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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1122870
異議申立番号 異議2003-73679  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-09-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-30 
確定日 2005-07-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3434115号「水中油型乳化化粧料」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3434115号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 
理由
1.手続の経緯

特許第3434115号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成8年2月29日に特許出願され、平成15年5月30日にその発明について特許権の設定登録がされ、その後、その特許について特許異議申立人岡本員明により特許異議の申立てがされ、取消の理由が通知され、その意見書提出指定期間内である平成16年6月22日に訂正請求がされたものである。


2.訂正の適否についての判断

2-1 訂正の内容

特許権者の求めている訂正の内容は以下のとおりである。

(i)訂正事項a:【発明の名称】の「乳化化粧料」を、「水中油型乳化化粧料」と訂正する。

(ii)訂正事項b(1):【特許請求の範囲】の【請求項1】の「(A)高級脂肪酸」を、「(A)高級脂肪酸(塩の形で用いる)」と訂正する。

(iii)訂正事項b(2):【特許請求の範囲】の【請求項1】の「2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩」を削除する。

(iv)訂正事項b(3):【特許請求の範囲】の【請求項1】〜【請求項3】の「乳化化粧料」を、それぞれ「水中油型乳化化粧料」と訂正する。

(v)訂正事項c:段落【0005】の「電解質の塩類」を、「電解質」と訂正する。

(vi)訂正事項d:段落【0006】の「電解質の塩類」を、「特定の電解質」と訂正する。

(vii)訂正事項e:段落【0007】の「電解質の塩類」を、「特定の電解質」と訂正する。

(viii)訂正事項f(1):段落【0008】の「(A)高級脂肪酸」を、「(A)高級脂肪酸(塩の形で用いる)」と訂正する。

(ix)訂正事項f(2):段落【0008】の「2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩」を削除する。

(x)訂正事項f(3):段落【0008】の「乳化化粧料」を、「水中油型乳化化粧料」と訂正する。

(xi)訂正事項g:段落【0017】の「2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩」を削除する。

(xii)訂正事項h(1):段落【0019】の「乳化化粧料」(2箇所)を、それぞれ「水中油型乳化化粧料」と訂正する。

(xiii)訂正事項h(2):段落【0019】の「皮膚賦活剤剤等」を、「皮膚賦活剤等」と訂正する。

(xiv)訂正事項i:段落【0031】の「2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸、」を削除する。

(xv)訂正事項j:段落【0043】の「0.12モル濃度」を、「0.11モル濃度」と訂正する。

(xvi)訂正事項k(1):段落【0045】の「電解質の塩類」を、「特定の電解質」と訂正する。

(xvii)訂正事項k(2):段落【0045】の「乳化化粧料」を、「水中油型乳化化粧料」と訂正する。

2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(i)訂正事項b(1)〜b(3)について

「(A)高級脂肪酸」を「(A)高級脂肪酸(塩の形で用いる)」に限定する訂正、(C)成分の選択肢の一つであった「2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩」を削除する訂正、及び「乳化化粧料」を「水中油型乳化化粧料」に限定する訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、段落【0011】に「本発明では、これら高級脂肪酸を塩の形で用いる。」と記載され、段落【0007】に「本発明者らは、・・・水中油型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載されていることからみて、上記訂正はいずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、且つ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(ii)その他の訂正事項について

訂正事項a、f(1)〜f(3)、g、h(1)及びk(2)は、いずれも、訂正事項b(1)〜b(3)による特許請求の範囲を減縮する訂正に伴って、明細書中の記載を訂正後の発明の内容と整合させるものであって、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項c、d、e及びk(1)は、いずれも「電解質の塩類」を、特許請求の範囲における(C)成分の表記(「・・・の中から選ばれる・・・電解質」)に合わせて、「電解質」又は「特定の電解質」と訂正するものであり、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との間における記載上の不一致を解消するものであるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項h(2)は「皮膚賦活剤剤等」を「皮膚賦活剤等」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものである。

