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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B65H |
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管理番号 | 1123365 |
審判番号 | 無効2002-35432 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-08-12 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-10-11 |
確定日 | 2005-07-07 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2771333号発明「ワインダ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2771333号の請求項1、4ないし5に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2771333号の発明は、1995年7月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年7月15日、ドイツ国)を国際出願日とする出願(特願平8-504664号)であって、平成10年4月17日に特許の設定登録がなされたものであり、平成14年10月11日に本件特許に対する無効審判請求がなされ、平成15年2月10日付けで答弁書が提出され、15年4月3日付け無効理由通知に対し、平成15年4月22日に意見書及び訂正請求がなされ、平成15年6月19日に口頭審理が行われたものである。 口頭審理においては、請求人より口頭審理陳述要領書及び技術説明資料が提出され、また、被請求人からも口頭審理陳述要領書が提出された。 2.訂正の適否 (1)訂正の内容 平成15年4月22日付けの訂正請求は、以下のア.〜ウ.の事項を訂正しようとするものである。 ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1、請求項4及び請求項5中の記載「少なくとも2つの巻成部」を「少なくとも3つの巻成部」とする訂正。 イ.訂正事項b 特許請求の範囲の請求項4の記載「一方の巻成部(C)の下位回転平面(15C)が、前記他方の巻成部(D)の上位回転平面(16D)の羽根(14D)と噛み合っている」を「一方の巻成部(C)の下位回転平面(15C)の羽根(13C)が、前記他方の巻成部(D)の上位回転平面(16D)の羽根(14D)と噛み合っている」とする訂正。 ウ.訂正事項c 特許明細書第7頁第13〜15行(特許掲載公報第8欄第5〜7行参照)の「一方の巻成部の下位回転平面が、前記他方の巻成部の上位回転平面の羽根と噛み合っている点にある。」を「一方の巻成部の下位回転平面の羽根が、前記他方の巻成部の上位回転平面の羽根と噛み合っている点にある。」とする訂正。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア.訂正事項aについて 備える巻成部の数を「少なくとも2つ」から「少なくとも3つ」に限定する訂正であるので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 そして、「少なくとも2つ」には、当然、「少なくとも3つ」が包含されているので、この訂正は、明らかに願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ.訂正事項bについて 互いに噛み合うのは「羽根」と「羽根」であることは明らかであり、本訂正は、「下位回転面」と「上位回転面の羽根」と噛み合っているとした訂正前の記載を、「下位回転面の羽根」と「上位回転面の羽根」と噛み合っているとの記載に訂正するものであるので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ.訂正事項cについて 訂正事項bの訂正と整合をとるための訂正であるので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)むすび よって、平成15年4月22日付け訂正請求による訂正は、特許法第134条第2項及び特許法第134条第5項の規定によって準用する特許法第126条第2,3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.請求人の主張 請求人は、下記の甲第1号証〜甲第4号証を提出するとともに、本件特許の請求項4に係る発明は甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり、また、請求項1、4及び5に係る発明は、甲第3号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである旨主張している。 -請求人の提出した証拠- 甲第1号証:特開平5-24740号公報 甲第2号証の1:ドイツ連邦共和国特許出願公開1,710,068号明細書 甲第2号証の2:甲第2号証の1の翻訳文 甲第3号証:特開昭54-143869号公報 甲第4号証:特開昭59-194977号公報 4.被請求人の主張 甲1号証、甲第3号証あるいは甲第4号証に記載されたワインダは、隣接するトラバース装置のロータの羽根の回転平面が、それぞれ隣接しているロータの羽根の回転平面と互いに一致し、かつ羽根の回転円が互いに重なり合うという特定の位置関係を達成するように、各トラバース装置を構成し配置するという技術思想が開示されており、それらのワインダに甲2号証に開示されたトラバース装置の羽根を傾斜するという技術思想を適用することは、甲1号証、甲第3号証あるいは甲第4号証に開示された技術思想を理由もなく放棄し、しかも羽根相互の新たな干渉を惹起させることとなり、この適用には阻害要因が存在するので、請求人の主張は失当である旨主張している。 5.本件特許発明 本件特許の請求項1、4及び5に係る発明(以下、「第1発明、第4発明及び第5発明」という。)は、平成15年4月22日付け訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、4及び5に記載された事項により特定される次のものである。 「1.パッケージ管(2)用の緊締装置(1)とトラバース装置(4)と、前記の緊締装置(1)とトラバース装置(4)との間に配置されている接触ローラ(6)とから夫々成る少なくとも3つの巻成部(A,B)を備え、しかも 前記トラバース装置(4)が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータ(7,8)を備え、 前記の両ロータ(7,8)が、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根(13,14;13A,14A;13B,14B)を夫々有し、かつ、前記の一方のロー夕(7)の羽根(13,13A,13B)が下位回転平面(15,15A,15B)内で回転し、また他方のロー夕(8)の羽根(14,14A,14B)が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面(16,16A,16B)内で回転し、 トラバース運動の両反転点(29,30)間に間隔Hが存在し、 トラバース運動三角形の平面が反転点(29,30)において、前記回転平面(15,16;15A,16A;15A,16B)に対して角度αを形成しており、かつ 隣り合った巻成部(A,B)の前記ロータ(7,8)の回転円が互いに交差している形式の ワインダにおいて、 巻成部(A,B)における両回転平面(15A,16A,15B,16B)とトラバース運動三角形の平面との交線が、下位のロータ(7)の羽根(13A,13B)が両反転点(30,29)間を運動する方向(28)で、同一方向及び同一角度βで上り勾配を成し、前記角度が次の関係式: 0<β<2 arctan(d/H・sinα) を満たし、 回転平面(15A,16A)の交線が隣接した他方の巻成部(B)の方へ向かって上り勾配を成すところの、一方の巻成部(A)の下位回転平面(15A)が、前記他方の巻成部(B)の回転平面(15B,16B)間に位置し、かつ前記他方の巻成部(B)の上位回転平面(16B)が、一方の巻成部(A)の回転平面(15A,16A)間に位置しており、かつ回転平面(16A,16B,15A,15Bの順序で)が、全ての羽根(13A,14A,13B,14B)を互いに独立して回転させ得るような間隔をおいて配置されていることを特徴とする、ワインダ。 