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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1122850
異議申立番号 異議2003-71404  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-04-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-26 
確定日 2005-07-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3350951号「オレフィン系共重合体」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3350951号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3350951号の請求項1に係る発明は、平成4年3月16日(優先権主張 1991年7月26日 日本国)に特許出願され、平成14年9月20日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、金子しのより、請求項1に係る発明の特許に対し、特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年4月1日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出され、再度、請求項1に係る発明の特許に対し取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年5月27日付けで平成17年4月1日付けの訂正請求書が取り下げられるとともに、同日付けで新たに訂正請求書が提出されたものである。
II.訂正請求について
1.訂正の内容
訂正事項a
請求項1に記載の「エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィンに由来する繰り返し単位とを有する共重合体であって、」を「エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィン(但し、環状オレフィンの定義は明細書段落【0012】に記載のとおりである)に由来する繰り返し単位とを有する共重合体(但し、エチレン以外のα-オレフィンに由来する繰り返し単位及び環状ジエンに由来する繰り返し単位は含まず)であって、」と訂正する。
訂正事項b
明細書段落【0006】に記載されている「エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィンに由来する繰り返し単位とを有する共重合体であって、」を「エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィン(但し、環状オレフィンの定義は明細書段落【0012】に記載のとおりである)に由来する繰り返し単位とを有する共重合体(但し、エチレン以外のα-オレフィンに由来する繰り返し単位及び環状ジエンに由来する繰り返し単位は含まず)であって、」と訂正する。
訂正事項c
明細書段落【0009】〜【0011】を削除する。
訂正事項d
明細書段落【0012】に記載されている「一般式[Y]で示される繰り返し単位を与える環状オレフィンの具体例としては、例えば、ノルボルネン、」を「本発明の環状オレフィンは、ノルボルネン、」と訂正し、
「、5-シアノノルボルネン等を挙げることができる。これらの中では、ノルボルネン又はその誘導体が特に好ましい。」を「、5-シアノノルボルネンである。これらの中では、ノルボルネン又はその誘導体が特に好ましい。」と訂正する。
訂正事項e
明細書段落【0013】に記載されている「これら必須の2成分の他に、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を用いていてもよい。このような任意に共重合されてもよい不飽和単量体として、具体的には、〈1〉エチレン以外のα-オレフィン、〈2〉前記した環状オレフィン成分のうち、先に使用されていないもの、〈3〉ジシクロペンタジエン,ノルボルナジエン等の環状ジエン類、〈4〉ブタジエン,イソプレン,1,5-ヘキサジエン等の鎖状ジエン類、〈5〉シクロペンテン,シクロヘプテン等の単環オレフィン類等が挙げられる。」を
「これら必須の2成分の他に、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を用いていてもよい。
このような任意に共重合されてもよい不飽和単量体は、〈1〉ブタジエン,イソプレン,1,5-ヘキサジエン等の鎖状ジエン類、〈2〉シクロペンテン,シクロヘプテン等の単環オレフィン類である。」と訂正する。(注:原文は○の中に数字が記載された表示であるが、文書作成上〈 〉の中に数字の表示に代える。)
2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項1に記載された共重合体を構成する環状オレフィンについて、環状オレフィンの範囲を明細書段落【0012】の記載に基づいて限定し、また、明細書段落【0013】に記載された任意に共重合されてもよい不飽和単量体成分に基づき、エチレン以外のα-オレフィン及び環状ジエンに由来する繰り返し単位を含まないことを規定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項b〜eは、特許請求の範囲の訂正に伴ない、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項eの「〈2〉前記した環状オレフィン成分のうち、先に使用されていないもの」を削除する訂正は、該〈2〉の記載内容が意味不明瞭であることから、これを削除する訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。(注:原文は○の中に数字が記載された表示であるが、文書作成上〈 〉の中に数字の表示に代える。)
そして、訂正事項a〜eは明細書に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.本件発明
訂正後の請求項1に係る発明は、訂正明細書の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】 エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィン(但し、環状オレフィンの定義は明細書段落【0012】に記載の通りである)に由来する繰り返し単位とを有する共重合体(但し、エチレン以外のα-オレフィンに由来する繰り返し単位及び環状ジエンに由来する繰り返し単位は含まず)であって、
(1)エチレンに由来する繰り返し単位の含有率が80〜99.9モル%、
(2)極限粘度[η]が0.01〜20dl/g、
(3)ガラス転移温度(Tg)が30℃未満、
(4)引張弾性率が2000Kg/cm2未満、であるオレフィン系共重合体の製造方法であって、下記化合物(A)及び(B)又は(A)、(B)及び(C)を主成分とする触媒を用いて、エチレンと環状オレフィンとを共重合することを特徴とするオレフィン系共重合体の製造方法。
(A)チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含む4価の遷移金属化合物
(B)上記化合物(A)と反応してイオン性の錯体を形成する化合物
(C)有機アルミニウム化合物 」
IV.特許異議申立について
1.特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人 金子しのは、甲第1号証(特開昭62-121711号公報)、甲第2号証(特表平1-502036号公報)、甲第3号証(特表平1-501950号公報 )、甲第4号証(欧州特許第427697号明細書(1996))、甲第5号証(欧州特許第426638号明細書(1996))、甲第6号証(欧州特許出願公開第426637号明細書(1991))、参考資料1(特開平3-179005号公報(甲第4号証の優先権基礎出願を基礎とする日本における優先権主張出願の公開公報))、参考資料2(特開平3-207704号公報(甲第5号証の優先権基礎出願を基礎とする日本における優先権主張出願の公開公報))、参考資料3(特開平3-207703号公報(甲第6号証の優先権基礎出願を基礎とする日本における優先権主張出願の公開公報))を提出して、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべき旨主張している。
2.当審の平成17年1月27日付けの取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る発明は、刊行物1(特開昭62-121711号公報:特許異議申立人 金子しの提出した甲第1号証)、刊行物2(特表平1-502036号公報:同 甲第2号証)、刊行物3(特表平1-501950号公報 :同 甲第3号証)、刊行物4(欧州特許出願公開第427697号明細書(1991):特許異議申立人 金子しのは甲第4号証として欧州特許第427697号明細書を提出)、刊行物5(欧州特許出願公開第426638号明細書(1991):特許異議申立人 金子しのは甲第5号証として欧州特許第426638号明細書を提出)、刊行物6(欧州特許出願公開第426637号明細書(1991):同 甲第6号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3.特許異議申立人の主張及び取消理由についての判断
(1)各甲号証(刊行物)の記載事項
甲第1号証(刊行物1)には、以下の事項について記載されている。
「1.エチレン、炭素原子数3〜20のα-オレフィンおよび炭素原子数が5〜20の非共役ポリエンからの低結晶性エチレン系ランダム共重合体であって、
(a)エチレン成分の含有率が50〜95モル%の範囲にあり、α-オレフィン成分の含有率が5〜50モル%の範囲にあり、そして非共役ポリエン成分の含有率がゼロモル%ではなく5モル%以下であり、
(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.5〜10dl/gの範囲にあり、
(c)・・・である
ことを特徴とする低結晶性エチレン系ランダム共重合体。
2.(A)共役π電子を有する基を配位子としたジルコニウムハイドライド化合物、および
(B)アルミノオキサン
から成る触媒の存在下に、エチレン、炭素原子数3〜20のα-オレフィンおよび炭素原子数が5〜20の非共役ポリエンを共重合せしめることを特徴とする、
