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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1121093
異議申立番号 異議2003-72161  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-27 
確定日 2005-05-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3381789号「インクカートリッジ」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3381789号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3381789号の請求項1乃至請求項3に係る発明は、平成3年7月8日に出願された特願平3-166856号の一部を平成13年(2001年)8月24日に特願2001-253873号として新たな特許出願としたものの一部を、さらに平成14年(2002年)3月15日に特願2002-71737号として新たな特許出願としたものであって、平成14年12月20日にその特許の設定登録がなされ、その後、請求項1乃至請求項3に係る発明の特許について遠山タイ子より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年2月17日に訂正請求がなされ、その後当審より審尋がなされ、異議申立人より平成16年11月17日に回答書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
ア.特許権者が求めている訂正の内容は、次のとおりである。
訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】インク取出口が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋と、インク取出口からインクを外部に供給可能にインク袋を収容するケースからなり、ホルダに装着されて前記インク取出口が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジにおいて、前記インク取出口が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に固定溝とを備え、また前記ケースが前記インク取出口の固定溝に対向する領域に嵌合部を備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に挿入して固定されているインクカートリッジ。」から、
「【請求項1】インク取出口が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋と、インク取出口からインクを外部に供給可能にインク袋を収容するケースと、蓋体とからなり、ホルダに装着されて前記インク取出口が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジにおいて、前記インク取出口が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に固定溝とを備え、また前記ケースが前記インク取出口の固定溝に対向する領域に、前記蓋体の装着される側が解放された嵌合部を備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に挿入して固定されているインクカートリッジ。」に訂正する。
訂正事項b:特許明細書の段落【0005】を、次のように訂正する。
「【課題を解決するための手段】 このような課題を達成するために本発明においては、インク取出口が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋と、インク取出口からインクを外部に供給可能にインク袋を収容するケースと、蓋体とからなり、ホルダに装着されて前記インク取出口が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジにおいて、前記インク取出口が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に固定溝とを備え、また前記ケースが前記インク取出口の固定溝に対向する領域に、前記蓋体の装着される側が解放された嵌合部を備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に挿入して固定されている。」

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0010】の記載に基づいて、蓋体がインクカートリッジの構成部材の一つであることに、技術的に限定すると共に、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0008】の記載及び図1に基づいて、嵌合部の形態を技術的に限定するものである。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項bは、訂正事項aに伴い、発明の詳細な説明の記載を、請求項1の記載との整合を図るべく訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明に相当する。
そして、上記訂正は、いずれも新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正前特許法第126条第1項ないし第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
ア.本件の請求項1乃至請求項3に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1乃至請求項3に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】インク取出口が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋と、インク取出口からインクを外部に供給可能にインク袋を収容するケースと、蓋体とからなり、ホルダに装着されて前記インク取出口が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジにおいて、前記インク取出口が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に固定溝とを備え、また前記ケースが前記インク取出口の固定溝に対向する領域に、前記蓋体の装着される側が解放された嵌合部を備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に挿入して固定されているインクカートリッジ。
【請求項2】前記ケースが前記ホルダに装着されたとき、前記ホルダの位置決め突起に係合する位置決め穴が前記ケースに形成されている請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】前記ホルダに装着されて前記インク袋の面が略垂直に位置した状態で、前記ケースのインク取出口側の面の前記インク取出口を挟む上及び下に、前記インク取出口と前記供給針との契合よりも先に前記ホルダに設けられた位置決め突起と契合する位置決め穴が形成され、また前記ケースのインク取出口が形成された面と交差する面の前記インク取出口側に前記ホルダに設けられたレールにガイドされるリブが形成されている請求項1に記載のインクカートリッジ。」(以下、「本件発明1」乃至「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」という。)

イ.引用例等
当審が通知した取消理由に引用した、実願平1-73408号(実開平3-15135号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)、特開平2-108550号公報(以下、「引用例2」という。)、
特開平2-198862号公報(以下、「引用例3」という。)、実願昭62-68494号(実開昭63-176635号)のマイクロフィルム(以下、「引用例4」という。)には、それぞれ下記の事項が記載されている。