訂正事項iは、特許請求の範囲における(C)成分の選択肢の一つである「2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸」が、発明の詳細な説明において任意添加成分(その他薬剤成分)としても記載(重複記載)されていたところ、これを削除するものであるから、当該訂正は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との間における記載上の不一致を解消するものであって、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項jは、訂正事項b(2)により特許請求の範囲における(C)成分の選択肢から「2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩」が削除されたことに伴い、実施例3における(C)成分のモル濃度を訂正したものであるから、当該訂正は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との間における記載上の不一致を解消するものであって、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。

そして、上記訂正事項a、c〜k(2)はいずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

したがって、訂正事項a〜k(2)の訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2〜3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


3.特許異議の申立てについて

3-1 申立ての理由の概要

特許異議申立人は、以下の理由により上記訂正前の請求項1〜3に係る本件特許は特許法第113条第2号の規定によって取り消されるべきであると主張している。

理由1:本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する。

理由2:本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反する。

理由3:本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第7号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者が上記出願の発明者と同一でなく、また本件出願時に本件出願人が上記出願の出願人と同一の者でもないから、特許法第29条の2の規定に違反する。

3-2 本件発明

上記2.のとおり訂正が認容されるので、本件特許の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件第1〜3発明」という。)は、平成16年6月22日付け訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 (A)高級脂肪酸(塩の形で用いる)、(B)HLBが10以上の非イオン性界面活性剤、および(C)塩化ナトリウム、塩化カリウム、エデト酸三ナトリウム、アスコルビン酸、2-o-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸、乳酸、乳酸ナトリウムの中から選ばれる1種または2種以上の電解質を含有し、(C)成分が0.05〜0.2モル濃度の割合で配合されている、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】 (B)成分が乳化化粧料全量中に0.01〜10重量%配合されている、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】 (A)成分が乳化化粧料全量中に0.5〜5.0重量%配合されている、請求項1または2記載の水中油型乳化化粧料。」

3-3 甲各号証の記載の概要

甲第1号証:特開平2-215708号公報
甲第1号証には、シリコン油含量が50重量%未満である油性基剤、水及び乳化剤を含有し、25℃における粘度が20,000cps以下である乳液状油中水型乳化化粧料が記載されている(特許請求の範囲第1項)。

甲第2号証:特開平6-287128号公報
甲第2号証には、(a)油分を5.0〜50.0重量%と、(b)特定のグルタミン酸ジエステルの1種又は2種以上を0.05〜25.0重量%と、(c)無機塩類を0.01〜10.0重量%と、(d)界面活性剤を0.05〜10.0重量%とからなる乳化組成物が記載され(請求項1)、その実施例7には、水酸化カリウムで塩の形にした油分としてのステアリン酸を3.0重量%、非イオン界面活性剤であるPOE(20)ソルビタンモノステアレート(HLB=14.9)を2.0重量%、並びに無機塩類としての塩化ナトリウム2.5重量%、塩化カリウム2.5重量%及び海水を特定のグルタミン酸ジエステルと共に配合したファンデーションが記載されている。

甲第3号証:特開平4-182413号公報
甲第3号証には、直接還元性を示さないα-グリコシル-L-アスコルビン酸と、アミノ酸又はその誘導体、アラントイン又はその誘導体、オドリコ草抽出物、グリチルレチン、ビタミンE又はその誘導体、ムコ多糖から選ばれる1種又は2種以上とを含有する皮膚外用剤が記載され(特許請求の範囲第1項)、その実施例1〜6、9、10には、ステアリン酸、特定の非イオン性界面活性剤、及び2-o-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸を所定量配合したクリーム、乳液、栄養クリームがそれぞれ記載されている。

甲第4号証:特開平7-247119号公報
甲第4号証には、表面を疎水化処理した超微粒子二酸化チタン及び非イオン性界面活性剤を含む二酸化チタン水性分散体が記載され(請求項1)、その試験例2には、ステアリン酸を3.5重量部、2種類の非イオン性界面活性剤を計6.0重量部、塩化ナトリウムを3.0重量部、及び二酸化チタン水性分散体を二酸化チタンとして6.0重量部配合した水中油型の日焼け止めクリームが記載されている。

