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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1122085
審判番号 不服2001-9007  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-28 
確定日 2005-08-19 
事件の表示 平成 7年特許願第140024号「電話回線源の電源及び電話通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月 8日出願公開、特開平 7-321964〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年5月15日(パリ条約による優先権主張1994年5月13日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成13年2月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成13年6月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年6月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)新規事項の追加の有無について
平成13年6月27日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)の内容は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「供給電圧を必要とする回路を有する装置のための電源であり、この装置は電話回線に接続可能で、上記回路は上記装置がオフフックにされるように要求されていることを決定する論理回路を含むものであって、
コンデンサを所定の電圧まで充電するよう上記装置がオフフックのときに電話回線から充電電流を供給し、上記供給電圧を形成するために上記装置がオンフック及びオフフックのときに入力電圧を電圧レギュレータに供給する電源回路と、
上記コンデンサ及び上記電圧レギュレータによって形成された基準電圧の夫々に接続され、上記コンデンサの両端電圧が上記供給電圧より低い第1の所定のしきい値以下に低下したことを判定するコンパレータと、
上記コンデンサの両端電圧が第1の所定のしきい値以下に低下したことの上記コンパレータによる判定に応答して、上記装置をオフフックに強制するマイクロプロセッサ制御のオフフック回路と、
上記コンデンサの両端電圧が上記供給電圧より高い第2の所定しきい値以上に上昇したことを判定する手段とを具備し、
上記マイクロプロセッサ制御オフフック回路は、上記コンデンサの両端電圧が第2の所定しきい値以上に上昇したことを判定する手段に更に応答し、装置がオフフックにされるように要求されていることを上記論理回路が決定していない場合にかぎり、装置をオンフックにするようにした電話回線源の電源。」
と補正することを含むものである。

上記補正後の記載において、「上記コンデンサ及び上記電圧レギュレータによって形成された基準電圧の夫々に接続され、上記コンデンサの両端電圧が上記供給電圧より低い第1の所定のしきい値以下に低下したことを判定するコンパレータ」について検討する。
出願当初の明細書又は図面において、発明の詳細な説明の段落【0052】には、
A.「ここでシステムがどのように動作するか。BSU2がオンフックであり、従って、TIP及びRING信号に電力が供給されていないとする。この場合、PチャンネルMOSFET646がオンで、レギュレータ616には蓄積コンデンサ644から電力が供給される。この状態は、かなり多くのエネルギーが蓄積コンデンサ644から放出され、レギュレータ616の出力電圧が3ボルトから5%または約2.85ボルトに低下するまで継続する。この点で、レギュレータ616のERROR*出力が低レベルとなり、RESET*を低レベルにする。これでPチャンネルMOSFET678がオンし、コンパレータ662の非反転入力を3.0ボルトに引き上げる。コンパレータ662の反転入力の最高の通常電圧は、5.0ボルト×0.28または1.39ボルトであるので、この非反転入力の電圧はコンパレータ662の反転入力より十分高い。非反転入力の電圧が反転入力の電圧より高いので、コンパレータ662の出力は浮動となり、PチャンネルMOSFET690をオフにする。このためFOO_HOOK*が真または高レベルとなる。」と記載されている。
ここで、上記Aの記載において、「レギュレータ616の出力電圧」が低下する前の「3ボルト」という値は、段落【0037】の「こうして低電圧レギュレータ616及び電圧コンバータ634が、±3ボルトの適当な電源を供給し、図2で検討し、説明した回路の残り部分によって利用される。」との記載から明らかなように、回路に供給する「供給電圧」の通常の値である。
そして、上記Aの記載において、「コンパレータ662の出力」が浮動となって、オフフックとなるときの「蓄積コンデンサ644」の両端電圧は、上記Aの記載中に「これでPチャンネルMOSFET678がオンし、コンパレータ662の非反転入力を3.0ボルトに引き上げる。コンパレータ662の反転入力の最高の通常電圧は、5.0ボルト×0.28または1.39ボルトであるので、この非反転入力の電圧はコンパレータ662の反転入力より十分高い。」との記載から、「5.0ボルト」ないしはエネルギーが放出されることにより「5.0ボルト」から低下した電圧であり、少なくとも、上記オフフックとなるときの「蓄積コンデンサ644」の両端電圧を、供給電圧「3ボルト」より低い第1の所定のしきい値以下の電圧とすることは、記載も示唆もされていないことである。
したがって、本件手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるとは認められず、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。