[引用例1]
a.「本考案はインクジェットプリンタにおけるインクカートリッジに関する。」(第1頁12〜13行)。
b.「インクカートリッジ8は、ラミネートフィルム等のシート体により形成されたインク袋2、インク袋の収縮にともなって変位する検出板3、廃インク回収袋4で構成される。取出口1が熱シールによって溶着されたインク袋2は、接着あるいは両面粘着テープによりカートリッジケース5に固定され、かつ取出口1がカートリッジケース5に固定されている。」(第3頁13〜20行)。
c.「廃インク口6が熱シールによって溶着された廃インク回収袋4が、・・・上蓋7に固定されており、尚かつ廃インク口6がカートリッジケース5に固定されている。」(第4頁3〜7行)。
d.「上記の如く構成されたインクカートリッジ8において、取出口1は第2図の如くポリエチレン取出口1aと取出口ゴム1bが一体成型されている。」(第4頁8〜10行)。
e.第2図には、取出口1の外周に環状溝が形成されている点が記載されている。
f.第1図には、取出口1の外周に形成された環状溝が、第1図において該環状溝に嵌合している凸状にみえるカートリッジケース5に設けられた嵌合部に嵌合していると共に、インク供給針が挿通されている点が記載されている。

[引用例2]
a.「インクカートリッジ1はケース2内の上段にインク袋3を収納し、・・・インクカートリッジ1は、そのケース2の両側面に設けた突起2aがインクジェット記録装置に設置されたガイド部材6の案内溝6aに案内されて該ガイド部材6に位置決め装着されるようになっている。この装着状態において、インク袋3に設けた・・・インク供給口7には、インク供給チューブ8に接続された中空のインク供給針9が貫通した状態となっている。」(第1頁右下欄3〜19行)。

[引用例3]
a.「第1A図において、1はカートリッジ型の液体噴射記録ヘッドであり、記録ヘッド1は互いに着脱自在な記録ヘッド部2とインクタンク3とで構成され、」(第3頁左上欄3〜6行)。
b.「記録ヘッド部2の係止ピン16をインクタンク3の係止孔3Aに差込んで双方を一体にする」(第3頁右上欄20行〜左下欄2行)。

[引用例4]
a.「10は該針状中空部材9を保護する為の保護リブであり、該針状中空部材9の先端は該リブ10より出張らない高さになっている。該保護リブ10は結合状態でカバー3の対応する位置に設けた溝部3aに入り込む位置に形成されている。以上の構成において、バックケース(インクカートリッジ)1をインクヘッド(フロントケース)4に装着していくと、保護リブ10の先端部10aがカバー3の溝部3aに入り込む。保護リブ10の外形に対して溝部3aの内径が僅かに大きくガタのない寸法に設定されており、装着方向と直行する方向に対する位置決めを行うことができる。更に深く装着すると針状中空部材9の先端部が栓部材6の溝6aに挿入され、・・・針状中空部材9の先端部が薄肉部6bに当接した状態から更に深く装着すると、該中空部材9が該薄肉部6bを貫通すると同時に、・・・係止用ピン5、5がピン受け溝23、23に嵌着して結合が完了する。」(明細書第7頁5行〜第8頁第8行)。

ウ.対比・判断
(1)引用例1記載のインクカートリッジ8は、インクジェットプリンタにおけるインクカートリッジの装着部材に装着することによって使用されることは明らかである。
また、インク供給針は、記録ヘッドに連通するものであることも明らかである。
引用例1の上記記載a〜fからみて、インク袋2に熱シールによって溶着された取出口1は、インク袋2に接合可能な接合部と、この接合部よりも先端側の外周に環状溝とを備えた部材であるといえる。
そうすると、引用例1の上記記載a〜fを含む明細書及び図面によると、引用例1には、下記の発明が記載されている。
「取出口1が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋2と、取出口1からインクを外部に供給可能にインク袋2を収容するカートリッジケース5と、上蓋7とからなり、装着部材に装着されて前記取出口1が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジ8において、前記取出口1が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に環状溝とを備え、前記取出口1が前記環状溝を前記ケースの嵌合部に固定されているカートリッジケース。」(以下、「引用例1発明」という。)

