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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C01B
管理番号 1122872
異議申立番号 異議2003-71100  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-25 
確定日 2005-06-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3339590号「オゾン発生装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3339590号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯、本件発明
特許3339590号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成4年10月29日に特許出願され、平成14年8月16日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1に係る発明の特許について、特許異議申立人 安井郁子より特許異議の申立てがなされた。そして、当審において取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされるとともに特許異議意見書が提出され、それに対し、当審で特許異議申立人に審尋したところ、特許異議申立人からの回答がなかったものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち訂正事項ア〜ウのとおりに訂正しようとするものである。
訂正事項ア.
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項1に『前記誘電電極は放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を介して電源と接続されていること』とあるのを、「前記誘電電極は対をなし、該対をなす誘電電極の各誘電電極と交流電源の両端との間に、放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を夫々介在させて該交流電源と接続されていること」に訂正する。
訂正事項イ.
本件特許明細書の段落番号【0006】に『第1の発明のオゾン発生装置は、誘電体基板の表面に放電電極を形成し、また前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置の、前記誘電電極と電源の間に放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を介在させた。この抵抗器は、各誘電電極の近傍に介在させることが好ましい。』とあるのを、「第1の発明は、誘電体基板の表面に放電電極を形成し、前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置において、前記誘電電極は対をなし、該対をなす誘電電極の各誘電電極と交流電源の両端との間に、放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を夫々介在させて該交流電源と接続されていることを特徴とする。」に訂正する。
訂正事項ウ.
本件特許明細書の段落番号【0024】に『第1の発明においては、誘電電極と電源との間に夫々抵抗器を介在させること』とあるのを、「第1の発明においては、対をなす誘電電極と交流電源の両端との間に夫々抵抗器を介在させること」に訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張又は変更の存否
訂正事項アは、訂正前の請求項1の「前記誘電電極は放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を介して電源と接続されていること」を「前記誘電電極は対をなし、該対をなす誘電電極の各誘電電極と交流電源の両端との間に、放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を夫々介在させて該交流電源と接続されていること」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項アについては、特許明細書の「本発明のオゾン発生装置は、図1に示すように…(略)…誘電体基板1内部に埋設された対の誘電電極4、…(略)…各誘電電極4と電源(交流高電圧)との間に夫々介在させた抵抗器6…(略)…を備えてなるものである」(段落【0014】)、「抵抗器6を介在させる位置は、図1の例の他、例えば誘電電極4に隣接させてもよい。この抵抗器6の位置は誘電電極4に近いほど放電によって発生する高周波成分の放射場所を減らせるため好ましい。」(段落【0016】)との記載があり、また、図1及び2に抵抗器6の位置が図示されていることから、訂正事項アは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項イ及びウは、訂正事項アに基づく訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るものであるから、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、また、上記訂正事項アで見たとおり、それらはいずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

2-3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
3-1.本件発明
上記のとおり、訂正は認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、訂正された特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 誘電体基板の表面に放電電極を形成し、前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置において、前記誘電電極は対をなし、該対をなす誘電電極の各誘電電極と交流電源の両端との間に、放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を夫々介在させて該交流電源と接続されていることを特徴とするオゾン発生装置。」

3-2.取消理由の概要
刊行物1 特開平3-190077号公報(特許異議申立人が提示した甲第1号証)
刊行物2 特開昭62-51463号公報(同甲第3号証)
刊行物3 特開昭63-221365号公報(同甲第5号証)
刊行物4 実願平2-100079号(実開平4-58993号)のマイクロフィルム
本件特許第3339590号の請求項1に係る発明は、刊行物1及び3、刊行物2及び3、或いは、刊行物1及び4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。

3-3.取消理由で引用された刊行物に記載された技術的事項
(1)刊行物1(特開平3-190077号公報(特許異議申立人が提示した甲第1号証))の記載内容
ア.「本発明は、オゾン発生器、イオン発生器等に使用されるコロナ放電器に関する。」(第1頁左下欄第13行〜同頁同欄第14行)
イ.「本発明の要旨は、例えば第1図の概略構成を示す断面図に示されるように、誘電体基板H1と、該誘電体基板H1の表面に設けられた放電極H2と、前記誘電体基板H1を介して放電極H2と対向し、かつ高周波高電圧電源H3に接続された少なくとも一対の電極H4,H5とを備えたことを特徴とするコロナ放電器Hにある。」(第2頁左上欄第1〜10行、第1図)