(2)むすび
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成13年6月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成10年10月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「供給電圧を必要とする回路を有する装置のための電源であり、この装置は電話回線に接続可能で、上記回路は装置がオフフックにされることの要求を受けていることを決定する論理回路を含むものであって、
電力入力部を含み、上記回路に供給電圧を与える供給電圧手段と、
上記供給電圧手段の上記電力入力に所定電圧レベルの電力を与えるコンデンサと、
上記装置がオフフックのときに電話回線からの充電電圧を上記コンデンサに供給する手段と、
上記コンデンサの両端電圧が上記所定電圧レベルより低い第1の所定のしきい値以下に低下したことを決定する手段と、
上記コンデンサの両端電圧が第1の所定のしきい値以下に低下したことを決定する上記手段に応答して、上記装置をオフフックに強制するオフフック回路と、
上記コンデンサの両端電圧が上記所定の電圧より高い第2の所定しきい値以上に上昇したことを決定する手段とを具備し、
上記オフフック回路は、上記コンデンサの両端電圧が第2の所定しきい値以上に上昇したことを決定する手段に更に応答し、上記論理回路により装置がオフフックにされる要求を受けていることが決定されていない場合にかぎり、装置をオンフックにするようにした電話回線源の電源。」

(2)引用例及び査定時周知例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-306757号公報(以下、「引用例」という。)、及び、原査定の備考欄において周知例として引用された特開平3-55955号公報(以下、「査定時周知例」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例)
A.「産業上の利用分野
本発明は時計のバックアップやリダイヤル動作の為に前回送出したダイヤル情報をメモリー等のバックアップを必要とする電話機に関するものである。」(第1頁右下欄第11〜15行)
B.「課題を解決するための手段
上記問題を解決する為に本発明の電話機は、電話回線の閉結、開放を行う電話回線閉結手段と、電力を供給する充電可能な二次電池と、前記二次電池の充電電気量が不足しているという信号を出力すると、前記電話回線閉結手段が電話回線を閉結するよう制御する制御手段と、前記閉結された電話回線からの電流を二次電池に充電する充電手段から構成されている。」(第2頁右下欄第12行〜第3頁左上欄第2行)
C.「実施例
以下本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
第1図は本発明の一実施例に於ける電話機の主要部の構成を示すブロック図である。第1図に於て、18-1はリレーのコイル部、18-2はリレーのスイッチ部で電話回線の閉結、開放を行う。19は制御手段4に設けられたタイマー、20は充電電圧検出回路で、ダイオード21、抵抗22、ツェナーダイオード23、コンパレータ24により構成される。・・・(中略)・・・
以上の様に構成された電話機について、以下その動作を説明する。
通常はベル信号からの取り出し電力、オフフック時またはオンフック時の取り出し電力によってバックアップ用二次電池17を常に充電している。
この二次電池17の充電電圧は、充電電圧検出回路20により、ダイオード21を経た二次電池の電圧がツェナーダイオード23で規定される電圧より高いか低いか、すなわち二次電池17が充分な充電状態か充電電気量が不足しているかを判別され、充電電圧検出回路20がこの判別結果を制御手段4に出力する。
ここで、通話時間が短かかったり電話回線1から入力されるベル信号の回数が少なく、オフフック充電回路5及びベル信号から得られる充電電流があまり供給されなくなると、二次電池17の充電電気量が不足しはじめ、充電電圧が下がり充電電圧検出回路20は制御手段4に二次電池17の充電電気量が不足している信号を出力する。この信号が入力されると制御手段4はリレーのコイル18-1に信号を出力し、スイッチ18-2が電話回線1を閉結するように制御し、電話回線1を閉結すると同時にタイマー手段19をセットする。電話回線1が閉結されるとオフフック充電回路5より二次電池17に充電電流が供給される。この時、制御手段4はトランジスタ18をオフとしており、通信回路3に電流が流れるのを防止する。タイマー手段19により予め決められた一定時間が経過するか充電電圧検出回路20が二次電池が充分に充電されたという信号を出力すると制御手段4は電話回線1を開放する。・・・(中略)・・・充電電圧検出回路20の充分に充電されたという信号により電話回線1を開放した場合には再び充電電圧検出回路20が充電電気量が不足しているという信号を出力するまで、この充電は解除される。」(第3頁左上欄第9行〜右下欄第2行)