(2)そこで、まず、本件発明1と引用例1発明とを対比する。
引用例1発明の「取出口1」、「インク袋2」、「カートリッジケース5」、「上蓋7」、「装着部材」、「環状溝」、「インクカートリッジ8」は、それぞれ、本件発明1の「インク取出口」、「インク袋」、「ケース」、「蓋体」、「ホルダ」、「固定溝」、「インクカートリッジ」に相当する。
してみると、本件発明1と引用例1発明とは、
「インク取出口が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋と、インク取出口からインクを外部に供給可能にインク袋を収容するケースと、蓋体とからなり、ホルダに装着されて前記インク取出口が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジにおいて、前記インク取出口が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に固定溝とを備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に固定されているインクカートリッジ。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件発明1では、ケースがインク取出口の固定溝に対向する領域に、蓋体の装着される側が解放された嵌合部を備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に挿入して固定されているのに対して、引用例1発明では、取出口1の環状溝(固定溝)がどのようにカートリッジケース5(ケース)に係合しているのか明確でない点。

上記相違点1について検討する。
インクカートリッジのインク袋を収容するケースにインク取出口を固定する際に、インク袋のインク取出口の口金部に凸部を有し、ケース側の嵌合部に凹部を有することにより、前記凸部を前記凹部に挿入して固定することは周知である(例えば、特開昭59-227458号公報、特開昭57-24284号公報、特開平2-88248号公報等参照)。
この凹凸の関係を逆にして、インク袋のインク取出口の口金部に凹部を有し、ケース側の嵌合部に凸部を有する様にし、相違点1に係る本件発明1の如く構成することは、当業者が適宜なし得る単なる設計事項に過ぎない。
そして、相違点1に係る本件発明1の構成によって、本件発明1が格別の効果を奏するものであるということはできない。

したがって、本件発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)次に、本件発明2について
本件発明2と引用例1発明とを対比する。
上記(2)と同様にして、本件発明2と引用例1発明とは、
「インク取出口が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋と、インク取出口からインクを外部に供給可能にインク袋を収容するケースと、蓋体とからなり、ホルダに装着されて前記インク取出口が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジにおいて、前記インク取出口が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に固定溝とを備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に固定されているインクカートリッジ。」である点で一致し、前記相違点1に加え、次の点で相違する。
相違点2:本件発明2では、ケースがホルダに装着されたとき、前記ホルダの位置決め突起に係合する位置決め穴が前記ケースに形成されているのに対して、引用例1発明では、その点について規定されていない点。

上記相違点2について検討する。
引用例3には、記録ヘッド部2の係止ピン16をインクタンク3の係止孔3Aに差込んで双方を一体にする点が記載されている。
ここで、引用例3の「記録ヘッド部2」、「係止ピン16」、「インクタンク3」、「係止孔3A」は、それぞれ機能として、本件発明2の「ホルダ」、「位置決め突起」、「ケース」、「位置決め穴」に相当する。
してみれば、相違点2に係る本件発明2の構成は、引用例3に記載されている。
また、相違点1については、上記(2)での説示と同様である。
したがって、本件発明2は、引用例1及び引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)次に、本件発明3について
本件発明3と引用例1発明とを対比する。
上記(2)と同様にして、本件発明3と引用例1発明とは、
「インク取出口が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋と、インク取出口からインクを外部に供給可能にインク袋を収容するケースと、蓋体とからなり、ホルダに装着されて前記インク取出口が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジにおいて、前記インク取出口が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に固定溝とを備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に固定されているインクカートリッジ。」である点で一致し、前記相違点1に加え、次の点で相違する。
相違点3:本件発明3では、ホルダに装着されてインク袋の面が略垂直に位置した状態で、ケースのインク取出口側の面の前記インク取出口を挟む上及び下に、前記インク取出口と前記供給針との契合よりも先に前記ホルダに設けられた位置決め突起と契合する位置決め穴が形成され、また前記ケースのインク取出口が形成された面と交差する面の前記インク取出口側に前記ホルダに設けられたレールにガイドされるリブが形成されているのに対して、引用例1発明では、その点について規定されていない点。

上記相違点3について検討する。
引用例4には、針状中空部材9の先端がリブ10より出張らない高さにされ、リブ10の先端部10aとカバー3の溝部3aとで、装着方向と直交する方向に対する位置決めを行うことができる点が記載されている。
また、引用例2には、インクカートリッジ1は、そのケース2の両側面に設けた突起2aがインクジェット記録装置に設置されたガイド部材6の案内溝6aに案内されて該ガイド部材6に位置決め装着されるようになっている点が記載されている。
してみると、引用例4及び引用例2に記載された上記技術思想を引用例1発明に適用し、相違点3に係る本件発明3の如く構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、相違点1については、上記(2)での説示と同様である。
したがって、本件発明3は、引用例1、引用例2及び引用例4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