4.パッケージ管(2)用の緊締装置(1)とトラバース装置(4)と、前記の緊締装置(1)とトラバース装置(4)との間に配置されている接触ローラ(6)とから夫々成る少なくとも3つの巻成部(C,D)を備え、しかも前記トラバース装置(4)が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータ(7,8)を備え、 前記の両ロータ(7,8)が、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根(13,14;13C,14C;13D,14D)を夫々有し、かつ,前記の一方のロータ(7)の羽根(13,13C,13D)が下位回転平面(15,15C,15D)内で回転し、また他方のロータ(8)の羽根(14,14C,14D)が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面(16,16C,16D)内で回転し、 トラバース運動の両反転点(29,30)間に間隔Hが存在し、 トラバース運動三角形の平面が反転点(29,30)において、前記回転平面(15,16;15C,16C;15D,16D)に対して角度αを形成しており、かつ 隣り合った巻成部(C,D)の前記ロー夕(7,8)の回転円が互いに交差している形式の ワインダにおいて、 巻成部(C,D)における両回転平面(15C,16C,15D,16D)とトラバース運動三角形の平面との交線が、下位のロー夕(7)の羽根(13C,13D)が両反転点(30,29)間を運動する方向(28)で、同一方向及び同一角度βで上り勾配を成し、前記角度が次の関係式: 0<β<2 arctan(d/H・sinα) を満たし、 回転平面(15C,16C)の交線が隣接した他方の巻成部(D)の方へ向かって上り勾配を成すところの、一方の巻成部(C)の下位回転平面(15C)の羽根(13C)が、前記他方の巻成部(D)の上位回転平面(16D)の羽根(14D)と噛み合っていることを特徴とする、ワインダ。 5.パッケージ管(2)用の緊締装置(1)とトラバース装置(4)と、前記の緊締装置(1)とトラバース装置(4)との間に配置されている接触口一ラ(6)とから夫々成る少なくとも3つの巻成部(E,F)を備え、しかも 前記トラバース装置(4)が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータ(7,8)を備え、 前記の両ロータ(7,8)が、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根(13,14;13E,14E;13F,14F)を夫々有し、かつ、前記の一方のロータ(7)の羽根(13,13E,13F)が下位回転平面(15,15E,15F)内で回転し、また他方のロータ(8)の羽根(14,14E,14F)が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面(16,16E,16F)内で回転し、 トラバース運動の両反転点(29,30)間に間隔Hが存在し、 トラバース運動三角形の平面が反転点(29,30)において、前記回転平面(15,16;15E,16E;15F,16F)に対して角度αを形成しており、かつ 隣り合った巻成部(E,F)の前記ロータ(7,8)の回転円が互いに交差している形式の ワインダにおいて、 全ての巻成部(E,F)における両回転平面(15E,16E,15F,16F)とトラバース運動三角形の平面との交線が、下位のロータ(7)の羽根(13E,13F)が両反転点(30,29)間を運動する方向(28)で、同一方向及び同一角度βで上り勾配を成し、前記角度が次の関係式: 0<β<2 arctan(d/H・sinα) を満たし、 回転平面(15E,16E)の交線が隣接した他方の巻成部(F)の方へ向かって上り勾配を成すところの、一方の巻成部(E)の下位回転平面(15E)が、前記他方の巻成部(F)の上位回転平面(16F)よりも上方に位置し、かつ 回転平面(15E,16F)が、該回転平面内で回転する羽根(13E,14F)を互いに独立して回転させ得るような間隔をおいて配置されていることを特徴とする、ワインダ。」 6.当審の判断 (1)甲第1号証、第2号証の1及び甲第3号証に記載された事項 a.甲第2号証の1(ドイツ連邦共和国特許出願公開1,710,068号明細書、以下、「引用例1」という。) 引用例1には、甲第2号証の2の翻訳文を参照すれば、以下の事項が記載されている。 記載イ: 「本発明は糸を円筒形のボビン又は類似の要素に紡績糸又はフィラメントを巻き付ける装置、かつ特にボビンにわたって巻き付けの間に紡績糸又はフィラメントを分配する装置に関する。」(明細書第1頁16〜20行参照) 記載ロ: 「特に図2から明らかなように、糸ガイドt1は、反時計方向の回転運動を行ない、かつ糸ガイドt2は、時計方向に回転し、その際、糸Tは、糸Tが糸ガイドを介してつかまれる前に、棒を介して摺動案内される。駆動シリンダ4は、摩擦結合によってボビンBを駆動するために使われ、このボビンに糸が巻き付けられる。種々の要素の寸法と配置は、巻き付けるべき糸が棒3において摺動して自由に動くことができるようになっている。このことは、特に図3から明らかである。」(明細書第4頁13〜22行参照) 記載ハ: 「糸ガイドt1及びt2は、同一の軸上において、又は切離された異なった2つの軸上で回転し、その際、この後者の場合、図2及び図4による配置が考慮されている。 図2に示すように、両方の糸ガイドの回転軸は、駆動シリンダ4の回転軸に対して平行な一つの線に沿って配置されている。」(明細書第5頁23〜29行参照) 記載ニ: 「図4に示すように、両方の糸ガイドの回転軸は、互いに平行であるが、駆動シリンダ4の回転軸に対して垂直に配置されていない。駆動シリンダ4の軸と糸ガイドのt1及びt2の回転軸線との間の相応する角度は、図4に記号βによって示されており、かつこの角度の大きさは、糸ガイドt1及びt2の垂直間隔及びその作用行程の長さに依存している。軸のこの傾斜βによって、駆動シリンダ4におけるガイドスリット6に糸を降ろす微妙な瞬間に前方に動く糸ガイドは、所定の間隔だけシリンダ4から離され、この糸ガイドが駆動シリンダ4の右側又は左側端部にあるかどうかに関係なく、しかも糸ガイドが2つの異なった部材に付属しており、これらの部材が重なって形成されている場合でさえ関係なく、所定の間隔だけ離される。この所定の間隔は、図4にDによって示されている。」(明細書第6頁欄4〜20行参照) 上記記載と図1〜4の記載から、引用例1には、 「ボビン(B)用の緊締装置とトラバース装置と、前記の緊締装置とトラバース装置との間に配置されている駆動シリンダ(4)とから夫々成る巻成部を備え、しかも前記トラバース装置が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能な糸ガイド(t1、t2)を備え、前記の両糸ガイド(t1、t2)が、プロペラ状に配置された2枚の羽根を夫々有し、かつ、前記の一方の糸ガイドt1の羽根が下位回転平面内で回転し、また他方の糸ガイドt2の羽根が、前記下位回転平面より上方に短い間隔をおいて位置している上位回転平面内で回転し、トラバース運動の両反転点間に有効ストローク長が存在し、トラバース運動三角形の平面が反転点において、前記回転平面に対して角度を形成している形式のワインダであって、 糸ガイドt1と駆動円筒(4)との距離と糸ガイドt2と駆動円筒(4)との距離とが等しい距離Dとなるように」した発明が開示されているものと認められる。 b.甲第1号証(特開平5-24740号公報、以下、「引用例2」という。) 引用例2には、以下の事項が記載されている。 記載ホ: 「各トラバース機構01・・・のそれぞれは、第1の回転軸芯P1周りで回転して糸Yをボビン02の回転軸芯方向の一方の側に案内移動する3本の第1のトラバースブレード03・・・と、第1の回転軸芯P1よりもボビン02の回転軸心に平行な方向に偏位した第2の回転軸芯P2周りで第1のトラバースブレード03とは逆方向に回転して糸Yをボビン02の回転軸芯方向の他方側に案内移動する3本の第2のトラバースブレード04・・・とから構成されている。