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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C08F
管理番号 1121115
異議申立番号 異議2003-72456  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-02-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-30 
確定日 2005-05-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3404906号「オレフィン系共重合体の製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3404906号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
特許第3404906号の請求項1ないし2に係る発明についての出願は、平成6年8月12日に特許出願され、平成15年3月7日に特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人 金子 しの(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成16年5月14日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月26日に特許異議意見書と訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
訂正事項a
請求項1の
「R1及びR2は各々独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基又は水素原子であり、」を
「R1及びR2は各々独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基又は水素原子であり、かつその一方又は両方がアリール基又は置換アリール基であり、」と訂正する。
訂正事項b
請求項2を削除する。
訂正事項c
段落【0009】の
「R1及びR2は各々独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基又は水素原子であり、」を
「R1及びR2は各々独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基又は水素原子であり、かつその一方又は両方がアリール基又は置換アリール基であり、」と訂正する。
訂正事項d
段落【0013】の
「本発明で用いられるa)メタロセン化合物は一般式(1)で示される化合物であり、その具体的な化合物としては、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジ(4-トルイル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジ(4-トルイル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ(4-トルイル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド等が挙げられる。また、これらの化合物のシクロペンタジエニル基をインデニル基、フルオレニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基又はこれらの誘導体等に置換した化合物も挙げられるが、これらに限定されるものではない。」を
「本発明で用いられるa)メタロセン化合物は一般式(1)で示される化合物であり、その具体的な化合物としては、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジ(4-トルイル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジ(4-トルイル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ(4-トルイル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド等が挙げられる。また、これらの化合物のシクロペンタジエニル基をインデニル基、フルオレニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基又はこれらの誘導体等に置換した化合物も挙げられるが、これらに限定されるものではない。」と訂正する。
訂正事項e
段落【0014】の
「また、これらのうち特に一般式(1)中の置換基R1及びR2の少なくとも一方がアリール基又は置換アリール基であるメタロセン化合物は、効率よくポリオレフィンを製造することができるため好ましく用いられる。」を
「また、これら置換基R1及びR2の少なくとも一方がアリール基又は置換アリール基であるメタロセン化合物は、効率よくポリオレフィンを製造することができる。」と訂正する。
訂正事項f
段落【0017】の
「本発明において用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン又は1-オクテン等のα-オレフィン類を挙げることができるが、これに限定されることなく、これらのなかから2種あるいは3種以上混合して共重合してもよい。」を
「本発明において用いられるオレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン又は1-オクテン等のα-オレフィン類を挙げることができるが、これに限定されることなく、これらのなかから2種あるいは3種以上混合して共重合してもよい。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求に範囲の拡張・変更の存否
訂正事項aは、訂正前の請求項2の「メタロセン化合物のR1及びR2の一方又は両方がアリール基又は置換アリール基である」との記載に基づいて、請求項1の「メタロセン化合物」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである。
訂正事項bは請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである。
訂正事項c〜eは、訂正事項aによる特許請求の範囲の訂正に伴い、対応する発明の詳細な説明の項の記載をこの訂正と整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである。
訂正事項fは、訂正後の請求項1に記載された「エチレン/α-オレフィン共重合体」において、α-オレフィンとしてエチレンを選択した場合にはエチレンのホモポリマーとなって共重合体とはならないため、発明の詳細な説明に「α-オレフィン」として例示された化合物の中からエチレンを削除して特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、これらの訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下、「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記の結果、訂正後の本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正された明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「a)メタロセン化合物、b)有機アルミニウムオキシ化合物を構成成分とするオレフィン重合用触媒を用いるエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法において、a)メタロセン化合物として下記一般式(1)

(式中、Cpはシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はこれらの置換体であり、Fluはフルオレニル基又はフルオレニル基の置換体であり、R1及びR2は各々独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基又は水素原子であり、かつその一方又は両方がアリール基又は置換アリール基であり、Mはチタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子であり、R3及びR4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシ基である)で示される化合物を用い、b)有機アルミニウムオキシ化合物として下記一般式(2)又は(3)

