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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A47F
管理番号 1124015
審判番号 無効2004-80174  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-15 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-06 
確定日 2005-09-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第3422939号発明「冷凍又は冷蔵タイプのオープンショーケース用のカバー」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3422939号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3422939号の請求項1に係る発明についての出願は、平成10年7月30日に出願され、平成15年4月25日にその発明について特許権の設定登録がされたものであり、これに対して、請求人は、平成16年10月6日に請求項1に係る発明の特許について無効審判を請求した。

2.本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「冷凍機能又は冷蔵機能が付与されかつ上面全面が開口された平台タイプのオープンショーケースの開口部にその開口部を閉じるために開閉自在に装着されたカバーにおいて、カバー本体を比較的薄手で全面が透湿性のある一枚の織物地、又は、編物地により形成すると共に、当該カバー本体を前記ケースにおける開口部の上辺の内側に設けた取付ベースに巻取り引出し自在に取付ける一方、前記ケース手前側の壁面上部に設けたカバー係止部材に係止される係止爪を別体の環状引手とともに前記カバー本体の引出し先端部の支持バーに設けたことを特徴とする冷凍又は冷蔵タイプのオープンショーケース用のカバー。」

3.請求人の主張
請求人は、本件発明に係る特許を無効とする、との審決を求め、以下の理由(1)及び(2)を挙げて、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証を提出している。
(1)本件発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
(2)本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(証拠方法)
甲第1号証:特開平8-210766号公報

4.被請求人の主張
被請求人は、平成17年1月17日付けの答弁書等において、本件審判の請求は成り立たないとの審決を求め、本件発明は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない旨主張している。