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ しかしながら、上述従来例の構成では隣合うトラバース機構01,01において、第1および第2のトラバースブレード03,04のいずれも回転方向が逆であるとともにそれぞれ同一平面で回転するから、」(公報第2欄9〜45行参照) 記載ヘ: 「隣合うトラバース機構20,20における一方の第1のトラバースブレード21…と第2のトラバースブレード22…とが同一の第1の平面S1内で回転するように配置されるとともに、別の第1のトラバースブレード21…が第1の平面S1よりも第2の支持体25側に偏位した第2の平面S2内で、そして、別の第2のトラバースブレード22…が第1の平面S1よりも第2の支持体25から離れる側に偏位した第3の平面S3内でそれぞれ回転するように配置されている。」(公報第6欄37〜45行参照) c.甲第3号証(特開昭54-143869号公報、以下、「引用例3」という。) 引用例3には、以下の事項が記載されている。 記載ト: 「この課題を解決するために本発明の構成では、適当な数の糸のための複数のあや振り装置が互いに並んで配置されており、全あや振り装置の羽根が互いに密に隣接した2つの回転平面に配設されており、全あや振り装置のガイドローラが同軸的に配置されており、互いに隣接したあや振り装置の羽根の回転平面が互いにオーバラップしており、」(公報第3頁右上欄13〜20行参照) 記載チ: 「隣接するあや振り装置1、2,3の、同一の回転平面I、IIに配置されている羽根5、6の回転円は、第1図からわかるように互いにオーバラップしている。」(公報第6頁右下欄11〜14行参照) (2)対比・判断 (2-1)第1発明について 第1発明と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、引用例1に記載の、「ボビン(B)」、「駆動シリンダ(4)」、「糸ガイドt1」、「糸ガイドt2」は、それぞれ第1発明の「パッケージ管(2)」、「接触ローラ(6)」、「一方のロータ(7)」、「他方のロータ(8)」にそれぞれ相当する。 さらに引用発明における「糸ガイドt1と駆動円筒(4)との距離と糸ガイドt2と駆動円筒(4)との距離とが等しい距離Dとなるように」した点を検討すると、距離Dは、第1発明の両反転点におけるトラクト長さに相当する。訂正明細書10頁には、両反転点でのトラクト長さが等しい場合には、両回転平面とトラバース運動三角形の平面との交線の勾配角度をβ0とした場合には、β0=arctan(d/H・sinα)となることが記載されており、両平面の勾配角度を第1発明で定義された角度βを用いれば(引用例1で定義されたβとは異なっている。)、第1発明の角度、距離の関する定義をそのまま使用すれば、「β=arctan(d/H・sinα)」であると認められる。 してみると、両者は、「パッケージ管用の緊締装置とトラバース装置と、前記の緊締装置とトラバース装置との間に配置されている接触ローラとから夫々成る巻成部を備え、しかも前記トラバース装置が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータを備え、前記の両ロータが、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根を夫々有し、かつ、前記の一方のロータの羽根が下位回転平面内で回転し、また他方のロータの羽根が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面内で回転し、トラバース運動の両反転点間に間隔Hが存在し、トラバース運動三角形の平面が反転点において、前記回転平面に対して角度αを形成している形式のワインダ」である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1: 第1発明においては、両回転平面の上り勾配角度βが、0<β<2 arctan(d/H・sinα)の式を満たすように設定されているのに対し、引用発明においては、両回転平面の上り勾配角度βは、β=arctan(d/H・sinα)で定義される角度である点。 相違点2: 第1発明においては、巻成部は少なくとも3つからなり、隣り合う巻成部のローターの回転平面が交差するように配置するとともに、一方の巻成部の下位回転平面が、前記他方の巻成部の回転平面間に位置し、かつ前記他方の巻成部の上位回転平面が、一方の巻成部の回転平面間に位置しており、かつ回転平面が、全ての羽根を互いに独立して回転させ得るような間隔をおいて配置されているものであるのに対し、引用発明においては、巻成部は1つしかないので隣り合う場合の配置に関してはなんら触れられていない点。 これらの相違点について検討をする。 相違点1について: 第1発明において、両回転平面の上り勾配角度βが、0<β<2 arctan(d/H・sinα)の式を満たすように設定することの意義を考察する。 一般に回転平面のトラクト長さをできるだけ短くすることが、均一な構造のパッケージを巻くために必要であることはよく知られた事実である。しかしながら如何に短くしても、従来よく知られたワインダにおいては、「トラバース運動三角形の平面と両回転平面との間の交線は、公知のワインダの場合には接触ローラ面とトラバース運動三角形との接線に対して平行に位置し、要するに接触ローラの軸線に対しても平行に位置している。前記接線からの両交線の距離が異なることに応じて、上位回転平面の羽根が糸を供給する反転点におけるトラクト長さは、下位回転平面の羽根が糸を供給する反転点におけるトラクト長さよりも大である。・・・・・両反転点におけるトラクト長さ間の差は、操業中にパッケージの両端部におけるパッケージ構造の品質を異ならせることになる。」(訂正明細書2頁18〜26行参照)問題があったので、本件発明においては、その問題を解決するために、接触ローラの軸線に対して回転平面を傾斜する(すなわち、βの角度をつける)ことによって、トラクト長さの差をなるべく短くしようとするものである。差が全くなければ品質が異なる問題は解決するのであるが、第1発明は、差が全くなくならなくとも、βが零の公知例よりもよりその長さの差を短くすればパッケージ構造の品質の不均一がより少なくなるというものである。そして、トラクト長さの差が零の場合は、β=arctan(d/H・sinα)で定義されるので、βが零の場合を中心に傾斜角を設定するものであると認められる。 以上の考察を踏まえれば、引用発明の場合は、両反転点におけるトラクト長さの差を零とし、製品間の品質のバラツキを全くなくそうとするものであるのに対し、第1発明の場合は、従来公知のものよりも引用発明のものに近づくようにトラクト長の差を(零の場合も含めて)より短くしようとするものであるといえる。 しかしながら、両反転点におけるトラクト長さの差が少なければ、パッケージ品質の不均一が少なくなることは引用例からも容易に予測できることであるから、トラクト長の差が従来のものよりも少ない範囲をとって、相違点1に係る構成のようにすることに格別の困難があったとは認められない。 相違点2について: 一般に、ワインダは、複数の巻成部を並列配置したものを一台として設計するが、いわゆる羽根型トラバース装置をもったワインダにおいても、そのことは同様である。そして、羽根型トラバース装置をもったワインダは、トラバース装置が巻取幅よりも左右に張り出す構造であるために、並列配置したとき横幅が不必要に長くなるので、隣接する巻成部のロータの回転平面が交差するようにトラバース装置を配置して、横幅を詰め、コンパクトにすることが、引用例3にも見られるように周知である。従来から近接配置されているトラバース装置はロータの回転平面が水平なもの(すなわち、βが零であるもの)であるのに対し、引用例1記載のものは、ロータの回転平面が傾斜している羽根型トラバース装置をもつワインダであるが、このようなものにおいても、通常の羽根型トラバース装置をもつもの同様、複数の巻成部を並列配置し、並列配置にあたっては、巻成部の配置をコンパクトにしようとすることは、当業者が当然考慮することである。そして、傾斜があることにより、ロータの回転面が交差するような巻成部の配置が困難となる事情も認められないので、引用発明において、少なくとも3つの巻成部を近接配置し、隣り合う巻成部のロータの回転平面が交差するように配置した点には格別のものがないというべきである。 