エ.むすび
以上のとおりであるから、本件発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。
したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
インクカートリッジ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 インク取出口が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋と、インク取出口からインクを外部に供給可能にインク袋を収容するケースと、蓋体とからなり、ホルダに装着されて前記インク取出口が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジにおいて、
前記インク取出口が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に固定溝とを備え、また前記ケースが前記インク取出口の固定溝に対向する領域に、前記蓋体の装着される側が開放された嵌合部を備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に挿入して固定されているインクカートリッジ。
【請求項2】 前記ケースが前記ホルダに装着されたとき、前記ホルダの位置決め突起に係合する位置決め穴が前記ケースに形成されている請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】 前記ホルダに装着されて前記インク袋の面が略垂直に位置した状態で、前記ケースのインク取出口側の面の前記インク取出口を挟む上及び下に、前記インク取出口と前記供給針との契合よりも先に前記ホルダに設けられた位置決め突起と契合する位置決め穴が形成され、また前記ケースのインク取出口が形成された面と交差する面の前記インク取出口側に前記ホルダに設けられたレールにガイドされるリブが形成されている請求項1に記載のインクカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、記録装置の筐体に設置されて記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
インク供給チューブを介して記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジは、例えば特開平3-7350号公報にみられるように、記録ヘッドにインクを供給するインク取出口が一端側に設けられてインクが封入された可撓性材料からなる長方形状のインク袋と、インク袋を収容するケースと蓋体とから構成されている。
このようなインクカートリッジは、インク取出口を先端とするように記録装置に装填して、記録装置側のインク供給針を貫通させてインク供給チューブを介して記録ヘッドにインクを供給する。
【0003】
このようなインクカートリッジは、そのインク取出口を記録装置のインク供給針に正確に位置決めするため、例えば実開平1-99633号公報に見られるように、インクカートリッジのインク取出口側に契合凹部を、また記録装置側に契合突起を形成することが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなインクカートリッジは、インクを封入した扁平なインク袋のインク取出口をこのインク袋を収容するハードケースから露出させるように収容して構成されている。
このようなインクカートリッジにおいては、インク取出口を正確にハードケースに取り付け、固定する必要がある。すなわち、記録装置に設けられたインクカートリッジの所定の収容部にハードケースが収容されるため、ハードケースとインク供給口との相対位置に誤差が存在すると、インク供給針がインク取出口の中心からずれた位置に挿通され、長期間の間にインク漏れを生じる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、大型のインクカートリッジであってもインク取出口とインク供給針とを正確に係合させることができるインクジェット記録装置のインクカートリッジを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成するために本発明においては、インク取出口が一端側に設けられ、インクが封入されたインク袋と、インク取出口からインクを外部に供給可能にインク袋を収容するケースと、蓋体とからなり、ホルダに装着されて前記インク取出口が記録ヘッドに連通するインク供給針に挿通されるインクカートリッジにおいて、前記インク取出口が、前記インク袋に接合可能な接合部と、前記接合部よりも先端側の外周に固定溝とを備え、また前記ケースが前記インク取出口の固定溝に対向する領域に、前記蓋体の装着される側が開放された嵌合部を備え、前記インク取出口が前記固定溝を前記ケースの嵌合部に挿入して固定されている。
【0006】
【作用】
インク袋のインク取出口の固定溝によりケースに嵌合させて規定の位置に固定でき、大型のインクカートリッジであってもインク取出口をインク供給針に確実に契合させる。
