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審決分類 審判 全部無効 特29条の2 訂正を認める。無効としない G09F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない G09F
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない G09F
管理番号 1121869
審判番号 無効2003-35181  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1985-08-06 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-05-07 
確定日 2005-04-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第1865580号「表示体ユニツト接続装置」の特許無効審判事件についてされた平成16年 3月23日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成16年(行ケ)第0191号平成16年10月20日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許1865580号についての手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
昭和59年1月13日 特許出願(特願昭59-4960号)
平成3年4月26日 出願公告
平成6年8月26日 特許権の設定登録
平成15年5月8日 特許無効審判請求
平成16年4月1日 特許無効審判審決(無効)
平成16年5月6日 高裁出訴(平成16年(行ケ)第191号)
平成16年6月7日 訂正審判請求(訂正2004-39124号)
平成16年7月12日 訂正審判審決(訂正認容)
平成16年10月20日 高裁判決(無効審決取消)
平成16年11月18日 確定した訂正内容に対する請求人への審尋

2.本件訂正発明
本件特許1865580号の請求項1に係る発明は、上記手続の経緯のとおり、訂正が認容されたので、訂正後の請求項1に係る発明は、訂正後の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
複数の接続端子を有する多ドットの表示体と、
表面に前記多ドットの表示体を駆動するための、同一構成を有するLSIチップがボンディングされ、且つ表面に前記接続端子との接続のためのチップ端子と他のLSIチップとの接続のための共通端子とを含む前記LSIチップの配線が形成された複数のフィルム基板と、
該各フィルム基板上の共通端子と接続するための配線が形成され且つ前記表示体の背面位置で前記表示体の端面より内側に配置された回路基板とから成り、
前記表示体と前記複数のフィルム基板とを電気的に接続すると共に、前記LSIチップが前記表示体の背面位置で前記表示体の端面と前記回路基板との間に位置し、前記回路基板が前記フィルム基板面の前記表示体側に位置するように前記複数のフィルム基板を前記回路基板に重合させ且つその重合した領域内で前記共通端子と前記回路基板の配線とを接続して、前記複数のフィルム基板と前記回路基板とを電気的に接続することで前記LSIチップの前記共通端子の相互間を共通して接続し、電源信号とデータ信号を送ると共に、同一構成を有する両隣の前記LSIチップを相互に接続して、前記多ドットの表示体を複数のLSIチップにより駆動することを特徴とする表示体ユニット接続装置。(以下、「訂正発明」という。)

3.請求人の主張する無効理由の概要
(1)出願公告決定謄本送達後である平成4年2月12日付けおよび平成5年7月9日付けでされた各手続補正は、特許請求の範囲を実質上変更するものであって、平成6年改正前特許法64条および17条の3に違反し、同法42条によりそれらの補正がされなかった特許出願について特許がされたものとみなされる。その結果、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、少なくとも甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

(2)本件特許発明が、その補正がなされなかった特許出願について特許がされたものとみなされないとしても、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、少なくとも甲第1号証に記載された発明およひ周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は平成5年改正前特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

(3)本件特許発明は、その補正がなされなかった特許出願について特許がされたものとみなされる結果、甲第10号証に係る出願の出願当初の明細書等に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は平成5年改正前特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

(4)本件特許発明は、その補正がなされなかった特許出願について特許がされたものとみなされないとしても、甲第10号証に係る出願の出願当初の明細書等に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は平成5年改正前特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

なお、上記手続の経緯にあるように、請求人に対し、本件訂正発明に対し、審尋を行ったが、請求人からは回答がなかった。

ここで、請求人は、「平成6年改正前特許法64条および17条の3」違反を前提とした主張をしているが、本件訂正発明は、上記2.のとおり確定しているので、以降は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項、及び特許法第29条の2の規定について検討する。