(式中、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルコキシ基であり、qは0〜100の整数である)で示されるアルミノキサンを用い、120℃以上の重合温度下で重合を行うことを特徴とするエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法。」

4.特許異議の申立についての判断
4-1.特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、甲第1号証を提出して、次の理由により、訂正前の本件請求項1及び2に係る発明についての特許は取り消されるべきである旨主張している。
(1)訂正前の本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、または、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、または、同法第29条第2項の規定に違反する。
(2)訂正前の本件明細書の記載には、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とが一致していないという不備があるから、訂正前の請求項1及び2に係る発明についての特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものである。

4-2.判断
4-2-1.取消理由
当審において、平成16年5月14日付けで通知した取消理由は、上記特許異議申立人の主張(1)および(2)と同旨であり、引用した刊行物は以下のとおりである。
<刊行物>
刊行物1:特開平2-173110号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証)

4-2-2.刊行物1の記載内容
刊行物1
(1-1)「(A)少なくとも2個の相異なるシクロアルカジエニル基またはその置換体が炭化水素基またはシリレン基あるいは置換シリレン基を介して結合した多座配位性化合物を配位子とする周期律表IVB族の遷移金属化合物、および(B)有機アルミニウムオキシ化合物から形成される触媒の存在下に、炭素原子数が3以上のα-オレフィンとエチレンとを共重合させることを特徴とするエチレン・α-オレフィンランダム共重合体の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
(1-2)「本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであって、重合活性に優れ、かつ分子量分布および組成分布が狭く、しかも分子量の大きなエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造することができるようなエチレン・α-オレフィンランダム共重合体の製造方法を提供することを目的としている。」(第2頁左下欄第12〜18行)
(1-3)「このような触媒成分(A)における周期律表IVB族の遷移金属化合物は、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選択される。このうちハフニウムおよびジルコニウムが好ましい。このような周期律表IVB族の遷移金属化合物(A)は、たとえば、一般式(I)

[ここで、R0は炭素数1〜10の炭化水素基またはシリレン基あるいは置換シリレン基を示し、R1およびR2はシクロアルカジエニル基またはその置換体を示し、R3およびR4はシクロアルカジエニル基、アリール基、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水素、ORa、SRb、NRcまたはPRdであり、Ra、Rb、RcおよびRdはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基またはシリル基であり、2個のRcおよびRdが連結して環を形成することもできる。]で表わされる化合物である。」(第3頁左上欄第8行〜同頁右上欄第9行)
(1-4)「上記のような遷移金属化合物としては、遷移金属がジルコニウムである場合には、具体的には、下記のような化合物を例示することができる。・・・、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、 イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(第4頁左上欄第1〜5行)、・・・、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、 ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(第5頁左下欄第9〜13行)、・・・」(第3頁左下欄第14行〜第5頁左下欄第13行)
(1-5)「触媒成分(B)として使用される有機アルミニウムオキシ化合物としては、一般式(II)および一般式(III)

