23行)
上記記載より、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「駆動装置10によって昇降駆動されるリンク機構9を介して苗植付装置を車体に昇降可能に連結し、苗植付部の駆動を断続する植付クラッチを設け、ステアリングハンドル4の支柱にスイッチケース25を取付け、スイッチ操作レバー26を前記スイッチケース25に対して上方位置Aと下方位置Bとに上下揺動可能に枢支し、スイッチ操作レバー26を上方位置Aに揺動させると、前記苗植付部を上昇操作させるとともに前記植付クラッチを切り操作し、下方位置Bに揺動させると、前記苗植付部をフロート7の情報に基づいて自動昇降操作させるとともに前記植付クラッチを入り操作するように、前記スイッチ操作レバー26と前記スイッチケース25内の各スイッチとを連係し、もって、1つのスイッチ操作レバー26の揺動操作にて、苗植付部昇降操作、植付クラッチ入切操作を容易且つ迅速に行なえるようにしてある、乗用型田植機。」(以下、これを「刊行物1の発明」という。)

刊行物2:特開平2-100607号公報(甲第1号証)
刊行物2には、つぎの記載が認められる。
2-a「作業装置(4)に伝達される動力を伝達入状態と伝達切状態とに切換える作業クラッチ(13)に対して、クラッチ入操作機構とクラッチ切操作機構とを設けると共に、人為操作具(8)のクラッチ入側への操作により前記クラッチ入操作機構が操作されるように、人為操作具(8)のクラッチ切側への操作により前記クラッチ切操作機構が操作されるように、人為操作具(8)とクラッチ入操作機構及びクラッチ切操作機構とを連係し・・・てある農作業機の作業クラッチ構造。」(特許請求の範囲)
2-b「本発明は・・・作業装置の位置変更操作と作業クラッチの入操作を連続して行うような場合において、作業装置が所定位置に達するまでに作業クラッチが入状態となってしまうような事態を防止することを目的としている。」(第2頁左上欄第5-10行)
2-c「操作レバー(8)を上昇位置(U)に操作すると、制御装置(12)により油圧シリンダ(6)に対する制御弁(9)が作動油供給側に操作され苗植付装置(4)が上昇操作されるのであり、操作レバー(8)を下降位置(D)に操作すると制御弁(9)が排油側に操作されて苗植付装置(4)が下降して行く。又、(N)は中立停止位置である。」(第2頁左下欄第19行-右下欄第6行)
2-d「操作レバー(8)を植付位置(A)に操作すると切換弁(14)がクラッチ入側(14b)(排油側)に操作されて・・・植付クラッチ(13)が入状態となるのである。」(第3頁右上欄第19行-左下欄第11行)
2-e「この操作レバー(8)の軸芯(P3)周りの揺動操作によって」(第3頁右下欄第4-5行)
上記記載及び図2を参酌すると、刊行物2には以下の発明が記載されていると認められる。
「作業装置の位置変更操作と作業クラッチの入り操作を連続して行うような場合において、操作レバー(8)の軸芯(P3)周りの揺動操作によって、操作レバー(8)を中立停止位置(N)から上昇位置(U)に操作すると、制御装置(12)により苗植付装置(4)が上昇操作され、操作レバー(8)を下降位置(D)に操作すると苗植付装置(4)が下降し、植付位置(A)に操作すると切換弁(14)がクラッチ入側(14b)に操作されて植付クラッチ(13)が入状態となる、農作業機の作業クラッチ構造。」(以下、これを「刊行物2の発明」という。)

刊行物3:実願昭50-155294号(実開昭52-67814号)の願 書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム (甲第2号証)
刊行物3には、つぎの記載が認められる。
3-a「トラクター1の操縦部に設けられた上下揺動操作具9の上方への揺動操作により、ロータリー装置2を大きく持ち上げるべく上昇限度迄上昇作動するように構成されるとともに、この上下揺動操作具9の下方への揺動操作により、ロータリー装置2を所要上下昇降設定位置すなわち所要耕耘設定位置まで下降させる」(第3頁第13-20行)
また当審における上記の取消理由において例示した周知例はつぎのものである。
周知例1:実願昭53-107013号(実開昭55-23077号)の願 書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
「トラクタ(2)に昇降自在に装着した対地作業装置(1)を・・・自動昇降する制御形態と、人為的に発せられた昇降指令によって前記対地作業装置(1)を昇降させる形態とに切換える機構・・・を装備するとともに、該切換え機構・・・を前記自動昇降制御形態に切換えた状態において、この制御形態を維持する第1操作位置(l1)と、・・・強制的に上昇させる第2操作位置(l2)とに切換え保持可能な揺動操作レバー(24)を設けた対地作業機において、・・・人為昇降形態に切換えた状態における上昇指令発生用の第3操作位置(l3)と下降指令発生用の第4操作位置(l4)へ切換え可能に構成するとともに、第3,第4操作位置(l3),(l4)から中立保持位置(n)へは自動復帰させるべく構成し、更に、前記操作レバー(24)を前記第1操作位置(l1)から・・・対地作業装置(1)を強制的に下降させる第5操作位置(l5)に操作可能とするとともに、この位置(l5)から第1操作位置(l1)へ自動復帰させるべく構成してあることを特徴とする対地作業機。」(実用新案登録請求の範囲)、と記載されている。
周知例2:実願昭52-1066号(実開昭53-96517号)の願書に 添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
「トラクタ(2)に対して対地作業装置(1)を昇降駆動自在に連結するとともに、対地作業装置(1)を昇降制御する対地作業形態を複数に切換え可能に構成した対地作業機において、トラクタ(2)の操縦部近くに設けた1本の揺動操作レバー(28)にレバー軸心周りに回動可能な操作部(26)を設け、操作レバー(28)の揺動操作並びに操作部(26)の回動操作にて、前記昇降制御形態の切換え並びに人為昇降切換えを行うべく構成してあることを特徴とする対地作業機。」(実用新案登録請求の範囲)、
「操作レバー(28)は、基端部を中心に上下並びに前後揺動自在に構成され、かつ、中立位置(N)と上方揺動位置(U)とが不安定切換機構により二位置に切換え、かつ切換え位置保持可能に構成されている。・・・又、操作レバー(28)を中立位置(N)より下方及び前後に揺動させる場合に、その操作力を解除すると、操作レバー(28)は中立位置(N)に自動的に復帰すべく構成され」(第8頁第18行-第9頁第15行)、と記載されている。
周知例3:特開昭53-86303号公報
