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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1122645
審判番号 不服2003-12074  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-27 
確定日 2005-09-07 
事件の表示 平成11年特許願第349776号「在庫管理コンピュータ・システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月27日出願公開、特開2000-177808〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯
本願は、平成11年12月9日の出願(パリ条約に基づく優先権主張;1998年12月17日、英国[GB])であって、その請求項1〜16に係る発明は特許を受けることができないとして、平成15年3月28日に前審において拒絶査定がなされた。
これに対し、平成15年6月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年6月27日付けで手続補正がなされたものである。
そして、この補正は、明細書の「特許請求の範囲」を補正対象項目として変更するものであって、該変更は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲を、平成15年改正前の特許法第17条の2第1項第3号の規定により平成15年6月27日付け手続補正書に記載のとおりに補正するものである。

【2】平成15年6月27日付けの手続補正について
・[補正却下の決定の結論]
平成15年6月27日付けの手続補正を却下する。

・[理由]
(1)補正の内容
出願人が求めている「特許請求の範囲」を変更する補正は、請求項の数を「16」から「13」に変更するものであり、そのうち、請求項1に関する補正の内容は、次のとおりである。
特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「【請求項1】 在庫管理コンピュータ・システムであって、製品コードにもとづく現在庫リストおよび新たな製品コード/銘柄対により更新される前記製品コードと製品銘柄間の相関を記憶するメモリと、前記システムへの、製品コードを含む、購入品のレシートの電子バージョンの入力に応答して、購入された製品を前記現在庫リストに追加する更新手段と、前記レシートの入力から、前記製品コードと前記製品銘柄間の相関を生成する手段と、処分された製品の前記コードの電子指示に応答して、前記現在庫リストから前記処分された製品を消去する消去手段と、前記現在庫リストを所定の在庫レベルと比較する比較手段と、前記比較に応答して、前記コードを参照して置換を必要とする在庫品目を示す在庫置換指示を生成する手段とを含む、コンピュータ・システム。」と補正する。
そして、上記下線部を付した事項を新たに付け加えるこの補正は、新規事項を追加するものではなく、しかも、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成15年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認める。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か)について、以下に検討する
(2)補正後の発明
上記補正後の請求項1〜13に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)は、(1)の箇所で既述したとおりのものである。
(3)引用刊行物の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した特開平10-154271号公報[原査定の引用文献2](以下、「刊行物1」という。)、及び、特開平9-265492号公報[原査定の引用文献1](以下、「刊行物2」という。)には、次の技術的事項が記載されている。
・刊行物1;
「【請求項6】 請求項5に記載のユーザ通信端末は、商品品目管理リストを作成する機能を有すると共に、冷蔵庫収納品目を区別して集計管理する機能を備え、また、品目情報を含む読取り可能な情報が付与された商品より、当該情報を読取る品目情報読取手段を備えて、該品目情報読取手段により読取られた前記品目情報を含む項目の情報を前記商品品目管理リスト中の冷蔵庫内食品情報から削除する機能を備えたことを特徴とするユーザ通信端末。」
