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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1122222
審判番号 不服2002-22208  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-18 
確定日 2005-08-17 
事件の表示 平成11年特許願第519425号「固相として磁性粒子を用いる多重フロー免疫検定」拒絶査定不服審判事件〔平成11年5月27日国際公開、WO99/26067、平成12年12月5日国内公表、特表2000-516345〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成10年(1998年)10月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年11月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1ないし10に係る発明は、平成14年6月24日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められ、請求項1に係る発明は次のとおりである。(以下、「本願発明」という。)

「1.液体媒体に接触していてその液体媒体に不溶である固相に、単一の液状生物試料中の種を結合させることと、前記液体媒体から前記固相を分離することを含む複数の検定によって、単一の液状生物試料中の複数の分析対象成分を個々に検出する方法であって、
前記分析対象成分のうちの各一種についての各一つの検定において、選択的に活性である各一つの検定試薬がそれぞれに結合した磁気的反応性の物質でできた複数の微細粒子を、前記固相として使用し、前記微細粒子は、大きさが、複数の副範囲の集合体である一つの範囲にわたって変化し、そして各副範囲は、フローサイトメトリーおよび前記副範囲の微細粒子に結合した検定試薬によって、前記他の副範囲から区別することができるものであり、
前記液体媒体から前記全部の副範囲内の微細粒子を磁気により分離し、そして
前記液体媒体を第一液体媒体と定義し、その第一液体媒体から分離した前記微細粒子を第二液体媒体中に懸濁させ、前記複数の検定手法に従ってフローサイトメトリーにより前記第二液体媒体中の前記微細粒子を分析し、それにより前記生物試料中の前記複数の分析対象成分を個々に検出する
ことを含んでなる方法。」

2.引用刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開昭61-132869号公報)には、フローサイトメータを用いる免疫学的測定方法について、次の事項が記載されている。
(1a)従来技術
「血液、体液等に含まれるグロブリン、酵素等の蛋白質、ホルモン・・・等はその分子構造が類似していたり、ごく微量であるために、通常の分析方法では同定、定量が困難である。そこで、これらの物質の分析には、一般に抗原抗体反応を利用した免疫学的な分析方法が用いられている。」(第1頁左下欄下から4行〜右下欄3行)

(1b)免疫学的分析方法のフローシステム、第1、2図
「(実施例)
第1図は、本発明方法を実施するフローシステムの一例を示すものである。
本例では、抗原を含んだサンプルをサンプル採取装置1で採取し、試薬(担体および標識抗体)を試薬注入装置2より注入した後、反応槽3で抗原抗体反応を起こさせる。その後、反応液を分離装置4に通して抗原抗体反応に関与しなかった残余の標識抗体(Free)を排液槽5に排出してB-F分離した後、稀釈装置6で担体を含む免疫複合体(Bound)を緩衝液等に稀釈してフローサイトメータのフローセル7に流す。ここで、レーザ光8の照射により生じた散乱光と蛍光を各ディテクタ9および10により検出し、その出力をデータ処理装置11で処理してサンプル中の所定の抗原を分析する。
第2図は、本発明の分析方法における反応模式図の一例を示すものである。本例において、符号21は担体に用いるラテックスで、例えば5μの均一な径のポリスチレン製のものに物理的吸着により、固相抗体22が固相化されている。符号23はサンプルである血清等に含まれている分析対象となる抗原で、符号24は抗原23に特異的に結合する抗体をFITC等の螢光物質で標識した標識抗体である。また、符号25は抗原抗体反応後の免疫複合体(Bound)であり、符号26は残余の標識抗体(Free)である。
以下、第1図に示すフローシステムにおける作用をヒトIgEの分析を例にとって説明する。この場合、第2図に示すラテックス21には抗ヒトIgEモノクロナル抗体22を吸着させる。・・・反応は、反応用緩衝液200μlを収容する反応槽3に、固相抗体結合ラテックス溶液50μlと、サンプル10μlと、標識抗体溶液50μlとをサンプル採取装置1及び試薬注入装置2により添加して行なわせる。なお、これらの試薬類は、全て同時に添加しても、また抗原を固相抗体と反応させて後、標識抗体と反応させるように遂次添加しても良い。
ここで、例えば37℃、10分間反応させると、固相抗体-抗原-標識抗体の免疫複合体25と残余の標識抗体26とが生成される。
その後、反応槽3から300μlの反応液を吸引し、これを分離装置4において例えば第3図に示す多孔質セラミック筒31に通してB-F分離する。多孔質セラミックは孔の径が均一に出来ており、例えばその孔径を1μとすると、反応液中の抗ヒトIgE MCA固相ラテックス-抗原IgE-FITC標識抗ヒトIgE Fabフラグメントの免疫複合体25および抗原抗体反応に関与しなかった残余の固相抗体ラテックスは、ラテックスの大きさだけで5μあるので多孔質セラミックを通過しない。
これに対し、残余の標識抗体26はその大きさがせいぜい数10nmであるため、多孔質セラミックを通過し、これにより濾過の原理でB-F分離が行なわれる。
こうして、多孔質セラミック筒31を通過できずに残った免疫複合体は、稀釈装置6から緩衝液を数回流して洗浄した後、一定量の緩衝液で稀釈して第4図に示すフローサイトメータに流して測定する。」(第2頁右上欄9行〜第3頁左上欄13行)
そして、第1図および第2図には、上記記載に対応したフローシステムと免疫反応模式図が記載されている。

