ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 発明同一 H01L |
---|---|
管理番号 | 1121123 |
異議申立番号 | 異議2003-71832 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-10-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-07-18 |
確定日 | 2005-05-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3368036号「収束イオンビーム加工装置」の請求項1〜8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3368036号の請求項1〜3、5、7、8に係る特許を取り消す。 同請求項4、6に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件特許第3368036号(平成6年3月28日出願、平成14年11月8日設定登録)は、特許異議申立人吉田恵子より、請求項1〜8に係る特許について特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年1月11日に訂正請求がなされたものである。 [2]訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 訂正事項a 本件特許に係る願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1を以下のとおりに訂正する。 「【請求項1】イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置において、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を備え、前記加工幅測定手段は、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする収束イオンビーム加工装置。」 訂正事項b 特許明細書の特許請求の範囲の請求項6を以下のとおりに訂正する。 「【請求項6】加工幅の測定手段の出力に基づいてイオン光学系を制御する制御系を備えてなり、加工幅が所定値になると前記制御系が前記イオン光学系に制御信号を送ることにより前記加工が終了することを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の収束イオンビーム加工装置。」 訂正事項c 特許明細書の特許請求の範囲の請求項7を以下のとおりに訂正する。 「【請求項7】イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置を用い、前記収束イオンビーム加工装置に、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を設置し、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に、前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする加工方法。」 訂正事項d 特許明細書の特許請求の範囲の請求項8を以下のとおりに訂正する。 「【請求項8】イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置を用い、前記収束イオンビーム加工装置に、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を設置し、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に、前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする断面透過電子顕微鏡観察用試料の製造方法。」 訂正事項e 特許明細書の段落【0007】の「試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に、前記イオンビームと異なるエネルギー線を照射して、前記加工により減少する試料の加工幅を測定する手段を備えることを特徴とする収束イオンビーム加工装置を提案するもので、」の記載を、「前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を備え、前記加工幅測定手段は、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする収束イオンビーム加工装置を提案するもので、」と訂正する。 訂正事項f 特許明細書の段落【0007】の「加工幅の測定手段の出力に基づいてイオン光学系を制御する制御系を備えてなり、加工幅が所定値になると加工が終了する上記のいずれかに記載の加工装置であることを含む。」の記載を、「加工幅の測定手段の出力に基づいてイオン光学系を制御する制御系を備えてなり、加工幅が所定値になると前記制御系が前記イオン光学系に制御信号を送ることにより前記加工が終了する上記のいずれかに記載の加工装置であることを含む。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び拡張・変更の存否 (2-1)訂正事項a、c、dについて 訂正事項a、c、dは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1、7、8において、「試料の加工幅を測定する手段」について、「エネルギー線の照射系と検出系からなる」と、「試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって」との限定を加え、「エネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を設置し、・・・試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって・・・試料の加工幅を測定する」に減縮し、また、「試料の上面をイオンビームでスキャンする」について、「イオン光学系を制御して」との限定を加えて、「イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンする」に減縮したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、訂正後における請求項1、7、8に記載された事項は、特許明細書の段落【0004】、【0010】、【0017】に記載されていた事項である。 