で表わされるベンゼンに可溶なアルミノオキサンを例示することができる。このようなアルミノオキサンにおいて、RおよびR2は同一でも異なっていてもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、イソブチル基、とくに好ましくはメチル基であり、mは2以上、好ましくは5以上の整数である。
上記のようなアルミノオキサンの製造方法として、例えば次の方法を例示することができる。
(1)吸着水を含有する化合物、結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液にトリアルキルアルミニウムを添加して反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムに直接水を作用させる方法。
これらの方法のうちでは(1)の方法を採用するのが好ましい。なお、該アルミノオキサンには少量の有機金属成分を含有していても差しつかえない。
さらに、本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物としては、ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物を例示することができる。」(第7頁左上欄第1行〜同頁右上欄第15行)
(1-6)「本発明の方法において重合反応に供給されるエチレン以外のα-オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素原子数が3〜20のα-オレフィンを例示することができる。」(第10頁左上欄末行〜同頁右上欄第6行)
(1-7)「本発明の方法において、懸濁重合法、溶解重合法などのような液相重合法が通常採用される。重合反応の際の温度は通常-50〜200℃、好ましくは-30〜150℃の範囲である。」(第10頁左下欄第2〜5行)
(1-8)「該エチレン・α-オレフィンランダム共重合体の組成は、該α-オレフィン成分が通常1〜99モル%、好ましくは2〜98モル%であり、該エチレン成分は、通常1〜99モル%、好ましくは2〜98モル%の範囲である。また、該エチレン・α-オレフィンランダム共重合体の135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は、通常0.005〜10dl/g、好ましくは0.01〜6dl/gの範囲にあり、またゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布は通常4以下、好ましくは3以下である。」(第10頁右下欄第2〜13行)
(1-9)「本発明の方法によれば、重合活性に優れ、分子量分布が狭く、さらには分子量の大きいエチレン・α-オレフィンランダム共重合体を効率的に製造することができる。」(第10頁右下欄第15〜18行)
(1-10)「・・・目的の触媒、すなわちイソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを2g得た。・・・充分に窒素置換した1lのガラス製フラスコにトルエン500mlを入れ、室温下でプロピレンとエチレンの混合ガス(それぞれ200l/時間、4l/時間)を流通させた。系内を30℃に昇温し、アルミノオキサンをAl原子換算で5ミリグラム原子、上記で合成したジルコニウム触媒を5×10-3ミリモル添加し、重合を開始した。連続的に混合ガスを流通させながら、常圧下30℃で1時間重合を行なったところ、135℃デカリン中で測定した[η]が0.70dl/gであり、13C-NMR測定によるエチレン含量が1.4モル%であり、GPC測定によるMw/Mnが2.12であるポリマー38.6gが得られた。」(第11頁右上欄第17行〜同頁左下欄第13行)

4-2-3.対比・判断
刊行物1には、その特許請求の範囲に、「(A)少なくとも2個の相異なるシクロアルカジエニル基またはその置換体が炭化水素基またはシリレン基あるいは置換シリレン基を介して結合した多座配位性化合物を配位子とする周期律表IVB族の遷移金属化合物、および(B)有機アルミニウムオキシ化合物から形成される触媒の存在下に、炭素原子数が3以上のα-オレフィンとエチレンとを共重合させることを特徴とするエチレン・α-オレフィンランダム共重合体の製造方法。」(摘示記載(1-1))が記載されており、この遷移金属化合物(A)としては、例えば、一般式(I)

[ここで、R0は炭素数1〜10の炭化水素基またはシリレン基あるいは置換シリレン基を示し、R1およびR2はシクロアルカジエニル基またはその置換体を示し、R3およびR4はシクロアルカジエニル基、アリール基、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水素、ORa、SRb、NRcまたはPRdであり、Ra、Rb、RcおよびRdはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基またはシリル基であり、2個のRcおよびRdが連続して環を形成することもできる。]で表わされる化合物(摘示記載(1-3))が用いられることも記載されている。
本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された(A)遷移金属化合物は、周期律表IVB族の遷移金属に少なくとも2個の相異なるシクロアルカジエニル基またはその置換体が結合している点で本件発明におけるa)メタロセン化合物に相当し、刊行物1に記載された(B)有機アルミニウムオキシ化合物は本件発明におけるb)有機アルミニウムオキシ化合物に相当するものであって、両発明はともに、これらを構成成分とする重合用触媒を用いるエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法である点で軌を一にしている。
そこで触媒の各成分及び製造条件について詳細に検討する。
(i)メタロセン化合物について
本件発明における一般式(1)で示されるメタロセン化合物と、刊行物1に遷移金属化合物(A)として例示された一般式(I)の化合物(摘示記載(1-3):以下、「刊1化合物」という。)とを比較すると、それぞれにおいてMで表されたものは、本件発明においては「チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子」とされ、刊1化合物においてはMは「周期律表IVB族の遷移金属」とされており、該遷移金属がチタン、ジルコニウムおよびハフニウムからなる群から選択されると記載されているところからみて、これらは実質的に一致するものということができる。このMに対して本件発明においてはCp、Flu、R3及びR4が結合し、更にCpとFluとは