(2)刊行物2(特開昭62-51463号公報(同甲第3号証)の記載内容
ア.「誘電材料を間に介在させて設けられた一対の第1電極と、前記一対の電極のそれぞれから離間し、かつそれぞれの間に誘電材料を介在させて設けられた第2電極と、前記一対の第1電極間に交互電圧を印加する手段を有することを特徴とする放電装置」(請求の範囲)
イ.「第3図は本発明の実施例による放電装置の断面図である。該放電装置は一対の第1電極1-1および1-2.第2電極2、誘電体11および交互電圧電源16を有する。第1電極1-1および1-2は、薄板状で誘電体11中に離間して埋設されている。したがって、第1電極1-1と第1電極1-2との間には誘電材料が介在している。本実施例においては、第1電極1-1と第1電極1-2は同一平面上に設けられている。第2電極2は誘電体11の底面に固着され、外部に露出している。したがって、第1電極1-1と第2電極2との間および第1電極1-2と第2電極2との間にも誘電材料が介在している。後述のごとく第1電極1-1と第1電極1-2とは交互電圧電源16に接続されているが、第2電極2は電気的には他の要素のいずれとも接続されておらず、電気的に浮いた状態とされている。」(第2頁右上欄第7行〜同頁左下欄第4行)
ウ.「一対の第1電極1-1、1-2の間には、交互電圧電源16によって交互電圧が印加される。ここで、交互電圧の波形としては、サイン波、矩形波、パルス波、三角波などのいすれでもよい。交互電圧電源16によって一対の第1電極の間に交互電圧が印加されると、第2電極2の両側と誘導体11の底面との間の空気ギャップにグロー放電が起り正・負のイオンが発生する。」(第2頁左下欄第13〜20行)

(3)刊行物3(特開昭63-221365号公報(同甲第5号証)の記載内容)
ア.「放電装置には一般に放電抑制抵抗が取付けられ、該放電装置から発せられるノイズによって、他の装置あるいはシステムが誤動作したり、破損したりすることのないようにする対策が施されている。第7図は従来の放電装置の一例を示す回路図である。図において、1は高電圧発生部、2は該高電圧発生部1から発生された高電圧を伝送する伝送線路、3は該伝送線路2に接続された放電抑制抵抗、4は放電器である。…(略)…上記の構成の放電装置は他の装置あるいはシステムを妨害する放電ノイズを抑制する効果を有しているが、その抑制の効果はまだ十分ではないという問題があった。」(第1頁右下欄第2行〜第2頁左上欄第4行、第7図)

(4)刊行物4(実願平2-100079号(実開平4-58993号)のマイクロフィルムの記載内容)
ア.「誘電体層を介して線状放電電極と面状誘導電極とを一体的に設けた沿面コロナ放電素子の駆動電源であって、前記沿面コロナ放電素子をキャパシタンスとして利用し可聴周波数以上の周波数で発振するLC発振回路と、マルチバイブレータ回路と、そのマルチバイブレータ回路の出力に従って前記LC発振回路の発振を停止させる発振禁止回路と、を備えることを特徴とする沿面コロナ放電素子の駆動電源」(請求項1)
イ.「請求項1記載の沿面コロナ放電素子の駆動電源において、前記沿面コロナ放電素子と前記LC発振回路の低圧側とを接続する部分に抵抗を挿入したことを特徴とする沿面コロナ放電素子の駆動電源」(請求項2)
ウ.「本考案はオゾン発生装置、イオン発生装置として用いられる沿面コロナ放電素子の駆動電源に関する。」(2頁第1〜3行)
エ.「コロナ放電は一般に高調波成分を含み、電磁ノイズを発生し易い。本実施例では、沿面コロナ放電素子1とLC発振回路20の低圧側とを接続する部分に2〜20KΩの抵抗15を挿入し、電磁ノイズを減少させることに成功した。…(略)…LC発振回路20の高圧側(22)に抵抗を挿入しても電磁ノイズを減少させることができるが、放電が弱くなるという問題が生じるので、好ましくない。」(9頁第9〜19行)

4.対比、判断
3(1)のア及びイで摘示した事項を本件発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、「誘電体基板の表面に放電極を設けたオゾン発生器において、前記誘電体基板を介して放電極と対向する一対の電極とを備え、前記一対の電極は高周波高電圧電源に接続されているオゾン発生器」の発明(以下、刊行物1発明という)が記載されていると認められる。
そこで、本件発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「誘電体基板の表面に放電極を設け」、「前記誘電体基板を介して放電極と対向する」、「一対の電極」、「高周波高電圧電源」、「オゾン発生器」は、それぞれ本件発明の「誘電体基板の表面に放電電極を形成し」、「前記放電電極と対向する」、「対をなす誘電電極」、「交流電源」、「オゾン発生装置」に相当し、両者は「誘電体基板の表面に放電電極を形成し、前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置において、前記誘電電極は対をなし、該対をなす誘電電極と交流電源と接続されているオゾン発生装置」の点で一致し、次の点で相違する。

