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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない A01G
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A01G
管理番号 1121861
審判番号 無効2003-35212  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-07-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-05-27 
確定日 2005-01-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3387067号発明「園芸用ポット移し替え装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3387067号発明は、平成14年3月18日(国内優先権 平成13年11月6日)に特願2002-74186号として出願され、平成15年1月10日に設定登録がなされ、その後、日本ポリ鉢販売株式会社より特許無効審判の請求がなされ、答弁書並びに訂正請求書が提出され、それに対する弁駁書が提出されたあと口頭審理が行われたものである。

2.無効理由の概要
本件特許発明の請求項1〜3,9は、特許出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に違反し、同請求項1〜9は、特許出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて、或いは、特許出願前に日本国内において頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項に違反し、特許法第123条第1項第2号により無効とされるべきであるとして、下記の証拠方法を提出している。
・甲第1号証・・・特開2000-83483号公報
・甲第2号証・・・中部農材株式会社の「ハンドサーバー(CN-09024型)」のパンフレット
・甲第3号証・・・特開2002-281835号公報
・甲第4号証・・・特開2002-247921号公報
(甲第3,4号証は、本件特許の出願日前に、甲第2号証が発行され頒布されたことを立証するためのもの)
・甲第5号証・・・通知書(発送者)被請求人 西村昌昭、平成15年1月23日
・甲第6号証・・・回答書(発送者)請求人 日本ポリ鉢販売株式会社、平成15年2月5日
・甲第7号証・・・通知書(発送者)被請求人 西村昌昭、平成15年2月12日
・甲第8号証・・・回答書(発送者)請求人 日本ポリ鉢販売株式会社、平成15年2月19日
・甲第9号証・・・通知書(発送者)被請求人 西村昌昭、平成15年3月13日
(甲第5〜9号証は、本件無効審判請求に至った経緯のためのもの)

3.訂正の適否
(1)訂正事項
・訂正事項a
特許請求の範囲を、
「【請求項1】 園芸用ポットの内面に圧入される弾性材料からなる複数の把持部材と、前記把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記保持枠を手で持つための第1ハンドルと、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドルと、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に面接触する下窄まりの略直方体形又は円錐台形の弾性柔軟材料で形成し、該略直方体形の4つの側面又は該円錐台形の周面に該側面又は周面の高さ方向に延びる複数の切除部を設けたことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。
【請求項2】 園芸用ポットの内画に圧入される弾性材料からなる複数の把持部材と、前記把持部位を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記保持枠を手で持つための第1ハンドルと、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドルと、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触する
(ア)該内面の高さ方向に延び、上端ほど外側に開いて上端が内側へ折り曲げられた複数本の弾性把持片、又は、
(イ)該内面の高さ方向に延び、弓状に曲がる複数本の弾性把持片で構成したことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。
【請求項3】 前記組付手段が、前記保持枠に固定されたパイプと、前記支持枠に固定されたロッドとを含み、該パイプの下端部に前記把持部材を固着し、該ロッドを該パイプに遊挿させるとともに前記把持部材内を下方へ遊貫通させ、該ロッドの下端に前記押出部材を取り付け、該パイプの下端部に前記(イ)の弓状に曲がる把持片の弧の膨らみ具合を調節するための雄ねじとナットとを設けた請求項2記載の園芸用ポットの移し替え装置。」と訂正する。
・訂正事項b
特許明細書の段落【0005】を、
「【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者は、園芸用ポットの内面に圧入される弾性材料からなる複数の把持部材と、把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、把持部材より下方へ変位しポットを押し出して把持部材から解放する複数の押出部材と、押出部材を把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備えた移し替え装置を検討した。」と訂正する。
・訂正事項c
特許明細書の段落【0008】の「把持部材は、・・・樹脂、金属(鋼線等)を例示できる。」の記載の後に、
「以上の検討の下に、本発明の移し替え装置は、次の手段(1)(2)をとったものである。
(1)園芸用ポットの内面に圧入される弾性材科からなる複数の把持部材と、前記把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記保持枠を手で持つための第1ハンドルと、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドルと、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に面接触する下窄まりの略直方体形又は円錐台形の弾性柔軟材料で形成し、該略直方体形の4つの側面又は該円錐台形の周面に該側面又は周面の高さ方向に延びる複数の切除部を設けたことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。
(2)園芸用ポットの内面に圧入される弾性材料からなる複数の把持部材と、前記把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記保持枠を手で持つための第1ハンドルと、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドルと、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触する
(ア)該内面の高さ方向に延び、上端ほど外側に開いて上端が内側へ折り曲げられた複数本の弾性把持片、又は、
(イ)該内面の高さ方向に延び、弓状に曲がる複数本の弾性把持片で構成したことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。
上記手段(2)において、前記組付手段が、前記保持枠に固定されたパイプと、前記支持枠に固定されたロッドとを含み、該パイプの下端部に前記把持部材を固着し、該ロッドを該パイプに遊挿させるとともに前記把持部材内を下方へ遊貫通させ、該ロッドの下端に前記押出部材を取り付け、該パイプの下端部に前記(イ)の弓状に曲がる把持片の弧の膨らみ具合を調節するための雄ねじとナットとを設けることが好ましい。」の記載を追加する。
・訂正事項d