甲第5号証:特開平8-12568号公報
甲第5号証には、多価アルコール誘導体、尿素及び臨界ミセル濃度未満の非イオン界面活性剤からなる群より選択された1種又は2種以上とdl-α-トコフェロール-2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステル及び/又はその塩とを配合した化粧料が記載され(請求項1)、その実施例16には、水酸化ナトリウムで塩の形にしたステアリン酸及びベヘニン酸を合計3.0重量%、2種類の非イオン界面活性剤を合計2.5重量%、エデト酸塩を0.05重量%、及びdl-α-トコフェロール-2-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム塩0.4重量%を配合したハンドクリームが記載されている。

甲第6号証:特開平7-101847号公報
甲第6号証には、水溶性紫外線吸収剤と、HLBが8以上の非イオン界面活性剤と、高級脂肪酸石鹸とを配合した乳化組成物が記載され(請求項1)、その実施例3には、水酸化ナトリウムで塩の形にしたイソステアリン酸を2.0重量%、2種類の非イオン界面活性剤を合計3.0重量%、エデト酸三ナトリウム塩を0.02重量%、及び2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸ナトリウムを1.0重量%配合した日焼け止め乳液が記載されている。

甲第7号証:特願平7-163046号(特開平8-333260号公報)
甲第7号証には、ビタミンC誘導体であるL-アスコルビン酸2-リン酸のアルカリ金属又はアルカリ土金属塩、L-アスコルビン酸のグルコース配糖体(2-O-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸)又はL-アスコルビン酸のオリゴ配糖体を必須成分とする皮膚の炎症の予防・治療及び皮膚の老化防止の予防・改善作用をもつ皮膚外用剤が記載され(請求項1)、その実施例3には、ステアリン酸を0.5g/100ml、2種類の非イオン界面活性剤を合計4.0g/100ml、及びL-アスコルビン酸2-グルコシドを4.0g/100ml配合した皮膚用乳液が記載されている。

3-4 対比、判断

(i)理由1について(特許法第29条第1項第3号)

甲第1号証に記載された乳液状乳化化粧料は、油中水型であって、本件第1発明の水中油型とは明らかに相違する。また、甲第2号証の請求項1には、(a)油分を5.0〜50.0重量%と、(b)特定のグルタミン酸ジエステルの1種又は2種以上を0.05〜25.0重量%と、(c)無機塩類を0.01〜10.0重量%と、(d)界面活性剤を0.05〜10.0重量%とからなる乳化組成物が記載されているが、本件第1発明の(A)(B)(C)成分を組み合わせ且つ(C)成分が特定の濃度範囲内である水中油型乳化化粧料についての具体的な開示はされていないし、この特定の水中油型乳化化粧料が甲第2号証の記載から自明であるともいえない。したがって、本件第1発明は甲第1、2号証に記載された発明であるとすることはできない。

また、本件第2〜3発明は本件第1発明の特定事項をすべて含む発明であるから、同様にこれらの発明も甲第1、2号証に記載された発明とはいえない。

したがって、本件第1〜3発明は、甲第1、2号証に記載された発明でないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(ii)理由2について(特許法第29条第2項)

異議申立人は、甲第1〜6号証の各証拠から本件第1〜3発明が容易であると主張している。

しかし、甲第1号証は上記のとおり油中水型の乳化化粧料であり、甲第3号証はステアリン酸を塩の形で用いるものではない点で、高級脂肪酸塩乳化型の水中油型乳化化粧料である本件第1発明を技術的に導くことは不可能である。

甲第2号証の実施例7には、本件発明の(A)成分に相当するステアリン酸カリウム、(B)成分に相当するPOE(20)ソルビタンモノステアレート、及び(C)成分に相当する塩化ナトリウム、塩化カリウム及び海水を、特定のグルタミン酸ジエステルと共に配合した水中油型のファンデーション(乳化化粧料)の処方が記載されている。また、甲第4〜6号証には、その実施例に界面活性剤(2種類組合せて使用しているためHLB値が必ずしも10以上とは限らない)と(A)(C)に対応する成分を含む水中油型乳化化粧料の具体的処方の記載がなされている。しかし、これらはいずれも(C)成分の濃度が本件第1発明の範囲を逸脱している。