そもそも、ロータの回転平面が交差するように二つ以上の巻成部を近接配置する場合、一つのロータの回転平面に着目してみれば、一つのロータの回転平面を、隣接する巻成部のロータの回転平面と同一平面上にするか、あるいは、異なった平面上にするかの二つに一つの選択しかなく、一つの巻成部の上下二つのロータの回転平面のいずれの回転面も、隣接する巻成部のロータの回転平面とは異なった平面に配置することは、必要に応じて適宜選択できる程度の事項であると認められる。そして、そうした選択を採用した場合、隣り合うトラバース装置間のトラクト長の違いを小さくすべき必要があることを考慮すれば、隣接する上下の回転平面の間に一つの回転平面が位置するように配置することは当業者が容易に選択できたものと認められる。 よって、第1発明は、引用発明および周知の技術事項から当業者が容易に発明できたものである。 (2-2)第4発明について 第4発明は、「・・・・・・0<β<2 arctan(d/H・sinα)を満たし、」までは第1発明と同じであり、隣接する巻成部の上位回転平面と下位回転平面の配置関係に関して第1発明と異なるものである。 そこで第4発明と引用発明とを対比すると、両者は、「パッケージ管用の緊締装置とトラバース装置と、前記の緊締装置とトラバース装置との間に配置されている接触ローラとから夫々成る巻成部を備え、しかも前記トラバース装置が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータを備え、前記の両ロータが、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根を夫々有し、かつ、前記の一方のロータの羽根が下位回転平面内で回転し、また他方のロータの羽根が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面内で回転し、トラバース運動の両反転点間に間隔Hが存在し、トラバース運動三角形の平面が反転点において、前記回転平面に対して角度αを形成している形式のワインダ」である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1: 第4発明においては、両回転平面の上り勾配角度βが、0<β<2 arctan(d/H・sinα)の式を満たすように設定されているのに対し、引用発明においては、両回転平面の上り勾配角度βは、β=arctan(d/H・sinα)で定義される角度である点。 相違点3: 第4発明においては、巻成部は少なくとも3つからなり、隣り合う巻成部のローターの回転平面が交差するように配置するとともに、一方の巻成部の下位回転平面の羽根が、他方の巻成部の上位回転平面の羽根と噛み合っているのに対し、引用発明においては、巻成部は1つしかないので隣り合う場合の配置に関してはなんら触れられていない点。 相違点1については、すでに検討したので相違点3について検討する。 複数のトラバース装置を配置するために、隣り合う巻成部のロータの回転平面が交差するようにトラバース装置を近接配置することは従来から広く行われていることである。従来から近接配置されているトラバース装置はロータの回転平面が水平なもの(すなわち、βが零であるもの)であるのに対し、第4発明のものはロータの回転平面が傾斜しているものであるが、傾斜が設けられているか否かによって隣り合う巻成部ロータの回転面が交差するような近接配置が困難となるものでもないので、第4発明のものにおいて、少なくとも3つの巻成部を近接配置し、隣り合う巻成部のロータの回転平面が交差するように配置した点には格別のものがないというべきである。 ところで、引用例2には、回転平面が交差するように配置した場合、一つの巻成部のロータの二つの回転平面のうち、一つの回転平面は隣接する巻成部の回転平面とは同一平面上にならない位置に配置し、他の一つの回転平面は隣接する巻成部の回転平面と同一の平面上に配置したものが記載されている。 してみると、第4発明において、一方の巻成部の下位回転平面の羽根が、他方の巻成部の上位回転平面の羽根と噛み合うように配置した点は、引用例2に記載された事項から当業者が容易に想到できたものである。 よって、第4発明は、引用発明および引用例2に記載された技術事項から当業者が容易に発明できたものである。 (2-3)第5発明について 第5発明は、「・・・・・・0<β<2 arctan(d/H・sinα)を満たし、」までは第1発明と同じであり、隣接する巻成部の上位回転平面と下位回転平面の配置関係に関して第1発明と異なるものである。 そこで第5発明と引用発明とを対比すると、両者は、「パッケージ管用の緊締装置とトラバース装置と、前記の緊締装置とトラバース装置との間に配置されている接触ローラとから夫々成る巻成部を備え、しかも前記トラバース装置が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータを備え、前記の両ロータが、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根を夫々有し、かつ、前記の一方のロータの羽根が下位回転平面内で回転し、また他方のロータの羽根が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面内で回転し、トラバース運動の両反転点間に間隔Hが存在し、トラバース運動三角形の平面が反転点において、前記回転平面に対して角度αを形成している形式のワインダ」である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1: 第5発明においては、両回転平面の上り勾配角度βが、0<β<2 arctan(d/H・sinα)の式を満たすように設定されているのに対し、引用発明においては、両回転平面の上り勾配角度βは、β=arctan(d/H・sinα)で定義される角度である点。 相違点4: 第5発明においては、巻成部は少なくとも3つからなり、隣り合う巻成部のローターの回転平面が交差するように配置するとともに、一方の巻成部の下位回転平面が、前記他方の巻成部の上位回転平面よりも上方に位置し、かつ回転平面が、該回転平面内で回転する羽根を互いに独立して回転させ得るような間隔をおいて配置されているのに対し、引用発明においては、巻成部は1つしかないので隣り合う場合の配置に関してはなんら触れられていない点。 相違点1については、すでに検討したので相違点4について検討する。 複数のトラバース装置を配置するために、隣り合う巻成部のロータの回転平面が交差するようにトラバース装置を近接配置することは、引用例3に見られるように、従来から広く行われていることである。従来から近接配置されているトラバース装置はロータの回転平面が水平なもの(すなわち、βが零であるもの)であるのに対し、第5発明のものはロータの回転平面が傾斜しているものであるが、傾斜が設けられているか否かによって隣り合う巻成部ロータの回転面が交差するような近接配置が困難となるものでもないので、第5発明のものにおいて、少なくとも3つの巻成部を近接配置し、隣り合う巻成部のロータの回転平面が交差するように配置した点には格別のものがないというべきである。 そもそも、ロータの回転平面が交差するように二つ以上の巻成部を近接配置する場合、一つのロータの回転平面に着目してみれば、一つのロータの回転平面を、隣接する巻成部のロータの回転平面と同一平面上にするか、あるいは、異なった平面上にするかの二つに一つの選択しかなく、一つの巻成部の上下二つのロータの回転平面のいずれの回転面も、隣接する巻成部のロータの回転平面とは異なった平面に配置することは、必要に応じて適宜選択できる程度の事項であると認められる。してみると、第5発明において、一方の巻成部の下位回転平面が、前記他方の巻成部の上位回転平面よりも上方に位置するように配置した点に格別のものがあるとは認められない。 そして、隣接する巻成部のロータの回転平面が互いに同一平面上にないのであるから、回転する羽根を互いに独立して回転できるようにした点にも格別のものはない。 よって、第5発明は、引用発明および周知の技術事項から当業者が容易に発明できたものである。 (被請求人が主張する阻害要因について) 被請求人は、「甲第2号証には、トラバース運動の両反転点におけるトラクト長さを正確に等しくするために、単一のトラバース装置の羽根の回転平面を所定角度傾斜させるという技術思想が記載されている。つまり、甲第2号証に記載された技術思想は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された技術思想とは目的も、技術手段も全く異なるものである。