• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
管理番号 1121089
異議申立番号 異議2003-72056  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-01-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-11 
確定日 2005-06-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3376703号「化粧シートとその製造方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3376703号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯

本件特許第3376703号は、平成6年7月12日の出願であって、平成14年12月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対して特許異議申立人 佐藤 邦子から特許異議の申立てがなされ、平成16年12月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年2月4日に、特許異議意見書が提出されるとともに訂正請求(後日取下げ)がされた後、再度、平成17年4月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年4月18日に訂正請求がされたものである。


II.訂正の適否についての判断

1.訂正の内容

1-1.訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1の記載を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】 透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルムと、裏面側の隠蔽層とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートであって、前記表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には少なくとも不透明性模様を有する表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と不透明性模様との複合になり、前記表面不透明性模様の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様と裏面不透明性模様とが少なくとも透視される化粧シートにおいて、
前記裏面側模様は、部分的な前記光反射性模様を少なくとも有し、該光反射性模様間には隙間を有することを特徴とする化粧シート。」

1-2.訂正事項2

明細書の段落【0005】の記載を次のとおりに訂正する。
「 【0005】
【課題を解決するための手段】
次に、上記の課題を達成するための手段を、本発明の実施例に対応する図を参照して説明する。
すなわち、本願の発明は、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層3と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルム2と、裏面側の隠蔽層1とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートの構造を前提としている。請求項1の発明では、前記表面側の透明層3と中間の透明フイルム2の間には、少なくとも不透明性模様4を有する表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルム2と隠蔽層1との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様5を少なくとも有する裏面側模様が形成され、前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様5と不透明性模様6との複合になり、前記表面不透明性模様4の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様5と裏面不透明性模様6とが少なくとも透視される化粧シートにおいて、前記裏面側模様は、部分的な前記光反射性模様5を少なくとも有し、該光反射性模様間には隙間を有することを特徴としている。」


2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

2-1.訂正事項1について

訂正事項1は、請求項1において、裏面側模様における光反射性模様が、「部分的」であり、その「間には隙間を有する」ことを、さらに限定することにより、上記光反射性模様の形態を限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、上記事項は、願書に添付した明細書の段落【0014】に「・・隠蔽層1の表面に間に隙間を有する部分的な光反射性模様5を少なくとも有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成する。」と記載されているから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-2.訂正事項2について

訂正事項2は、上記訂正事項1により訂正された請求項1の記載と、明細書段落【0005】の記載の整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。


3.むすび

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


III.特許異議の申立てについての判断
1.特許異議の申立ての概要

特許異議申立人 佐藤 邦子は、以下の甲第1号証、甲第2号証を提出して、以下の主張をしている。

甲第1号証:特開平5-254296号公報
甲第2号証:特開平2-128843号公報

理由1:本件請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件請求項1〜5に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである。

理由2:本件請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件請求項1〜5の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである。

理由3:本件特許明細書の特許請求の範囲の記載に不備があり、本件特許は、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。


2.取消理由の概略

平成16年12月1日付けで通知した取消理由の概略は、以下のとおりである。
「1)本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2)本件特許の請求項3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



刊行物1:特開平5-254296号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平2-128843号公報(甲第2号証) 」

平成17年4月5日付けで通知した取消理由の概略は、以下のとおりである。
「平成17年2月4日にされた訂正請求を認めた上で、本件特許は、明細書及び図面の記載に不備があるため、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」


3.当審の判断

3-1.特許法第36条の申立て(理由3)について

異議の申立理由として、本件特許は、下記A〜Dを理由に、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張するので、まず、理由3について検討する。

A.特許請求の範囲の請求項1、2には、「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルム」との記載があるが、上記記載中の「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明な」とは、具体的にどの程度の光透過性を有するものまでが含まれるのかが、発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明であって、このため、発明が不明確であるから、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていない。
B.請求項1、2に記載の「プラスチック層」および「プラスッチックフイルム」として、発明の詳細な説明(段落【0009】、【0010】)においては、「ポリ塩化ビニル半硬質透明シート」のみしか開示されておらず、上記「プラスチック層」および「プラスッチックフイルム」との記載は発明の詳細な説明の開示の範囲を超えているから、請求項1、2に係る発明は、発明の詳細な説明の開示の範囲を超えたものであり、特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない。
C.請求項1、2における記載「隠蔽層」について、発明の詳細な説明の段落【0012】には、「隠蔽層1は、ポリ塩化ビニル半硬質透明白色シートを用いることができ、・・・白又はそれ以外の色、例えばグレー系、黒系等の色とすることができる。」とあり、上記「隠蔽層」は着色透明シートということになるが、その場合、「隠蔽層」は、「表面側の透明層」および「中間の透明フイルム」と、どのように区別されるのかが不明であり、結果として発明が不明確であるから、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていない。
D.請求項1〜5における記載「不透明性模様」および「光反射性模様」について、一般に「光反射性」のものは「不透明性」であって、「不透明性」のものは「光反射性」であり、両者を明確に区別できないから、結果として発明が不明確であり、特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていない。

3-1-1.A.について
本件請求項1および2の「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルム」における「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明な」とは、段落【0015】に「上記本願の発明の化粧シートの構成によれば、化粧シートの表面側から、透明層3を通して不透明性模様4が見え、この不透明性模様4の間から透明フイルム2を通して光反射性模様5が見え、さらに、この光反射性模様5の間から隠蔽層1が見える。上記不透明性模様4の間には、光反射性模様5と隠蔽層1が共に見える部分と光反射性模様5のみが見える部分と隠蔽層1のみが見える部分がある。さらに、請求項2又は3の発明では、不透明性模様4の間から透明フイルム2を通して光反射性模様5と裏面不透明模様6(及び・又は透明性模様7)が少なくとも見え、隠蔽層1が見えることもある。」と記載されるように、発明の作用、効果からみて、その下の層が透視できる程度に透明であることを意味することは明らかであって、発明は明確であるといえ、申立人の主張は採用できない。

3-1-2.Bについて
化粧シートのプラスチック層、プラスチックフィルムのプラスチックとして種々のものが周知であり、それらのものを選択して使用できることも当業界において技術常識である。また、発明の詳細な説明、実施例3には、「ポリ塩化ビニル半硬質透明シート」以外にも「プラスチック層よりなる表面側の透明層」としてウレタン樹脂を用いることも開示されているから、発明の詳細な説明には、請求項1および2の「プラスチック層」および「プラスチックフィルム」が十分開示されているのであり、請求項1、2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものでなく、発明の詳細な説明に記載したものである。

3-1-3.Cについて
本件請求項1、2の「隠蔽層」、「表面側の透明層」および「中間の透明フィルム」は、それぞれ、その積層位置が異なるのであるから、これらは十分に区別されるものであり、発明の構成に欠くことができない事項が不明確とはいえない。よって、申立人の主張は採用できない。

3-1-4.Dについて
本件請求項1〜5における「不透明性模様」と「光反射性模様」とが区別できない旨主張しているが、「不透明性」および「光反射性」は、それぞれ技術思想として明確であって、かつ技術思想として明確に区別できるものである。不透明性とは、光吸収によるものもあり、必ずしも光反射によるものとは限らないのである。したがって、本件請求項1〜5に係る発明の発明の構成に欠くことができない事項は明確でないとはいえず、発明は明確であるから、申立人の主張は採用できない。