したがって、当該訂正事項は、特許明細書又は図面の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2-2)訂正事項bについて 訂正事項bは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項6において、「加工幅が所定値になると前記加工が終了する」に「前記制御系が前記イオン光学系に制御信号を送ることにより」との限定を付加して、「加工幅が所定値になると前記制御系が前記イオン光学系に制御信号を送ることにより前記加工が終了する」に減縮したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、訂正後における請求項6に記載された事項は、特許明細書の段落【0011】、【0018】に記載されていた事項である。 したがって、当該訂正事項は、特許明細書又は図面の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2-3)訂正事項e、fについて 訂正事項e、fは、訂正事項a〜dの特許請求の範囲の訂正に伴って、対応する発明の詳細な説明の記載事項を特許請求の範囲に整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、当該訂正は、訂正事項a〜dと同様、特許明細書又は図面の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、上記訂正事項a〜fは、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 [3]特許異議の申立てについて (1)特許異議申立理由の概要 特許異議申立人吉田恵子は、証拠として甲第1号証(特開平6-231720号公報)、及び甲第2号証(鈴木達朗著「応用光学I」、株式会社朝倉書店発行、1982年8月20日初版第1刷、第86〜89頁)を提示し、特許明細書の請求項1〜8に係る発明は、甲第1号証の特開平6-231720号公報に出願公開された本件出願前の特許出願(特願平5-19059号)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であるから、同請求項1〜8に係る発明についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである旨主張している。 (2)本件発明 本件の訂正後の請求項1〜8に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明8」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置において、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を備え、前記加工幅測定手段は、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする収束イオンビーム加工装置。 【請求項2】前記エッチングは、深さ方向であることを特徴とする請求項1記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項3】前記エネルギー線は、前記加工断面に対して実質的に垂直に入射されることを特徴とする請求項1又は2記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項4】加工幅の測定手段が、光学的測定手段であることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項5】加工幅の測定手段が、電子的測定手段であることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項6】加工幅の測定手段の出力に基づいてイオン光学系を制御する制御系を備えてなり、加工幅が所定値になると前記制御系が前記イオン光学系に制御信号を送ることにより前記加工が終了することを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項7】イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置を用い、前記収束イオンビーム加工装置に、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を設置し、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に、前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする加工方法。 【請求項8】イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置を用い、前記収束イオンビーム加工装置に、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を設置し、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に、前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする断面透過電子顕微鏡観察用試料の製造方法。」 (3)当審で通知した取消理由においては、先願明細書(甲第1号証)、及び本件出願前に頒布された刊行物1(甲第2号証:鈴木達朗著「応用光学I」、株式会社朝倉書店発行、1982年8月20日初版第1刷、第86〜89頁)、同じく頒布された刊行物2(特開平5-291195号公報)、同じく頒布された刊行物3(特開平2-132345号公報)を提示し、訂正前の請求項1〜8に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、同請求項1〜8に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるとし、また、同請求項1〜8に係る発明は、本件出願前に頒布された刊行物2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同請求項1〜8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとした。 その提示した先願明細書及び刊行物1〜3には、夫々次の事項が記載されている。 (3-1)先願明細書(甲第1号証) 先願明細書には、集束荷電ビーム装置および加工観察方法に関して、図1〜図3が示されるとともに、 「【請求項1】被加工試料表面を走査する集束イオンビーム光学系と電子ビーム光学系と、試料を移動する試料ステージと、前記イオンビームおよび電子ビーム照射による前記試料からの二次信号を捕らえる検出器を備えた集束荷電ビーム装置において、前記イオンビームおよび電子ビームが、前記試料表面に対してそれぞれ垂直および水平方向から試料に照射するように、イオンビームおよび電子ビーム照射系と前記試料ステージを配置され、薄膜加工された試料断面に対して電子ビームを直角に照射し、試料を透過した電子ビームを検出する検出器を備えたことを特徴とする集束荷電ビーム装置。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)、 従来技術として、「【0005】・・・イオン銃1に液体金属イオン源を用い、イオン銃1から引き出されたイオンビーム2は、イオン光学系3により集束・走査され試料4表面を照射する。なお、イオン光学系3は、イオンビーム2の光軸部分のみを通すアパーチャ30と、イオンビーム2を集束させる静電レンズ31と、集束されたイオンビーム2を試料4の表面上を所定領域照射するために集束イオンビーム2の光軸を偏向させる偏向電極32と、集束イオンビーム2の試料4表面上への照射をオン・オフ制御するブランカ33等より構成される。」(段落【0005】)、 実施例として、「【0012】イオン銃1に液体金属イオン源を用い、イオン銃1より引き出されたイオンビーム2は、イオン光学系3で加速・集束・走査され、集束イオンビーム2となる。そして、集束イオンビーム2は5軸試料ステージ4a上の試料4に照射される。・・・集束イオンビーム2照射によるスパッタエッチング加工で試料の薄膜加工、特にTEM観察用の試料の作成ができる。 【0013】電子ビーム7の照射系は、集束イオンビーム2の照射系に対して、90度に成るよう設置されている。・・・電子銃6より引き出された電子ビーム7は、電子レンズ系8で加速・集束・走査され、上記試料4に照射される。試料4から放出される電子ビーム励起の二次電子とX線は、それぞれ二次電子検出器5とX線検出器10で検出され、また反射電子と透過電子は、それぞれ反射電子検出器9と透過電子検出器11で検出される。これらの検出信号は、薄膜加工された試料の厚さによってその強度が変化するため、試料厚さと信号強度の関係を予め実測や計算で求めることによって、薄膜加工中の試料厚さをおおよそ測定することができる。このように本発明は、薄膜加工と薄膜試料の厚さを推測できるため、TEM試料の特定箇所を最適な厚さに加工できる。」(段落【0012】、【0013】)、 「【0015】集束イオンビーム2照射によるスパッタエッチング加工で作成されたTEM試料4観察面に、電子ビーム7を照射し試料表面で反射した反射電子9aを、反射電子検出器9で検出する。検出された反射電子信号は、増幅器9bで増幅されCPU12に取り込まれ、CRT13に反射電子像として表示される。 【0016】また、照射した電子ビーム7に直接励起されて試料表面から放出したX線10aと試料の薄膜加工された部分を透過散乱した電子が観察試料面以外を励起して放出したX線10bを、X線検出器10で検出する。検出されたX線信号は、増幅器10cで増幅されCPU12に取り込まれ、CRT13にX線像として表示される。さらに、照射した電子ビーム7で試料4をほとんど散乱せずに透過した電子ビーム11aを、透過電子検出器11で検出する。検出された透過電子信号は、増幅器11bで増幅されCPU12に取り込まれ、CRT13に透過電子像として表示される。その他、照射した電子ビーム7が電流として試料4に流れる吸収電流は、増幅器4bで増幅されCPU12に取り込まれ、CRT13に吸収電流像として表示される。 【0017】これらの信号強度をモニターすることにより、加工時の試料4厚さを推測することができるため、TEM試料の厚さを最適にすることが可能である。その上、電子ビーム励起の反射電子、透過電子および電子励起X線は、イオンビーム励起の二次電子とは性質が異なるため、集束イオンビーム2が照射されている時でも電子ビーム7を照射し、電子ビーム励起の反射電子像、透過電子像およびX線像を観察することができる。つまり、イオンビーム照射によるスパッタエッチング加工でTEM試料作成をしている間電子ビームも同時に照射し、電子ビーム励起の反射電子、透過電子および電子励起X線をモニターすることで、試料の厚さの確認が可能である。」(段落【0015】〜【0017】)が記載されている。 (3-2)刊行物1(鈴木達朗著「応用光学I」、株式会社朝倉書店発行、1982年8月20日初版第1刷、第86〜89頁) 刊行物1には、可視光を照射してその干渉縞を測定することによって層の厚さを測定することが可能であることが記載されている。 (3-3)刊行物2(特開平5-291195号公報) 刊行物2には、図1、図5、図6が示されるとともに、 「【0012】【実施例】・・・図1は本発明の薄膜加工装置の一つの基本構成を示す構成図である。