それゆえ、甲第2号証に記載された技術思想を、甲第1号証及び甲第3号証に記載された隣接するトラバース装置に適用する際には、甲第1号証及び甲第3号証に記載された隣接するトラバース装置における羽根及び羽根の回転面相互の特定の位置関係が維持されることが当然の前提となっている。なぜなら、前記特定の位置関係の解除を前提に、甲第1号証及び甲第3号証に記載された隣接する各トラバース装置に、甲第2号証に記載された1つのトラバース装置の羽根を傾斜させるという技術思想を適用することは、甲第1号証及び甲第3号証に記載された隣接するトラバース装置に固有の前記技術思想を理由もなく放棄し、しかも羽根相互の新たな干渉の危険性を惹起させることを意味するのであるから、当業者であれば当然に回避すべきものであって、このような適用には明白な阻害要因が存在しているといえる。」(答弁書9頁11〜25行参照)と主張し、その適用には明白な阻害要因があると主張している。 しかしながら、甲第2号証(引用例1)に開示された発明は、すでに述べたように、ただ一つのものとして使用すべき格別の理由があるものでもなく、傾斜部があることにより、ロータの回転面が交差するような巻成部の配置が困難となる事情も認められないので、その適用に阻害要因があるものとは認められない。 7.むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1,4及び5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ワインダ 【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、請求の範囲の請求項1、請求項4及び請求項5に上位概念として記載した通り、パッケージ管用の緊締装置とトラバース装置と、前記の緊締装置とトラバース装置との間に配置されている接触ローラとから夫々成る少なくとも3つの巻成部を備え、しかも前記トラバース装置が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータを備え、前記の両ロータが、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根を夫々有し、かつ、前記の一方のロータの羽根が下位回転平面内で回転し、また他方のロータの羽根が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面内で回転し、トラバース運動の両反転点間に間隔Hが存在し、トラバース運動三角形の平面が反転点において、前記回転平面に対して角度αを形成しており、かつ隣り合った巻成部の前記ロータの回転円が互いに交差している形式のワインダに関するものである。 背景技術 羽根形トラバース装置は、高いトラバース運動周波数の場合に使用するのに特に適している。慣用のトラバース装置とは異なり、糸の交互綾振り運動は、往復動する単一の糸ガイドエレメントによって行われるのではなくて、互いに逆向きに回転する羽根が交互に糸を掴んでガイドすることによって行われる。羽根はトラバース運動領域の終端点で加速も減速もされないので、糸の反転時における糸ガイド機構の慣性質量の影響は完全に排除される。 両ロータの逆向きに運動する羽根の尖端は特定の出会い点において相会する。該出会い点は、回転円上に均等な角度間隔で配分されている。この角度間隔は1つのロータの羽根の枚数に関連している。ロータが例えば2枚の羽根を有している場合には、角度間隔は90°である。ロータが3枚の羽根を有している場合には、該角度間隔は60°である。出会い点によって形成される多角形の角隅点位置は、両ロータの相対的な位相位置に関連しており、かつ、互いに隣接した2つの出会い点が、接触ローラの表面の近傍で、該接触ローラの軸線に対して平行な線上に位置するように選ばれている。前記の両出会い点はトラバース運動の反転点である。両反転点間の区分内で夫々運動する羽根が糸をガイドする。前記区分の端部において前記羽根は、該羽根から糸を引取る他方のロータの羽根に出会う。 例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第3307915号明細書に基づいて公知になっているワインダでは、トラバース装置は傾斜して配置されているので、両回転平面とトラバース運動三角形の平面との間には、接触ローラの軸線方向で見て、鋭角αが形成されている。トラバース運動三角形は、3つの角隅点によって規定されている。2つの底辺角隅点は、糸が接触ローラに乗り上げる線の終端点である。第3の角隅点は、実地では大抵はワインダの上方に装着された定置の糸ガイドエレメントである。このように規定されたトラバース運動三角形の平面は概して、トラバース運動中に糸が通過する面と正確には合致していない。この面は羽根形トラバース装置の場合には大抵は湾曲されている。トラバース装置の傾斜によって、その都度糸をガイドする羽根と、トラバース装置の下に配置された接触ローラとの間の自由な糸長さを可成り小さくすることが可能である。これによって、パッケージ周面における糸の正確なセッティングが助成される。 トラバース運動三角形の平面と両回転平面との間の交線は、公知のワインダの場合には接触ローラ面とトラバース運動三角形との接線に対して平行に位置し、要するに接触ローラの軸線に対しても平行に位置している。前記接線からの両交線の距離が異なることに応じて、上位回転平面の羽根が糸を供給する反転点におけるトラクト長さは、下位回転平面の羽根が糸を供給する反転点におけるトラクト長さよりも大である。ここで云う「トラクト長さ」とは、糸を反転点へガイドする羽根と、糸が接触ローラ周面に乗り上げる点との間の自由な糸長さである。両反転点におけるトラクト長さ間の差は、操業中にパッケージの両端部におけるパッケージ構造の品質を異ならせることになる。 公知のワインダでは、1つの巻成部の両ロータは互いに偏心的に支承されている。この手段は、トラバース運動ストローク端部での申し分のない糸引渡しを保証するためのものであり、かつ羽根形トラバース装置では汎用されている。隣り合った巻成部のロータ羽根は同一の両回転平面内に配置されている。隣り合った巻成部のロータは互いに逆向きに駆動され、かつ一方の回転平面ではより小さな軸線間隔を有し、他方の回転平面では、偏心距離の2倍分だけ大きくされた軸線間隔を有している。3つ又はそれ以上の巻成部が互いに並列配置されている場合には、羽根が同一の回転平面内に位置しているところの、隣り合った巻成部のロータは、巻成部から巻成部へ、交互に小さい軸線間隔と、偏心距離の2倍分だけ大きくされた軸線間隔とを有している。 ただ2つの回転平面に全ての羽根を配置することは有利と見做される。それというのは、羽根間の距離も、接触ローラ周面における糸の乗り上げ線との間の距離つまりトラクト長さも、可能な限り小さくすることが可能だからである。羽根が同一の回転平面内に配置されているところの、隣り合った巻成部のロータを逆向きに駆動することによって、隣り合ったロータの回転円は、いわば互いに噛み合う歯車のように、互いにぶつかり合うことなく、或いは互いに妨害し合うことなく、最大限にオーバーラップすることができる。ロータの軸線間隔の交替によって奏せられる利点は、伝動装置の構造が単純になり、特にストロークからストロークへのトラバース運動の同期化が得られることである。ロータの軸線間隔の交替は勿論、ロータが互いに偏心支承されているところの、隣り合った巻成部の羽根の逆向きの回転から必然的に生じる。 前述の背景技術から確認できることは、要するに2つの利点(短いトラクト長さと隣り合った巻成部の短い間隔)が、トラバース運動ストロークの両端部におけるトラクト長さが異なるという欠点と、操業中に異なったパッケージ構造を惹起することになる隣り合った巻成部の幾何学的形状が異なるという欠点を甘受してしか得られないことである。 明らかにただ1つの巻成部しか有していない、羽根形トラバース装置を装備したワインダが、ドイツ連邦共和国特許出願公開第1710068号明細書に基づいて公知になっている。この場合両ロータの回転軸線は接触ローラの回転軸線に対して、90°から僅かに偏位した角度を形成しており、この角度値は、両回転平面間に存在する間隔dとストローク距離Hとに関連している。従って両羽根の回転平面は、ストロークの一方の端部におけるトラクト長さがストロークの他方の端部におけるトラクト長さに全く等しくなるように、トラバース運動三角形の平面に鋭角に交わっている。 