「一本の揺動操作レバー(16)を上下2位置に切換え、その位置を保持可能に構成するとともに、レバー下方位置(N)では、機体(2)に対する対地作業装置(1)の目標作業深さ設定を維持する自動状態となし、レバー上方位置(U)では対地作業装置(1)を上昇限界位置まで強制上昇させる強制上昇状態となすべく構成した対地作業機において、前記操作レバー(16)を前記下方位置(N)よりも更に下方に揺動可能に、かつ前記下方位置(N)に自動復帰させるべく構成し・・・てあることを特徴とする対地作業装置。」(特許請求の範囲)、と記載されている。

(3-2) 当審の判断
本件発明と刊行物1の発明とを対比すると、両者は共に田植機であって、刊行物1の発明における「車体に苗植付装置を連結」は、本件発明における「走行機体に備えられた苗植付装置」に対応し、以下同様に「駆動装置によって昇降駆動される」は「昇降駆動するリフトシリンダ」に、「苗植付部の駆動を断続する植付クラッチ」は「苗植付装置を作動及び停止状態とする植付クラッチ」に、「スイッチ操作レバー」は「人為的に操作される操作具」に、それぞれ対応している。
ここで、刊行物1の発明における「スイッチ操作レバー26」は、「ステアリングハンドル4の支柱にスイッチケース25を取付け、スイッチ操作レバー26を、前記スイッチケース25に対して、上方位置Aと下方位置Bとに上下揺動可能に枢支し」たものであり、さらに刊行物1の図面第4図を参照すると、該「スイッチ操作レバー26」は、機体操縦部である「ステアリングハンドル4」の下側において、平面視で横外方向きに、「上下揺動可能に枢支」されているといえる。そうすると、刊行物1の発明は本件発明の構成である「機体操縦部のステアリングハンドルの下側に、人為的に操作される操作具を備え、前記操作具の向きを平面視で横外方向きに設定して、前記操作具を上下方向に操作するように構成し」の構成に対応する構成を実質的に備えているといえる。
また刊行物1の発明は、「スイッチ操作レバー26を上方位置Aに揺動させると、前記苗植付部を上昇操作させるとともに植付クラッチを切り操作」するように構成されているから、本件発明の構成である、「植付クラッチの切り操作を伴って前記苗植付装置を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動(が、前記操作具を上下方向に操作することによって行われるように構成)」の構成に対応する構成を備えているといえる。
さらに、刊行物1の発明は、「(スイッチレバー26を)下方位置Bに揺動させると、前記苗植付部をフロート7の情報に基づいて自動昇降操作させる」ように構成されているから、本件発明の構成である、「前記苗植付装置(3)を接地するまで下降させる下降作動(が、前記操作具を上下方向に操作することによって行われるように構成)」に対応する構成を備えているとともに、同刊行物1の発明は、「(スイッチ操作レバー26を下方位置Bに揺動させることにより)前記植付クラッチを入り操作する」ように構成されているから、本件発明の構成である、「前記植付クラッチを入り操作する植付クラッチ入り作動(が、前記操作具を上下方向に操作することによって行われるように構成)」に対応する構成を備えているといえる。
そうすると、両者は以下の点で一致し、また相違していると認められる。
一致点;
走行機体に備えられた苗植付装置を昇降駆動するリフトシリンダと、前記苗植付装置を作動及び停止状態とする植付クラッチとを備えて、機体操縦部のステアリングハンドルの下側に、人為的に操作される操作具を備え、前記操作具の向きを平面視で横外方向きに設定して、前記操作具を上下方向に操作するように構成し、前記植付クラッチの切り操作を伴って前記苗植付装置を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、前記苗植付装置を接地するまで下降させる下降作動、及び前記植付クラッチを入り操作する植付クラッチ入り作動が、前記操作具を上下方向に操作することによって行われるように構成してある田植機の操作構造、である点。
相違点:
a.本件発明は、操作具が付勢手段により中立位置に戻し付勢されるように構成したものであり、操作具により苗植付装置を上昇作動させる操作をした後、当該操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置の上昇が継続され、前記操作具により前記苗植付装置を下降作動させる操作をした後、当該操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置の下降が継続され、又、当該操作具により植付クラッチを入り作動させる操作をした後、当該操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記植付クラッチの入り状態を保っているものであるのに対して、刊行物1の発明はレバー(操作具)が付勢手段により中立位置に戻し付勢されるように構成したものであるか不明であり、レバー(操作具)により苗植付装置を上昇作動させる操作をした後、当該レバー(操作具)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置の上昇が継続され、前記レバー(操作具)により前記苗植付装置を下降作動させる操作をした後、当該レバー(操作具)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置の下降が継続され、又、当該レバー(操作具)により植付クラッチを入り作動させる操作をした後、当該レバー(操作具)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記植付クラッチの入り状態を保っているものであるかどうか不明である点。
b.本件発明では、苗を植付けている前進走行作業状態のときに変速レバーの操作により走行機体が後進することを検出すると、この検出に基づいて植付クラッチが切り操作されるとともに苗植付装置が上昇駆動されるものであるのに対して、刊行物1の発明では、苗を植付けている前進走行作業状態のときに変速レバーの操作により走行機体が後進することを検出する構成を備えておらず、検出に基づいて植付クラッチが切り操作されるとともに苗植付装置が上昇駆動されるものではない点。
上記の相違点について検討する。
