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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01L
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1121120
異議申立番号 異議2003-70841  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-31 
確定日 2005-05-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3329593号「サファイヤ製ダミーウエハの製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3329593号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3329593号の請求項1ないし4に係る発明の手続きの経緯は、以下のとおりである。
出願(特願平6-233876号) 平成6年9月28日
設定登録 平成14年7月19日
特許異議の申立て(京セラ株式会社)平成15年3月31日
取消理由通知 平成15年12月5日(発送日)
意見書、訂正請求書(後日取り下げ)平成16年2月3日
取消理由通知 平成17年4月20日(発送日)
意見書、訂正請求書 平成17年4月20日


2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている、平成17年4月20日付け訂正請求書に添付された訂正明細書における訂正の内容は以下のとおりである。
訂正事項a.訂正前の請求項1、請求項2を削除する。

訂正事項b.
「【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載したサファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、表面を磨く工程に於いて用いる研磨材料が粗研磨で4〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、仕上げ研磨では0.5ミクロン〜3ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。」を、
「 【請求項1】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程101)と、
サファイヤの原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程102)と、
サファイヤの円形の板(23)の外周を仕上げる工程(工程103)と、
外周を仕上げたサファイヤの円形の板(23)の2つの表面を磨く工程(工程104)と、
表面を磨いたサファイヤの円形の板(24)を洗浄する工程(工程105)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を磨く工程に於いて用いる研磨材料が粗研磨で4〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、仕上げ研磨では0.5ミクロン〜3ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。
【請求項2】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程201)と、
サファイヤ原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程202)と、
円形に加工されたサファイヤの板(23)の外周面仕上げをする工程(工程203)と、
外周面仕上げ加工されたサファイヤの板(23)の表面を研削する工程(工程204)と、
表面を研削加工されたサファイヤの板(24)を表面を研磨する工程(工程205)と、
表面を研磨加工されたサファイヤの板(24)にオリフラ又はノッチ等位置合わせ用切り欠き(26)を加工する工程(工程206)と、
切り欠きを加工されたサファイヤの板(26)を洗浄する工程(工程207)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を研磨する工程に於いて用いる研磨材料が粗研磨で4〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、仕上げ研磨では0.5ミクロン〜3ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。」と訂正する。

訂正事項c.
「【請求項4】 請求項1又は請求項2に記載したサファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、表面を磨く工程において用いる研磨材料が粗研磨で0.5ミクロン〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用する半導体製造用工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。」を、
「 【請求項3】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程101)と、
サファイヤの原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程102)と、
サファイヤの円形の板(23)の外周を仕上げる工程(工程103)と、
外周を仕上げたサファイヤの円形の板(23)の2つの表面を磨く工程(工程104)と、
表面を磨いたサファイヤの円形の板(24)を洗浄する工程(工程105)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を磨く工程において用いる研磨材料が粗研磨で0.5ミクロン〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。
【請求項4】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程201)と、
サファイヤ原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程202)と、
円形に加工されたサファイヤの板(23)の外周面仕上げをする工程(工程203)と、
外周面仕上げ加工されたサファイヤの板(23)の表面を研削する工程(工程204)と、
表面を研削加工されたサファイヤの板(24)を表面を研磨する工程(工程205)と、
表面を研磨加工されたサファイヤの板(24)にオリフラ又はノッチ等位置合わせ用切り欠き(26)を加工する工程(工程206)と、
切り欠きを加工されたサファイヤの板(26)を洗浄する工程(工程207)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を研磨する工程において用いる研磨材料が粗研磨で0.5ミクロン〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
ア.上記訂正事項aは、訂正前の特許請求の範囲の請求項1、2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.上記訂正事項bは、訂正前の請求項3の請求項1、2を引用して記載した部分を、それぞれ独立形式の請求項として請求項1、2とし、かつ、訂正後の請求項1において、訂正前の「表面を磨く工程に於いて用いる」を、訂正前の請求項1に「表面を磨く工程」が記載されているので、前記という言葉を加えて「前記表面を磨く工程に於いて用いる」と訂正し、訂正後の請求項2において、訂正前の「表面を磨く工程に於いて用いる」を、訂正前の請求項2には「表面を研磨する工程」と記載されているので、この記載に合わせて「前記表面を研磨する工程に於いて用いる」と訂正し、また、訂正後の請求項2において、訂正前の「半導体製造用工程用」を他の請求項の記載に合わせて「半導体製造工程用」と統一するように訂正したものであり、これらの訂正は、すべて明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