(a)エチレン成分の含有率が50〜95モル%の範囲にあり、α-オレフィン成分の含有率が5〜50モル%の範囲にあり、そして非共役ポリエン成分の含有率がゼロモル%ではなく5モル%以下であり、
(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.5〜10dl/gの範囲にあり、
(c)・・・
(g)沸騰酢酸メチル可溶部が2.0重量%以下である、
エチレン、炭素原子数3〜20のα-オレフィンおよび炭素原子数が5〜20の非共役ポリエンからの低結晶性エチレン系ランダム共重合体の製造法。」(特許請求の範囲第1、2項)
「〔産業上の利用分野〕
本発明は低結晶性エチレン系ランダム共重合体およびその製造法に関する。さらに詳しくは、分子量分布および組成分布が狭く且つ透明性、表面非粘着性および力学物性に優れた低結晶性のエチレン系ランダム共重合体およびその製造法に関する。」(2頁左下欄9〜15行)
「本発明の方法において重合原料として使用されるエチレン以外の炭素数3〜20のα-オレフィンとして具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、・・・などが例示できる。また非共役ポリエンとして具体的には、1,4-ヘキサジエン、・・・5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン・・・などを例示することができる。」(6頁右下欄8行〜7頁左上欄4行)
「本発明の低結晶性エチレン系ランダム共重合体は、上記の如くそれ自体極めて特異的な性質を有するため、種々の成形品の素材として使用することができる。また、加硫により、更に力学強度の優れた素材として使用することもできる。」(10頁左上欄1〜5行)
「〔実施例〕
次に、本発明の方法を実施例によって具体的に説明する。
実施例1
ジルコニウム触媒の調製
・・・
メチルアミノオキサンの調製
・・・
重合
2lの連続重合反応器を用いて、精製トルエンを1l/hr、メチルアルミノオキサンをアルミニウム原子換算で5ミリグラム原子/hr、前記で調製したジルコニウム触媒をジルコニウム原子換算で1×10-2ミリグラム原子/hrの割合で連続的に供給し、重合器内において同時にエチレン360l/hr、1-ブテン240l/hr、おおよびジシクロペンタジエン3g/hrの割合で連続的に供給し重合温度25℃、常圧、滞留時間1時間、ポリマー濃度15g/lとなる条件下に重合を行った。生成したポリマー溶液を重合器より連続的に抜き出し、少量のメタノールを添加することにより重合を停止し、更にそのポリマー溶液を多量のメタノール中に移し、析出したポリマーを80℃で12時間減圧乾燥した。エチレン含量89.4モル%、1-ブテン含量9.4モル%、ジシクロペンタジエン含量1.2モル%、〔η〕1.41dl/g、・・・のゴム状のポリマーが得られた。」(10頁左上欄6〜左下欄17行)
甲第2号証(刊行物2)には、以下の記載がされている。
「11.2〜約18箇の炭素原子を含むα-オレフィン、ジオレフィンおよび/またはアセチレン性不飽和モノマーおよび/または2〜約18箇の炭素原子を含むアセチレン性不飽和化合物を、単独で、または互いに組み合わせて、または他のモノマーと組み合わせて重合する方法であって、
(a)2〜約18箇の炭素原子を含むオレフィン、ジオレフィンおよび/またはアセチレン性不飽和化合物を単独で、または互いに組み合わせて、または他のモノマーと組み合わせて、適当な担体、溶媒または希釈剤中で、先行請求項いづれか1項に記載の方法によってあらかじめつくられたかあるいは重合中にそのままの場所で(in situ)でつくられた触媒と接触させ、
(b)段階(a)の接触を、1種類または複数種類のモノマーの少くも一部を重合させるのに十分な時間続け;
(c)ポリマー生成物を回収する
各段階からなる方法。」(請求項11)
「概して、その触媒は、適当な溶媒中で、約-100℃〜約300℃の温度範囲で二成分を結合することによってつくられる。その触媒を用いて、2〜約18の炭素原子を有するα-オレフィンおよび/またはアセチレン性不飽和モノマーおよび/または4〜約18の炭素原子を有するジオレフィンをそれだけで、または組み合わせて重合できる。その触媒はα-オレフィン、ジオレフィンおよび/またはアセチレン性不飽和モノマーをその他の不飽和モノマーと組み合わせて重合するためにも用いられる。概して重合は先行技術で公知の条件で行われる。触媒系の成分が重合プロセスに加えられ、濃縮モノマーを含む適した溶媒または希釈剤が上記重合プロセスに用いられる場合は、触媒系はその場所で(in situ)形成されることは当然理解される。しかしながら触媒を、重合段階に加える前に、別の段階で適当な溶媒中で形成することが好ましい。触媒は自然発火性の種類のものを含まないが、触媒の成分は湿気および酸素に敏感であり、窒素、アルゴンまたはヘリウムのような不活性環境中でとり扱かったり、移動したりすべきである。
上記のように、本発明の改良触媒は適した溶媒または希釈剤中でつくられるのが好ましい。適した溶媒または希釈剤はオレフィン、ジオレフィンおよびアセチレン性不飽和モノマーの重合において溶媒として有用な、先行技術で公知のあらゆる溶媒を含む。」(10頁左下欄7〜右下欄5行)
「本発明の最も好ましい実施例においては、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチルまたはビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチルがN,N-ジメチルアニリウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)硼素と反応して本発明の最も好ましい触媒を生成する。」(13頁右下欄8〜12行)
甲第3号証(刊行物3)には、以下の記載がされている。
「11.2乃至約18の炭素原子を含むα-オレフィン、ジオレフィンおよび/またはアセチレン性不飽和化合物を、単独で、または1種類またはそれ以上のモノマーと組み合わせて、重合する方法であって、
(a)約-100℃から約300℃までの範囲内の温度、約0から約45,000psig(0〜28471kg/cm2)の範囲内の圧力で、オレフィン、ジオレフィンおよび/またはアセチレン性不飽和モノマーを、単独で、または1種類かそれ以上のモノマーと組み合わせて適当な担体、溶媒または希釈剤中で、先行請求項のいずれかに記載の方法によって、あらかじめ製造した、或いはその場で製造した触媒と、重合の間接触させ、
(b)段階(a)の接触を少くとも上記オレフィンの一部が重合するのに十分な時間継続し;
(c)ポリマー生成物を回収する
段階からなる重合方法。」(請求項11)
「発明の概要
本発明のイオン性触媒、およびこれと共に提供される改良されたオレフィン、ジオレフィンおよび/またはアセチレン性不飽和モノマー重合プロセスを用いれば、先行技術のイオン性オレフィン重合触媒の前述の、およびその他の欠点は避けられるか、または少くとも減少することが発見された。そこで本発明の目的は、オレフィン、ジオレフィンおよびアセチレン性不飽和モノマーの重合に有用な改良されたイオン触媒系を提供することである。本発明の他の目的はこのような改良触媒の製法を提供することである。本発明のもう一つの目的はこのような改良触媒を用いる改良重合プロセスを提供することである。本発明の別の目的は、イオン平衡逆転を受けない改良された触媒を提供することである。本発明のまた別の目的は、生成物ポリマーの分子量および分子量分布をより良くコントロールすることのできる改良触媒を提供することである。本発明のもう一つの目的は、使用時に発火の危険性がより少ない改良触媒を提供することである。本発明のさらにもう一つの目的は、比較的狭い分子量分布をもち、或る種の金属不純物を含まない、これら改良触媒を用いて製造される重合生成物を提供することである。本発明の上記のおよびその他の目的および利点は、この後に示される説明およびここに含まれる実施例から明らかになる。」(5頁左上欄1〜12行)
「発明の詳細な説明
前述のように、本発明は触媒、そのような触媒の製法、そのような触媒の使用法およびそのような触媒で製造される重合生成物に関するものである。その触媒はα-オレフィンおよびジオレフィンおよびアセチレン性不飽和モノマーの重合において特に有用である。改良触媒は、形式上配位数3および原子価+4を有するカチオンを形成することができる元素周期表第IV-B族金属のビス(シクロペンタジエニル)誘導体である最低一つの第一化合物と、プロトンを供与することができるカチオン並びに複数の硼素原子を含む適合性の非配位アニオンであって、かさが大きく、不安定で、第IV-B族金属カチオンまたはその分解産物の、α-オレフィン、ジオレフィンおよび/またはアセチレン性不飽和モノマーを重合する能力を阻害することなく第IV-B族金属カチオンを安定し得るアニオンから成る最低一つの第二化合物とを結合することによってつくられる。」(5頁左下欄3〜19行)
甲第4号証(刊行物4と記載内容は実質同じ)(参考資料1参照)には、以下の事項について記載されている。
「本発明は、一般に改良された触媒系及びこの改良された触媒系の使用法に関し、そして特にメタロセン化合物の、ルイス酸及びアルミニウムアルキルとの触媒系及びこの改良された触媒系のオレフィン、主にプロピレンの重合に対する使用法に関する。」(刊行物4、2頁3〜6行:参考資料1、2頁右上欄15〜20行)
甲第5号証(刊行物5と記載内容は実質同じ)(参考資料2参照)には、以下の事項について記載されている。
「イオン化化合物はメタロセンをイオン化してイオン対を生成し、このメタロセンカチオンが触媒として働く。混合後、混合物を重合条件下にオレフィンに添加する。オレフィンは好ましくはプロピレンである。」(刊行物5、4頁17〜20行:参考資料2、4頁右上欄17行〜左下欄1行)
甲第6号証(刊行物6)(参考資料3参照)には、以下の事項について記載されている。
「最も好適なモル比はメタロセン1モル:イオン化合物1モルである。混合後に、混合物を重合を行う条件下にオレフィンに添加する。好適なオレフィンはエチレン及びプロピレンであり、プロピレンが最も好適である。」(4頁44〜47行:参考資料3、4頁左下欄1〜6行)
(2)対比・判断
訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)について
本件発明1が、刊行物1〜6である前記甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