特許明細書の段落【0025】の、「【発明の効果】以上詳述した通り、・・・という効果を奏する。」の記載の後に、
「上記効果に加え、請求項1に係る発明によれば、把持部材がポットの内面に広い面積で接触し、均一な力でポットを確実に把持でき、ポットを傷付けたり変形させたりするおそれがなく、材料費が安く、耐久性に優れる。また、把持部材の可撓性が増し、挿入時にポットを過度に変形させたり把持力が過剰になったりするおそれがなく、また、ポットのサイズの多少の変化に対応できる。
上記効果に加え、請求項2に係る発明によれば、把持部材が園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触するとともに、把持片の上端が園芸用ポットに引っ掛からない。さらに、請求項3に係る発明によれば、各種の大きさのポットに対応することができる。」の記載を追加する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aにおける請求項1は、特許査定時の請求項7(請求項1を引用)を特許明細書の段落【0013】の記載に基づいて「前記保持枠を手で持つための第1ハンドル」「前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドル」の限定を加え、かつ、特許明細書の段落【0008】、【0009】、【0021】の記載、並びに、図面の図1、図2、図4、図7及び図10に切除部3が把持部材2の側面又は周面の高さ方向に延びていることが記載されていることに基づいて、「把持部材」を「下窄まりの略直方体形又は円錐台形」にし、「該略直方体形の4つの側面又は該円錐台形の周面に該側面又は周面の高さ方向に延びる複数の切除部を設けたこと」の限定を加えて独立形式で記載したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに相当する。
上記訂正事項aにおける請求項2は、特許査定時の請求項1を請求項9の構成を取り込み限定し、特許明細書の段落【0013】の記載に基づいて「前記保持枠を手で持つための第1ハンドル」「前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドル」の限定を加え、かつ、特許明細書の段落【0008】、【0021】、【0022】の記載、並びに、図面の図11、図12、図13及び図14の記載に基づいて、
「前記把持部材を園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触する
(ア)該内面の高さ方向に延び、上端ほど外側に開いて上端が内側へ折り曲げられた複数本の弾性把持片、又は、
(イ)該内面の高さ方向に延び、弓状に曲がる複数本の弾性把持片で構成したこと」の限定を加えたものとみることができ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに相当する。
上記訂正事項aにおける請求項3は、特許査定時の請求項2を、上記特許査定時の請求項1の減縮とみることができる新たな請求項2と同様に限定するとともに、さらに特許明細書の段落【0022】の記載に基づいて、「該パイプの下端部に前記弓状に曲げた把持片の弧の膨らみ具合を調節するための雄ねじとナットとを設けた」ことの限定を加え、新たな請求項2を引用して記載したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに相当する。
また、上記特許請求の範囲の訂正は、実質的に請求項3〜6及び8,9を削除しようすることであるので、この請求項の削除は特許請求の範囲の減縮を目的とするものに相当する。
訂正事項b、cは、上記訂正事項aにより訂正される特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに相当する。
訂正事項dは、上記訂正事項aにより訂正される特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであり、特許明細書の段落【0008】、【0018】、【0021】及び【0022】の記載に基づいている。したがって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに相当する。
そして、上記訂正事項a〜dは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)請求人の主張
請求人は上記訂正請求について下記のように主張している。(第1回口頭審理調書、平成16年9月7日)
A.訂正請求項1記載の「切除部」について可撓性を増すものである。
B.訂正請求項2記載の「線接触」について
(1)高さ方向に伸びる帯状の把持片は高さ方向に線接触することはない。線接触するならば横方向に線接触する。(図12、図13による。)
(2)特許明細書には、高さ方向に伸びる帯状の把持片は線接触する記載はあるが、高さ方向に線接触する記載はない。
C.訂正請求項2記載の「折り曲げられた」について
(1)折り曲げは、丸みを帯びて折り曲げられたものと解する。それについては、特許明細書の図11と、段落【0021】の(2)に記載されている。
(2)上記以外のものが解することができるのであれば新規事項である。
・Aの点について
本件訂正明細書段落【0008】には、切除部について「・・可撓性を増す切除部・・」と明確に記載してあり、当該切除部が可撓性を増すものであることは明らかである。
・Bの点について
本件訂正明細書の図11〜14を参照すれば、線状、帯状のものを含む把持片が高さ方向に延びており、しかもその訂正請求項2には、明確に図11の実施例に相当する(ア)、図12〜14の実施例に相当する(イ)の双方が、高さ方向に線接触すると記載されている。また、図12〜14の実施例に相当する(イ)の弓状の弾性把持片は高さ方向に、ある長さをもって園芸用ポットの内面と接触することは明らかであるので、請求人の主張するように高さ方向に伸びる帯状の把持片は横方向に線接触するものと解することはできない。
・Cの点について
段落【0021】の(2)に「把持片23の上端は、ポットPに引っ掛からないように、折り曲げられている。」と出願当初明細書から記載されており、新規事項とはいえない。(なお、「折り曲げられた」という記載については、上記「・・引っ掛からない・・」という目的に沿って解されるべきである。)
(4)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第134条第2項ただし書きの規定、及び第134条第5項において準用する第126条第2,3項の規定に適合するものである。

4.本件発明
上記のとおり訂正が認められるので、本件発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものと認める。(上記訂正事項a参照。以下、各「本件発明1」〜「本件発明3」という。)

5.甲号証記載の発明
甲第1号証は、本件発明の出願日前の平成12年3月28日に公開された特開2000-83483号公報(名称、ポット装填装置)であり、下記の事項が記載されている。
「【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図1ないし図10を基に説明する。本実施の形態に関するものの、その構成は、図1に示す如く、ベース5上に設けられるものであって本装置の基幹部を成す支柱4と、当該支柱4に取付けられるものであって当該支柱4に沿って上下動をするプラテン1と、上記支柱4の上方部に設けられる上部フレーム2と、当該上部フレーム2のところに取付けられるものであって上記プラテン1を駆動するパワーユニット3と、上記プラテン1上に設けられるものであって後記ストリッパ11を駆動する役目を果すアクチュエータ33と、上記プラテン1のところから下方に垂直状に設けられるものであって、その先端部にポット引上げ手段16の設けられるサポートチューブ13と、当該サポートチューブ13の先端部に設けられるポット引上げ手段16のところに引上げられたポット9を、当該ポット引上げ手段16のところから引き剥がす役目を果すストリッパ11と、当該ストリッパ11を駆動するものであって上記サポートチューブ13内に設けられるシャフト部(ストリッパシャフト)111と、上記アクチュエータ33にて駆動されるものであって上記シャフト部111及びストリッパ11を上下方向に駆動する作動プレート31と、からなることを基本とするものである。