発明の開示 本発明の課題は、請求項1、請求項4及び請求項5に上位概念として記載したワインダを改良して、両反転点におけるトラクト長さ間の差を、両回転平面がトラバース運動三角形の平面と交わる2本の交線間の間隔よりも小さくし、かつ複数の巻成部が互いに並列配置されている場合には、幾何学的的に合致させるようにすることである。 前記課題を解決する本発明の構成手段は、請求項1、請求項4及び請求項5に特徴部分として記載した通りである。すなわち: 請求項1に記載した本発明の第1の構成手段は、巻成部における両回転平面とトラバース運動三角形の平面との交線が、下位のロータの羽根が両反転点間を運動する方向で、同一方向及び同一角度βで上り勾配を成し、前記角度が次の関係式: を満たし、回転平面の交線が隣接した他方の巻成部の方へ向かって上り勾配を成すところの、一方の巻成部の下位回転平面が、前記他方の巻成部の回転平面間に位置し、かつ前記他方の巻成部の上位回転平面が、一方の巻成部の回転平面間に位置しており、かつ回転平面が、全ての羽根を互いに独立して回転させ得るような間隔をおいて配置されている点にある。 請求項4に記載した本発明の第2の構成手段は、巻成部における両回転平面とトラバース運動三角形の平面との交線が、下位のロータの羽根が両反転点間を運動する方向で、同一方向及び同一角度βで上り勾配を成し、前記角度が次の関係式: を満たし、回転平面の交線が隣接した他方の巻成部の方へ向かって上り勾配を成すところの、一方の巻成部の下位回転平面の羽根が、前記他方の巻成部の上位回転平面の羽根と噛み合っている点にある。 請求項5に記載した本発明の第3の構成手段は、全ての巻成部における両回転平面とトラバース運動三角形の平面との交線が、下位のロータの羽根が両反転点間を運動する方向で、同一方向及び同一角度βで上り勾配を成し、前記角度が次の関係式: を満たし、回転平面の交線が隣接した他方の巻成部の方へ向かって上り勾配を成すところの、一方の巻成部の下位回転平面が、前記他方の巻成部の上位回転平面よりも上方に位置し、かつ回転平面が、該回転平面内で回転する羽根を互いに独立して回転させ得るような間隔をおいて配置されている点にある。 なお下位ロータの羽根が両反転点間を運動する方向は、構造上の構成手段によって、例えば以下に説明する実施例では、羽根における糸ガイド縁の配置と、上位ロータの軸線が下位ロータの軸線に対してずらされる方向とによって、規定されている。ロータと、該ロータの羽根が糸を放出する反転点との間の配設関係は、別の構造上の構成手段によって、例えば糸ガイド用の直定規部材の形状又は反転点において糸引き渡しに影響を及ぼす特別の機構によって付加的に規定することができる。 本発明の全部で3つの構成は、互いに並列配置された巻成部の斜向した回転平面を互いに鱗状にオーバーラップさせるという共通の基本思想に基づいている。それ自体としては公知の回転平面を斜向させるという構成手段は、本発明によれば、複数の巻成部を1列に並列されて狭い空間に収容するために利用されるので、個々のトラバース運動領域間には狭い間隙が介在するにすぎなくなる。従来技術によって公知になっている前記のように斜向させることによって奏せられる効果、つまりトラバース運動領域の両端側でのトラクト長さを少なくとも実質的に均等化するという効果が付加的に実現される。交線の上り勾配は、選択した寸法条件及び本発明の選択された実施形態に応じて勾配角度が僅かに異なってはいるが、この勾配角度で、トラバース運動領域の両端部におけるトラクト長さは正確に等しくなる。下位回転平面の羽根が糸を引き渡す反転点の高さ、つまりトラバース運動三角形の底辺線から測定された前記反転点の高さは、何れにしても、上位回転平面の羽根が糸を引き渡す他方の反転点の高さに近似することになる。 請求項1に記載した有利な構成によって得られる利点は、隣り合った巻成部の全てのロータの羽根が別個の回転平面内で互いに無関係に回転することである。従って、公知のワインダでは例えば1つの巻成部の1つの駆動ベルトが切れた場合に発生し、このベルト切れに伴って、コスト高の機械損傷及び操業トラブルを惹起することになるロータ羽根の衝突は排除されている。回転平面間の間隔の増大によって生じるところの、両反転点におけるトラクト長さの差は、前記傾斜によって無害な寸法に戻される。 請求項1による回転平面間の増大した間隔は、請求項2に記載した通り各巻成部において直定規部材を回転平面間に配置するという有利な構成手段を提供する。これによって、糸をガイドする羽根と前記直定規部材との間の間隔は、一方のロータの羽根が糸をガイドするか、それとも他方のロータの羽根が糸をガイドするかの如何に関わらず、常に等しい大きさである。これによってパッケージ形成が助成される。また請求項2に記載した構成手段は、前記直定規部材を固定かつ調整するための機構に接近し易くなるという利点も有している。個々のケースの事情に応じて、請求項3に記載したように、各巻成部に夫々独自の駆動装置を装備するのが有利である。これによって、個々の巻成部の羽根を互いに無関係に回転させることが可能になる。 請求項4に記載した構成では、全ての反転点におけるトラクト長さがほぼ等しい大きさになる。 請求項5に記載した構成手段によって、トラクト長さがほぼ等しくなるという利点が、隣り合った巻成部の羽根が別個の回転平面内で互いに無関係に回転するという利点と合体される。 図面の簡単な説明 図1aは或る特定の時点で示した本発明によるワインダの側面図である。 図1bは別の時点で示した図1a相当の側面図である。 図2はロータの斜視図である。 図3はトラバース運動に対して平行に位置している1平面に沿って示した各巻成部の断面図である。 図4は2つの巻成部を備えたワインダについての図3相当の断面図である。 図5は図4に示した実施例におけるロータ配置の平面図である。 図6は図4に示した実施例のために適した駆動装置の斜視図である。 図7は別の実施例についての図4相当の断面図である。 図8は更に別の実施例についての図4相当の断面図である。 発明を実施するための最良の形態 次に図面に基づいて本発明の実施例を詳説する。 丁度巻成状態にあるパッケージ3のパッケージ管2が緊締されている巻成スピンドル1は、図1a及び図1bでは図示を省いた機械架台と公知の形式で結合されている。巻成スピンドル1より上位では、糸ガイド5を介して上方から垂直に供給される糸Fのためのトラバース装置4が、やはり機械架台に装着されている。巻成スピンドル1とトラバース装置4との間には接触ローラ6が配置されており、該接触ローラの軸線は、水平にかつ巻成スピンドル1の軸線に対して平行に方位づけられている。 トラバース装置4には、ケーシング9内に回転自在に軸支された2つのロータ7,8が所属している。回転軸線10,11は、例えばドイツ連邦共和国登録実用新案第9307746号明細書に基づいて公知のように、短い相互間隔をおいて平行に配置されている。図1a及び図1bではロータ7に所属した歯列付きディスク12だけを図示したにすぎない駆動装置によって、ロータ7,8は逆方向に等しい回転数で駆動される。ロータ7は、図2から判る通り、プロペラ状に配置された3枚の羽根13を有し、またロータ8は、前記と同様に配置された3枚の羽根14を有している。図2によれば各羽根13は、回転方向7aで見て前方に位置している側に、羽根尖端近傍に糸ガイド縁13aを有している。同等の事項は羽根14についても該当する。 前記ロータ7の羽根13は下位回転平面15内で回転し、前記ロータ8の羽根14は上位回転平面16内で回転する。この場合の「下位回転平面」とは、接触ローラ6に近接した回転平面を意味している。このことは、場合によっては糸走行方向及びワインダのロータ傾斜方位が図1a及び図1bとは異なって構成されている別のワインダについても当て嵌まる。両回転平面15と16との間の短い間隔は符号dで示されている。回転軸線10,11は斜向されているので、両回転軸線10,11は、図1a及び図1bの図平面内に形成されるトラバース運動三角形の平面と鋭角αを成している。前記上位回転平面16から上方に短い間隔をおいて、慣用のように直定規部材17が配置されており、該直定規部材に沿って糸Fはトラバース運動距離にわたって往復ガイドされる。 図3には1実施例のための(図1a及び図1bでは確認できなかった)細部が図示されている。機械架台に所属する基板18がケーシング9を支持している。該ケーシング内に偏心ブシュ19が配置されており、該偏心ブシュの円筒外周面に前記ロータ8が支承されている。