(以下、「R1R2C=」と表記する。)を介して結合しており、刊1化合物においては、Mに対してR1、R2、R3およびR4が結合し、更にR1とR2とはR0を介して結合している。
そうすると、置換基相互の結合関係からみて、本件発明におけるCpとFlu、R3とR4、およびR1R2C=は、それぞれ、刊1化合物におけるR1とR2、R3とR4、およびR0に相当するものであり、
(a)本件発明においては、「Cpはシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はこれらの置換体であり、Fluはフルオレニル基又はフルオレニル基の置換体」とされているのに対して、刊1化合物においては「R1およびR2はシクロアルカジエニル基またはその置換体」とされている点、
(b)本件発明においては「R3及びR4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシ基」とされているのに対して、刊1化合物においては「R3およびR4はシクロアルカジエニル基、アリール基、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水素、ORa、SRb、NRcまたはPRdであり、Ra、Rb、RcおよびRdはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などの炭化水素基またはシリル基であり、2個のRcおよびRdが連続して環を形成することもできる」とされている点、および
(c)本件発明においてはR1R2C=における「R1及びR2は各々独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基又は水素原子であり、かつその一方又は両方がアリール基又は置換アリール基」とされているのに対して、刊1化合物においては「R0は炭素数1〜10の炭化水素基またはシリレン基あるいは置換シリレン基」とされている点
で、それぞれ表記上相違しているが、これらの置換基のいずれの組も、互いに概念が重複し合っているか、共通の基を包含するものである。
また、刊行物1に、刊1化合物の具体例として挙げられたジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドおよびジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(摘示記載(1-4))は、本件発明のメタロセン化合物の要件をすべて満たすものである。
しかしながら、刊行物1には、上記(c)等の本件発明の要件を備えたメタロセン化合物を触媒成分としてエチレン-αオレフィン共重合体を製造した具体例は示されておらず、このような化合物を選択した場合と他の遷移金属化合物を触媒成分とした場合とでは製造工程上の差異が生ずることについての知見も示されていない。(相違点1)

(ii)有機アルミニウムオキシ化合物について
刊行物1には、触媒成分(B)として使用される有機アルミニウムオキシ化合物について
「一般式(II)および一般式(III)

で表わされるベンゼンに可溶なアルミノオキシサンを例示することができる。このようなアルミノオキサンにおいて、RおよびR2は同一でも異なっていてもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、イソブチル基、とくに好ましくはメチル基であり、mは2以上、好ましくは5以上の整数である。」(摘示記載(1-5))と記載されており、これは、本件発明におけるb)有機アルミニウムオキシ化合物と構造が一致し置換基の種類も重複しているから、本件発明と刊行物1に記載された発明とは、有機アルミニウムオキシ化合物については一致している。

(iii)製造条件について
本件発明においては、a)メタロセン化合物、b)有機アルミニウムオキシ化合物を構成成分とするオレフィン重合用触媒を用い、「120℃以上の重合温度下で重合を行う」ものであるが、刊行物1には重合温度について「重合反応の際の温度は通常-50〜200℃、好ましくは-30〜150℃の範囲である」(摘示記載(1-7))と記載されているものの、具体的には30℃で重合を行った実施例(摘示記載(1-10))が示されているのみであり、重合工程における重合温度の影響について教示するところがない。(相違点2)