a.の相違点について刊行物2及び3をみると、刊行物2の発明は「苗植付装置(4)」の昇降操作及び「植付クラッチ(13)」の入切操作を行う「操作レバー(8)」を「中立停止位置(N)」に設定することが可能であるが、付勢手段により上記「中立停止位置(N)」に戻し付勢されるようには構成されておらず、まして「中立停止位置(N)」に復帰した状態で「苗植付装置(4)」の上昇又は下降が継続され、又、「操作レバー(8)」により「植付クラッチ(13)」を入り作動させる操作をした後、「操作レバー(8)」が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記「植付クラッチ(13)」の入り状態を保っているものではない。また刊行物3には、「上下揺動操作具9」の上下揺動操作によって「ロータリー装置2」を昇降操作することが記載されているが、該「上下揺動操作具9」は中立位置に戻し付勢されるようには構成されておらず、まして中立位置に復帰した状態で作業機である「ロータリー装置2」の上昇又は下降が継続されるようには構成されていないとともに、作業機のクラッチとの関係も不明である。そこで、さきの取り消しの理由において、機体に昇降自在に装着した作業装置を昇降させる揺動操作レバーを、中立位置から上下方向に操作するように構成するとともに、中立位置に戻し付勢されるように構成することが周知であるとして例示した上記の周知例1ないし3をみると、これらの周知例は、揺動操作レバーを中立位置に戻し付勢する付勢手段を備えてはいるが、揺動操作レバーが中立位置に復帰した状態で作業機の昇降が継続されるわけではなく、揺動操作レバーにより作業機のクラッチを入り切りするようには構成されていない。
したがって、周知技術を参酌したとしても、当業者がa.の相違点に係る構成を容易に想到することができたとすることはできないから、b.の相違点について検討するまでもなく、本件発明は刊行物1ないし3の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)特許法第36条違反について
特許異議申立人は、本件請求項1に記載された、「植付クラッチ(12)の切り操作を伴って前記苗植付装置(3)を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動」の構成、特に、「植付クラッチ(12)の切り操作を伴って」の構成は、「実施例の構成と異なるものを特定したものであって、出願当初の明細書の要旨を変更するもの」であるから、本件の明細書の記載は、特許法第36条第3項ないし第5項の規定に違反する旨を主張する。
よって検討するに、出願当初の明細書の段落【0016】には、「・・・又、昇降操作スイッチ操作時にリンクスイッチ38がオフ状態であれば、植付クラッチ12を切り操作して、リンクスイッチ38がオン状態になるまで上昇操作させる〔ステップ49〜54〕。・・・」と記載されており、同じく段落【0010】によれば、「苗植付装置3が最大上昇位置まで上昇したことの検出」は、「リンクスイッチ38にリンク機構2の途中部が接当作用することで検出されるよう構成してある」ことが記載されている。さらに 段落【0015】には、「操作レバー32が『上昇位置』Uに操作されると、クラッチ入り信号STRをオフ状態にし、自動昇降制御用動作フラグf2を『0』に設定した後、クラッチオフスイッチ29がオンであればクラッチ切り信号STPをオフ状態にして、リンクスイッチ38がオン状態〔苗植付装置3が上昇状態〕であれば上昇用電磁ソレノイドUPSolをオフし、リンクスイッチ38がオフ状態であれば上昇用電磁ソレノイドUPSolをオン操作させ苗植付装置3を上昇させる〔ステップ11〜17〕。クラッチオフスイッチ29がオンでなければクラッチ切り信号STPをオンさせてクラッチモータ27により植付クラッチ12を切り操作させ、上昇、下降用ソレノイドUPSol,DWSolをオフさせる〔ステップ18、19〕。」と記載されている。これらの記載によれば、「苗植付装置(3)を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動」を行う際には「植付クラッチ(12)」は「切り操作」されることが明らかであるから、本件の特許明細書の請求項1における上記記載は、明細書に実施例として記載されている構成であり、また明細書の要旨を変更するものではないから、特許異議申立人の上記主張は理由がない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなけらばならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
田植機の操作構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行機体(1)に備えられた苗植付装置(3)を昇降駆動するリフトシリンダ(4)と、前記苗植付装置(3)を作動及び停止状態とする植付クラッチ(12)とを備えて、
機体操縦部のステアリングハンドル(23)の下側に、人為的に操作される操作具(36)を備え、前記操作具(36)の向きを平面視で横外方向きに設定して、前記操作具(36)を中立位置から上下方向に操作するように構成し、前記操作具(36)が付勢手段により中立位置に戻し付勢されるように構成すると共に、
前記植付クラッチ(12)の切り操作を伴って前記苗植付装置(3)を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、前記苗植付装置(3)を接地するまで下降させる下降作動、及び前記植付クラッチ(12)を入り操作する植付クラッチ入り作動が、前記操作具(36)を上下方向に操作することによって行われるように構成し、前記操作具(36)により前記苗植付装置(3)を上昇作動させる操作をした後、当該操作具(36)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置(3)の上昇が継続され、前記操作具(36)により前記苗植付装置(3)を下降作動させる操作をした後、当該操作具(36)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置(3)の下降が継続され、又、当該操作具(36)により前記植付クラッチ(12)を入り作動させる操作をした後、当該操作具(36)が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記植付クラッチ(12)の入り状態を保っているとともに、苗を植付けている前進走行作業状態のときに変速レバー(16)の操作により走行機体(1)が後進することを検出すると、この検出に基づいて前記植付クラッチ(12)が切り操作されるとともに前記苗植付装置(3)が上昇駆動されることを特徴とする田植機の操作構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は田植機において、苗植付装置の昇降操作の構造、苗植付装置を作動及び停止状態とする植付クラッチの操作の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