・・・ 【0013】すなわち、本実施例は、試料の表面観察と加工のためのイオン照射系11とその制御系12、像観察のための二次電子又は二次イオンの検出器21とディスプレイ22、加工速度及び選択比を変えたり、加工損傷を低減するための反応性エッチングを行うのに使用するガス導入系31、試料の高精度位置合わせ、加工損傷の低減のための温度可変機能及び傾斜機能を持ち合わせた試料台41及びその制御系42、加工後の試料の厚さが所望の厚さであることを光の透過量から検出するための光源51及び検出器52とその情報を加工系に転送し、加工を制御する信号系53、加工室60を真空にする真空系70からなっている。 【0014】イオン照射系11はイオンビーム径を細く絞れる液体金属イオン源を用いた集束イオンビームが好ましい。・・・ 【0015】・・・終点検出に用いる光源51はヘリウム-ネオン・レーザやタングステン・ランプなどが用いられる。検出器52はフォトディテクタなどが用いられる。この情報は信号系53を介して制御系12に送られ、加工の制御を行う。」(段落【0012】〜【0015】)、 「【0020】図5はイオン照射系11と電子銃81が合体したものの実施例を示す。イオン照射系11は加工に用い、電子銃81は表面観察及び終点検出に用いる。これらは偏向器16によって試料の同一場所にイオンまたは電子を照射するようにできる。イオンで加工しながら定期的に電子を照射することにより加工の終点検出もできる。 【0021】図6は本発明の装置を用いた透過電子顕微鏡による断面観察用薄膜試料の加工プロセスを示す試料断面図である。試料は図6(a)に示すごとく、基板110と薄膜111からなる。まず、イオン又は電子を照射し、試料表面を観察して加工領域の位置合わせを行った後、試料表面に矢印Aの方向から高電流密度のイオンを照射し、図6(b)のごとく、溝210、211を形成する。表面を観察しながら残部300が所定の幅になるまで加工する。次いで、試料を180度回転させ、反応性ガスを導入しながら溝の側面212、213にイオン又はレーザを矢印Aの方向から照射し、図6(c)のごとく、側面212、213を加工する。この加工より先のイオンによる加工で生じた損傷を除去する。終点は残部300を透過した電子、光などの量を検出して決める。」(段落【0020】、【0021】)が記載されている。 (3-4)刊行物3(特開平2-132345号公報) 刊行物3には、第1図〜第3図が示されるとともに、 「微細イオンビームを作るためのイオン銃およびイオン光学系と、前記微細イオンビームを試料面上で走査する機構とを有する集束イオンビームエッチング手段を用い、前記試料の目標とする観察箇所の周囲をエッチングして薄膜化する薄膜試料の作製方法。」(特許請求の範囲)、 「薄膜試料を作製するには、まず、第2図の試料(1)の目標とする観察箇所(2)の両側を、第1図に示すように、集束イオンビーム(3)でエッチングする。集束イオンビーム(3)によるエッチングにおいては、幅100nm以下の精度で観察箇所(2)を残すことが可能である。集束イオンビーム(3)による加工の後、例えば透過性電子顕微鏡法による観察の場合、第3図のように、電子ビーム(5)を透過させて観察する。」(第2頁右上欄4〜12行)が記載されている。 (4)対比・判断 (4-1)本件発明1について (3-1)に列記した事項を総合すると、先願明細書には、「イオン銃に液体金属イオン源を用い、該イオン銃から引き出されたイオンビームを集束・走査して試料表面に照射し、該照射をオン・オフ制御する集束イオンビーム光学系と、電子ビームを試料に照射する電子ビーム照射系と、試料を移動する試料ステージとを備えた集束荷電ビーム装置において、上記イオンビーム光学系、電子ビーム照射系を上記試料表面に対してそれぞれ垂直および水平方向から照射するように配置し、上記イオンビーム照射によるスパッタエッチング加工で薄膜加工された試料断面に対して電子ビームを直角に照射し、試料を透過した電子、試料表面で反射した反射電子、試料表面から放出された電子励起X線等を検出する各検出器を備え、透過電子、反射電子、電子励起X線等を検出して加工時のTEM観察用試料の厚さをおおよそ測定、推測してTEM観察用試料を最適厚さに加工する集束荷電ビーム装置」の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されているといえる。 そして、本件発明1と先願発明1とを対比すると、先願発明1における「イオン銃」、「イオン銃から引き出されたイオンビームを集束・走査して試料表面に照射し、該照射をオン・オフ制御する集束イオンビーム光学系」、「電子ビームを試料に照射する電子ビーム照射系」、「試料を透過した電子、試料表面で反射した反射電子、試料表面から放出された電子励起X線等を検出する各検出器」、「試料断面に対して電子ビームを直角に照射し、」、「透過電子、反射電子、電子励起X線等を検出して加工時のTEM観察用試料の厚さをおおよそ測定、推測」、「TEM観察用試料を最適厚さに加工する集束荷電ビーム装置」は夫々、本件発明1における「イオン源」、「イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系」、「イオンビームと異なるエネルギー線の照射系」、「検出系・・・試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出する」、「加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、」、「加工により減少する試料の加工幅を測定」、「収束イオンビーム加工装置」に相当する。 また、先願発明1における「電子ビームを試料に照射する電子ビーム光学系」と「試料を透過した電子、試料表面で反射した反射電子、試料表面から放出された電子励起X線等を検出する各検出器」は、「透過電子、反射電子、及び電子励起X線等を検出して加工時のTEM観察用試料の厚さをおおよそ測定、推測」するためのものであるから、本件発明1における「加工幅測定手段」を構成するといえる。 