5.当審の判断
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、図1〜図11とともに、次の事項が記載されている。
a.「開口部を被う少なくとも二枚のナイトカバーを備えたオープンショーケースにおいて、前記各ナイトカバーは、引き出された状態で相互に隣接する一端部が重なり合うと共に、他端部は前記開口部より外方に張り出すことを特徴とするオープンショーケース。」(【請求項1】)
b.「ナイトカバーは、水蒸気を透過させ、且つ、低温においても当該透過特性が維持される素材にて構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2、若しくは、請求項3、或いは、請求項8のオープンショーケース。」(【請求項9】)
c.「開口部を被うナイトカバーを備えたオープンショーケースにおいて、前記開口部にハンドレールを取り付けると共に、前記ナイトカバーは、水蒸気を透過させ、且つ、低温においても当該透過特性が維持される素材にて構成し、当該ナイトカバーの先端には前記ハンドレールの外面に嵌合するフック部を設けたことを特徴とするオープンショーケース。」(【請求項12】)
d.「【従来の技術】従来よりスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗に設置されるオープンショーケースには、ナイトカバーと称される引き出し自在のカバー(以下、ナイトカバーと称す。)が取り付けられており、商品の納出が行われない閉店時には、このナイトカバーを引き出して開口部を被うことにより、開口部からの無駄な冷気の流出を防止し、消費電力の削減を図ることをができるように構成されている。
特に、開口部の幅が大きい長尺のオープンショーケースにおいては、二枚(若しくはそれ以上)のナイトカバーを並設して開口部を被っているが、各ナイトカバー相互間には引き出された状態で隙間が生じていたため、この隙間から冷気が漏出していた。」(段落【0002】〜【0003】)
e.「請求項9の発明のオープンショーケースによれば、請求項1または請求項2、若しくは、請求項3、或いは、請求項8の発明に加えて、ナイトカバーを、水蒸気を透過させ、且つ、低温においても当該透過特性が維持される素材にて構成したので、格別な孔などを穿設すること無く、ナイトカバーへの結露の発生を防止することができる。従って、係る孔からの冷気漏れも解消して運転効率の更なる向上を図ることができる。」(段落【0031】)
f.「請求項12の発明のオープンショーケースによれば、開口部を被うナイトカバーを、水蒸気を透過させ、且つ、低温においても当該透過特性が維持される素材にて構成し、当該ナイトカバーの先端にはハンドレールの外面に嵌合するフック部を設けたので、格別な孔などを穿設すること無く、ナイトカバーへの結露の発生を防止することができる。従って、係る孔からの冷気漏れを解消して運転効率の向上を図ることができる。また、ナイトカバー先端部における開口部の隙間を塞ぐことができるので、開口部からの冷気の漏出を効果的に防止できるようになる。特に、上述の如くナイトカバーへの結露も防止されるので、ハンドレールの外側までナイトカバーが被った場合にも、係る結露によってオープンショーケース周囲が汚損されることも無いものである。」(段落【0034】)
g.「上記各図に示した実施例のオープンショーケース1は、例えばスーパーマーケットなどの店舗内に複数台据え付けられる冷蔵タイプの縦型オープンショーケースであり、断面略コ字状の断熱壁2と、据え付け現場においてこの断熱壁2の両側に取り付けられる側板3、3とから構成されている。」(段落【0036】)
h.「前記各ナイトカバー46、47は、何れも織物から成る基材の一面若しくは両面に水蒸気を透過させ、且つ、低温(少なくとも後述する+13℃〜+16℃の温度)においても当該透過特性が維持されるフィルムをラミネートした素材にて構成されており、各保持具48、49の縦辺48A、49Aに取り付けられたトーションバー51、51の周囲に捲回されて常時巻き取られる方向に付勢されている。」(段落【0048】)
i「これらナイトカバー46、47の先端(下縁)にはそれらを左右に張る硬質樹脂製の縁部材56が取り付けられている。この縁部材56は図6の如くナイトカバー46、47の全幅よりも短く、それによってナイトカバー46、47の両端には縁部材56は存在していない。また、縁部材56の中央部には把手57が形成されている。この把手57は前方に突出した摘み部58と、後方に突出したフック部59とから成り、フック部59の後面には磁石61が取り付けられている。」(段落【0050】)
j.「この構成で、店舗の閉店時には前記縁部材56、56の摘み部58を持って両ナイトカバー46、47を引き出し、各フック部59をハンドレール28の下面前端部28Aに嵌合させる。」(段落【0054】)
k.「ここで、エアーカーテンによりナイトカバー46、47の表面は+13℃〜+16℃の温度に低下するが(貯蔵室9内の温度が0℃〜+5℃、外気温+25℃でナイトカバー46、47の表面温度は+13℃〜+16℃程になる)、ナイトカバー46、47は係る低温においても水蒸気を透過させるので、例えば特公昭42-25586号公報に示される如き孔を穿設すること無く、ナイトカバー46、47内面への結露は防止される。従って、係る孔からの冷気漏れも解消できる。」(段落【0059】)
l.「また、係るナイトカバー46、47への結露が防止されることにより、前述の如くハンドレール28の外側までナイトカバー46、47が被っても、結露によってオープンショーケース1周囲が汚損されることが無くなる。」(段落【0060】)
m.「次に、図10は所謂平型オープンショーケース70の実施例を示している。」(段落【0065】)
n.「請求項9の発明によれば、請求項1または請求項2、若しくは、請求項3、或いは、請求項8の発明に加えて、ナイトカバーを、水蒸気を透過させ、且つ、低温においても当該透過特性が維持される素材にて構成したので、格別な孔などを穿設すること無く、ナイトカバーへの結露の発生を防止することができる。従って、係る孔からの冷気漏れも解消して運転効率の更なる向上を図ることができる。」(段落【0084】)
o.「請求項12の発明によれば、開口部を被うナイトカバーを、水蒸気を透過させ、且つ、低温においても当該透過特性が維持される素材にて構成し、当該ナイトカバーの先端にはハンドレールの外面に嵌合するフック部を設けたので、格別な孔などを穿設すること無く、ナイトカバーへの結露の発生を防止することができる。従って、係る孔からの冷気漏れを解消して運転効率の向上を図ることができる。また、ナイトカバー先端部における開口部の隙間を塞ぐことができるので、開口部からの冷気の漏出を効果的に防止できるようになる。特に、上述の如くナイトカバーへの結露も防止されるので、ハンドレールの外側までナイトカバーが被った場合にも、係る結露によってオープンショーケース周囲が汚損されることも無いものである。」(段落【0087】)
p.図2には、収納部37がケースにおける開口部の上方に設けられ、ハンドレール28の前端部28Aが開口部の下方に設けられることが示されている。

