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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05B
管理番号 1124209
審判番号 不服2003-19750  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-09 
確定日 2005-10-06 
事件の表示 平成 6年特許願第229919号「アクチュエータコントローラ」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月12日出願公開、特開平 8- 95624〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成6年9月26日の特許出願であって、平成15年6月9日付で拒絶の理由が通知され、同15年8月13日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同15年8月29日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、同15年10月9日に本件審判の請求がされるとともに、同15年11月6日に手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
本件補正は特許請求の範囲を含む明細書について補正をするものであって、その請求項1について、補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
1-1 補正前の請求項1
「複数のアクチュエータの動作制御を行うアクチュエータコントローラにおいて、
前記各アクチュエータからの所定の動作状態信号を受信する動作状態信号受信手段と、
時間制限機能を有する入力判断命令が記述されたプログラムに基づいて前記各アクチュエータを制御する制御手段と、
前記動作状態信号を受信するまでの時間を計測する計時手段と、
前記動作状態信号を受信するまでの時間の許容時間を設定する許容時間設定手段と、
前記計時手段によって計測された時間が前記許容時間外であるか否かを監視する監視手段と、
を備え、前記制御手段は、前記計時手段によって計測された時間が前記監視手段により許容時間外であると判定された場合、前記入力判断命令に基づくエラー処理を行うことを特徴とするアクチュエータコントローラ。」

1-2 補正後の請求項1
「複数のアクチュエータの動作制御を行うアクチュエータコントローラにおいて、
前記各アクチュエータからの所定の動作状態信号を受信する動作状態信号受信手段と、
同期的に運転され、時間制限機能を有する入力判断命令が記述されたプログラムに基づいて前記各アクチュエータを制御する複数の制御手段と、
前記動作状態信号を受信するまでの時間を計測する計時手段と、
前記計時手段によって計測された時間が前記入力判断命令に設定された許容時間外であるか否かを監視する監視手段と、
を備え、一の前記制御手段により制御される前記アクチュエータからの前記動作状態信号を前記計時手段によって計測した時間が前記監視手段により許容時間外であると判定された場合、前記入力判断命令に基づいて他の前記制御手段によりエラー処理を行うことを特徴とするアクチュエータコントローラ。」

2.補正の適否
本件補正により、補正後の請求項1に係る発明は、「時間制限機能を有する入力判断命令が記述されたプログラムに基づいて前記各アクチュエータを制御する複数の制御手段」及び「一の前記制御手段により制御される前記アクチュエータからの前記動作状態信号を前記計時手段によって計測した時間が前記監視手段により許容時間外であると判定された場合、前記入力判断命令に基づいて他の前記制御手段によりエラー処理を行う」との構成を具備するものとなった。
そこで、本件補正が願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものであるか否かについて、以下検討する。

2-1 当初明細書等の記載事項
当初明細書等には、以下の事項が記載されている。
(1)「前記装置は、図9に示す2つのコントローラ92、94を有する。
第1のコントローラ92はX軸、Z軸のアクチュエータ74、80、82およびエアチャック84、86の制御を行う。第2のコントローラ94はY軸アクチュエータ68の制御を行う。第1のコントローラ92は3軸用制御モジュール96を中心に構成される。3軸制御モジュール96はアクチュエータ用のモータドライバ98、100、102の制御を行い、アクチュエータ60a、60b、74、82の同期運転とアクチュエータ74、82の補完運転を行う。
アクチュエータ74に併設されるエアシリンダ80は汎用入出力モジュール104に増設されたD/A変換ボード116による電空比例圧力制御弁によりエアバランサとして機能する(図10)。これらはエアバランサモジュール118を構成する。汎用入出力モジュール104は他にアクチュエータ74、82の先端のエアチャックの開閉制御を行っている。なお、当コントローラは他にシリアルインタフェースモジュールと電源モジュールを有するが、ここではそれらの図示を省略する。」(段落【0085】〜【0087】)