3-2.特許法第29条第1項第3号、第2項の申立て(理由1、2)について

3-2-1.本件請求項1〜5に係る発明

上記II.で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1〜5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルムと、裏面側の隠蔽層とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートであって、前記表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には少なくとも不透明性模様を有する表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と不透明性模様との複合になり、前記表面不透明性模様の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様と裏面不透明性模様とが少なくとも透視される化粧シートにおいて、
前記裏面側模様は、部分的な前記光反射性模様を少なくとも有し、該光反射性模様間には隙間を有することを特徴とする化粧シート。
【請求項2】 透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルムと、裏面側の隠蔽層とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートにおいて、
前記表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には少なくとも不透明性模様を有する表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、
前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と着色透明及び半透明を含む実質的に透明な透明性模様の複合になり、前記表面不透明性模様の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様と裏面透明性模様が少なくとも透視されることを特徴とする化粧シート。
【請求項3】 前記表面側の透明層は、その主体層の表面に主体層よりも高光沢の保護膜を形成した構成になることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧シート。
【請求項4】 透明フイルムの表面に少なくとも不透明性模様を有する表面側模様を1回又は複数回の印刷により形成し、該透明フイルムの裏面には前記表面側模様の間から見えるように部分的な光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成し、その後、透明フイルムの表面に透明層を形成し、透明フイルムの裏面には隠蔽層を設けたことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項5】 透明フイルムの表面に少なくとも不透明性模様を有する表面側模様を1回又は複数回の印刷により形成し、隠蔽層の表面に部分的な光反射性模様を少なくとも有しその間に隙間を有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成し、その後、透明フイルムの表面に透明層を形成し、透明フイルムの裏面に隠蔽層を被着したことを特徴とする化粧シートの製造方法。 」

3-2-2.甲各号証の記載

甲第1号証(取消理由に引用した刊行物1)には、以下の事項が記載されている。
(1-a)「【請求項1】 隠蔽性があって明度の高い着色プラスチックの基材シートの上に光輝性顔料を練り込んだ半透明なプラスチックの中間シートおよび透明なプラスチックの表面シートを設け、隠蔽性のあるパターン印刷層を、その一部または全部を表面シートおよび(または)中間シートに埋設して存在させてなる化粧シート。
【請求項2】 表面シートが同種または異種のシート2枚の積層物である請求項1の化粧シート。」(特許請求の範囲)
(1-b)「表面シートの厚さは、50〜1000μmの範囲が適当である。積層物を用いるときも、合計の厚さが上記の範囲になるようにするとよい。なお、プラスチックの透明とは、無色透明と着色透明の両方を包含する。」(段落【0009】)
(1-c)「中間シートとするプラスチックに練り込んで使用する光輝性顔料は、チタンコーディング雲母、天然真珠箔、無機鉛系人工パール、アルミニウムや黄銅等の金属の粉末など、常用のものを用いればよい。」(段落【0010】抜粋)
(1-d)「パターン印刷層は、使用するシートに応じて所望のインキで形成すればよいが、隠蔽性のあるインキ、たとえば酸化チタンやカーボンブラックを配合したインキで形成することが好ましい。」(段落【0014】)
(1-e)「これに対し本発明に化粧シートは、パターン印刷層と基材シートとの間にある中間シートの内部で光が乱反射することから、奥行のある感じを与える。しかも基材シートが不透明でその色の明度が高いから、パターン印刷層の影が沈み他の部分が浮き上がって見える。これによって、視覚的な模様の浮き沈みと奥行感を両立した、深みのある化粧シートが実現できた。」(段落【0023】)
(1-f)「【実施例】基材シートとして厚さ0.08mmの白色ポリ塩化ビニル(PVC)のシートを用意し、中間シートとして平均粒径20μmのパール顔料を3重量%練り込んだ、半透明で厚さ0.08mmのPVCシートを用意した。
厚さ0.3mmの無色透明なPVCシートを表面シートの第一シートとして使用し、その一方の面に、紫外線硬化型インキ「EXD-1216」(大日精化工業製)と塩化ビニル系インキ「V-12」(同)を95:5の割合で混合した白色のインキを用いて、グラビア法でパターンを印刷した。続いて紫外線を3秒間照射して印刷層を硬化させ、パターン印刷層を形成した。
厚さ0.08mmの無色透明なPVCシートを表面シートの第二シートとして使用し、その一方の面に塩化ビニル系インキ「化X」(昭和インク工業所製)で絵柄をグラビア印刷した。
基材シート上に中間シートを載せ、その上に第二シートおよび第一シートをそれぞれ印刷面を下にして順に重ねた。これを上下から、温度150℃、圧力15kg/cm2で15分間熱プレスして、各シートを一体化するとともにパターン印刷層を第一シートと第二シートに一部ずつ埋設した。
得られた本発明の化粧シートは、立体感の高いものであった。」(段落【0024】〜【0028】)
(1-g)1(基材シート)、2(中間シート)、31(第一シート)および32(第二シート)よりなる3(表面シート)、並びに4(パターン印刷層)よりなる化粧シートの断面図(【図2】)

甲第2号証(取消理由に引用した刊行物2)には、以下の事項が記載されている。
(2-a)「(1) 基材上に、隠蔽ベタ印刷層、絵柄印刷層、透明な合成樹脂層およびツヤ調整層を順に積層し、エンボスを施してなることを特徴とする化粧材。
(2) 透明な合成樹脂層とツヤ調整層との間に、第二の絵柄印刷層および第二の透明な合成樹脂層を設けた請求項1の化粧材。
(3) ・・・
(4) ツヤ調整層が2層からなり、一方がツヤ消し層、他方がツヤ出し層である請求項1または2の化粧材。
(5) 絵柄印刷層もしくは第二の絵柄印刷層または隠蔽ベタ印刷層の上に、光輝性着色層を設けた請求項1または2の化粧材。
(6) ・・・
(7) ・・・」(特許請求の範囲)
(2-b)「第2図に示すように、透明な合成樹脂層(4)とツヤ調整層(5)との間に、第二の絵柄印刷層(3B)および第二の透明な合成樹脂層(4B)を設けてもよい。こうすると、絵柄印刷層(3)と第二の絵柄印刷層(3B)との視差および隠蔽ベタ印刷層(2)に投影される第二の絵柄印刷層(3B)の影により、立体感が増すから、これは推奨できる態様である。」(第2頁右上欄下より4行〜左下欄4行、第2図)
(2-c)「絵柄印刷層、第二の絵柄印刷層および隠蔽ベタ印刷層を設けるインキまたは塗料組成物としては、ベヒクルに顔料または染料である着色剤、可塑剤、安定剤、その他の添加剤、溶剤または希釈剤を混練してなるものを用いる。・・・・・ベタ印刷には隠蔽性能に富んだ二酸化チタンなどの無機顔料を主体としたものを用い、絵柄印刷には適宜の着色剤を用いる。」(第2頁右下欄4行〜第3頁左上欄5行)
(2-d)「絵柄印刷層および第二の絵柄印刷層の上に設ける透明な合成樹脂層は、ポリエチレン、・・・から選択したものを使用すればよい。化粧材の表面物性を向上させるという観点からは、・・・などのフッ素樹脂のフィルム、または・・・のようなアクリル樹脂のフィルム・・・が、とくに好ましい。
これらの合成樹脂は、透明であれば、無色のものでも着色したものでも、任意にえらんで使用できる。
合成樹脂の層を形成するには、使用する合成樹脂の物性に合わせてエクストルージョン、Tダイ、ロールコート、グラビアコートなどの塗布手段を選択して塗布する。」(第3頁左上欄6行〜右上欄5行)
(2-e)「ツヤ調整層は、化粧材の表面に好ましいツヤを与えるものであって、適宜のベヒクルを用いた塗料を塗布することにより形成できる。・・・
ツヤ調整層を形成する塗料には通常、適量のツヤ消し剤を分散させて所望のツヤ消し度を与えるが、ツヤ消し剤を全く含まないグロス(光沢)タイプの塗料を用いることもある。」(第3頁右上欄17〜左下欄9行)
(2-f)「所望により、隠蔽ベタ印刷層または絵柄印刷層上に、光輝性着色層を設ける。木の照り、皮の光沢、石の輝き、あるいは布の光沢などが、それによってよく再現される。
光輝性着色層を形成する顔料の例をあげれば、次のとおりである。(イ)パール顔料と称するもの、・・・(ロ)金属粉、具体的には銅、アルミニウム、真ちゅう、青銅、金、銀などの、好ましくは1〜120μの微粒子、」(第3頁右下欄9行〜19行)
(2-g)「【実施例2】
実施例1と同じ基材を用意し、それにやはり実施例1と同じ隠蔽ベタ印刷用インキでグラビアベタ印刷した。
その上に絵柄印刷用インキ・・で杉の板目模様の一部をグラビア印刷し、高密度ポリエチレンを20μの厚さにエクストルージョンコートした。ポリエチレン層の表面・・・に別の絵柄印刷用インキ・・で模様の残りをグラビア印刷し、上記と同じポリエチレン層を形成した。
・・・・本発明の化粧材を得た。」(第4頁右下欄下より2行〜第5頁左上欄18行)