4.甲号各証、及びそれらの記載事項
1)甲第1号証;特開昭58-122586号公報(以下「引用例1」という。)
2)甲第2号証;特開昭57-42073号公報(以下「引用例2」という。)
3)甲第4号証;特開昭56-70586号公報(以下「引用例3」という。)
4)甲第6号証;特開昭56-144549号公報(以下「引用例4」という。)
5)甲第8号証;特開昭57-41694号公報(以下「引用例5」という。)
6)甲第9号証;特開昭57-80075号公報(以下「引用例6」という。)
7)甲第10号証;特願昭57-188691号(特開昭59-77483号公報)(以下「先願明細書」という。)

<引用例の記載事項>
1)引用例1
ア.本発明は多数の文字及び絵等の情報を表示する大容量液晶表示装置の構造に関するものである。・・・従来この種ドットマトリックス液晶表示装置の表示パネルと駆動回路及び基板との電極接続の方法としては・・・(公報第1頁右下欄7行〜下から2行)
イ.本発明は上記の欠点を除去する為になされたものであり、小型で、総合歩留りが高く安価な、しかも信頼性の高い高密度大容量液晶表示装置の構造を提供することを目的としたものである。(公報第2頁右上欄下から5行〜下から2行)
ウ.第3図、第4図において、11はガラスエポキシ等の樹脂絶縁基板で、液晶表示体18より大きく、該液晶表示体を位置決めし固定する為の溝19を有する。12は1(丸付き数字)〜14(丸付き数字)で示すように複数設けられた液晶表示装置の駆動用集積回路であり絶縁フィルム20上の予めエッチングにより形成された第1の金属導配線13と熱圧着等の方法により接合し駆動ユニットを構成する。該駆動ユニットは液晶表示体18と樹脂絶縁基板11のセッティングとは別工程で製作されるものであり、電気特性の良否チェック後良品のみ次工程で液晶表示装置に組み込むものである。液晶表示体18の端部に設けられた電極17は最小ピッチ0.1μm、電極巾60〜70μmであり、電極本数は液晶表示体の一辺当り200本前後になる。同時接合の為駆動ユニット中の金属導配線13から延長して設けられ、予めエッチングにより形成された第2の金属導配線16のピッチ巾は液晶表示体18の電極と同じにし、・・・又樹脂絶縁基板11の周囲に設けられた駆動信号入力用共通電極15に対しては、駆動ユニット中の金属導配線13から延長して設けられ予めエッチングにより形成された第3の金属導配線14のピッチ巾を同一にする。(公報第2頁左下欄1行〜右下欄5行)

第3図、第4図も参照すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「複数の電極17を有するドットマトリックスの液晶表示体18と、液晶表示装置の駆動用集積回路12が予めエッチングにより形成された第1の金属導配線13と熱圧着等の方法により接合され、且つ前記複数の電極17との接続のための第2の金属導配線16と他の駆動用集積回路12との接続のための第3の金属導配線14とを含む前記駆動用集積回路12の金属導配線が形成された複数の駆動ユニットと、該各駆動ユニットの第3の金属導配線14と接続するための駆動信号入力用共通電極15が周囲に設けられた樹脂絶縁基板11とから成り、前記液晶表示体18と前記複数の駆動ユニットと前記樹脂絶縁基板11とを電気的に接続して前記多ドットの液晶表示体18を複数の駆動用集積回路12により駆動する液晶表示体18ユニット接続装置」

2)引用例2
エ.第2図は、第1図に示すX-Yマトリックス型の表示パネル(A)の電極引き出しを省略して、フレキシブルフィルム基板(B)を4枚直接接続した状態を示しており、該各フレキシブルフィルム基板(B)上に、駆動回路・シフトレジスタ・ラッチ回路・ゲート等の論理回路から構成される集積回路(C)(C)…を設ける(公報第2頁右上欄7〜13行)