田植機では、走行機体に備えられた苗植付装置を昇降駆動するリフトシリンダが備えられて、リフトシリンダを任意に作動させるもので植付クラッチを操作できる操作レバーが、機体操縦部の横外側部(例えば機体操縦部の運転座席の横外側)に配置されたものが多くある。
これにより、操縦者が操作レバーを操作することによって、苗植付装置を任意の高さに昇降させることができるのであり、植付クラッチを入り及び切り操作することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
田植機の作業走行中では一般に、機体操縦部の操縦者は前方に位置するステアリングハンドルを手で持っていることが多いので、植付クラッチを入り及び切り操作して苗植付装置を作動及び停止状態としたり、苗植付装置を上昇及び下降させたりする場合、従来の技術に記載の構造であると、操縦者は前方のステアリングハンドルから手を離し、機体操縦部の横外側部まで手を後方に移動させて、操作レバーを操作する必要がある。
田植機では例えば一回の作業行程が終了して走行機体が作業地の端部に達した場合、植付クラッチを切り操作して苗植付装置を停止状態とし、苗植付装置を上昇させて、走行機体を作業地の端部で旋回させ、作業地の端部での旋回が終了すると、苗植付装置を下降させて、植付クラッチを入り操作して苗植付装置を作動状態とし、次の作業行程に入ると言うような操作を行うことがある。
【0004】
これにより、従来の技術に記載のようにリフトシリンダの作動及び植付クラッチの操作を行う操作レバーが、機体操縦部の横外側部に配置されていると、一回の作業行程が終了して走行機体が作業地の端部に達した際、操縦者は前方のステアリングハンドルから手を離して、機体操縦部の横外側部まで手を後方に移動させ、操作レバーを操作して植付クラッチを切り操作し、苗植付装置を上昇させ、手を再び前方のステアリングハンドルに移動させて、ステアリングハンドルによる走行機体の旋回操作を行う必要がある。
次に、作業地の端部での旋回が終了すると、操縦者は前方のステアリングハンドルから手を離して、機体操縦部の横外側部まで手を後方に移動させ、操作レバーを操作して苗植付装置を下降させ、植付クラッチを入り操作して、手を再び前方のステアリングハンドルに移動させて、ステアリングハンドルを持つ必要がある。
【0005】
このように操縦者は苗植付装置の上昇及び下降、植付クラッチの入り及び切り操作を行う為に、手を前方(ステアリングハンドル)から後方(機体操縦部の横外側部の操作レバー)に移動させ、後方から再び前方に移動させなければならないので、操縦者にとって煩わしい状態となっている。
又、前述のように手を移動させる必要があると、植付クラッチを切り操作し苗植付装置を上昇させてから、ステアリングハンドルによる走行機体の旋回操作が遅れることがあり、これによって走行機体の旋回半径が大きくなって、次の作業行程に入る際に前回の作業行程に隣接する位置に、走行機体を持って行き難くなることがある。
本発明は田植機の操作構造において、苗植付装置の上昇及び下降、植付クラッチの入り及び切り操作が容易に行えるように構成することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は田植機の操作構造において次のように構成することにある。
走行機体に備えられた苗植付装置を昇降駆動するリフトシリンダと、苗植付装置を作動及び停止状態とする植付クラッチとを備える。機体操縦部のステアリングハンドルの下側に、人為的に操作される操作具を備え、操作具の向きを平面視で横外方向きに設定して、操作具を中立位置から上下方向に操作するように構成し、操作具が付勢手段により中立位置に戻し付勢されるように構成する。植付クラッチの切り操作を伴って苗植付装置を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、苗植付装置を接地するまで下降させる下降作動及び植付クラッチを入り操作する植付クラッチ入り作動が操作具を上下方向に操作することによって行われるように構成し、前記操作具により前記苗植付装置を上昇作動させる操作をした後、当該操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置の上昇が継続され、前記操作具により前記苗植付装置を下降作動させる操作をした後、当該操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記苗植付装置の下降が継続され、又、当該操作具により前記植付クラッチを入り作動させる操作をした後、当該操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で前記植付クラッチの入り状態を保っているとともに、苗を植付けている前進走行作業状態のときに変速レバーの操作により走行機体が後進することを検出すると、この検出に基づいて前記植付クラッチが切り操作されるとともに前記苗植付装置が上昇駆動されることを特徴とする。
【0007】
【作用】
[I]
請求項1の特徴によると、機体操縦部のステアリングハンドルの下側に操作具が配置されており、操作具を操作することによって、植付クラッチの切り操作を伴って苗植付装置を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、苗植付装置を接地するまで下降させる下降作動、及び植付クラッチを入り操作する植付クラッチ入り作動を行わせることができる。この場合、請求項1の特徴によると、機体操縦部の操縦者が例えばステアリングハンドルを手で持っている状態で少し指を下側に延ばしたり、ステアリングハンドルから手を離し少し下側に手を延ばしたりすることによって、操作具を操作することができる。
【0008】
これにより、田植機において例えば一回の作業行程が終了して走行機体が作業地の端部に達した際、植付クラッチを切り操作し苗植付装置を上昇させて、走行機体を作業地の端部で旋回させる場合に、請求項1の特徴によると、[発明が解決しようとする課題]に記載のように、前方のステアリングハンドルから手を離し、機体操縦部の横外側部まで手を後方に移動させて、操作レバーを操作すると言うようなことを行わなくても、例えばステアリングハンドルを手で持っている状態で少し指を下側に延ばしたり、ステアリングハンドルから手を離し少し下側に手を延ばしたりすることによって、操作具を容易に操作することができるのであり、植付クラッチの切り操作を伴って苗植付装置を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動を行うことができる。そして、苗植付装置の上昇は操作具を操作した後、操作具から手を離し操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で苗植付装置が最大上昇位置に上昇するまで継続される。