(1c)フローサイトメータによる測定、得られるサイトグラム:第5図
「フローサイトメータは既に知られているように、細胞の分析専用機であり、フローセル7中のニードル35に反応後、B-F分離を行なった溶液36を流し、レーザ光8をその流れに照射して細胞から発する散乱光や螢光を測定する。通常、前方散乱光はレーザ入射光とほぼ水平に位置するディテクタ9で検知され、主に細胞サイズの測定に用いられている。螢光は、レーザ光8の入射角に対して垂直方向に位置するディテクタ10で検知され、細胞表面の螢光物質等の測定に用いられる。レーザ光8は単一波長であるため使用できる螢光色素に制限があるが、本例の分析方法において用いる螢光色素FITCは波長489nm近くの光を吸収して波長515nmの螢光を発するので、この場合は波長488nmのArレーザを用いれば良い。
このようにして、フローサイトメータに通すと、ディテクタ9,10の出力に基いてデータ処理装置11において免疫複合体の大きさと、その上に乗った螢光量/1ラテックスとが測定され、これら2つのパラメータによって第5図に示すサイトグラムが得られる。なお、第5図において縦軸は螢光量を、横軸は粒子径を表わす。ここで、抗原抗体反応に関与しなかったラテックスは、螢光を発しないのでサイトグラム中に表現されないが、免疫複合体を形成したラテックスは、その径のところに螢光量に応じて示される。このようにして、螢光量測定値が得られれば、予じめIgE抗原標品の既知濃度系列から同様にして求めた螢光強度の検量線に基いてサンプル中のIgE濃度を求めることができる。このようにして、上述のフローシステムにサンプルを導入するだけで、簡便な反応系によりB-F分離、測定と一連の処理を短時間(フローサイトメータは約5000粒子/secで測定できる)で行なうことができ、しかも定量性の高い分析結果を得ることができる。」(第3頁左上欄14行〜左下欄8行)
そして、第5図には、横軸に粒子径を縦軸に螢光量をとったグラフのある粒子径値のところに1個の縦長楕円様の範囲に測定値が集中している図が記載されている。

(1d)複数種類の粒径の異なるラテックス粒子を用いた複数の抗原濃度の同時分析、得られるサイトグラム:第6図
「本発明の他の実施例においては、数種類の粒径の異なるラテックス粒子に、それぞれの粒径ごとに異なる抗原を結合させた混合担体を用い、この混合担体と、種々の抗原を含んだサンプルと、それぞれの抗原に対する特異抗体に螢光標識した各標識抗体とを加えて反応させた後、上記実施例と同様の原理でB-F分離してから、フローサイトメータにより、免疫複合体のラテックス粒子径別の螢光強度を求める。このようにすれば、第6図に示すようなサイトグラムが得られるから、その各々の螢光強度から複数の抗原濃度を同時に分析することができる。」(第3頁左下欄9〜末行)
そして、第6図には、横軸に粒子径を、縦軸に螢光量をとったグラフの4つの粒子径値のところに、それぞれ別個に重なることなく縦長楕円様あるいは円形様の4つの範囲に測定値が集中している図が記載されている。

(1e)磁性ラテックスの使用によるB-F分離
「また、本発明の更に他の実施例においては、第7図に示すように、フローチューブ41の一部に電磁石42を設け、またサンプルを反応させる担体として鉄芯入りの磁性ラテックスを用いる。このようにして、反応後のサンプルを微速でフローチューブ41内を流す際に電磁石42に通電することにより、磁性ラテックスを吸引して免疫複合体43をフローチューブ41の内側面に付着させ、残余の標識抗体44を通過させる。その後、稀釈用緩衝液を流して洗浄してから、電磁石42をオフにして一定量の緩衝後で稀釈する。このようにしても、上述した実施例と同様、B-F分離をフローシステム中で確実に行なうことができる。」(第3頁右下欄1〜13行)
そして、第7図には、上記記載に対応したフローチューブの模式図が記載されている。