3)引用例3
オ.第11図は別の実施例である。基板60の上に作られた表示用の列電極61があり、また別に設けられたフレキシブルなフィルム66の上に駆動用IC63、パッド64に接続された信号線65と、表示用の列電極に接続されるべき配線62からなる駆動部分67がある。駆動部分67は第1図3,4を含むものである。この駆動部分には駆動用IC63が多数分散されて取り付けられていて、全体は表示パネル(60,61)に固着される。(公報第5頁右上欄下から4行〜左下欄6行)

4)引用例4
カ.テープキャリア実装された半導体部品11と液晶キャラクター表示体間の電気接続は、テープキャリア実装された半導体部品11の外付け端子13と液晶キャラクター表示体10上に装着せしめた外付け端子14をハンダ15でハンダ付けすることによりなされている。入力信号および電源は、テープキャリア実装された半導体部品11の外付け端子16と配線基板12上の配線パターン17をハンダ15でハンダ付けすることによりなされている。(公報第2頁右上欄7〜17行)

5)引用例5
キ.第3図は、前記双方向性のシフトレジスタを内蔵した駆動用ICを複数個宛4枚のフレキシブルフィルム基板(70)(70’)(71)(71’)に配置し、更に、該フレキシブルフィルム基板(70)(70’)(71)(71’)をEL表示素子(50)に取り付けた状態を示す展開図であり、(公報第2頁右上欄10〜14行)

6)引用例6
ク.これらの基体10,11間を電気的且つ能動的に接続すべくICチップ12Aを搭載したテープキャリア12とを示している。(公報第2頁左上欄9〜11行)

7)先願明細書
ケ.1はポリイミドフィルムでこの上に金属配線2がエッチングで形成され、液晶駆動用LSI3の上に突出した該金属配線2の端部とLSI上の電極とが接合されている。(公報第2頁右上欄)
コ.電極29を有するドットマトリックス表示の液晶表示体28(公報第2頁左上欄、及び右下欄)
サ.IC23が接合され表示体28の電極29との接続のためのリード25と、他のIC23との接続のためのリード24とを含むIC23の配線が形成された複数のポリイミド基板21(公報第2頁右下欄)
シ.ポリイミド基板21に設けられたリード24と接続するための基板側電極31及び多層配線32が形成された回路基板30を液晶表示体28,28’の表示面と反対側に取り付けた(公報第2頁右下欄〜第3頁左上欄)
ス.複数のポリイミド基板21と回路基板30とをリード24と基板側電極31及び多層配線32によって電気的に接続することによりIC23の共通電極の相互間を共通に接続して液晶表示体28を駆動する構成(公報第2頁右下欄〜第3頁左上欄)

先願明細書には、第4図(a)、(b)等も参照すると次の発明が記載されている。
「電極29を有するドットマトリックス表示の液晶表示体28と、前記多ドツトの表示体を駆動するためのLSIが接合され、且つ表示体28の電極29との接続のためのリード25と、他のLSIとの接続のためのリード24とを含むLSIの配線が形成された複数のポリイミド基板21と、
該各ポリイミド基板21に設けられたリード24と接続するための基板側電極31及び多層配線32が形成され、液晶表示体28の表示面と反対側で端面より内側に配置された回路基板30とから成り、
前記表示体と前記複数のポリイミド基板21と回路基板30とをリード24と基板側電極31及び多層配線32によって電気的に接続することによりLSIの共通電極の相互間を共通に接続して液晶表示体28を駆動するドットマトリックス表示の液晶表示体28。」

5.当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号、第2項に関して
(1)-1.引用発明との対比
引用発明の「電極17」、「ドットマトリックス」、「液晶表示体18」、「駆動用集積回路12」、「第2の金属導配線16」、「第3の金属導配線14」、「金属導配線」、「樹脂絶縁基板11」は、訂正発明の「接続端子」、「多ドツト」、「表示体」、「LSIチツプ」、「チツプ端子」、「共通端子」、「配線」、「回路基板」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「駆動ユニット」は、絶縁フィルム20に駆動用集積回路12を接合してなるものなので、訂正発明の「フイルム基板」に相当する。