該ロータ8は実質的に、リング状のベース体20と、該ベース体上に座着した歯環21と羽根14とから成っている。偏心ブシュ19は1つの孔を有し、該孔の軸線10は円筒形外周面の軸線11に対して平行にシフトされている。前記孔内にロータ7の軸22が支承されている。該軸22の一方の端部は、上位回転平面16を超えて下向きに突出し、かつ、プロペラ状に配置された羽根13を支持している。前記軸22の他方の端部には、歯列付きディスク12が装着されている。ロータ対7,8の傍には、軸24と第1の歯車25と第2の歯車26とから成るローラ23が軸支されている。軸24は、ケーシング9とねじ締結された軸受ブシュ27内に回転可能に位置している。前記軸24の端部と結合された第1の歯車25及び第2の歯車26は、歯列付きディスク12もしくは歯環21に配設されている。O形歯付きベルトが、1種の平行掛けベルト伝動装置の形式で歯環21及び第2の歯車26に巻掛けられている。図3では図示を省いた両面に歯列を有する駆動ベルトが、ほぼS字状に歯列付きディスク12と第1の歯車25とに交互に巻掛けられているので、ロータ7,8は等回転数でかつ一定の相対位相位置で逆向きに駆動される。 図3に示した構成では運転中、下位のロータ7は、羽根13の尖端が左側で図平面から出現し、矢印28で示したように左から右へ向かって運動しかつ右側で再び図平面内へ没するように回転する。羽根14を備えたロータ8は、前記とは逆方向に回転する。 両ロータ7,8間の相対位相位置は、羽根13の尖端が羽根14の尖端に出会うことになる2つの出会い点29,30が、糸ガイド5を含みかつ接触ローラ6に接する垂直な平面内に少なくとも位置するように選ばれている。該垂直な平面はトラバース運動三角形の平面である。両出会い点29,30は反転点であり、両出会い点の間隔はトラバース運動ストローク距離Hである。図示の実施例では両ロータ7,8が夫々3つの羽根を有しているので、トラバース運動ストローク距離Hは、羽根尖端の運動軌跡が描く円の直径の1/2にほぼ等しい。 両ロータの軸線が、接触ローラの軸線に対して平行に又は斜向して位置している方向に相対的にずらされているトラバース装置では、夫々糸をガイドする羽根は、羽根の回転円の中心から見てトラバース運動範囲の対称平面Mの他方の側に位置している反転点へ向かって運動する。その結果、図3について云えば、下位のロータ7の羽根13は糸を反転点29へ導き、ロータ8の羽根14は糸を反転点30へ導くことになる。 軸線10が傾斜されているので、該軸線10は仮想垂直線31に対して小さな角度βを形成している。軸線11は軸線10に対して平行であり、従って同じ度合で傾斜されている。これに相応して回転平面15,16も傾斜されているので、該回転平面がトラバース運動三角形の平面に交わる交線は水平線に対して角度βを形成する。従って前記回転平面は、反転点29の方に向かって、つまり下位のロータ7の羽根13が矢印28に従って反転点30から反転点29へ向かって運動する方向に、上り勾配を成している。両交線は相互に、間隔d:sinαを有している。最適の角度β0の場合、回転平面15の交線は反転点29で水平線32と交わり、回転平面16の交線は交点30で同一の水平線32と交わる。単純な幾何学的考量から、角度β0は次の条件式を満たさねばならないことが判る。すなわち: この条件式は、考慮される角度β0が小さい場合、極めて近似的に次のように簡略にされる。 回転平面15,16が角度β0で上り勾配を成す場合、トラクト長さS(29)とS(30)は両反転点で正確に等しい。以下に説明する本発明の変化態様では、複数の巻成部の並列化によって、単純な幾何学的理由に基づいて最適の角度β0から偏位した角度βが生じる。該角度βが角度β0よりも小さい場合には、回転平面15と16との間隔に基づいて両反転点29,30において生じるトラクト長さS(29)とS(30)との差ΔSは部分的にしか補償されない。角度β0と2β0と間に角度βがある場合には、該角度は過補償される。とは云え、何れの場合にも差ΔSは、回転平面15,16とトラバース運動三角形の平面との交線が水平に位置している構成の場合に対比して減少される。 図4に示した互いに並列に配置された等構造の両巻成部A,Bは、図3に示した巻成部に大体において一致しているので、この一致点に関する重複的な説明は省略する。等構造の両巻成部A,Bの回転軸線間の間隔aは羽根尖端の回転円の直径よりも著しく小さく、トラバース運動ストローク距離Hよりも約20〜30%大である。従って両巻成部の回転円は広い範囲で交わる。 図3に対比して羽根13A,14Aの回転する回転平面15Aと16Aとの間の間隔並びに回転平面15Bと16Bとの間隔は拡大されている。回転平面15Aは回転平面15Bと16Bとの間に、また回転平面16Bは回転平面15Aと16Aとの間に位置している。両巻成部の羽根は、従って相互に妨害し合うことなしに互いに無関係に交差範囲内を運動することができる。 両巻成部の並置と回転平面の鱗状オーバーラップとに基づいて生じる幾何学的条件の故に、角度βは最適の角度β0よりも小さい。しかしこの角度βは、両反転点におけるトラクト長さ間の差ΔSを著しく小さくするためには充分である。 図3とは異なって、図4及び図5に示した実施例では直定規部材17A,17B(図4では分かり易くするために図示せず)回転平面15A,16A;15B,16B間に配置されている。前記直定規部材は両端に接合板33を有し、該接合板は、回転円の外域でねじ34によって機械架台に固着されている。 図5では、軸線10A,11Aのずらし配置を確認することが可能である。軸線11Aは軸線10Aに対して、トラバース運動三角形の平面から見て、斜め後方にずらされている。トラバース運動範囲の対称平面Mに関して軸線10Aは反転点30Aと同じ側に、また軸線11Aは反転点29Aと同じ側に位置している。同等の事項は、巻成部Bについても当て嵌まる。 図6によれば、ロータが夫々2枚の羽根を有する2つの並列配置された巻成部のための共通の駆動装置は、多軸式伝動装置として構成されている。 歯列付きの駆動ディスク36と噛み合う両面に歯列を有する駆動ベルト35は、歯列付きディスク12A、歯車25A、歯列付きディスク12B及び歯車25Bに交互に巻掛けられる。該歯車25Bに並んで配置された歯列付きの変向ガイドディスク37を経て、該駆動ベルト35は前記駆動ディスク36に戻される。この構成の場合には、下位の羽根13Aは、隣接した巻成部の下位の羽根13Bと同じ方向に回転し、また上位の羽根14Aは上位の羽根14Bと同じ方向に回転する。 隣り合った巻成部の羽根は互いに無関係に運動可能であるので、隣り合った巻成部の位相位置を互いに調和させる必要はない。同じ理由に基づいて、個々の巻成部に、独立した単独駆動装置を装備すること、或いは、それ自体公知のように隣り合った巻成部の対応するロータを逆向きに回転させるように一緒に駆動することも可能である。 図7に図示した、等構造の2つの巻成部C,Dを互いに並列に配置した実施例が、図4の実施例と異なっている点は特に、回転平面15C,16C;15D,16Dが互いに、ほぼ図3の場合のように、より近接して配置されていることである。下位回転平面15Cは、隣接した巻成部の上位回転平面16Dと合致している。これによって、回転円の交差範囲において羽根13Cは、さながら2つの歯車の歯のように羽根14Dと噛み合うことが可能になる。その場合の前提条件は、羽根13Cが羽根14Dに対して逆向きに回転することである。図6に示した駆動装置を使用する場合、位相位置は、1つの羽根13Cが2つの羽根14Dの間隙内へ係合し、またその逆に1つの羽根14Dが2つの羽根13Cの間隙内へ係合するように調和されている。角度βは最適の角度β0に近いので、両反転点におけるトラクト長さはほぼ等しい大きさである。 また図8に示した実施例の場合も、巻成部Eに並んで、等構造の別の巻成部Fが配置されている。この場合は図7の場合とは異なって、巻成部Eの下位回転平面15Eは、他方の巻成部Fの上位回転平面16Fよりも上方に、しかも羽根13Eと14Fとが両巻成部E,Fの交差範囲で互いに衝突することなく互いに独立して回転できるような間隔をおいて位置している。夫々2つの回転平面16Eと15E;16Fと15Fとの間の間隔はすべて等しい大きさであるのが有利である。単純な幾何学的関係に基づいて回転平面15E,16E,15F,16Fと水平線32との成す角度βは本実施例では、前記の実施例の場合よりも大きくなる。該角度βは最適の角度β0よりも幾分大きくなるので、回転平面15Eと16E及び15Fと16Fとの間に存在する高さ差はトラクト長さに関して過補償される。