【相違点】本件発明では、対をなす誘電電極と交流電源の「両端との間に、放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を夫々介在させて」接続されているのに対し、刊行物1発明の対をなす誘電電極と交流電源の接続には、それがない点

以下、上記相違点について検討する。
刊行物2には、3.(2)のアないしウで摘示した事項にあるように、誘電体11の表面に第2電極2を形成し、前記第2電極2と対向する、誘電材料を間に介在させて設けられた一対の第1電極を設け、該誘電材料を間に介在させて設けられた一対の第1電極に交互電圧を印加する手段を有する放電装置(「交流電源」に相当する)が示されている。しかるに、刊行物2には、一対の第1電極と交流電源の「両端との間に、放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を夫々介在させて」接続することの記載はなく、その示唆もない。
刊行物3には、3.(3)のアで摘示した事項にあるように、放電器4は、高周波高電圧電源と接続されて放電が生じる電極が含まれること、放電の際に発生するノイズを防止するために、該放電器を放電抑制抵抗を介して電源である高電圧発生部に接続することが示されている。そして、該放電抑制抵抗は、放電によって発生する高周波成分を低減する働きをするものであるから、本件発明の「放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器」にあたるものである。
すると、刊行物3には、放電装置においてノイズを防止するために、放電によって発生する高周波成分を低減する働きをする抵抗器を介して電極を高周波高圧電源と接続することは示されているものの、本件発明の上記相違点である、「対をなす」誘電電極と交流電源の「両端との間に」放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を「夫々介在させ」ることの記載はなく、その示唆もない。
刊行物4には、3.(4)のアないしエで摘示した事項にあるように、オゾン発生装置として用いられるコロナ放電素子において、コロナ放電は一般に高調波成分を含み、電磁ノイズを発生し易いこと、沿面コロナ放電素子1とLC発振回路20の低圧側とを接続する部分に2〜20KΩの抵抗15を挿入し、電磁ノイズを減少させること、LC発振回路20の高圧側(22)に抵抗を挿入しても電磁ノイズを減少させることができるが、放電が弱くなるという問題が生じるので、好ましくない、との記載がある。すると、刊行物4には、電源内部に抵抗を設けることの記載はあるものの、一対の第1電極と「交流電源の両端との間に」、放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を「夫々介在させて」接続することの記載はなく示唆もない。
してみれば、刊行物1を主引例とした場合、上記相違点は刊行物1ないし4に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たものであるとすることはできない。
また、以上のように、刊行物2ないし4のいずれにも、一対の第1電極と交流電源の「両端との間に」抵抗器を「夫々介在させる」点は記載ないし示唆されていないから、刊行物1にかえて刊行物2ないし4のいずれを主引例としても、本件発明の構成が刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとすることもできない。
そして、本件特許明細書の記載によれば、本件発明は、請求項1記載の構成要件を採用することにより、本件特許明細書記載の特有の効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
オゾン発生装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】誘電体基板の表面に放電電極を形成し、前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置において、前記誘電電極は対をなし、該対をなす誘電電極の各誘電電極と交流電源の両端との間に、放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を夫々介在させて該交流電源と接続されていることを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】誘電体基板の表面に放電電極を形成し、前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置において、前記誘電体基板にヒータが備えられ、且つこのヒータと並列にコンデンサが接続されていることを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項3】誘電体基板の表面に放電電極を形成し、前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置において、前記誘電体基板の前記放電電極及び誘電電極と重合しない位置にヒータが備えられていることを特徴とするオゾン発生装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は衛生陶器に組み込むオゾン脱臭器等のオゾン利用機器に用いるに好適な、ノイズ発生源となる高周波の放射を防止したオゾン発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オゾン発生装置は、放電電極と誘電電極若しくは接地電極との間に高電圧を印加して無声放電を発生させて電子を加速し、これを原料酸素に衝突させてオゾンを生成する。この放電時に電磁雑音(ノイズ)の原因となる高周波が発生するため、特に建物内に設置された例えば洗浄便座等に組み込まれているオゾン脱臭器等は、テレビ或いはラジオのノイズの原因となっていた。