したがって、両者は、「複数の接続端子を有する多ドツトの表示体と、前記多ドツトの表示体を駆動するためのLSIチツプが接合され、且つ前記接続端子との接続のためのチツプ端子と他のLSIチツプとの接続のための共通端子とを含む前記LSIチツプの配線が形成された複数のフイルム基板と、
該各フイルム基板上の共通端子と接続するための配線が形成された回路基板とから成り、
前記表示体と前記複数のフイルム基板と前記回路基板とを電気的に接続して前記多ドツトの表示体を複数のLSIチツプにより駆動することを特徴とする表示体ユニツト接続装置。」である点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1;
LSIチツプの接合が、訂正発明では、LSIチップが、フィルム基板の表面にボンディングされているのに対し、引用発明では、絶縁フィルム20上の予めエッチングにより形成された第1の金属導配線13と熱圧着等の方法により接合されている点。

相違点2;
LSIチツプの配線が、訂正発明ではフィルム基板の表面に形成されているのに対し、引用発明では、金属導配線は絶縁フィルム20上に予めエッチングにより形成されたと記載されているものの端部は、絶縁フィルム20から突出している点。

相違点3;
回路基板と表示体との位置関係が、訂正発明では、回路基板が表示体の背面位置で前記表示体の端面より内側に配置されているのに対し、引用発明では、表示体の端面より側方に突出している点。

相違点4;
LSIチップの位置、及び共通端子と回路基板の接続位置が、訂正発明では、LSIチップが表示体の背面位置で前記表示体の端面と回路基板との間に位置し、前記回路基板がフィルム基板面の前記表示体側に位置するように前記複数のフィルム基板を前記回路基板に重合させ且つその重合した領域内で前記共通端子と前記回路基板の配線とを接続しているのに対し、引用発明では、集積回路12が表示体の端面より側方に突出し、背面位置にない点。

相違点5;
訂正発明では、同一構成を有する両隣の前記LSIチップを相互に接続しているのに対し、引用発明では、その点の記載がない点。

(1)-2.判断
訂正発明と引用発明との相違点3、4にかかる構成については、引用例2〜6のいずれにも記載も、示唆もされておらず、また、そのような構成にしたことにより、明細書に記載された特有の効果を奏するものであり、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

よって、相違点1、2、5について検討するまでもなく、相違点3、4を含む訂正発明は、引用発明と同一でなく、各引用例から容易でもない。

また、他の証拠に記載された周知・慣用技術を参酌しても、引用発明と同一とも、各引用例から容易とも言えない。

(2)特許法第29条の2に関して
(2)-1.先願明細書に記載された発明との対比
先願明細書に記載された発明の「電極29を有するドットマトリックス表示の液晶表示体28」、「多ドツトの表示体を駆動するためのLSI」、「表示体28の電極29との接続のためのリード25」、「他のLSIとの接続のためのリード24」、「LSIの配線が形成された複数のポリイミド基板21」、「ポリイミド基板21に設けられたリード24と接続するための基板側電極31及び多層配線32が形成され、液晶表示体28の表示面と反対側で端面より内側に配置された回路基板30」、「複数のポリイミド基板21と回路基板30とをリード24と基板側電極31及び多層配線32によって電気的に接続することによりIC23の共通電極の相互間を共通に接続して液晶表示体28を駆動する構成」は、
訂正発明の「複数の接続端子を有する多ドットの表示体」、「多ドットの表示体を駆動するためのLSIチップ」、「接続端子との接続のためのチップ端子」、「他のLSIチップとの接続のための共通端子」、「LSIチップの配線が形成された複数のフィルム基板」、「フィルム基板上の共通端子と接続するための配線が形成され且つ前記表示体の背面位置で表示体の端面より内側に配置された回路基板」、「複数のフィルム基板と前記回路基板とを電気的に接続することで前記LSIチップの前記共通端子の相互間を共通して接続して前記多ドツトの表示体を複数のLSIチツプにより駆動する構成」にそれぞれ相当する。

