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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1122901
異議申立番号 異議2003-72969  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-09-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-05 
確定日 2005-06-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3415670号「ウエハ洗浄装置」の請求項1ないし14に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3415670号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許出願 平成 6年 3月 3日
特許権設定登録 平成15年 4月 4日
特許異議申立1(申立人大日本スクリーン製造株式会社)
平成15年12月 5日
特許異議申立2(申立人伊藤實) 平成15年12月 5日
取消理由通知 平成16年 4月14日
訂正請求(後に取下げ) 平成16年 6月25日
取消理由通知 平成16年 8月24日
訂正請求(後に取下げ) 平成16年10月28日
取消理由通知 平成17年 3月 1日
訂正請求 平成17年 5月 9日

2.訂正の適否の判断
2.1 訂正の内容
平成17年5月9日付訂正請求書は、本件特許3415670号の明細書(以下、「特許明細書」という。)を、以下のとおりに訂正することを求めるものである。
a.訂正前の請求項1を、削除する。
b.訂正前の請求項2を、削除する。
c.訂正前の請求項3を訂正後の請求項1とし、その訂正後の請求項1中に、「前記液滴形成手段は、大気下に戻されると前記発泡性ガスが発泡する程度に前記発泡性ガスを液体に溶け込ませる」を追加する。
d.訂正前の請求項4を訂正後の請求項2とし、その訂正後の請求項2中に「ホッパー」、「前記ホッパーに取り付けられ、前記ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段」及び「前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成された」を追加する。また訂正後の請求項2にて、「液滴形成手段」を「スプレー」に変更する。また、訂正後の請求項2の「スプレー」に「前記ホッパーに取り付けられ」及び「前記ホッパー内へ噴霧する」を追加する。
e.訂正前の請求項5を、削除する。
f.訂正前の請求項6を訂正後の請求項3とし、その訂正後の請求項3中に、「ホッパー」、「前記ホッパーに取り付けられ、前記ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段」及び「前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成された」を追加する。また訂正後の請求項3にて、「液滴形成手段」を「スプレー」に変更する。また、訂正後の請求項3の「スプレー」に「前記ホッパーに取り付けられ」及び「前記ホッパー内へ噴霧する」を追加する。
g.訂正前の請求項7及び8を、それぞれ削除する。
h.訂正前の請求項9を訂正後の請求項4とし、その訂正後の請求項4中に、「前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成された」を追加する。
i.訂正前の請求項10を訂正後の請求項5とし、次のとおりに訂正する。
「【請求項5】 ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
ホッパーと、
前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、
前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記液体を該ホッパー内へ噴霧することによって、該液体の液滴を形成するスプレーと、
前記ホッパーに取り付けられ、該ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、
前記ガスの供給圧を制御することにより、前記液滴の噴出速度を制御し、
前記ガス供給手段は、前記ホッパー内で前記ガスが渦巻き状に流れるように、複数個設けられる、ウエハ洗浄装置。」
j.訂正前の請求項11を、削除する
k.訂正前の請求項12ないし14を、それぞれ訂正後の請求項6ないし8とし、訂正後の請求項7及び8のそれぞれが引用する請求項の番号を6に訂正する。
l.明細書の発明の詳細な説明の段落【0016】ないし【0062】を、訂正明細書の段落【0016】ないし【0057】のとおりに訂正する。

2.2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の有無
特許請求の範囲についての訂正事項a,b,e,g,jは、いずれも請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項c,d,f,hは、各請求項の構成要件に限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項iは、従属形式で記載されていた請求項を独立形式に書き改めるものであるため、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
訂正事項kは、訂正事項a,b,e,g,jによる請求項の削除に伴って引用する請求項の番号を改めるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項lは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との記載の整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項aないしlのいずれも、特許明細書に記載された事項の範囲内と認められるから、新規事項の追加には該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2.3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立の理由の概要
3.1 特許異議申立1
特許異議申立人大日本スクリーン製造株式会社は、訂正前の請求項1,3ないし6,8,9,12,14に係る発明が、甲第1号ないし5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものであると主張し、その証拠方法として下記甲1号ないし5号証を提出すると共に、訂正前の請求項3に係る発明は発明の詳細な説明の記載と整合しないから、特許法第36条第5項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものであると主張している。

甲第1号証: 特開昭64-67272号公報
甲第2号証: 特開昭56-115538号公報
甲第3号証: 特開昭55-44780号公報
甲第4号証: 特開平3-186369号公報
甲第5号証: 実願平2-129721号(実開平4-87638号)
のマイクロフィルム

3.2 特許異議申立2
特許異議申立人伊藤實は、訂正前の請求項1ないし14に係る発明が、甲第1号ないし10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものであると主張し、その証拠方法として下記甲第1ないし10号証を提出すると共に、訂正前の請求項3に係る発明は、発明の詳細な説明に、当業者が容易にその実施をし得る程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項第1項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取り消すべきものであると主張している。

甲第1号証: 特開平5-36662号公報
甲第2号証: 特開平5-200367号公報
甲第3号証: 特開平5-104035号公報
甲第4号証: 特開昭62-213127号公報
甲第5号証: 実願昭61-126887号(実開昭63-33627
号)のマイクロフィルム)
甲第6号証: 特開平5-1671号公報
甲第7号証: 特開平5-69327号公報
甲第8号証: 特開平2-164035号公報
甲第9号証: 特開平2-130921号公報
甲第10号証:特開平5-84473号公報

4.訂正後の本件発明
前述の通り、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された、次のとおりのものである。