また更に、先願発明1における「イオンビームを集束・走査して試料表面に照射するとともに、該照射をオン・オフ制御する集束イオンビーム光学系・・・を備えた集束荷電ビーム装置において、・・・上記イオンビーム照射によるスパッタエッチング加工で薄膜加工された試料断面に対して電子ビームを直角に照射し、」のうち、「イオンビームを集束・走査して試料表面に照射するとともに、該照射をオン・オフ制御する」とは、「集束イオンビーム光学系」の集束イオンビームの偏向電極、照射をオン・オフ制御するためのブランカ等を制御し、該制御された集束イオンビームを試料表面に照射して走査することに他ならず、且つ、その「イオンビーム照射によるスパッタエッチング加工で薄膜加工された試料断面」とは、上記制御された集束イオンビーム照射及び走査により、試料表面の深さ方向、試料の薄膜に沿う方向、又は試料の薄膜化が進行する方向にスパッタエッチング加工されてエッチング加工部が広げられて形成される試料断面を意味するのであるから、本件発明1における「イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置において、・・・イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、」と実質的に相違しない。 してみると、両者は、「イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置において、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を備え、前記加工幅測定手段は、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定する収束イオンビーム加工装置」の点で一致し、構成において実質的に異なる点がない。 したがって、本件発明1は、先願発明1と実質的に同一である。 (4-2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を引用し、更に「前記エッチングは、深さ方向である」点を限定する発明である。 そして、この「前記エッチングは、深さ方向である」点は、先願発明1において、イオンビームを試料表面に対して垂直に照射することにより必然的に行われることであり、先願発明1に含まれる構成である。 したがって、本件発明1を引用する本件発明2は、本件発明1と同じく、先願発明1と実質的に同一である。 (4-3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1又は2を引用し、更に「前記エネルギー線は、前記加工断面に対して実質的に垂直に入射される」点を限定する発明である。 そして、この「前記エネルギー線は、前記加工断面に対して実質的に垂直に入射される」点は、先願発明1において、「試料断面に対して電子ビームを直角に照射」することと重複し、先願発明1に含まれる構成である。 したがって、本件発明1又は2を引用する本件発明3は、本件発明1及び2と同じく、先願発明1と実質的に同一である。 (4-4)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1乃至4を引用し、更に「加工幅の測定手段が、電子的測定手段である」点を限定する発明である。 そして、この「加工幅の測定手段が、電子的測定手段である」点は、先願発明1において、「試料断面に対して電子ビームを直角に照射し、試料を透過した電子、試料表面で反射した反射電子、試料表面から放出された電子励起X線等を検出する各検出器を備え」ることと重複し、先願発明1に含まれる構成である。 したがって、本件発明1乃至3を引用する本件発明5は、本件発明1乃至3と同じく、先願発明1と実質的に同一である。 (4-5)本件発明7について (3-1)に列記した事項を総合すると、先願明細書には、「イオン銃に液体金属イオン源を用い、該イオン銃から引き出されたイオンビームを集束・走査して試料表面に照射し、該照射をオン・オフ制御する集束イオンビーム光学系と、電子ビームを試料に照射する電子ビーム照射系と、試料を移動する試料ステージとを備えた集束荷電ビーム装置を用い、上記イオンビーム光学系、電子ビーム照射系を上記試料表面に対してそれぞれ垂直および水平方向から照射するように配置し、上記イオンビーム照射によるスパッタエッチング加工で薄膜加工された試料断面に対して電子ビームを直角に照射し、試料を透過した電子、試料表面で反射した反射電子、試料表面から放出された電子励起X線等を検出する各検出器を備え、透過電子、反射電子、電子励起X線等を検出することによって、加工時のTEM観察用試料の厚さをおおよそ測定、推測して、TEM観察用試料を最適厚さに加工する方法」の発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されているといえる。 そして、本件発明7と先願発明2とを対比すると、先願発明2における「イオン銃」、「イオン銃から引き出されたイオンビームを集束・走査して試料表面に照射し、該照射をオン・オフ制御する集束イオンビーム光学系」、「電子ビームを試料に照射する電子ビーム照射系」、「試料を透過した電子、試料表面で反射した反射電子、試料表面から放出された電子励起X線等を検出する各検出器」、「試料断面に対して電子ビームを直角に照射し、」、「透過電子、反射電子、電子励起X線等を検出することによって、加工時のTEM観察用試料の厚さをおおよそ測定、推測」、「TEM観察用試料を最適厚さに加工する方法」は夫々、本件発明7における「イオン源」、「イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系」、「イオンビームと異なるエネルギー線の照射系」、「検出系・・・試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出する」、「加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、」、「加工により減少する試料の加工幅を測定」、「加工方法」に相当する。 