甲第1号証には、(A)共役π電子を有する基を配位子としたジルコニウムハイドライド化合物、および(B)アルミノオキサンから成る触媒の存在下に、エチレン、炭素原子数3〜20のα-オレフィンおよび炭素原子数が5〜20の非共役ポリエンを共重合せしめることを特徴とする、エチレン成分の含有率が50〜95モル%の範囲にあり、α-オレフィン成分の含有率が5〜50モル%の範囲にあり、そして非共役ポリエン成分の含有率がゼロモル%ではなく5モル%以下であり、135℃デカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.5〜10dl/gの範囲にあるエチレン、炭素原子数3〜20のα-オレフィンおよび炭素原子数が5〜20の非共役ポリエンからの低結晶性エチレン系ランダム共重合体の製造法について記載され、実施例において、メチルアルミノキサンとビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイライドから成る触媒を使用し、エチレン、1-ブテンおよびジシクロペンタジエンを連続的に供給して重合することが記載されている。
しかしながら、甲第1号証に記載された重合体の製造方法は、エチレンと環状オレフィンとの共重合において、さらに、エチレン以外のα-オレフィンを必須の成分とした共重合体を製造する方法に関するものであって、エチレン以外のα-オレフィンを含まない共重合体の製造方法については何等記載がされていない。
一方、本件発明1は、エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィンに由来する繰り返し単位とを有する共重合体(但し、エチレン以外のα-オレフィンに由来する繰り返し単位及び環状ジエンに由来する繰り返し単位は含まず)であって、
(1)エチレンに由来する繰り返し単位の含有率が80〜99.9モル%、
(2)極限粘度[η]が0.01〜20dl/g、
(3)ガラス転移温度(Tg)が30℃未満、
(4)引張弾性率が2000Kg/cm2未満、
であるオレフィン系共重合体の製造方法であって、
下記化合物(A)及び(B)又は(A)、(B)及び(C)を主成分とする触媒を用いて、エチレンと環状オレフィンとを共重合するオレフィン系共重合体の製造方法に係るものである。
(A)チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含む4価の遷移金属化合物
(B)上記化合物(A)と反応してイオン性の錯体を形成する化合物
(C)有機アルミニウム化合物
そうすると、本件発明1と、甲第1号証に記載された発明とでは、共重合体の製造方法において、
(ア)本件発明1では、エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィンに由来する繰り返し単位とを有する共重合体であって、エチレン以外のα-オレフィンに由来する繰り返し単位及び環状ジエンに由来する繰り返し単位を含まないことを要件としているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、エチレン以外のα-オレフィンに由来する繰り返し単位をも含むことを要件としている点、
(イ)本件発明1は、重合触媒として、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含む4価の遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物を主成分とする触媒を採用するのに対し、甲第1号証に記載された発明では、触媒として、共役π電子を有する基を配位子としたジルコニウムハイドライド化合物、およびアルミノキサンから成る触媒を採用している点
(ウ)オレフィン系共重合体の物性が、本件発明1では「エチレンに由来する繰り返し単位の含有率が80〜99.9モル%、極限粘度[η]が0.01〜20dl/g、ガラス転移温度(Tg)が30℃未満、引張弾性率が2000Kg/cm2未満」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明では、そのような物性に関して記載されていない点で相違している。
そこで、相違点について、検討する。
まず、甲第2号証〜甲第6号証には、エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィンに由来する繰り返し単位とを有する共重合体に関しては何等も記載されていないし、示唆もされていない。
次に、甲第2号証〜甲第6号証には、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含む4価の遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物を主成分とする触媒が、オレフィンの重合触媒として採用されることが記載されていることから、オレフィンの重合触媒として、本件発明1で採用している重合触媒を用いることは周知の技術ということができる。
しかしながら、甲第2〜3号証に記載されたオレフィン重合触媒は、オレフィン、ジオレフィンまたはアセチレン性不飽和モノマーの重合に用いられるものであること、また、甲第4〜6号証に記載されたオレフィン重合触媒は、オレフィンのうち特にプロピレンに適用できることが記載されているものであって、これらのオレフィン重合触媒が環状オレフィンを含む重合体の重合触媒として採用できることについてはいずれの甲号証にも記載も示唆もされていない。そして、重合触媒の特異性を勘案すると、これらのオレフィン重合触媒を環状オレフィンを含むエチレン重合体の重合触媒として採用しても、目的とするオレフィン系共重合体が得られるかどうかは予測困難なことというべきである。
また、本件発明1は、製造されるオレフィン系共重合体の物性が(1)エチレンに由来する繰り返し単位の含有率が80〜99.9モル%、(2)極限粘度[η]が0.01〜20dl/g、(3)ガラス転移温度(Tg)が30℃未満、(4)引張弾性率が2000Kg/cm2未満のものであるが、甲第2〜3号証は、オレフィン、ジオレフィン、アセチレン性不飽和モノマーの重合に関して記載されているもので、環状オレフィンを含むオレフィン系共重合体に関しては記載がされていないし、ましてや環状オレフィンを含むオレフィン系共重合体の物性について何等も記載されていない。甲第4〜6号証は、オレフィンの重合に関して記載されているものの、オレフィンは主としてプロピレンであって、環状オレフィンを含むオレフィン系共重合体については記載がされていないし、環状オレフィンを含むオレフィン系共重合体の物性について何等も記載されていないのである。
そうすると、甲第2〜6号証に記載された発明には、環状オレフィンに関しては一切記載がされていないのであるから、甲第2〜6号証に記載された発明で得られるオレフィン系共重合体は、本件発明1のオレフィン系共重合体とは全く異なるものであるし、また、環状オレフィンを含まないオレフィン系共重合体の製造方法に係る甲第2〜6号証に記載された発明を、環状オレフィンを含有するオレフィン系共重合体の製造法である甲第1号証に記載された発明に適用しようとすること、更には、甲第1号証に記載された発明から、エチレン以外のα-オレフィン及び環状ジエンを含まないこととすることは当業者であっても容易に想到し得たということはできない。
そして、本件発明1は、訂正後の請求項1に記載された構成を採用することにより、明細書記載の格別顕著な効果を奏するものといえる。
したがって、本件発明1は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
V.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠ならびに取消理由によっては、本件発明1についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
オレフィン系共重合体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィン(但し、環状オレフィンの定義は明細書段落【0012】に記載の通りである)に由来する繰り返し単位とを有する共重合体(但し、エチレン以外のα-オレフィンに由来する繰り返し単位及び環状ジエンに由来する繰り返し単位は含まず)であって、
(1)エチレンに由来する繰り返し単位の含有率が80〜99.9モル%、
(2)極限粘度[η]が0.01〜20dl/g、
(3)ガラス転移温度(Tg)が30℃未満、
(4)引張弾性率が2000Kg/cm2未満、であるオレフィン系共重合体の製造方法であって、下記化合物(A)及び(B)又は(A)、(B)及び(C)を主成分とする触媒を用いて、エチレンと環状オレフィンとを共重合することを特徴とするオレフィン系共重合体の製造方法。
(A)チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含む4価の遷移金属化合物
(B)上記化合物(A)と反応してイオン性の錯体を形成する化合物
(C)有機アルミニウム化合物
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、適度な弾性率を有すると共に、弾性回復性,透明性,衝撃吸収性に優れ、包装分野,医療分野,農業分野等におけるシート材料、型物成形品の成形材料などとして好適に使用されるオレフィン系共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、ポリオレフィン系樹脂製のフィルム又はシートとしては、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリブテン,エチレン-プロピレンラバー(EPR),エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などを押出成形又はインフレーション成形したフィルム又はシートがあり、包装用材料やテープ等に使用されている。
しかしながら、これらポリオレフィン系樹脂製のフィルム又はシートは、弾性回復性が不充分であるため、たるみやすく、また弾性率が高いため、包装時に多大のエネルギーを要するという欠点がある。
【0003】
一方、特開昭62-252406号公報には、エチレン成分と特定の環状オレフィン成分とのランダム共重合体が開示されている。この共重合体は、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて製造され、エチレン含量が40〜90モル%のものであるが、弾性率が高く、しかも弾性回復性が極めて低いという問題がある。
また、特開昭61-211315号公報には、エチレン成分と特定の環状オレフィン成分とのランダム共重合体であって、エチレン含有率が90〜98モル%のものが開示されている。しかし、この共重合体は、ガラス転移温度が20℃以上80℃未満という実質的に室温以上の共重合体であり、軟質樹脂としての利用には限界がある。
さらに、特開平2-276816号公報には、特定の環状オレフィンとエチレンとの共重合体からなる射出成形品が開示されている。しかし、本公報で開示されている共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が50〜230℃と高く、室温付近の使用温度領域では耐衝撃性に劣るという欠点を有している。