上記の記載事項及び図示内容を総合すれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「冷蔵タイプの縦型オープンショーケース1の開口部を覆うナイトカバー46、47において、ナイトカバー46、47は、織物から成る基材の一面若しくは両面に水蒸気を透過させ、且つ、低温においても当該透過特性が維持されるフィルムをラミネートした素材にて構成されており、当該ナイトカバー46、47を前記ケースにおける開口部の上方に設けた収納部37に取付ける一方、開口部の下方に設けたハンドレール28の前端部28Aに嵌合されるフック部59を摘み部58とともに前記ナイトカバーの先端の縁部材56、56に設けた冷蔵タイプのオープンショーケース用のナイトカバー46、47。」

(2)対比
本件発明と甲1発明とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「開口部を覆う」は前者における「開口部を閉じる」に相当し、以下同様に、「ナイトカバー46、47」は「カバー」又は「カバー本体」に、「嵌合されるフック部59」は「係止される係止爪」に、そして「先端の縁部材56、56」は「引出し先端部の支持バー」に相当する。
また、後者における「冷蔵タイプの縦型オープンショーケース1」と前者における「冷凍機能又は冷蔵機能が付与されかつ上面全面が開口された平台タイプのオープンショーケース」とは、「冷凍機能又は冷蔵機能が付与されたオープンショーケース」という概念で共通し、後者における「織物から成る基材の一面若しくは両面に水蒸気を透過させ、且つ、低温においても当該透過特性が維持されるフィルムをラミネートした素材にて構成されており」と、前者における「比較的薄手で全面が透湿性のある一枚の織物地、又は、編物地により形成する」とは、「全面が透湿性のある織物地を含む」という概念で共通し、後者における「ケースにおける開口部の上方に設けた収納部37」及び「開口部の下方に設けたハンドレール28の前端部28A」と、前者における「ケースにおける開口部の上辺の内側に設けた取付ベース」及び「ケース手前側の壁面上部に設けたカバー係止部材」とは、それぞれ「ケースにおける開口部の一方の側に設けた取付ベース」及び「ケース開口部の他方の側に設けたカバー係止部材」という概念で共通し、後者における「摘み部」と、前者における「別体の環状引手」とは、「引手」という概念で共通する。
さらに、後者においてナイトカバー46、47が収納部37に巻取り引出し自在に取付けられるものであることは、ナイトカバー46、47の機能及び収納部37の形態から明らかである。
してみれば、両者は
「冷凍機能又は冷蔵機能が付与されたオープンショーケースの開口部にその開口部を閉じるために開閉自在に装着されたカバーにおいて、カバー本体は全面が透湿性のある織物地を含むと共に、当該カバー本体を前記ケースにおける開口部の一方の側に設けた取付ベースに巻取り引出し自在に取付ける一方、前記ケース開口部の他方の側に設けたカバー係止部材に係止される係止爪を引手とともに前記カバー本体の引出し先端部の支持バーに設けた冷凍又は冷蔵タイプのオープンショーケース用のカバー。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本件発明においては、オープンショーケースが上面全面が開口された平台タイプのものであり、取付ベースがケースにおける開口部の上辺の内側に設けられ、カバー係止部材がケース手前側の壁面上部に設けられているのに対して、甲1発明においては、オープンショーケースが縦型であり、収納部37がケースにおける開口部の上方に設けられ、ハンドレール28の前端部28Aが開口部の下方に設けられている点。
(相違点2)
引手が、本件発明においては、別体の環状引手であるのに対して、甲1発明においては、そのような構成となっているか否か明らかでない点。
(相違点3)
全面が透湿性のある織物地を含むカバー本体が、本件発明においては、比較的薄手で全面が透湿性のある一枚の織物地、又は、編物地により形成されるのに対して、甲1発明においては、織物から成る基材の一面若しくは両面に水蒸気を透過させ、且つ、低温においても当該透過特性が維持されるフィルムをラミネートした素材にて構成されている点。

