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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B60G
管理番号 1123871
審判番号 無効2003-35049  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-12-16 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-02-12 
確定日 2005-10-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第3196011号発明「トレーリングアーム式リアサスペンション」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3196011号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3196011号は、平成8年6月10日に特許出願され、平成13年6月8日にその特許権の設定登録がなされ、その後、スズキ株式会社より請求項1に係る発明の本件特許について無効審判が請求され、これに対して被請求人より平成15年5月8日に答弁書が提出され、平成15年8月5日に行った口頭審理において、請求人及び被請求人から、それぞれ、同日付けの口頭審理陳述要領書が提出されたものである。

【2】本件発明
本件特許第3196011号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものと認める。
「車幅方向に間隔を隔てて配置され、かつ車両高さ方向に揺動可能なように前端部が車両本体に回転可能に連結されている一対のトレーリングアームと、これら一対のトレーリングアームのそれぞれの後端部にゴムブッシュを介して取付けられた一組のブラケットとを有し、かつこれら一組のブラケットには、車幅方向に延びるアクスルハウジングの両端部が取付けられている、トレーリングアーム式リアサスペンションであって、
上記各ブラケットに対する上記アクスルハウジングの端部の取付中心位置を、上記ゴムブッシュが上記各ブラケットを支持する支持中心位置よりも、下方に位置させ、車両の旋回時に、車両の旋回方向と同方向に後輪を向けることができるように構成していることを特徴とする、トレーリングアーム式リアサスペンション。」

【3】当事者が求めた審判
1.請求の要旨
請求人・スズキ株式会社は、「特許第3196011号の明細書の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めている。
2.答弁の趣旨
被請求人は、請求人・スズキ株式会社の求めた審判に対して、「本件の審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。

【4】当事者の主張及び証拠方法
1.請求人の主張及び証拠方法
無効理由の概要及び証拠方法は、次のとおりである。
(1)甲第1ないし3号証を用いて説明するように、本件発明は、発明の詳細な説明に、当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、並びに、特許を受けようとする発明が明確でないので、本件特許は、特許法第36条第4項および第6項の規定に反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。(以下、「無効理由1」という。)
[証拠方法]
甲第1号証:本件特許明細書に添付された図3の動作説明図に請求人が書 き加えた図
甲第2号証:トレーリングアームの連結点の中心位置と各ブラケットの中 心位置との高さ関係が異なる場合の支持中心位置の軌跡を請 求人が作成した作図
甲第3号証:甲第1号証と甲第2号証に記載される場合の結果をまとめた 表(請求人が作成)
(2)本件発明の「車両の旋回時に、車両の旋回方向と同方向に後輪を向けることができるように構成していること」という構成は、周知の機能を単に付加したに過ぎないから、この点に技術的意義を見出すことはできない。
したがって、本件発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第4号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(以下、「無効理由2」という。)
[証拠方法]
甲第4号証:米国特許第4858949号明細書及びその翻訳文
甲第5号証:自動車工学全書編集委員会編,「自動車工学全書11 ステ アリング、サスペンション」,株式会社山海堂,昭和55年 8月20日初版発行,第30〜31頁
甲第6号証:社団法人自動車技術会編,「新編 自動車工学便覧 第5編 」,社団法人自動車技術会,昭和57年11月26日初版発 行,第4章サスペンション,第4-1頁〜第4-3頁
甲第7号証:阿部正人著,「車両の運動と制御」,共立出版株式会社, 1979年10月20日初版1刷発行,第132〜133頁
甲第8号証:被請求人が、本件特許に係る出願の審査段階において、出願 人として提出した平成13年4月3日付の意見書
甲第9号証:甲第4号証のサスペンションの車両旋回時の動作を説明する ために請求人が作成した参考図
(3)本件発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第10号証に記載された発明と同一の発明であるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(以下、「無効理由3」という。)
[証拠方法]
甲第10号証:実願昭62-43413号(実開昭63-150806号) のマイクロフィルム

2.被請求人の主張及び提出した証拠方法
被請求人の主張の概要及び証拠方法は、次のとおりである。
(1)無効理由1について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の欄には、当業者が容易に実施できる程度に本件発明が記載され、またその特許請求の範囲には、発明が明確に記載されている。さらに、本件特許明細書の記載が、審査基準にも適合していることは、下記参考資料1、2に掲載されている判例の趣旨からも明らかでる。
したがって、本件特許は、特許法第36条第4項および第6項の規定に違反してなされたものではない。
参考資料1:兼子一、染野義信編著,判例工業所有権法,第一法規出版株 式会社,表紙部分及び二一一五の三六〜四0
参考資料2:染野義信、染野啓子編著,判例工業所有権法(第二期版), 第一法規出版株式会社,表紙部分及び一三一七の八四〜九四
(2)無効理由2について
本件発明の「車両の旋回時に、車両の旋回方向と同方向に後輪を向けることができるように構成していること」という構成には、技術的意義があり、この構成は甲第4号証には記載されておらず、本件発明は、この構成の相違に基づき、甲第4号証に記載の発明からは予測することが困難な格別な作用効果を奏する。
したがって、本件発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第4号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明できたものであるとはいえないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に反して特許されたものであるとはいえない。
[証拠方法]
乙第1号証:実願昭58-99646号(実開昭60-5906号)の明 細書全文及び図面
乙第2号証:米国特許第4858949号明細書の一部に被請求人が説明 事項を記入することにより作成した図
乙第3号証:請求人が提出した甲第9号証の第2頁を複写し、かつそれに 被請求人が説明事項を記入することにより作成した図
乙第4号証:請求人が提出した甲第9号証の第1頁を複写し、かつそれに 被請求人が説明事項を記入することにより作成した図
乙第5号証:被請求人が作成した図
(3)無効理由3について
本件発明は、甲第10号証に記載の発明とは、構成が相違しており、またこのことにより甲第10号証においてはみることのできない作用効果を奏する。
したがって、本件発明は、甲第10号証に記載の発明とは同一ではない。

【5】無効理由2についての当審の判断
1.引用刊行物及びその記載事項の認定
刊行物:米国特許第4858949号明細書(請求人の提出した甲第4号証)
(1)引用刊行物の記載事項(ア〜オ)
上記刊行物には、図1〜図11とともに、以下の事項が記載又は示されている。
ア)「次に、図面、特に図1を参照すると、図面に示されるように車両の前部が左側にある状態で車両フレーム10の一部が示されている。一般に12として示されているサスペンションシステムは、車両フレーム10を、地面に当たる車輪14に取り付ける。サスペンションシステム12は、フレームブラケット・アセンブリ18に回動可能に取り付けられたトレーリングアーム16から形成される。トレーリングアーム16は、上部が車両フレーム10に固定されている空気ばねアッセンブリ22を取り付けて、アクスル24に対する車両フレーム10の上下運動を緩衝する。締付けアセンブリ28は、アクスル24をトレーリングアーム16に締め付ける。・・・
フレームブラケット・アセンブリ18は、図1、図2、図5に示されているものであって、ボルト34を通じて車両フレーム10の側面に取り付けられたフレームブラケット32を含む。」(第3欄第30行〜同欄第49行、翻訳文第5頁第4〜16行参照)
イ)「図3と図4に示されるトレーリングアーム16は、いくつかの長手方向の開口46、48、50、52を有する鍛造I形ビーム部分54を含む。・・・トレーリングアーム16をフレームブラケット・アセンブリ18に回動可能に取り付ける。」(第3欄第65行〜第4欄第4行、翻訳文第5頁第25〜28行参照)
ウ)「トレーリングアーム末端56は、溶接によって、I形ビーム部分54に一体に固定され、また、車両フレーム10の真下に、空気ばねアセンブリ22を位置づけるために、I形ビーム部分54の長手方向の軸線から側方に彎曲される。」(第4欄第20行〜同欄第24行、翻訳文第6頁第10〜12行参照)
エ)「締付けアッセンブリ28(図1と図7)は、4本の長い締付けボルト81により、アクスル24の周りにいっしょに固定された下部アクスルクランプ82と上部アクスルクランプ86を含む。下部アクスルクランプ82は、アクスル24の形状に対して概ね相補的な形状を呈する溝84を有する鞍形鋳造物を含む。同様に、上部アクスルクランプ86は、アクスル24の形状に対して概ね相補的な形状を呈する上部溝88を有する鞍形鋳造物を含む。」(第4欄第54行〜同欄第62行、翻訳文第7頁第2〜7行参照)
オ)「上部アクスルクランプ86の鞍形部分から上方に延びているものは、上部外側板90と上部内側板92である。上部アクスルクランプ86では、各側板上の前方ブラケット94と、各側板上の後方ブラケット96が側方に配置されて、トレーリングアーム16が、上部外側板90と上部内側板92との間に嵌め込まれるようにし、その場合、トレーリングアーム16の前方ブッシュ・コア開口48を、長手方向に前方ブラケット94と同心にし、またトレーリングアーム16の後方ブッシュ・コア開口50を、後方ブラケット96と同心にしている。端部105を有する前方ブッシュ・コア104は前方ブッシュ・コア開口48の中に配置され、その場合、前方ブッシュ・コア104の開口107は、前方ブラケット94の上部アクスルクランプ開口100と同心になっている。同様に、端部105を有する後方ブッシュ・コア106は後方ブッシュ・コア開口50の中に配置され、その場合、後方ブッシュ・コア106の開口107は、後方ブラケット96の上部アクスルクランプ開口100と同心となっている。各ブッシュ・コア104、106と各ブッシュ・コア開口48、50との間に、ラバー・ブッシュ108を設けて、上部アクスルクランプ86とトレーリングアーム16との間に、ラバー・ブッシュ継手の好ましい実施形態を含める。」(第5欄第12行〜同欄第35行、翻訳文第7頁第19〜第8頁第2行参照)
(2)引用刊行物の記載事項の認定
図5から明らかなように、トレーリングアーム16は、車幅方向に間隔を隔てて配置されているものと認められる。
「サスペンションシステム12は、フレームブラケット・アセンブリ18に回動可能に取り付けられたトレーリングアーム16から形成される。フレームブラケット・アセンブリ18は、図1、図2、図5に示されているものであって、ボルト34を通じて車両フレーム10の側面に取り付けられたフレームブラケット32を含む。」(記載事項ア参照)及び「トレーリングアーム16をフレームブラケット・アセンブリ18に回動可能に取り付ける。」(記載事項イ参照)から、トレーリングアーム16は、車両高さ方向に揺動可能なように前端部が車両フレーム10にフレームブラケット32を介して回動可能に取り付けられているものと認められる。
記載事項オ、図1、図3、図7から、該締付けアセンブリ28に含まれる上部アクスルクランプ86の前方ブラケット94及び後方ブラケット96に固定したブッシュ・コア104、106を、トレーリングアーム16のブッシュ・コア開口48、50に、ラバーブッシュ108介して挿入することで、左右それぞれのトレーリングアーム16に、左右それぞれの締付けアセンブリ28が取り付けられているものと認められる。
記載事項エ、図1、図5から、下部アクスルクランプ82と上部アクスルクランプ86とを含む左右それぞれの締付けアセンブリ28には、それぞれ、車幅方向に延びるアクスル24の両端部が固定されて取り付けられているものと認められる。
図7を参酌すると、ラバーブッシュ108は締付けアセンブリ28をブッシュ・コア104を介して支持しているものと認められるから、ラバーブッシュ108が締付けアセンブリ28を支持する中心位置は、ブッシュ・コア104が挿入されているラバーブッシュ108の径方向の中心位置に相当すると認められる。
締付けアセンブリ28に対するアクスル24の端部の取付中心位置(図1におけるアクスル24の径方向の中心)は、ラバーブッシュ108が締付けアセンブリ28を支持する中心位置(ラバーブッシュ108の径方向の中心位置、図7参照)より、明らかに、下方に位置していると認められる。
「トレーリングアーム式サスペンション」は、一般に、リア側(後車軸)に用いられるものと認められる。
(3)引用刊行物に記載されている発明
よって、上記各記載事項及び上記各図に示されているところから、上記刊行物には、
「車幅方向に間隔を隔てて配置され、かつ車両高さ方向に揺動可能なように前端部が車両フレーム10に回動可能に取り付けられている一対のトレーリングアーム16と、これら一対のトレーリングアーム16のそれぞれにラバーブッシュ108を介して取付けられた一組の締付けアセンブリ28とを有し、かつこれら一組の締付けアセンブリ28には、車幅方向に延びるアクスル24の両端部が取付けられている、トレーリングアーム式リアサスペンションであって、
上記各締付けアセンブリ28に対する上記アクスル24の端部の取付中心位置を、上記ラバーブッシュ108が上記各アセンブリ28を支持する支持中心位置よりも、下方に位置させた、トレーリングアーム式リアサスペンション。」(以下、「刊行物に記載の発明」という)
が記載されているものと認められる。

2.対比・判断
[発明の対比]
本件発明と刊行物に記載の発明とを対比する。
刊行物に記載の発明でいう「車両フレーム10に回動可能に取り付けられている」は、本件発明の「車両本体に回転可能に連結されている」に相当し、刊行物に記載の発明の「ラバーブッシュ108」、「締付けアセンブリ28」、「アクスル24」は、それぞれ、本件発明の「ゴムブッシュ」、「ブラケット」、「アクスルハウジング」に相当する。
したがって、両者は、
「車幅方向に間隔を隔てて配置され、かつ車両高さ方向に揺動可能なように前端部が車両本体に回転可能に連結されている一対のトレーリングアームと、これら一対のトレーリングアームのそれぞれにゴムブッシュを介して取付けられた一組のブラケットとを有し、かつこれら一組のブラケットには、車幅方向に延びるアクスルハウジングの両端部が取付けられている、トレーリングアーム式リアサスペンションであって、
上記各ブラケットに対する上記アクスルハウジングの端部の取付中心位置を、上記ゴムブッシュが上記各ブラケットを支持する支持中心位置よりも、下方に位置させた、トレーリングアーム式リアサスペンション。」
で一致し、次の2点で相違する。
<相違点1>
トレーリングアームへのブラケットの取付け位置が、本件発明は、「一対のトレーリングアームのそれぞれの後端部」であるのに対して、刊行物に記載の発明では、一対のトレーリングアームのそれぞれの、どの位置にブラケットが取付けられているか明示されていない点。
<相違点2>
本件発明は、「上記各ブラケットに対する上記アクスルハウジングの端部の取付中心位置を、上記ゴムブッシュが上記各ブラケットを支持する支持中心位置よりも、下方に位置させ、車両旋回時に、車両の旋回方向と同方向に後輪を向けることができるように構成している」のに対して、刊行物1に記載の発明では、「上記各ブラケットに対する上記アクスルハウジングの端部の取付中心位置を、上記ゴムブッシュが上記各ブラケットを支持する支持中心位置よりも、下方に位置させている」(以下、この構成を「E1」という)ものの、「車両旋回時に、車両の旋回方向と同方向に後輪を向けることができるように構成している」(以下、この構成を「E2」という)とについては、言及されていない点。

[相違点についての判断]
<相違点1について>
本件発明が、車体への枢着部分からブラケットを取り付けるまでの部分をトレーリングアームとしているのに対して、刊行物に記載の発明では、それに加えてばね部材12を支持する部分までを含めて、トレーリングアーム16としている。
しかしながら、一般に、トレーリングアームのブラケットの取付け位置より後部に、ばね部材を支持するための部材を設けることが、技術常識であることを考えると、むしろ、本件発明の方が、トレーリングアームのばね部材の支持部が省略されていると見るのが自然であり、ブラケットを支持するトレーリングアームの機能においては、本件発明も刊行物に記載の発明も何ら相違するところはないと認められる。
そして、トレーリングアームにおいて、ブラケット支持部分(I形ビーム部分54)とばね支持部分(トレーリングアーム末端56)とを別部材から構成することが、刊行物には示唆されているといえるから(記載事項ウを参照)、刊行物に記載の発明のトレーリングアーム16のブラケットの取付け位置までの前部分を、それより後部分のばね支持部材の機能を有する部分とは、別部材で構成し、実質的に本件発明でいうトレーリングアームとすることで、上記相違点1に記載した本件発明の構成に到ることには、格別の困難性はない。
<相違点2について>
本件発明における上記E2の構成でいう「車両旋回時に、車両の旋回方向と同方向に後輪を向けることができるように構成している」とは、アンダーステア、即ち、車両旋回時において、旋回外側の後輪は前方に向かい、同内側の車輪は後方に向かうことを意味する。
そして、上記E1の構成は、上記のような<アンダーステア>を実現するための一要因にはなりうるものの、現実の車両が、アンダーステアになるか否かは、上記E1の構成(以下、「要因1」という)に加えて、
要因2:ゴムブッシュが各ブラケットを支持する支持中心位置が、トレーリングアームの前端部の連結点の中心位置より、上方側に偏って揺動すること(答弁書の第9頁第18〜23行に記載のように、この要因2については被請求人も認めているといえる。)
要因3:ゴムブッシュのゴムが十分な厚みを有し弾性変形することで、アクスルハウジングの支持位置を変化させること
要因4:要因3の前提条件として、アクスルハウジングの剛性はある程度大きいこと
の有無をも考慮する必要があると認められる。
つまり、上記E1の構成(要因1)を備えるからといって、必ずしもアンダーステアになる(E2の構成を備える)とはいえない。
しかしながら、要因1(E1の構成)を有する刊行物に記載の発明は、少なくともアンダーステア傾向にはある、即ち、車両旋回時に、車両の旋回方向と同方向に後輪を向けようとする傾向にはあるといえる。
ところで、上記のアンダーステアを得るための要因2〜4は、本件明細書にそれらの要因についての記載がなくとも、当業者であれば必要に応じて容易に実施できる旨を被請求人自身が主張するように、当該技術分野における技術常識(以下、「技術常識1」という)であるといえる。
また、特別な事情がない限り、自動車のステアリングの設計においては、安全面等から、アンダーステアとすることも、同様に、技術常識(甲第5号証第31頁29〜31行等を参照、以下、「技術常識2」という)である。
そうすると、刊行物に、アンダーステアにするという事項が明記されていないとしても、刊行物に記載の発明においても、安全面等からアンダーステアとするという上記技術常識2は当然考慮されるべきであるから、構成E1を有しアンダーステア傾向にある刊行物に記載の発明において、上記技術常識1を参酌し、アンダーステアとなるように、即ち、構成E2を有するようにして、上記相違点2で示した本件発明の構成に到ることは、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。

なお、上記刊行物に記載の技術と同様の技術(E1の構成)が開示されている刊行物として、特公昭48-19965号公報、米国特許第3482854号公報、米国特許第4615539号公報、等も認められる。

【6】むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る発明は、上記刊行物に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、他の無効理由について検討するまでもなく、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-12-26 
結審通知日 2004-01-07 
審決日 2004-01-20 
出願番号 特願平8-147118
審決分類 P 1 112・ 121- Z (B60G)
最終処分 成立  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 久雄
出口 昌哉
登録日 2001-06-08 
登録番号 特許第3196011号(P3196011)
発明の名称 トレーリングアーム式リアサスペンション  
代理人 福元 義和  
代理人 田中 達也  
代理人 古澤 寛  
代理人 森田 耕司  
代理人 筒井 雅人  
代理人 吉田 稔  
代理人 塩谷 隆嗣  
代理人 山田 勇毅  
代理人 大野 聖二  
代理人 仙波 司  

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