【0004】
このため、従来より、弾性回復性、弾性率等の諸物性バランスに優れたポリオレフィン系樹脂の開発が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、優れた弾性回復性、透明性及び衝撃吸収性と適度な弾性率とを有し、種々の分野でフィルム、シートや各種型物成形品の材料等として有効に使用することができるオレフィン系共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明者らは、上述した従来の問題点を解消し、特に弾性回復性に優れ、しかも適度の弾性率、良好な透明性、衝撃吸収性を持つなど、物性バランスに優れたポリオレフィン系樹脂を提供すべく鋭意研究を重ねた。その結果、エチレン成分と少量の環状オレフィン成分とを含む特定のオレフィン系共重合体が要求される特性を満たすことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって、本発明は、エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィン(但し、環状オレフィンの定義は明細書段落【0012】に記載の通りである)に由来する繰り返し単位とを有する共重合体(但し、エチレン以外のα-オレフィンに由来する繰り返し単位及び環状ジエンに由来する繰り返し単位は含まず)であって、
(1)エチレンに由来する繰り返し単位の含有率が80〜99.9モル%、
(2)極限粘度[η]が0.01〜20dl/g、
(3)ガラス転移温度(Tg)が30℃未満、
(4)引張弾性率が2000Kg/cm2未満、を特徴とするオレフィン系共重合体の製造方法であって、下記化合物(A)及び(B)又は(A)、(B)及び(C)を主成分とする触媒を用いて、エチレンと環状オレフィンとを共重合することを特徴とするオレフィン系共重合体の製造方法を提供する。
(A)チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含む4価の遷移金属化合物
(B)上記化合物(A)と反応してイオン性の錯体を形成する化合物
(C)有機アルミニウム化合物
【0007】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。本発明のオレフィン系共重合体は、エチレンに由来する繰り返し単位と環状オレフィンに由来する繰り返し単位とを有する。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
本発明の環状オレフィンは、ノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,5,6-トリメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン、5-エチリデンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2,3-ジメチル-1、4、5、8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-ヘキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチリデン-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-フルオロ-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,5-ジメチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-シクロヘキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2,3-ジクロロ-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-イソブチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,2-ジヒドロジシクロペンタジエン、5-クロロノルボルネン、5,5-ジクロロノルボルネン、5-フルオロノルボルネン、5,5,6-トリフルオロ-6-トリフルオロメチルノルボルネン、5-クロロメチルノルボルネン、5-メトキシノルボルネン、5,6-ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5-ジメチルアミノノルボルネン、5-シアノノルボルネンである。これらの中では、ノルボルネン又はその誘導体が特に好ましい。
【0013】
本発明のオレフィン系共重合体は、基本的には、上述したようなエチレンと環状オレフィンとを共重合してなるものであるが、本発明の目的を損なわない範囲で、これら必須の2成分の他に、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を用いていてもよい。
このような任意に共重合されてもよい不飽和単量体は、▲1▼ブタジエン,イソプレン,1,5-ヘキサジエン等の鎖状ジエン類、▲2▼シクロペンテン,シクロヘプテン等の単環オレフィン類である。
【0014】
本発明のオレフィン系共重合体は、エチレン単位の含有率[x]及び環状オレフィン単位の含有率[y]が、[x]が80〜99.9モル%に対し[y]が20〜0.1モル%、好ましくは[x]が82〜99.5モル%に対し[y]が18〜0.5モル%、特に好ましくは[x]が85〜98モル%に対し[y]が15〜2モル%のものである。
エチレン単位の含有率[x]が80モル%未満であると、共重合体のガラス転移温度(Tg)、引張弾性率が高くなり、得られるフィルム又はシートの弾性回復性や型物成形品の耐衝撃性、弾力性が不十分となる。一方、環状オレフィン単位の含有率[y]が0.1モル%未満であると、共重合体の結晶性が高くなり、弾性回復性等の環状オレフィン成分の導入効果が不十分となる。
【0015】
本発明のオレフィン系共重合体としては、エチレン単位と環状オレフィン単位とが直鎖状に配列した実質上線状の共重合体であり、ゲル状架橋構造を有さないものであることが好ましい。ゲル状架橋構造を有さないことは、共重合体が135℃のデカリン中に完全に溶解することによって確認できる。
【0016】
また、本発明のオレフィン系共重合体は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01〜20dl/gであることが必要である。極限粘度[η]が0.01dl/g未満であると強度が著しく低下し、20dl/gを超えると成形性が著しく悪くなる。より好ましい極限粘度[η]は0.05〜10dl/gである。
【0017】
本発明のオレフィン系共重合体の分子量は特に制限されるものではないが、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)[ポリエチレン換算]によって測定した重量平均分子量Mwが1,000〜2,000,000、特に5,000〜1,000,000、数平均分子量Mnが500〜1,000,000、特に2,000〜800,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.3〜4、特に1.4〜3であることが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が4より大きくなると低分子量体の含有量が多くなり、フィルム、シート、型物成形品等に成形したときにべたつきの原因となることがある。
【0018】
本発明のオレフィン系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が30℃未満であることが必要である。このような共重合体を用いれば、低温で好適に使用することができるフィルム、シート、型物成形品等が得られる。より好ましいガラス転移温度(Tg)は-30〜20℃、特に-30〜15℃である。
この場合、本発明のオレフィン系共重合体は、単量体の種類、組成を変更することによりガラス転移温度(Tg)を任意に制御することができ、目的とする用途、使用される温度等に応じてガラス転移温度(Tg)を任意に変えることができる。
【0019】
また、本発明のオレフィン系共重合体は、X線回折法により測定した結晶化度が0〜40%であることが好ましい。結晶化度が40%を超えると、弾性回復性、透明性が低下することがある。より好ましい結晶化度は0〜30%、特に0〜25%である。
【0020】
本発明のオレフィン系共重合体は、引張弾性率が2000Kg/cm2未満であることが必要である。引張弾性率が2000Kg/cm2以上であると、例えば包装用フィルムに用いた場合、包装時に多大のエネルギーが必要になると共に、被包装物品の形状に適合した美しい包装が困難となる。また、型物成形品に用いた場合、耐衝撃性が不十分になることがある。より好ましい引張弾性率は50〜1,500Kg/cm2である。
【0021】
本発明のオレフィン系共重合体は、弾性回復率が20%以上であることが好ましい。弾性回復率が20%未満であると、例えば物品を包装した場合に、たるみが生じたり、保持力が低下したりすることがある。より好ましい弾性回復率は30%以上、特に40%以上である。
なお、弾性回復率は、後述する実施例1に記載の方法で測定した値である。
【0022】
本発明のオレフィン系共重合体は、DSC(昇温測定)によるブロードな融解ピークが90℃未満にあることが好ましい。
DSC(昇温測定)によるシャープな融解ピークが90℃以上にあるような共重合体は、環状オレフィンとエチレンとの共重合体の組成分布が広く、フィルム等に成型したときに弾性回復性が不十分になることがある。なお、DSC(昇温測定)によるブロードな融解ピークは、10〜85℃の範囲にあることがより好ましい。DSC(昇温測定)において、本発明オレフィン系共重合体の融点(融解ピーク)はシャープにはみられず、特に低結晶化度のものにあっては、通常のポリエチレンの測定条件レベルではほとんどピークが出ない。
また、本発明のオレフィン系共重合体は、DSC(降温測定)による結晶化ピークにおいて、メインピークの高温側に比較的小さな1個以上のサブピークを有するものであることが好ましい。
前述した熱的性質の特徴により、前記成形品の物性を得ることができるとともに、成形温度範囲が広くなるなど、高品質のフィルム等の成形品を安定して成形することができる。
【0023】
本発明のオレフィン系共重合体としては、上述した範囲の物性を有するもののみからなる共重合体であってもよく、上記範囲外の物性を有する共重合体が一部含まれているものであってもよい。後者の場合には、全体の物性値が上記範囲に含まれていればよい。