訂正発明のLSIが「ボンディング」された点は、「接合」の一態様である。
また、先願明細書に記載された発明が、「表示体ユニット接続装置」であることはその具体的構成から明らかである。

したがって、両者は、「複数の接続端子を有する多ドツトの表示体と、前記多ドツトの表示体を駆動するためのLSIチツプが接合され、且つ表面に前記接続端子との接続のためのチップ端子と他のLSIチップとの接続のための共通端子とを含む前記LSIチップの配線が形成された複数のフィルム基板と、
該各フイルム基板上の共通端子と接続するための配線が形成され且つ前記表示体の背面位置で前記表示体の端面より内側に配置された回路基板とから成り、
前記表示体と前記複数のフイルム基板と前記回路基板とを電気的に接続して前記多ドツトの表示体を複数のLSIチツプにより駆動することを特徴とする表示体ユニツト接続装置。」である点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1;
LSIチップの接合が、訂正発明では、LSIチップが、フィルム基板の表面にボンディングされているのに対し、先願明細書に記載された発明では、ポリイミドフィルム1の上に金属配線2がエッチングで形成され、液晶駆動用LSI3の上に突出した該金属配線2の端部とLSI上の電極とが接合されている点。

相違点2;
LSIチツプの配線が、訂正発明ではフィルム基板の表面に形成されているのに対し、先願明細書に記載された発明では、液晶表示体28、及び回路基板30に接続するリード24、ポリイミド基板21から突出している点。

相違点3;
LSIチップの位置、及び共通端子と回路基板の接続位置が、訂正発明では、LSIチップが表示体の背面位置で前記表示体の端面と回路基板との間に位置し、前記回路基板がフィルム基板面の前記表示体側に位置するように前記複数のフィルム基板を前記回路基板に重合させ且つその重合した領域内で前記共通端子と前記回路基板の配線とを接続しているのに対し、先願明細書に記載された発明では、LSIが回路基板30に重なるように位置し、回路基板がフィルム基板と重合した部分でない領域内で前記共通端子と前記回路基板の配線とを接続している点。

相違点4;
訂正発明では、同一構成を有する両隣の前記LSIチップを相互に接続しているのに対し、先願明細書に記載された発明では、その点の記載がない点。

(2)-2.判断
訂正発明と引用発明との相違点3にかかる構成は、表示体、LSIチップ、フィルム基板、及び回路基板の相互の関連構成を限定するものであり、訂正発明を特徴付ける構成である。このような構成は、当業者にとって自明の構成とはいえず、この構成により、明細書に記載された特有の効果を奏するものである。

よって、相違点1、2、4について検討するまでもなく、相違点3を含む訂正発明は、先願明細書に記載された発明と同一ではない。

また、他の証拠に記載された周知・慣用技術を参酌しても、先願明細書に記載された発明と同一とは言えない。

6.むすび
以上のとおりであるから、無効審判請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件訂正発明に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
表示体ユニット接続装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の接続端子を有する多ドットの表示体と、
表面に前記多ドットの表示体を駆動するための、同一構成を有するLSIチップがボンディングされ、且つ表面に前記接続端子との接続のためのチップ端子と他のLSIチップとの接続のための共通端子とを含む前記LSIチップの配線が形成された複数のフィルム基板と、
該各フィルム基板上の共通端子と接続するための配線が形成された回路基板とから成り、
前記表示体と前記複数のフィルム基板とを電気的に接続すると共に、前記複数のフィルム基板を前記回路基板に重合させ且つその重合した領域内で前記共通端子と前記回路基板の配線とを接続して、前記複数のフィルム基板と前記回路基板とを電気的に接続することで前記LSIチップの前記共通端子の相互間を共通して接続し、電源信号とデータ信号を送ると共に、同一構成を有する両隣の前記LSIチップを相互に接続して、前記多ドットの表示体を複数のLSIチップにより駆動することを特徴とする表示体ユニット接続装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、表示端子数が比較的多く、例えば多ドットで面積の大きな液晶ドットマトリックス表示体と、この表示体を駆動する複数のLSIチップとを電気的に接続するための表示体ユニット接続装置に関する。
【0002】
【従来技術】最近、ポケットコンピュータやポータブルコンピュータ等に於いて、小型でしかも多ドットの液晶ドットマトリックス表示体が使用されているが、かゝる多ドットの表示体を駆動する場合、数多くの駆動用LSIチップを必要とする。
【0003】従来、多ドット表示体と多数の駆動用LSIチップとを電気的に接続する方法として、液晶表示体を取り付ける硬質回路基板に駆動用LSIチップを多数搭載する方法が採られている。
【0004】しかし、この方法は、硬質回路基板の配線パターンピッチに限度があり、小さな基板にまとめることが困難である。また硬質回路基板と例えば液晶表示体との位置合せに高い精度を要求し、組立製造が困難で、部品点数が多く、かつ小型化、薄型化を妨げ、コスト高を招く欠点があった。
【0005】
【目的】本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたものであり、多ドット表示体と多数の表示体駆動用のLSIチップを、特にフィルムキャリアタイプのLSIチップを複数用いる場合、簡単な組立て製造で、小型で安価に構成できる表示体ユニット接続装置を提供することを目的とする。
【0006】
【実施例】図面は、本発明の一実施例である液晶表示ユニット接続装置を構成する。第1及び第2図は第1の実施例を示し、1は表示信号を導出する接続端子2を有する多ドットの液晶表示体、3は表面に上記多ドットの液晶表示体を駆動するための複数のフィルム(又はテープ)キャリアタイプのLSIチップ4をインナーボンディングすると共に、モールドし、かつLSIチップ配線を形成したフィルム基板である。LSIチップ配線は特に上記液晶表示体1の接続端子2と接続用コネクタ9(例えば弾性ゴム)を介して電気的に接続される複数のチップ端子5と、各LSIチップ4間を共通に接続するための共通接続用端子6を有する。接続用コネクタ9は、接続端子2に対し、たて方向には導通するが、接続端子を横切る横方向には非導通の異方向性導電部分10を有している。7は各LSIチップ4の各共通接続端子6を共通に接続する配線8を形成した回路基板(例えばフィルム基板)である。この回路基板7は、フィルム基板3上に積層され、各LSIチップ4の共通電極6を共通接続する。また、11はフィルムキャリアタイプのLSIチップ4を一体化するためのスロット12を有する基台であり、固定ホルダー13によりフィルム基板3を基台11に保持する。また回路基板7の配線8とフィルム基板3の共通接続端子6とはハンダ付けにより行われる。第3図は回路構成図であり、表示体駆動用の各LSIチップ及びフィルム基板上のパターンは同じものが使用され、表示体駆動用の各LSIチップ4は所定数のセグメントを駆動する。こゝで、共通バス14は、電源ラインやデータラインである。実施例は理解し易くするため、信号線15の数を省略し、少ない線数で示しているが、実際の場合、例えば液晶表示体セグメント端子は各LSIチップごとに64本、共通バスは8本を必要とする。