また、先願発明2における「電子ビームを試料に照射する電子ビーム光学系」と「試料を透過した電子、試料表面で反射した反射電子、試料表面から放出された電子励起X線等を検出する各検出器」は、「透過電子、反射電子、及び電子励起X線等を検出して加工時のTEM観察用試料の厚さをおおよそ測定、推測、確認」するためのものであるから、本件発明7における「加工幅測定手段」を構成するといえる。 また更に、先願発明2における「イオンビームを集束・走査して試料表面に照射するとともに、該照射をオン・オフ制御する集束イオンビーム光学系・・・を備えた集束荷電ビーム装置を用い、・・・上記イオンビーム照射によるスパッタエッチング加工で薄膜加工された試料断面に対して電子ビームを直角に照射し、」のうち、「イオンビームを集束・走査して試料表面に照射するとともに、該照射をオン・オフ制御する」とは、「集束イオンビーム光学系」の集束イオンビームの偏向電極、照射をオン・オフ制御するためのブランカ等を制御し、該制御された集束イオンビームを試料表面に照射して走査することに他ならず、且つ、その「イオンビーム照射によるスパッタエッチング加工で薄膜加工された試料断面」とは、上記制御された集束イオンビーム照射及び走査により、試料表面の深さ方向、試料の薄膜に沿う方向、又は試料の薄膜化が進行する方向にスパッタエッチング加工されてエッチング加工部が広げられて形成される試料断面を意味するのであるから、本件発明7における「イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置を用い、・・・イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、」と実質的に相違しない。 してみると、両者は、「イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置を用い、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を備え、前記加工幅測定手段は、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定する加工方法」の点で一致し、構成において実質的に異なる点がない。 したがって、本件発明7は、先願発明2と実質的に同一である。 (4-6)本件発明8について 本件発明8は、本件発明7の「加工方法」を「断面透過電子顕微鏡観察用試料の製造方法」とした発明である。 そして、この「断面透過電子顕微鏡観察用試料の製造方法」は、先願発明2における「TEM観察用試料を最適厚さに加工する方法」と実質的に相違しない。 したがって、本件発明8は、先願発明2と実質的に同一である。 (4-7)本件発明4、6について 本件発明4は、本件発明1乃至3を引用し、更に「加工幅の測定手段が、光学的測定手段である」点を限定する発明であり、また、本件発明6は、本件発明1乃至5を引用し、更に「加工幅の測定手段の出力に基づいてイオン光学系を制御する制御系を備えてなり、加工幅が所定値になると前記制御系が前記イオン光学系に制御信号を送ることにより前記加工が終了する」点を限定する発明である。 そして、上記「加工幅の測定手段が、光学的測定手段である」点、及び「加工幅の測定手段の出力に基づいてイオン光学系を制御する制御系を備えてなり、加工幅が所定値になると前記制御系が前記イオン光学系に制御信号を送ることにより前記加工が終了する」点は、先願明細書には記載されておらず、先願明細書に記載された発明において自明な事項でもない。 したがって、本件発明4、6は、先願明細書に記載された発明と同一であるとすることはできない。 また、本件発明4、6は、本件発明1乃至その下位の発明を引用することにより、「加工幅測定手段は、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定する」点を構成要件とするものであるが、この点は刊行物1〜3のいずれにも記載されておらず、示唆する記載もないので、刊行物1〜3に記載された発明をいかに組み合わせても、本件発明4、6の上記構成要件を導き出すことはできない。 そして、本件発明4、6は、上記構成要件を具備することにより、加工幅を正確に、かつ簡単に得ることができ、加工の自動化が容易であるという、訂正明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。 したがって、本件発明4、6は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件発明1〜3、5、7、8は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件発明1〜3、5、7、8についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 また、本件発明4、6についての特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては取り消すことはできないし、他に本件発明4、6についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明4、6についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 収束イオンビーム加工装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置において、 前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を備え、前記加工幅測定手段は、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする収束イオンビーム加工装置。 