【0016】
このような基本構成からなるものにおいて、上記ベース5上であって、上記ポット引上げ手段16及びストリッパ11の、その作動線上のところには、図1に示す如く、複数のポット9の収納(格納)されるポットマガジン7が設置されるようになっているものである。・・・
【0017】
このような基本構成からなるものにおいて、上記プラテン1のところに取り付けられるシャフト部111及びサポートチューブ13等は、図3に示すような構成からなるものである。・・・そして、このようなサポートチューブ13は、プラテン1の平面内に、ごばん目状に設けられた取付穴のところに適宜数設置されるようになっているものである。また、このようなサポートチューブ13の下端部にはポット引上げ手段16が設けられるようになっている。
【0018】
このポット引上げ手段16のうちの一例として、図3または図4に示すようなブラッシ式のものが挙げられる。このものは、上記サポートチューブ13の外側のところに、当該サポートチューブ13に対して摺動運動可能なように設けられるブラッシベース155と、当該ブラッシベース155を基礎に、このブラッシベース155のところに全体の外観形態が円錐台を形成するように取付けられるもであって細線からなるブラッシ15と、からなるものである。そして、このようなブラッシ15を形成する細線は、図3及び図4に示す如く、上記円錐台の軸線に対して直角な面を基準に、当該直角な面に対して上向きの立体角を有する面内において、放射状に、適宜数設けられるようになっているものである。従って、本ブラッシ15がポット9内に挿入されるときには、比較的円滑に、その操作が行なわれる一方、図3及び図4に示す如く、本ブラッシ15のところにポット9が付着した状態においては、容易には上記ポット9が本ブラッシ15のところから脱落したりしないようになっているものである。なお、このような構成からなるブラッシ15、特に、ブラッシベース155は、図3及び図4に示す如く、スプリング17によって、所定の力にて下方に押し付けられるようになっているのである。
【0019】
このようなブラッシ式のものの外に、本ポット引上げ手段16としては、図9及び図10に示すようなゴム状弾性体あるいはエラストマー状弾性体を主に形成されるものが挙げられる。このものは、ゴムあるいはエラストマー等からなるシート材を基礎に、当該シート材を、図10に示す如く、放射状に、かつ、等間隔状に複数本の腕部161を有するように成形加工する。なお、この場合における放射状腕部161の本数は、特に限定されるものでは無いが、現状におけるポット9の開口形状及び当該ポット9の設置されるトレイ99の升目形状が四角形となっていることより、当該四角形の対角線上に各腕部161が配置されるよう4本からなるものが最も好ましい。そして、このような腕部161の、その先端部のところにはバネ鋼板等からなるものであって所定の係合機能を有する係合爪169が設けられるようになっている。この係合爪169の上記腕部161先端部へ取付けは、ステッチまたはステープル等のファスナによって、あるいはばね鋼板等からなる係合爪169の一部を上記腕部161のところにクリンチさせることによって行なわれる。このような構成からなる腕部161等を有するゴム状あるいはエラストマー状の弾性部材のところには、図9及び図10に示す如く、その中心部に設けられた取付穴162を中心にして、同軸上に、上下にワッシャ165が取付けられるようになっている。これによってポット引上げ手段16が形成されることとなる。・・・
【0020】
このような構成からなるポット引上げ手段16の取付けられるサポートチューブ13内には、図3、図4、図9に示す如く、ストリッパ11を形成するシャフト部111が設置されるようになっているものである。そして、このシャフト部111の上方部には、図1または図2に示す如く、当該シャフト部111及び上記ストリッパ11を、上記アクチュエータ33からの駆動力により上下方向に作動させる作動プレート31が設けられるようになっている。この作動プレート31シャフト部111との結合構造は、基本的には、図1に示す如く、シャフト部111の、その先端部がボルト・ナット等からなる締結手段39を介して作動プレート31に結合されるようになっているものである。・・・
【0021】
なお、このような構成からなる作動プレート31を駆動するアクチュエータ33は、図1及び図2に示す如く、プラテン1上にサブフレーム19を介して取付けられるか、場合によっては、図1の二点鎖線図示の如く、上記プラテン1上であて上記作動プレート31を直接駆動するように取付けられるようになっている。・・・
【0024】
次に、このような構成からなる本実施の形態のものについての、その作動態様等について説明する。まず、図1に示す如く、所定のポット9の収納(格納)されたポットマガジン7をベース5上であって上記ポット引上げ手段16及びストリッパ11の作動線上に設置する。このような状態において、パワーユニット3を作動させ、プラテン1とともにポット引上げ手段16及びストリッパ11を降下させる。そして、ポットマガジン7の各セル77内に設置されている各ポット9内へポット引上げ手段16及びストリッパ11を挿入させる。次に、このような状態において、上記パワーユニット3を作動させ、上記ポット引上げ手段16及びストリッパ11を引き上げる。これによって、ポットマガジン7からは、所定数のポット9が、同時に、上記ポット引上げ手段16に付着した状態で引き上げられる(取り出される)。このようにポット引上げ手段16のところにポット9の引き付けられた(引き上げられた)状態において、次に、フィーダ装置6を作動させ、各ポット引上げ手段16及びストリッパ11の下側に空のトレイ99を設置する。なお、このとき、上記引き上げられたポット9が、図8に示すような連続式のものである場合には、上記トレイ99の上面部のところにカッタ8を設置しておくようにする(図1参照)。そして、このような状態において、上記アクチュエータ33を作動させることによって、作動プレート31を降下させ、スリッパ11及びシャフト部111を降下させる。これによってストリッパ11が作動し、ポット引上げ手段16のところに付着しているポット9は、当該ポット引上げ手段16のところから引き剥がされて、落下し、トレイ99の所定の位置へと設置(装填)されることとなる。このようにしてポット9の装填作業が、滑に、かつ、効率良く行なわれることとなる。・・・
【0026】
このようなポット9の引き上げ(取り出し)作業において、上記ポット引上げ手段16のうち、鋼線からなる細線にて形成されるブラッシ式のものにおいては、その係合部が、適度の弾力性を有するとともに全体が円錐台を形成するように設置されており、更には、当該円錐台の軸線に対して直角な面を基準に、当該直角な面に対して若干上方を向くように形成された面内に放射状に設置されるようにっているので、本ブラッシ15がポット9内に進入するときは円滑に挿入される一方、ポット9を引き上げるようにブラッシ15が作動するときには、上記鋼線からなる細線が上記ポット9の側壁に楔状に係合することとなり、上記ポットは的確に捕捉されることとなる。また、ゴム状弾性体等からなる腕部161及び当該腕部161の先端部に係合爪169を有するものにおいても、上記腕部161が適度に撓んでポット9内に円滑に挿入されるとともに、引上げ作動時においては、先端部に設けられた係合爪169がポット9の側壁に楔状に係合して、ポットを確実に引上げることとなる。また、これらに加えて、本ゴム状弾性体等からなるものにおいては、上記腕部161が耐久性に優れたウレタンゴム等から成るものであり、繰返し使用後においても、当該腕部161等にヘタリ等が生ぜず、ポット引上げ作業が確実に行なわれることとなる。これらのことより、ポット9は、確実に、かつ、円滑に、ポットマガジン7の各セル77から引き上げられる(取り出される)こととなる。」
以上の記載によれば、甲第1号証には、