3-2-3.理由1について

3-2-3-1.本件発明1について
甲第1号証の摘示記載(1-a)〜(1-g)からみて、甲第1号証には、以下のとおりの発明が記載されているものと認められる。
「表面から、透明なプラスチック表面シートの第二シートおよび透明なプラスチック表面シートの第一シートが、隠蔽性があって明度の高い着色プラスチックの基材シートの上に設けられ一体化された化粧シートにおいて、上記第二シートと上記第一シートの間には、隠蔽性のあるパターン印刷層が埋設して形成され、上記第一シートと上記基材シートの間には、パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料を練り込まれ、内部で光が乱反射する半透明のプラスチック中間シートが設けられ、上記第一シートと上記中間シートの間には、隠蔽性のあるパターン印刷層が埋設して形成されてなる化粧シート」
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
甲第1号証に記載された発明の「透明なプラスチック表面シートの第二シート」、「隠蔽性があって明度の高い着色プラスチックの基材シート」、「隠蔽性のあるパターン印刷層」、「パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料」は、本件発明1の「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層」、「裏面側の隠蔽層」、「不透明性模様」、「パール又は金属粉等の光反射性材料」に、それぞれ相当する。甲第1号証に記載された発明の「透明なプラスチック表面シートの第一シート」は、表面シートの合計厚さは50〜1000μmが適当であること(摘示記載(1-b))、および、本件発明1における透明フィルムは厚手(0.1mm程度以上、望ましくは0.2mm〜0.4mm)のポリ塩化ビニル半硬質透明シートを用いることができること(段落【0010】)からみて、本件発明1の「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルム」に相当する。
とすれば、甲第1号証記載の発明における「上記第二シートと上記第一シートの間には、隠蔽性のあるパターン印刷層が埋設して形成され」ることは、本件発明1における「表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には少なくとも不透明性模様を有する表面側模様が形成され」ることである。
また、甲第1号証記載の発明における、上記第一シートと上記基材シートの間に設けられた、「パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料を練り込まれ、内部で光が乱反射する半透明のプラスチック中間シート」と、上記第一シートと上記中間シートの間に埋設して形成された、「隠蔽性のあるパターン印刷層」とは、複合して模様を形成しているものであり、かつ、上記プラスチック中間シートの一部は、「隠蔽性のあるパターン印刷層」により隠蔽され、一種の模様となっているものと認められるから、本件発明1において規定されるように、「前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と不透明性模様との複合にな」っているものと解される。
さらに、甲第1号証記載の発明においては、摘示記載(1-e)および(1-g)からみて、化粧シートの表面から、上記第一シートと上記基材シートの間に設けられた、「パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料を練り込まれ、内部で光が乱反射する半透明のプラスチック中間シート」と、上記第一シートと上記中間シートの間に埋設して形成された、「隠蔽性のあるパターン印刷層」とが透視されることは明らかである。
したがって、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、
「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルムと、裏面側の隠蔽層とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートにおいて、
前記表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には少なくとも不透明性模様を有する表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、
前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と不透明性模様との複合になり、前記化粧シート表面からは、前記光反射性模様と裏面不透明性模様とが少なくとも透視されることを特徴とする化粧シート。」である点で一致し、
本件発明1においては、前記裏面側模様は、部分的な前記光反射性模様を少なくとも有し、該光反射性模様間には隙間を有する点(相違点1)で、少なくとも両者は相違する。そして、該相違点は自明な技術事項でなく、実質的な差異である。
よって、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。

甲第2号証の摘示記載(2-a)〜(2-g)からみて、甲第2号証には、以下のとおりの発明が記載されているものと認められる。
「基材上に、隠蔽ベタ印刷層、絵柄印刷層、透明な合成樹脂層、第二の絵柄印刷層、第二の透明な合成樹脂層、およびツヤ調整層を順に積層しエンボスを施してなる化粧材において、上記隠蔽ベタ印刷層の上にパール顔料、金属粉からなる顔料により形成された光輝性着色層が設けられた化粧材」
本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比する。
甲第2号証に記載された発明の「第二の透明な合成樹脂層」は、本件発明1の「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層」に相当し、甲第2号証に記載された発明の「透明な合成樹脂層」は、摘示記載(2-d)より、フィルムでもよいことから、本件発明1の「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルム」に相当する。甲第2号証に記載された発明の「隠蔽ベタ印刷層」が積層された「基材」は、本件発明1の「裏面側の隠蔽層」に相当する。
また、甲第2号証記載の発明の「第二の絵柄印刷層」は、「第二の透明な合成樹脂層」と「透明な合成樹脂層」の間に形成されているから、本件発明1の「表面側の透明層と中間の透明フイルムの間」に形成された「表面側模様」に相当し、甲第2号証記載の発明の「絵柄印刷層」および「パール顔料、金属粉からなる顔料により形成された光輝性着色層」は、「透明な合成樹脂層」と「隠蔽ベタ印刷層」の間に形成され、上記光輝性着色層の一部が絵柄印刷層に覆われることにより光輝性着色層が一種の模様となり、かつ両層は複合して模様を形成しているものと認められるから、本件発明1の「中間の透明フイルムと隠蔽層との間」に形成された「パール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様」に相当し、少なくとも光反射性模様と絵柄印刷模様との複合になっているものと解される。
さらに、甲第2号証記載の発明では、摘示記載(2-b)からみて、「表面側模様」に相当する「第二の絵柄印刷層」の間からは、「裏面側模様」に相当する、「パール顔料、金属粉からなる顔料により形成された光輝性着色層」および「絵柄印刷層」が透視されることは明らかである。
したがって、本件発明1と甲第2号証記載の発明とは、
「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルムと、裏面側の隠蔽層とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートにおいて、
前記表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、
前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と模様との複合になり、前記表面側模様の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様と裏面模様とが少なくとも透視されることを特徴とする化粧シート。」である点で一致し、
本件発明1においては、前記裏面側模様は、部分的な前記光反射性模様を少なくとも有し、該光反射性模様間には隙間を有する点(相違点2)で、少なくとも両者は相違する。
そして、通常、積層構造における「層」とは、絵柄層、部分層などと規定されていなければ、全面に設けられた層であり、この点からみれば、絵柄印刷層に覆われることにより「光反射性模様」を形成する、甲第2号証記載の発明における光輝性着色層は、部分的でなく全面に設けられた層であり、その結果として、甲第2号証記載の発明では、絵柄印刷層に覆われて形成される「光反射性模様」は隙間を有さないものと認められるから、該相違点は自明な事項でなく、実質的な差異である。
よって、本件発明1は甲第2号証に記載された発明ではない。