下位の羽根13E,13Fが糸を放出する図面右手の反転点におけるトラクト長さは、上位の羽根14E,14Fが糸を供給する他方の反転点におけるよりも僅かに大である。その差ΔSはd:sinαよりも著しく小である。 図8から判る通り、水平に位置している基板18に対してやはり角度βを形成している平面内で駆動ベルト35は循環する。これは、歯列付きディスク12E,12F及び歯車25E,25Fを、歯列付きベルト35よりも(軸線の方向で測定して)大きな幅に設計することによって、簡単に可能になる。従って前記歯列付きベルトは下縁近くで歯列付きディスク12Eと歯車25Eと歯車25Fとに、下縁からの距離を増大させつつ巻掛けられる。 図4乃至図8については、簡略化のために、夫々2つの巻成部しか有していない実施例が選ばれている。説明の必要はないが、図4乃至図8について3つ又はそれ以上の巻成部を、困難なく同様に互いに並列に配置することが可能である。 (57)【特許請求の範囲】 1.パッケージ管(2)用の緊締装置(1)とトラバース装置(4)と、前記の緊締装置(1)とトラバース装置(4)との間に配置されている接触ローラ(6)とから夫々成る少なくとも3つの巻成部(A,B)を備え、しかも 前記トラバース装置(4)が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータ(7,8)を備え、 前記の両ロータ(7,8)が、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根(13,14;13A,14A;13B,14B)を夫々有し、かつ、前記の一方のロータ(7)の羽根(13,13A,13B)が下位回転平面(15,15A,15B)内で回転し、また他方のロータ(8)の羽根(14,14A,14B)が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面(16,16A,16B)内で回転し、 トラバース運動の両反転点(29,30)間に間隔Hが存在し、 トラバース運動三角形の平面が反転点(29,30)において、前記回転平面(15,16;15A,16A;15A,16B)に対して角度αを形成しており、かつ 隣り合った巻成部(A,B)の前記ロータ(7,8)の回転円が互いに交差している形式の ワインダにおいて、 巻成部(A,B)における両回転平面(15A,16A,15B,16B)とトラバース運動三角形の平面との交線が、下位のロータ(7)の羽根(13A,13B)が両反転点(30,29)間を運動する方向(28)で、同一方向及び同一角度βで上り勾配を成し、前記角度が次の関係式: を満たし、 回転平面(15A,16A)の交線が隣接した他方の巻成部(B)の方へ向かって上り勾配を成すところの、一方の巻成部(A)の下位回転平面(15A)が、前記他方の巻成部(B)の回転平面(15B,16B)間に位置し、かつ前記他方の巻成部(B)の上位回転平面(16B)が、一方の巻成部(A)の回転平面(15A,16A)間に位置しており、かつ回転平面(16A,16B,15A,15Bの順序で)が、全ての羽根(13A,14A,13B,14B)を互いに独立して回転させ得るような間隔をおいて配置されていることを特徴とする、ワインダ。 2.各巻成部(A,B)で回転平面(15A,16A;15B,16B)間に直定規部材(17A,17B)が配置されており、かつ両側で、回転円の範囲外で機械架台に固定された接合板(33)を有している、請求項1記載のワインダ。 3.個々の巻成部(A,B)が、別個の駆動装置を装備している、請求項1又は2記載のワインダ。 4.パッケージ管(2)用の緊締装置(1)とトラバース装置(4)と、前記の緊締装置(1)とトラバース装置(4)との間に配置されている接触ローラ(6)とから夫々成る少なくとも3つの巻成部(C,D)を備え、しかも 前記トラバース装置(4)が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータ(7,8)を備え、 前記の両ロータ(7,8)が、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根(13,14;13C,14C;13D,14D)を夫々有し、かつ、前記の一方のロータ(7)の羽根(13,13C,13D)が下位回転平面(15,15C,15D)内で回転し、また他方のロータ(8)の羽根(14,14C,14D)が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面(16,16C,16D)内で回転し、 トラバース運動の両反転点(29,30)間に間隔Hが存在し、 トラバース運動三角形の平面が反転点(29,30)において、前記回転平面(15,16;15C,16C;15D,16D)に対して角度αを形成しており、かつ 隣り合った巻成部(C,D)の前記ロータ(7,8)の回転円が互いに交差している形式の ワインダにおいて、 巻成部(C,D)における両回転平面(15C,16C,15D,16D)とトラバース運動三角形の平面との交線が、下位のロータ(7)の羽根(13C,13D)が両反転点(30,29)間を運動する方向(28)で、同一方向及び同一角度βで上り勾配を成し、前記角度が次の関係式: を満たし、 回転平面(15C,16C)の交線が隣接した他方の巻成部(D)の方へ向かって上り勾配を成すところの、一方の巻成部(C)の下位回転平面(15C)の羽根(13C)が、前記他方の巻成部(D)の上位回転平面(16D)の羽根(14D)と噛み合っていることを特徴とする、ワインダ。 5.パッケージ管(2)用の緊締装置(1)とトラバース装置(4)と、前記の緊締装置(1)とトラバース装置(4)との間に配置されている接触ローラ(6)とから夫々成る少なくとも3つの巻成部(E,F)を備え、しかも 前記トラバース装置(4)が、伝動装置によって連結された2つの互いに逆向きに駆動可能なロータ(7,8)を備え、 前記の両ロータ(7,8)が、プロペラ状に配置された少なくとも2枚の羽根(13,14;13E,14E;13F,14F)を夫々有し、かつ、前記の一方のロータ(7)の羽根(13,13E,13F)が下位回転平面(15,15E,15F)内で回転し、また他方のロータ(8)の羽根(14,14E,14F)が、前記下位回転平面より上方に短い間隔dをおいて位置している上位回転平面(16,16E,16F)内で回転し、 トラバース運動の両反転点(29,30)間に間隔Hが存在し、 トラバース運動三角形の平面が反転点(29,30)において、前記回転平面(15,16;15E,16E;15F,16F)に対して角度αを形成しており、かつ 隣り合った巻成部(E,F)の前記ロータ(7,8)の回転円が互いに交差している形式の ワインダにおいて、 全ての巻成部(E,F)における両回転平面(15E,16E,15F,16F)とトラバース運動三角形の平面との交線が、下位のロータ(7)の羽根(13E,13F)が両反転点(30,29)間を運動する方向(28)で、同一方向及び同一角度βで上り勾配を成し、前記角度が次の関係式: を満たし、 回転平面(15E,16E)の交線が隣接した他方の巻成部(F)の方へ向かって上り勾配を成すところの、一方の巻成部(E)の下位回転平面(15E)が、前記他方の巻成部(F)の上位回転平面(16F)よりも上方に位置し、かつ 回転平面(15E,16F)が、該回転平面内で回転する羽根(13E,14F)を互いに独立して回転させ得るような間隔をおいて配置されていることを特徴とする、ワインダ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2003-07-29 |
結審通知日 | 2003-08-01 |
審決日 | 2003-08-15 |
出願番号 | 特願平8-504664 |
審決分類 |
P
1
122・
121-
ZA
(B65H)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渡邉 洋 |
特許庁審判長 |
吉国 信雄 |
特許庁審判官 |
市野 要助 山崎 豊 |
登録日 | 1998-04-17 |
登録番号 | 特許第2771333号(P2771333) |
発明の名称 | ワインダ |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 冨永 博之 |
代理人 | 野上 邦五郎 |
代理人 | 矢野 敏雄 |