【請求項1】 ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、
前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、
前記液滴形成手段は、前記液体供給手段と前記噴出手段との間に設けられた液加圧器と、該液加圧器内に発泡性ガスを供給する発泡性ガス供給手段とを含み、
前記液滴形成手段は、大気圧下に戻されると前記発泡性ガスが発泡する程度に前記発泡性ガスを液体に溶け込ませる、ウエハ洗浄装置。(以下、「本件発明1」という。)
【請求項2】 ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
ホッパーと、
前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、
前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変えて前記ホッパー内に噴霧するスプレーと、
前記ホッパーに取り付けられ、前記ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、
前記液滴の粒径を制御する手段と、
前記液滴が前記ウエハに衝突する速度を制御する手段と、
前記液滴が前記ウエハへ衝突する角度を制御する手段と、を備え、
前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成されたウエハ洗浄装置。(以下、「本件発明2」という。)
【請求項3】 ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
ホッパーと、
CO2 ガスが混入された純水を供給する液体供給手段と、
前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記純水を分断し、これを液滴に変えて前記ホッパー内に噴霧するスプレーと、
前記ホッパーに取り付けられ、前記ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、
前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成されたウエハ洗浄装置。(以下、「本件発明3」という。)
【請求項4】 ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
ホッパーと、
前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、
前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記液体を該ホッパー内へ噴霧することによって、該液体の液滴を形成するスプレーと、
前記ホッパーに取り付けられ、該ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、
前記ガスの供給圧を制御することにより、前記液滴の噴出速度を制御し、
前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成されたウエハ洗浄装置。(以下、「本件発明4」という。)
【請求項5】 ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
ホッパーと、
前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、
前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記液体を該ホッパー内へ噴霧することによって、該液体の液滴を形成するスプレーと、
前記ホッパーに取り付けられ、該ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、
前記ガスの供給圧を制御することにより、前記液滴の噴出速度を制御し、
前記ガス供給手段は、前記ホッパー内で前記ガスが渦巻き状に流れるように、複数個設けられる、ウエハ洗浄装置。(以下、「本件発明5」という。)
【請求項6】 ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
液体を加圧して、柱状の該液体を前記ウエハに向けて連続的に噴出する噴出手段と、
前記ウエハと前記噴出手段との間に配置され、前記噴出手段から噴出されてくる前記柱状の液体を、前記ウエハに到達する前に分断し液滴を生成する分断手段と、を備える、ウエハ洗浄装置。(以下、「本件発明6」という。)
【請求項7】 前記分断手段は回転スリットを含む、請求項6に記載のウエハ洗浄装置。(以下、「本件発明7」という。)
【請求項8】 前記ウエハの表面に向けて、ガスを斜め方向から吹き付ける手段を、さらに含む、請求項6に記載のウエハ洗浄装置。(以下、「本件発明8」という。)


6.特許法第29条第2項の規定違反につき
6.1 当審の取消理由通知で引用された刊行物の記載事項
刊行物1:特開昭64-67272号公報 (異議申立1の甲第1号証)
刊行物2:特開昭56-115538号公報(異議申立1の甲第2号証)
刊行物3:特開昭55-44780号公報 (異議申立1の甲第3号証)
刊行物4:特開平3-186369号公報 (異議申立1の甲第4号証)
刊行物5:実願平2-129721号(実開平4-87638号)の
マイクロフィルム (異議申立1の甲第5号証)
刊行物6:特開平3-196884号公報

6.1.1 刊行物1
「加圧したガスを用いるイジェクタ方式によって、液体供給装置から供給されてくる液体を吸引し、分断し、これを液滴に変え、前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出するイジェクタノズルと、を有するウエハ洗浄装置」が記載されていると認められる。

6.1.2 刊行物2
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、前記ウエハを構成する部材と反応しない、純水にCO2を溶解させた液体を供給する液体供給手段と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備えたウエハ洗浄装置」が記載されていると認められる。

6.1.3 刊行物3
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、前記液滴を前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する手段と、を備え、前記液滴形成手段は、前記液体供給手段と前記噴出手段との間に設けられ、液を加圧する液加圧器と、ガスを加圧するガス加圧器と、前記液加圧器と前記ガス加圧器との双方が接続され、前記液と前記ガスとのどちらかを噴出するノズルと、前記液と前記ガスとの切替えを行うバルブと、を備え、前記液体を断続的にバルブにより分断する、ウエハ洗浄装置」が記載されていると認められる。

6.1.4 刊行物4
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、ホッパーと、液体を供給する液体供給手段と、前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記液体をホッパー内へ噴霧することによって、該液体の液滴を形成するスプレーと、前記ホッパーに取り付けられ、該ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備えたウエハ洗浄装置」が記載されていると認められる。

6.1.5 刊行物5
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を除去するウエハ洗浄装置であって、前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、液体及びガスをウエハ表面に向けて斜め方向から吹き付ける角度を制御する手段と、を備える、ウエハ洗浄装置」が記載されていると認められる。