「ポット9の側壁に楔状に係合する複数のポット引上げ手段16と、アクチュエータ33が取り付けられるプラテン1と、ポット引上げ手段16のところに引付けられたポット9を、当該ポット引上げ手段16から引き剥がす役目を果す複数のストリッパ11と、該ストリッパ11をアクチュエータ33からの駆動力により上下方向に作動させる作動プレート31と、上記ポット引上げ手段16は、鋼線からなる細線にて形成される複数のブラッシ15、又は複数の弾性体からなる腕部161の先端部に係合爪169を備え、該ブラッシ15又は係合爪169がポット9の側壁に楔状に係合するようにしたポット装填装置。」(以下、「引用発明」という。)
が記載されている。
甲第2号証は、中部農材株式会社の「ハンドサーバー(CN-09024型)」のパンフレットである。
この甲第2号証に関して請求人は、甲第2号証の右上に「特許出願番号2000-370722」の記載があり、この番号は甲第3号証の国内優先権出願(特願2001-118873)の基礎出願の番号であることから、甲第2号証はその基礎出願日以降〜甲第3号証の出願日間に発行されたと主張している(審判請求書4頁下から6行〜5頁4行)。
しかし、このことから判明することは、その番号が判明した日(基礎出願日)より後に甲第2号証が作成されたということだけであって、甲第2号証の頒布の日がいつであるのかは不明である。
請求人は、万一、甲第3号証の出願日以降に発行されたならば、甲第2号証には甲第3号証の出願番号が記載されると述べているが、それは一つの可能性であるにすぎない。(この点に関して、このパンフレットの公知日を立証するために平成16年5月31日付で証人尋問の申請がなされたが、平成16年7月21日付で取り下げられている。)しかも、その作成より甲第2号証の頒布の日はさらに後であるから、甲第2号証が、本件優先日前に頒布されたものであることが立証されないことは明らかである。また、甲第4号証をみてもその公知性を立証できないことも明らかである。
したがって、甲第2号証を本件発明の出願前公知の資料として採用することはできない。

6.対比・判断
6-1.本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、
引用発明の「プラテン1」は「ポット引上げ手段16」を等間隔に保持する機能を有していること、引用発明の「作動プレート31」は「ストリッパ11」を前記「ポット引上げ手段16」と同じ間隔で整列支持すること、は明らかであるので、各本件発明1の「保持枠」、「支持枠」に相当すると認められる。
また、引用発明の「ポット9」、「ポット引上げ手段16」、「ストリッパ11」及び「ポット装填装置」は、 本件発明1の「園芸用ポット」、「把持部材」、「押出部材」及び「園芸用ポットの移し替え装置」に相当するものと認められ、引用発明の「プラテン1」及び「作動プレート31」は上下方向へ相対移動可能に組み付けられるものであるから、本件発明1における「組付手段」に相当するものを引用発明は備えていると認められる。
そうすると、本件発明1と引用発明とは、
「園芸用ポットの内面に圧入される複数の把持部材と、前記把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に接触するよう形成したことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。」
で一致し、
本件発明1が、手動で操作するために「保持枠を手で持つための第1ハンドル」と、「支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドル」を備え、「把持部材」を、「園芸用ポットの内面に面接触する下窄まりの略直方体形又は円錐台形の弾性柔軟材料で形成し、該略直方体形の4つの側面又は該円錐台形の周面に該側面又は周面の高さ方向に延びる複数の切除部を設けた」ものであるのに対し、引用発明は、上記ハンドルを持たず、アクチュエータの駆動により機械化されているものであり、「複数のポット引上げ手段16」が「鋼線からなる細線にて形成される複数のブラッシ15、又は複数の弾性体からなる腕部161の先端部に係合爪169を備え、該ブラシ、又は該係合爪169がポット9の側壁に楔状に係合する」ものである点、で相違する。
上記相違点を検討する。
本件特許明細書の段落【0002】〜【0004】の記載によれば、ポットPを段ボール箱Bから取り出してトレイTに並べるにあたり、手作業では能率が悪いため、従来、エア吸引式のパッドを用い、複数のポットPを一度に移し替える装置の問題点として、
(1)パッド毎にエア配管が必要であり、装置が複雑化し、高価になる。
(2)真空ポンプ等のエア吸引源を必要とし、設備費が高くつく。
(3)エア吸引源が設備されていない場所では使用できない。
(4)エアホースの長さに制限され、装置を遠くまで運搬できない。
(5)エアホースが邪魔になり、可搬性が悪い。
があり、これらの問題点を解決するために、本件発明1は手動による安価で可搬性に優れた機構を用いて、複数の園芸用ポットを一度に移し替えることができる装置であることが認められる。
また、上記相違点に関して、請求人は、下記のとおり主張している。
A.「第1ハンドル」「第2ハンドル」について
第1ハンドル及び第2ハンドルを設けた効果は、甲第1号証の自動化された「ポット装填装置」を、手動化すれば、当然に生じるものである。また、第1ハンドル及び第2ハンドルには特段の工夫もなされていないので、自動化された「ポット装填装置」を、単に手動化したに過ぎず、当業者であれば容易になし得る設計的事項である。
B.「把持部材」の構成について
把持部材の構成は、一実施態様を限定したに過ぎず、単なる設計的事項であり、該構成ゆえに生じる特段の効果もない。また、請求項1の把持部材は、本件特許の図7及び図10に図示されるが、該構成の把持部材は、甲第1号証の図2、図3、図4、図9及び図10に図示されるポット引上げ手段16から容易に推考できる。甲第1号証の図2に図示されるように、ポット引上げ手段16の外形も下窄まりになっている。
C.「把持部材」の効果について
本件発明1の効果は、甲第1号証のポット引上げ手段16も同様に奏する効果であり、特段のものではない。
上記点を踏まえて本件発明1の容易想到性を検討する。
一般的に、手作業でやることを機械化することは普通に行われていることである。しかし本件発明1は、機械化されたものの装置の可搬性が悪い等の問題点に着目し、自動化されているものをあえて手動化したものであり、手動化するために、「保持枠を手で持つための第1ハンドル」と、「支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドル」を備えたものであり、手動による安価で可搬性に優れた機構を用いて、複数のポットを一度に移し替えることができるという作用効果を奏するものである。そして、本件発明1の「把持部材」と引用発明の「ポット引上げ手段16」とは、「園芸用ポット」(「ポット9」)の内面に接触させて把持する点では一致するものの、それを構成する材料、形状・構造で異なるものである。特に、引用発明の「ポット引上げ手段16」は、「ブラシ15」も「係合爪169」も「ポット9」の側壁に楔状に係合(点接触)するものであり、本件発明1のように「把持部材」を「園芸用ポットの内面に面接触する下窄まりの略直方体形又は円錐台形の弾性柔軟材料で形成」することにより、把持部材がポットの内面に広い面積で接触し、均一な力でポットを確実に把持できるとする作用効果を奏するものではない。しかも、本件発明1は上記構成に加えて、「該略直方体形の4つの側面又は該円錐台形の周面に該側面又は周面の高さ方向に延びる複数の切除部を設け」る構成を採用することにより、把持部材の可撓性が増し、挿入時にポットを過度に変形させたり把持力が過剰になったりするおそれがなく、また、ポットのサイズの多少の変化に対応できるとする作用効果も奏するものである。そうすると、このような上記相違点の把持部材に係る構成を引用発明から導き出すことはできないというべきであるから、引用発明の単なる設計事項であるとすることはできない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるということはできず、また、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたということもできない。なお、先に述べたように甲第2号証を本件発明の出願前公知の資料として採用することはできない。