本件第1発明は、高級脂肪酸塩乳化型の乳化化粧料において、特に電解質を0.05〜0.2モル濃度含有する場合、HLBが10以上の非イオン性の界面活性剤を組合せて用いることにより、乳化系が長期間安定であり、変臭やブツを発生することがなく、皮膚に対する安全性も高く、極めて優れた水中油型乳化化粧料が得られることを見いだしたものであるところ、上記各甲第2、4〜6号証には、このような高級脂肪酸塩乳化型の乳化化粧料における問題の存在やその解決の必要性についての示唆はない。したがって、これらの刊行物において通常最良の配合として開示されていると考えられる上記処方中、電解質成分に着目し、あえて本件第1発明の濃度範囲に変更することの動機付けは見いだせない。

さらにこれらの証拠を総合しても、本件第1発明の水中油型乳化化粧料の配合を当業者が容易に発明できたとすることはできない。

また、本件第2〜3発明は本件第1発明の特定事項をすべて含む発明であるから、同様にこれらの発明も当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

したがって、本件第1〜3発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反しない。

(iii)理由3について(特許法第29条の2)

甲第7号証の実施例3の皮膚用乳液は、その配合成分であるステアリン酸が塩の形ではないから、本件第1発明の乳化化粧料と同一ではない。

また、本件第2〜3発明は本件第1発明の特定事項をすべて含む発明であるから同様にこれらの発明も甲第7号証に記載された発明と同一ではない。

したがって、本件第1〜3発明は、甲第7号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一ではないから、特許法第29条の2の規定に違反しない。


4.むすび

以上のとおりであるから、本件請求項1〜3に係る発明の特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことができない。