6.1.6 刊行物6
r.「スプレイ式とは第29図に見られるように、15〜30kg/cm2位に加圧された水をノズル(351A〜351E)より噴出即ち高速度の霧滴(SP)を150mmないし250mmの間隔をあけた被洗浄物(W22)に向けて打ち当てて洗浄する方法である。」(第1ページ右下欄末行〜第2ページ左上欄第4行)、
s.「該スプレイの霧滴即ち微粒子は、基板面上に打ち当たり、該基板面上に付着している異物を、その衝突力をもって基板面上から剥離せしめる。」(第2ページ左下欄末行〜同右下欄第2行)、
t.「被洗浄物のある面に対し液体スプレイをある時間断続的(パルス的)に行い、同時に、同一面に上記液体の断続の合間を縫って気体を連続的に又は断続的(パルス的)に吹き付ける。」(第3ページ左下欄第17〜20行)、
u.「先ず、液体用開閉ガン(3)と気体用開閉ガン(13)とが設けられ、前者はポンプ(8)等を介して液体タンク(9)に、また後者は気体蓄圧タンク(17)にそれぞれ配管接続される。これらのガン(3及び13)からは、それぞれ配管により単数又は複数個の液体用エアレススプレイノズル(1;1A,1B,・・・)に、また気体用ノズル(11;11A,11B,・・・)に接続され、これらのノズルは、液体用と気体用とが交互にかつシリーズに被洗浄物(W)の上方に配設される。また上記二種のガン(3,13)の操作部は、それぞれ操作エア配管(4,14)により、ソレノイドバルブ(5,15)を介して操作エアタンク(16)に、またそれらの同ソレノイド部は電気配線により、それぞれスイッチ(10,12)に接続される。」(第3ページ右下欄第3〜16行)、
v.「洗浄液としては、それぞれの目的に応じて、非イオン性界面活性剤(グリセリン、ポリエチレングリコールなど)等のように種々のものが用いられるが、一般的には水が最適である。」(第6ページ左上欄第2〜5行)、
w.「液体用のノズル(81)よりの断続的吹き付け(Lsp)と気体用ノズル(91)よりの断続的吹き付け(Gsp)とを、被洗浄物(W6)のある面に向けて行い(第15図参照)、かつそれらの波の周面への到達において、それらが互いに重複しないように即ち位相を変えるのである。即ち液体のある波の打ち当てられた直後、気体の波が吹き付けられて上記液体を吹き飛ばし、無液状態とし、その直後また次の断続的液体の波が打ち当てられて上記無液状態の面上の異物を直撃して剥離除去するものである。
上記液体と気体との、相関関係を有する断続的噴出の設定は、パルスコントローラー(90)の設定によって容易に得られる。それらのタイミングは種々設定されるが、それらのうち主なものを第16図に示した。
イ.液体の吹き付け(Lsp)の停止期間(T)の間に、気体の吹き付け(Gsp)をある時間(T1)行う。(同図中”g”欄参照)」(第6ページ左下欄第18行〜右下欄第10行)、
x.「しかし、本実施例においては、それらを一体化したもの、即ち補助エア付きエアレススプレイノズルを使用するものである。補助エア付きエアレススプレイノズルとは第17図に示すように、従来のエアレススプレイノズル(111)の先端部に、補助エアノズル(112)を取付けたものである。」(第7ページ右下欄第2〜6行)、
y.「元来、液体スプレイによる洗浄作用は、そのスプレイ中の高速の液体微粒子を被洗浄物面上に付着している異物に衝突させ、その衝突力によって異物をはじき飛ばすものである。しかし、その衝突力が弱い場合には、それができない。微粒子の速度を上げれば良いが、それにも限界がある。その場合には微粒子の質量を増すこと、即ち液体である微粒子を、より質量の大きい固体の微粒子とすればよく、そのためには固体の微粒子の含まれている懸濁液を洗浄液として使用すれば良いのである。」(第8ページ左下欄第5〜14行)、
との記載からみて、
「基板の上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去する洗浄装置であって、水又はグリセリンを供給する液加圧器を含む液体供給手段と、ガスを加圧するガス加圧器と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、前記液滴を前期基板の表面に向けて噴出するノズルを含む噴出手段と、を備え、前記液滴形成手段は、前記液体供給手段と前記噴出手段との間に設けられ、前記液体を断続的に分断するバルブと、前記ガスを断続的に、かつ前記液と交互に前記ノズルに供給するバルブと、を含み、前記バルブの開閉時間が前記液滴の大きさおよび前記基板に衝突する前記液滴の間隔を制御する、洗浄装置。」(以下、「刊行物6記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

6.2 対比・判断
本件発明1ないし8と刊行物6記載の発明との対比において、後者の「基板」、「水又はグリセリン」は、前者の「ウエハ」、「ウエハを構成する部材と反応しない液体」にそれぞれ相当するものと認める。また、前者の「スプレー」、「CO2 ガスが混入された純水」が、それぞれ「液滴形成手段」、「ウエハを構成する部材と反応しない液体」の一種であることは明白である。

6.2.1 本件発明1につき
本件発明1と刊行物6記載の発明とを対比すると、両者は次の点で一致及び相違すると認められる。、
<一致点>
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液加圧器を含む液体供給手段と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、前記液滴を前期ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備える、ウエハ洗浄装置。」
<相違点1>
液滴形成手段が、前者では「前記液体供給手段と前記噴出手段との間に設けられた液加圧器と、該液加圧器内に発泡性ガスを供給する発泡性ガス供給手段とを含み」、「大気圧下に戻されると前記発泡性ガスが発泡する程度に前記発泡性ガスを液体に溶け込ませる」という構成を有するのに対し、後者はこのような構成を有しない点。

上記相違点1について検討すると、特許異議申立1の甲各号証及び特許異議申立2の甲各号証のいずれにも、「大気圧下に戻されると前記発泡性ガスが発泡する程度に前記発泡性ガスを液体に溶け込ませる」ことについての記載は見当たらず、そのことを示唆する記載も見当たらない。
そして、本件発明1は、大気圧下に戻された液体中の発泡性ガスが発泡することによって液体が分断されて液滴が形成されるという、顕著な効果を有する。
よって、本件発明1が、特許異議の証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

6.2.2 本件発明2につき
本件発明2と刊行物6記載の発明とを対比すると、両者は次の点で一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、ガスを加圧して供給するガス供給手段と、前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備えたウエハ洗浄装置。」
<相違点2>
前者はホッパーを備えており、ホッパーに液滴形成手段とガス供給手段が取りつけられるのに対し、後者はホッパーを備えていない点。
<相違点3>
液滴形成手段が、前者ではスプレーであるのに対し、後者では特定されていない点。
<相違点4>
前者は液滴の粒径を制御する手段と、液滴が前記ウエハに衝突する速度を制御する手段と、前記液滴が前記ウエハへ衝突する角度を制御する手段とを備えるのに対し、後者はこのような手段を備えない点。
<相違点5>
前者は「前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成され」るのに対し、後者はこのように構成することについて特定がない点。

上記相違点2ないし5について検討すると、相違点5の「前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成され」るという点については、特許異議申立1の甲各号証及び特許異議申立2の甲各号証のいずれにも記載は見当たらず、そのことを示唆する記載も見当たらない。
そして、本件発明2は、液滴の噴出速度を音速とすることによって洗浄力を高めることができるという、顕著な効果を有する。
よって、本件発明2が、特許異議の証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

6.2.3 本件発明3につき
本件発明3と刊行物6記載の発明とを対比すると、両者は次の点で一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、ウエハを構成する材料と反応しない液体を供給する液体供給手段と、ガスを加圧して供給するガス供給手段と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、前記液滴を前期ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備えるウエハ洗浄装置。」
<相違点2>
前者はホッパーを備えており、ホッパーに液滴形成手段とガス供給手段が取りつけられるのに対し、後者はホッパーを備えていない点。
<相違点3>
液滴形成手段が、前者ではスプレーであるのに対し、後者では特定されていない点。
<相違点5>
前者は「前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成され」るのに対し、後者はこのように構成することについて特定がない点。
<相違点6>
液体が、前者では「CO2 ガスが混入された純水」であるのに対し、後者では「水又はグリセリン」である点。