上記Cの記載において、「・・・オフフック充電回路5及びベル信号から得られる充電電流があまり供給されなくなると、二次電池17の充電電気量が不足しはじめ、充電電圧が下がり充電電圧検出回路20は制御手段4に二次電池17の充電電気量が不足している信号を出力する。」とあり、「ツェナーダイオード23で規定される電圧」は、「二次電池17」が回路に対して通常状態で与えている所定電圧レベルより低い所定のしきい値電圧であると解される。
そして、上記Cの記載において、「充電電圧検出回路20が二次電池が充分に充電されたという信号を出力する」とあり、本来は、上記「ツェナーダイオード23で規定される電圧」よりも高い別の所定のしきい値電圧により「充分に充電された」ことを検出するものと解されるが、別の所定のしきい値電圧については明示されていない。
なお、上記Cの記載においては、「タイマー手段19により予め決められた一定時間が経過する」か、あるいは「充電電圧検出回路20が二次電池が充分に充電されたという信号を出力する」かという二つの場合のうちのどちらかの場合に「制御手段4は電話回線1を開放」するとされているが、下記の「引用例記載の発明」の認定では、「充電電圧検出回路20が二次電池が充分に充電されたという信号を出力する」場合についての認定を行う。
よって、上記A〜Cの記載、及び第1図を参照すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「供給電圧を必要とする回路を有する装置のための電源であり、この装置は電話回線に接続可能なものであって、
所定電圧レベルの電力を与える二次電池17と、
上記装置が電話回線閉結のときに電話回線からの充電電流を上記二次電池17に供給するオフフック充電回路5と、
上記二次電池17の両端電圧が上記所定電圧レベルより低い所定のしきい値以下に低下したことを決定する充電電圧検出回路20と、
上記二次電池17の両端電圧が上記所定のしきい値以下に低下したことを決定する上記充電電圧検出回路20に応答して、上記装置を電話回線閉結に強制する制御手段4と、
上記二次電池17が充分に充電されたことを決定する手段とを具備し、
上記制御手段4は、上記二次電池17が充分に充電されたことを決定する手段に更に応答し、装置を電話回線開放にするようにした電話回線源の電源。」

(査定時周知例)
D.「[産業上の利用分野]
本発明は、電話線路から通ずるループ電流により、電話機内において用いる局部的な電源の供給を行なう電源制御回路に関するものである。」(第1頁右下欄第13〜16行)
E.「・・・コンデンサC1から供給される電源Vbはハードロジック系の電源であり、・・・」(第3頁左上欄第8〜9行)
F.「一方、オンフック中において、コンデンサC1の端子電圧、すなわち電源Vbが3V以下に低下すると電圧検出回路7から第1の検出信号が出力される。オンフック中オフフック検出信号(イ)の入力がないため、この第1の検出信号は2入力ANDゲート8より出力されて2入力ANDゲート10に入力される。着信時以外においては着信検出信号(ロ)の入力が無いため2入力ANDゲート10から第1の検出信号が出力され、その出力によりワンショット回路11を起動させ、ワンショット回路11の出力によりラッチングリレーCGの駆動コイルCGSを励磁させるに十分な時間トランジスタQ1をオンさせる。これにより、ラッチングリレーCGの接点cgの閉成によって直流ループが閉結され、オフフック中と同様にコンデンサC1およびC2への充電が開始される。
その後、コンデンサC1の端子電圧、すなわち電源Va(図面を見ると、コンデンサC1の端子電圧は明らかに「Vb」であり、この記載の「Va」は「Vb」の誤記であると認められる。)が5V以上に上昇すると電圧検出回路7の出力端子Bから第2の検出信号が出力される。この第2の検出信号は、オフフック検出信号(イ)(オフフック時Lレベルとなる。)で開く2入力ANDゲート9に入力され、オンフック中のために2入力ANDゲート9から出力され、その出力によってワンショット回路12を起動させ、ワンショット回路12の出力によりラッチングリレーCGの復旧コイルCGPを励磁させるに十分な時間トランジスタQ2をオンさせる。これにより、ラッチングリレーCGの接点cgの開成によって直流ループが開放されオフフック待機状態となる。
すなわち、オンフック中は電圧検出回路7がC1の端子電圧をチェックすることにより適宜直流ループを形成して充電動作を繰り返すこととなる。」(第3頁左下欄第15行〜第4頁左上欄第6行)