また、他に請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水中油型乳化化粧料
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)高級脂肪酸(塩の形で用いる)、(B)HLBが10以上の非イオン性界面活性剤、および(C)塩化ナトリウム、塩化カリウム、エデト酸三ナトリウム、アスコルビン酸、2-o-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸、乳酸、乳酸ナトリウムの中から選ばれる1種または2種以上の電解質を含有し、(C)成分が0.05〜0.2モル濃度の割合で配合されている、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】(B)成分が乳化化粧料全量中に0.01〜10重量%配合されている、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】(A)成分が乳化化粧料全量中に0.5〜5.0重量%配合されている、請求項1または2記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は乳化化粧料に係り、さらに詳しくは、皮膚に対する安全性が高く、経時安定性に優れた、高級脂肪酸塩乳化型の乳化化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に高級脂肪酸は、10重量%以下の水溶液においてチキソトロピー性のあるゲル状を呈し、皮膚への塗布感触がよく、また油分の乳化性が良好なこと等から、乳化化粧料において古くから、特に塩として、広汎に利用されている。
【0003】
ところで乳化化粧料は長期間に亘って系の安定性を保つことが難しい。なかでも流動性の高い乳液などにおいては特に難しく、クリーミング、凝集、合一が起きやすいため、▲1▼粒子を微細化する、▲2▼外相の粘度を上昇させる、▲3▼内外相の比重を調整する、などの手段が講じられている。
【0004】
高級脂肪酸塩乳化型の化粧料では、上述した不安定要因の他、長期保存において、往々にして変臭やブツの発生がみられることがあった。例えば、炭素数16以上の高級脂肪酸のナトリウム塩またはカリウム塩は、乳化性が良好でしかも皮膚への安全性の点からも問題ないものであるが、クラフト点が室温以上であり、室温では結晶を生じてしまう。このため、炭素数16以上の高級脂肪酸塩を用いる場合は、通常、HLB10未満の非イオン性の脂肪酸モノグリセリド等の界面活性剤を併用して結晶析出を抑制し、長期にわたって乳化系の安定性を保っていた。
【0005】
しかしながら、電解質を系中に配合、特に0.01モル濃度以上配合すると、乳化状態が悪化し、乳化組成物の長期の安定性を確保することができなくなるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、高級脂肪酸塩乳化型の乳化化粧料において、特に特定の電解質を系中に0.01モル濃度以上含有させる場合でも、乳化系が長期間安定であり、変臭やブツを発生することがなく、皮膚に対する安全性も高い乳化化粧料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、高級脂肪酸塩乳化型の乳化化粧料において、特に特定の電解質を0.01モル濃度以上含有する場合でも、HLBが10以上の非イオン性の界面活性剤を組み合わせて用いることにより、乳化系が長期間安定であり、変臭やブツを発生することがなく、皮膚に対する安全性も高く、極めて優れた水中油型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明によれば、(A)高級脂肪酸(塩の形で用いる)、(B)HLBが10以上の非イオン性界面活性剤、および(C)塩化ナトリウム、塩化カリウム、エデト酸三ナトリウム、アスコルビン酸、2-o-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸、乳酸、乳酸ナトリウムの中から選ばれる1種または2種以上の電解質を含有し、(C)成分が0.05〜0.2モル濃度の割合で配合されている、水中油型乳化化粧料が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0010】
(A)成分としての高級脂肪酸は、炭素数16以上の脂肪酸であり、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。これら高級脂肪酸は1種または2種以上を用いることができる。その配合量は0.5〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.8〜3.0重量%である。0.5重量%未満では十分な乳化が難しく、一方、5.0重量%を超えると皮膚に対する安全性の面から好ましくない。
【0011】
本発明では、これら高級脂肪酸を塩の形で用いる。高級脂肪酸を塩にするのは常法により行うことができる。塩形成物質は、水溶液系で塩基性を示すものであれば特に限定されるものでなく、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、アルカノールアミン塩等が好適に用いられる。これら塩形成物質の中から任意の1種または2種以上を用いることができる。塩形成物質の配合量は高級脂肪酸に対して1/10当量以上が好ましい。1/10当量未満ではイオン化しない高級脂肪酸が結晶化しやすく、低温、経時で結晶が析出し、安定性が損なわれるおそれがある。
【0012】
高級脂肪酸を2種以上用いる場合は、各高級脂肪酸をそれぞれを塩にしてから混合してもよく、あるいは各高級脂肪酸を混合した後、これらを中和してもよい。本発明の乳化化粧料を製造するにあたって、高級脂肪酸を塩にしたものを他の成分とともに混合し、乳化してもよいし、あるいは高級脂肪酸を油性成分に、塩形成物質を水性成分にそれぞれ混合し、乳化時に高級脂肪酸塩を形成させるようにしてもよい。
【0013】
(B)成分としての非イオン性界面活性剤はHLB10以上のものである。HLBが10未満では乳化の状態が悪くなり、乳化粒子の凝集、合一等を生じる。なお本発明では、このHLBは下記数1
【0014】
【数1】
HLB=7+11.7・log(MW/MO)
(ただし、MWは親水基部の分子量を表し、MOは親油基部の分子量を表す)で表される川上式により算出される。
【0015】
本発明で用いられるHLB10以上の非イオン性界面活性剤としては、例えばPOEソルビタンモモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンモノオレート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類;POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類;POEモノオレエート、POEモノステアレート、POEジステアレート、POEモノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類;POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2-オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類;プルロニック(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコール)等のプルロニック型類;POE・POPセチルエーテル、POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類;テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類;POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油誘導体;POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体;ヤシ油脂肪酸ジエタノールポリアミルアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド;POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸等が挙げられる。さらにシリコーン系界面活性剤として、ジメチルポリシロキサン、ポリエチレングリコール類、ジメチルポリシロキサンポリエチレン類、ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール共重合体類、ジメチルポリシロキサン・メチル(ポリム、カラオキシエチレン)シロキサン共重合体類等が挙げられる。これらのなかでも、POEグリセリン脂肪酸エステル類、POE脂肪酸エステル類、プルロニック型類、POE硬化ヒマシ油誘導体が特に好ましい。本発明ではこれら非イオン性活性剤の中から1種または2種以上を用いることができる。
【0016】
かかる(B)成分の配合量は0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。0.01重量%未満では系の安定性が向上せず、一方、10重量%を超えて配合するとべたつきが感じられるようになる。
【0017】