上記相違点2,3及び5,6について検討すると、相違点5の「前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成され」るという点については、特許異議申立1の甲各号証及び特許異議申立2の甲各号証のいずれにも記載は見当たらず、そのことを示唆する記載も見当たらない。
そして、本件発明3は、液滴の噴出速度を音速とすることによって洗浄力を高めることができるという、顕著な効果を有する。
よって、本件発明3が、特許異議の証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

6.2.4 本件発明4につき
本件発明4と刊行物6記載の発明とを対比すると、両者は次の点で一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、ウエハを構成する材料と反応しない液体を供給する液体供給手段と、ガスを加圧して供給するガス供給手段と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、前記液滴を前期ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備えるウエハ洗浄装置。」
<相違点2>
前者はホッパーを備えており、ホッパーに液滴形成手段とガス供給手段が取りつけられるのに対し、後者はホッパーを備えていない点。
<相違点3>
液滴形成手段が、前者ではスプレーであるのに対し、後者では特定されていない点。
<相違点5>
前者は「前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成され」るのに対し、後者はこのように構成することについて特定がない点。
<相違点7>
前者はガスの供給圧を制御することにより、前記液滴の噴出速度を制御するのに対し、後者ではそのような特定がない点。

上記相違点2,3,5及び6について検討すると、相違点5の「前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成され」るという点については、特許異議申立1の甲各号証及び特許異議申立2の甲各号証のいずれにも記載は見当たらず、そのことを示唆する記載も見当たらない。
そして、本件発明4は、液滴の噴出速度を音速とすることによって洗浄力を高めることができるという、顕著な効果を有する。
よって、本件発明4が、特許異議の証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

6.2.5 本件発明5につき
本件発明5と刊行物6記載の発明とを対比すると、両者は次の点で一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、ウエハを構成する材料と反応しない液体を供給する液体供給手段と、ガスを加圧して供給するガス供給手段と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、前記液滴を前期ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備えるウエハ洗浄装置。」
<相違点2>
前者はホッパーを備えており、ホッパーに液滴形成手段とガス供給手段が取りつけられるのに対し、後者はホッパーを備えていない点。
<相違点3>
液滴形成手段が、前者ではスプレーであるのに対し、後者では特定されていない点。
<相違点7>
前者はガスの供給圧を制御することにより、前記液滴の噴出速度を制御するのに対し、後者ではそのような特定がない点。
<相違点8>
ガス供給手段は、前者では前記ホッパー内で前記ガスが渦巻き状に流れるように、複数個設けられるのに対し、後者ではこのような特定がない点。

上記相違点2,3及び7,8について検討すると、相違点8の「ガス供給手段は、前者では前記ホッパー内で前記ガスが渦巻き状に流れるように、複数個設けられる」という点については、特許異議申立1の甲各号証及び特許異議申立2の甲各号証のいずれにも記載は見当たらず、そのことを示唆する記載も見当たらない。
そして、本件発明5は、ガスが渦巻き状に流れることによって液滴同士がくっつくことを防止することができるという、顕著な効果を有する。
よって、本件発明5が、特許異議の証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

6.2.6 本件発明6につき
本件発明6と刊行物6記載の発明とを対比すると、両者は次の点で一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置」
<相違点9>
前者は液体を加圧して、柱状の該液体を前記ウエハに向けて連続的に噴出する噴出手段と、前記ウエハと前記噴出手段との間に配置され、前記噴出手段から噴出されてくる前記柱状の液体を、前記ウエハに到達する前に分断し液滴を生成する分断手段とを備えるのに対し、個者はこのような構成を備えない点。

上記相違点9について検討すると、「液体を加圧して、柱状の該液体を前記ウエハに向けて連続的に噴出する噴出手段と、前記ウエハと前記噴出手段との間に配置され、前記噴出手段から噴出されてくる前記柱状の液体を、前記ウエハに到達する前に分断し液滴を生成する分断手段とを備える」という点については、特許異議申立1の甲各号証及び特許異議申立2の甲各号証のいずれにも記載は見当たらず、そのことを示唆する記載も見当たらない。
そして、本件発明6は、液体の噴出速度の制御範囲が広いという、顕著な効果を有する。
よって、本件発明6が、特許異議の証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

6.2.7 本件発明7につき
本件発明7は、本件発明6の構成要件を全て含む。
よって、本件発明7は、本件発明6と同様の理由により、特許異議の証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

6.2.8 本件発明8につき
本件発明8は、本件発明6の構成要件を全て含む。
よって、本件発明8は、本件発明6と同様の理由により、特許異議の証拠に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

7.特許法第36条の規定違反につき
7.1 特許異議申立人大日本スクリーン製造株式会社は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3、すなわち訂正後の請求項1の記載中、「前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴射手段」との記載が、発明の詳細な説明中の対応する実施例の説明における、「噴出ノズル4から、発泡性ガスが溶け込んでいる液体が、吐出される。大気圧下に戻されると、液中に溶け込んでいた発泡性ガスが発泡し、液体が分断され、液滴が形成される。」との記載、すなわち噴出ノズルから噴出されるのは液滴でなく発泡性ガスが溶け込んだ液体であるとの記載、と整合していないため、請求項3に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものではなく、請求項3の記載が特許法第36条第5項第1号に規定する要件に違反すると主張している。
しかしながら、発明の詳細な説明及び図面を参酌すれば、「前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴射手段」が、出口において発泡性ガスが発泡して液滴に分断された液体をウエハの表面に向けて噴出するノズルを指していることは、容易に理解されるところである。
よって、本件発明1が発明の詳細な説明に記載されたものでないということはできない。

7.2 特許異議申立人伊藤實は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3、すなわち訂正後の請求項1の記載中、「前記液滴形成手段は、前記液体供給手段と前記噴出手段との間に設けられた液加圧器と、該液加圧器内に発泡性ガスを供給する発泡性ガス供給手段とを含」むとの記載について、発明の詳細な説明において具体的な構成が全く不明であって、当業者が容易に実施できる程度に十分に記載されていないため、請求項3に係る発明は特許法第36条第4項第1号に規定された要件を満たしていないと主張している。
しかしながら、液加圧器及び発泡性ガス供給手段はそれぞれ従来周知のものと認められ、発泡性ガス供給手段から供給される発泡性ガスを、液加圧器内に供給するように構成することに、当業者にとって格別の困難性があるということもできない。。
よって、本願の発明の詳細な説明に、本件発明1が当業者が容易に実施し得る程度に記載されていないということはできない。