【請求項2】 前記エッチングは、深さ方向であることを特徴とする請求項1記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項3】 前記エネルギー線は、前記加工断面に対して実質的に垂直に入射されることを特徴とする請求項1又は2記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項4】 加工幅の測定手段が、光学的測定手段であることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項5】 加工幅の測定手段が、電子的測定手段であることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項6】 加工幅の測定手段の出力に基づいてイオン光学系を制御する制御系を備えてなり、加工幅が所定値になると前記制御系が前記イオン光学系に制御信号を送ることにより前記加工が終了することを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の収束イオンビーム加工装置。 【請求項7】 イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置を用い、 前記収束イオンビーム加工装置に、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を設置し,前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に、前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする加工方法。 【請求項8】 イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置を用い、 前記収束イオンビーム加工装置に、前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を設置し、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に、前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする断面透過電子顕微鏡観察用試料の製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、深さ方向のエッチングによる微細加工,断面加工用等に有用なイオンビーム加工装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、収束イオンビーム加工装置が開発され、半導体分野を中心にして様々の分野で応用され始めている。特に最近、収束イオンビーム加工装置を用いて半導体等の特定箇所の断面透過電子顕微鏡(TEM)観察用試料を作製する技術が注目を集めている。この技術においては、電子顕微鏡で試料を観察する際に電子線が試料を透過できるように加工幅をできるだけ小さくする必要がある。特に、高倍率で良好な格子像を観察するためには、加工幅を少なくとも0.1μm以下にすることが望ましい。 【0003】 図2は従来の収束イオンビーム加工装置の一構成例を示すものである。 【0004】 図2中、1はイオン光学系で、イオン源(不図示)で発生させたイオンをこのイオン光学系1で収束してイオンビーム2とし、試料3の加工部4にイオンビーム2を照射して試料3を加工するものである。これらは通常、真空チャンバー(不図示)内に配置されている。イオンビーム2をイオン光学系1で制御しながら試料3の加工部4をイオンビームでスキャンすることにより、試料3の加工部4を所定方向(本図においては、矢印Xの方向)にエッチングして加工部4を広げていくもので、これにより新しい加工面5が形成され、この加工により加工幅6、つまり未加工部分の幅が減少する。なお、20はイオン光学系1の制御系である。 【0005】 従来、収束イオンビーム加工装置を用いてエッチングしながら加工幅を測定する場合には、同装置の備えている機能を利用して、上方向からの走査イオン顕微鏡像を観察する方法が採用されている。しかしながら、上記の走査イオン顕微鏡像による加工された試料の表面の観察においては、加工面の上面、側面、底面の識別が困難であり、また走査イオン顕微鏡像の分解能があまり良くない等の理由で、特に加工幅が微小な場合には、加工幅の測定が困難となる。このため、望みどうりの加工幅とすることは容易ではなく、ときにはオーバーエッチングを起こして試料を壊してしまう場合もあった。この問題を避けるために、断面TEM観察用試料の作製に収束イオンビーム加工装置を用いて観察に適した試料を得る場合には、収束イオンビームによる加工と、透過電子顕微鏡による観察とを交互に繰り返す煩雑な手順を採用せねばならず、場合によっては試料の移し替えの際に、試料を破損してしまう等の不都合もあった。従って、加工幅を自動的に検知して加工を適切に終了させることは困難であり、加工の自動化も不可能であった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 本発明者は、上記問題を解決するために種々検討した結果、加工装置のイオンビームと異なるエネルギー線を加工中の試料に照射することによって、試料の加工幅を簡単、かつ精度良く測定できることを知得して本発明を完成するに至ったもので、その目的とするところは、加工幅が微小な場合でも所望の加工幅を確実に加工でき、更に加工装置の自動化にも適応できる収束イオンビーム加工装置を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】 上記問題を解決するために本発明は、イオン源と、イオン源で発生するイオンをイオンビームに収束すると共にイオンビームの試料加工部への照射を制御するイオン光学系とを少なくとも有する収束イオンビーム加工装置において、 前記イオンビームと異なるエネルギー線の照射系と検出系からなる加工幅測定手段を備え、前記加工幅測定手段は、前記イオン光学系を制御して試料の上面を前記イオンビームでスキャンすることにより試料加工部が所定方向にエッチングされ広げられて形成される加工断面に前記照射系から前記エネルギー線を照射し、試料から放出されるエネルギー出力を前記検出系で検出することによって、前記加工により減少する試料の加工幅を測定することを特徴とする収束イオンビーム加工装置を提案するもので、 加工幅の測定手段が光学的測定手段であること、 加工幅の測定手段が電子的測定手段であること、 加工幅の測定手段の出力に基づいてイオン光学系を制御する制御系を備えてなり、加工幅が所定値になると前記制御系が前記イオン光学系に制御信号を送ることにより前記加工が終了する上記のいずれかに記載の加工装置であることを含む。 