(C)成分としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、エデト酸三ナトリウム、アスコルビン酸、2-o-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸、乳酸、乳酸ナトリウムの中から選ばれる1種または2種以上の電解質が用いられる。
【0018】
かかる(C)成分の配合量は、乳化化粧料の安定性、使用性の点から系中に0.05〜0.2モル濃度である。
【0019】
本発明の水中油型乳化化粧料には、前記必須成分のほか、通常の水中油型乳化化粧料に用いられる成分を本発明の目的、効果を損なわない質的、量的範囲内で配合することができる。これら成分としては、例えば水性媒体、油性成分、保湿剤、高級アルコール、金属イオン封鎖剤、天然および合成高分子、水溶性および油溶性高分子、紫外線吸収剤、血行促進剤、無機および有機顔料、無機および有機粘土鉱物、金属石鹸処理またはシリコ-ンで処理された無機および有機顔料、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等が挙げられる。
【0020】
水性媒体としては、水を単独で、あるいは水とエタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出液、セイヨウノコギリソウ抽出液、メリロート抽出液等が挙げられる。これらの配合量は特に制限されないが、全組成中に0.1〜40重量%、特には2〜30重量%配合するのが好ましい。0.1重量%未満では感触が悪くなり、一方、40重量%を超えると安定なエマルジョンが得られず好ましくない。
【0021】
油性成分としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂;カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂;ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類;流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリトリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリトリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2-2ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等の合成エステル油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状シリコーン等が挙げられる。これらの油性成分は、1種または2種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜60重量%、特には2.5〜40重量%配合するのが好ましい。
【0022】
保湿剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イサヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物、トリメチルグリシン、テンチャエキス等が挙げられる。これらの保湿剤は1種または2種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜60重量%、特には2.5〜40重量%配合するのが好ましい。
【0023】
高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0024】
金属イオン封鎖剤としては、例えば1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸等が挙げられる。
【0025】
天然の水溶性高分子としては、例えばアラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子等が挙げられる。
【0026】
半合成の水溶性高分子としては、例えばカルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等が挙げられる。
【0027】
合成の水溶性高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(商品名「カーボポール」)等のビニル系高分子;ポリエチレングリコール(分子量20,000、4,000、6,000)等のポリオキシエチレン系高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子;ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。
【0028】
無機の水溶性高分子としては、例えばベントナイト、ケイ酸AlMg(商品名「ビーガム」)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0029】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート、3,4,5-トリメトキシケイ皮酸3-メチル-4-[メチルビス(トリメチルシリキシ)シリル]ブチル等の桂皮酸系紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、テレフィタリリデンジカンファースルホン酸等が挙げられる。
【0030】
血行促進剤としては、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール等が挙げられる。
【0031】
その他薬剤成分としては、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸DL-α-トコフェロール、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロール 2-L-アスコルビン酸リン酸ジステルカリウム、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類;エストラジオール、エチニルエストラジオール等のホルモン;アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、メチオニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸;アラントイン、アズレン等の坑炎症剤;アルブチン等の美白剤;酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤;L-メントール、カンフル等の清涼剤やイオウ、塩化リゾチーム、塩酸ピリドキシン、γ-オリザノール等がある。
【0032】
上記薬物成分は遊離の状態で使用されるほか、造塩可能なものは酸または塩基の塩の型で、またカルボン酸基を有するものはそのエステルの形で使用することができる。
【0033】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0034】
抗菌剤としては、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル、パラクロルメタクレゾール、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0035】
各種の抽出液としては、ドクダミエキス、オウバクエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、キナエキス、ユキノシタエキス、クララエキス、コウホネエキス、ウイキョウエキス、サクラソウエキス、バラエキス、ジオウエキス、レモンエキス、シコンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、スギナエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、キイチゴエキス、メリッサエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、モモエキス、桃葉エキス、クワエキス、ヤグリマギクエキス、ハマメリス抽出液、プラセンタエキス、胸線抽出物、シルク抽出液、甘草エキス等が挙げられる。
【0036】
さらに、本発明の乳化化粧料には、必要に応じて適当な香料、色素等を乳化安定性を損なわない範囲で添加できる。
【0037】
本発明の乳化化粧料は、通常の方法によって製造することができ、例えば基礎化粧料、薬用化粧料、外用医薬基剤などとして適用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものでない。なお、配合量はすべて重量%である。
【0039】
実施例1〜2、比較例1〜2
表1に示す組成の乳化組成物を調製し、経時安定性について評価を行った。
[経時安定性]
各乳化組成物につき、2か月間保存(室温)したもの、1か月間保存(-5℃、0℃、37℃、50℃の各温度)したものを試料として用い、これらを顕微鏡観察により乳化状態を調べ、その結果を総合的に評価した。
(評価)
○:乳化粒子のブツ・凝集・合一が全く認められない
△:乳化粒子のブツ・凝集・合一がわずかに認められる
×:乳化粒子のブツ・凝集・合一が明確に認められる
【0040】
【表1】