3-2-3-2.本件発明2について
甲第1号証には、3-2-3-1.で上述したとおりの発明が記載されているものと認められる。
本件発明2と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
甲第1号証に記載された発明の「透明なプラスチック表面シートの第二シート」、「透明なプラスチック表面シートの第一シート」、「隠蔽性があって明度の高い着色プラスチックの基材シート」、上記第二シートと上記第一シートの間に埋設して形成された「隠蔽性のあるパターン印刷層」、「パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料」は、本件発明2の「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層」、「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルム」、「裏面側の隠蔽層」、表面側の透明層と中間の透明フイルムの間に形成された「少なくとも不透明性模様を有する表面側模様」、「パール又は金属粉等の光反射性材料」に、それぞれ相当する。
甲第1号証記載の発明における、上記第一シートと上記基材シートの間に設けられた、「パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料を練り込まれ、内部で光が乱反射する半透明のプラスチック中間シート」の一部は、上記第一シートと上記中間シートの間に埋設して形成された、「隠蔽性のあるパターン印刷層」により隠蔽され、一種の模様となっているものと認められるから、本件発明2のように「前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され」ているものと解される。また、上記「パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料を練り込まれ、内部で光が乱反射する半透明のプラスチック中間シート」と上記「隠蔽性のあるパターン印刷層」とは、複合して模様を形成しているものと認められる。
さらに、甲第1号証記載の発明においては、摘示記載(1-e)および(1-g)からみて、化粧シートの表面から、上記第一シートと上記基材シートの間に設けられた、「パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料を練り込まれ、内部で光が乱反射する半透明のプラスチック中間シート」と、上記第一シートと上記中間シートの間に埋設して形成された、「隠蔽性のあるパターン印刷層」とが透視されることは明らかである。
したがって、両者は、
「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルムと、裏面側の隠蔽層とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートにおいて、
前記表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には少なくとも不透明性模様を有する表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、
前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と模様との複合になり、前記化粧シート表面からは、前記光反射性模様と裏面模様とが少なくとも透視されることを特徴とする化粧シート。」である点で一致し、
本件発明2においては、光反射性模様と複合して裏面側模様を形成する模様が、「着色透明及び半透明を含む実質的に透明な透明性」模様であるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、「隠蔽性のあるパターン印刷層」である点(相違点3)で、少なくとも相違する。
よって、本件発明2は甲第1号証に記載された発明ではない。

甲第2号証には、3-2-3-1.で上述したとおりの発明が記載されているものと認められる。
本件発明2と甲第2号証に記載された発明とを対比する。
甲第2号証に記載された発明の「第二の透明な合成樹脂層」、「透明な合成樹脂層」、「隠蔽ベタ印刷層」が積層された「基材」、「第二の透明な合成樹脂層」と「透明な合成樹脂層」の間に形成された「第二の絵柄印刷層」は、本件発明2の「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層」、「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルム」、「裏面側の隠蔽層」、「表面側の透明層と中間の透明フイルムの間」に形成された「表面側模様」に相当する。
また、甲第2号証記載の発明の「絵柄印刷層」および「パール顔料、金属粉からなる顔料により形成された光輝性着色層」は、「透明な合成樹脂層」と「隠蔽ベタ印刷層」の間に形成され、上記光輝性着色層の一部が絵柄印刷層に覆われることにより光輝性着色層が一種の模様となり、かつ両層は複合して模様を形成しているものと認められるから、本件発明2の「中間の透明フイルムと隠蔽層との間」に形成された「パール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様」に相当し、少なくとも光反射性模様と絵柄印刷模様との複合になっているものと解される。
さらに、甲第2号証記載の発明では、摘示記載(2-b)からみて、「表面側模様」に相当する「第二の絵柄印刷層」の間からは、「裏面側模様」に相当する、「パール顔料、金属粉からなる顔料により形成された光輝性着色層」および「絵柄印刷層」が透視されることは明らかである。
したがって、本件発明2と甲第2号証記載の発明とは、
「透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルムと、裏面側の隠蔽層とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートにおいて、
前記表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、
前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と模様との複合になり、前記表面側模様の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様と裏面模様とが少なくとも透視されることを特徴とする化粧シート。」である点で一致し、
本件発明2においては、表面側模様が「不透明性」模様を有するものであり、かつ、光反射性模様と複合して裏面側模様を形成する模様が、「着色透明及び半透明を含む実質的に透明な透明性」模様であるのに対し、甲第2号証記載の発明においては、「第二の絵柄印刷層」、「絵柄印刷層」の透明性が不明である点(相違点4)で、少なくとも相違する。
よって、本件発明2は甲第2号証に記載された発明ではない。

3-2-3-3.本件発明3について
本件発明3は、本件発明1または2を引用して記載し、技術的な限定を加えたものであるから、本件発明1、2についての判断と同様の理由により(上記3-2-3-1.、3-2-3-2.参照)、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明とはいえない。

3-2-3-4.本件発明4について
甲第1号証の摘示記載(1-a)〜(1-g)からみて、甲第1号証には、以下のとおりの発明が記載されているものと認められる。
「透明なプラスチック表面シートの第一シートの裏面に隠蔽性のあるパターン印刷層を印刷して形成し、透明なプラスチック表面シートの第二シートの裏面に隠蔽性のあるパターン印刷層を印刷して形成し、隠蔽性があって明度の高い着色プラスチックの基材シート上に、パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料を練り込まれ内部で光が乱反射する半透明のプラスチック中間シートを載せ、その上に上記第一シートおよび第二シートをそれぞれ印刷面を下にして順に重ね、一体化して、化粧シートを製造する方法」
本件発明4と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件発明4においては、「部分的な光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成」するのに対し、甲第1号証記載の発明においては、隠蔽性のあるパターン印刷層に隠蔽されて一種の模様となる、パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料を練り込まれ内部で光が乱反射する半透明のプラスチック中間シートは、シート状に成形されたものである点(相違点5)で、少なくとも両者は相違する。
よって、本件発明4は甲第1号証に記載された発明ではない。