(3)判断
a.相違点1について
本件発明は、上面全面が開口された平台タイプのオープンショーケースにも適用できることが示唆されている(上記記載事項m.参照)。また、平台タイプのオープンショーケースにカバーを取り付ける場合に、取付ベース、カバー係止部材を設ける場所は、カバーが開口部全面を閉じるようになるように当業者が適宜選択できるものであり、その場所を開口部上辺の内側及びケース手前側の壁面上部とすることも、実願平3-75384号(実開平5-28254号)のCD-ROMに記載されているように当業者が普通に行うことである。
よって、本件発明を上面全面に開口された平台タイプのオープンショーケースに適用し、その際に、取付ベースを開口部上辺の内側に設け、カバー係止部材をケース前側の壁面上部に設けるようにすることに格別の困難性があるとは言えない。
b.相違点2について
オープンショーケースの引手を、別体の環状引手とすることは、特開平9-196549号公報、特開平8-110149号公報及び特開平7-294105号公報に記載されているように周知の事項である。そして、甲1発明において、引手の形態は適宜変更できるものであることは明らかであるから、それを周知の別体の環状引手とすることに格別の困難性があるとは言えない。
c.相違点3について
相違点3に係る本件発明の「比較的薄手で」という点は、具体性を欠き、織物地一般が、比較的薄手なものであることから実質的な相違点とは言えない。また、同じく「全面が透湿性のある」という点も、織物地一般の性質と言える。したがって、相違点3は、実質的に、カバー本体が、本件発明においては、ラミネートしていない織物地であるのにに対して、甲1発明においては、低温においても水蒸気透過特性が維持されるフィルムをラミネートした織物地であるという相違であると言える。
そして、甲1発明において、織物地にラミネートを施す目的は明確ではないが、どのような目的でラミネートを施すとしても、織物地にラミネートを施さないようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

相違点3に関して、被請求人は、平成17年6月28日付けの上申書において、本件発明の「熱伝導的に見て間断のある材料として選択した織物地」とは、例えば二重織組織の織物地であり、甲第1号証には、熱伝導的に間断のある材料として選ばれた本件発明の織物地は示唆されていない旨主張している。
しかしながら、特許請求の範囲にはカバーの材質について「カバー本体を比較的薄手で全面が透湿性のある一枚の織物地、又は、編物地により形成する」としか記載されておらず、上記の主張はそもそも特許請求の範囲の記載に基づかないものである。
また、仮に、本件発明が、被請求人の主張するような二重織組織の織物地からなるものであったとしても、被請求人の主張するように二重織組織の織物地は周知のものである。そして、甲1発明において、ナイトカバー46、47を二重織の織物地とすることは当業者が容易に想到し得たことであり、被請求人の上記主張を採用することはできない。

そして、本件発明により奏される効果も、甲1発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

6.むすび
よって、本件発明は、請求人の主張する無効理由(2)のとおり、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、他の無効理由について検討するまでもなく、同法第123条第1項2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-21 
結審通知日 2005-07-26 
審決日 2005-08-11 
出願番号 特願平10-228519
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A47F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮崎 敏長  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 大元 修二
山本 信平
登録日 2003-04-25 
登録番号 特許第3422939号(P3422939)
発明の名称 冷凍又は冷蔵タイプのオープンショーケース用のカバー  
代理人 日野 修男  
代理人 小泉 良邦  
代理人 樋口 盛之助  

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