【0003】
従来、このノイズを防止するために、放電電極用の高圧電線として高圧抵抗導体絶縁電線(電線に炭素と合成樹脂とを混合して製造した繊維を巻き、更にその上をエチレンプロピレンゴム等の合成ゴムで被覆したもの。以後、抵抗電線と呼ぶ。)を用いたり、オゾン脱臭器のケーシング外周を絶縁性の樹脂等でシールドする等の対策を講じていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上述の技術では、オゾン発生装置から放射する高周波は数百MHzにも及ぶ強力なものである上、周波数帯域も広範囲に及ぶことから、このノイズを十分に防止することができなかった。
【0005】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前記放電電極等の改良によりノイズの原因となる高周波の放射を低減し、テレビ或いはラジオへの影響を防止したオゾン発生装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく第1の発明は、誘電体基板の表面に放電電極を形成し、前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置において、前記誘電電極は対をなし、該対をなす誘電電極の各誘電電極と交流電源の両端との間に、放電によって発生する高周波成分を低減する抵抗器を夫々介在させて該交流電源と接続されていることを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明のオゾン発生装置は、誘電体基板の表面に放電電極を形成し、前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置の、誘電体基板にヒータを設け、且つこのヒータと並列にコンデンサを接続した。なお、このコンデンサは前記ヒータの近傍に接続することが好ましい。
【0008】
更に、第3の発明のオゾン発生装置は、誘電体基板の表面に放電電極を形成し、前記放電電極と対向する誘電電極を設けたオゾン発生装置の、誘電体基板の前記放電電極及び誘電電極と重合しない位置、即ち平面上から透視して各電極と重ならない位置にヒータを設けた。
【0009】
上記第1乃至第3の発明の構成は適宜組み合わされてよく、特に3つの発明の全ての構成を有するオゾン発生装置、即ち、誘電電極とこれら電極用の電線との間に夫々抵抗器を介在させ、誘電体基板の前記放電電極及び誘電電極と重合しない位置にヒータを設け、且つこのヒータと並列にコンデンサを接続したオゾン発生装置が好ましい。
【0010】
【作用】
誘電電極と電源との間に夫々抵抗器を介在させることによって放電電極と誘電電極との組み合わせばコンデンサとして働く。ノイズの原因となる放電により発生した高周波に対してはこのコンデンサのインピーダンスが小さくなるため、相対的に抵抗器の抵抗値が高くなり、この高周波を消費して減少させる。
【0011】
またヒータと並列にコンデンサを接続することによって閉回路が構成され、ノイズの原因となるヒータ用抵抗電線からの高周波の放射を抑制する。
【0012】
更に誘電体基板に設けたヒータと、放電電極及び誘電電極とが平面から透視して重ならないように配置することによって、ノイズの原因となる高周波のヒータ用抵抗電線への伝播を防止する。
【0013】
【実施例】
以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。ここにおいて図1は本発明のオゾン発生装置の一例を示す正面断面図であり、図2は同、オゾン発生装置を裏面から見た平面図である。
【0014】
本発明のオゾン発生装置は、図1に示すように誘電体基板1a及び1bを合わせてなるセラミック、ガラス製等の誘電体基板1、この誘電体基板1bの表面に形成された放電電極2、放電電極2の表面を保護するための絶縁性保護層3、誘電体基板1a及び1bに挟まれて誘電体基板1内部に埋設された対の誘電電極4、誘電体基板1aの裏面に設けられたチップ抵抗器からなるヒータ5、各誘電電極4と電源(交流高電圧)との間に夫々介在させた抵抗器6、及びヒータ5と並列に設けた積層セラミック等からなるコンデンサ7を備えてなるものである。
【0015】
また図2に示すように平面方向から透視した場合、放電電極2及び誘電電極4はヒータ5と重ならないように配置されている。
【0016】