甲第2号証の摘示記載(2-a)〜(2-g)からみて、甲第2号証には、以下のとおりの発明が記載されているものと認められる。
「基材上に、隠蔽ベタ印刷層、絵柄印刷層、透明な合成樹脂層、第二の絵柄印刷層、第二の透明な合成樹脂層、およびツヤ調整層を順に積層し、エンボスを施して化粧材を製造する際に、上記隠蔽ベタ印刷層の上にパール顔料、金属粉からなる顔料により形成された光輝性着色層を設けて化粧材を製造する方法」
本件発明4と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、本件発明4においては、透明フイルムの表面に表面側模様を、その裏面に前記表面側模様の間から見えるように裏面側模様を形成し、その後、透明フイルムの表面に透明層を形成し、透明フイルムの裏面には隠蔽層を設ける工程を採用しているのに対し、甲第2号証記載の発明においては、各層を基材上に下から順に積層している点(相違点6)で、少なくとも両者は相違する。
よって、本件発明4は甲第2号証に記載された発明ではない。

3-2-3-5.本件発明5について
甲第1号証には、3-2-3-4.で上述したとおりの発明が記載されているものと認められる。
本件発明5と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件発明5においては、「部分的な光反射性模様を少なくとも有しその間に隙間を有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成」する点(相違点7)で、少なくとも両者は相違する。
よって、本件発明5は甲第1号証に記載された発明ではない。

甲第2号証には、3-2-3-4.で上述したとおりの発明が記載されているものと認められる。
本件発明5と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、本件発明5においては、「部分的な光反射性模様を少なくとも有しその間に隙間を有する裏面側模様」を形成する点(相違点8)で、少なくとも両者は相違する。
よって、本件発明5は甲第2号証に記載された発明ではない。

3-2-4.理由2について

3-2-4-1.本件発明1について
本件発明1と甲第1号証記載の発明との相違点1(上記3-2-3-1.の項参照。「本件発明1においては、前記裏面側模様は、部分的な前記光反射性模様を少なくとも有し、該光反射性模様間には隙間を有する点」)について検討する。
甲第1号証の特許請求の範囲には、光反射性のプラスチック中間シートを用いることが明確に規定されているから、甲第1号証記載の発明において、上記光反射性のプラスチック中間シートを例えば光反射性の印刷層などに変更して部分的な光反射性模様とし、これら模様間に隙間を形成させる理由が見当たらない。シートを他のシート上に積層する場合、特段の規定がなければ通常部分的でなく全面に設けることが技術常識であるから、上記光反射性のプラスチック中間シートを、例えば部分的に設けるなどして上記光反射性模様間に隙間を形成させることは、当業者であっても容易に想到することとはいえない。
よって、上記相違点1は、当業者にとって容易になし得ることでないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

本件発明1と甲第2号証記載の発明との相違点2(上記3-2-3-1.の項参照。「本件発明1においては、前記裏面側模様は、部分的な前記光反射性模様を少なくとも有し、該光反射性模様間には隙間を有する点」)について検討する。
甲第2号証の摘示記載(2-f)「木の照り、皮の光沢、石の輝き、あるいは布の光沢などが、それによってよく再現される。」からみて、光輝性着色層の技術的意味は、化粧材の模様全体に照り、光沢等を付与するということであって、照りや光沢を付与するための光輝性着色層を、特に部分的とし、その間に隙間を形成させることは、当業者であっても想到し得ない。
よって、上記相違点2は、当業者にとって容易になし得ることでないから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明を組み合わせても、上記相違点1、2は当業者にとって容易になし得ることでないから、本件発明1は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-2-4-2.本件発明2について
本件発明2と甲第1号証記載の発明との相違点3(上記3-2-3-2.の項参照。「本件発明2においては、光反射性模様と複合して裏面側模様を形成する模様が、「着色透明及び半透明を含む実質的に透明な透明性」模様であるのに対し、甲第1号証記載の発明においては、「隠蔽性のあるパターン印刷層」である点」)について検討する。
甲第1号証の特許請求の範囲においては、パターン印刷層が隠蔽性であること、すなわち不透明であることが、明確に規定されており、甲第1号証記載の発明において、上記パターン印刷層を透明性にすることは、当業者にとって容易とはいえない。
よって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

本件発明2と甲第2号証記載の発明との相違点4(上記3-2-3-2.の項参照。「本件発明2においては、表面側模様が「不透明性」模様を有するものであり、かつ、光反射性模様と複合して裏面側模様を形成する模様が、「着色透明及び半透明を含む実質的に透明な透明性」模様であるのに対し、甲第2号証記載の発明においては、「第二の絵柄印刷層」、「絵柄印刷層」の透明性が不明である点」)について検討する。
不透明インキや透明インキを用いて絵柄を印刷して、不透明性模様や透明性模様を形成することは周知であるものの、甲第2号証記載の発明において、模様に相当する「第二の絵柄印刷層」、「絵柄印刷層」の前者を不透明とし、後者を透明とし、これら絵柄印刷層の間に違いを持たせることは、当業者であっても容易になし得ることとはいえない。
よって、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明を組み合わせても、上記相違点3、4は当業者にとって容易になし得ることでないから、本件発明2は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-2-4-3.本件発明3について
本件発明3は、本件発明1または2を引用して記載し、技術的な限定を加えたものであるから、本件発明1、2についての判断と同様の理由により(上記3-2-4-1.、3-2-4-2.参照)、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-2-4-4.本件発明4について
本件発明4と甲第1号証記載の発明との相違点5(上記3-2-3-4.の項参照。「本件発明4においては、「部分的な光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成」するのに対し、甲第1号証記載の発明においては、隠蔽性のあるパターン印刷層に隠蔽されて一種の模様となる、パール顔料、金属の粉末などの光輝性顔料を練り込まれ内部で光が乱反射する半透明のプラスチック中間シートは、シート状に成形されたものである点」)について検討する。
甲第1号証の特許請求の範囲には、光反射性の上記プラスチック中間シートを設けることが明確に規定されており、甲第1号証記載の発明においては、予めシートに成形したものを用いて積層するものであるから、上記光反射性のプラスチック中間シートを印刷により形成することは、当業者であっても容易に想到するものではない。
したがって、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

本件発明4と甲第2号証記載の発明との相違点6(上記3-2-3-4.の項参照。「本件発明4においては、透明フイルムの表面に表面側模様を、裏面に前記表面側模様の間から見えるように裏面側模様を形成し、その後、透明フイルムの表面に透明層を形成し、透明フイルムの裏面には隠蔽層を設ける工程を採用しているのに対し、甲第2号証記載の発明においては、各層を基材上に下から順に積層している点」)について検討する。
甲第2号証には、各層を基材上に下から順に積層する方法しか記載されておらず、本件発明4の上記工程については記載も示唆もない。
そして、本件発明4は、相違点6の上記工程を採用することにより、「その製造の過程で、不透明性模様4と光反射性模様5は透明フイルム2の表裏に形成されるところから、模様が表裏で良く同調し繊細で微妙な表現が可能となり、製造も容易である。とくに、模様の微妙な同調関係と木肌の凹凸感が要求される木目化粧シートとして優れた効果がえられる」という、明細書(段落【0018】)記載の顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件発明4は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明を組み合わせても、上記相違点5、6は当業者にとって容易になし得ることでないから、本件発明4は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-2-4-5.本件発明5について
本件発明5と甲第1号証記載の発明との相違点7(上記3-2-3-5.の項参照。「本件発明5においては、「部分的な光反射性模様を少なくとも有しその間に隙間を有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成」する点」)について検討する。
甲第1号証の特許請求の範囲には、光反射性のプラスチック中間シートを設けることが明確に規定されているから、甲第1号証記載の発明において、上記光反射性のプラスチック中間シートに代えて光反射性の印刷層を印刷により形成し、部分的な光反射性模様とし、これら模様間に隙間を形成させることは、当業者であっても容易に想到するものではない。
したがって、上記相違点7は、当業者にとって容易になし得ることでないから、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

