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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01H
管理番号 1122906
異議申立番号 異議2003-72527  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-14 
確定日 2005-06-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3396988号「真空バルブ」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3396988号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3396988号(請求項の数2)に係る発明についての出願は、平成7年3月23日に特許出願されたものであって、平成15年2月14日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、全請求項に係る特許について、申立人・半谷仁より特許異議の申立てがなされ、平成16年12月9日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年2月8日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正事項は、特許請求の範囲を以下のとおり訂正するものである。
「【請求項1】 電極の背後に2〜4分割コイルからなり縦磁界を発生する縦磁界発生コイルを備えた一対の電極が対向して絶縁真空容器内に配置された真空バルブにおいて、上記縦磁界発生コイルが発生する縦磁界は当該縦磁界が最大となる直径より内径側では弱まるものであり、上記電極の接触面は環状に形成され、その環状の接触面の内径を、上記縦磁界の最大となる直径より大きくしたこと特徴とする真空バルブ。
【請求項2】 環状に形成された電極の接触面の中央部に凹面を形成し、その凹面に耐アーク性導電材料のアーク電極を固着したことを特徴とする請求項1記載の真空バルブ。」

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項は、訂正前明細書の段落【0016】の「縦磁界発生コイル12、22は図5に示す4分割コイルの他に3分割コイル、2分割コイルも使用される。」との記載及び段落【0018】の「縦磁界発生コイル12、接続導体13は実施例1.と同様に構成されている。」との記載に基づいて、縦磁界発生コイルの態様を「2〜4分割コイルからなり」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.取消理由ついての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように本件訂正が認められるから、本件の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、本件訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものである(上記2.(1)「訂正の内容」参照)。

(2)引用刊行物に記載された発明
ア.当審が通知した取消しの理由で引用した特開平5-114338号公報(申立人の提出した甲第1号証、以下「刊行物1」という。)には、図1〜図4と共に以下の事項が記載されている。
a.「真空容器内で接離する一対の第一の接点および第2の接点を、それぞれ先端に固着した固定側導体と可動側導体を装着して成る真空バルブにおいて、前記固定側導体の中心に前記第1の接点の近傍まで伸びる凹部を形成し、この凹部に永久磁石を装着し、前記可動側導体の中心に前記第2の接点の近傍まで伸びる凹部を形成し、この凹部に前記永久磁石とは異極の永久磁石を装着したことを特徴とする真空バルブ。」(【請求項1】)
b.「したがって、永久磁石21,23は、互いに異極が対抗するように配置され、固定接点1と可動接点2との間隙に縦磁界を形成することができる。」(段落【0012】)
c.「一方、上述した永久磁石21,23には、それぞれ中心に円形中空部21a,23aを形成する。」(段落【0012】)
d.「しかしながら、永久磁石21、23にそれぞれ円形中空21a、23aを設けると、磁界強度の最大値は図3に示すように円周方向に拡がり、遮断の際のアーク集中が接点に対して生じ難く、さらに良好な遮断性能を得ることができる。」(段落【0014】)
e.図1には、円形中空部21a,23aを有する永久磁石21,23は、固定接点1及び可動接点2の背後に備えられること、固定接点1及び可動接点2が対向して配置されること、固定接点1及び可動接点2の中央部に凹面が形成されること及びその凹面の外径が、円形中空部21a,23aを有する永久磁石21,23の内周と外周の中間部より大きいことが示されている。
