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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G03G 審判 全部申し立て 発明同一 G03G |
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管理番号 | 1122835 |
異議申立番号 | 異議2003-72865 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-11-26 |
確定日 | 2005-07-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3409486号「静電荷像現像用キャリア及びその製造方法、並びに画像形成方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3409486号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第3409486号に係る発明は、平成7年1月20日に出願され、平成15年3月20日に特許の設定登録がなされた。 本件特許公報は、平成15年5月26日に発行されたところ、その特許に対して、金子しのより特許異議の申立があり、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月4日に訂正請求がなされた。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求は、本件明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、次のとおりである。 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1に「Znを磁性粒子に対して1.0〜2000ppmの範囲で」とあるのを、「Znを磁性粒子に対して550〜2000ppmの範囲で」と訂正する。 訂正事項b 明細書の段落番号【0009】中に記載された、「かつ、Cu及びZnを磁性粒子に対して1.0〜2000ppmの範囲で含有するものである。」との記載を、「かつ、Cuを磁性粒子に対して1.0〜2000ppmの範囲で、Znを磁性粒子に対して550〜2000ppmの範囲で含有するものである。」と訂正する。 訂正事項c 明細書の段落番号【0017】の末尾に、「また、Znを磁性粒子に対して550〜2000ppmの範囲で配合する。2000ppmを越えると帯電量の減衰が大きくなる。」との記載を加える。 2 新規事項追加の有無、訂正の目的の適否、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 (1) 訂正事項aは、本件の願書に添付された明細書の実施例において用いられている芯材粒子のZnの含有量が「550ppm」及び「1480」であることに基づき、特許請求の範囲請求項1において規定されていたZnの含有量の下限「0.1ppm〜」を、「550ppm〜」に狭めるものである。 よって、訂正事項aは、願書に添付された明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。 (2) 訂正事項b及びcは、訂正事項aによる特許請求の範囲の減縮に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載と間に生じた不整合を正すものである。 よって、訂正事項b及びcは、願書に添付された明細書に記載した事項の範囲内の訂正であて、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 3 訂正の適否の結論 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 前項に示したように本件訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という)及び請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という)は、上記訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 芯材粒子を樹脂で被覆してなる樹脂被覆型キャリアにおいて、前記芯材粒子が、下記式(1)で表されるフェライト成分100重量部に対し、周期律表のIIIB族,Si,Sn及びVB族に属する元素1種以上の酸化物を総量で0.01〜10重量部添加した組成物を造粒焼結してなる磁性粒子であることを特徴とする静電荷像現像用キャリア。 (MO)100-x(Fe2O3 )x (1) (式中、MはLi,Mg,Ca及びMnからなる群から選ばれる1種以上の金属で、かつ、Cuを磁性粒子に対して1.0〜2000ppmの範囲で、Znを磁性粒子に対して550〜2000ppmの範囲で含有するものである。xは45〜95モル%を表す。) 【請求項2】 芯材粒子を樹脂で被覆する樹脂被覆型キャリアの製造方法において、請求項1記載の式(1)で表されるフェライト成分100重量部に対し、周期律表のIIIB族,Si,Sn及びVB族に属する元素1種以上の酸化物を総量で0.01〜10重量部添加し、造粒した後、1100〜1500℃で焼結して磁性芯材粒子を形成することを特徴とする静電荷像現像用キャリアの製造方法。」 2 申立ての理由の概要 特許異議申立人は、下記の甲第1号証ないし甲第4号証を提出して、 (1)訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいてその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する発明に該当する、及び、 (2)訂正前の請求項1及び2に係る発明は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願平6-162897号出願の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者が該明細書に記載された発明をした者であるとも、またこの出願の時において、その出願人がその出願前の出願に係る上記特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2第1項に規定する発明に該当する、 として、請求項1、2の発明に係る特許は、拒絶しなければならない特許出願に対して特許されたものであるからその特許を取り消すべき旨主張する。 なお、当審における取消理由通知の趣旨もほぼ同旨のものである。 記 甲第1号証:特開昭62-297857号公報 甲第2号証:電子材料工業会内部資料「ソフトフェライト用原料の現状」( 昭和61年10月) 甲第3号証:特開平6-75411号公報 甲第4号証:特願平6-162897号出願の願書に最初に添付された明細 書(特開平8-6302号公報をもって代える。) 3 甲号各証に記載された発明 (1) 甲第1号証 (1a)「(1)モル比で、Li2O 2〜15%、MnO 3〜50%、およびFe2O3 55〜95%からなり、平均粒径が10〜500μmの球状粒子からなることを特徴とする電子写真用フェライトキャリア。」(特許請求の範囲第1項) (1b)「すなわち、本発明においては、Li2O 2〜15%,MnO 3〜50,Fe2O3 55〜95%の基本組成を、そのまま焼結、または焼結促進剤としてV2O5などの低融点の金属酸化物を、または金属酸化物となり得る金属塩類を、1.0重量%以下の少量含有させることによって、電気抵抗を102〜1010Ω・cm.飽和磁化を55〜75emu/g,保滋力を1〜50Oe、透磁率を2〜7の範囲にそれぞれ保持することができるものである。」(第2頁右下欄第3〜11行) (1c)「本発明において、焼結促進剤としては、例えば、V2O5,As2O3,Bi2O3,Sb2O3,PbO2,CuO,B2O3,SiO2,CaOやCs,Nbなどの希土類化合物が適用されるがこの他にも、例えば、Li2CO3,CuSO4,CuCl2,CaCO3等の加熱により金属酸化物となり得る金属化合物も適用できる。」(第2頁右下欄第14〜20行) と記載され、 (1d)実施例として、Li2O、MnO、Fe2O3及び必要添加物を、ボールミルで混合し、得られた混合粉を800〜1000℃で仮焼後粉砕し、ポリビニルアルコール水溶液を用いて造粒し、造粒粉を1250℃で焼成して平均粒子径70μmのフェライト粒子を得たこと(第3頁左下欄第7行〜右下欄第4行) が記載されている。 (2) 甲第2号証 A〜Eの5社から市販されている酸化鉄の代表的な不純物と含有量を示す表が示されており、各不純物のうち、Cu及びZnについては、 「 A社品 B社品 C社品 D社品 E社品 CuO ( 10) 20〜30 T 30〜50 80〜100 ZnO (150) T T 20〜40 20〜40 ( ):参考値,T:Trace 」 と記載されている。 (3) 甲第3号証 (3a)「【請求項1】樹脂により被覆された磁性核体粒子よりなる静電荷像現像用キャリアにおいて、被覆樹脂がキャリアに対して1重量%以上であり、かつセル中にて5kg/cm2の圧力下に5分間加圧した後の500ミクロンの網目通過重量率が、95%以上であることを特徴とする静電荷像現像用キャリア。」(特許請求の範囲)に関し、 (3b)「本発明における磁性核体粒子としては、通常のフェライト、マグネタイト粉のほか、酸化鉄粉または、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、マンガン、クロム、希土類等の金属、それら金属を含む合金をあげることができる。」(段落【0013】) (3c)「実施例1 (キャリアの製造)平均粒径80μmのフェライト粒(パウダーテック社製;飽和磁化62emu/g)1000gに対し、下記の組成物18gを1リットルの小刑ニ-ダ-に入れ、5分間混合し、熱媒温度を200℃に設定して40分間撹枠混練した後、ヒーターを切り、攪拌しながら50分間冷却した。その後、106ミクロンの篩で篩分を行ってキャリアを得た。 ポリフッ化ビニリデン 1.0重量部 (KYNAR7201、ペンウオルト社製) メチルフェニルシリコーン 0.8重量部 (東レダウコーニングシリコーン社製) (キャリアの凝集性評価)この樹脂被覆されたフェライト粒子を図1に示すセル中にて5kg/cm2の圧力下に5分間加圧した後、凝集物の500ミクロンの網目通過重量を測定し、樹脂被覆されたフェライト粒子の500ミクロンの網目通過重量率を算出したところ、97.5%であった。」(段落【0019】) と記載されている。 (4) 甲第4号証 (4a)「【請求項1】下記式(I)で示されるフェライト成分 式(I) (Fe2O3)x(MO)1-x(式中、MはLi,Mn,Mg,Ca,Al,Si及びSrからなるグループから選ばれる一種または二種以上の金属元素を表わし、xは重量分率を表わし、0.2≦x≦0.95である。) 100重量部に対してBi2O3を0.05〜5重量部含有する磁性キャリア芯材表面を、架橋性シリコーン樹脂または/およびフッ素含有樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真用キャリア。」(特許請求の範囲)に関し、 (4b)「(キャリア芯材の製造例1〜3)Li2O 20部,CaO 5部,Fe2O3 75部にBi2O3を0部,2部,6部加え、それぞれ微粒化した後、水を添加混合し造粒した後、1100℃にて焼成し表1に示すような粒度調整をした後、平均粒径35.7μm,35.1μm,36.8μmのフェライトキャリア芯材(飽和磁化65Am2/kg)A,B,Cを得た。」(【0105】) (4c)「(キャリア芯材の製造例4)MgO 25部,MnO 5部,Fe2O3 70部にBi2O3 3部を使用する以外は製造例1と同様にして、フェライトキャリア芯材(飽和磁化60Am2/kg)Dを得た。」(【0106】) (4d)「(キャリア芯材の製造例5)Li2O 20部,Al2O3 15部,Fe2O3 65部,Bi2O3 1.5部を使用する以外は製造例1と同様にして、フェライトキャリア芯材(飽和磁化48Am2/kg)Eを得た。」(【0107】) (4e)「(キャリア芯材の製造例6)CaO 3部,SrO 27部,Fe2O3 70部,Bi2O3 1部を使用して製造例1同様、平均粒径39.2μmのキャリア芯材(飽和磁化55Am2/kg)Fを得た。」(【0108】) (4f)「(キャリア芯材の製造例7)MgO 20部,SiO2 3部,Fe2O3 77部,Bi2O3 2部を使用して製造例1同様、平均短径28.7μmのキャリア芯材(飽和磁化65Am2/kg)Gを得た。」(【0109】と記載され、 (4g)そのようにして得られたキャリア芯材に、樹脂コートして電子写真用キャリアを製造したこと(【0110】〜【0119】) が記載されている。 4 判断 (1) 特許法第29条第2項違反について ア 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、 「下記式(1)で表されるフェライト成分100重量部に対し、周期律表のIIIB族,Si,Sn及びVB族に属する元素1種以上の酸化物を総量で0.01〜10重量部添加した組成物を造粒焼結してなる磁性粒子であることを特徴とする静電荷像現像用キャリア。 (MO)100-x(Fe2O3)x (1) (式中、MはLi,Mg,Ca及びMnからなる群から選ばれる1種以上の金属であり、xは45〜95モル%を表す。)」である点で一致し、以下の点において相違する。 相違点1: 本件発明1では、芯材粒子が、Cuを磁性粒子に対して1.0〜2000ppmの範囲で、Znを磁性粒子に対して550〜2000ppmの範囲で含有するものであることを規定しているのに対して、刊行物1のものはCu及びZnを含有すること及びその含有量について記載していない点、及び、相違点2 本件発明1が、該静電荷像現像用キャリアは、芯材粒子を樹脂で被覆してなる樹脂被覆型キャリアであることを規定しているのに対して、刊行物1のものは、樹脂被覆型であることを特に記載していない点、 (イ) 相違点について 相違点1について検討する。 上記甲第2号証によれば、大部分の市販の酸化鉄(Fe2O3)には、Znが不純物として含有されるものであるが、該号証には、不純物のZnの量としては、最大でも150ppmしか示されていない。 本件発明1では、Cuと共に磁性粒子に対して添加するZnの含有量の最小値を550ppmとしており、これは、甲第2号証に記載された不純物としてのZn含有量をもってしては、到底、到達できない範囲の含有量である。 また、甲第3号証には、磁性粒子を作成する際に酸化鉄に対して、Znを積極的に添加すべきことは記載されていない。 (ウ) まとめ したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。 イ 本件発明2について 甲第1号証bには、フェライトキャリアを製造するのに必要な原料酸化物を混合し、造粒したのち、1250℃で焼成して磁性粒子とすることが記載されているから、本件発明2と刊行物1に記載された発明との相違点は、前項「ア 本件発明1について」に記載したと同じである。 したがって、本件発明2も、前項に記載したと同様の理由により、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2) 特許法第29条の2第1項違反について 本件発明1及び2と、甲第4号証に記載された発明とを対比すると、以下の点で相違している。 相違点 本件発明1及び2では、芯材粒子が、Cuを磁性粒子に対して1.0〜2000ppmの範囲で、Znを磁性粒子に対して550〜2000ppmの範囲で含有するものであることを規定しているのに対して、甲第4号証には、Cu及びZnを含有すること及びその含有量について記載されていない点。 相違点について検討するに、甲第2号証に示されるように、市販の酸化鉄磁性粒子のZnの含有量が、高々150ppmであることからすれば、それを使用して製造された甲第4号証に記載の芯材粒子においても、550ppm以上というZn濃度を示すことはあり得ない。 したがって、本件発明1及び2が、甲第4号証に記載された発明であるとすることはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 静電荷像現像用キャリア及びその製造方法、並びに画像形成方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】芯材粒子を樹脂で被覆してなる樹脂被覆型キャリアにおいて、前記芯材粒子が、下記式(1)で表されるフェライト成分100重量部に対し、周期律表のIIIB族,Si,Sn及びVB族に属する元素1種以上の酸化物を総量で0.01〜10重量部添加した組成物を造粒焼結してなる磁性粒子であることを特徴とする静電荷像現像用キャリア。 (MO)100-x(Fe2O3)x(1) (式中、MはLi,Mg,Ca及びMnからなる群から選ばれる1種以上の金属で、かつ、Cuを磁性粒子に対して1.0〜2000ppmの範囲で、Znを磁性粒子に対して550〜2000ppmの範囲で含有するものである。xは45〜95モル%を表す。) 【請求項2】芯材粒子を樹脂で被覆する樹脂被覆型キャリアの製造方法において、請求項1記載の式(1)で表されるフェライト成分100重量部に対し、周期律表のIIIB族,Si,Sn及びVB族に属する元素1種以上の酸化物を総量で0.01〜10重量部添加し、造粒した後、1100〜1500℃で焼結して磁性芯材粒子を形成することを特徴とする静電荷像現像用キャリアの製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、電子写真法、静電記録法等により形成される静電荷像を二成分現像剤で現像するときに用いる静電荷像現像用キャリア及びその製造方法、並びに、前記静電荷像現像用キャリアを用いた画像形成方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 電子写真法など静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法では、帯電、露光工程で感光体上に静電潜像を形成し、トナーを含む現像剤で静電潜像を現像し、転写、定着工程を経て可視化される。ここで用いる現像剤は、トナーとキャリアからなる二成分現像剤と、磁性トナーなどのように単独で用いる一成分現像剤があるが、二成分現像剤は、キャリアが現像剤の攪拌、搬送、帯電などの機能を分担し、現像剤として機能分離がなされているため、制御性がよいなどの理由で現在広く用いられている。 【0003】 特に、樹脂被覆キャリアを用いる現像剤は、帯電制御性が優れ、環境依存性並びに経時安定性の改善が比較的容易である。芯材粒子としては、軽量でかつ流動性が良く、磁気特性の制御性に優れたフェライト粒子が多く用いられている。また、現像方法としては、古くはカスケード法などが用いられてきたが、現在は現像剤搬送担体として磁気ロールを用いる磁気ブラシ法が主流である。 【0004】 また、近年は感光体上に静電潜像を形成する過程において、小径レーザービーム等を用いて感光体に露光する技術が発達し、静電潜像が細密化してきている。これに伴い、静電潜像に対して忠実に現像を行い、より高画質出力を得るために、トナー粒子及びキャリア粒子をともに小径化する傾向がある。なお、有機感光体にレーザーで潜像を書き込み、反転現像を行う場合は、キャリア粒子の極性を正極性とし、トナー粒子の極性を負極性とすることが一般的である。 【0005】 一方、二成分現像剤を用いる磁気ブラシ法には、現像剤の帯電劣化による画像濃度の低下、著しい背景部汚れの発生、及び、画像濃度ムラの発生などの問題がある。現像剤の帯電劣化は、キャリアコート層へのトナー成分の固着又はコートの剥がれなどにより発生し易い。また、二成分現像剤には、現像剤使用初期段階において、現像機内での混合に伴い、帯電量が上昇するいわゆるチャージアップという現象が発生することがある。チャージアップが発生すると、キャリアが背景部に付着して画像荒れを生じやすい。 【0006】 さらに、二成分現像剤を用いる多色重合わせ像を形成する方法においては、各色現像剤の帯電量の変動が各色トナーの現像量の変動を生じさせるため、帯電量の変動が多色重ね合わせ像の発色を出力毎に変化させ不安定なものにするという問題がある。 【0007】 このような二成分現像剤の摩擦帯電特性に係わる諸問題の改善は、従来、被覆用樹脂を中心になされてきた。一方、前記摩擦帯電特性は、キャリアの帯電進入深さの存在に起因すると思われ、芯材自体の摩擦帯電特性の寄与が時間の経過に伴って増大する現象は、キャリアの帯電性を不安定にする重要な因子と考えられるが、これに対する具体的な提案は乏しく、芯材の摩擦帯電特性についての改善の余地は大きい。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 そこで、本発明は、上記の問題点を解消し、以下の特徴を備えた静電荷像現像用キャリア及びその製造方法、並びに、多色重ね合わせ画像の形成方法を提供しようとするものである。 ■負帯電トナーの高帯電維持性を示し、現像特性を安定させること。 ■キャリア付着や濃度ムラを防止し、優れた画質を提供できること。 ■多色像について、出力毎の発色安定性に優れていること。 【0009】 【課題を解決するための手段】 本発明は、下記の構成を採用することにより、上記の課題を解決することに成功した。 (1)芯材粒子を樹脂で被覆してなる樹脂被覆型キャリアにおいて、前記芯材粒子が、下記式(1)で表されるフェライト成分100重量部に対し、周期律表のIIIB族,Si,Sn及びVB族に属する元素1種以上の酸化物を総量で0.01〜10重量部添加した組成物を造粒焼結してなる磁性粒子であることを特徴とする静電荷像現像用キャリア。 (MO)100-x(Fe2O3)x(1) (式中、MはLi,Mg,Ca及びMnからなる群から選ばれる1種以上の金属で、かつ、Cuを磁性粒子に対して1.0〜2000ppmの範囲で、Znを磁性粒子に対して550〜2000ppmの範囲で含有するものである。xは45〜95モル%を表す。) 【0010】 (2)芯材粒子を樹脂で被覆する樹脂被覆型キャリアの製造方法において、上記式(1)で表されるフェライト成分100重量部に対し、周期律表のIIIB族,Si,Sn及びVB族に属する元素1種以上の酸化物を総量で0.01〜10重量部添加し、造粒した後、1100〜1500℃で焼結して磁性芯材粒子を形成することを特徴とする静電荷像現像用キャリアの製造方法。 【0011】 【0012】 【作用】 従来、式(MO)100-x(Fe2O3)xの一般式で表されるソフトフェライトは、MO酸化物がCu,Zn等の遷移金属の酸化物を主たる成分としており、電子供与性の物質を含むn型半導体とみなすことができる。したがって、ソフトフェライトは、摩擦帯電しても正帯電しやすいと考えられるが、樹脂を施さずにこれらをキャリアとして使用すると、実際は、トナーと混合する初期に正方向に帯電量が上昇するが、時間の経過とともに帯電量が大きく減衰するものが大半である。 【0013】 樹脂被覆を施しても、キャリアの上記帯電量の上昇減衰の傾向は変わらず、キャリアの帯電性を不安定にする大きな要因となっている。このような芯材のキャリア帯電性に及ぼす悪影響は、樹脂膜厚が薄い場合やキャリア表面に部分的に芯材が露出している場合に限らず、樹脂膜厚が1ミクロン以上あり、均一に完全被覆された場合においても発現する。 【0014】 上記の欠点を克服するために、本発明者等は鋭意検討した結果、芯材粒子中にフェライト成分として含有される金属元素の種類及びその量の制御が重要であることが判明した。即ち、フェライト成分として含有される金属元素としては、一定値以下の電気陰性度を有する金属を主成分として用い、かつ、一定値以上の電気陰性度を有する金属を微量含有させることにより、電子供与性に優れ、良好な正帯電性を得ることができた。 【0015】 ここで、一定値以下の電気陰性度とは、Paulingの電気陰性度で1.5以下のものを言う。該当するフェライト化可能な金属は、Li,Mg,Ca,Mnである。また、一定値以上の電気陰性度とは、Paulingの電気陰性度で1.5を越えるものを言う。該当するフェライト化可能な金属は、Cu及びZnである。 【0016】 従来のフェライト成分として用いられてきたCuやZn(特開平1-163758号公報及び特開平6-110253号公報参照)は、主成分として用いると、キャリアの正帯電維持性が特に阻害される。この理由は必ずしも明らかでないが、CuやZnは電気陰性度が比較的高く(Paulingの電気陰性度でCu=1.9、Zn=1.6)、原子容(アボガドロ数個の原子からなる単体の容積)が比較的低い、即ち原子密度が高いことがなどが重なり、電子を受容し易くなっているものと考えられる。 【0017】 一方、CuやZnを全く含有しない場合は、帯電量の立ち上がりが遅いことが判明した。本発明者等が検討した結果、Cuは磁性粒子に対して1.0〜2000ppm、好ましくは10〜1500ppmの範囲で配合することが適していることを見いだした。2000ppmを越えると帯電量の減衰が大きくなり、1.0ppmを下回ると、帯電立ち上がり速度が遅くなるので好ましくない。また、Znを磁性粒子に対して550〜2000ppmの範囲で配合する。2000ppmを越えると帯電量の減衰が大きくなる。 【0018】 Cu及びZnの含有量は以下の方法により測定される。サンプルを熱濃硝酸(16N)に加え、1時間程度放置した後冷却し、過酸化水素水を加えた後加熱冷却する。さらに、これに濃塩酸を加え、再び加熱冷却する。これをろ過した後、原子吸光光度法でCu及びZn量を測定する。 【0019】 フェライト成分のうち、Li,Mg,Ca及びMnの群から選ばれる1種以上の酸化物と、Fe2O3との比率はモル%で5:95〜55:45、好ましくは35:65〜55:45の範囲にあるのが適している。上記比率が範囲を外れると、フェライト未反応物質が析出して磁化率を不足させるおそれがある。 【0020】 芯材用のフェライト粒子は、フェライト成分として上記条件を満たすとともに、粒子表面の結晶成長度や凹凸の制御又は粒子密度の制御のために他の金属酸化物を少量添加することが望ましい。他の金属酸化物とは、周期律表のIIIB族,Si,Sn及びVB族に属する元素1種以上の酸化物、例えば、Al2O3,SiO2,SnO2及びBi2O5などを挙げることができる。フェライト組成物以外の金属酸化物添加量は、フェライト成分100重量部に対し、総量で0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5部の範囲にあることが好ましい。上記添加量が0.01重量部を下回ると、結晶成長が低くなり易く、芯材内部の空隙率が高くなり、被覆樹脂がしみ込み易く、被覆し難くなり、かつ高温焼成が必要になる。他方、10重量部を越えると、組成の均一性が失われ、フェライト組成物以外の酸化物の生成や、酸化物とヘマタイトとの反応による非磁性体又は弱磁性体の生成物が生じ易くなり、結果として、感光体へのキャリア付着が発生するといった欠点を生ずる。 【0021】 フェライト粒子の製造方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、粉砕されたフェライト組成物をバインダー、水、分散剤、有機溶剤等を混合し、スプレードライヤー法や流動造粒法を用いて粒子を形成した後、ロータリーキルンや回分式焼成炉で1100〜1500℃、好ましくは1200〜1400℃の範囲の温度で焼成し、次いで、篩分分級して粒度分布を制御してキャリア用の芯材粒子とする方法を挙げることができる。また、焼成段階における酸素分圧を制御したり、焼成後の粒子表面に酸化・還元処理を追加するなどして、芯材粒子の体積固有抵抗を105〜1011Ωの範囲に制御することが好ましい。 【0022】 上記の芯材粒子は樹脂が被覆され、キャリアとして使用される。使用する被覆樹脂としては、フッ化ビニリデン、テトラクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、モノクロロトリフロロエチレン、モノクロロエチレン、トリクロロエチレンなどのビニル系フッ素含有モノマーの共重合体;スチレン、クロルスチレン、メチルスチレン等のスチレン類;メチルメタクリレート、メチルアクリレート、プロピルアクリレート、ラウリルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート等のα-メチレン脂肪族モノカルボン酸類;ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの含窒素アクリル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルエーテル類;ビニルケトン類:エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;メチルシリコン、メチルフェニルシリコン等のシリコン類などの単独重合体、又は共重合体を使用することができる。また、ビスフェノール、グリコール等を含むポリエステル類も使用することができる。また、上記の樹脂類を2種以上混合して被覆樹脂とすることもできる。 【0023】 上記の被覆樹脂のうち、被覆の容易さ、被膜の強さなどから、ビニル系フッ素含有モノマーの共重合体、スチレン類、αメチレン脂肪族モノカルボン酸類、シリコーン類などが好適であり、さらに、シリコーン類を除いた上記の樹脂とスチレン類又はαメチレン脂肪族モノカルボン酸類との共重合体がより好適である。 【0024】 被覆樹脂の配合量は、キャリアに対して総量で0.1〜5.0重量%、好ましくは0.3〜3.0重量%の範囲が、画質維持性、2次障害の回避及び帯電性の確保を同時に満たすのに適当である。 【0025】 本発明の芯材粒子への樹脂の被覆には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサー、プラネタリーミキサーなどを使用することができる。 【0026】 本発明で使用するフェライト芯材粒子は、絶縁性磁気ブラシ現像法に用いるために、ほぼ球形の形状を有し、通常平均粒径が20〜120μmの範囲のものを使用することが好ましい。導電性磁気ブラシ現像法に用いるときには、不定形の形状をのものを使用してもよい。 【0027】 本発明のキャリアは、トナーと混合して二成分現像剤として用いられる。トナーは結着樹脂中に着色剤等を分散させたものであり、トナーに使用する結着樹脂としては、スチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等のα-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;(メタ)アクリロニトリル等のビニルニトリル類;2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類:エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素類及びそのハロゲン化物、クロロプレン等のハロゲン系不飽和炭化水素類などの単量体による重合体、又は、これらの単量体を2種以上組み合わせて得られる共重合体、さらには、これらの混合物、また、ロジン変性フェノールホルマリン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、又は、これらと上記のビニル系樹脂との混合物を挙げることができる。 【0028】 上記トナーに用いる着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、メチレンブルー、ローズベンガル、フタロシアニンブルー又はそれらの混合物を挙げることができる。 【0029】 着色剤以外のトナー成分としては、荷電制御剤、オフセット防止剤、流動性向上剤などがあり、必要に応じて磁性体微粉末を含有してもよい。トナーの粒径は、高画質化のために小径の方が好ましく、3〜15ミクロン程度、好ましくは3〜10ミクロンの平均粒径を有するトナーが良好である。 【0030】 【実施例】 以下、本発明を実施例により説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。なお、実施例において「部」は重量部を意味する。 (芯材粒子Aの製造) フェライト成分(Fe2O3:54.8モル%、MgO:24.5モル%、CaO:20.6モル%、CuO:0.04モル%、ZnO:0.06モル%) 100部 SiO2 1.2部 上記組成に配合したフェライト原材料の酸化物をボールミルで湿式混合し、乾燥・粉砕した後、850℃で1時間仮焼し、クラッシャー0.1〜1.5mm程度に粉砕した。さらに、ボールミルで湿式粉砕してスラリー化し、バインダーとしてポリビニルアルコールを0.8%加え、スプレードライヤー法で球状粒子に造粒し、1280℃で焼成し、分級して平均粒径48ミクロンの芯材粒子を得た。芯材粒子中のCu及びZnを定量したところ、それぞれ320ppmと550ppmであった。なお、焼成工程後に前記組成となる塩をフェライト原材料として用いても同じ結果が得られた。 【0031】 (芯材粒子Bの製造) フェライト成分(Fe2O3:53.2モル%、MgO:17.5モル%、CaO:14.2モル%、MnO14.8モル%、CuO:0.01モル%、ZnO:0.29モル%) 100部 Bi2O5 2.8部 上記組成に配合したフェライト原材料を用い、芯材粒子Aの製造における焼成温度を1320℃に変更し、かつ、篩を変えて平均粒径60ミクロンの芯材粒子を得た。芯材粒子中のCu及びZnを定量したところ、それぞれ60ppmと1480ppmであった。なお、焼成工程後に前記組成となる塩をフェライト原材料として用いても同じ結果が得られた。 【0032】 (芯材粒子Cの製造) フェライト成分(Fe2O3:48.2モル%、MgO:23.7モル%、MnO:28.1モル%) 100部 (他の金属酸化物の添加なし) 上記組成に配合したフェライト原材料を用い、芯材粒子Aの製造における仮焼温度を800℃に、焼成温度を1290℃に変更し、かつ、篩を変えて平均粒径85ミクロンの芯材粒子を得た。芯材粒子中のCu及びZnを定量したところ、それぞれ0.15ppmと0.38ppmであった。なお、焼成工程後に前記組成となる塩をフェライト原材料として用いても同じ結果が得られた。 【0033】 (芯材粒子Dの製造) フェライト成分(Fe2O3:56.4モル%、CuO:5.0モル%、ZnO:38.6モル%) 100部 SiO2 2.2部 上記組成に配合したフェライト原材料を用い、芯材粒子Aの製造における仮焼温度を860℃に、焼成温度を1280℃に変更し、かつ、篩を変えて平均粒径52ミクロンの芯材粒子を得た。芯材粒子中のCu及びZnを定量したところ、それぞれ53300ppmと269000ppmであった。なお、焼成工程後に前記組成となる塩をフェライト原材料として用いても同じ結果が得られた。 【0034】 (芯材粒子Eの製造) フェライト成分(Fe2O3:54.80モル%、MgO:24.49モル%、CaO:20.70モル%、ZnO:0.01モル%) 100部 CuO 0.8部 上記組成に配合したフェライト原材料を用い、芯材粒子Aの製造における仮焼温度を850℃に、焼成温度を1280℃に変更し、かつ、篩を変えて平均粒径50ミクロンの芯材粒子を得た。芯材粒子中のCu及びZnを定量したところ、それぞれ2310ppmと46ppmであった。なお、焼成工程後に前記組成となる塩をフェライト原材料として用いても同じ結果が得られた。 【0035】 (キャリア1の製造) トルエンとメチルエチルケトン(4:1)混合溶剤 1000部 スチレン・メチルメタクリレート共重合体(2:8,Mw=8万) 50部 メチルメタクリレート・パーフルオロオクチルエチルメタクリレート共重合体(75:25,Mw=2万) 50部 上記成分を混合して被覆用液体を調製した。次いで、芯材粒子Aに対し、被覆樹脂固形分が0.4wt%となるように溶液の配合を調整し、減圧ニーダーで攪拌混合しながら減圧乾燥して溶剤を除去し、目開き105μmの篩で篩分して樹脂被覆型キャリア1を得た。 【0036】 (キャリア2の製造) トルエン 1000部 スチレン・メチルメタクリレート・ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体(25:70:5,Mw=12万) 100部 上記成分を混合して被覆用液体を調製した。次いで、芯材粒子Bに対し、被覆樹脂固形分が1.8wt%となるように溶液の配合を調整し、減圧ニーダーで攪拌混合しながら減圧乾燥して溶剤を除去し、目開き105μmの篩で篩分して樹脂被覆型キャリア2を得た。 【0037】 (キャリア3の製造) トルエン 1000部 メチルシリコーン 100部 上記成分を混合して被覆用液体を調製した。次いで、芯材粒子Aに対し、被覆樹脂固形分が1.0wt%となるように溶液の配合を調整し、減圧ニーダーで攪拌混合しながら減圧乾燥して溶剤を除去し、目開き105μmの篩で篩分して樹脂被覆型キャリア3を得た。 【0038】 (キャリア4の製造) トルエン 1000部 メチルシリコーン 100部 上記成分を混合して被覆用液体を調製した。次いで、芯材粒子Cに対し、被覆樹脂固形分が1.0wt%となるように溶液の配合を調整し、減圧ニーダーで攪拌混合しながら減圧乾燥して溶剤を除去し、目開き105μmの篩で篩分して樹脂被覆型キャリア4を得た。 【0039】 (キャリア5の製造) トルエンとメチルエチルケトン(4:1)混合溶剤 1000部 スチレン・メチルメタクリレート共重合体(2:8,Mw=8万) 50部 メチルメタクリレート・パーフルオロオクチルエチルメタクリレート共重合体(75:25,Mw=2万) 50部 上記成分を混合して被覆用液体を調製した。次いで、芯材粒子Dに対し、被覆樹脂固形分が0.5wt%となるように溶液の配合を調整し、減圧ニーダーで攪拌混合しながら減圧乾燥して溶剤を除去し、目開き105μmの篩で篩分して樹脂被覆型キャリア5を得た。 【0040】 (キャリア6の製造) トルエンとメチルエチルケトン(4:1)混合溶剤 1000部 スチレン・メチルメタクリレート共重合体(2:8,Mw=8万) 50部 メチルメタクリレート・パーフルオロオクチルエチルメタクリレート共重合体(80:20,Mw=1万5千) 50部 上記成分を混合して被覆用液体を調製した。次いで、芯材粒子Eに対し、被覆樹脂固形分が0.4wt%となるように溶液の配合を調整し、減圧ニーダーで攪拌混合しながら減圧乾燥して溶剤を除去し、目開き105μmの篩で篩分して樹脂被覆型キャリア6を得た。 【0041】 (トナーaの製造) 線状ポリエステル樹脂 100部 (テレフタル酸・ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物・シクロヘキサンジメタノールから得られた線状ポリエステル樹脂:ガラス転移点65℃、数平均分子量4100、重量平均分子量6000、酸価13) カーボンブラック 8部 上記混合物を二軸押出機で溶融混練し、ジェットミルで粉砕した後、風力分級機で分級して平均粒径9.5μmの負帯電性黒色粒子を得た。この黒色粒子に20nm疎水化処理SiO20.9wt%をヘンシェルミキサーで外部添加してトナーaを得た。 【0042】 (トナーbの製造) スチレン・ブチルアクリレート樹脂 100部 カーボンブラック 8部 上記混合物を二軸押出機で溶融混練し、ジェットミルで粉砕した後、風力分級機で分級して平均粒径8.2μmの負帯電性黒色粒子を得た。この黒色粒子に20nm疎水化処理SiO21.3wt%をヘンシェルミキサーで外部添加してトナーbを得た。 【0043】 (トナーcの製造) 線状ポリエステル樹脂 100部 (テレフタル酸・ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物・シクロヘキサンジメタノールから得られた線状ポリエステル樹脂:ガラス転移点65℃、数平均分子量4100、重量平均分子量6000、酸価13) サイアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:1) 4部 上記混合物を二軸押出機で溶融混練し、ジェットミルで粉砕した後、風力分級機で分級して平均粒径9.2μmの負帯電性サイアン粒子を得た。このサイアン粒子に20nm疎水化処理SiO20.8wt%をヘンシェルミキサーで外部添加してトナーcを得た。 【0044】 (トナーdの製造) 線状ポリエステル樹脂(テレフタル酸・ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物・シクロヘキサンジメタノールから得られた線状ポリエステル樹脂:ガラス転移点65℃、数平均分子量4100、重量平均分子量6000、酸価13) 100部 マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122) 4部 上記混合物を二軸押出機で溶融混練し、ジェットミルで粉砕した後、風力分級機で分級して平均粒径9.1μmの負帯電性サイアン粒子を得た。このサイアン粒子に20nm疎水化処理SiO20.8wt%をヘンシェルミキサーで外部添加してトナーdを得た。 【0045】 (トナーeの製造) 線状ポリエステル樹脂(テレフタル酸・ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物・シクロヘキサンジメタノールから得られた線状ポリエステル樹脂:ガラス転移点65℃、数平均分子量4100、重量平均分子量6000、酸価13) 100部 イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー12) 4部 上記混合物を二軸押出機で溶融混練し、ジェットミルで粉砕した後、風力分級機で分級して平均粒径9.2μmの負帯電性サイアン粒子を得た。このサイアン粒子に20nm疎水化処理SiO20.8wt%をヘンシェルミキサーで外部添加してトナーeを得た。 【0046】 〔実施例1〜3、比較例1〜3〕 トナーbをキャリア1〜6と表1のように組み合わせ、トナー濃度6重量%でV型混合機で混合して二成分現像剤を得た。これらの現像剤を富士ゼロックス社製Acolorの黒色現像機に適用して単色画像形成試験を行い、結果を表1に示した。なお、帯電量は東芝社製のブローオフ帯電量測定機TB200で測定した。 【0047】 【表1】 【0048】 キャリア1〜3を使用した本発明の実施例1〜3は、帯電量の変動が少なく、10万枚までの複写テストでソリッド濃度変化もなく、キャリア付着、背景部汚れも認められなかったが、キャリア4〜6を用いた比較例1〜3は、帯電量の変動が大きく、ソリッド濃度が変化し、特に、帯電量の変動が激しい比較例2、3ではキャリア付着や背景部汚れも一部認められた。 【0049】 〔実施例4〕 トナーa,c,d,eをキャリア1と組み合わせ、トナー濃度6重量%でV型混合機で混合し、ブラック、サイアン、マゼンタ、イエローの二成分現像剤を得た。これらの現像剤を富士ゼロックス社製Acolorに適用して連続多色画像形成試験を行ったところ、出力1枚目から500枚目の出力に到るまで発色に変化が認められなかった。 【0050】 〔比較例4〕 トナーa,c,d,eをキャリア4と組み合わせ、トナー濃度6重量%でV型混合機で混合し、ブラック、サイアン、マゼンタ、イエローの二成分現像剤を得た。これらの現像剤を富士ゼロックス社製Acolorに適用して連続多色画像形成試験を行ったところ、出力10枚目以降、重ね合わせ色の発色に著しい変化が出力毎に認められたため、100枚目で試験を中止した。 【0051】 【発明の効果】 本発明は、上記の構成を採用することにより、負帯電トナーを高帯電に安定して維持することができ、ソリッド濃度変化がなく、キャリア付着や濃度ムラを防止でき、優れた画質を提供することができるようになった。また、多色画像においても、出力毎の発色安定性が優れた連続画像形成を可能にした。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-06-21 |
出願番号 | 特願平7-6886 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(G03G)
P 1 651・ 161- YA (G03G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 菅野 芳男 |
特許庁審判長 |
江藤 保子 |
特許庁審判官 |
秋月 美紀子 阿久津 弘 |
登録日 | 2003-03-20 |
登録番号 | 特許第3409486号(P3409486) |
権利者 | 富士ゼロックス株式会社 |
発明の名称 | 静電荷像現像用キャリア及びその製造方法、並びに画像形成方法 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 西元 勝一 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 西元 勝一 |