【0008】 以下、本発明を詳細に説明する。 【0009】 (実施態様) 図1は本発明の収束イオンビーム加工装置の一実施態様を示すものである。 【0010】 図1中、符号1乃至6で示される各構成は図2各の構成と同一構成を表わすものである。本実施態様においては図2において示される従来の加工装置に、更に加工幅6の測定をする手段を設けるものである。即ち、12はエネルギー線照射系で、この照射系12から照射されたエネルギー線14は加工面5にほぼ垂直に入射し、加工幅6に対応したエネルギー出力16が試料3から放出される。18はエネルギー出力検出系で、試料3を中心としてエネルギー線照射系12と180度反対側に配置され、前記エネルギー出力16を検出し、予め検出系18に設定しあった設定値と比較を行なうもので、エネルギー出力16の検出値が設定値を越えた場合は出力信号を制御系20に送出するものである。 【0011】 制御系20は前記出力信号を取り込み、制御信号をイオン光学系1に送り、これによりイオンビーム加工が終了する。 【0012】 加工幅を測定する手段の具体例としては、細く絞ったレーザー光を加工面に照射して加工幅部22の透過光の強度を測定するもの、細く絞った電子線を加工面5に照射して加工幅部22の非弾性散乱強度を測定するもの、可視光を加工面5に照射して加工幅部22の干渉縞を測定するもの等があるが、これに限られず、紫外線、X線等のエネルギー線を用いることもでき、またエネルギー線の入射角度も垂直に限られず、任意の角度が採用でき、その他加工幅を測定できる手段であれば、いずれのものでも採用できる。 【0013】 加工幅を測定する手段を設置する場所としては、収束イオンビーム加工装置のチャンバー内、試料台の上、チャンバーが透明等でエネルギー線を透過できるものであるときはチャンバーの外部等がある。しかし、収束イオンビーム加工および加工幅の測定に不都合がなければ、設置場所に特に制限はない。 【0014】 【実施例】 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。 【0015】 実施例1 図1に示す構成の収束イオンビーム加工装置を製造した。 【0016】 チャンバー内の試料付近の真空度は5×10-7Torr程度であり、イオン源付近の真空度は1×10-7Torr程度であった。 【0017】 エネルギー照射系12としてArイオンレーザーを用い、レーザー光で試料3を照射し、その透過光をレーザー光検出器(光電管)で検出した。Siウエハー上に形成したデバイスを試料とし、本実施例の装置を用いてデバイスの断面透過電子顕微鏡観察用試料の作製を行なった。制御系20によってイオン光学系1を制御して、試料であるウエハーの上面(加工面4)をイオンビーム2で走査してウエハーの加工を行なった。なお、イオン種はGaイオンであった。 【0018】 同時にレーザー光を絞って加工面5を照射した。X方向に加工を進め、加工を続けていくうちに加工幅部22の加工幅6が小さくなり、加工幅部22を透過するレーザー光が増加した。ウエハーを中心としてレーザーと反対側に置かれたレーザー光検出器が透過レーザー光のエネルギー出力を検出し、予め設定されていた設定値(本例においては加工幅部を0.1μmとなるように設定した。)とエネルギー出力検出値とが比較された。検出値が設定値を越えると検出系18から制御系20へ出力信号が送られた。これにより制御系20からイオン光学系に制御信号が送られ、イオンビーム加工が自動的に停止した。 得られたウエハーの加工幅は0.1μmであり、これは透過電子顕微鏡観察用に適したものであった。 【0019】 実施例2 エネルギー線照射系として、電子ビーム照射系(磁界レンズ)を用いて電子ビームを加工面に照射し、照射系と反対側にある電子ビーム検出系(セクター型磁極)によって非弾性散乱電子1弾性散乱電子強度比を測定する以外は実施例1と同様に加工装置を構成し、実施例1と同様に加工を行なった。ウエハーの加工幅は0.1μmであった。 【0020】 【発明の効果】 本発明によれば、上記のように構成したので、加工幅が微小な場合でも望みどうりの加工幅を正確に、かつ簡単に得ることができる。更に、加工の自動化が容易である。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の構成の一例を示すブロック図である。 【図2】 従来の収束イオンビーム加工装置の構成を示すブロック図である。 【符号の説明】 1 イオン光学系 2 イオンビーム 3 試料 4 加工部 5 加工面 6 加工幅 12 エネルギー線照射系 14 エネルギー線 16 エネルギー出力 18 エネルギー出力検出系 20 制御系 22 加工幅部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-04-04 |
出願番号 | 特願平6-56494 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZD
(H01L)
P 1 651・ 161- ZD (H01L) |
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 今井 淳一 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
市川 裕司 瀬良 聡機 |
登録日 | 2002-11-08 |
登録番号 | 特許第3368036号(P3368036) |
権利者 | キヤノン株式会社 |
発明の名称 | 収束イオンビーム加工装置 |
代理人 | 金田 暢之 |
代理人 | 石橋 政幸 |
代理人 | 石橋 政幸 |
代理人 | 伊藤 克博 |
代理人 | 金田 暢之 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |
代理人 | 伊藤 克博 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |