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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 C09J 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 C09J |
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管理番号 | 1123381 |
審判番号 | 不服2004-9089 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-04-30 |
確定日 | 2005-10-04 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 52122号「紫外線重合型粘着剤組成物及び両面粘着テープ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月24日出願公開、特開平 8-245927、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年3月13日の出願であって、平成15年1月16日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年3月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成16年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月30日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月28日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年5月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [ 補正却下の決定の結論 ] 平成16年5月28日付けの手続補正を却下する。 [ 理 由 ] (1)補正の内容 平成16年5月28日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許法第17条の2第1項第5号の規定によるものであって、特許請求の範囲の請求項1についての以下の補正を含むものである。 <補正前の特許請求の範囲の請求項1> 「【請求項1】 炭素数が4から14個のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルと、上記アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なエチレン性不飽和結合基を含有する化合物と、多官能オリゴアクリレートと、メタクリロニトリル-アクリロニトリル共重合樹脂を壁材とし弾性を有する中空微粒子と、光重合開始剤とに、親油性のスメクタイト粘土鉱物を添加して増粘した紫外線重合型粘着剤組成物に低波長紫外線を照射した後、高波長紫外線を照射して重合したことを特徴とする両面粘着テープ。」 <補正後の特許請求の範囲の請求項1> 「【請求項1】 剥離基材上に紫外線重合型粘着組成物層が形成されてなる両面粘着テープにおいて、上記紫外線重合型粘着組成物層は、炭素数が4から14個のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルと、上記アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なエチレン性不飽和結合基を含有する化合物と、多官能オリゴアクリレートと、メタクリロニトロ-アクリロニトリル共重合樹脂を壁材として弾性を有する中空微粒子と、光重合開始剤とを含有するとともに、親油性のスメクタイト粘土鉱物を添加して増粘され、上記粘土鉱物と上記中空微粒子が重量部で2:1〜8:1の配合比率で配合されている紫外線重合型粘着剤組成物に紫外線を照射して重合された層からなることを特徴とする両面粘着テープ。」 (2)補正の適否 特許請求の範囲についてする補正は、特許法第17条の2第3項に掲げる事項を目的とするものに限られるところ、本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1に「上記粘土鉱物と上記中空微粒子が重量部で2:1〜8:1の配合比率で配合されている」との限定が追加されたが、補正前の特許請求の範囲の請求項1には、粘土鉱物と中空微粒子という特定の二成分の配合比率について何ら記載されていないことから、上記限定は、補正前の請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項を限定するものではなく、特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるとは認められない。 さらに、本件手続補正は、特許請求の範囲の請求項1において、「低波長紫外線を照射した後、高波長紫外線を照射して重合」を「紫外線を照射して重合」とする補正を含むが、このように直列的に記載された発明の構成に欠くことができない事項の一部を削除する補正は、特許請求の範囲を拡張するものであるから、特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるとは認められない。 また、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項第1号に規定する請求項の削除、同条同項第3号に規定する誤記の訂正、同条同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするもののいずれにも該当しない。 (3)むすび 以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものを含んでいるから、その余のことを検討するまでもなく、特許法第159条第1項により読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年5月28日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成15年3月24日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明1〜3」という。)と認める。 「【請求項1】 炭素数が4から14個のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルと、上記アルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なエチレン性不飽和結合基を含有する化合物と、多官能オリゴアクリレートと、メタクリロニトリル-アクリロニトリル共重合樹脂を壁材とし弾性を有する中空微粒子と、光重合開始剤とに、親油性のスメクタイト粘土鉱物を添加して増粘した紫外線重合型粘着剤組成物に低波長紫外線を照射した後、高波長紫外線を照射して重合したことを特徴とする両面粘着テープ。 【請求項2】 上記親油性のスメクタイト粘土鉱物は、上記(メタ)アクリル酸エステル及び該(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なエチレン性不飽和結合基を含有する化合物100重量部に対して、5〜20重量部配合されることを特徴とする請求項1記載の両面粘着テープ。 【請求項3】 上記親油性のスメクタイト粘土鉱物は、親水性基を有機アミン化合物で置換した親油性のモンモリロナイト有機塩基複合体であることを特徴とする請求項1記載の両面粘着テープ。」 (2)原査定の拒絶の理由 これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明1〜3に係る発明は、先願である特願平5-236371号(特開平7-90229号公報参照)の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であるので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない、というものである。 (3)先願明細書の記載事項 (ア)特許請求の範囲の請求項1〜2 「【請求項1】 炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルから選択される1種以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)50〜98重量%、極性基を有し、かつ該(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)と共重合可能なモノマーから選択される1種以上のモノマー(b)50〜2重量%、および該(メタ)アクリル酸エステルモノマー(a)および該モノマー(b)と共重合可能であり、かつ分子内に不飽和二重結合を2個以上有するモノマー(c)0.01〜1重量%、を含有するモノマー混合物100重量部に対し、光重合開始剤(d)0.01〜5重量部、および疎水性層状粘土鉱物(e)1〜15重量部を含有する、光重合性組成物。 【請求項2】 請求項1に記載の光重合性組成物をシート状に塗工し、次いでそのシート状の光重合性組成物に光を照射することによって得られる接着性テープ。」 (イ)【0021】段落 「好適な実施態様としては、上記層状粘土鉱物(e)を含む光重合性組成物に、比重0.02〜2.70の微粒子を1〜50体積%含有させて用いられる。この実施態様は、層状粘土鉱物(e)を含有させることによって発現する増粘性および構造粘性を利用し、上記層状粘土鉱物以外の光重合性組成物の構成成分の混合液と比重の違う微粒子を均一に分散させたものである。この実施態様に用いられる微粒子としては、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレンなどを主成分とする有機中空微粒子(比重は通常0.2〜1.2);シラスバルーン、フライアッシュバルーン、ガラスバルーンなどの無機中空微粒子(比重は通常0.02〜0.6);炭酸カルシウム、ガラス微粒子、シリカ微粒子などの無機微粒子(比重は通常2.1〜2.6);ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレンなどの有機微粒子(比重は通常0.9〜1.2)などの微粒子が挙げられる。これらの微粒子の平均粒子径は1〜150μmであることが好ましい。微粒子の平均粒子径が150μmを超える場合には、得られる接着性テープの表面の平滑性が阻害され、粘着力が低下する恐れがあるため好ましくない。」 (ウ)【0029】段落 「光照射には、光波長400nm以下に発光分布を有するランプ類が用いられる。このようなランプ類としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが挙げられる。この中でも、ケミカルランプは、開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光し、開始剤以外の組成物はこの波長領域の光をあまり吸収しないため、光重合性組成物の内部まで光が透過し、高厚膜のシートを製造するのに好ましい。上記ランプの光照射強度は、得られるポリマーの重合度を左右する因子であり、目的製品の性能ごとに適宜制御される。例えば、通常用いられるアセトフェノン基を有する開裂型の開始剤を配合した場合には、その開始剤の光分解に有効な波長領域(開始剤によって異なるが、通常、365nm〜420nmの光が用いられる)の光が照射され、その光照射強度は、0.1〜100mW/cm2の範囲であることが好ましい。」 (4)対比 本願発明1について検討する。 上記(イ)に摘記したように、先願明細書には、好適な実施態様として、上記層状粘度鉱物(e)を含む光重合性組成物に、有機中空微粒子(弾性を有する中空微粒子に相当)を併用することが記載されており、さらにその有機中空微粒子の具体的な素材の一つとして、ポリアクリロニトリルが例示されていることから、先願明細書には、「ポリアクリロニトリル樹脂を壁材とし弾性を有する中空微粒子」をさらに含有する、請求項1に記載された光重合性組成物が記載されている。 また、上記(ウ)に摘記したように、先願明細書には、紫外線を照射して重合を行うことについても記載されている。 しかしながら、先願明細書には、本願発明1の構成要件である、 (i)中空微粒子として、メタクリロニトリル-アクリロニトリル共重合樹脂を壁材とし弾性を有するものを用いる点、及び、 (ii)重合をするに際して、粘着剤組成物に低波長紫外線を照射した後、高波長紫外線を照射する点、 については記載されていない。 (5)判断 上記(i)、(ii)の点について検討する。 (i)について 先願明細書には「ポリアクリロニトリル」との記載があるが、「メタクリロニトリル-アクリロニトリル共重合樹脂」は記載されておらず、中空微粒子とする際に、「ポリアクリロニトリル」の記載から、「メタクリロニトリル-アクリロニトリル共重合樹脂」を直ちに想起することができるとはいえないから、メタクリロニトリル-アクリロニトリル共重合樹脂については、先願明細書に実質的に記載されているとは認められない。 (ii)について 先願明細書には、「開始剤の光分解に有効な波長領域(開始剤によって異なるが、通常、365nm〜420nmの光が用いられる)の光が照射され」との記載があり、光重合における好ましい紫外線波長は、開始剤の種類に依存することが示唆されているものの、低波長紫外線を照射した後、高波長紫外線を照射することまでは記載されていない。 また、好ましい紫外線波長を選択すること自体は慣用の技術であるとしても、波長の異なった紫外線を二段階で照射することまでをも、ごく一般的な手法であると認めることはできないから、低波長紫外線を照射した後、さらに高波長紫外線を照射することが、先願明細書に実質的に記載されているとは認められない。 したがって、本願発明1は、(i)、(ii)の点で、先願明細書に記載された発明と明らかに相違しているのであるから、これと同一であるとは認められない。 また、本願発明2〜3は、請求項1を引用しつつ親油性のスメクタイト粘土鉱物の配合量や性状をさらに限定する発明であって、本願発明1の構成要件をその構成要件として有するものであるから、本願発明1で判断したのと同様の理由により、先願明細書に記載された発明と同一であるとは認められない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2005-09-20 |
出願番号 | 特願平7-52122 |
審決分類 |
P
1
8・
161-
WY
(C09J)
P 1 8・ 572- WY (C09J) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 橋本 栄和 |
特許庁審判長 |
西川 和子 |
特許庁審判官 |
原田 隆興 井上 彌一 |
発明の名称 | 紫外線重合型粘着剤組成物及び両面粘着テープ |
代理人 | 田村 榮一 |
代理人 | 小池 晃 |
代理人 | 伊賀 誠司 |