f.図3には、G線上の縦方向磁界強度分布が示され、縦磁界が最大となる直径より内径側では弱まることが示されている。
上記記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「接点の背後に縦磁界を発生する円形中空部を有する永久磁石を備えた一対の接点(固定接点1及び可動接点2)が対向して真空容器内に配置された真空バルブにおいて、円形中空部を有する永久磁石が発生する縦磁界は当該縦磁界が最大となる直径より内径側では弱まるものであり、接点の中央部に凹面が形成され、その凹面の外径を、円形中空部を有する永久磁石の内周と外周の中間部より大きくした真空バルブ。」

イ.同じく引用した特開平1-315914号公報(申立人の提出した甲第2号証、以下「刊行物2」という。)には、第1図〜第10図と共に以下の事項が記載されている。
a.「この真空バルブの構造は、第8図、第9図および第10図に示すように、絶縁円筒1の両端開口部を端板2,3で気密封着して真空容器4を形成し、この真空容器4の内部に接離自在とした一対の電極5,6を配設して構成したもので、電極5の固定通電軸7は端板2に固定して取り付けられ、電極6の可動通電軸8は端板3にベローズ9を介して移動自在に取り付けられ、電極5,6の周りを囲むアークシールド10は絶縁円筒1に取り付けられ、ベローズカバー11は通電軸8に取り付けられている。
また、電極5,6の構造は、対向する接触面が銀タングステンカーバイド(以下、Ag-WCという)焼結体から接点を兼ねた電極体14,15の裏面に、通電部を16a,17aにより電気的に接続されたコイル電極16,17が設けられている。このコイル電極16,17には、固定および可動通電軸7,8からの電流がコイル分流腕部16b,17bにより分流され、コイル円弧部16c,17cに流れる。このコイル円弧部16c,17cに流れる電流により、電極間空間に軸方向磁界が発生する。」(公報第2頁左上欄第12行〜右上欄第12行)
b.「両図において、可動側電極30は、電極体21と、この電極体21の円形凹部21a中に固着され、半径を円形凹部21aのそれと同じかまたはやや小さくしたAg-WC接点31と、このAg-WC接点31の孔部31aに固着され、この対向面上中央部に半径を電極体21の約1/2とし、その周囲のAg-WC接点31よりも1〜2ミリメートル以下低くなるようにした銅-クロム(以下、Cu-Crという)接点32と、コイル電極を構成する第1段コイル24および第2段コイル25とから構成されている。」(公報第5頁左上欄第3〜12行)
c.「また、Ag-WC接点31の孔部31aの代りに、円形凹部を設け、この円形凹部に上記した条件と同じようになるCu-Cr接点32を設けるようにしてもよい。」(公報第5頁左上欄第16〜20行)
d.「しかし、第2実施例のように電極体21の対向面に設けられたAg-WC接点31の中央部に電極体21の半径の約1/2程度の半径のCu-Cr接点32をAg-WC接点31より1ないし2ミリメートル以下低く設けることにより、アークの集中部はCu-Cr接点32上に点弧することになる。このときCu-Cr接点32上ではアーク集中による溶融でその表面が銅とクロムの混成超微粒子による変質層が形成される。この変質層は、残留応力が小さく電流減少時の接点表面の急冷時に溶融による異常突起の発生を防ぎ、さらにこの変質層が混成超微粒子によって形成されるため、高耐電圧特性を示し、電流遮断後の絶縁回復を速めることにより、より大電流を遮断することができる。」(公報第5頁左下欄第11行〜右下欄第4行)
e.第9図には、コイル電極16、17が2分割コイルであることが示されている。

(3)対比・判断
ア.請求項1について
本件発明と引用発明1とを対比すると、後者における「接点(固定接点1及び可動接点2)」は、その作用・機能からみて前者における「電極」に相当し、同様に、「真空容器」は「絶縁真空容器」に相当すると認められる。
後者の接点は、中央部に凹面を形成しているのであるから、その外面の環状の部分で接触するものであって、その環状の部分が前者の電極の接触面に相当し、後者の凹面の外径が前者の接触面の内径に相当すると認められる。
また、後者における「円形中空部を有する永久磁石」と前者における「縦磁界発生コイル」とは、「縦磁界発生手段」という概念で共通する。
さらに、円形中空部を有する永久磁石において、縦磁界が最大となるのは、永久磁石の内周と外周のほぼ中間部であることは技術常識であるから、結局、本件発明1と引用発明1とは、