【0007】また、第4〜5図は、実際の液晶表示ユニット接続装置に近似する図面を表わし、第4図は主としてLSIチップをボンディングしたフィルム基板3を、第5図はフィルム基板に重合される回路基板7を、さらに第6図は回路基板7をフィルム基板3に重合し、LSIチップの共通電極を共通接続した図が示されている。この例では、各駆動用LSIチップ間のみの共通接続だけでなく両隣の駆動用LSIチップ間の接続も行っている。
【0008】つまり、表示体と複数のフィルム基板と回路基板とを電気的に接続することでLSIチップの共通端子の相互間を共通して接続すると共に、両隣のLSIチップを相互に接続して、多ドットの表示体を複数のLSIチップにより駆動するので、各LSIチップが両隣のLSIチップと接続しているため、各LSIチップが処理を終了するごとに、次にLSIチップに信号を送ることで、LSIチップに同期した制御回路は不必要となるという効果がある。特に、両隣の前記LSIチップは同一構成を有するもので、これを相互に接続するので、同一のLSIチップで構成できるという構成の容易さの効果がある。
【0009】また、第7図は第2の実施例を示し、第8図はその組立状態を示し、第9図は、その回路構成図を示している。この第2の実施例に於て、上記第1の実施例と同一部分を示す部分には20を加算した形で示している。この実施例は表示体駆動用LSIチップ24及びそのチップ配線25,26を形成するフィルム基板23の面積を小さく構成したものであり、特にフィルム基板23上の共通接続端子26及び回路基板27上の配線28とが直線的に配置されている。この場合、各LSIチップ24の引出し端子は交互に逆順序となる。それゆえ、第1実施例の如く、すべて同一のLSIチップを用いることはできない。更に第10図は第3の実施例を示し、第11図はそのA-A′で切断した断面図である。LSIチップ54をボンディングしたフィルム基板53は複数個の分断された形で共通の表示体50の接続端子52にヒートシール法により行われ、各LSIチップ54を個別に位置合せして表示体50の接続端子52に接続するものである。各フィルム基板53の接続部分55でヒートシール法により個別に接着するため、フィルム基板の熱膨張や熱収縮の影響が少なく、個々の位置合せを容易に行ない得る。このようにフィルム(又はテープ)キャリアタイプのLSIチップを用いれば従来の如く大面積の硬質基板、特に微小ピッチ間隔のスルーホール硬質基板も不要であり、LSIチップを搭載するため配線を引廻し、配線のスペースをとるが、フィルム基板を用いればチップ自体から配線を導出できる形と成すことができ、その端子をそのまゝ表示体へも延ばし得る。
【0010】
【効果】以上説明した様に本発明によれば、多ドット表示体と多数の表示体駆動用のLSIチップ、特にフィルム(又はテープ)キャリアタイプのLSIチップを複数用いる場合でも、簡単な組立て製造で、小型で安価に構成することができる。
【0011】また、装置を組み立てた後、複数のLSIチップのうちいずれかのチップが不良であったとしても、フィルム基板の一部を取り換えるだけで良く、非常に効率的である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による表示体ユニット接続装置の第1の実施例を示し、要部分解斜視図、第2図は同組立構成を示す断面図、第3図は同回路構成図、第4〜6図は実施例を示す平面図、第7図は第2の実施例を示す要部分解斜視図、第8図は同組立構成を示す断面図、第9図は同回路構成図、第10図は第3の実施例を示す組立構成図、第11図は同A-A′切断々面図である。
【符号の説明】
1,21,50:多ドット表示体、2,22,52:接続端子、3,23,53:フィルム基板、4,24,54:LSIチップ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-03-09 
結審通知日 2004-03-12 
審決日 2004-03-23 
出願番号 特願昭59-4960
審決分類 P 1 112・ 121- YA (G09F)
P 1 112・ 113- YA (G09F)
P 1 112・ 16- YA (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大高 とし子湯原 忠男  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 瀬川 勝久
鹿股 俊雄
登録日 1994-08-26 
登録番号 特許第1865580号(P1865580)
発明の名称 表示体ユニツト接続装置  
代理人 伊藤 晴國  
代理人 櫻井 彰人  
代理人 伊藤 高英  
代理人 磯田 志郎  
代理人 伊藤 高英  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 高橋 隆二  
代理人 磯田 志郎  
代理人 永島 孝明  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 永島 孝明  
代理人 山本 光太郎  
代理人 山本 光太郎  
代理人 伊藤 晴國  
代理人 高野 昌俊  

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