6-2.本件発明2について
本件発明2と引用発明とを対比すると、
引用発明の「プラテン1」は「ポット引上げ手段16」を等間隔に保持する機能を有していること、引用発明の「作動プレート31」は「ストリッパ11」を前記「ポット引上げ手段16」と同じ間隔で整列支持すること、は明らかであるので、各本件発明2の「保持枠」、「支持枠」に相当すると認められる。
また、引用発明の「ポット9」、「ポット引上げ手段16」、「ストリッパ11」及び「ポット装填装置」は、 本件発明2の「園芸用ポット」、「把持部材」、「押出部材」及び「園芸用ポットの移し替え装置」に相当するものと認められ、引用発明の「プラテン1」及び「作動プレート31」は上下方向へ相対移動可能に組み付けられるものであるから、本件発明2における「組付手段」に相当するものを引用発明は備えていると認められる。
そうすると、本件発明2と引用発明とは、
「園芸用ポットの内面に圧入される複数の把持部材と、前記把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に接触するよう形成したことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。」
で一致し、
本件発明2が、手動で操作するために「保持枠を手で持つための第1ハンドル」と、「支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドル」を備え、「把持部材」を、「園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触する(ア)該内面の高さ方向に延び、上端ほど外側に開いて上端が内側へ折り曲げられた複数本の弾性把持片、又は、(イ)該内面の高さ方向に延び、弓状に曲がる複数本の弾性把持片」で構成したものであるのに対し、引用発明は上記ハンドルを持たず、アクチュエータの駆動により機械化されているものであり、「複数のポット引上げ手段16」が「鋼線からなる細線にて形成される複数のブラッシ15、又は複数の弾性体からなる腕部161の先端部に係合爪169を備え、該係合爪169がポット9の側壁に楔状に係合する」ものである点、で相違する。
上記相違点を検討する。
本件特許明細書の段落【0002】〜【0004】の記載によれば、ポットPを段ボール箱Bから取り出してトレイTに並べるにあたり、手作業では能率が悪いため、従来、エア吸引式のパッドを用い、複数のポットPを一度に移し替える装置の問題点として、
(1)パッド毎にエア配管が必要であり、装置が複雑化し、高価になる。
(2)真空ポンプ等のエア吸引源を必要とし、設備費が高くつく。
(3)エア吸引源が設備されていない場所では使用できない。
(4)エアホースの長さに制限され、装置を遠くまで運搬できない。
(5)エアホースが邪魔になり、可搬性が悪い。
があり、これらの問題点を解決するために、本件発明2は手動による安価で可搬性に優れた機構を用いて、複数の園芸用ポットを一度に移し替えることができる装置であることが認められる。
また、上記相違点に関して、請求人は、下記のとおり主張している。
A.「第1ハンドル」「第2ハンドル」について
第1ハンドル及び第2ハンドルを設けた効果は、甲第1号証の自動化された「ポット装填装置」を、手動化すれば、当然に生じるものである。また、第1ハンドル及び第2ハンドルには特段の工夫もなされていないので、自動化された「ポット装填装置」を、単に手動化したに過ぎず、当業者であれば容易になし得る設計的事項である。
B.「把持部材」の構成について
本件発明2の構成要件(ア)の把持片について、「上端ほど外側に開いて上端が内側へ折り曲げられた把持片」とは一体如何様に構成されるのか、不明確である。
本件発明2の構成要件(イ)の把持片について、「帯状の把持片24b」が「ポットPの内面に高さ方向に線接触する」とは如何なることか、不明確である。
本件特許に開示される把持片23,24bは、被請求人が主張する効果を奏するものではない。
把持片23は、ポットPは高さ方向の断面でみて外側へ「く」字状に変形するので、また、弓状に曲げられた把持片24bは、先端がポットの内面に横方向に線接触し外側へ「く」字状に変形するので、請求項2の把持部材(把持片)は、被請求人が主張する効果を奏するものではない。
本件発明2の容易想到性を検討する前に、上記請求人の主張B.把持部材の本件発明2の構成要件(ア)、(イ)の把持片について検討する。
上記構成要件(ア)、(イ)の把持片に関して、(ア)は段落【0021】及び図11、(イ)は段落【0024】及び図12〜14を根拠にしていることは明らかであり、その解釈において、上記請求人の主張するような不明確さは認められない。また、把持片が横方向に線接触する点は、上記3.(3)を参照されたい。
以上のとおり請求人の主張は本件発明2の構成を正解しないものである。
次に、本件発明2の容易想到性について上記点を踏まえて検討する。
一般的に、手作業でやることを機械化することは普通に行われていることである。しかし本件発明2は、機械化されたものの装置の可搬性が悪い等の問題点に着目し、自動化されているものをあえて手動化したものであり、手動化するために、「保持枠を手で持つための第1ハンドル」と、「支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドル」を備えたものであり、手動による安価で可搬性に優れた機構を用いて、複数のポットを一度に移し替えることができるという作用効果を奏するものである。そして、本件発明2の「把持部材」と引用発明の「ポット引上げ手段16」とは、「園芸用ポット」(「ポット9」)の内面に接触させて把持する点では一致するものの、それを構成する形状・構造は異なるものである。特に、引用発明の「ポット引上げ手段16」は、「ブラシ15」も「係合爪169」も「ポット9」の側壁に楔状に係合(点接触)するものであり、本件発明2のように「把持部材」を園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触するようにし、(ア)該内面の高さ方向に延び、上端ほど外側に開いて上端が内側へ折り曲げられた複数本の弾性把持片、又は、(イ)該内面の高さ方向に延び、弓状に曲がる複数本の弾性把持片で構成することにより、把持部材が園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触するとともに、把持片の上端が園芸用ポットに引っ掛からないという作用効果を奏するものではない。そうすると、引用発明からこのような上記相違点の把持部材に係る構成を容易に導き出すことができるということはできない。
したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であるということはできず、また、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたということもできない。なお、先に述べたように、甲第2号証を本件発明の出願前公知の資料として採用することはできない。

6-3.本件発明3について
本件発明3は、本件発明2を引用するものであるので、上記6-2.で検討した本件発明2と同じ理由により、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明であるということはできず、また、甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明することができたということもできない。なお、先に述べたように甲第2号証を本件発明の出願日前公知の資料として採用することはできない。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、請求人の主張及び証拠方法によっては、無効とすることはできない。審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