【0024】
本発明オレフィン系共重合体は、下記化合物(A)及び(B)を主成分とする触媒又は下記化合物(A)、(B)及び(C)を主成分とする触媒を用いてエチレンと環状オレフィンとの共重合を行なうことにより、効率的に製造することができる。
(A)チタニウム、ジルコニウム又はハフニウム含む4価の遷移金属化合物
(B)遷移金属化合物(A)と反応してイオン性の錯体を形成する化合物
(C)有機アルミニウム化合物
【0025】
【0026】
このような遷移金属化合物(A)として、種々のものが挙げられるが、特に下記一般式(I),(II)又は(III)で示されるシクロペンタジエニル化合物又はこれらの誘導体あるいは下記一般式(IV)で示される化合物又はこれらの誘導体が好適である。
CpM1R1aR2bR3c …(I)
Cp2M1R1aR2b …(II)
(Cp-Ae-Cp)M1R1aR2b …(III)
M1R1aR2bR3cR4d …(IV)
【0027】
[(I)〜(IV)式中、M1はTi,Zr又はHf原子を示し、Cpはシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基,置換インデニル基,テトラヒドロインデニル基,置換テトラヒドロインデニル基,フルオレニル基又は置換フルオレニル基等の環状不飽和炭化水素基又は鎖状不飽和炭化水素基を示す。R1,R2,R3及びR4はそれぞれそれぞれσ結合性の配位子,キレート性の配位子,ルイス塩基等の配位子を示し、σ結合性の配位子としては、具体的に水素原子,酸素原子,ハロゲン原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,アリル基,置換アリル基,けい素原子を含む置換基等を例示でき、またキレート性の配位子としてはアセチルアセトナート基,置換アセチルアセトナート基等を例示できる。Aは共有結合による架橋を示す。a,b,c及びdはそれぞれ0〜4の整数、eは0〜6の整数を示す。R1,R2,R3及びR4はその2以上が互いに結合して環を形成していてもよい。上記Cpが置換基を有する場合には、当該置換基は炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。(II)式及び(III)式において、2つのCpは同一のものであってもよく、互いに異なるものであってもよい。]
【0028】
上記(I)〜(III)式における置換シクロペンタジエニル基としては、例えば、メチルシクロペンタジエニル基,エチルシクロペンタジエニル基,イソプロピルシクロペンタジエニル基,1,2-ジメチルシクロペンタジエニル基,テトラメチルシクロペンタジエニル基,1,3-ジメチルシクロペンタジエニル基,1,2,3-トリメチルシクロペンタジエニル基,1,2,4-トリメチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基,トリメチルシリルシクロペンタジエニル基等が挙げられる。また、上記(I)〜(IV)式におけるR1〜R4の具体例としては、例えば、ハロゲン原子としてフッ素原子,塩素原子,臭素原子,ヨウ素原子;炭素数1〜20のアルキル基としてメチル基,エチル基,n-プロピル基,iso-プロピル基,n-ブチル基,オクチル基,2-エチルヘキシル基;炭素数1〜20のアルコキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,プロポキシ基,ブトキシ基,フェノキシ基;炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基としてフェニル基,トリル基,キシリル基,ベンジル基;炭素数1〜20のアシルオキシ基としてヘプタデシルカルボニルオキシ基;けい素原子を含む置換基としてトリメチルシリル基,(トリメチルシリル)メチル基:ルイス塩基としてジメチルエーテル,ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル類、テトラヒドロチオフェン等のチオエーテル類、エチルベンゾエート等のエステル類、アセトニトリル,ベンゾニトリル等のニトリル類、トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリブチルアミン,N,N-ジメチルアニリン,ピリジン,2,2’-ビピリジン,フェナントロリン等のアミン類、トリエチルホスフィン,トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;鎖状不飽和炭化水素としてエチレン,ブタジエン,1-ペンテン,イソプレン,ペンタジエン,1-ヘキセン及びこれらの誘導体;環状不飽和炭化水素としてベンゼン,トルエン,キシレン,シクロヘプタトリエン,シクロオクタジエン,シクロオクタトリエン,シクロオクタテトラエン及びこれらの誘導体等が挙げられる。また、上記(III)式におけるAの共有結合による架橋としては、例えばメチレン架橋,ジメチルメチレン架橋,エチレン架橋,1,1’-シクロヘキシレン架橋,ジメチルシリレン架橋,ジメチルゲルミレン架橋,ジメチルスタニレン架橋等が挙げられる。
【0029】
このような化合物として、例えば下記のもの及びこれら化合物のジルコニウムをチタニウム又はハフニウムで置換した化合物が挙げられる。
(I)式の化合物
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリフェニルジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリベンジルジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメトキシジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリフェニルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリベンジルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)トリメトキシジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)ジメチル(メトキシ)ジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリフェニルジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリベンジルジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(メチルシクロペンタジエニル)ジメチル(メトキシ)ジルコニウム、
(ジメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(トリメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチルジルコニウム、
(テトラメチルシクロペンタジエニル)トリクロロジルコニウム、
【0030】
(II)式の化合物
ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジメトキシジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)ジヒドリドジルコニウム、
ビス(シクロペンタジエニル)モノクロロモノヒドリドジルコニウム、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)クロロメチルジルコニウム、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ヒドリドメチルジルコニウム、
(シクロペンタジエニル)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
【0031】
(III)式の化合物
エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレンビス(インデニル)ジクロロジルコニウム、
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジメチルジルコニウム、
エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジクロロジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジメチルジルコニウム、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジクロロジルコニウム、
[フェニル(メチル)メチレン](9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジメチルジルコニウム、
エチレン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
シクロヘキシリデン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
シクロペンチリデン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
シクロブチリデン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、
ジメチルシリレンビス(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、
ジメチルシリレンスビス(インデニル)ジクロロジルコニウム
【0032】
上記一般式(I),(II),(III)で示されるシクロペンタジエニル化合物以外の化合物の例としては、前記(IV)式の化合物が挙げられ、例えば下記化合物あるいはこれらのジルコニウムをハフニウム、チタニウムに置き換えた化合物等のアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子の1種又は2種以上を持つジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、チタニウム化合物が挙げられる。
テトラメチルジルコニウム、
テトラベンジルジルコニウム、
テトラメトキシジルコニウム、
テトラエトキシジルコニウム、
テトラブトキシジルコニウム、
テトラクロロジルコニウム、
テトラブロモジルコニウム、
ブトキシトリクロロジルコニウム、
ジブトキシジクロロジルコニウム、
ビス(2,5-ジ-t-ブチルフェノキシ)ジメチルジルコニウム、
ビス(2,5-ジ-t-ブチルフェノキシ)ジクロロジルコニウム、
ジルコニウムビス(アセチルアセトナート)、