表1の結果から、本発明品は経時安定性に優れたものであることがわかる。
【0041】
【0042】
【0043】
実施例3:日中用乳液
配 合 成 分 配 合 量
A(油相部)
ワセリン 1.0
流動パラフィン 2.0
POE(10)ベヘニルエーテル(HLB=9) 1.0
POE(15)セチルエーテル(HLB=13) 1.0
ステアリルアルコール 1.0
ベヘニン酸 0.7
ステアリン酸 0.1
イソステアリン酸 0.2
オクチルメトキシシンナメート 5.0
4-メトキシ4’-t-ブチルジベンゾイルメタン 3.0
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン 0.5
ジーパラメトキシケイ皮酸-モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル
1.0
防腐剤 0.2
香料 0.1
B(水相部)
プロピレングリコール 1.0
塩化カリウム 0.5
乳酸 0.2
乳酸ナトリウム 0.2
エデト酸三ナトリウム 0.05
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩 0.3
カルビキシルビニルポリマー 0.25
水酸化カリウム 0.4
蒸留水 残 余
(製造法)
A相(油相部)、B相(水相部)の各原料をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解した後、油相部を水相部に添加、混合し、乳化機にて乳化処理した。得られた乳化物を熱交換機にて終温30℃まで冷却して日中用乳液を得た。系中の電解質濃度は0.11モル濃度であった。この日中用乳液の経時安定性を上記評価基準に従って評価したところ「○」であった。
【0044】
実施例4:日中用クリーム
配 合 成 分 配 合 量
A(油相部)
セタノール 4.0
ワセリン 2.0
スクワラン 10.0
POE(40)ソルビタンモノオレエート(HLB=18) 2.0
POE(5)グリセリンモノステアレート(HLB=8) 2.0
トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリル 5.0
ステアリン酸 2.0
パルミチン酸 2.0
イソプロピルミリステート 6.0
グリチルレチン酸ステアリル 0.5
オクチルメトキシシンナメート 2.0
ジパラメトキシケイ皮酸-モノ-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン 2.0
防腐剤 0.3
香料 0.2
B(水相部)
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
2-o-α-D-グルコピラノシル-L-アスコルビン酸 5.0
トリメチルグリシン 2.0
エデト酸三ナトリウム 0.1
水酸化カリウム 1.3
プラセンタエキス 0.3
蒸留水 残 余
(製造法)
A相(油相部)、B相(水相部)の各原料をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解した後、油相部を水相部に添加、混合し、乳化機にて乳化処理した。得られた乳化物を熱交換機にて終温30℃まで冷却して日中用クリームを得た。系中の電解質濃度は0.15モル濃度であった。この日中用クリームの経時安定性を上記評価基準に従って評価したところ「○」であった。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、高級脂肪酸塩乳化型の乳化化粧料において、特に特定の電解質を系中に0.01モル濃度以上含有させる場合でも、乳化系が長期間安定であり、変臭やブツを発生することがなく、皮膚に対する安全性も高い水中油型乳化化粧料が提供されるという効果を奏する。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-17 
出願番号 特願平8-69047
審決分類 P 1 651・ 113- YA (A61K)
P 1 651・ 16- YA (A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高原 慎太郎  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 中野 孝一
弘實 謙二
登録日 2003-05-30 
登録番号 特許第3434115号(P3434115)
権利者 株式会社資生堂
発明の名称 水中油型乳化化粧料  
代理人 長谷川 洋子  
代理人 長谷川 洋子  

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