園芸用ポット移し替え装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】園芸用ポットの内面に圧入される弾性材料からなる複数の把持部材と、前記把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記保持枠を手で持つための第1ハンドルと、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドルと、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に面接触する下窄まりの略直方体形又は円錐台形の弾性柔軟材料で形成し、該略直方体形の4つの側面又は該円錐台形の周面に該側面又は周面の高さ方向に延びる複数の切除部を設けたことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。
【請求項2】園芸用ポットの内面に圧入される弾性材料からなる複数の把持部材と、前記把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記保持枠を手で持つための第1ハンドルと、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドルと、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触する
(ア)該内面の高さ方向に延び、上端ほど外側に開いて上端が内側へ折り曲げられた複数本の弾性把持片、又は、
(イ)該内面の高さ方向に延び、弓状に曲がる複数本の弾性把持片
で構成したことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。
【請求項3】前記組付手段が、前記保持枠に固定されたパイプと、前記支持枠に固定されたロッドとを含み、該パイプの下端部に前記把持部材を固着し、該ロッドを該パイプに遊挿させるとともに前記把持部材内を下方へ遊貫通させ、該ロッドの下端に前記押出部材を取り付け、該パイプの下端部に前記(イ)の弓状に曲がる把持片の弧の膨らみ具合を調節するための雄ねじとナットとを設けた請求項2記載の園芸用ポットの移し替え装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の園芸用ポットを一度に移し替える装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
園芸用草花の栽培や流通に携わる業者では、移植又は出荷等に際して、軟質樹脂製の薄肉の園芸用ポット(空の状態)をトレイに複数個並べる作業が行われる。図15に示すように、トレイTには、全体がカゴ形のもの、或いは、ポット毎のカゴを備えたものが多用され、例えば、一列6個の4列で合計24個のポットPが並べられる。ポットPは、通常、梱包用の段ボール箱Bに、複数個積み重ねられ、トレイTと同じ配列で収容されている。これらのポットPを段ボール箱Bから取り出してトレイTに並べるにあたり、手作業では能率が悪いため、従来、エア吸引式のパッドを用い、複数のポットPを一度に移し替える装置が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来装置によると、次のような問題点があった。
(1)パッド毎にエア配管が必要であり、装置が複雑化し、高価になる。
(2)真空ポンプ等のエア吸引源を必要とし、設備費が高くつく。
(3)エア吸引源が設備されていない場所では使用できない。
(4)エアホースの長さに制限され、装置を遠くまで運搬できない。
(5)エアホースが邪魔になり、可搬性が悪い。
【0004】
本発明の目的は、上記課題を解決し、手動による安価で可搬性に優れた機構を用いて、複数の園芸用ポットを一度に移し替えることができる装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者は、園芸用ポットの内面に圧入される弾性材料からなる複数の把持部材と、把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、把持部材より下方へ変位しポットを押し出して把持部材から解放する複数の押出部材と、押出部材を把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備えた移し替え装置を検討した。
【0006】
ここで、組付手段は、特定の手段に限定されないが、把持部材及び保持部材の取付機能を兼備するのが、部品点数を削減できる点で好ましい。例えば、組付手段が、保持枠に固定されたパイプと、支持枠に固定されたロッドとを含み、パイプの下端部に把持部材を固着し、ロッドをパイプに遊挿させるとともに把持部材内を下方へ遊貫通させ、ロッドの下端に押出部材を取り付ける、という構成を採用できる。
【0007】
保持枠及び支持枠の配置は、特定の配置に限定されないが、両方の枠を簡単な操作で相対移動できる点で、保持枠の上側に支持枠を配置し、保持枠及び支持枠を離間方向へ付勢する付勢部材を設けるのが好ましい。また、保持枠及び支持枠を手で持って運搬したり相対移動させたりすることも可能であるが、操作性をよくするために、保持枠に第1ハンドルを設け、支持枠に第2ハンドルを第1ハンドルの上側に位置するように設けるとよい。第1ハンドル及び第2ハンドルを設ける位置は、保持枠及び支持枠の各中央部でもよいし、各中央部から両端部方向の途中部でもよい。この場合、装置を水平姿勢に保って、両方のハンドルをバランスよく操作できるように、第1ハンドル及び第2ハンドルを互いに略直角となる向きに設けてもよく、第1ハンドル及び第2ハンドルを手で握って接近させることができるように、互いに略平行となる向きに設けてもよい。第1ハンドル及び第2ハンドルを互いに略平行となる向きに設ける際、第1ハンドル及び第2ハンドルをそれぞれ2つ設ける態様、及び、第1ハンドル同士及び第2ハンドル同士を互いに第1ハンドル連結部及び第2ハンドル連結部で連結した態様を例示できる。
【0008】
把持部材は、特定の弾性材料及び構造に限定されず、例えばポットの内面に面接触する弾性柔軟材料(例えば、軟質樹脂、軟質発泡樹脂、軟質ゴム、軟質発泡ゴム、綿塊状の繊維成形体等)で形成したり、ポットの内面に線接触する複数本の弾性把持片で構成したりすることができる。特に、材料費、耐久性等の点から、把持部材を軟質発泡樹脂で形成するのが好ましい。把持部材の大きさや形状は、ポットのそれに合わせて適宜に決定されるが、軟質樹脂製のポットを使用する場合は、把持部材が挿入時にポットを過度に変形させたり把持力が過剰になったりしないように、例えば軟質発泡樹脂よりなる把持部材に可撓性を増す切除部を設けるとよい。線接触する複数本の弾性把持片の形状は、特に限定されないが、線状、帯状等を例示できる。また、弾性把持片の素材は、特に限定されないが、樹脂、金属(鋼線等)を例示できる。
以上の検討の下に、本発明の移し替え装置は、次の手段(1)(2)をとったものである。
(1)園芸用ポットの内面に圧入される弾性材料からなる複数の把持部材と、前記把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記保持枠を手で持つための第1ハンドルと、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドルと、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に面接触する下窄まりの略直方体形又は円錐台形の弾性柔軟材料で形成し、該略直方体形の4つの側面又は該円錐台形の周面に該側面又は周面の高さ方向に延びる複数の切除部を設けたことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。
(2)園芸用ポットの内面に圧入される弾性材料からなる複数の把持部材と、前記把持部材を等間隔位置に整列保持する保持枠と、前記保持枠を手で持つための第1ハンドルと、前記把持部材より下方へ変位し前記ポットを押し出して前記把持部材から解放する複数の押出部材と、前記押出部材を前記把持部材と同じ間隔で整列支持する支持枠と、前記支持枠を手で持つ又は押し下げるための第2ハンドルと、前記保持枠及び支持枠を上下方向へ相対移動可能に組み付ける組付手段とを備え、前記把持部材を園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触する
(ア)該内面の高さ方向に延び、上端ほど外側に開いて上端が内側へ折り曲げられた複数本の弾性把持片、又は、