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
次に、化合物(B)としては、遷移金属化合物(A)と反応してイオン性の錯体を形成する化合物であればいずれのものでも使用できるが、カチオンと複数の基が元素に結合したアニオンとからなる化合物、特にカチオンと複数の基が元素に結合したアニオンとからなる配位錯化合物を好適に使用することができる。このようなカチオンと複数の基が元素に結合したアニオンとからなる化合物としては、下記式(V)あるいは(VI)で示される化合物を好適に使用することができる。
([L1-R7]k+)p([M3Z1Z2…Zn](n-m)-)q
…(V)
([L2]k+)p([M4Z1Z2…Zn](n-m)-)q…(VI)
(但し、L2はM5,R8R9M6,R103C又はR11M6である)
【0038】
[(V),(VI)式中、L1はルイス塩基、M3及びM4はそれぞれ周期律表のVB族,VIB族,VIIB族,VIII族,IB族,IIB族,IIIA族,IVA族及びVA族から選ばれる元素、好ましくは、IIIA族,IVA族及びVA族から選ばれる元素、M5及びM6はそれぞれ周期律表のIIIB族,IVB族,VB族,VIB族,VIIB族,VIII族,IA族,IB族,IIA族,IIB族及びVIIA族から選ばれる元素、Z1〜Znはそれぞれ水素原子,ジアルキルアミノ基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素数6〜20のアリールオキシ基,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基,アリールアルキル基,炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,有機メタロイド基又はハロゲン原子を示し、Z1〜Znはその2以上が互いに結合して環を形成していてもよい。R7は水素原子,炭素数1〜20のアルキル基,炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基を示し、R8及びR9はそれぞれシクロペンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基,インデニル基又はフルオレニル基、R10は炭素数1〜20のアルキル基,アリール基,アルキルアリール基又はアリールアルキル基をを示す。R11はテトラフェニルポルフィリン、フタロシアニン等の大環状配位子を示す。mはM3,M4の原子価で1〜7の整数、nは2〜8の整数、kは[L1-R7],[L2]のイオン価数で1〜7の整数、pは1以上の整数、q=(p×k)/(n-m)である。]
【0039】
上記ルイス塩基の具体例としては、アンモニア,メチルアミン,アニリン,ジメチルアミン,ジエチルアミン,N-メチルアニリン,ジフェニルアミン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリ-n-ブチルアミン,N,N-ジメチルアニリン,メチルジフェニルアミン,ピリジン,p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン,p-ニトロ-N,N-ジメチルアニリン等のアミン類、トリエチルフォスフィン,トリフェニルフォスフィン,ジフェニルフォスフィン等のフォスフィン類、ジメチルエーテル,ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル類、ジエチルチオエーテル,テトラヒドロチオフェン等のチオエーテル類、エチルベンゾエート等のエステル類等が挙げられる。M3及びM4の具体例としてはB,Al,Si,P,As,Sb等,好ましくはB又はP、M5の具体例としてはLi,Na,Ag,Cu,Br,I,I3等,M6の具体例としてはMn,Fe,Co,Ni,Zn等が挙げられる。
【0040】
Z1〜Znの具体例としては、例えば、ジアルキルアミノ基としてジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基;炭素数1〜20のアルコキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,n-ブトキシ基;炭素数6〜20のアリールオキシ基としてフェノキシ基,2,6-ジメチルフェノキシ基,ナフチルオキシ基;炭素数1〜20のアルキル基としてメチル基,エチル基,n-プロピル基,iso-プロピル基,n-ブチル基,n-オクチル基,2-エチルヘキシル基;炭素数6〜20のアリール基,アルキルアリール基若しくはアリールアルキル基としてフェニル基,p-トリル基,ベンジル基,4-ターシャリ-ブチルフェニル基,2,6-ジメチルフェニル基,3,5-ジメチルフェニル基,2,4-ジメチルフェニル基,2,3-ジメチルフェニル基;炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基としてp-フルオロフェニル基,3,5-ジフルオロフェニル基,ペンタクロロフェニル基,3,4,5-トリフルオロフェニル基,ペンタフルオロフェニル基,3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基;ハロゲン原子としてF,Cl,Br,I;有機メタロイド基として五メチルアンチモン基,トリメチルシリル基,トリメチルゲルミル基,ジフェニルアルシン基,ジシクロヘキシルアンチモン基,ジフェニル硼素基が挙げられる。R7,R10の具体例としては、先に挙げたものと同様なものが挙げられる。R8及びR9の置換シクロペンタジエニル基の具体例としては、メチルシクロペンタジエニル基,ブチルシクロペンタジエニル基,ペンタメチルシクロペンタジエニル基等のアルキル基で置換されたものが挙げられる。ここで、アルキル基は通常炭素数が1〜6であり、置換されたアルキル基の数は1〜5の整数で選ぶことができる。
(V),(VI)式の化合物の中では、M3,M4が硼素であるものが好ましい。
【0041】
(V),(VI)式の化合物の中で、具体的には、下記のものを特に好適に使用できる。
(V)式の化合物
テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸トリ(n-ブチル)アンモニウム、
テトラフェニル硼酸トリメチルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸テトラエチルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸メチルトリ(n-ブチル)アンモニウム、
テトラフェニル硼酸ベンジルトリ(n-ブチル)アンモニウム、
テトラフェニル硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸メチルトリフェニルアンモニウム、
テトラフェニル硼酸トリメチルアニリニウム、
テトラフェニル硼酸メチルピリジニウム、
テトラフェニル硼酸ベンジルピリジニウム、
テトラフェニル硼酸メチル(2-シアノピリジニウム)、
テトラフェニル硼酸トリメチルスルホニウム、
テトラフェニル硼酸ベンジルジメチルスルホニウム、
【0042】
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ(n-ブチル)アンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラブチルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラエチルアンモニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(メチルトリ(n-ブチル)アンモニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(ベンジルトリ(n-ブチル)アンモニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルジフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルトリフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルジフェニルアンモニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルアニリニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチル(m-ニトロアニリニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチル(p-ブロモアニリニウム)、
【0043】
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ピリジニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p-シアノピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N-メチルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(N-ベンジルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(O-シアノ-N-メチルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p-シアノ-N-メチルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(p-シアノ-N-ベンジルピリジニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルスルホニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ベンジルジメチルスルホニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸テトラフェニルホスホニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム、
テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]硼酸ジメチルアニリニウム、
ヘキサフルオロ砒素酸トリエチルアンモニウム、
【0044】
(VI)式の化合物
テトラフェニル硼酸フェロセニウム、
テトラフェニル硼酸銀、
テトラフェニル硼酸トリチル、