7.むすび
以上のとおり、特許異議申立の主張及び証拠によっては、本件請求項1ないし8に係る特許を取消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ウエハ洗浄装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、
前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、
前記液滴形成手段は、前記液体供給手段と前記噴出手段との間に設けられた液加圧器と、該液加圧器内に発泡性ガスを供給する発泡性ガス供給手段とを含み、
前記液滴形成手段は、大気圧下に戻されると前記発泡性ガスが発泡する程度に前記発泡性ガスを液体に溶け込ませる、ウエハ洗浄装置。
【請求項2】ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
ホッパーと、
前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、
前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変えて前記ホッパー内へ噴霧するスプレーと、
前記ホッパーに取り付けられ、前記ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、
前記液滴の粒径を制御する手段と、
前記液滴が前記ウエハに衝突する速度を制御する手段と、
前記液滴が前記ウエハへ衝突する角度を制御する手段と、を備え、
前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成されたウエハ洗浄装置。
【請求項3】ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
ホッパーと、
CO2ガスが混入された純水を供給する液体供給手段と、
前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記純水を分断し、これを液滴に変えて前記ホッパー内へ噴霧するスプレーと、
前記ホッパーに取り付けられ、前記ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、
前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成されたウエハ洗浄装置。
【請求項4】ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
ホッパーと、
前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、
前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記液体を該ホッパー内へ噴霧することによって、該液体の液滴を形成するスプレーと、
前記ホッパーに取り付けられ、該ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、
前記ガスの供給圧を制御することにより、前記液滴の噴出速度を制御し、
前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成されたウエハ洗浄装置。
【請求項5】ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
ホッパーと、
前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、
前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記液体を該ホッパー内へ噴霧することによって、該液体の液滴を形成するスプレーと、
前記ホッパーに取り付けられ、該ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、
前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、
前記ガスの供給圧を制御することにより、前記液滴の噴出速度を制御し、
前記ガス供給手段は、前記ホッパー内で前記ガスが渦巻き状に流れるように、複数個設けられる、ウエハ洗浄装置。
【請求項6】ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、
液体を加圧して、柱状の該液体を前記ウエハに向けて連続的に噴出する噴出手段と、
前記ウエハと前記噴出手段との間に配置され、前記噴出手段から噴出されてくる前記柱状の液体を、前記ウエハに到達する前に分断し液滴を生成する分断手段と、を備える、ウエハ洗浄装置。
【請求項7】前記分断手段は回転スリットを含む、請求項6に記載のウエハ洗浄装置。
【請求項8】前記ウエハの表面に向けて、ガスを斜め方向から吹き付ける手段を、さらに含む、請求項6に記載のウエハ洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、一般にウエハ洗浄装置に関するものであり、より特定的には、ウエハの上に付着している汚染物粒子を除去するウエハ洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ウエハの上にCVD法またはスパッタ法により膜を形成すると、その表面にパーティクル状の汚染物が付着する。また、レジストの残渣が、ウエハの表面に付着することがある。これらの汚染物を除去する方法として、高圧ジェット水洗浄、メガソニック流水洗浄およびアイススクラバー洗浄等が提案されている。
【0003】
図15は、高圧ジェット水洗浄と呼ばれる従来の洗浄法を実現する装置の概念図である。
【0004】
当該装置は、液加圧器3と、噴射ノズル4と、ウエハ1を支持して、これを回転させるステージ2と、を備える。この洗浄方法においては、まず、液加圧器3によって圧縮された純水等の液が、噴射ノズル4より、ウエハ1の表面に向けて連続的に高速噴射される。高速噴射された液がウエハ1の表面へ衝突することによって、ウエハ1の表面に付着している汚染物粒子が除去され、洗浄が行なわれる。ウエハ1を、ステージ2を回転させることによって回転させ、かつ噴射ノズル4を移動させることによって、ウエハ1の表面全面が洗浄される。
【0005】
この方法では、図16を参照して、噴射ノズル4から高速噴射された液は、図16を参照して、液の柱20となって、ウエハ1の表面に衝突する。
【0006】
この方法の問題点は、次のとおりである。すなわち、多量の純水等の液が、高速でウエハ1の表面に衝突するので、ウエハ1の表面に静電気が発生し、ひいてはウエハ1の表面に形成されているデバイスにダメージを与えてしまうという問題点がある。このダメージの低減対策として、純水中にCO2ガス等を混入させて、純水の比抵抗を下げ、ひいては、ウエハ1の表面に発生する静電気を低減させる方法もあるが、完全ではない。また、この方法によるもう1つの問題点は、1μm以下の微小異物(パーティクル)を十分に除去できないということである。
【0007】
図17は、メガソニック流水洗浄と呼ばれる従来の洗浄方法を示す模式図である。洗浄装置は、ウエハ1を回転させるステージ2と、純水等の液に1.5MHz程度の高周波を印加して、これを放出するノズル5とを備える。この洗浄方法においては、ノズル5によって、垂直方向に純水を高周波振動させ、これをウエハ1へ向けて放出することによって、ウエハの洗浄を行なう。この方法の問題点は、次のとおりである。
【0008】
すなわち、高圧ジェット水洗浄と同様、1μm以下の微小異物(パーティクル)を十分に除去できない点である。また、ステージ2の回転を速くすることで、洗浄効果が多少高まる。しかし、この場合、ウエハ1の周辺部では洗浄効果が大きいが、ウエハ1の中央部では洗浄効果が小さい。そのため、ウエハ1面内に洗浄むらが生じるという問題点もあった。さらに、ウエハ1の表面に形成されたデバイスの微細パターンを破壊するという問題点もあった。デバイスの破壊と洗浄効果との間には、相関関係が認められている。この洗浄方法では、デバイスの破壊および洗浄効果を制御するパラメータとして、印加する高周波の周波数および出力、ステージ2の回転数、ノズル5とウエハ1との距離がある。しかし、これらのパラメータの制御範囲が狭いため、これらを制御することが困難であった。
【0009】