本件発明5と甲第2号証記載の発明との相違点8(上記3-2-3-5.の項参照。「本件発明5においては、「部分的な光反射性模様を少なくとも有しその間に隙間を有する裏面側模様」を形成する点」)について検討する。
甲第2号証の摘示記載(2-f)「木の照り、皮の光沢、石の輝き、あるいは布の光沢などが、それによってよく再現される。」からみて、光輝性着色層の技術的意味は、化粧材の模様全体に照り、光沢等を付与するということであって、照りや光沢を付与するための光輝性着色層を、特に部分的とし、その間に隙間を形成させることは、当業者であっても想到し得ない。
よって、上記相違点8は、当業者にとって容易になし得ることでないから、本件発明5は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明を組み合わせても、上記相違点7、8は当業者にとって容易になし得ることでないから、本件発明5は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


3-3.当審の通知した取消理由について

3-3-1.平成16年12月1日付けで通知した取消理由について
上記3-2.の項で述べたように、本件発明1〜5は、刊行物1、2(甲第1、2号証)に記載された発明ではなく、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、本件発明1の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでなく、本件発明3の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

3-3-2.平成17年4月5日付けで通知した取消理由について
平成17年2月4日付けの訂正請求は取下げられ、平成17年4月18日付けの訂正請求が認められたから、特許法第36条第5項及び第6項についての取消理由は解消した。