【0007】
【実施例】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1乃至図4は、本発明のインクカートリッジの一実施例を示すものであって、可撓性のインク袋1は、ガスバリヤー性の向上のためにアルミ箔を2枚のフィルム、例えば外側をナイロンフィルム、内側をポリエチレンフィルムにより挟み込んだ、アルミラミネートフィルムによって構成されている。
アルミラミネートフィルムを2枚重ね合わせ、周囲を熱溶着等によって接合している。接合面(図中、斜線部として示す)の1辺にインク袋1内のインクを外部に導出するインク取出口2を熱溶着等によって接合する。インク取出口2は、プラスチック成形品で、その接合面は、少なくとも対向する1対のテーパがつけられたナイフエッジ形状に形成されていて、接合面の熱溶融面積(いわゆるノリしろ)を十分確保できるように肉厚に構成されている。
【0008】
インク取出口2には固定溝2aが設けられていて、インク取出口2をケース本体4に嵌合させて固定する。このようにインク取出口2に固定溝2aを設けたことにより、ケース4の嵌合部4bの形状の複雑化を招くことが無く、またインク袋1のインク取出口2を容易に正確な位置に取り付けることができる。ケース本体4は、その挿入方向の面、つまり固定溝2aが形成されている面に、この固定溝2aを挟むように位置決め穴4a、及びガイド穴4gが穿設されている。
【0009】
このように構成されたインク袋1は、ケース本体4の底面に図示しない両面テープで固着され、蓋体側にインク袋1内のインク残量を検出するための検出板5が両面テープ等により固着されている。検出板5にはインク残量が少なくなると、ケース本体4の外部に露出する検出突起5aが形成されている。
【0010】
蓋6は、一対の角6aとケース本体4の一対の穴部4dの嵌合、一対の爪6bと一対の凹部4eのスナップフィットによりケース本体4に固定される。最初に角6aと穴部4dの嵌合を行い、次に爪6bと凹部4eのスナップフィットを行い固定する。爪6bは矢印D方向へたわむように構成され、蓋6が矢印E方向へ挿入されるとたわみ、凹部4eに嵌合する。蓋6を外すときには、ケース本体4の切欠き部4fに治具を入れF方向にこじることにより、簡単に外すことが可能である。
【0011】
次に、インクカートリッジと記録装置との装着機構について図5に基づいて説明する。
図5は、本発明のインクカートリッジを記録装置のホルダーに位置決めする機構を示すものであって、記録装置に設けられたホルダー9は、インクカートリッジ8の挿入を案内するとともに、所定位置にインクカートリッジ8を保持するための上下のフレーム10が設けられている。
【0012】
ホルダー9には、インクカートリッジ8がないときに、ホルダー9の図示しない針座フレームに設けた供給針15等に手が触れないように保護するシャッター12が設けられている。フレーム10には、シャッター12を図示した位置にロックするための弾性変位可能な一対のロックアーム10a(片側のみ図示)が設けられている。
シャッター12は、回転中心12aを中心に回動可能に軸支され、図示しないシャッターバネによって、図示した位置に付勢されている。この時、シャッター12は、ロックアーム10aの溝部と係合し、保持状態(ロック状態)になっている。
インクカートリッジ8を矢印1方向へ上下のフレーム10の間に挿入すると、インクカートリッジ8のインク取出口側の上面と下面に一対の機能リブ4cが、一対のレール10bに案内されて奥に移動する。
【0013】
インクカートリッジ8の一対の機能リブ4cがロックアーム10aに到達し、ロックアーム10aを矢印J方向へ弾性変位させる。この時シャッター12は、ロックアーム10aの溝部からはずれ、インクカートリッジ8に押されシャッター回転中心12aを中心に回動し、インクカートリッジ8の蓋6の上部まで逃げる。
【0014】
インクカートリッジ8がさらに奥に移動すると、インクカートリッジ8の位置決め穴4aが針座フレームに設けられた位置決め軸16に係合してインクカートリッジ8の上下の位置が決まる。
同時に、インクカートリッジ8のインク取出口の上部に形成されたガイド穴4gがガイド軸17に係合してインクカートリッジ8の左右の位置が決まる。
【0015】
位置決め軸16、及びガイド軸17は、図5に示したようにその先端がテーパとして形成され、かつインク供給針15の先端よりもΔLだけ突出しているため、機能リブ4cとレール10bとにより位置決め穴4a、ガイド穴4gの直径程度の誤差で粗位置決めされていれば、インク供給針15がインク取出口2に当接する以前に、位置決め軸16、及びガイド軸17は、位置決め穴4aとガイド穴4gを所定の位置に正確にガイドしてインク取出口2の中心をインク供給針15の先端に対向させる。
【0016】
この状態でインクカートリッジ8がさらに奥に移動すると、上下のフレーム10に保持された一対の板バネ13(片側のみ図示)と一対の機能リブ4cが噛み合い、インクカートリッジ8は上下のフレーム10に保持される。この状態では、ロックアーム10aの弾性変位は元の形状(シャッター12とロックアーム10aの溝部が係合している状態)に戻っている。