図18は、アイススクラバー洗浄と呼ばれる従来の洗浄方法を実現する装置の模式図である。当該洗浄装置は、氷粒子を生成する製氷ホッパー6を備える。製氷ホッパー6には、被凍結液である純水を製氷ホッパー6内に供給する供給スプレー7が設けられている。製氷ホッパー6の底部には、氷粒子をウエハ1へ向けて噴射する噴射ノズル8が設けられている。
【0010】
次に、動作について説明する。液体窒素等の液化ガスを、製氷ホッパー6内へ供給する。純水等の被凍結液を、供給スプレー7によって、製氷ホッパー6内に微噴霧する。製氷ホッパー6内で生成した数μmから数10μmの氷粒子を、ガスイジェクタ方式の噴射ノズル8からウエハ1へ向けて噴射すると、ウエハ1の表面の洗浄が行なわれる。この洗浄方法は、上述の高圧ジェット水洗浄やメガソニック流水洗浄と比べて、洗浄効果は高い。しかしながら、洗浄力を決めている氷粒子の噴射速度が、ガスイジェクタ方式の噴射ノズル8を用いているため、音速を超えることができず、洗浄力に限界があった。また、氷粒子を形成するために、多量の液体窒素を使用しているため、液体窒素の供給設備にイニシャルコストが高くつき、またランニングコストも高いという問題点があった。また、上述のデバイスの破壊の問題は、氷粒子の噴射速度を制御することによって、抑制され得る。しかしながら、装置上の問題を考慮して、現状、氷粒子の噴射速度は100〜330m/secの範囲内にしか制御できず、制御幅が狭い。そのため、デバイスの破壊を完全に抑制することができないという問題点があった。
【0011】
それゆえに、この発明の目的は、ウエハの上に付着している汚染物粒子を除去するウエハ洗浄装置を提供することにある。
【0012】
この発明の他の目的は、ウエハの上に付着している、1μm以下の微小異物を除去することができるように改良されたウエハ洗浄装置を提供することにある。
【0013】
この発明のさらに他の目的は、噴射速度が音速を超えることができるように改良されたウエハ洗浄装置を提供することにある。
【0014】
この発明のさらに他の目的は、ランニングコストの安いウエハ洗浄装置を提供することにある。
【0015】
この発明のさらに他の目的は、デバイスに損傷を与えずに、ウエハの上に付着している汚染物粒子を除去できるように改良されたウエハ洗浄装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明の第1の局面に従うウエハ洗浄装置は、ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変える液滴形成手段と、前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、前記液滴形成手段は、前記液体供給手段と前記噴出手段との間に設けられた液加圧器と、該液加圧器内に発泡性ガスを供給する発泡性ガス供給手段とを含み、前記液滴形成手段は、大気圧下に戻されると前記発泡性ガスが発泡する程度に前記発泡性ガスを液体に溶け込ませる。
【0017】
この発明の第2の局面に従うウエハ洗浄装置は、ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、ホッパーと、前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる液体を分断し、これを液滴に変えて前記ホッパー内へ噴霧するスプレーと、前記ホッパーに取り付けられ、前記ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、前記液滴の粒径を制御する手段と、前記液滴が前記ウエハに衝突する速度を制御する手段と、前記液滴が前記ウエハへ衝突する角度を制御する手段と、を備え、前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成されている。
【0018】
この発明の第3の局面に従うウエハ洗浄装置は、ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、ホッパーと、CO2ガスが混入された純水を供給する液体供給手段と、前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記純水を分断し、これを液滴に変えて前記ホッパー内へ噴霧するスプレーと、前記ホッパーに取り付けられ、前記ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成されている。
【0019】
この発明の第4の局面に従うウエハ洗浄装置は、ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、ホッパーと、前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記液体を該ホッパー内へ噴霧することによって、該液体の液滴を形成するスプレーと、前記ホッパーに取り付けられ、該ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、前記ガスの供給圧を制御することにより、前記液滴の噴出速度を制御し、前記液滴の噴出速度を音速に設定できるように構成されている。
【0020】
この発明の第5の局面に従うウエハ洗浄装置は、ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、ホッパーと、前記ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段と、前記ホッパーに取り付けられ、前記液体供給手段から供給されてくる前記液体を該ホッパー内へ噴霧することによって、該液体の液滴を形成するスプレーと、前記ホッパーに取り付けられ、該ホッパー内にガスを加圧して供給するガス供給手段と、前記液滴を前記ウエハの表面に向けて噴出する噴出手段と、を備え、前記ガスの供給圧を制御することにより、前記液滴の噴出速度を制御し、前記ガス供給手段は、前記ホッパー内で前記ガスが渦巻き状に流れるように、複数個設けられる。
【0021】
この発明の第6の局面に従うウエハ洗浄装置は、ウエハの上に付着している汚染物粒子を液滴によって除去するウエハ洗浄装置であって、液体を加圧して、柱状の該液体を前記ウエハに向けて連続的に噴出する噴出手段と、前記ウエハと前記噴出手段との間に配置され、前記噴出手段から噴出されてくる前記柱状の液体を、前記ウエハに到達する前に分断し液滴を生成する分断手段と、を備える。
【0022】
【作用】
この発明に従うウエハ洗浄装置によれば、液滴がウエハの表面に向けて噴射される。ウエハ上の異物の除去は、液滴の噴出速度に最も影響を受ける。液滴の噴出速度は容易に音速を超えられるので、汚染物粒子の除去力が大きくなる。
【0023】
また、異物の除去は、液体、氷等の衝突部材が該異物に当たった瞬間に行なわれる。本発明においては、衝突部材を液滴にしているので、当たった瞬間が多く得られ、ひいては、異物の除去効率が高くなる。
【0024】
【実施例】
以下、この発明の実施例を図について説明する。
【0025】
実施例1
図1は、実施例1に係る、ウエハ洗浄装置の概念図である。ウエハ洗浄装置は、微細な液滴21を形成し、該液滴21を噴出するホッパー9を備える。ホッパー9には、該ホッパー9内に液体を微噴霧するスプレー10が設けられる。スプレー10には、該スプレー10へ、ウエハを構成する部材と反応しない液体を供給する液体供給手段23が接続されている。ホッパー9には、また、該ホッパー9内に乾燥空気あるいは窒素等のガスを加圧して供給するガス供給手段22が設けられている。当該装置は、さらに、ウエハ1を支持し、これを回転させるステージ2を備える。液滴21の粒径は、スプレー10の形状と、液の供給圧で決定される。また、洗浄力を決定する液滴21の噴出速度は、ホッパー9内へのガスの供給圧と、ホッパー9の出口の径で制御される。本実施例では、ガスの供給圧を制御することにより、液滴21の噴出速度は、0〜330m/secの範囲で制御が可能である。
【0026】
液滴21が衝突するウエハ1の表面が液で覆われていると、洗浄力が低下するため、液滴21の噴出量(液の供給量)とステージ2の回転速度を制御して、ウエハ1へ衝突した液滴を速やかに除去するのが好ましい。
【0027】
次に、本発明の基本的概念を、図2を用いて説明する。
【0028】
図2(a)を参照して、液滴21がウエハ1の上へ、V0の速度で衝突する。その衝突の際、図2(b)を参照して、液滴21の下部に、衝撃圧Pと呼ばれる圧力が生じる。次の瞬間、図2(c)を参照して、この衝撃圧Pによって、水平方向へ、放射流と呼ばれる流れが生じる。
【0029】
衝撃圧Pは次の式で与えられる。
【0030】
【数1】