「電極の背後に縦磁界を発生する縦磁界発生手段を備えた一対の電極が対向して絶縁真空容器内に配置された真空バルブにおいて、上記縦磁界発生手段が発生する縦磁界は当該縦磁界が最大となる直径より内径側では弱まるものであり、上記電極の接触面は環状に形成され、その環状の接触面の内径を、上記縦磁界の最大となる直径より大きくしたこと特徴とする真空バルブ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:縦磁界発生手段が、本件発明1においては、2〜4分割コイルからなる縦磁界発生コイルであるのに対して、引用発明1においては、円形中空部を有する永久磁石である点

上記相違点について検討するに、真空バルブの縦磁界発生手段として、2分割コイルからなる縦磁界発生コイルを用いることは、刊行物2に記載されている(上記刊行物2の記載事項e.参照)。そして、引用発明1における永久磁石と刊行物2に記載された発明(以下、「引用発明2」という。)における縦磁界発生コイルとは、真空バルブにおいて縦磁界を発生させるという共通の機能を有するものである。
よって、引用発明1において、その永久磁石を、引用発明2における2分割コイルからなる縦磁界発生コイルに置換することは当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、本件発明1により奏される効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る程度のものである。

上記効果に関して、請求人は、平成17年2月8日付けの意見書の第4〜6頁「本特許発明と刊行物との対比」において、「縦磁界を発生する手段が2〜4分割コイルである」本件発明1は、「縦磁界が強い分割コイルの腕部分・・・の位置に、発弧点が集中する傾向があ」り、「電極の接触面に縦磁界の強弱に基づき発弧点が集中する位置があったとしても、アークの大部分を電極の接触面内側の凹面に移動させ、電極の接触面のアークによる消耗を少なくできる。」という出願当時の技術水準から予測できない効果を有する旨主張している。
しかし、アークの大部分を電極の接触面内側の凹面に移動させ、電極の接触面のアークによる消耗を少なくするという現象について、引用発明1も縦磁界が最大となる直径より内径側では弱まるものであって、その中央部に凹面を形成していることから、同様に生じることは、明らかである。分割コイルの使用により発弧点が集中しやすいと主張しても、同じくアークの大部分を凹面に移動させるという効果は、当業者が容易に予測できたことである。よって、請求人の上記主張は採用することができない。

したがって、本件発明1は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.請求項2について
本件発明2は、本件発明1に「環状に形成された電極の接触面の中央部に凹面を形成し、その凹面に耐アーク性導電材料のアーク電極を固着した」という事項をさらに限定したものである。
このうち、「環状に形成された電極の接触面の中央部に凹面を形成」するという事項は、上記のとおり、引用発明1も備える構成である。
その凹面に耐アーク性導電材料のアーク電極を固着する点について、刊行物2には、接点の凹部にCu-Cr接点を設けること(上記刊行物2の記載事項b.及びc.参照)及びCu-Cr接点は、アーク集中の溶融で、残留応力が小さく急冷時の溶融による異常突起の発生を防ぐ変質層を形成すること(上記刊行物2の記載事項d.参照)が記載されていることから、引用発明2も有する構成であると言える。
そして、引用発明2は、この構成により、耐アーク性を高めるものであって、引用発明1においても同様の課題を有することは当業者にとって自明である。よって、引用発明1に引用発明2の凹面に耐アーク性導電材料のアーク電極を固着するという構成を付加することは当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、本件発明2により奏される効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本件発明2は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならないものに対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
真空バルブ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】電極の背後に2〜4分割コイルからなり縦磁界を発生する縦磁界発生コイルを備えた一対の電極が対向して絶縁真空容器内に配置された真空バルブにおいて、上記縦磁界発生コイルが発生する縦磁界は当該縦磁界が最大となる直径より内径側では弱まるものであり、上記電極の接触面は環状に形成され、その環状の接触面の内径を、上記縦磁界の最大となる直径より大きくしたこと特徴とする真空バルブ。
