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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1122224
審判番号 不服2001-21280  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-29 
確定日 2005-08-15 
事件の表示 平成 9年特許願第 75817号「良性前立腺過形成の予防および治療剤」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月 9日出願公開、特開平10-152446〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成9年3月27日(パリ条約による優先権主張1996年3月27日、米国)の出願であって、本願に係る発明は特許法第29条1項3号に該当するという理由で拒絶査定がされた後、審判請求に伴い平成13年12月28日付で明細書についての手続補正書が提出されたものである。

2.平成13年12月28日付手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年12月28日付手続補正書による補正は却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成13年12月28日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下、「本願補正発明」という。)
「哺乳動物における良性前立腺過形成の治療または予防のための薬剤であって、良性前立腺過形成を予防するまたはその病巣を減少するのに有効な用量の、プラゾシン、ならびにドキサゾシンおよびその6’-および7’-ヒドロキシ代謝物から選択されるα1-アドレナリン作働性受容体アンタゴニストまたはその医薬として許容される酸付加塩を含む薬物を含む、前記薬剤。 」

(2)引用例の記載
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例であるDrugs, Vol.49, No.2 (1995), p.295-320には、以下の記載がある。
1)ドキサゾシンによる良性前立腺過形成患者の泌尿器症状の軽減効果がさまざまな用量で行われた二重盲試験により確認されたこと(p.298の23〜32行及びp.306のTable III)
2)ドキサゾシンは、プラゾシン、テトラゾシンと同様、選択的なα1-アドレナリン作動性受容体アンタゴニストであること。(p.299右欄26〜30行)
3)ドキサゾシンは、良性前立腺過形成の治療に1日あたり2mgから8mgの投与量で用量依存的に効果を増すこと、及び、1日あたり12mgの投与量まで使われていること。(p.299の4〜5行及びp.314左欄下から8行〜最下行)

(3)対比
上記1)〜3)によれば、引用例には、α1-アドレナリン作動性受容体アンタゴニストであるドキサゾシンを良性前立腺過形成の治療に用いることが記載されているといえ、また、1)にあるように、ドキサゾシンの臨床試験に関し、実際にヒトに投与された結果も記載されている。本願補正発明と引用例に記載された発明(以下、「引用例記載の発明」という。)を対比すると、両者は「哺乳動物における良性前立腺過形成の治療のための薬剤であって、ドキサゾシンを含む前記薬剤」である点で一致し、一方、本願補正発明においては、ドキサゾシンの用量を良性前立腺過形成を予防するまたはその病巣を減少するのに有効な用量と特定しているのに対し、引用例にはその点が明記されていない点で、両者は一応相違する。

(4)判断
上記相違点について検討する。
引用例の記載事項1)〜3)によれば、ドキサゾシンは、1日あたり2mgから12mgの範囲のさまざまな投与量で良性前立腺過形成の治療に用いられていたといえる。そして、本願明細書には、本願補正発明の薬剤の有効成分の用量につき、「通常、活性化合物は約0.01ないし約2.0mg/kg/日の投与量で投与するのが最も好ましい。しかし、患者の体重に基づいて変化させるのが一般的に必要である。」と記載されている(【0017】)。ヒトの体重をおよそ50kgとして、本願補正発明の上記体重kgあたりの投与量を1日あたりの投与量に換算すると約0.5mgから約100mgとなり、本願補正発明における「良性前立腺過形成を予防するまたはその病巣を減少するのに有効な用量」とは、1日あたりの投与量でいえば、この程度の数値を意味するものといえる。そうすると、本願補正発明における用量は引用例記載の発明における用量と重複する範囲を含み、用量において相違するものではない。そして、本願補正発明と引用例記載の発明とは、同じ成分を、良性前立腺過形成の患者の排尿障害を改善するという同じ治療用途に用いる点において、なんら違いはなく、本願補正発明は、引用例記載の発明における有効成分が排尿障害の改善という治療効果を発現するメカニズムのうちのひとつが腫瘍の縮小であることを単に発見(説明)したものにすぎず、治療用途としては従来の用途をこえていないから、両者は同一であるといわざるを得ない。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、平成13年12月28日付手続補正書による補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定する要件を満たしていないから、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

3.本件審判の請求について
(1)本願発明
平成13年12月28日付手続補正書による補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年12月11日付手続補正書により補正された請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「哺乳動物における良性前立腺過形成の治療または予防のための薬剤であって、良性前立腺過形成を予防するまたはその病巣を減少するのに有効な用量のα1-アドレナリン作働性受容体アンタゴニストまたはその医薬として許容される酸付加塩を含む薬物を含む薬剤。」

(2)引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明における「α1-アドレナリン作働性受容体アンタゴニストまたはその医薬として許容される酸付加塩」について、「プラゾシン、ならびにドキサゾシンおよびその6’-および7’-ヒドロキシ代謝物から選択される」という特定事項を有さないものである。
そうすると、本願発明を特定する事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例に記載された発明であるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明である。

なお、請求人は平成16年6月25日けの審理終結通知に対し、平成16年7月12日付けで審理再開の申し立てをしたが、これと同時に提出された上申書の内容を検討しても、審理を再開すべき理由を見出せないので、審理を再開しない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-22 
結審通知日 2004-06-25 
審決日 2004-07-22 
出願番号 特願平9-75817
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 胡田 尚則新留 豊▲高▼岡 裕美  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 齋藤 恵
谷口 博
発明の名称 良性前立腺過形成の予防および治療剤  
代理人 今井 庄亮  
代理人 今井 庄亮  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  
代理人 村上 清  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  
代理人 増井 忠弐  
代理人 村上 清  
代理人 増井 忠弐  
代理人 富田 博行  
代理人 社本 一夫  

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