(イ)該内面の高さ方向に延び、弓状に曲がる複数本の弾性把持片
で構成したことを特徴とする園芸用ポットの移し替え装置。
上記手段(2)において、前記組付手段が、前記保持枠に固定されたパイプと、前記支持枠に固定されたロッドとを含み、該パイプの下端部に前記把持部材を固着し、該ロッドを該パイプに遊挿させるとともに前記把持部材内を下方へ遊貫通させ、該ロッドの下端に前記押出部材を取り付け、該パイプの下端部に前記(イ)の弓状に曲がる把持片の弧の膨らみ具合を調節するための雄ねじとナットとを設けることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図7に示すように、このポット移し替え装置は、24個の空の園芸用ポットPを段ボール箱BからトレイTに移し替える装置であって、フレーム1の下端にポットPの内面に圧入される24個(1列6個の4列)の把持部材2を備えている。把持部材2は、ポットPの形状に合わせ、軟質発泡樹脂(例えば発泡ウレタン樹脂)材料により下窄まりの略直方体形に形成され、4つの側面に可撓性を増すための切除部3が設けられている。なお、ポットPは、軟質樹脂材料で平面が円形で薄肉のカップ状に成形されたものであるが、段ボール箱B内に密詰めされているため(図15参照)、平面角丸四角形に癖付き変形している。
【0010】
ポット移し替え装置のフレーム1は、把持部材2を保持する保持枠4と、保持枠4の上側に配置された支持枠5とから構成されている。保持枠4はアルミ製の型材を縦横に接続して長方形に形成されている。保持枠4には、24本(縦6本×横4本)のアルミ製のパイプ6が縦横に等間隔をおいて配列され、上端にて例えば溶接又はネジ止めにより固定されている。各パイプ6の下端部には、把持部材2と、その上面に接合する樹脂製の形状保持板7とが、接着剤により固着され、この構造により、24個の把持部材2がパイプ6を介し保持枠4の等間隔位置に整列保持されている。
【0011】
支持枠5はアルミ製の型材を縦横に接続して保持枠4と略同じ大きさの長方形に形成されている。支持枠5には、パイプ6と同数のアルミ製のロッド8が縦横に等間隔をおいて配列され、上端にて例えば溶接又はネジ止めにより固定されている。各ロッド8はパイプ6に遊挿されるとともに、把持部材2内を下方へ遊貫通されている。本実施形態ではパイプ6が把持部材2内を貫通しているので、ロッド8はパイプ6を貫通することが同時に把持部材2内を貫通することになるが、パイプ6の長さを例えば形状保持板7までとして把持部材2内を貫通しないようにし、ロッド8のみが把持部材2内(貫通穴)を遊貫通するようにしてもよい。
【0012】
ロッド8の下端には、把持部材2より下方へ変位し、ポットPを押し出して把持部材2から解放するパッド状の押出部材9がネジ10(図5参照)により取り付けられている。押出部材9の材料は特に限定されないが、例えばゴム又は樹脂にて形成される。この構造により、24個の押出部材9がロッド8を介し把持部材2と同じ間隔で支持枠5に整列支持されるとともに、保持枠4及び支持枠5がパイプ6及びロッド8により上下方向(ポットPの中心線方向)へ相対移動可能に組み付けられている。
【0013】
保持枠4の中央部には、この枠4を持つための例えば木製の第1ハンドル12が設けられ、支持枠5の中央部には、この枠5を持つ又は押し下げるための例えばアルミ製の第2ハンドル13が設けられている。第2ハンドル13はアーチ形に形成され、第1ハンドル12に対し直角の向きでその上側に位置するように支持枠5に固定されている。第1ハンドル12はアルミ製の2本の支柱14を介し保持枠4の横桟15に固定され、支柱14は支持枠5の2本の横桟16に設けた孔17(図3参照)に挿通されている。支柱14の上端部と支持枠5の横桟16との間には、保持枠4及び支持枠5を離間方向へ付勢する付勢部材としてのスプリング11が張設されている。保持枠4の横桟15には、ポット押出時に支持枠5の下面に当接する例えばゴム製の緩衝材18が固着されている。
【0014】
次に、上記のように構成されたポット移し替え装置の使用方法について説明する。ポットPを段ボール箱Bから取り出す場合には、第1ハンドル12又は第2ハンドル13を掴み、図5に示すように、保持枠4及び支持枠5が互いに離間して、パイプ6の下端に押出部材9が当接した状態で、装置全体を段ボール箱Bに入れ、押出部材9及び把持部材2をポットPに挿入する。すると、把持部材2が圧入されて収縮変形し、ポットPの内面に面接触し、弾性復元力によりポットPを確実に把持する。従って、この状態で、第1ハンドル12又は第2ハンドル13を持って装置全体を上げれば、24個のポットPを段ボール箱Bから一度に取り出して、トレイまで運搬することができる。
【0015】
ポットPをトレイTに移し替えるときには、図6に示すように、移し替え装置をトレイTの上方に配置し、片方の手で第1ハンドル12を保持し、反対の手で第2ハンドル13を押し下げ、スプリング11を伸ばし、支持枠5を保持枠4の上に重ね、押出部材9を把持部材2より下方へ変位させ、押出部材9でポットPを把持部材2から押し出して解放するとともにトレイTに確実に押し込んで装填する。このとき、緩衝材18が支持枠5及び保持枠4の金属同士の衝接を防ぎ、衝撃及び騒音を緩和する。その後、第2ハンドル13の押し下げをやめると、支持枠5がスプリング11のばね力で自動的に上昇し、押出部材9がポットPから上方へ離れる。従って、第2ハンドル13を押し下げるだけの簡単な操作で、24個のポットPをトレイTに一度に並べ置くことができる。
【0016】
この実施形態のポット移し替え装置によれば、次のような作用効果が得られる。
(1)手動操作により複数のポットPを段ボール箱BからトレイTへ一度に移し替えることができる。
(2)ポンプやモータ等を必要とせず、装置全体を安価に製作することができる。
(3)エア吸引源や電源が設備されていない場所でも使用することができる。
(4)ホースやコードの長さに制限されず、装置を遠くまで運搬することができる。
(5)ホース類が邪魔にならず、可搬性がよい。
【0017】
(6)パイプ6及びロッド8が保持枠4及び支持枠5の組付部材として、また把持部材2及び押出部材9の取付部材として機能するので、部品点数を減らし、装置全体を簡単に構成することができる。
(7)保持枠4の上側に支持枠5を配置し、第2ハンドル13を第1ハンドル12より上側に設けたので、両手操作によりポットPを容易に着脱することができる。
(8)第1ハンドル12及び第2ハンドル13を直角向きに設けたので、装置を水平姿勢に保って、両方のハンドル12,13をバランスよく操作することができる。
【0018】
(9)装置のほぼ全体がアルミ材で構成されているため、軽量で持ち運びやすい。
(10)把持部材2を軟質発泡樹脂材料で形成したので、ポットPの内面に広い面積で接触し、均一な力でポットPを確実に把持でき、ポットPを傷付けたり変形させたりするおそれがなく、材料費が安く、耐久性に優れる。
(11)把持部材2に切除部3を設けたので、把持部材2の特に角部の可撓性が増し、挿入時にポットPを過度に変形させたり把持力が過剰になったりするおそれがなく、また、ポットPのサイズの多少の変化に対応できる。
(12)把持部材2を下窄まりの略直方体形に形成したので、前記ポットPの角丸四角形への癖付き変形に対応できる。
【0019】
図8及び図9は本発明の別の実施形態を示すものである。このポット移し替え装置においては、前記実施形態と逆に、保持枠4の下側に支持枠5が配置されている。保持枠4の中心部にはアーチ状の第1ハンドル12が設けられ、支持枠5の中心部に木製の第2ハンドル13が第1ハンドル12の下側に位置するように設けられている。保持枠4にはパイプ6が固定され、その下端部に軟質発泡樹脂製の把持部材2が固着されている。支持枠5にはピン19を介してロッド8が固定され、その下端に押出部材9が取り付けられている。ロッド8はパイプ6に挿入され、パイプ6にはピン19が嵌合する上下に長いスリット20が形成されている。
【0020】