【請求項2】環状に形成された電極の接触面の中央部に凹面を形成し、その凹面に耐アーク性導電材料のアーク電極を固着したことを特徴とする請求項1記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、電気回路を開閉する真空遮断器の真空バルブの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
真空遮断器の遮断部の真空バルブは、内部が真空に保持された絶縁容器内に、一対の電極の接触面が互いに対向し、接離可能に所定の距離を保って配置され、固定電極、可動電極の接続導体の一端が外部に導出された構成である。
【0003】
図5は従来の真空バルブの固定電極または可動電極の構成を示す構成図である。図5において、10は固定電極であり、端面の中央部に接触面11aを有する接触電極11、縦磁界を発生するコイル部分12a、接触電極11との結合部12b、および導体接続部12cを形成する縦磁界発生コイル12および接続導体13で構成されている。20は可動電極であり、上記固定電極10と同様に、端面中央部に接触面21aを有する接触電極21、縦磁界発生コイル22、および接続導体23で構成されている。
【0004】
図6は真空バルブの電極部の構成を示す構成図である。真空バルブは、図5に示すように構成された固定電極10および可動電極20の接触面が接離可能に所定の距離を保って対向して配置されており、固定電極と可動電極が開離した状態を示している。
【0005】
このように構成された真空バルブに電流が流れていると縦磁界発生コイル12a,および22aにより接触電極11、21の接触面と直角方向に縦磁界が発生する。接触電極が開離して発生したアークは縦磁界の強さに応じて分布し、アークは発生点に固定されることなく縦磁界の強さに応じて分散し、電極全面に広がり、電流の零点で消弧される。
【0006】
従来の縦磁界の発生機能を備えた真空バルブは、例えば特開昭60-151920号に示された、図7に示すように縦磁界発生コイルが発生する縦磁界の最大となる位置は接触電極の接触面の外径よりも大きくしたものが汎用されている。図7の構成は接触電極1とアーク電極4とを重ねた電極とし、接触電極1の外径は、縦磁界発生コイル2が発生する縦磁界の強さが最大となる部分の直径Dmよりも小さくして、電極が開離してアークが発生したときに、接触電極1の表面に分散させるとともにアークをアーク電極4の部分にも移行させ、アーク電極4の外径Daを大きくして接触電極の接触面の消耗を少なくする構成である。
【0007】
このような構成においては、アーク電極4の部分の開離距離は、接触電極1の接触面の開離距離よりも大きいので、発生したアークは接触電極1の接触面の外縁部分に集中し、この接触面の外縁部分の消耗が激しくなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来の真空バルブは、アークが発生したときに接触電極の外周部の消耗が激しくなる問題点がある。
【0009】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、真空バルブの電流の開閉が行われても電極の接触面の消耗が少ない真空バルブを提供することを目的とする。
【0010】
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1に係る真空バルブは、縦磁界発生コイルが発生する縦磁界は当該縦磁界が最大となる直径より内径側では弱まるものであり、電極の接触面を環状に形成し、その環状の接触面の内径をこの縦磁界の強さが最大となる直径よりも大きくし、接触面の内側は凹面としたものである。
【0012】
この発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の真空バルブの電極の環状に形成された接触面の内側を凹面とし、その部分に耐アーク性導電材料のアーク電極を固着したものである。
【0013】
【0014】
【作用】
この発明の請求項1の真空バルブにおいては、縦磁界発生コイルが発生する縦磁界は当該縦磁界が最大となる直径より内径側では弱まるものであり、電極の接触面を環状に形成し、その環状の接触面の内径をこの縦磁界の強さが最大となる直径よりも大きくし、接触面の内側は凹面としたので、電極の開離により発生したアークは環状の接触面内側の凹面に移行して消弧するため、接触面の消耗は少なくなる。
【0015】
この発明の請求項2の真空バルブにおいては、電極の環状に形成された接触面内径の凹面に耐アーク性導電材料のアーク電極を固着したので、電極の開離により発生したアークは環状接触面内側の凹面に固着されたアーク電極の部分に移行して消弧するので、接触面の消耗が少なく、接触面内側の凹面の消耗も少なくなる。
【0016】
【実施例】
以下、この発明の実施例について説明する。
実施例1.