上記D〜Fの記載、及び図面を参照すると、査定時周知例には、次の事項が記載されているものと認められる。
周知事項1:電話回線に接続される装置において、オフフック検出信号が入力される論理回路(2入力ANDゲート8,9)を備えるようにすること。
周知事項2:電話回線に接続される装置において、オンフック中に、電源用コンデンサの端子電圧が第1の所定のしきい値(3V)以下に低下したことを検出した場合にオフフック中と同様に充電を開始させ、また、第2の所定のしきい値(5V)以上に上昇し、かつ、オフフック検出信号が論理回路(2入力ANDゲート8,9)に対してオンフック中を示している場合に充電を終了させ、オフフック待機状態(すなわちオンフック状態)に戻すこと。

(3)対比
そこで、本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、まず、引用例記載の発明における「二次電池17」と本願発明における「コンデンサ」とは、ともに、「充電可能な電源」として動作しているということができる。
次に、引用例記載の発明における「電話回線閉結」は、本願発明における「オフフック」に対応する事項であり、また、引用例記載の発明において、「電話回線からの充電電流を二次電池17に供給する」と、その結果、二次電池17の充電電圧は上昇していくと解されるから、このことは、本願発明において「電話回線からの充電電圧をコンデンサに供給する」ことに対応する事項であり、引用例記載の発明における「装置が電話回線閉結のときに電話回線からの充電電流を二次電池17に供給するオフフック充電回路5」は、本願発明における「装置がオフフックのときに電話回線からの充電電圧をコンデンサに供給する手段」に対応する構成であると認められる。
そして、引用例記載の発明における「二次電池17の両端電圧が所定電圧レベルより低い所定のしきい値以下に低下したことを決定する充電電圧検出回路20」及び「二次電池17の両端電圧が所定のしきい値以下に低下したことを決定する充電電圧検出回路20に応答して、装置を電話回線閉結に強制する制御手段4」は、本願発明における「コンデンサの両端電圧が所定電圧レベルより低い第1の所定のしきい値以下に低下したことを決定する手段」及び「コンデンサの両端電圧が第1の所定のしきい値以下に低下したことを決定する手段に応答して、装置をオフフックに強制するオフフック回路」に、それぞれ対応する構成である。
さらに、引用例記載の発明における「二次電池17が充分に充電されたことを決定する手段」と本願発明における「コンデンサの両端電圧が所定の電圧より高い第2の所定しきい値以上に上昇したことを決定する手段」とは、ともに、「充電可能な電源の両端電圧が所定電圧値以上に上昇したことを決定する手段」であるということができ、また、引用例記載の発明における「電話回線開放」は、本願発明における「オンフック」に対応する事項であるから、引用例記載の発明における「制御手段4」と本願発明における「オフフック回路」とは、ともに、「充電可能な電源の両端電圧が所定電圧値以上に上昇したことを決定する手段に更に応答し、装置をオンフックにする」という動作を行っていることには変わりない。