【0009】
請求項1の特徴によると、前述のように操作具を操作した後、延ばした指や手を上側に戻すことによって、ステアリングハンドルを手で持つ元の状態に戻ることができるので、作業地の端部においてステアリングハンドルによる走行機体の旋回操作を遅れることなく行うことができる。
【0010】
[II]
前項[I]に記載のように、作業地の端部での走行機体の旋回が終了して次の作業行程に入る場合、請求項1の特徴によると、[発明が解決しようとする課題]に記載のように、前方のステアリングハンドルから手を離し、機体操縦部の横外側部まで手を後方に移動させて、操作レバーを操作すると言うようなことを行わなくても、例えばステアリングハンドルを手で持っている状態で少し指を下側に延ばしたり、ステアリングハンドルから手を離し少し下側に手を延ばしたりすることによって、操作具を容易に操作することができるのであり、苗植付装置を接地するまで下降させる下降作動、及び植付クラッチを入り操作する植付クラッチ入り作動を行うことができる。そして、苗植付装置の下降は操作具を操作した後、操作具から手を離し操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で苗植付装置が接地するまで継続される。
【0011】
請求項1の特徴によると、前述のように操作具を操作した後、延ばした指や手を上側に戻すことによって、ステアリングハンドルを手で持つ元の状態に戻ることができるので、遅れることなくステアリングハンドルを手で持って次の作業行程に入ることができる。
【0012】
[III]
田植機においては、ステアリングハンドルの後方に運転座席が配置されているので、操縦者が運転座席に着座すると、操縦者の膝がステアリングハンドルの下側の後方に位置することがある。
請求項1の特徴によると、機体操縦部のステアリングハンドルの下側に、人為的に操作される操作具を備えた場合、操作具の向きを平面視で横外方向きに設定しているので、前述のように操縦者の膝がステアリングハンドルの下側の後方に位置することがあっても、運転座席に着座する操縦者の膝が操作具に当たるようなことはなく、運転座席に着座する操縦者の膝が操作具に当たって操作具が操作されてしまうと言うようなことがない。
【0013】
[IV]
請求項1の特徴によると、機体操縦部のステアリングハンドルの下側に操作具を配置した場合、操作具を上下方向に操作することにより、植付クラッチの切り操作を伴って苗植付装置を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、苗植付装置を接地するまで下降させる下降作動、及び植付クラッチを入り操作する植付クラッチ入り作動が行われるように構成されている。
【0014】
これにより、請求項1の特徴によると、ステアリングハンドルの操作方向と操作具の操作方向とが、交差する状態となり互いに異なる方向となるので、例えば操縦者がステアリングハンドルを操作している際に、手が誤って操作具に触れても、操作具が操作されて前述の上昇作動、下降作動及び植付クラッチ入り作動が行われると言う状態は生じ難い。
【0015】
前項[I][II]に記載のように、例えばステアリングハンドルを手で持っている状態で少し指を下側に延ばしたり、ステアリングハンドルから手を離し少し下側に手を延ばしたりして、操作具を操作する場合に、請求項1の特徴によると、延ばした指や手にとって上下方向は自然で楽な方向なので、操作具の操作が楽に素早く行える。
【0016】
[V]
請求項1の特徴によると、操作具が中立位置から上下方向に操作自在に構成されて、操作具が中立位置に付勢されるように構成されている。これにより、請求項1の特徴によると、操作具を中立位置から上下方向に操作した後に操作具から手を離せば、操作具が自動的に中立位置に戻るので、操縦者が操作具を中立位置から上下方向に操作した後に操作具を中立位置に戻したり、操作具が中立位置に戻っているか否かを目視したりする必要がない。
又、請求項1の特徴によると、操作具により苗植付装置を上昇作動させる操作をした後、操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で苗植付装置の上昇が継続され、操作具により苗植付装置を下降作動させる操作をした後、操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で苗植付装置の下降が継続され、又、操作具により植付クラッチを入り作動させる操作をした後、操作具が付勢手段により中立位置に復帰した状態で植付クラッチの入り状態を保っている。そして、苗を植付けている前進走行作業状態のときに変速レバーの操作により走行機体が後進することを検出すると、この検出に基づいて植付クラッチが切り操作されるとともに苗植付装置が上昇駆動される。
【0017】
【発明の効果】
請求項1特徴によると、田植機の操作構造において操作具を機体操縦部のステアリングハンドルの下側に配置することにより、操縦者が例えばステアリングハンドルを手で持っている状態から指や手を少し下側に延ばすことで、操作具を容易に操作することができ、植付クラッチの切り操作を伴って苗植付装置を最大上昇位置まで上昇させる上昇作動、苗植付装置を接地するまで下降させる下降作動及び植付クラッチを入り操作する植付クラッチ入り作動を行うことができるようになって、田植機の操作性を向上させることができた。
【0018】
請求項1の特徴によると、操作具を操作した後に延ばした指や手を上側に戻すことによって、ステアリングハンドルを手で持つ元の状態に素早く戻ることができるので、例えば一回の作業行程が終了して走行機体が作業地の端部に達した場合、ステアリングハンドルによる走行機体の旋回操作を遅れることなく行うことができるようになり、遅れることなくステアリングハンドルを手で持って次の作業行程に入ることができるようになって、ステアリングハンドルによる走行機体の旋回操作の面でも操作性の良いものとなった。
【0019】
請求項1の特徴によると、機体操縦部のステアリングハンドルの下側に、人為的に操作される操作具を備えた場合、操作具の向きを平面視で横外方向きに設定することにより、運転座席に着座する操縦者の膝が操作具に当たって操作具が操作される状態を避けることができて、前述の上昇作動、下降作動及び植付クラッチ入り作動が誤って行われてしまうことによる作業能率の低下を防止することができた。
【0020】
請求項1の特徴によると、機体操縦部のステアリングハンドルの下側に操作具を配置した場合に、操作具を上下方向に操作することにより、前述の上昇作動、下降作動及び植付クラッチ入り作動が行われるように構成することによって、例えば操縦者がステアリングハンドルを操作している際に手が誤って操作具に触れても、操作具が操作されて前述の上昇作動、下降作動及び植付クラッチ入り作動が行われると言う状態が生じ難いので、前述の上昇作動、下降作動及び植付クラッチ入り作動が誤って行われてしまうことによる作業能率の低下を防止することができた。