本発明のオゾン発生装置は以下のようにして駆動させる。即ち、先ず例えば十数KHZ程度の交流高電圧を電極用抵抗電線8によって例えば100KΩのチップ抵抗からなる抵抗器6を介して誘電電極4へ印加する。抵抗器6を介在させる位置は、図1の例の他、例えば誘電電極4に隣接させてもよい。この抵抗器6の位置は誘電電極4に近いほど放電によって発生する高周波成分の放射場所を減らせるため好ましい。
【0017】
上記印加電圧を上昇させて行くとやがて放電開始電圧に達し、放電電極2と誘電電極4との間にパルスが発生して放電が始まる。印加電圧は最終的に設定電圧に迄上昇させて、目標のオゾン濃度を有するオゾン含有気体を生成させる。
【0018】
上述のオゾン発生時には、パルス発生による印加電圧の歪みが原因で、高周波成分が発生する。この高周波成分は最大数百MHZにも及ぶため、これが電極用抵抗電線8に流れ、或いはヒータ5に伝わってここからヒータ用抵抗電線9に流れて放射されるため、テレビ或いはラジオ等の受信時にノイズが発生する。
【0019】
そこで本発明のオゾン発生装置では、対の誘電電極4を挟む形で第1の発明に係る前記抵抗器6を設けた。放電電極2及び誘電電極4の組み合わせは前記発生する高周波成分に対しては一種のコンデンサ(静電容量数pF)としての機能を果たす。即ち、前記高周波成分に対してはこのコンデンサの持つインピーダンスが小さくなり、そのため相対的に抵抗値の大きい抵抗器6がこの高周波成分を消費する。従って電極用抵抗電線8への漏洩を防止することができる。また電極用抵抗電線8からの高周波成分が消費されることによって、ヒータ用抵抗電線9に伝わる高周波成分も減らすことができる。
【0020】
なお、電源である交流高電圧の周波数(例えば15KHZ)が印加された場合は、上記電極が形成するコンデンサの持つインピーダンスが大きくなり、電圧は順当に放電電極2に供給される。
【0021】
また、放電電極2は一般に表面が多孔質のセラミックで作られているため、水分を吸着しやすく、これが放電を妨げてオゾン濃度低下の原因となることがある。そこで誘電体基板1の裏面にヒータ5を設けて常に加熱し続け、水分の付着を防止している。
【0022】
しかし、前記発生した高周波成分はヒータ5にも伝わり、ヒータ用抵抗電線9に流れ出してノイズの原因となる。そこで本発明のオゾン発生装置では、ヒータ5と並列に第2の発明に係るコンデンサ7を設置した。即ち、前記高周波成分に対して、ヒータ5用チップ抵抗(例えば10KΩ)よりもコンデンサ7の方がインピーダンスが低くなるように、例えば静電容量0.001μFのコンデンサ7を用いて閉回路を構成する。すると、前記高周波成分はこの閉回路から出ることができないため、ヒータ用抵抗電線9への流出を防ぐことができる。なお、上記閉回路は小さければ小さいほど有利なため、コンデンサ7はヒータ5の近傍に設置することが好ましい。
【0023】
上述の第2の発明の効果をより高めるために、第3の発明に係る構成として、図2に示すように平面方向から透視した場合、放電電極2及び誘電電極4はヒータ5と重ならないように配置してある。従って、放電発生領域とヒータ5とが離れるため、前記発生した高周波成分のヒータ5への伝播を防ぐことができる。
【0024】
【発明の効果】
以上に説明した如く本発明のオゾン発生装置は、放電によるオゾン発生と同時に発生する高周波成分の放射を防止して、テレビ、ラジオ等のノイズ発生を防止する手段を講じたものである。即ち、第1の発明においては、対をなす誘電電極と交流電源の両端との間に夫々抵抗器を介在させることによって、この高周波成分を消費して減少させる効果がある。また、第2の発明においてはヒータと並列にコンデンサを接続することによって閉回路を構成し、ノイズの原因となるヒータ用抵抗電線からの高周波の放射を抑制し、更に第3の発明においては誘電体基板に設けたヒータと、放電電極及び誘電電極とが平面から透視して重ならないように配置することによって、前記高周波のヒータ用抵抗電線への伝播を防止する効果を有する。
【0025】
また上記第1乃至第3の発明を適宜組み合わせることによって、上記の効果を一層高めることができ、特に上記3つの発明に係る構成を合わせ持つ本発明のオゾン発生装置は顕著な高周波成分の放射防止機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のオゾン発生装置の一例を示す断面図
【図2】
同、オゾン発生装置の平面図
【符号の説明】
1…誘電体基板、2…放電電極、3…保護層、4…誘電電極、5…ヒータ、6…抵抗器、7…コンデンサ、8…電極用抵抗電線、9…ヒータ用抵抗電線。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-02 
出願番号 特願平4-314073
審決分類 P 1 652・ 121- YA (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平塚 政宏  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 中村 泰三
岡田 和加子
登録日 2002-08-16 
登録番号 特許第3339590号(P3339590)
権利者 東陶機器株式会社
発明の名称 オゾン発生装置  
代理人 下田 容一郎  
代理人 下田 容一郎  

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