よって、本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「供給電圧を必要とする回路を有する装置のための電源であり、この装置は電話回線に接続可能なものであって、
所定電圧レベルの電力を与える充電可能な電源と、
上記装置がオフフックのときに電話回線からの充電電圧を上記充電可能な電源に供給する手段と、
上記充電可能な電源の両端電圧が上記所定電圧レベルより低い所定のしきい値以下に低下したことを決定する手段と、
上記充電可能な電源の両端電圧が上記所定のしきい値以下に低下したことを決定する上記手段に応答して、上記装置をオフフックに強制するオフフック回路と、
上記充電可能な電源の両端電圧が所定電圧値以上に上昇したことを決定する手段とを具備し、
上記オフフック回路は、上記充電可能な電源の両端電圧が所定電圧値以上に上昇したことを決定する手段に更に応答し、装置をオンフックにするようにした電話回線源の電源。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本願発明においては、「供給電圧を必要とする回路」が「装置がオフフックにされることの要求を受けていることを決定する論理回路を含む」のに対し、引用例記載の発明においては、そのような論理回路を含むとはされていない点。
相違点2:「充電可能な電源」が、本願発明においては、「コンデンサ」であるのに対し、引用例記載の発明においては、「二次電池」であり、さらに、本願発明は、「電力入力部を含み、上記回路(供給電圧を必要とする回路)に供給電圧を与える供給電圧手段」を備えるものであって、「コンデンサ」が「供給電圧手段の電力入力に所定電圧レベルの電力を与える」ようにしているのに対し、引用例記載の発明においては、そのような供給電圧手段については記載されていない点。
相違点3:本願発明は、「コンデンサの両端電圧が所定の電圧より高い第2の所定しきい値以上に上昇したことを決定する手段」を備えるものであり、「オフフック回路」が「コンデンサの両端電圧が第2の所定しきい値以上に上昇したことを決定する手段に更に応答し、論理回路により装置がオフフックにされる要求を受けていることが決定されていない場合にかぎり、装置をオンフックにするように」しているのに対し、引用例記載の発明においては、「二次電池17が充分に充電されたことを決定する手段」を備えるものの、「所定の電圧より高い第2の所定しきい値以上に上昇したことを決定する」とはされておらず、また、装置を電話回線開放(オンフック)にする条件として、「論理回路により装置がオフフックにされる要求を受けていることが決定されていない場合にかぎり」との限定がなされていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
上記周知事項1に見られるように、電話回線に接続される装置において、オフフック検出信号が入力される論理回路を備えるようにすることは、周知の事項にすぎない。
よって、引用例記載の発明を、装置がオフフックにされることの要求を受けていることを決定する論理回路を含むようなものとすることは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。

(相違点2について)
電話回線に接続する「充電可能な電源」として、「コンデンサ」を用いるようにすること、及び、「電力入力部を含み、供給電圧を必要とする回路に供給電圧を与える供給電圧手段」を備えるようにし、電話回線からの電流により充電される「コンデンサ」が「供給電圧手段の電力入力に所定電圧レベルの電力を与える」ように構成することは、周知(必要であれば、例えば、特開平3-136451号公報の第3図に記載のものにおける「充電用コンデンサ102」及びその充電用コンデンサ102から電力を与えられる「装置用電源としてのコンデンサ110」を参照されたい。)の事項にすぎないから、引用例記載の発明において、「二次電池」を「コンデンサ」とし、さらに、「電力入力部を含み、供給電圧を必要とする回路に供給電圧を与える供給電圧手段」を備えるようにし、「コンデンサ」が「供給電圧手段の電力入力に所定電圧レベルの電力を与える」ように構成することは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。

(相違点3について)
上記周知事項2に見られるように、電話回線に接続される装置において、オンフック中に、電源用コンデンサの端子電圧が第1の所定のしきい値以下に低下したことを検出した場合にオフフック中と同様に充電を開始させ、また、第1の所定のしきい値より高い第2の所定のしきい値以上に上昇し、かつ、オフフック検出信号が論理回路に対してオンフック中を示している場合に充電を終了させ、オフフック待機状態(すなわちオンフック状態)に戻すことは、周知の事項にすぎない。
してみれば、引用例記載の発明に対して上記周知事項2を適用し、「コンデンサの両端電圧が所定の電圧より高い第2の所定しきい値以上に上昇したことを決定する手段」を備えるようにし、かつ、「オフフック回路」が「コンデンサの両端電圧が第2の所定しきい値以上に上昇したことを決定する手段に更に応答し、論理回路により装置がオフフックにされる要求を受けていることが決定されていない場合にかぎり、装置をオンフックにするように」構成することは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知事項から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

(5)むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明及び上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-28 
結審通知日 2005-03-30 
審決日 2005-04-12 
出願番号 特願平7-140024
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 561- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 良平白井 孝治  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 長島 孝志
衣鳩 文彦
発明の名称 電話回線源の電源及び電話通信装置  
代理人 土屋 勝  

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