ポットPを段ボール箱Bから取り出す場合には、図8に示すように、保持枠4を支持枠5の上に載せた状態で、押出部材9及び把持部材2をポットPの内側に挿入し、把持部材2でポットPを把持し、下側の第2ハンドル13を握り、装置全体を持ち上げる。ポットPをトレイTに移し替えるときには、図9に示すように、第1ハンドル12を握り、保持枠4をピン19がスリット20の下端に当接する位置まで持ち上げ、保持枠4と支持枠5との相対移動により、押出部材9でポットPを押し出して把持部材2から解放する。従って、この装置によっても、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)図10に示すように、ポットPが癖付き変形していない平面円形のものである場合(硬質樹脂製のものを含む)、把持部材2を軟質発泡樹脂材料で下窄まりの円錐台形に形成し、その周面に複数の切除部3を設けること。
(2)図11に示すように、把持部材2を、パイプ6の下端に固着される筒形のホルダ22と、ホルダ22に放射状に突設された例えば4本の線状の把持片23とで構成すること。各把持片23は樹脂又は鋼線等の弾性材料で形成され、上端が外側に開いた形態で、下端にてホルダ22に固定されている。把持片23の上端は、ポットPに引っ掛からないように、内側へ折り曲げられている。また、把持片23をループ状にし、上下端にてホルダ22に固定してもよい。
【0022】
(3)図12に示すように、把持部材2を、略正方形で略中央部にパイプ6を貫通する把持部材上面24aと、把持部材上面24aの略角に放射状に突出した該略正方形の一辺の略2倍の長さがある帯状の把持片24bと、把持片24bをパイプ6側に向けて弓状に曲げた把持片24bの端部を引っ掛けてパイプ6に圧接できるように、パイプ6に環装するリング25と、把持片24bの端部からの付勢力を支持するワッシャー26と、パイプ6の下端部に設けられている雄ねじ部30に螺合されるナット27とで構成すること。
把持部材上面24aと把持片24bとは弾性の高い金属材で形成され、把持部材上面24aが保持枠4の下端面に接し、各把持片24bがポットPの内面に線接触し、各把持片24bの下端にてパイプ6に圧接されている。把持片24bのポットPに線接触する部位には、ポットPの把持の際の滑り止めと安全のため、軟質樹脂製の滑り防止材28が設けられている。また、中央にパイプ6が貫通し、把持部材上面24aと把持片24bとで囲まれた空間には、安全のためと把持片24bの形状を安定させるために保護部材29として角取りされた略立方体形状のスポンジが内設されている。実施形態と同様に、ロッド8はパイプ6を貫通し、ロッド8の下端には、押出部材9が取り付けられている。
この変更例においては、図13(a)(b)に示すように、パイプ6の下端部に設けられている雄ねじ30に螺合されるナット27の位置を図13(a)から図13(b)の範囲で上下に移動することで、弓状に曲げた把持片24bの弧の膨らみ具合を調節することができるので、各種の大きさのポットPに対応することができる。
【0023】
(4)トレイに対するポットの入れ数に応じ、把持部材の個数を適宜に変更すること。把持部材の個数及び配列は特に限定されず、一列5個の4列で合計20個、一列6個の6列で合計36個、一列8個の6列で合計48個等々を例示できる。
【0024】
(5)図14に示すように、保持枠4の中央部から両端部方向の各途中部の略対称の位置に、この枠4を持つための例えばアルミニウム製の筒でそれぞれ1つの第1ハンドル12を設け、支持枠5の中央部から両端部方向の各途中部の略対称の位置に、この枠5を持つ又は押し下げるための例えばアルミニウム製の筒でそれぞれ1つの第2ハンドル13を設けること。
第1ハンドル12及び第2ハンドル13はそれぞれアーチ形に形成され、2つの第1ハンドル12同士及び2つの第2ハンドル13同士は、互いに略中央部同士を第1ハンドル連結部32及び第2ハンドル連結部33で連結されている。連結された第1ハンドル12の上側に連結された第2ハンドル13が位置するように設けられ、一方の第1ハンドル12及び該第1ハンドル12と略同一位置の第2ハンドル13は、互いに略平行となる向きで、手で握ることができる間隔に設けられている。下側となる第1ハンドル12の直線部分は、手で握る際に手を保護するためにと握りやすくするために、ウレタンスポンジ製の被覆部材34で略全周を被覆されている。
第1ハンドル12は保持枠4の取付部35に固定され、支持枠5の2つの取付部36に設けた孔37に挿通されている。第1ハンドル12の支持枠5の取付部36の下面側と保持枠4の取付部35の上面側との間には、筒状の第1ハンドル12を貫通する態様で、支持枠5及び保持枠4を離間方向へ付勢する付勢部材としてのスプリング38が縮退して設置されている。第2ハンドル13は支持枠5の取付部36に固定されている。
保持枠4には、24本(縦6本×横4本)のアルミ製のパイプ6が縦横に等間隔をおいて配列され、上端にて例えば溶接又はネジ止めにより固定されている。各パイプ6の下端部には、例えば、変更例(3)の把持部材2の場合、保持枠4の下端面に接するように、24個の把持部材2がパイプ6を介し保持枠4の等間隔位置に整列保持されている。
(6)ポットをトレイから別のトレイに移し替える作業に、本発明の装置を用いること。
【0025】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明に係る園芸用ポットの移し替え装置によれば、手動による安価で可搬性に優れた機構を用いて、複数のポットを一度に移し替えることができるという効果を奏する。
上記効果に加え、請求項1に係る発明によれば、把持部材がポットの内面に広い面積で接触し、均一な力でポットを確実に把持でき、ポットを傷付けたり変形させたりするおそれがなく、材料費が安く、耐久性に優れる。また、把持部材の可撓性が増し、挿入時にポットを過度に変形させたり把持力が過剰になったりするおそれがなく、また、ポットのサイズの多少の変化に対応できる。
上記効果に加え、請求項2に係る発明によれば、把持部材が園芸用ポットの内面に高さ方向に線接触するとともに、把持片の上端が園芸用ポットに引っ掛からない。さらに、請求項3に係る発明によれば、各種の大きさのポットに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るポット移し替え装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】
同装置の正面図である。
【図3】
同装置の平面図である。
【図4】
同装置の側面図である。
【図5】
同装置のポット把持形態を示す断面図である。
【図6】
同装置のポット解放形態を示す断面図である。
【図7】
把持部材及びポットの形状を示す斜視図である。
【図8】
本発明に係るポット移し替え装置の別の実施形態を示す断面図である。
【図9】
同装置のポット解放形態を示す断面図である。
【図10】
把持部材及びポットの変更例を示す斜視図である。
【図11】
把持部材の変更例を示す斜視図である。
【図12】
把持部材の変更例を示す斜視図である。
【図13】
同変更例の調節時の態様(a)(b)を示す部分断面の正面図である。
【図14】
第一、第二ハンドルの変更例を示す斜視図である。
【図15】
ポット移し替え作業を説明する斜視図である。
【符号の説明】
1 フレーム
2 把持部材
3 切除部
4 保持枠
5 支持枠
6 パイプ
8 ロッド
9 押出部材
12 第1ハンドル
13 第2ハンドル
22 ホルダ
23、24b 把持片
B 段ボール箱
P ポット
T トレイ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-11-24 
結審通知日 2004-11-26 
審決日 2004-12-07 
出願番号 特願2002-74186(P2002-74186)
審決分類 P 1 112・ 121- YA (A01G)
P 1 112・ 113- YA (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 鉄 豊郎
渡戸 正義
登録日 2003-01-10 
登録番号 特許第3387067号(P3387067)
発明の名称 園芸用ポット移し替え装置  
代理人 松原 等  
代理人 橋本 努  
代理人 松原 等  
代理人 伊藤 愛  
代理人 松原 等  
代理人 兼子 直久  

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