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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 B29C |
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管理番号 | 1121185 |
異議申立番号 | 異議2003-72030 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-03-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-08 |
確定日 | 2005-07-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3377616号「ICカード用カード基材の製造方法及び製造用金型」の請求項2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3377616号の請求項2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3377616号は、平成6年9月1日の出願であって、平成14年12月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 加藤哲雄から特許異議の申立てがされ、取消理由が通知され、期間を指定して意見書を提出する機会が与えられたが、特許権者は何ら応答をしなかったものである。 II.特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人 加藤哲雄は、以下の甲第1号証を提出して、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべき旨主張している。 甲第1号証:特開平4-347628号公報 III.本件特許の請求項2に係る発明 本件特許第3377616号の請求項2に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項2】 ICモジュールが埋設される埋設用凹部を形成したICカード用カード基材を射出成形法により製造するための製造用金型であって、固定型と可動型を有し、該固定型と該可動型のいずれか一方に前記埋設用凹部に対応する金型凸部をゲート位置近傍に配置したことを特徴とするICカード用カード基材の製造用金型。」 IV.取消理由の概略 平成16年12月28日付けで通知した取消理由の概略は、以下のとおりである。 「本件特許の請求項2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物(特開平4-347628号公報)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。」 V.当審の判断 1.取消理由の刊行物の記載 (1)刊行物 刊行物1:特開平4-347628号公報 (2)刊行物1に記載された事項 刊行物1には、以下の事項が記載されている。 (a)「【従来の技術】一般のICカードは、カード基材に形成してある埋設用凹部内にICモジュールを埋設することにより製造される。カード基材を射出成形法で製造する方法としては、従来、図5,6に示す方法が知られている。 図5,6に示す従来例では、上型2と下型4との間に、キャビティ6を形成し、上型に形成してある樹脂圧入口8,8からキャビティ6内に溶融樹脂を流し込み、固化させることにより、ICカード用カード基材を製造している。しかしながら、図6に示すように、このようにして製造されたICカード用カード基材10の表面には、樹脂圧入口8,8の跡8a,8aが残り、カードの外観を著しく損なうと共に、カード基材の表面における印刷エリアを損ねるという問題点を有する。」(段落【0002】、【0003】) (b)「【発明が解決しようとする課題】このような問題点を解消するために、図7,8図に示すようなICカード用カード基材の製造方法も考えられる。図7,8に示す方法では、樹脂圧入口12を、上型14と下型16との間に形成してあるキャビティ6の端部に設け、そこから樹脂を注入し、射出成形した後、図8に示すようなカード基材18を製造し、樹脂圧入口の跡12aを基材端部から削り落とすようにしている。このような製造方法では、ICカード用カード基材18の表面には、樹脂注入口12の跡が残らないが、樹脂圧入口の跡12aを基材端部から削り落とす作業を必要とし、その作業が煩雑であり、生産性が低下するおそれがある。 また、図8に示すカード基材18の厚さは、0.76〜0.84mm程度に薄く、しかもカード基材18の埋設用凹部20に埋設されるICモジュールの厚さは約0.55〜0.65mm程度に薄いため、カード基材18の最も薄い部分は、僅か0.2mmしかない。