【0021】
請求項1の特徴によると、操縦者が例えばステアリングハンドルを手で持っている状態から指や手を少し下側に延ばした場合、操作具を楽に素早く操作することができるので、前述の上昇作動、下降作動及び植付クラッチ入り作動の操作性をさらに向上させることができた。
【0022】
請求項1の特徴によると、操作具を中立位置に付勢することにより、操縦者が操作具を中立位置に戻したり、操作具が中立位置に戻っているか否かを目視したりする必要がないので、操作具の操作性を向上させることができた。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を図面に基いて説明する。
図15に乗用型田植機が示されている。乗用型田植機は、乗用型の走行機体1の後部にリンク機構2を介して、苗植付装置3がリフトシリンダ4により昇降駆動自在、並びに電動式のローリングモータ5により前後軸芯周りにローリング駆動自在に連結されて構成されている。
【0024】
図15に示すように、走行機体1の前部に搭載されたエンジン6の動力が、ベルト式無段変速装置7及びミッションケース8のギヤシフト式の主変速装置9を介して、前車輪10及び後車輪11に伝達されており、変速後の動力が植付クラッチ12(図1参照)を介して苗植付装置3に伝達されている。ベルト式無段変速装置7は割りプーリ式の無段変速装置に構成されており、機体操縦部パネル13に備えられたポテンショメータ型の速度設定器(図示せず)の設定速度になるように、割りプーリの間隔が電動シリンダ15により変更操作される。主変速装置9は、主変速レバー16によって植付走行用の前進1速位置F1、路上走行用の前進2速位置F2、中立位置及び後進位置Rに操作自在に構成されている。
【0025】
図15に示すように苗植付装置3は、フレーム兼用の植付伝動ケース17に対して、一定ストロークで往復横移動する苗のせ台18、苗のせ台18の下端部から苗を一株ずつ取り出して植え付ける植付機構19、後部支点周りで上下揺動自在に支持された複数の接地フロート20等を備えて構成されている。苗植付装置3の右及び左側部に、次の植付行程の為の走行指標線を圃場に描く線引きマーカー21が出退自在に備えられている。右及び左の線引きマーカー21は突出姿勢に付勢されて、苗植付装置3が上昇駆動されるのに伴ってワイヤ(図示せず)を介して強制的に格納されるのであり、右及び左の線引きマーカー21を格納姿勢で保持する右及び左のロック機構22(図1参照)を、選択的に解除操作することにより、苗植付装置3が下降駆動されたときに選択された右又は左の線引きマーカー21が突出姿勢に操作される。
【0026】
図7及び図15に示すように、右及び左のロック機構22の解除操作は、ステアリングハンドル23の右下側に備えられた第1操作具24を、復帰付勢された中立位置から前後方向に操作することによって、選択的に行われるように構成されており、第1操作具24を中立位置から前後方向に操作すると、植付クラッチ12の入り操作用のクラッチスイッチ25(図1参照)が入り操作される。
【0027】
図1に示すように植付クラッチ12は、クラッチ入り信号STR及びクラッチ切り信号STPにより操作されるリレー回路26を介して駆動される正逆転型で電動式のクラッチモータ27により、ギヤ減速式の作動部材28を介して入り及び切り操作される。植付クラッチ12が入り状態であるか切り状態であるかは、作動部材28に接当するクラッチオフスイッチ29及びクラッチオンスイッチ30により検出される。植付クラッチ12と作動部材28との連動操作用のリンク機構に、植付クラッチ12の切り操作の際に圧縮される圧縮スプリングSPが備えられており、融通を確保しながら植付クラッチ12の切り操作が迅速に行われる。
【0028】
図3,6,15に示すように、運転座席31の横外側に備えられたもので手動により前後揺動操作自在な操作レバー32によって、苗植付装置3が昇降駆動される。操作レバー32は植付位置P、下降位置D、中立位置N、上昇位置U及び自動位置ATに操作自在であり、操作レバー32の操作位置がポテンショメータ型のレバーセンサー33により検出されて、マイクロコンピュータを備えた制御装置34により、レバーセンサー33の検出値のレベル判断が行われる。
【0029】
レバーセンサー33の検出値のレベル判断に基づいて、操作レバー32が植付位置Pに操作されていると、苗植付装置3を接地するまで下降駆動した状態で植付クラッチ12が入り操作され、操作レバー32が下降位置Dに操作されていると、植付クラッチ12が切り操作された状態で苗植付装置3が下降駆動される。操作レバー32が中立位置Nに操作されていると、苗植付装置3がその位置に保持され、操作レバー32が上昇位置Uに操作されていると、苗植付装置3が上昇駆動される。操作レバー32が自動位置ATに操作されていると、後述する昇降操作スイッチ35(図1参照)による上昇作動及び下降作動が行われ、走行機体1の後進時に苗植付装置3が強制的に上昇駆動される。
【0030】
図1,7,15に示すように、機体操縦部においてステアリングハンドル23の左下側に第2操作具36が備えられ、第2操作具36を戻し付勢された中立位置から上方に操作すると、昇降操作スイッチ35が入り作動する。これにより、昇降操作スイッチ35の入り作動の毎に、苗植付装置3を接地するまで下降駆動する下降作動、及び植付クラッチ12の切り操作を伴って苗植付装置3を最大上昇位置まで上昇駆動する上昇作動が、交互に現出される。第2操作具36を中立位置から下方に操作すると、植付クラッチ12を入り操作する為のクラッチスイッチ25が操作される。
【0031】
図1に示すように、主変速レバー16が後進位置Rに操作されたことを検出する後進検出スイッチ37が備えられ、後進検出スイッチ37の検出により、制御装置34は苗植付装置3を強制的に最大上昇位置まで上昇駆動する。苗植付装置3が最大上昇位置まで上昇したことの検出は、運転座席31の後部側に配置されたリンクスイッチ38にリンク機構2の途中部が接当することで行われる。
以上のような昇降操作スイッチ35による上昇作動及び下降作動、走行機体1の後進時の苗植付装置3の強制的な上昇駆動は、操作レバー32が自動位置ATに操作されている場合においてのみ行われる。
【0032】
操作レバー32が植付位置P、下降位置D及び自動位置ATの何れかに操作され、主変速レバー16が前進1速位置F1又は前進2速位置F2に操作されている状態において、苗植付装置3の左右傾斜姿勢が設定姿勢に維持されるように、ローリング制御が行われる。図3及び図9に示すように、主変速レバー16が前進1速位置F1又は前進2速位置F2に操作されているか否かを検出する主変速スイッチ39、苗植付装置3の絶対水平姿勢からの傾斜角度を検出する重錘式の傾斜センサー40、目標傾斜姿勢を人為的に設定可能なポテンショメータ型の傾斜角設定器41が備えられており、主変速スイッチ39、傾斜センサー40、傾斜角設定器41及びレバーセンサー33に基づいて、制御装置34により図4に示すローリング制御が行われる。
【0033】
主変速スイッチ39により主変速レバー16が前進1速位置F1又は前進2速位置F2に操作されていることが検出され、レバーセンサー33により操作レバー32が植付位置P、下降位置D及び自動位置ATの何れかに操作されていることが検出されている場合、傾斜センサー40の検出値XRが傾斜角設定器41の目標値Raとは異なり、傾斜センサー40の検出値XRが傾斜角設定器41の目標値Raよりも小さければ、傾斜センサー40の検出値XRが傾斜角設定器41の目標値Raに略合致するまで、右下がり用の出力がリレー回路42(図1参照)に出力されて、ローリングモータ5が右下がり方向に作動する。傾斜センサー40の検出値XRが傾斜角設定器41の目標値Raよりも大きければ、左下がり用の出力がリレー回路42に出力されて、ローリングモータ5が左下がり方向に作動する。
【0034】
図3に示すように、ローリングモータ5が機械的作動限界まで作動したことが右及び左のリミットスイッチ43,44により検出されると、リレー回路42が直接に切り操作されて、ローリングモータ5が停止する。以上のようなローリング制御に異常が発生した場合、3位置切換式で中央に復帰付勢された手動式のローリングスイッチ45(図3及び図9参照)により、リレー回路42を直接に操作して手動でローリングモータ5を作動させることができる。ローリングスイッチ45によるローリングモータ5の作動時に、制御装置34からの制御信号はオフ状態に維持される。
【0035】
植付走行中において苗植付装置3の対地高さが設定値に維持されるように、苗植付装置3が自動的に昇降駆動される昇降制御が行われる。図2に示すように、左右中央に位置する接地フロート20の接地圧変動に基づく上下揺動量を検出するポテンショメータ型のフロートセンサー46が備えられ、フロートセンサー46の検出値XSが、機体操縦部パネル13に備えられたポテンショメータ型の感度設定器47(図7参照)の目標値Saの不感帯に入るように、制御装置34がリフトシリンダ4に対する電磁制御弁48を自動的に操作することにより、苗植付装置3の対地高さが設定値に維持される。
【0036】
図5に示すように、フロートセンサー46の検出値XSが感度設定器47の目標値Saの不感帯にあれば、その状態が保持される。フロートセンサー46の検出値XSが感度設定器47の目標値Saよりも大きければ、電磁制御弁48の上昇用電磁ソレノイドUPSolに駆動信号が出力され、フロートセンサー46の検出値XSが感度設定器47の目標値Saよりも小さければ、電磁制御弁48の下降用電磁ソレノイドDWSolに駆動信号が出力される。以上のような昇降制御は、操作レバー32が植付位置P、下降位置D及び自動位置ATの何れかに操作されている場合においてのみ行われる。
【0037】
感度設定器47は、接地フロート20の目標基準姿勢を変更し、泥土の硬軟に応じて接地フロート20の感知荷重を変更するものであり、感度設定器47の目標値Saは、3位置切換式の補正スイッチ51(図2及び図9参照)により補正することができる。図8に示すように、補正スイッチ51の操作によって、感度設定器47の目標値Saの変化特性が、平行移動により鈍感側(接地フロート20の目標基準姿勢が前上がり方向)、及び敏感側(接地フロート20の目標基準姿勢が前下がり方向)に変更される。
【0038】
走行機体1の走行速度が高速になれば接地フロート20が浮き上がり気味になって、苗植付装置3が上昇し浅植えになるおそれがあるので、感度設定器47の目標値Saの変化特性が走行機体1の走行速度に応じて変更されるように構成されている。図2に示すように、エンジン6の回転数を検出する回転数センサー52、ベルト式無段変速装置7の変速位置を検出するポテンショメータ型の変速位置センサー53が備えられて、制御装置34により走行機体1の走行速度が演算されており、走行機体1の走行速度が速ければ(例えば0.8メートル/秒以上)、感度設定器47の目標値Saの変化特性が鈍感側に変更され、走行機体1の走行速度が速いほど変更量が大きくなる。
【0039】
リフトシリンダ4に対する油圧ポンプ(図示せず)はエンジン6により駆動される構成であり、リフトシリンダ4に対する作動油流量はエンジン6の回転数により変化する。これにより、制御装置34はエンジン6の回転数に応じて、電磁制御弁48の上昇用及び下降用電磁ソレノイドUPSol,DWSolに供給するパルス電流のデューティ比を変更し、リフトシリンダ4に対する作動油流量が常に一定に維持されるように制御する。
図9及び図15に示すように、傾斜角設定器41、ローリングスイッチ45及び補正スイッチ51が、運転座席31の横側に位置する後輪フェンダー54に配置されており、開閉自在な蓋体55で覆われるように構成されている。
【0040】
次に、苗植付装置3の昇降駆動に関する制御装置34の制御について、図10〜図14に基づいて説明する。
メインスイッチ(図示せず)が入り操作されて制御が開始されると、リフトシリンダ4に対する電磁制御弁48の上昇用及び下降用電磁ソレノイドUPSol,DWSolに対する出力がオフ状態となり、昇降操作スイッチ35の動作フラグf0、クラッチスイッチ25の動作フラグf1、昇降制御の動作フラグf2、及び後進上昇作動の動作フラグf3が「0」に設定される(ステップ#1,#2)。
【0041】
操作レバー32が自動位置AT以外の位置に操作されていると、動作フラグf0〜f3が「0」に設定されて、操作レバー32が中立位置Nに操作されていると、クラッチモータ27に対するクラッチ入り信号STRがオフ状態になり、クラッチオフスイッチ29がオン状態であれば、クラッチモータ27に対するクラッチ切り信号STPがオフ状態になる。クラッチオフスイッチ29がオフ状態であれば、クラッチ切り信号STPが出力されて、植付クラッチ12が切り操作された状態に維持される(ステップ#3〜#9)。メインスイッチの入り操作時に操作レバー32が自動位置AT及び中立位置N以外の位置に操作されていると、操作レバー32が中立位置Nに一度操作された後に次のステップに移行する(ステップ#10)。
【0042】