3.対比・判断
3-1.本願発明と刊行物1記載の発明との対比
刊行物1記載の免疫学的分析方法も、試料として血清等の液状生物試料を対象とする方法であり(前記記載(1a)、(1b)参照)、かつ、“immunoassay”という語が、「免疫学的分析(方法)」とも「免疫検定」とも日本語に翻訳されていることを勘案すると、刊行物1に記載された「分析(方法)」は、本願発明において“assay(s)”という原語記載に対して訳語として使用されている「検定」と異なるものではない。また、フローサイトメータにより測定することは、「フローサイトメトリー」である。
そして、刊行物1の第6図のようなサイトグラムが得られる数種類の粒径の異なるラテックス粒子はフローサイトメトリーにより区別して測定できる微細粒子であり、それぞれの粒径ごとに異なる抗原を結合させた混合担体は、本願発明における「大きさが、複数の副範囲の集合体である一つの範囲にわたって変化し、そして各副範囲は、フローサイトメトリーおよび前記副範囲の微細粒子に結合した検定試薬によって、前記他の副範囲から区別することができるもの」に相当する。
そこで、本願発明と、刊行物1に記載された数種類の粒径の異なるラテックス粒子を用いて複数の抗原濃度を同時に分析する実施例の方法(前記(1d)参照)とを対比すると、両者の一致点及び相違点は下記のとおりである。

<一致点>
「液体媒体に接触していてその液体媒体に不溶である固相に、単一の液状生物試料中の種を結合させることと、前記液体媒体から前記固相を分離することを含む複数の検定によって、単一の液状生物試料中の複数の分析対象成分を個々に検出する方法であって、
前記分析対象成分のうちの各一種についての各一つの検定において、選択的に活性である各一つの検定試薬がそれぞれに結合した複数の微細粒子を、前記固相として使用し、前記微細粒子は、大きさが、複数の副範囲の集合体である一つの範囲にわたって変化し、そして各副範囲は、フローサイトメトリーおよび前記副範囲の微細粒子に結合した検定試薬によって、前記集合体の他の副範囲から区別することができるものであり、
前記液体媒体から前記全部の副範囲内の微細粒子を分離し、そして
前記液体媒体を第一液体媒体と定義し、その第一液体媒体から分離した前記微細粒子を第二液体媒体中に懸濁させ、前記複数の検定手法に従ってフローサイトメトリーにより前記第二液体媒体中の前記微細粒子を分析し、それにより前記生物試料中の前記複数の分析対象成分を個々に検出する
ことを含んでなる方法。」

<相違点>
本願発明においては、複数の微細粒子が磁気的反応性の物質でできており、微細粒子を第一液体媒体から磁気的に分離するものであるのに対し、刊行物1に記載された方法においては、複数の微細粒子が磁気的反応性の物質でできたものではなく、第一液体媒体からの前記微細粒子の分離は、多孔質セラミック筒でろ過により分離する(前記記載(1b)参照)ものである点。

3-2.検討
上記相違点について検討する。
刊行物1には、固相として使用する微細粒子として、鉄心入りの磁性ラテックスすなわち磁気的反応性の物質でできた微細粒子を用いれば、フローチューブ内において免疫反応時の第一液体媒体及び残余の標識抗体から免疫複合体を磁気的に分離することができ、フローシステム中でのB-F分離を確実に行えることが記載されており(前記記載(1e)参照)、免疫学的分析方法において、B-F分離の容易化のために、容器内で免疫反応させる固相として使用する微粒子として、磁気分離の可能な磁気的反応性の物質でできた微細粒子を使用することは、本願明細書の「2.従来技術の説明」の項においても述べられているように、単なる慣用手段にすぎないものである。
したがって、刊行物1に記載された数種類の粒径の異なるラテックス粒子を用いて複数の抗原濃度を同時に分析する実施例の方法において、複数の微細粒子として磁気的反応性の物質でできたものを使用し、第一液体媒体からの前記微細粒子の分離を、ろ過による分離から磁気的な分離に変更する程度のことは、当業者が容易に想到し得ることであり、その効果も予測できる範囲内のものである。
なお、請求人は、鉄芯入りの磁性ラテックス粒子の必要な大きさ分布のものの入手困難性や、フローサイトメトリーにおける磁気分離後の磁性粒子同士の再懸濁の必要性について縷々主張しているが、そもそも磁気分離の可能な磁気的反応性の物質でできた微細粒子が鉄芯入りの磁性ラテックス粒子に限られるものでないことは、本願優先権主張日以前の免疫分析分野の技術水準からみて明らかな事項であり、複数種類の粒径の異なる磁気的反応性の物質でできた微細粒子の入手についても、請求の理由中で請求人が引用する特公平5-10808号公報にも見られるように本願優先権主張日以前に製造可能なものであって、それらの入手が困難であるから刊行物1に記載された複数の分析対象成分を個々に検出する方法への磁気的なB-F分離の適用を断念しなければならないという阻害要因にはならない。
また、強磁性体や常磁性体などがある磁性体の磁性にも種々の強さのものがあり、磁気分離の際に磁石等に集合して捕捉された磁気的反応性の物質でできた微細粒子が、分離用の磁場を取り去られた後に、絶対に再懸濁できないと考えなければならない事情もない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、本願出願前日本国内において頒布された上記刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-16 
結審通知日 2004-06-22 
審決日 2004-07-05 
出願番号 特願平11-519425
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 祥子  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 山口 由木
福島 浩司
発明の名称 固相として磁性粒子を用いる多重フロー免疫検定  
代理人 神谷 牧  
代理人 長谷 照一  

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