4.むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜5に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
化粧シートとその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルムと、裏面側の隠蔽層とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートであって、前記表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には少なくとも不透明性模様を有する表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と不透明性模様との複合になり、前記表面不透明性模様の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様と裏面不透明性模様とが少なくとも透視される化粧シートにおいて、
前記裏面側模様は、部分的な前記光反射性模様を少なくとも有し、該光反射性模様間には隙間を有することを特徴とする化粧シート。
【請求項2】 透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルムと、裏面側の隠蔽層とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートにおいて、
前記表面側の透明層と中間の透明フイルムの間には少なくとも不透明性模様を有する表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルムと隠蔽層との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様が形成され、
前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様と着色透明及び半透明を含む実質的に透明な透明性模様の複合になり、前記表面不透明性模様の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様と裏面透明性模様が少なくとも透視されることを特徴とする化粧シート。
【請求項3】 前記表面側の透明層は、その主体層の表面に主体層よりも高光沢の保護膜を形成した構成になることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧シート。
【請求項4】 透明フイルムの表面に少なくとも不透明性模様を有する表面側模様を1回又は複数回の印刷により形成し、該透明フイルムの裏面には前記表面側模様の間から見えるように部分的な光反射性模様を少なくとも有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成し、その後、透明フイルムの表面に透明層を形成し、透明フイルムの裏面には隠蔽層を設けたことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項5】 透明フイルムの表面に少なくとも不透明性模様を有する表面側模様を1回又は複数回の印刷により形成し、隠蔽層の表面に部分的な光反射性模様を少なくとも有しその間に隙間を有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成し、その後、透明フイルムの表面に透明層を形成し、透明フイルムの裏面に隠蔽層を被着したことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、建造物の内装材や外装材あるいは家具や什器等の表面材として用いる化粧シート、特にプラスチック多層シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の化粧シートとしては、特公平1-25703号に示されるものがある。
図8は、上記従来の化粧シートの断面図である。この従来の化粧シートは、表面全体にパール光沢を有する層Bを有する基体シートAの表面に、表面に遮光性模様Eを有する透明層Cを形成し、該透明層Cの表面に透明保護層Dを設けた構造である。
上記従来の化粧シートによれば、シートの表面側から遮光性模様Eの間に0.05mmから0.3mmの膜厚の透明層Cを通してパール光沢を有する層Bが透視される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の化粧シートでは、透明層Cの厚さを仮に0.1mmから0.5mmに変えた場合でも、遮光性模様Eと光反射層としてのパール光沢を有する層Bとの間に位置の差が認められず立体感が得られない。これは、遮光性模様Eの間から光反射層がベタに見え、遮光性模様Eが光反射層上に直接印刷形成されているかのように見え、あるいは、遮光性模様Eが光反射層からの反射光によって見えにくいためである。
【0004】
本発明は上記事情に基いてなされたもので、プラスチック多層シートよりなるこの種の化粧シートにおいて、透明フイルム表裏の不透明性模様と光反射性模様とが化粧シートの表面側から厚さ方向に十分な位置の差をもって観察できる立体感のある化粧シートを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
次に、上記の課題を達成するための手段を、本発明の実施例に対応する図を参照して説明する。
すなわち、本願の発明は、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスチック層よりなる表面側の透明層3と、透明、着色透明及び半透明を含む実質的に透明なプラスッチックフイルムよりなる中間の透明フイルム2と、裏面側の隠蔽層1とを少なくとも具備し、これらが複合一体化される化粧シートの構造を前提としている。請求項1の発明では、前記表面側の透明層3と中間の透明フイルム2の間には、少なくとも不透明性模様4を有する表面側模様が形成され、前記中間の透明フイルム2と隠蔽層1との間にはパール又は金属粉等の光反射性材料が混入された光反射性模様5を少なくとも有する裏面側模様が形成され、前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様5と不透明性模様6との複合になり、前記表面不透明性模様4の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様5と裏面不透明性模様6とが少なくとも透視される化粧シートにおいて、前記裏面側模様は、部分的な前記光反射性模様5を少なくとも有し、該光反射性模様間には隙間を有することを特徴としている。
【0006】
次に、本願の発明は、前記裏面側模様は、光反射性模様5と不透明性模様6との複合になり、前記表面不透明性模様4の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様5と裏面不透明性模様6とが少なくとも透視されることを特徴とする化粧シートにある。請求項2の発明において、表面不透明性模様4の間から、光反射性模様5と裏面不透明性模様6と隠蔽層1が透視されることが望ましい。
【0007】
次に、本願の発明は、図7に示されるように、前記裏面側模様は、少なくとも光反射性模様5と着色透明及び半透明を含む実質的に透明な透明性模様7との複合になり、前記表面不透明性模様4の間の少なくとも一部からは、前記光反射性模様5と透明性模様7とが少なくとも透視されることを特徴とする化粧シートにある。請求項3の発明において、表面不透明性模様4の間から、光反射性模様5と透明性模様7と隠蔽層1が透視されることが望ましい。
【0008】
図7の実施態様では、裏面側模様は、光反射性模様5と裏面不透明性模様6と着色透明及び半透明を含む実質的に透明な透明性模様7との複合になり、表面不透明性模様4の間から、光反射性模様5と透明性模様7と裏面不透明性模様6と隠蔽層1が透視される。
このように、本願の発明では、裏面側模様は、光反射性模様5を少なくとも有し、裏面不透明性模様6と透明性模様7の少なくともいずれか一方を有する複合模様となっている。
【0009】
上記本願の発明において、化粧シートの厚さは0.15〜0.7mm程度である。表面の透明層3は、コーティングでもフイルム貼りでもよく、ポリ塩化ビニル半硬質透明シートを用いることが出来る。透明層3の表面は図1乃至図3の実施例に示されるように平滑でも良く、また、図4乃至図6の実施例に示されるようにエンボスによる微細な凹凸模様3Cを施しても良い。透明層3の厚さは、0.05〜0.3mm程度である。
さらに、図1乃至図3の実施例に示されるように、透明層3は、ポリ塩化ビニル半硬質樹脂等よりなる主体層3Aの表面に、硬質透明の保護膜3Bを形成させることができる。保護膜3Bは、主体層3Aよりも硬質で高光沢の透明シートを加熱転写により被着したり、紫外線硬化型樹脂を被着して紫外線硬化させることにより形成できる。この場合、透明層3の厚さは、0.05〜0.3mm程度、主体層の厚さは、0.1〜0.6mm程度、保護膜の厚さは、1〜20μ程度とすることができる。
透明層3を高光沢とすることにより、光反射性模様5による光反射層からの輝度を向上させることができ、反射光が少ない場合でも輝度が高いように感じられる。
【0010】
透明フイルム2は、厚手(0.1mm程度以上、望ましくは0.2mm〜0.4mm)のポリ塩化ビニル半硬質透明シートを用いることができる。図1乃至図3の実施例に示されるように、透明フイルム2の表裏に直接表面側及び裏面側模様を印刷形成させるときには、その表裏面を予めグラビア印刷可能な粗面に形成しておく。また、図4乃至図6の実施例に示されるように、透明フイルム2の表面に表面側模様を印刷形成させるときには、その表面を予めグラビア印刷可能な粗面に形成しておく。このような粗面とすることにより表裏側模様の印刷形成特にグラビア印刷による形成が容易となる。
【0011】
表面不透明性模様4を有する表面側模様は、1回又は複数回の印刷により形成でき、多色による複合模様とすることが出来る。また、その一部に光反射性材料を混入させることが出来る。遮光インキによる表面側模様の面積は、化粧シートの表面積の50%程度以上とすることが望ましい。光反射性模様5を有する裏面側模様は、1回又は複数回の印刷により形成でき、図の各実施例では、光反射性模様5と、1回又は複数回の印刷による裏面不透明性模様6若しくは透明性模様7の少なくともいずれか一方による複合模様とされている。透明フイルム2の裏面には、まず、1回又は複数回の印刷により裏面不透明性模様6(及び・又は透明性模様7)を形成し、その外面に一部ダブルようにして光反射性模様5を印刷形成する。光反射インキによる模様は、上記表面側模様の遮光インキの無い部分(隙間)の面積以上とする。表裏の不透明性模様は、遮光インキにより形成され、光反射性模様は、透明インキにパール又は金属粉等が混入された反射性インキにより形成される。透明性模様7は、着色透明インキなど表面側から認識可能なインキにより形成すれば良い。
表面側模様の間には隙間が形成され、該隙間から裏面側模様の光反射性模様及び裏面不透明性模様及び・又は透明性模様が透視でき、さらに、裏面側模様の間に形成された隙間から隠蔽層1が透視される。
【0012】