操作レバー32が上昇位置Uに操作されると、クラッチ入り信号STRがオフ状態になり、動作フラグf2が「0」に設定された後、クラッチオフスイッチ29がオン状態であれば、クラッチ切り信号STPがオフ状態になり、リンクスイッチ38がオン状態(苗植付装置3の上昇状態)であれば、電磁制御弁48の上昇用電磁ソレノイドUPSolがオフ状態になり、リンクスイッチ38がオフ状態であれば、電磁制御弁48の上昇用電磁ソレノイドUPSolがオン状態になって、苗植付装置3が上昇駆動される(ステップ#11〜#17)。クラッチオフスイッチ29がオン状態でなければ、クラッチ切り信号STPがオン状態になり、植付クラッチ12が切り操作されて、電磁制御弁48の上昇及び下降用電磁ソレノイドUPSol,DWSolがオフ状態になる(ステップ#18,#19)。
【0043】
操作レバー32が下降位置Dに操作されると、クラッチ入り信号STRの出力が停止された後、前述と同様に植付クラッチ12が切り操作された状態に維持されながら(ステップ#20〜#23)、苗植付装置3が下降駆動される(ステップ#24〜#26)。フロートセンサー46により苗植付装置3が接地したことが検出されると、前述の昇降制御が実行される(ステップ#27)。このときにリンクスイッチ38がオン状態になれば、電磁制御弁48の上昇用電磁ソレノイドUPSolがオフ状態になり、動作フラグf2が「1」に設定される(ステップ#28〜#30)。
【0044】
操作レバー32が植付位置Pに操作されると、クラッチ入り信号STRがオフ状態になった後、クラッチオンスイッチ30がオン状態になるまでクラッチ入り信号STRが出力され、植付クラッチ12が入り操作されて(ステップ#31〜#34)、この後は昇降制御が実行される。動作フラグf2以外の動作フラグf0,f1,f3は「0」に維持される(ステップ#35)。
【0045】
次に、操作レバー32が自動位置ATに操作された場合について説明する。
操作レバー32が自動位置ATに操作された後に、昇降操作スイッチ35が入り作動すると、動作フラグf0が「1」に設定されて、リンクスイッチ38がオン状態(苗植付装置3の上昇状態)であれば、動作フラグf2が「0」に設定され、電磁制御弁48の下降用電磁ソレノイドDWSolがオン状態になって、苗植付装置3が下降駆動される(ステップ#36,#37,#39〜#43)。
【0046】
苗植付装置3が接地するまで下降駆動されると、動作フラグf0が「0」に設定され、動作フラグf2が「1」に設定された後に、昇降制御に移行する(ステップ#44〜#48)。昇降操作スイッチ35の入り作動時に、リンクスイッチ38がオフ状態であれば、植付クラッチ12が切り操作されて、リンクスイッチ38がオン状態になるまで苗植付装置3が上昇駆動され(ステップ#49〜#54)、リンクスイッチ38がオン状態になれば、動作フラグf0が「0」に設定される(ステップ#55,#56)。苗植付装置3の上昇又は下降駆動中に、昇降操作スイッチ35が再度入り作動すると、苗植付装置3の上昇又は下降駆動が反転される(ステップ#57〜#60)。初期状態において昇降操作スイッチ35の入り作動(上昇側)したとき、植付クラッチ12が切り操作されていなければ、初期状態に戻る(ステップ#37,#38)。
【0047】
苗植付装置3が接地するまで下降駆動された後、第1及び第2操作具24,36によるクラッチスイッチ25の操作が行われると、動作フラグf1が「1」に設定されて、植付クラッチ12が入り操作され(ステップ#61〜#64)、クラッチオンスイッチ30がオン状態になるまで、警報ブサー(図示せず)が作動する。クラッチオンスイッチ30がオン状態になると、動作フラグf1が「0」に設定されて、警報ブザーが停止し(ステップ#65〜#69)、その後は昇降制御に移行する。
【0048】
操作レバー32が自動位置ATに操作された後、主変速レバー16が後進位置Rに操作されたことが後進検出スイッチ37によって検出され、リンクスイッチ38がオン状態でなければ、動作フラグf3が「1」に設定された後(ステップ#70〜#74)、ステップ#49に移行する。これにより、植付クラッチ12が切り操作されて、リンクスイッチ38がオン状態になるまで苗植付装置3が強制的に上昇駆動され、リンクスイッチ38がオン状態になると、動作フラグf3が「0」に設定される(ステップ#56)。
【0049】
昇降操作スイッチ35の入り作動や後進検出スイッチ37の検出がなく、動作フラグf3が「1」に設定されているとき、苗植付装置3が最大上昇位置にあって、操作レバー32が他の位置から自動位置ATに操作された場合、又は昇降制御ではない場合には、苗植付装置3が現在の昇降位置に保持され(ステップ#75〜#79)、これ以外の場合には昇降制御に移行する(ステップ#80,#46)。
【0050】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を容易にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
苗植付装置の昇降駆動及び植付クラッチの操作のブロック図
【図2】
苗植付装置の昇降制御のブロック図
【図3】
苗植付装置のローリング制御のブロック図
【図4】
苗植付装置のローリング制御の流れを示す図
【図5】
苗植付装置の昇降制御の流れを示す図
【図6】
操作レバーの操作位置を示す平面図
【図7】
ステアリングハンドルの付近の平面図
【図8】
感度設定器の目標値の変化特性を示す図
【図9】
傾斜角設定器、ローリングスイッチ及び補正スイッチの付近の平面図
【図10】
苗植付装置の昇降駆動及び植付クラッチの操作、昇降制御の流れを示す図
【図11】
苗植付装置の昇降駆動及び植付クラッチの操作、昇降制御の流れを示す図
【図12】
苗植付装置の昇降駆動及び植付クラッチの操作、昇降制御の流れを示す図
【図13】
苗植付装置の昇降駆動及び植付クラッチの操作、昇降制御の流れを示す図
【図14】
苗植付装置の昇降駆動及び植付クラッチの操作、昇降制御の流れを示す図
【図15】
乗用型田植機の全体側面図
【符号の説明】
1 走行機体
3 苗植付装置
4 リフトシリンダ
12 植付クラッチ
23 ステアリングハンドル
36 操作具
【図面】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-05-09 
出願番号 特願平5-194380
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 渡部 葉子
川島 陵司
登録日 2003-08-08 
登録番号 特許第3459666号(P3459666)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 田植機の操作構造  
代理人 北村 修一郎  
代理人 北村 修一郎  

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