図1は、この発明の一実施例の電極の構成を示す構成図であり、11は接触電極であり、端面が接触面11aである。12は縦磁界発生コイル、13は接続導体であり、図5、図6に示す従来の電極と同じ構成であり、接触電極11、縦磁界発生コイル12、接続導体13が結合されている。可動電極についても、固定電極と同様に、接触電極21、縦磁界発生コイル22、接続導体23が結合された構成である。上記接触面11aの直径D1は、縦磁界発生コイル12、22により生じる縦磁界が最大となる直径Dmより大きくなっている。縦磁界発生コイル12、22は図5に示す4分割コイルの他に3分割コイル、2分割コイルも使用される。
【0017】
このように構成された真空バルブにおいて、固定電極10および可動電極20に電流が流れたとき、電流は固定電極10の接続導体13から縦磁界発生コイル12を経由して接触電極11に流れ、可動電極20の接触電極21、縦磁界発生コイル22、接続導体23へ流れ、縦磁界発生コイル12、22により図6の一点鎖線に示すような縦磁界が発生する。電極が開離して接触面にアークが発生するとアークは縦磁界の強さに応じて分散し、アークは接触面11a,12aの全面に分散して消弧するため、接触面の局部的な消耗が少なくなる。
【0018】
実施例2.
図3はこの発明の他の実施例を示す。この実施例2.は電極の接触面を環状に形成したものである。図3において、31は固定電極の接触電極であり、接触面を環状に形成し,その内側は凹面31bとしたものである。縦磁界発生コイル12、接続導体13は実施例1.と同様に構成されている。可動電極についても同様に形成されている。環状に形成された接触面31aの内径D2は、縦磁界が最大となる直径Dmよりも大きくしたものである。
【0019】
このようにしたことにより、固定電極、可動電極が開離して接触面31aにアークが発生すると、そのアークの大部分は環状の接触面31aの内側の凹面31bに移動し、接触面のアークが少なくなるため接触面31aの消耗は非常に少なくなり、開閉寿命の長い真空バルブが得られる。
【0020】
実施例3.
この実施例3.は、実施例2.の構成に改良を加えたものであり、接触電極31の環状の接触面31aの内側の凹面31bに耐アーク性の良好な導電材料のアーク電極41を固着したものである。
【0021】
このようにすると、接触電極31が開離したときに、アークの大部分が接触環状の接触面31aの内側の凹面31bに固着したアーク電極41の部分に分散するので、接触面31aの消耗は非常に少なくなり、接触面の凹面についてもアーク電極41を固着しているので、この部分についても消耗が少なくなり、実施例2.のものよりさらに開閉寿命の長い真空バルブが得られる。
【0022】
【0023】
【発明の効果】
この発明の請求項1に係る真空バルブは、縦磁界発生コイルが発生する縦磁界は当該縦磁界が最大となる直径より内径側では弱まるものであり、電極の接触面を環状に形成し、その内側は凹面とし、環状の接触面の内径はこの縦磁界の強さが最大となる直径よりも大きくしたので、電極の開離により発生するアークは、環状の接触面内側の凹面に移行して分散し消弧するので、接触面の消耗が非常に少なくなる効果を奏する。
【0024】
この発明の請求項2に係る真空バルブは、電極の環状に形成された接触面内径の凹部にアーク電極を固着したので、接触面の消耗が非常に少なく、接触面の内側の凹面の損傷も少なくなる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による真空バルブの一実施例の電極構成図である。
【図2】この発明による真空バルブの縦磁界の強さの直径方向の分布を示す分布図である。
【図3】この発明による真空バルブの他の実施例の電極構成図である。
【図4】図3に示す真空バルブの電極部にさらに改良を加えた実施例の電極構成図である。
【図5】従来の真空バルブの電極部の構成図である。
【図6】従来の真空バルブの電極部の縦磁界分布の説明図である。
【図7】従来の真空バルブの電極と縦磁界分布の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
10 固定電極 11 固定電極 11a 接触面
12 縦磁界発生コイル 13 接続導体 20 可動電極
21 接触電極 21a 接触面 22 縦磁界発生コイル
23 接続導体 31 接触電極 31a 接触面
31b 凹面 41 アーク電極
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-04-14 
出願番号 特願平7-63998
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 井上 茂夫  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 山本 信平
平上 悦司
登録日 2003-02-14 
登録番号 特許第3396988号(P3396988)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 真空バルブ  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 村上 加奈子  
代理人 高橋 省吾  
代理人 村上 加奈子  
代理人 高橋 省吾  

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