式中、V0は衝突速度、ρLは液の密度、CLは液中の音速、CSは基板中の音速、αは次式で示す低減係数を表わしている。式中、ρSは基板の密度を表わしている。
【0031】
【数2】

放射流の速度Vfは次式で表わされる。
【0032】
【数3】
Vf=(αCLV0)1/2
ウエハ1上の異物は、この放射流から受ける力によって除去される。
【0033】
ウエハ1上の粒子に働く外力(除去力)Dは、次式で表わされる。
【0034】
【数4】

式中CDは抗力係数である。レイノルズ数Rが103よりも大きく、かつ球形粒子の場合、抗力係数CDは0.47となる。式中、dは粒子の粒径を表わしている。
【0035】
上記モデルによれば、除去力を決定する因子として、液滴の衝突速度、液の密度、液中の音速と、液の粘度がある。したがって、除去力を大きくするためには、液の材料としては、その密度が大きく、また、音速が速いものが好ましい。
【0036】
純水を使用した場合、液の温度を制御することにより、密度と音速を変化させることが可能である。温度制御手段で、純水の温度を4℃に制御すると、純水の密度と、純水中の音速を最も大きくすることができる。
【0037】
また、デバイスへ与える電気的ダメージ(静電気)を考慮して、CO2等のガスまたは界面活性剤を純水中に混入して、純水の比抵抗を低下させることも、本実施例の好ましい変形例である。
【0038】
また、純水以外であっても、純水よりも比重、音速、粘度が大きい液または液状物質(ゲル状物質を含む)も好ましく用いられる。
【0039】
また、除去力を高めるさらなる方法として、液滴21の衝突角度を調節することも好ましい。液滴21の衝突角度は、計算によれば、ウエハの表面から56°になるのが好ましい。
【0040】
また、本実施例では、図3を参照して、ホッパー9内でガスが渦巻き状に流れるように、ガス供給手段22は複数個設けられるのが好ましい。このように構成すると、液滴と液滴とが互いにくっつくのが防止される。
【0041】
実施例2
図4は、実施例2に係るウエハ洗浄装置の概念図である。当該装置は、イジェクタノズル11を備える。図5は、イジェクタノズル11の断面図である。イジェクタノズル11は、液滴の生成と噴射を行なうものである。イジェクタノズル11は、図4と図5を参照して、加圧したガスを用いるイジェクタ方式によって、液体を吸引し、さらにこれをちぎり、液滴化し、噴出する。
【0042】
液滴21の噴出速度は、ガスの供給圧(供給量)によって制御される。また、液滴21の噴出量と粒径は、液の供給圧(供給量)によって制御される。
【0043】
次に、具体的数値を用いて、本実施例を説明する。図5を参照して、純水の供給圧を7kg/cm2とし、純水の流量を2l/minとする。配管11の内径を1.8mmとする。ガスの供給圧を8.5kg/cm2とし、ガスの流量を300l/minとする。配管11の内径を4.35mmとする。このような条件下で、液滴21の噴射速度を、音速(330m/sec)に等しくすることができる。
【0044】
実施例3
図6は、実施例3に係るウエハ洗浄装置の概念図である。当該洗浄装置は、液を加圧する液加圧器3と、ガスを加圧するガス加圧器12とを備える。液加圧器3とガス加圧器12との双方は、液とガスとのどちらかを噴出する噴出ノズル13に接続される。噴出ノズル13内には、液とガスとの切替えを行なうバルブが設けられている(図示せず)。液滴の大きさ、および液滴の間隔は、このバルブの開閉時間によって制御される。液滴の噴出速度は、液加圧器3の加圧圧力で制御される。液が噴出していないときは、ガスが噴出ノズル13よりウエハ1上へ噴出し、それによって、ウエハ1上に付着している液が除去される。その結果、液滴がウエハ1上へ衝突する瞬間は、ウエハ1上に液が存在しないため、効果的な洗浄が行なわれる。
【0045】
なお、図7は、水とガスの切替えバルブの開閉の様子を示す図である。水が噴出しているときはガスは止められ、ガスが噴出しているときには水が止められている。水およびガスのそれぞれの開閉時間は、0.1msec〜1secである。
【0046】
実施例4
図8は、実施例4に係るウエハ洗浄装置の概念図である。当該洗浄装置は、液を加圧する液加圧器3と、液体をウエハ1に向けて噴出する噴出手段4とを備える。ウエハ1と噴出手段4との間には、噴出手段4から噴出されてくる液体の柱を、断続的に分断する分断手段14が設けられている。図9は、分断手段の一例を示す模式図である。分断手段14は、円板15を備える。円板15には、1またはそれ以上のスリット16が設けられている。分断手段14は、図中矢印で示すように、回転する。
【0047】
噴射ノズル4より噴出してくる液体の柱を、ウエハ1へ到達する前に、この液体の柱を分断手段14によって分断し、それによって、液滴を得る。その後、得られた液滴は、ウエハ1へ衝突する。
【0048】
次に、具体的に数値を用いて、本実施例を説明する。図10を参照して、スリット16の幅を4mmとする。スリット16の、円板15の中心からの距離は10cmである。円板15の回転数は4000rpmである。液体の柱の直径を1〜2mmとする。液体の柱の噴射速度を330m/secとする。上述した条件下で、長さ3cm、直径1〜2mmの柱状の液滴が形成される。スリットの数は約50個であるが、これに限定されるものではない。
【0049】
なお、この実施例の場合、液滴の数を多くするために、液の柱を噴射する噴射ノズル4を複数個設けることも好ましい。
【0050】
なお、液滴のウエハ1への衝突速度は、液加圧器3の加圧圧力によって制御される。この場合、ガスを含まない液のみが噴出されるため、液の噴出速度を音速よりも速くすることが可能となる。すなわち、洗浄力とデバイスの破壊を決定する、液滴の噴出速度、の制御範囲が、非常に広くなる。また、液滴の大きさと、ウエハ1へ衝突する液滴の間隔は、円板15の回転速度で制御される。