「【0030】 ところで、例えば野菜等といった生鮮食料品で、バーコードの付与されていない品目については、POSシステムのキーボード中のひとつのキーをそれらの生鮮食料品のうちの一つに割り当て、このキーの操作により必要な情報を引き出せるように情報をセットしておくことで、対応することが良く行われる。すなわち、POSシステムのキーボード中のひとつの商品キーに、バーコードにより示される品目情報と同様の情報を割り当て、レジでの集計中に該割り当てられたキーを押すことによって、該キーに割り当てられた品目情報をキーとしてPOSシステム内記憶装置にアクセスすることとしても良い。なお、本発明による通信システムで、各商品に付与されている品目情報を保持しておく媒体はバーコードに限るものではなく、その他の形式であっても本発明は実施可能である。」
「【0035】 なお、買い上げ情報のデータベース内への記憶保存の後、前記メール形式の情報転送が行われる構成でも良い。このように本発明は、レジ係が顧客の買い上げ商品の精算を行う際にPOSシステム内において生成された買い上げ商品の細目情報は、POS管理のための情報としてPOSシステム内に蓄積される一方、顧客の所有する通信端末のアドレスを与えることで、そのアドレスの通信端末へ、メール化されて伝送される構成とした。」
「【0046】 さて、買い物から帰宅すると、顧客はPOSシステム102から自身の通信端末103iに転送された品目情報と価格情報と説明情報とを用いて、以下に示すような情報処理を行うこととしても良い。
【0047】 顧客の通信端末は、いわゆるモデム付きのパーソナルコンピュータであって良く、それにはいわゆる家計管理ソフトが導入されているものとする。POSシステム102から転送される品目情報と価格情報と説明情報とのデータフォーマットは予め定められたものである。
【0048】 従って、このデータフォーマットのデータから家計管理ソフトが必要とする形式のデータを生成することは容易であり、この生成した該データを家計管理ソフトに取り込ませることで、顧客は当日の買い物に関する情報を自己のパソコンに入力する手間が省け、簡便に家計管理ソフトによる家計管理をすることが可能になる。
【0049】 また、本発明において、POSシステム102から送られてくる説明情報の中に、該説明情報に対応する品目が冷蔵庫、もしくは冷凍庫に保存されるべきものであることが明示されていることとしても良い。この場合は、通信端末103iが、自宅の冷蔵庫/冷凍庫に保存されている食品のリスト、冷蔵/冷凍食品リストを保持しており、POSシステム102から品目情報と説明情報と価格情報とが送られてきた段階で、上記冷蔵/冷凍食品リストに、上記説明情報内の、冷蔵庫、もしくは冷凍庫に保存されるべきであることを示す情報に応じて、上記品目情報と説明情報を追加する処理をさせ、リスト表示させたときにこれがわかるようにして顧客に明示的に知らせるようにする。
【0050】 これによって、冷蔵庫/冷凍庫に保存されると予測される食品について、顧客がその情報を自己の通信端末に入力する手間を省くことができるばかりでなく、冷蔵/冷凍保存の要のある食品の情報を自動的かつ確実に知らしめることができるようになる。勿論、顧客が、消費した食品については、該冷蔵/冷凍食品リストを一旦表示させ、該リストから消去することにすれば、冷蔵庫/冷凍庫内に実際に保存されている食品と、冷蔵/冷凍食品リストの間の一貫性をとることが容易となる。データの削除は、データの入力に比べれば、顧客にとってははるかに容易である。
【0051】 ここで前記通信端末103iが、バーコードリーダ等の品目情報読取装置を備えていて、商品に添付されているバーコード情報を検出し、その情報を取り込んでバーコード情報を元にしたデータ削除管理ができるアプリケーション・ソフトウェア構成を有すると共に、前記説明情報が品目に対応するバーコードを含んでいる構成とすることもできる。
【0052】 そして、このように、バーコードリーダ等の品目情報読取装置を備えている場合は、冷蔵庫/冷凍庫から取り出して使用した食品の包装に印刷されているバーコードを、当該品目情報読取装置にて読み取らせ、通信端末103iにその読み取り情報を取り込ませることで、該読み取られたバーコードに対応する品目情報の対応項目を、冷蔵庫内食品情報から削除するようにすれば、使用した食品の情報削除も容易に行えるシステムとなる。これによって、冷蔵庫から取り出して使用した食品に関する情報の削除する場合に必要な、冷蔵/冷凍食品リストの中から適切な項目を探す手間まで省くことができる。」
そして、上記「パーソナルコンピュータ」が、各種データを記憶する「メモリ」を備えていることは、当業者にとって技術常識である。
また、段落【0049】〜【0052】の記載、図4の記載等からみて、説明情報である「バーコード」と品目情報である「品目(品名)」間の相関のデータが、「冷蔵/冷凍食品リスト」である『冷蔵庫内食品情報』に記憶されていることがわかる。
また、段落【0049】の後半の記載からみて、「買い上げ商品のメール化された電子情報の入力に応答して、購入された冷蔵/冷凍食品(の説明情報と品目情報)を前記『冷蔵庫内食品情報』に追加する」処理(いわゆる、コンピュータにおけるデータの更新処理)がなされることがわかる。
以上の記載、及び、図1〜4の記載等からみて、
刊行物1には、