そこで、上記(i)及び(iii)に係る相違点1及び2について検討すると、本件発明におけるb)メタロセン化合物について本件訂正明細書には、「これら置換基R1及びR2の少なくとも一方がアリール基又は置換アリール基であるメタロセン化合物は、効率よくポリオレフィンを製造することができる」(段落【0014】)と記載されており、また、「重合温度120℃以上の重合条件下において、特定のメタロセン触媒を用いることにより、高分子量のオレフィン系重合体を効率よく製造することができる」(段落【0037】)と記載されている。そして、実施例には、メタロセン化合物として置換基R1およびR2が共にフェニル基(即ち、アリール基)であるジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを用い、重合温度を150℃とした実施例1および2、並びに、重合温度を183℃とした実施例3および4が示されており、いずれも高い収率で高分子量の共重合体が得られたことを示すデータが掲げられている。
これに対して、刊行物1には、「重合活性に優れ、かつ分子量分布および組成分布が狭く、しかも分子量の大きなエチレンとα-オレフィンとの共重合体を製造することができるようなエチレン・α-オレフィンランダム共重合体の製造方法を提供することを目的」とすること(摘示記載(1-2))が記載されているものの、刊行物1に記載された発明には、重合温度120℃以上の重合条件下において高い収率で高分子量の共重合体を得るという課題はなく、もとより、それを達成するための手段についての開示もない。
そして、特許異議申立人が特許異議意見書に添付して提出した実験証明書には、本件訂正明細書の実施例1において、メタロセン化合物のジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを刊行物1の実施例1で用いられたイソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(註:上記(c)の要件を備えていない点で本件発明のメタロセン化合物には該当しない。)に換えた場合、および刊行物1の実施例1で重合温度を30℃から120℃に変更した場合には、いずれも本件訂正明細書の実施例に比して収率が悪く、分子量が低い共重合体しか得られないことが示されており、このことからも、相違点1、2に係る本件発明の構成により特段の作用効果を生ずることが認められる。
したがって、本件発明が刊行物1に記載された発明であるとすることはできず、また、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。

4-2-4.特許法第36条第4項違反について
特許法第36条第4項違反についての取消理由は、訂正前の本件明細書の記載には、請求項1に「エチレン/α-オレフィン共重合体」と記載されているにもかかわらず、発明の詳細な説明にはα-オレフィンとしてエチレンが例示されており、この場合には共重合体とはならないので、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とが一致していないという不備があるというものであるが、上記訂正により発明の詳細な説明にα-オレフィンとして例示されていたエチレンが削除されたので、この取消理由は解消された。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
オレフィン系共重合体の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】a)メタロセン化合物、b)有機アルミニウムオキシ化合物を構成成分とするオレフィン重合用触媒を用いるエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法において、a)メタロセン化合物として下記一般式(1)
【化1】

(式中、Cpはシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はこれらの置換体であり、Fluはフルオレニル基又はフルオレニル基の置換体であり、R1及びR2は各々独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基又は水素原子であり、かつその一方又は両方がアリール基又は置換アリール基であり、Mはチタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子であり、R3及びR4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシ基である)
で示される化合物を用い、b)有機アルミニウムオキシ化合物として下記一般式(2)又は(3)
【化2】

【化3】

(式中、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルコキシ基であり、qは0〜100の整数である)
で示されるアルミノキサンを用い、120℃以上の重合温度下で重合を行うことを特徴とするエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、メタロセン化合物、有機アルミニウムオキシ化合物を構成成分とする触媒を用いるオレフィン系共重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン系共重合体において、0.940g/cm3以下の密度を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と呼ばれているものがある。この直鎖状低密度ポリエチレンは、通常チーグラー触媒(担持型TiCl4/R3Al触媒)を用いて気相法、高圧法又は溶液法等のプロセスで製造が行なわれている。得られたポリマーは、耐衝撃性、耐クリープ性に優れており、フィルム、ラミネーション等の分野で幅広く用いられている。しかし、分子量分布及び組成分布が広い為に、低分子量成分が存在し、成形した際にべたつきが生じたり、コモノマー含有量の少ないポリマー鎖が存在し、透明性に劣るという問題点があった。そのため、これら問題点が改良されたポリマーが求められている。
【0003】
チタン、ジルコニウム又はハフニウム(周期表第4B属)等の金属のシクロペンタジエニル誘導体とアルミノキサンとの組み合わせである触媒系はオレフィン系の重合に対して高活性を示すことは周知である。この技術は、J.Boor著 チーグラー・ナッタ触媒および重合 Academic Press.New York(1979)、H.Sinn及びW.Kaminsky著 Adv.Organomet.Chem.1899(1980)に記載されている。この触媒系により得られるオレフィン系共重合体は、従来のポリマーと比較して分子量分布及び組成分布の狭いことが一般的に知られている。
【0004】
しかしながら、これらの触媒を用いて高温下でオレフィン系共重合体を製造した場合、活性が著しく低かったり、生成するポリマーの分子量が低いという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、高温下でオレフィン系共重合体を製造する際、効率良く、高分子量のオレフィン系共重合体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のメタロセン触媒を用いると、120℃以上の重合温度においても、高分子量のオレフィン系共重合体が効率よく製造できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、a)メタロセン化合物、b)有機アルミニウムオキシ化合物を構成成分とするオレフィン重合用触媒を用いるエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法において、a)メタロセン化合物として下記一般式(1)
【0008】
【化4】

【0009】
(式中、Cpはシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はこれらの置換体であり、Fluはフルオレニル基又はフルオレニル基の置換体であり、R1及びR2は各々独立してアルキル基、アルコキシ基、アリール基又は水素原子であり、かつその一方又は両方がアリール基又は置換アリール基であり、Mはチタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子であり、R3及びR4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシ基である)
で示される化合物を用い、b)有機アルミニウムオキシ化合物として下記一般式(2)または(3)
【0010】
【化5】

【0011】
【化6】

【0012】
(式中、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルコキシ基であり、qは0〜100の整数である)
で示されるアルミノキサンを用い、120℃以上の重合温度下で重合を行うことを特徴とするエチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法である。
【0013】
本発明で用いられるa)メタロセン化合物は一般式(1)で示される化合物であり、その具体的な化合物としては、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジフェニルフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h-ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジ(4-トルイル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジ(4-トルイル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ(4-トルイル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ(4-ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド等が挙げられる。また、これらの化合物のシクロペンタジエニル基をインデニル基、フルオレニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基又はこれらの誘導体等に置換した化合物も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
また、これら置換基R1及びR2の少なくとも一方がアリール基又は置換アリール基であるメタロセン化合物は、効率よくポリオレフィンを製造することができる。
【0015】
本発明において、上記のa)メタロセン化合物及びb)有機アルミニウムオキシ化合物から触媒を調製する方法としては、例えば、これら化合物を不活性な溶媒下で混合する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
また、用いるb)有機アルミニウムオキシ化合物の量は特に限定されないが、有益な活性を得るためにアルミニウム換算でa)メタロセン化合物に対して10倍mol以上が好ましく、分子量低下の原因となる連鎖反応を抑え、灰分を必要以上に増やさないことを考慮してアルミニウム換算でa)メタロセン化合物に対して100000倍mol以下が好ましく用いられる。
【0017】
本発明において用いられるオレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン又は1-オクテン等のα-オレフィン類を挙げることができるが、これに限定されることなく、これらのなかから2種あるいは3種以上混合して共重合してもよい。
【0018】
重合方法としては、溶媒を用いた溶液重合法と公知の手段である高温高圧法等が挙げられる。
【0019】
溶液重合法の場合、重合温度は共重合体が溶液状態であること及び生産性を上げることを考慮して120℃以上であることが必要である。重合温度の上限は特に限定されないが、分子量低下の原因となる連鎖反応を抑え、かつ触媒効率を低下させないために300℃以下が好ましい。また、重合時の圧力についても特に限定されないが、生産性を上げるために大気圧以上が好ましい。
【0020】
高圧法としては、重合温度は共重合体が溶液状態であること及び生産性を上げることを考慮して120℃以上であることが必要である。重合温度の上限は特に限定されないが、分子量低下の原因となる連鎖反応を抑え、かつ触媒効率を低下させないために300℃以下が好ましい。また、重合時の圧力についても特に限定されないが、高圧法プロセスにおいて安定な重合状態が得られる500kg/cm2以上が好ましい。
【0021】
以上の方法により、高分子量のポリオレフィンを効率よく製造することができる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
なお、重合操作、反応及び溶媒精製は、すべて不活性ガス雰囲気下で行った。反応に用いた溶媒は、すべて予め公知の方法で精製、乾燥及び/又は脱酸素を行ったものを用いた。反応に用いた化合物は、公知の方法により合成、同定したものを用いた。
【0024】
本発明で得られたオレフィン系共重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(WATERS社製 150C型)を用いて、カラムTSK-GEL GMHHR-H(S)、溶離液o-ジクロロベンゼン、測定温度140℃、測定濃度7mg(サンプル)/10ml(o-ジクロロベンゼン)の条件で測定した。
【0025】
また、本発明で得られたオレフィン系共重合体のMFRは、JIS K-6760に基づき、190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0026】
実施例1
溶媒として脂肪族系炭化水素(IPソルベント1620(出光石油化学社製))600mlを1l反応器に加え、これに1-ヘキセン 20mlを加え、反応器の温度を170℃に設定した。そして、この反応器に圧力が20kg/cm2となるようにエチレンを供給した。
【0027】
一方、別の容器においてジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド0.5μmolをトルエンに溶解し、そこにメチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソーアクゾ社製、メチルアルミノキサン20wt%)をアルミニウム換算で2mmol加えてしばらく撹拌し、ここで得られた混合物を窒素圧で前記反応器に供給した。
【0028】
混合物を反応器に供給した後、反応器の温度を150℃に保持したまま反応器を1500rpmで1時間攪拌し、共重合反応を行わせ、得られた反応生成物を真空下、100℃で6時間乾燥した。その結果、29gのエチレン/1-ヘキセン共重合体が得られた。その結果を表1に示す。
【0029】
実施例2
用いたメチルアルミノキサンの量をアルミニウム換算で5mmolとした以外は実施例1と同様の方法により共重合を行った。その結果を表1に示す。
【0030】
比較例1
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドの代わりにジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロライドを用いた以外は実施例1と同様の方法により共重合を行った。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例3
高温高圧重合用に装備された反応器を用いて重合を行った。エチレン、1-ヘキセンを連続的に反応器内に圧入し、全圧を950kg/cm2に、1-ヘキセン濃度を32mol%になるように設定した。そして、反応器を1500rpmで撹拌した。
【0033】
別の容器でジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドのトルエン溶液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソーアクゾ社製、メチルアルミノキサン20wt%)をアルミニウムがジルコニウム当り4000倍molになるように加えてしばらく撹拌し、触媒溶液を得た。
【0034】
その後、反応器の温度が183℃になるように、得られた触媒溶液を反応器に連続的に供給して重合を行った。その結果を表2に示す。
【0035】
実施例4
ヘキセン濃度を35モル%とした以外は実施例3と同様の方法により共重合を行った。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
【発明の効果】
上述したように、重合温度120℃以上の重合条件下において、特定のメタロセン触媒を用いることにより、高分子量のオレフィン系共重合体を効率よく製造することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-04-21 
出願番号 特願平6-190508
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08F)
P 1 651・ 531- YA (C08F)
P 1 651・ 113- YA (C08F)
最終処分 維持  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 船岡 嘉彦
藤原 浩子
登録日 2003-03-07 
登録番号 特許第3404906号(P3404906)
権利者 東ソー株式会社
発明の名称 オレフィン系共重合体の製造方法  
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