隠蔽層1は、ポリ塩化ビニル半硬質透明白色シートを用いることができ、ベタ印刷でもフイルム貼りでもよく、白又はそれ以外の色、例えばグレー系、黒系等の色とすることができる。このフイルムを基材に貼り付けることができ、隠蔽層1の裏面に接着層と剥離紙を設けることができる。
【0013】
本願の発明は、化粧シートの製造方法に係り、対応する図1乃至図3の実施例に示されるように、透明フフイルム2の表面に少なくとも不透明性模様4を有する表面側模様を1回又は複数回の印刷により形成し、該透明フイルム2の裏面には前記表面側模様の間から見えるように部分的な光反射性模様5を少なくとも有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成する。その後、透明フイルム2の表面にコーティングかフイルムラミネートにより透明層3を形成し、透明フイルム2の裏面にはコーティングかフイルムラミネートにより隠蔽層1を設ける。透明層の表面には、透明フイルム2との一体化後又はその前に、例えば紫外線硬化型樹脂をコーティングして硬化させることにより、高硬度及び高光沢の保護膜を形成させることができる。
透明フフイルム2の表裏面を、予め、印刷可能な粗面にすることによりグラビア印刷により容易に模様を形成できる。
【0014】
本願の発明に係る化粧シートの製造方法では、対応する図4乃至図6の実施例に示されるように、透明フイルム2の表面に少なくとも不透明性模様4を有する表面側模様を1回又は複数回の印刷により形成する。また、別途グレー若しくは白色等のプラスチックフイルムによる隠蔽層1の表面に間に隙間を有する部分的な光反射性模様5を少なくとも有する裏面側模様を1回又は複数回の印刷により形成する。その後、透明フイルム2の表面に透明層3を形成し、透明フイルム2の裏面に隠蔽層1を被着させる。
透明フイルム2の表面は、予めグラビア印刷可能な粗面にしておく。
【0015】
【作用】
上記本願の発明の化粧シートの構成によれば、化粧シートの表面側から、透明層3を通して不透明性模様4が見え、この不透明性模様4の間から透明フイルム2を通して光反射性模様5が見え、さらに、この光反射性模様5の間から隠蔽層1が見える。上記不透明性模様4の間には、光反射性模様5と隠蔽層1が共に見える部分と光反射性模様5のみが見える部分と隠蔽層1のみが見える部分がある。さらに、請求項2又は3の発明では、不透明性模様4の間から透明フイルム2を通して光反射性模様5と裏面不透明模様6(及び・又は透明性模様7)が少なくとも見え、隠蔽層1が見えることもある。
【0016】
これを化粧シートの表面側から見たときに、不透明性模様4に当たった光が反射して不透明性模様4が見え、不透明性模様4の間からの透過光は、光反射性模様5に当たって反射することにより光反射性模様5が見えると同時に不透明性模様4の少なくとも一部をを浮き立たせ、光反射性模様5の間からの透過光は隠蔽層1又は裏面不透明模様6(及び・又は透明性模様7)に当たって反射し又は吸収される。
このように、不透明性模様4の一部が裏面の光反射性模様5からの反射光により浮き立ち他の部分が隠蔽層1又は裏面不透明模様6(及び・又は透明性模様7)と重なることから、不透明性模様4の上記一部と他の部分の間で透明フイルム2の膜厚が観察され、立体感が得られる。
このように、本願発明では、絵柄に位置に差がついてくる。また、透明フイルムの厚みに比例して表裏の絵柄の位置がずれる。また、表面透明層の光沢が高いほど少量の光でも反射する。
【0017】
尚、表面模様の遮光インキの面積が、シート表面積の50%以下と少ないときには、裏面の光反射インキによる反射が全反射に近くなり表面模様の絵柄が見えにくくなる。さらに、光反射インキによる模様の面積が表面模様の間の面積よりも少ないと光の反射が少なくなり立体感が出がたい。
【0018】
また、本願の発明では、その製造の過程で、不透明性模様4と光反射性模様5は透明フイルム2の表裏に形成されるところから、模様が表裏で良く同調し繊細で微妙な表現が可能となり、製造も容易である。とくに、模様の微妙な同調関係と木肌の凹凸感が要求される木目化粧シートとして優れた効果がえられる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
実施例1(図1乃至図3参照) 木目調化粧シート
1.250μのPVC(ポリ塩化ビニル)半硬質透明シート(透明フイルム2)の裏面側はグラビア印刷が可能な表面粗さ1〜2μに調整された面(粗面2A)を持っている。この上にオークの乱れ柾のツキ板を撮影して電子彫刻によりグラビア製版された最も材質感を表現した木肌版にてメジューム:ブラック:レッド:イエロー=97.2:0.2:0.6:2の比率で調色したPVCのダブリング用グラビアインキを印刷(裏面側不透明性模様6、裏面側模様)する。
2.次に木が持っている照りを表現する為、メジューム:パールホワイト=50:50の前記と同様インキにて色変化版をコントラストを強めた調子で木肌版に柄を同調させて印刷(光反射性模様5、裏面側模様)する。
3.このあと透明シート(透明フイルム2)の逆の表面側にも、グラビア印刷が可能な表面粗さに調整してある面(粗面2B)に、オークの乱れ柾の導管版を通常の版とは逆のネガ版を透過光で見たときに柄が同調するように製版した導管ネガ版を使用して、白:レッド:エイロー:ブルー=98.8:0.4:0.4:0.4の比率で調色したインキで裏面側の柄と同調させて印刷(表面不透明性模様4、表面側模様)する。
上記2、3において、カレンダーで製造するシートでは、エンボス面に当たる裏面の上記粗面2Aは、1〜2μの粗さとなるが、ゴムロール面のあたる表面側の粗面2Bは、5〜15μとやや粗くなり、グラビア版では印刷が難しくなるので例えば150メッシュで25〜60μの深さとすることが望ましい。
4.3で得られた透明シート(透明フイルム2)を中に裏面側にPVC半硬質の80μの白いシート(隠蔽層1)と、表面側にはPVC半硬質透明シート60μ(主体層3A)を3層ラミネートする。
5.4の3層ラミネートされたシートの表面に紫外線硬化型の高光沢の樹脂をコーティング(保護膜3B)して奥行きのある木目シートが得られた。
【0021】
実施例2 木目調化粧シート
1.実施例1の4で3層ラミネートをするときに、透明層3の表面に粗さを最大120μの砂目エンボスにてエンボスする。
マットな光沢でも立体感のあるシートが得られた。
【0022】
実施例3 木目調化粧シート
1.実施例1の3で得られたシートの裏面側に隠蔽力のある一般にバックプリントと呼ばれるインキによって隠蔽力をつける為のベタインキで電子彫刻により製版した133メッシュで55μの深さのメッシュロールでベタ刷り(隠蔽層1)をする。
2.次に表面側にはウレタン樹脂のクリヤーなトップコートを150メッシュで50μの深さのメッシュロールでコーティング(透明層3)をして経済的でかつ実施例1や2に近いシートを得た。このシートは木質系の基材に貼って反射光で見てもランプシェードなどで透過光で見ても白のインキで完全に隠蔽することなく見られる。
【0023】
実施例4 木目調化粧シート
1.実施例1の3で得られたシートの裏面側にPVC半硬質のグレー(無彩色で明度が7)の80μのシート(隠蔽層1)と表面側にはPVCの半硬質透明シート60μ(透明層3)を3層ラミネートする。
2.次に転写用PETにハードコートされたフィルムを表面側にラミネート(保護膜3B)してその熱により転写された高光沢のグレーの染色木目調のものでもやはり奥行きのあるシートを得た。
【0024】
実施例5(図4乃至図6参照) 御影石調化粧シート
1.PVC半硬質の100μの白いシート(隠蔽層1)に御影石の似せたデザインよりグラビア製版された版で印刷をする。
1色目はメジューム:シルバー=45:55で反射する部分を形成(光反射性模様5、裏面側模様)して、2色目はメジューム:ブラック:レッド:イエロー=95.1:0.1:1:3、3色目がメジューム:ブラック:レッド:ブルー=92:1:2:5(裏面不透明性模様)で石の機能を表現する。
2.次に1で得られたシートと60μのPVC半硬質透明シート(透明フイルム2)をラミネートする。このとき梨地調のエンボスで粗さ1〜2μのエンボスシートを使用(粗面2A)してグラビア印刷が可能にしておく。
3.ラミネートされたシート(透明フイルム2)の上からテラゾーを撮影して階調豊かな版を反転したネガ調(インキの転移する面積が多いという意味)の版で白:レッド:イエロー:ブルー=97:1:1:1で印刷(表面不透明性模様4、表面側模様)をする。
4.3で得られたシートの上に60μのPVC半硬質透明シートをラミネート(透明層3)し梨地調で表面粗さが60μを最大とするエンボス(エンボス3C)をつけてマットに仕上げた。
実施例5では、透明フィルムの両面に印刷をしなくても断面の構成は変わらず、人工的に造り出したテラゾーのように柄を同調させなくても同様の効果が得られた。
【0025】
【発明の効果】
本願の発明による化粧シートによれば、化粧シートの表面側から、不透明性模様4の一部が裏面の光反射性模様5からの反射光により浮き立ち、光反射性模様5がその反射特性から前に出、該光反射性模様5の間から、奥まって、隠蔽層1又は裏面不透明性模様6(及び・又は透明性模様7)が見えることから、各模様による絵柄の位置に微妙な差がつき、透明フイルムの厚みに比例して表裏の模様による絵柄の位置がずれ、微妙な凹凸感と絵柄の立体的な同調感がえられる。
【0026】
また、本願の発明では、その製造の過程で、不透明性模様4と光反射性模様5は透明フイルム2の表裏に形成されるところから、模様が表裏で良く同調し繊細で微妙な表現が可能となり、製造も容易である。
【0027】
このように、本発明では、木目化粧シートのように、木肌の照りと微妙に同調す凹凸感が要求される化粧シートに適応して優れた効果が得られる。また、御影石調あるいは幾何学模様の化粧シートに適応しても立体感と模様による絵柄の立体的な同調感が得られ優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例に係る化粧シートの概略断面図である。
【図2】
同分解断面図である。
【図3】
同平面図である。
【図4】
本発明の他の実施例に係る化粧シートの概略断面図である。
【図5】
同分解断面図である。
【図6】
同平面図である。
【図7】
本発明のさらに他の実施例に係る化粧シートの概略断面図である。
【図8】
従来の化粧シートの概略断面図である。
【符号の説明】
1 隠蔽層、2 透明フイルム、3 透明層、4 表面不透明性模様、5 光反射性模様、6 裏面不透明性模様、7 透明性模様。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-05-24 
出願番号 特願平6-160222
審決分類 P 1 651・ 534- YA (B32B)
P 1 651・ 113- YA (B32B)
P 1 651・ 121- YA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐野 健治  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 鴨野 研一
芦原 ゆりか
登録日 2002-12-06 
登録番号 特許第3376703号(P3376703)
権利者 シーアイ化成株式会社
発明の名称 化粧シートとその製造方法  
代理人 鈴木 典行  
代理人 西村 教光  
代理人 西村 教光  
代理人 鈴木 典行  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