「冷蔵/冷凍食品のための在庫管理コンピュータ・システムであって、冷蔵/冷凍食品のバーコードにもとづく『冷蔵庫内食品情報』および新たなバーコード/品目(品名)の対により更新される前記バーコードと冷蔵/冷凍食品の品目間の相関を記憶するメモリと、前記システムへの、バーコードを含む、買い上げ商品のメール化された電子情報の入力に応答して、購入された冷蔵/冷凍食品を前記『冷蔵庫内食品情報』に追加する手段と、前記メール化された電子情報の入力から、前記バーコードと前記品目間の相関を生成する手段と、消費された冷蔵/冷凍食品の前記バーコードの(バーコードリーダ等からの)読み取り情報に応答して、前記『冷蔵庫内食品情報』から前記消費された冷蔵/冷凍食品の情報を消去する手段とを含む、コンピュータ・システム。」、
という発明が記載されているものと認められる。
・刊行物2;
「【0012】 次に、図2を引用しながら、図1の本システムの機能構成を説明する。記憶装置207上には、在庫情報107を含む家計管理用のデータ106、商品情報データ108、警告データ109、買物リストデータ111が格納されている。制御装置209上では、発注/購入処理101、在庫データ更新処理102、在庫データ調査/分析処理103、使用提案処理104、商品購入検討/買物リスト作成処理105が動作する。
【0013】 発注/購入処理101は、オンラインショッピングシステムを利用して商品を購入する際の発注を行うと共に、商品購入時に代金の請求を通知する請求書または代金を徴収したことを通知する領収書のいずれか一方の取引データから家計管理用データ106を作成する。さらに取引データに購入した商品の商品情報がある場合には商品情報データ108を作成する。在庫データ更新処理102は、商品購入時に家計管理用データから在庫情報データ107を作成すると共に、入力装置205からの入力に従い、家庭内における購入商品と同種類の品物についての在庫情報データ107を作成する。さらに在庫管理を行う品物(在庫品)を使用した際、入力装置205から入力された指示に従い、家計管理用データ107の在庫情報107へ、在庫品を使用したことを登録する。また使用提案処理104の指示に従い、在庫情報データ107の更新を行う。在庫情報データ調査/分析処理103は、商品情報データ108に基づいて、在庫情報データ107における在庫品の使用状況等を分析し、在庫品の有効な使用方法について使用提案処理104へ指示したり、在庫不足になりそうな品物の購入を商品購入検討/買物リスト作成処理105へ指示したりする。さらに必要に応じて警告データを作成し、表示装置204へ出力する。使用提案処理104は、使用方法データに基づいて、在庫データ調査/分析処理103から指示された在庫品の有効な使用方法を提案すると共に、不足する品物がある場合は、不足する品物の購入を商品購入検討/買物リスト作成処理105へ指示する。商品購入検討/買物リスト作成処理105は、在庫データ調査/分析処理103や使用提案処理104から指示された商品を購入するために、買い物リストまたは注文書を作成する。またユーザからの指示により商品購入を検討する際、在庫データ調査/分析処理103へ対象商品の在庫等について調査を指示する。」
「【0015】 図4は商品購入時に、家計管理用データ106を作成する場合の処理フローを示す。図1に示す発注/購入処理101で、商品購入時に、代金の請求を通知する請求書または代金を徴収したことを通知する領収書のいずれか一方の取引データがあるかどうかを判定する(ステップ401)。ステップ401の判定の結果、取引データがある場合には、まずサービス提供装置201から通信ネットワーク202を介して、通信装置206を用いて取引データを読み込む(ステップ402)。次に読み取り装置208を用い、携帯可能な記憶媒体に格納されている電子的な領収書を読み込む(ステップ403)。これにより読み込まれた取引データを家計管理用データに変換し、表示する(ステップ404)。さらに取引データに購入した商品の商品情報が含まれているかどうかを判定し(ステップ405)、含まれている場合には商品情報データとして格納する(ステップ406)。次に、在庫データ調査/分析処理103で、家計管理用データ106と商品情報データ108から在庫品の在庫情報データ一覧を作成し、表示する(ステップ407)。更に在庫データ更新処理102で、在庫情報データ一覧上で変更があるかどうかをユーザに対し確認し(ステップ408)、変更がある場合にはユーザからの入力に従い、在庫情報データ107を変更する(ステップ409)。ステップ408の処理は在庫品の項目により異なり、食料品に関する処理フローチャートを図10に示す。」
「【0026】 図13は図5に示す在庫データ分析509の処理を食料品に関して行う場合の処理フローチャートである。まず、ステップ1311で、ユーザからの入力、或いは商品購入検討/買い物リスト作成処理105からの指示に従い、要求内容を決定する(ステップ1311)。要求内容に応じた処理として、主に在庫データ調査/分析処理103が定期的に、或いは商品購入検討/買い物リスト作成処理105からの指示により行う在庫情報データの賞味期限検索や在庫切れ等の在庫チェック、さらに主にユーザからの要求により行う在庫確認調査と商品の底値調査がある。
【0027】 ステップ1312の要求内容が在庫チェックの場合、まず在庫情報データ一覧801の賞味期限データ806を検索し(ステップ1302)、賞味期限切れ、又は賞味期限間近かどうかを判定する(ステップ1303)。ステップ1303の結果、賞味期限切れ、又は賞味期限間近かである場合には、警告データ109に登録する(ステップ1304)。さらに、在庫情報データ一覧801で、ストック品と可能ストック量データテーブル1101の品名1103に登録してある品物の数量804を検索し、在庫切れにならないかどうかをチェックし(ステップ1306)、在庫切れが生じそうな場合には、警告データ109に登録する(ステップ1307)とともに、買い物リストに該当商品、及びストック品と可能ストック量データテーブル1101の可能ストック量から個数を決定し登録する(ステップ1308)。……」
以上の記載、及び、図1〜4、11、13の記載等からみて、
刊行物2には、
「在庫管理を支援するサービス利用側装置のオンラインホームショッピングシステムにおいて、該システムは、ストック品の数量と可能ストック量を比較するチェック手段と、前記比較に応答して、買い物を必要とする商品名1103を示す買い物リストを作成する手段を含む」、
という発明が記載されているものと認められる。
(4)対比
(対比)
そこで、補正発明1と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、
刊行物1に記載された発明の「購入された冷蔵/冷凍食品」は、補正発明1の「購入された製品」に含まれるから、「製品」を「冷蔵/冷凍食品」とする限りにおいて、刊行物1に記載された発明の「(冷蔵庫内)食品情報」、「(冷蔵/冷凍食品の)バーコード」、「消費された(冷蔵/冷凍)食品」は、それぞれ、補正発明1の「現在庫リスト」、「製品コード」、「処分された製品」に相当する。
また、刊行物1に記載された発明の「品目(品名)」、「買い上げ商品のメール化された電子情報」、「(バーコードリーダ等からの)読み取り情報」、「追加する手段」、「消去する手段」は、それぞれ、補正発明1の「銘柄」、「購入品のレシートの電子バージョン」、「電子指示」、「更新手段」、「消去手段」に相当する。
したがって、両者は、
「在庫管理コンピュータ・システムであって、製品コードにもとづく現在庫リストおよび新たな製品コード/銘柄対により更新される前記製品コードと製品銘柄間の相関を記憶するメモリと、前記システムへの、製品コードを含む、購入品のレシートの電子バージョンの入力に応答して、購入された製品を前記現在庫リストに追加する更新手段と、前記レシートの入力から、前記製品コードと前記製品銘柄間の相関を生成する手段と、処分された製品の前記コードの電子指示に応答して、前記現在庫リストから前記処分された製品を消去する消去手段とを含む、コンピュータ・システム」、
で一致し、以下の各点(イ)、(ロ)で相違している。
(相違点)
(イ)補正発明1は、購入された製品の在庫管理であるのに対し、刊行物1に記載された発明は、購入された冷蔵/冷凍食品の在庫管理である点。
(ロ)補正発明1は、「現在庫リストを所定の在庫レベルと比較する比較手段と、前記比較に応答して、前記コード(製品コード)を参照して置換を必要とする在庫品目を示す在庫置換指示を生成する手段とを含む」ものであるのに対し、刊行物1に記載された発明は、この事項を具備しない点。
(5)判断
以下、前記各相違点(イ)、(ロ)について検討する。
(相違点の検討)
・相違点(イ)について;
購入された冷蔵/冷凍食品の在庫管理を、冷蔵/冷凍食品のみに限ることなく、購入される各種さまざまの製品の在庫管理に適用することは、当業者が必要に応じて適宜変更し得る程度の単なる設計事項にすぎないものである。
・相違点(ロ)について;
刊行物2に記載された発明の「サービス利用側装置」、「ストック品の数量」、「可能ストック量」、「チェック手段」、「買い物を必要とする商品名1103を示す買い物リスト」は、それぞれ、補正発明1の「コンピュータ」、「現在庫リスト」、「所定の在庫レベル」、「比較手段」、「置換を必要とする在庫品目を示す在庫置換指示」に相当するから、刊行物2には、
「現在庫リストを所定の在庫レベルと比較する比較手段と、前記比較に応答して、置換を必要とする在庫品目を示す在庫置換指示を生成する手段とを含む、在庫管理コンピュータ・システム」が記載されているといえる。
そして、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用することは、これらの発明が「在庫管理コンピュータ・システム」という同一の技術分野に属する発明であり、しかも、当該適用を妨げる特段の事情もないことから、当業者が容易になし得るものと認められる。
また、上記適用に当たり、「製品コード」を参照して在庫置換指示を生成するようにすることは、刊行物1記載の発明の現在庫リストが製品コードにもとづくものであり、また、製品コードと製品銘柄間の相関がメモリに記憶されるものである以上、当業者が当然に予測し得るものというべきであり、それゆえ、この点は、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の常套手段にすぎないものと認められる。
したがって、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用し、もって、相違点(ロ)における補正発明1のように構成することは、当業者が容易になし得るものである。
(効果について)
そして、補正発明1の構成によってもたらされる効果も、刊行物1及び2に記載された発明から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
(まとめ)
以上のとおりであるから、補正発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
(6)むすび
したがって、本願の請求項2〜13に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかの検討をするまでもなく、上記補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該補正は認められない。
それゆえ、本件補正は、特許法第159条第1項の規定によって準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について
(1)本願発明
平成15年6月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜16に係る発明は、平成14年5月9日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 在庫管理コンピュータ・システムであって、製品コードにもとづく現在庫リストおよび新たな製品コード/銘柄対により更新される前記製品コードと製品銘柄間の相関を記憶するメモリと、前記システムへの、製品コードを含む、購入品のレシートの電子バージョンの入力に応答して、購入された製品を前記現在庫リストに追加する更新手段と、処分された製品の前記コードの電子指示に応答して、前記現在庫リストからそれらの製品を消去する消去手段と、前記現在庫リストを所定の在庫レベルと比較する比較手段と、前記比較に応答して、前記コードを参照して置換を必要とする在庫品目を示す在庫置換指示を生成する手段とを含む、コンピュータ・システム。」
(2)刊行物の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した特開平10-154271号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び、特開平9-265492号公報(以下、「刊行物2」という。)には、上記【2】(3)で既述したとおりの技術的事項が記載されている。
(3)対比・判断
そこで、本願発明1と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、本願発明1は、【2】で検討した補正発明1から【2】(1)の箇所における下線部を付した事項を省くと共に、補正発明1の「前記処分された製品」を、同様の意味である「それらの製品」に置き換えたものである。
そうすると、本願発明1の特定事項を全て含み、さらに他の構成事項を付加したものに相当する補正発明1が、前記【2】(5)に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【4】むすび
以上のとおりであって、本願発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2〜16に係る発明に対する検討をするまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
なお、平成17年2月21日付けの回答書に記載された審判請求人の「補正案」を検討したが、本件審決の結論を覆すような根拠を見い出すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-05 
結審通知日 2005-04-12 
審決日 2005-04-25 
出願番号 特願平11-349776
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 槙原 進  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 清田 栄章
長谷川 一郎
発明の名称 在庫管理コンピュータ・システム及び方法  
復代理人 間山 進也  
代理人 市位 嘉宏  
代理人 坂口 博  

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