【0051】
実施例5
図11は、実施例5に係るウエハ洗浄装置の概念図である。当該洗浄装置は、液加圧器3と噴射ノズル4を備える。液加圧器3と噴射ノズル4との間に、液体を断続的に分断し、該液体を液滴化するバルブ17が設けられている。液滴の大きさと、ウエハ1へ衝突する液滴の間隔は、バルブ17の開閉の切替え時間によって制御される。ガスを含まない液のみが噴出されるため、液の噴出速度を音速よりも速くすることが可能となる。
【0052】
実施例6
図12は、実施例6に係るウエハ洗浄装置の概念図である。当該洗浄装置は、液加圧器3と噴射ノズル4とを備える。液加圧器3には、該液加圧器3内に液を供給する液供給手段51が接続されている。また液加圧器3には、該液加圧器3内に発泡性ガスを供給する発泡性ガス供給手段52が接続されている。発泡性ガスには、CO2,N2,O2等が好ましく用いられる。本実施例では、噴出ノズル4から、発泡性ガスが溶け込んでいる液体が、噴出される。大気圧下に戻されると、液中に溶け込んでいた発泡性ガスが発泡し、液体が分断され、液滴が形成される。この液滴がウエハ1の表面に衝突する。ガスが溶け込んだ状態の液が噴出されるため、実施例5の場合と同様に、液の噴出速度を音速よりも速くすることが可能となる。
【0053】
実施例7
図13は、実施例7に係るウエハ洗浄装置の概念図である。当該洗浄装置は、液加圧器3と噴射ノズル4と分断手段14とを備える。分断手段14は、たとえば図9に示す回転スリットである。当該装置は、さらに、ウエハ1の表面に向けて、ガスを斜め方向から吹き付けるガス噴出ノズル18を備える。ガス噴出ノズル18によって、ウエハ1へ衝突した液滴が、速やかにウエハ1の表面から除去されるので、次の理由で、洗浄効果(洗浄力)は低下しない。すなわち、ウエハ1の上に水の膜があると、これがクッションの役割を果たし、図2における衝撃圧Pが和らげられる。ガス噴出ノズル18は、この水の膜を除去する働きを有する。
【0054】
実施例1に示す方法、すなわちウエハ1を回転させる方法では、ウエハ1の周辺部と中央部で洗浄力に差が生じ、洗浄むらが生じる。しかしながら、本実施例では、このような問題は解消され、均一な洗浄が可能となる。
【0055】
実施例8
図14は、実施例8に係るウエハ洗浄装置の概念図である。当該洗浄装置は、スプレー10を備える。当該装置は、さらに、スプレー10で微噴霧された液滴21を帯電させ、これを加速する加速器20を備える。スプレー10に、正負どちらかの電荷を与える。帯電した液滴21は、加速器20によって加速され、ウエハ1へ衝突する。液滴21の衝突速度は、加速器20の印加電圧によって制御される。
【0056】
なお、この方法は、大気中で行なってもよいが、液滴21の速度を増加させるために、減圧下で行なうのが好ましい。本実施例によると、液滴の速度は、音速よりも速くなる。ひいては、洗浄力はより大きくなる。
【0057】
【発明の効果】
この発明に従うウエハ洗浄装置によれば、液滴がウエハの表面に向けて噴射される。液滴の噴出速度は、容易に音速を超えられるので、汚染物粒子の除去力が大きくなる。また、液滴をウエハに衝突させるので、氷粒子と異なり、デバイスに損傷を与えない。さらに、液体窒素を用いないので、ランニングコストが安い。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例1に係るウエハ洗浄装置の概念図である。
【図2】
本発明の基本概念を図示した図である。
【図3】
実施例1に係るウエハ洗浄装置の変形例を示す図である。
【図4】
実施例2に係るウエハ洗浄装置の概念図である。
【図5】
図4に係る装置に用いられるイジェクタノズルの断面図である。
【図6】
実施例3に係るウエハ洗浄装置の概念図である。
【図7】
図6に示す装置において、液とガスの切替えの様子を示した図である。
【図8】
実施例4に係るウエハ洗浄装置の概念図である。
【図9】
図8に示す装置に用いられる回転スリットの平面図である。
【図10】
回転スリットの具体例を示した図である。
【図11】
実施例5に係るウエハ洗浄装置の概念図である。
【図12】
実施例6に係るウエハ洗浄装置の概念図である。
【図13】
実施例7に係るウエハ洗浄装置の概念図である。
【図14】
実施例8に係るウエハ洗浄装置の概念図である。
【図15】
従来のウエハ洗浄装置の概念図である。
【図16】
従来の装置を用いた洗浄の概念を示した図である。
【図17】
従来のウエハ洗浄装置の概念図である。
【図18】
従来のウエハ洗浄装置の概念図である。
【符号の説明】
1 ウエハ
2 ステージ
9 ホッパー
10 スプレー
22 ガス供給手段
23 液体供給手段
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-03 
出願番号 特願平6-33437
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小松 竜一  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 豊原 邦雄
菅澤 洋二
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3415670号(P3415670)
権利者 株式会社ルネサステクノロジ
発明の名称 ウエハ洗浄装置  
代理人 堀井 豊  
代理人 深見 久郎  
代理人 野田 久登  
代理人 堀井 豊  
代理人 酒井 將行  
代理人 野田 久登  
代理人 森田 俊雄  
代理人 仲村 義平  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  
代理人 酒井 將行  

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