インクカートリッジ8が上下のフレーム10に保持された時には、供給針15は取出口ゴム3とインク取出口2を貫き、インク袋1内のインクに到達している。インクカートリッジ8を図示以外の方向でホルダー9に挿入すると、インクカートリッジ8の機能リブ4cや一対の誤挿入防止リブ4wが上下のフレーム10の一対の誤挿入防止面10cに接触し、ホルダー9への挿入を阻止する。
【0017】
このように、挿入当初は、機能リブ4cとレール10bとによりインクカートリッジを位置決めしながら、長い距離を奥に移動させ、インク供給針15に当接する直前に位置決め穴4a及びガイド穴4gを位置決め軸16とガイド軸17により位置決めすることにより、記録装置の一対のフレーム10の位置精度をある程度下げることができ、また挿入当初にインクカートリッジとの間に遊びを確保できるため、挿入時に小さい押圧力で大きなカートリッジを奥に容易に移動させることが可能となる。
そしてインク取出口2がその固定溝2aによりケース本体4の嵌合部4bに固定されているため、インク供給針15の挿通による外力を受けてもインク取出口2がケース本体4の規定の位置を維持し、大型のインクカートリッジであってもインク取出口2をインク供給針15に確実に契合させて、インク漏れを起こすことなく記録ヘッドにインクを供給することができる。
すなわち、インク収容量が多く、重いため装着時に強い力で押圧されて、インク取出口2がインク供給針15に当接する微妙な感触が検知できない場合にでもインク取出口2の中心をインク供給針15に挿通することができる。
【0018】
記録装置に装着された状態で振動などによりカートリッジを倒すような力が作用すると、インク取出口2の上下の位置決め穴4aとガイド穴4gとに挿入されている位置決め軸16とガイド軸17より垂直姿勢を維持できるため、インク供給針15に曲げ力が作用するのが防止される。
また、インク供給針を挟むように配置された位置決め用軸により2点で支持されるため、カートリッジのローリングが防止され、インク袋のインク残量に応じて変位する検出突起によりインク残量を正確に検出することができる。
さらには、
【0019】
インクカートリッジ8をホルダー9から取り出すと、機能リブ4cと板バネ13の噛み合いが外れ、機能リブ4cがロックアーム10aに到達し、ロックアーム10aを矢印J方向へ弾性変位させる。この時シャッター12はシャッターバネ(不図示)によって、図示位置まで戻されシャッター12はロックアーム10aの溝部と係合し、保持状態(ロック状態)になる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、インク袋のインク取出口の固定溝によりケースに嵌合させて規定の位置に固定でき、大型で重いインクカートリッジであってもインク取出口をインク供給針に確実に契合させて、インク漏れを起こすことなく記録ヘッドにインクを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のインクカートリッジの一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】
インク取出口を形成する部材の一実施例を示す断面図である。
【図3】
インク取出口の固定溝を示す断面図である。
【図4】
ケースと蓋とのスナップフィット形状を示す断面図である。
【図5】
本発明のインクカートリッジを記録装置に装着する際の位置決め機構の一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 インク袋
2 インク取出口
2a 固定溝
4 ケース本体
4a 位置決め穴
4b 嵌合部
4c 機能リブ
4d 穴部
4e 凹部
4f 切欠き部
4g ガイド穴
4w 誤挿入防止リブ
4x シャッターリブ
4y 案内リブ
4z 突起
5 検出板
6 蓋
8 インクカートリッジ
9 ホルダ
10b レール
10c 誤挿入防止面
15 インク供給針
16 位置決め軸
17 ガイド軸
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-04-08 
出願番号 特願2002-71737(P2002-71737)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B41J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 江成 克己中村 圭伸  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 藤井 靖子
谷山 稔男
登録日 2002-12-20 
登録番号 特許第3381789号(P3381789)
権利者 セイコーエプソン株式会社
発明の名称 インクカートリッジ  
代理人 木村 勝彦  
代理人 木村 勝彦  

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