テトラフェニル硼酸(テトラフェニルポルフィリンマンガン)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(1,1’-ジメチルフェロセニウム)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸デカメチルフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アセチルフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ホルミルフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸シアノフェロセニウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸銀、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリチル、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ナトリウム、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリンマンガン)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリン鉄クロライド)、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸(テトラフェニルポルフィリン亜鉛)、
テトラフルオロ硼酸銀、
ヘキサフルオロ砒素酸銀、
ヘキサフルオロアンチモン酸銀、
【0045】
また、(V),(VI)式以外の化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)硼素,トリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]硼素,トリフェニル硼素等も使用可能である。
【0046】
(C)成分である有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(VII),(VIII)又は(IX)で示されるものが挙げられる。
R12rAlQ3-r …(VII)
(R12は炭素数1〜20、好ましくは1〜12のアルキル基,アルケニル基,アリール基,アリールアルキル基等の炭化水素基、Qは水素原子、炭素数1〜20のアルコキシ基又はハロゲン原子を示す。rは1≦r≦3の範囲のものである。)
式(VII)の化合物として、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド,ジメチルアルミニウムフルオリド,ジイソブチルアルミニウムハイドライド,ジエチルアルミニウムハイドライド,エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。
【0047】
【化2】

(R12は式(VII)と同じものを示す。sは重合度を示し、通常3〜50、好ましくは7〜40である。)
で示される鎖状アルミノキサン。
【0048】
【化3】

(R12は式(VII)と同じものを示す。また、sは重合度を示し、好ましい繰り返し単位数は3〜50、好ましくは7〜40である。)
で示される繰り返し単位を有する環状アルキルアルミノキサン。
(VII)〜(IX)式の化合物の中で、好ましいのは炭素数3以上のアルキル基、なかでも分岐アルキル基を少なくとも1個以上有するアルキル基含有アルミニウム化合物又はアルミノキサンである。特に好ましいのは、トリイソブチルアルミニウム又は重合度7以上のアルミノキサンである。このトリイソブチルアルミニウム又は重合度7以上のアルミノキサンあるいはこれらの混合物を用いた場合には、高い活性を得ることができる。また、(VII)〜(IX)式で示されるアルミノキサンを水等の活性水素を持つ化合物で変成した変成アルミノキサンも好適に使用される。
【0049】
前記アルミノキサンの製造法としては、アルキルアルミニウムと水等の縮合剤とを接触させる方法が挙げられるが、その手段に特に限定はなく、公知の方法に準じて反応させればよい。例えば、▲1▼有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解しておき、これを水と接触させる方法、▲2▼重合時に当初有機アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方法、▲3▼金属塩等に含有されている結晶水、無機物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法、▲4▼テトラアルキルジアルミノキサンにトリアルキルアルミニウムを反応させ、さらに水を反応させる方法等がある。
【0050】
本発明オレフィン系共重合体の製造に用いる触媒は、上記(A)及び(B)成分あるいは(A)、(B)及び(C)成分を主成分とするものである。
この場合、(A)成分と(B)成分との使用条件は限定されないが、(A)成分:(B)成分の比(モル比)を1:0.01〜1:100、特に1:0.5〜1:10、中でも1:1〜1:5とすることが好ましい。また、使用温度は-100〜250℃の範囲とすることが好ましく、圧力,時間は任意に設定することができる。
【0051】
また、(C)成分の使用量は、(A)成分1モルに対し通常0〜2,000モル、好ましくは5〜1,000モル、特に好ましくは10〜500モルである。(C)成分を用いると重合活性の向上を図ることができるが、あまり多いと有機アルミニウム化合物が重合体中に多量に残存し好ましくない。
【0052】
触媒成分の使用態様には制限はなく、例えば(A)成分,(B)成分を予め接触させ、あるいはさらに接触生成物を分離,洗浄して使用してもよく、重合系内で接触させて使用してもよい。また、(C)成分は、予め(A)成分、(B)成分あるいは(A)成分と(B)成分との接触生成物と接触させて用いてもよい。接触は、あらかじめ接触させてもよく、重合系内で接触させてもよい。さらに、触媒成分は、モノマー、重合溶媒に予め加えたり、重合系内に加えることもできる。なお、触媒成分は、必要により無機あるいは有機の担体に担持して用いることもできる。
【0053】
反応原料に対する触媒の使用割合は、原料モノマー/上記(A)成分(モル比)あるいは原料モノマー/上記(B)成分(モル比)が1〜109、特に100〜107となることが好ましい。
【0054】
重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、気相重合等のいずれの方法を用いてもよい。また、バッチ法でも連続法でもよい。
重合溶媒を用いる場合、例えば、ベンゼン,トルエン,キシレン,エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム,ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組合せてもよい。また、α-オレフィン等のモノマーを溶媒として用いてもよい。
【0055】
重合条件に関し、重合温度は-100〜250℃、特に-50〜200℃とすることが好ましい。
重合時間は通常1分〜10時間、反応圧力は常圧〜100Kg/cm2G、好ましくは常圧〜50Kg/cm2Gである。
共重合体の分子量の調節方法としては、各触媒成分の使用量や重合温度の選択、さらには水素存在下での重合反応によることができる。
【0056】
本発明のオレフィン系共重合体は、周知の方法によって成形加工することができる。
例えば、単軸押出機、ベント式押出機、二本スクリュー押出機、円錐二本スクリュー押出機、コニーダー、プラティフィケーター、ミクストルーダー、二軸コニカルスクリュー押出機、遊星ねじ押出機、歯車型押出機、スクリューレス押出機などを用いて押出成形、射出成形、ブロー成形、回転成形等を行なうことができる。また、Tダイ成型法、インフレーションン成型法等によりフィルム又はシートを作成することができる。
成形加工にあたっては、必要に応じて周知の添加剤、例えば耐熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防臭剤、滑剤、合成油、天然油、無機及び有機の充填剤、染料、顔料などを添加してもよい。
【0057】
本発明のオレフィン系共重合体は、透明性、弾性回復性、衝撃吸収性、粘着性、突刺し強度、引裂き強度、耐候性、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、衝撃強度、形状記憶性、誘電特性に優れ、かつ分子量分布及び組成分布が狭く均一性に優れているので、例えばシーラントフィルム、パレットストレッチフィルム、業務用ラップフィルム、農業用フィルム、食肉包装フィルム、シュリンクフィルム、被覆材、制振材、パイプ、医療用輸液パック、玩具、あるいは自動車部品、家電部品、電線ケーブル被覆部品、土木用品、建材等の型物成形品といった種々の用途に利用することができる。
【0058】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明を具体的に示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における各項目の測定方法を下記に示す。
ノルボルネン含量
13C-NMRの30ppm付近に現れるエチレンに基づくピークとノルボルネンの5及び6位のメチレンに基づくピークの和と32.5ppm付近に現れるノルボルネンの7位のメチレン基に基づくピークとの比から求めた。
極限粘度[η]
135℃のデカリン中で測定した。
結晶化度
熱プレスにより作成した試験片を用い、室温においてX線回折法により求めた。
ガラス転移温度(Tg)
測定装置として東洋ボールディング社製バイブロン11-EA型を用い、巾4mm,長さ40mm,厚さ0.1mmの測定片を昇温速度3℃/分、周波数3.5Hzで測定し、この時の損失弾性率(E”)のピークから求めた。
Mw,Mn,Mw/Mn
測定装置としてウォーターズ社製ALC/GPC-150C、カラム:東ソー社製TSK HM+GMH6X、溶媒:1,2,4-トリクロルベンゼン、液量:1.0ml、温度:135℃、ポリエチレン換算で測定した
DSC昇温測定:融点(Tm)
測定装置としてパーキンエルマー社製7シリーズのDSCを用い、10℃/分の昇温速度で-50℃〜150℃の範囲で測定した。
DSC(降温測定):結晶化温度
測定装置としてパーキンエルマー社製7シリーズのDSCを用い、試料を10℃/分で150℃まで昇温し、60秒保持後、10℃/分で-50℃まで降温して測定した。
【0059】
引張弾性率,引張破断強度,引張破断伸び
オートグラフを用いてJIS-K7113に従って行なった。
弾性回復率
オートグラフを用い、引張速度62mm/分で、巾6mm、クランプ間50mm(L0)の測定片を150%伸ばして引張り、5分間そのままの状態を保った後、はね返させることなく急に収縮させ、1分後にクランプ間のシートの長さ(L1)を測定し、下記式により求めた。