このため、カード端部から樹脂を圧入する方式では、たとえ流動性の良い樹脂を使用したとしても、埋設用凹部を成形するための図7に示す金型凸部22の裏側に樹脂が回り込み難くなり、カード基材18を歪なく精度良く成形することは非常に困難であるという問題点を有する。しかも、カード端部から樹脂を圧入すると、樹脂の流れ方向に沿って、図8に示すようなウエルドライン24が形成され、そのラインに沿った曲げ負荷に対して、強度的に弱いという問題点も有している。」(段落【0004】、【0005】) (c)従来例に係るICカード用カード基材の製造用金型の要部概略断面図であり、上記金型は、2箇所の樹脂圧入口8とキャビティ6内に突出する凸部が形成された上型2と、下型4とからなることが図示されている。(【図5】) (d)従来例に係るICカード用カード基材の平面図であり、ICカード用カード基材10には、2箇所の樹脂圧入口の跡8aが図示され、1つの跡8aの右側に二重の四角が図示されている。(【図6】) (e)従来例に係るICカード用カード基材の製造用金型の要部概略断面図であり、上記金型は、キャビティ6内に突出する凸部が形成された上型14と下型16とからなることが図示されている。また、上型14と下型16との間のキャビティ6の端部に形成された樹脂圧入口12が図示されている。(【図7】) (f)従来例に係るICカード用カード基材の平面図であり、カード基材18の中央より左寄りに、ICモジュールが埋設される埋設用凹部20が図示され、カード基材18の左端部には、樹脂圧入口の跡12aが図示されている。(【図8】) 2.対比・判断 刊行物1の図5において図示されている、上型2に形成され、かつキャビティ6内に突出する凸部(摘示記載(c))、図6におけるICカード用カード基材10に図示されている二重の四角は(摘示記載(d))、摘示記載(b)、(e)、(f)および技術常識からみて、それぞれ、上型に形成されたICモジュール埋設用凹部を成形するための金型凸部、ICモジュールが埋設される埋設用凹部であるものと認められる。そして、摘示記載(c)、(d)より、ICモジュールが埋設される埋設用凹部と片方の樹脂圧入口8の跡8aとの位置関係から、ICモジュール埋設用凹部を成形するための金型凸部が樹脂圧入口8の位置近傍に配置されていると認められる。 また、摘示記載(e)、(f)より、樹脂圧入口12の跡12aとICモジュールが埋設される埋設用凹部20との位置関係から、ICモジュール埋設用凹部を成形するための金型凸部22は樹脂圧入口12の位置近傍に配置されているものと認められる。 とすれば、刊行物1の摘示記載(a)〜(f)からみて、刊行物1には、以下のとおりの発明が記載されているものと認められる。 「ICモジュールが埋設される埋設用凹部を形成したICカード用カード基材を射出成形法により製造するための製造用金型であって、上型と下型を有し、上型に前記埋設用凹部を成形するための金型凸部が樹脂圧入口の位置近傍に配置されている、ICカード用カード基材の製造用金型。」 本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「前記埋設用凹部を成形するための金型凸部」、「樹脂圧入口」は、本件発明の「前記埋設用凹部に対応する金型凸部」、「ゲート」にそれぞれ相当するから、両者は、 「ICモジュールが埋設される埋設用凹部を形成したICカード用カード基材を射出成形法により製造するための製造用金型であって、上型と下型を有し、該上型に前記埋設用凹部に対応する金型凸部をゲート位置近傍に配置したことを特徴とするICカード用カード基材の製造用金型。」 である点で一致し、本件発明においては、上型と下型が固定型と可動型の組み合わせであるのに対し、刊行物1記載の発明においては、単に上型と下型と記載されるのみで、いずれが固定又は可動かについて特に明示されていない点で、両者は一応相違する。 上記相違点について検討すると、射出成形用金型は通常固定型と可動型とからなるので、刊行物1記載の発明における上型と下型もいずれかが固定型であり、いずれかが可動型であることは明らかであるから、上記相違点は実質的な相違点ではなく、本件発明は刊行物1に記載された発明である。 VI.まとめ 以上のとおり、本件発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2005-06-06 |
出願番号 | 特願平6-208815 |
審決分類 |
P
1
652・
113-
Z
(B29C)
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最終処分 | 取消 |
特許庁審判長 |
石井 淑久 |
特許庁審判官 |
鴨野 研一 芦原 ゆりか |
登録日 | 2002-12-06 |
登録番号 | 特許第3377616号(P3377616) |
権利者 | 三菱樹脂株式会社 |
発明の名称 | ICカード用カード基材の製造方法及び製造用金型 |