ウ.上記訂正事項cは、訂正前の請求項4の請求項1、2を引用して記載した部分を、それぞれ独立形式の請求項として請求項3、4とし、かつ、訂正後の請求項3において、訂正前の「表面を磨く工程において用いる」を、訂正前の請求項1に「表面を磨く工程」が記載されているので、前記という言葉を加えて「前記表面を磨く工程において用いる」と訂正し、訂正後の請求項4において、訂正前の「表面を磨く工程において用いる」を、訂正前の請求項2には「表面を研磨する工程」と記載されているので、この記載に合わせて「前記表面を研磨する工程において用いる」と訂正し、また、訂正後の請求項3において、訂正前の「半導体製造用工程用」を他の請求項の記載に合わせて「半導体製造工程用」と統一するように訂正し、訂正後の請求項4において、訂正前の「半導体製造用工程用」(2箇所)を他の請求項の記載に合わせて「半導体製造工程用」と統一するように訂正したものであり、これらの訂正は、すべて明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


3.特許異議の申立てについて
(1)申立の理由及び取消理由通知
ア.申立の理由の概要について
特許異議申立人京セラ株式会社は、証拠として本件出願前国内において頒布された甲第1号証(”エレクトロニク・セラミクス” ’79夏号 セラミック基板特集 p.14-19)、甲第2号証(特開昭59-58827号公報)、甲第3号証(「特開平6-263531号公報)、甲第4号証(特開昭55-20262号公報)、甲第5号証(”日本物理学会誌”第24巻 第4号 1969年 p.237-253)を提出し、本件請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第第29条第2項の規定に違反しており特許を受けることができないものであり、また、本件明細書の記載は不備のため、特許法第36条の規定を満たしておらず、特許法第113条第1項第2号又は第4号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。

イ.取消理由通知について
当審で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
「1)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1.”エレクトロニク・セラミクス” ’79夏号 セラミック基板特集 p.14-19(申立人の提出した甲第1号証)
刊行物2.特開昭59-58827号公報(申立人の提出した甲第2号証)
刊行物3.特開平6-263531号公報(申立人の提出した甲第3号証)
刊行物4.特開昭55-20262号公報(申立人の提出した甲第4号証)
刊行物5.”日本物理学会誌”第24巻 第4号 1969年 p.237-253(申立人の提出した甲第5号証)

本件の請求項1ないし4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものである。
上記刊行物1〜5には、特許異議申立書第6頁第1行〜第9頁第10行記載の発明が記載されており(ただし、「甲第1号証」〜「甲第5号証」は、それぞれ「刊行物1」〜「刊行物5」と読み替える。)。
そして、請求項1ないし4に係る発明は、特許異議申立書第9頁第11行〜第12頁最終行記載の理由(ただし、「甲第1号証」〜「甲第5号証」は、それぞれ「刊行物1」〜「刊行物5」と読み替える。)により、上記刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


2)本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項、第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

請求項3、4に係る発明の記載は、特許異議申立書第13頁第1〜21行に記載の理由により、不備である。
また、発明の詳細な説明中に、請求項3、4に係る発明について、当業者が容易に実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されていない。
なお、特許異議申立書第13頁第1〜21行に記載されている参考資料1は、特開平6-315371号公報であり、参考資料2は、特開平11-36171号公報である。」


(2)本件請求項1ないし4に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1ないし4に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程101)と、
サファイヤの原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程102)と、
サファイヤの円形の板(23)の外周を仕上げる工程(工程103)と、
外周を仕上げたサファイヤの円形の板(23)の2つの表面を磨く工程(工程104)と、
表面を磨いたサファイヤの円形の板(24)を洗浄する工程(工程105)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を磨く工程に於いて用いる研磨材料が粗研磨で4〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、仕上げ研磨では0.5ミクロン〜3ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。
【請求項2】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程201)と、
サファイヤ原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程202)と、
円形に加工されたサファイヤの板(23)の外周面仕上げをする工程(工程203)と、
外周面仕上げ加工されたサファイヤの板(23)の表面を研削する工程(工程204)と、
表面を研削加工されたサファイヤの板(24)を表面を研磨する工程(工程205)と、
表面を研磨加工されたサファイヤの板(24)にオリフラ又はノッチ等位置合わせ用切り欠き(26)を加工する工程(工程206)と、
切り欠きを加工されたサファイヤの板(26)を洗浄する工程(工程207)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を研磨する工程に於いて用いる研磨材料が粗研磨で4〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、仕上げ研磨では0.5ミクロン〜3ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。
【請求項3】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程101)と、
サファイヤの原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程102)と、
サファイヤの円形の板(23)の外周を仕上げる工程(工程103)と、
外周を仕上げたサファイヤの円形の板(23)の2つの表面を磨く工程(工程104)と、
表面を磨いたサファイヤの円形の板(24)を洗浄する工程(工程105)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を磨く工程において用いる研磨材料が粗研磨で0.5ミクロン〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。
【請求項4】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程201)と、
サファイヤ原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程202)と、
円形に加工されたサファイヤの板(23)の外周面仕上げをする工程(工程203)と、
外周面仕上げ加工されたサファイヤの板(23)の表面を研削する工程(工程204)と、
表面を研削加工されたサファイヤの板(24)を表面を研磨する工程(工程205)と、
表面を研磨加工されたサファイヤの板(24)にオリフラ又はノッチ等位置合わせ用切り欠き(26)を加工する工程(工程206)と、
切り欠きを加工されたサファイヤの板(26)を洗浄する工程(工程207)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を研磨する工程において用いる研磨材料が粗研磨で0.5ミクロン〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。」

(3)引用刊行物に記載された発明
当審で通知した取消理由で引用した刊行物1(”エレクトロニク・セラミクス” ’79夏号 セラミック基板特集 p.14-19(申立人の提出した甲第1号証))には、サファイア基板の応用に関するものであって、第15頁左欄第1行〜12行には、単結晶サファイアが機械的強度や耐摩耗性、耐薬品性にすぐれる点が記載されている。
また、第15頁右欄第1行〜第11行には、引き上げ法の一種であるEFG法によって、アルミナから単結晶サファイアを引き上げてサファイアを用意する工程が記載されている。
さらに第16頁左欄第15行〜同頁右欄第4行、及び図9には、単結晶サファイアを角形の基板に加工する工程、表面を荒仕上げ、メカニカルポリッシュ、ケミカルポリッシュによって両面鏡面基板などに研磨する工程を経て、サファイア基板を加工する方法が示されている。

同刊行物2(特開昭59-58827号公報(申立人の提出した甲第2号証))には、「サフアイヤ・・・等からなる半導体ウエーハと、その製造方法・・・に関する。」(第1頁右下欄第3〜5行)ものであり、単結晶棒からスライスして円形のウエーハを作成し、その外周部をベベル加工して面仕上げし、その後ウエーハの両面を鏡面仕上げすること(第1頁右下欄第10行〜第2頁左上欄第10行、第2頁右下欄第10行〜第3頁左上欄第3行、第1図、第4図)が、示されている。

同刊行物3(特開平6-263531号公報(申立人の提出した甲第3号証))には、半導体装置のダミーウェハに関するものであり、「【0004】さらに、ウェハ上に成膜を行う場合に、予めダミーウェハを用いて成膜条件等を決定することが行われているが、このダミーウェハとしてはAl2O3の単結晶体であるサファイアが用いられている。」ことが、記載されている。

同刊行物4(特開昭55-20262号公報(申立人の提出した甲第4号証))には、サファイア単結晶基板の製造方法に関して、第1頁右下欄12行〜第2頁左欄7行に、サファイア単結晶塊体を切片に切断する工程、この切片の両面をダイヤモンドまたは炭化けい素微粉末などを用いて研削またはラッピング加工する工程、その後加工歪み層を除去した後に、ダイヤモンドまたはコロイダルシリカなどを用いて鏡面研磨する工程が示されている。

同刊行物5(”日本物理学会誌”第24巻 第4号 1969年 p.237-253(申立人の提出した甲第4号証))には、結晶を研磨するための技術条件が記載されており、第243頁の第6表には、サファイアに対するラッピング条件として、25μm、15μmのダイヤモンド砥粒を用いることが示され、ポリッシング条件として、8μm、3μm、1μmのダイヤモンド砥粒を用いることが示されている。


(4)対比・判断
ア.特許法第36条についての判断
特許法第36条の点については、平成17年4月20日付け特許異議意見書第9頁第13行〜第10頁第25行記載のとおりであるから、本件請求項1ないし4に係る発明は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしているものである。

イ.特許法第29条第2項についての判断
・本件請求項1に係る発明について
本件請求項1に係る発明は、「鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用する」構成(以下、「本件請求項1に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、刊行物4には、サファイア単結晶基板の製造方法において、コロイダルシリカによって鏡面研磨する工程が示されているものの、コロイダルシリカはシリコン乳剤とはその組成が異なるものであって、研磨剤としてコロイダルシリカが公知であるとしても、シリコン乳剤は鏡面仕上げの研磨剤として公知でないから、シリコン乳剤を鏡面仕上げ研磨剤として用いることは当業者が容易に想到できたとはいえない。
また、刊行物1〜3及び5においても、何ら、本件請求項1に係る発明の特徴的構成の記載または当該構成を示唆する記載を有していない。
さらに、本件請求項1に係る発明は、本件請求項1に係る発明の特徴的構成を有することにより、平成17年4月20日付け特許異議意見書第9頁第23行〜第10頁第2行記載の効果を有する。
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたすることはできない。

・本件請求項2ないし4に係る発明について
本件請求項2ないし4に係る発明は、本件請求項1に係る発明と同様に「鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用する」構成を有するから、本件請求項1に係る発明と同様に、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたとすることはできない。


(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし4に係る発明の特許を取り消すことができない。
そして、他に本件請求項1ないし4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1ないし4に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
サファイヤ製ダミーウエハの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程101)と、
サファイヤの原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程102)と、
サファイヤの円形の板(23)の外周を仕上げる工程(工程103)と、
外周を仕上げたサファイヤの円形の板(23)の2つの表面を磨く工程(工程104)と、
表面を磨いたサファイヤの円形の板(24)を洗浄する工程(工程105)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を磨く工程に於いて用いる研磨材料が粗研磨で4〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、仕上げ研磨では0.5ミクロン〜3ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。
【請求項2】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程201)と、
サファイヤ原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程202)と、
円形に加工されたサファイヤの板(23)の外周面仕上げをする工程(工程203)と、
外周面仕上げ加工されたサファイヤの板(23)の表面を研削する工程(工程204)と、
表面を研削加工されたサファイヤの板(24)を表面を研磨する工程(工程205)と、
表面を研磨加工されたサファイヤの板(24)にオリフラ又はノッチ等位置合わせ用切り欠き(26)を加工する工程(工程206)と、
切り欠きを加工されたサファイヤの板(26)を洗浄する工程(工程207)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を研磨する工程に於いて用いる研磨材料が粗研磨で4〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、仕上げ研磨では0.5ミクロン〜3ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。
【請求項3】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程101)と、
サファイヤの原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程102)と、
サファイヤの円形の板(23)の外周を仕上げる工程(工程103)と、
外周を仕上げたサファイヤの円形の板(23)の2つの表面を磨く工程(工程104)と、
表面を磨いたサファイヤの円形の板(24)を洗浄する工程(工程105)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を磨く工程において用いる研磨材料が粗研磨で0.5ミクロン〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。
【請求項4】 サファイヤの原石(21)を用意する工程(工程201)と、
サファイヤ原石(21)を円形の板(23)に加工する工程(工程202)と、
円形に加工されたサファイヤの板(23)の外周面仕上げをする工程(工程203)と、
外周面仕上げ加工されたサファイヤの板(23)の表面を研削する工程(工程204)と、
表面を研削加工されたサファイヤの板(24)を表面を研磨する工程(工程205)と、
表面を研磨加工されたサファイヤの板(24)にオリフラ又はノッチ等位置合わせ用切り欠き(26)を加工する工程(工程206)と、
切り欠きを加工されたサファイヤの板(26)を洗浄する工程(工程207)と、を有する半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法において、
前記表面を研磨する工程において用いる研磨材料が粗研磨で0.5ミクロン〜8ミクロンのダイヤモンド粒子を用い、鏡面仕上げ研磨ではシリコン乳剤を使用することを特徴とする半導体製造工程用サファイヤ製ダミーウエハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、半導体製造工程、特に拡散、酸化、蒸着を行う炉の中でウエハを処理する際、対流及び温度条件を均一にするためのサファイヤ製ダミーウエハの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、主にシリコンウエハがダミーウエハと使用されており、機械的耐久性或は化学的耐久性が低い為、発塵や汚染を起こし安く頻繁な交換が必要だった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は次の技術的問題を解決する目的で開発された。繰り返し使用されるダミーウエハを機械的硬度が高く化学的に安定な素材で作ることによって従来技術で問題となっている発塵及び汚染を軽減し、強いてはダミーウエハの交換頻度を減少させることを課題とする。
【0004】
サファイヤガラスはモース硬度9と機械的強度に優れ、また対薬品耐久性は沸騰燐酸(90%)に数分浸すと徐々に溶解をするがその他耐フッ酸や耐水酸化ナトリウム性といった強酸、強アルカリ耐久性に優れている。また、サファイヤガラス原材の供給も安定しており加工面での製造方法が本発明の課題でもある。
【0005】
そこで、この発明の目的は、半導体製造の拡散、酸化、蒸着工程に於て温度や流れの条件を均一にするためのダミーウエハとして物理的及び化学的耐久性の高いサファイヤガラスを素材として用い供給することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、機械的及び化学的耐久性の高いダミーウエハを供給する。アルミナ(Al2O3)からサファイヤの単結晶を作成する。
【0007】
作成されたサファイヤの単結晶を、必要なウエハの大きさと厚みに合わせサファイヤの円形の板に切断加工する。サファイヤの円形の板を外周整形機を用いて外周仕上げを行う。外周整形の終わった円形の板の表面の研磨を行なう。研磨方法は両面同時及び片面づつ行う方法が取られる。
【0008】
表面研磨の終わったサファイヤの円形の板を洗浄する。
【0009】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を図面により説明する。
(1)実施例1
図1は、本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造行程の実施例1の工程図である。
【0010】
図1において、引き上げ法或はベルヌーイ法を用いてアルミナ(Al2O3)からサファイヤの単結晶21を作成する(工程101)。サファイヤの単結晶の大きさは、例えば、3インチ丸、4インチ丸、5インチ丸、6インチ丸、8インチ丸の平面が充分取れる大きさを持つ。
【0011】
作成されたサファイヤの単結晶21を作成するウエハの大きさと厚みに合わせサファイヤの円形の板23に切断加工する(工程102)。サファイヤの円形の板23を外周整形機を用いて外周仕上げを行う。
(工程103)。
【0012】
外周整形の終わった円形の板23の表面の研磨を行なう(工程104)。研磨方法には、例えば2重研磨及び3重研磨方法が有る。研磨条件は、図5及び図6に示すものが好ましい。図5は、本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造行程における3重研磨で使用する研磨粒子の範囲の関係を示す説明図である。
【0013】
図5において、粗研磨においては、研磨に用いられるダイヤモンド粒子は2ミクロン以上で20ミクロン以下が好ましい。特に、4ミクロン以上で8ミクロン以下が好ましい。仕上げにおいては、研磨に用いられるダイヤモンド粒子は0.2ミクロン以上で5ミクロン以下が好ましい。特に、0.5ミクロン以上で3ミクロン以下が好ましい。
【0014】
鏡面仕上げにおいては、シリコン乳剤を用いるのが好ましい。図6は、本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造行程における2重研磨で使用する研磨粒子の範囲の関係を示す説明図である。図6において、粗研磨においては、研磨に用いられるダイヤモンド粒子は0.2ミクロン以上で20ミクロン以下が好ましい。特に、0.5ミクロン以上で8ミクロン以下が好ましい。
【0015】
鏡面仕上げにおいては、シリコン乳剤を用いるのが好ましい。また、必要に応じてバフ法による研磨を行う。この時の総研磨代は片面で、例えば、50ミクロン程度が好ましい。表面研磨の終わった切り欠きを入れたサファイヤの板25を、6種類の11工程の洗浄工程を経て(工程105)、ダミーウエハが完成する(工程106)。
【0016】
洗浄液の種類と使用する工程は、図7に示すものが好ましい。図7は、本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造行程における洗浄液の種類と使用する工程の説明図である。図7において、洗浄工程6においては、洗浄液として冷水を用いる。
【0017】
洗浄工程1、洗浄工程3及び洗浄工程5においては、洗浄液として温水を用いる。洗浄工程4においては、洗浄液としてシロリンを用いる。洗浄工程2においては、洗浄液として酸(S-59)を用いる。
【0018】
洗浄工程7、洗浄工程8、洗浄工程9及び洗浄工程10においては、洗浄液としてメタノールを用いる。洗浄工程11においては、洗浄液として塩化メチレンを用いる。なお、洗浄工程の数、洗浄液の種類、洗浄液の利用の順番はこの実施例に限るものではない。
【0019】