弾性回復率(%)=[1-{(L1-L0)/L0}]×100
全光線透過率,ヘイズ
ディジタルヘイズコンピューター(DIGITAL HAZE COMPUTER)(スガ試験機株式会社社製)を用いてJIS-K7105に準じて測定を行なった。
【0060】
実施例1
(1)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウムの合成
ブロモペンタフルオロベンゼン152ミリモルとブチルリチウム152ミリモルとから調製したペンタフルオロフェニルリチウムをヘキサン中で45ミリモルの三塩化硼素と反応させ、トリス(ペンタフルオロフェニル)硼素を白色固体として得た。
得られたトリス(ペンタフルオロフェニル)硼素41ミリモルとペンタフルオロフェニルリチウム41ミリモルとを反応させ、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼素を白色固体として単離した。
次に、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼素16ミリモルとジメチルアニリン塩酸塩16ミリモルとを水中で反応させることにより、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム11.4ミリモルを白色固体として得た。
生成物が目的物であることは、1H-NMR,13C-NMRで確認した。
【0061】
(2)エチレンと2-ノルボルネンとの共重合
窒素雰囲気下、室温において1リットルのオートクレーブにトルエン400ml、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)0.6ミリモル、ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド3マイクロモル、上記(1)で調製したテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム4マイクロモルをこの順番に入れ、続いて2-ノルボルネンを70重量%含有するトルエン溶液60ml(2-ノルボルネン400モル)を加え、90℃に昇温したのち、エチレン分圧が7Kg/cm2になるように連続的にエチレンを導入しつつ90分間反応を行なった。反応終了後、ポリマー溶液を1リットルのメタノール中に投入してポリマーを析出させ、このポリマーを濾取して乾燥した。
【0062】
(3)シートの成形
上記(2)で得られた共重合体を用いて温度190℃、圧力100Kg/cm2で熱プレス成型を行ない、厚さ0.1mmのシートを作成した。
【0063】
実施例1における触媒成分、重合条件等を表1に、得られた共重合体及びシートの物性を表2に示す。
実施例1の共重合体においては、75℃にブロードな融解ピークが認められた。図1にDSC(昇温測定)チャートを示す。
【0064】
実施例2
(1)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼素フェロセニウムの調製
フェロセン(Cp2Fe)20ミリモルと、濃硫酸40mlとを室温で1時間反応させ、濃紺溶液を得た。この濃紺溶液を1リットルの水に投入、撹拌し、得られた深青色の水溶液をテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸リチウム20ミリモルの水溶液500mlに加えた。沈澱してきた淡青色固体を濾取し、水500mlを用いて5回洗浄した後、減圧乾燥したところ、目的とした生成物テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウム([Cp2Fe][B(C6F5)4])17ミリモルを得た。
【0065】
(2)エチレンと2-ノルボルネンとの共重合
実施例1(2)において、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウムの代りに上記(1)で調製したテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸フェロセニウムを使用し、かつその他の条件を表1に示した通りにした以外は、実施例1(2)と同様に重合を行なった。
(3)シートの成形
(2)で得られた共重合体を用い、実施例1(3)と同様に行なった。
【0066】
実施例2における触媒成分、重合条件等を表1に示す。また、得られた共重合体及びシートの物性を表2に示す。
【0067】
実施例3〜6
(1)(2)触媒の調製及びエチレンと2-ノルボルネンとの共重合
表1に示すように触媒成分及び重合条件を変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体を得た。
(3)シートの成形
(2)で得られた共重合体を用い、実施例1(3)と同様に行なった。
【0068】
実施例3〜6における触媒成分、重合条件等を表1に、得られた共重合体及びシートの物性を表2に示す。
実施例3の共重合体においては、77.0℃にブロードな融解ピークが認められた。図2にDSC(昇温測定)チャートを示す。
また、実施例3の共重合体は、主結晶化温度ピーク(54.8℃)の高温側にサブピーク(74℃、96.1℃)を2個有するものであった。図3にDSCチャートを示す。
さらに、実施例4の共重合体の13C-NMRチャートを図4に示す。
【0069】
実施例7
(1)触媒の調製
実施例1(1)と同様にしてテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウムを合成した。
(2)エチレンと2-ノルボルネンとの共重合
1リットルのオートクレーブにトルエン400ml、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)0.6ミリモル、上記(1)で調製したテトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム0.03ミリモル、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム0.03ミリモル、2-ノルボルネン200ミリモルを装填し、50℃、エチレン圧5Kg/cm2で30分間重合した後、メタノールで重合を停止した。これを濾取,乾燥して26.4gの共重合体を得た。
(3)シートの成形
(2)で得られた共重合体を用い、実施例1(3)と同様に行なった。
【0070】
実施例7における触媒成分、重合条件等を表1に、得られた共重合体及びシートの物性を表2に示す。
実施例7の共重合体においては、82.8℃にブロードな融解ピークが認められた。図5にDSC(昇温測定)チャートを示す。
また、実施例7の共重合体は、主結晶化温度ピーク(62℃)の高温側にサブピーク(78℃、98℃)を2個有するものであった。図6にDSCチャートを示す。
さらに、実施例7の共重合体の13C-NMRチャートを図7に示す。
【0071】
比較例1
(1)エチレンと2-ノルボルネンとの共重合
窒素雰囲気下において1リットルのオートクレーブにトルエン400ml、エチルアルミニウムセスキクロライド(Al(C2H5)1.5Cl1.5)8ミリモル、VO(OC2H5)Cl20.8ミリモル、2-ノルボルネン20ml(130ミリモル)を加え、40℃に昇温したのち、エチレン分圧が3Kg/cm2になるように連続的にエチレンを導入しつつ180分間反応を行なった。
反応終了後、ポリマー溶液を1リットルのメタノール中に投入してポリマーを析出させ、濾取、乾燥した。
(2)シートの成形
(1)で得られた共重合体を用い、実施例1(3)と同様に行なった。
【0072】
比較例1における触媒成分、重合条件等を表1に、得られた共重合体及びシートの物性を表2に示す。
比較例1の共重合体においては、100℃にシャープな融解ピークが認められた。図8にDSC(昇温測定)チャートを示す。
また、比較例1の共重合体は、主結晶化温度ピーク(64.5℃)の高温側にサブピークを有さないものであった。図9にDSC(降温測定)チャートを示す。
図3,6と図8とを比較すると、実施例の共重合体は主結晶化温度ピークの高温側にサブピークを有するのに対し、比較例の共重合体はかかるサブピークを有さないことがわかる。両者の弾性回復率に大きな差があるのは、このような熱的性質の違いによると思われる。
【0073】
比較例2
(1)(2)触媒の調製及びエチレンと2-ノルボルネンとの共重合
表1に示すように触媒成分及び重合条件を変更した以外は、実施例1と同様にして共重合体を得た。
(3)シートの成形
(2)で得られた共重合体を用い、実施例1(3)と同様に行なった。
比較例2における触媒成分、重合条件等を表1に、得られた共重合体及びシートの物性を表2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のオレフィン系共重合体は、優れた弾性回復性、透明性、衝撃吸収性及び適度な弾性率を有し、物性バランスに優れたもので、包装分野,医療分野,農業分野等の種々の分野におけるフィルムやシートの材料あるいは型物成形品の成形材料などとして有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例1の共重合体のDSC(昇温測定)チャートである。
【図2】
実施例3の共重合体のDSC(昇温測定)チャートである。
【図3】
実施例3の共重合体のDSC(降温測定)チャートである。
【図4】
実施例4の共重合体の13C-NMRチャートである。
【図5】
実施例7の共重合体のDSC(昇温測定)チャートである。
【図6】
実施例7の共重合体のDSC(降温測定)チャートである。
【図7】
実施例7の共重合体の13C-NMRチャートである。
【図8】
比較例1の共重合体のDSC(昇温測定)チャートである。
【図9】
比較例1の共重合体のDSC(降温測定)チャートである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-15 
出願番号 特願平4-90261
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小出 直也  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 石井 あき子
船岡 嘉彦
登録日 2002-09-20 
登録番号 特許第3350951号(P3350951)
権利者 出光興産株式会社
発明の名称 オレフィン系共重合体  
代理人 渡辺 喜平  
代理人 渡辺 喜平  

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