完成時において、ダミーウエハの厚みは、例えば、0.5mm〜4mmの厚みを有する。図2は、本発明のサファイヤ製ダミーウエハを使用した横型拡散炉におけるダミーウエハと製品の配置の説明図である。
【0020】半導体を製造するための横型拡散炉305には、石英ボード301が配置されている。石英ボード301には、複数のダミーウエハ302と複数の製品303と複数のダミーウエハ304が、所定の間隔で配置される。
【0021】
石英ボード301の両端部付近は、拡散の条件が不均一となるので、製品を配置することは好ましくなく、ダミーウエハの配置が必要である。本発明において製造したサファイヤ製ダミーウエハを、石英ボード301の両端部付近配置する複数のダミーウエハ302と複数のダミーウエハ304として使用する。
【0022】
(2)実施例2
図3は、本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造行程の実施例2の工程図である。図4は、本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造行程の実施例2の説明図である。
【0023】
図3及び図4において、引き上げ法或はベルヌーイ法を用いて、アルミナ(Al2O3)からサファイヤの単結晶21を作成する(工程201)。サファイヤの単結晶の大きさは、例えば、5インチ角、6インチ角、7インチ角の平面が充分取れる大きさを持つ。
【0024】
作成されたサファイヤの単結晶21をセンタレス研削器を用い、必要なマスクの対角線の長さを直径とする太さで外周研削を行う(工程202)。次に、ラップ法を用いて一辺の値が希望するウエハサイズになるように切断し、円柱型のサファイヤの単結晶22を作成する。
【0025】
次に、ラップ法或いはバンド法を用い円柱型のサファイヤの単結晶22を円形の板状23に切断する。ラップ法の場合、研削用ダイアモンド粒子の大きさは4〜8ミクロンが好ましい。円形の板状に加工されたサファイヤの板23を、外周整形機を用いて外周の面仕上げを行う(工程203)。
【0026】
外周整形されたサファイヤの板23の表面の研削を行なう。研磨に使われるダイヤモンド粒子は20ミクロン以下が好ましい(工程204)。表面研削の終わった円形の板23の表面の研磨を行なう(工程205)。研磨方法はラップ法を用い、ロータリー研磨機上で行う。実際の研磨方法は、例えば2重研磨及び3重研磨方法が有る。
【0027】
研磨条件は、実施例1と同様で、図5及び図6に示すものが好ましい。また、必要に応じてバフ法による研磨を行う。この時の総研磨代は片面で、例えば、50ミクロン内外が好ましい。位置合わせ機構がオリフラかノッチかに従い、研磨したサファイヤの円形の板24にオリフラ或いはノッチの形状で切り欠き26を加工をする(工程206)。
【0028】
切り欠き26を有するサファイヤの円形の板25を、6種類の11工程の洗浄工程を経て(工程207)、ダミーウエハが完成する(工程208)。洗浄液の種類と使用する工程は、実施例1と同様で、図7に示すものが好ましい。
【0029】
完成時に於いてダミーウエハの厚みは、例えば、0.5mm〜4mmの厚みが好ましい。
【0030】
【発明の効果】
サファイヤガラスは高い機械的耐久性と高い耐薬品性を有している。半導体製造工程中で拡散、酸化、蒸着を行う炉の中で使われるダミーウエハをサファイヤガラスを用いて実現することによって、発塵や汚染を軽減し、寿命の長いダミーウエハを供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造工程の実施例1の工程図である。
【図2】
本発明のサファイヤ製ダミーウエハを使用した横型拡散炉におけるダミーウエハと製品の配置の説明図である。
【図3】
本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造工程の実施例2の工程図である。
【図4】
本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造工程の実施例2の説明図である。
【図5】
本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造工程における3重研磨で使用する研磨粒子の範囲の関係を示す説明図である。
【図6】
本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造工程における2重研磨で使用する研磨粒子の範囲の関係を示す説明図である。
【図7】
本発明のサファイヤ製ダミーウエハの製造工程における洗浄液の種類と使用する工程の説明図である。
【符号の説明】
21 サファイヤの原石
22 円柱型のサファイヤの単結晶
23 円形の板状に加工されたサファイヤの板
24 研磨したサファイヤの円形の板
25 切り欠きを加工されたサファイヤの板
26 切り欠き
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-04-26 
出願番号 特願平6-233876
審決分類 P 1 651・ 851- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 534- YA (H01L)
P 1 651・ 853- YA (H01L)
P 1 651・ 531- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大嶋 洋一  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 橋本 武
河本 充雄
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3329593号(P3329593)
権利者 有限会社遠野精器
発明の名称 サファイヤ製ダミーウエハの製造方法  
代理人 松下 義治  
代理人 松下 義治  

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