(2)「第2のコントローラ94は1軸モジュール106とY軸アクチュエータ用ドライバモジュール108によりY軸アクチュエータ68の制御を行う。この1軸制御モジュール106は、Y軸アクチュエータ68の位置決めポイントをプログラムによらずに、外部より直接変更可能な外部教示機能(OT機能)を備えており、そのための汎用入出力モジュール110を備えている。汎用入出力には設定スイッチ盤(OT装置112)が接続されている。
第1および第2のコントローラ92、94は、両者の同期的なプログラムの実行のために汎用入出力モジュール104、110を互いに接続している。また、これらのコントローラ92、94とベルトコンベア88、90の統合的な制御のためにシーケンサ114が用意され、同様に第1および第2のコントローラ92、94の制御用端子に接続されている。」(段落【0088】〜【0089】)

(3)「本実施例では、第1および第2のコントローラ92、94のプログラムにより運転されるが、プログラマはそれぞれのコントローラに接続され同時にプログラミングが行われる。
以下に2つのコントローラ92、94の基本形式を示す。
第1および第2のコントローラ92、94は互いの汎用入出力モジュール104、110を介して同期的に運転される。そのため、2つのプログラムはプログラマ内部で汎用入出力ルートを向き合わせて表示される。第1のプログラムの特定ルーチンが完了し、第2のプログラムの動作を実行したい場合、第1のプログラムから汎用出力ルートを延ばし、第2のプログラムの対応した汎用入力ルートを記述する。第2のプログラムの実行が完了し、第1のプログラムの動作を再開したい場合、上記とは逆に第2のプログラムから汎用出力ルートを延ばし、第1のプログラムの汎用入力ルートを記述する。」(段落【0096】〜【0098】)

(4)「このように複数のコントローラを同期的に運用したい場合、互いの異常発生に対応するには幾つかの方法が考えられる。1つはコントローラのアラーム出力を利用する場合、他方は汎用入力ルートに時間制限機能を付加し、他方のコントローラのプログラム実行時間を監視する方法である。アラーム出力を利用した場合、コントローラの対応は異常発生時対処ルーチンに限られる。これは、異常発生時に停止による安全措置が取られることを意味する。当事例では、コントローラのアラーム出力は機器群の統括的な制御装置であるシーケンサにそれぞれ接続されており、機器全体の安全な対応を可能としている。
一方、汎用入力の時間制限開始はこの第1および第2のコントローラ92、94の同期的運用プログラムの中に盛り込まれている。当例の場合、その役割から第1のコントローラ92が制御の中核となる。そのため、第1のプログラムにより第2のコントローラ94の実行状態が監視されることになり、汎用入力ルートの基部に時間制限機能付入力判断命令が記述されることになる。
このように、複数のアクチュエータとコントローラにより実現された機器群において時間制御機能付入力判断命令が用いられている個所は3つ存在する。第1はエアチャック84、86を制御する空気圧機器制御命令である。第2はエアバランサ制御の圧力モニタ入力の時間制限監視である。第3は第2コントローラ94の実行状態監視である。」(段落【0099】〜【0101】)

(5)「以下に第2のコントローラ94の運転に異常が発生した場合について説明する。
以下の例では、機械的な不具合によりアクチュエータの運転領域が機械的座標に対してドリフトし、アクチュエータのリミットアウトが発生し、これにより第2のコントローラが異常発生対処を施し、同時に第1コントローラが第2コントローラの実行異常を感知し退避ルーチンを実行する。
先ず、・・・(中略)・・・ 比較によりアクチュエータの残り移動距離の方が大きければ、ストロークアウトが発生すると予測されるため、コントローラはモータによる最大減速停止を行う。」(段落【0102】〜【0106】)

(6)「いま、このようにしてストロークアウトが発生し、第2コントローラ94のプログラム実行が停止された。・・・(中略)・・・場合がある。
さて、第2コントローラ94の実行が停止した場合、第2プログラムの汎用出力ルートは実行されず、第1コントローラ92は汎用入力ルートの条件成立を待ち続ける。このような場合、本実施例による機能命令が存在しなければ、前記のようにアラーム信号により停止措置を取らざるを得ない。しかし、本実施例による時間制限機能付入力判断命令によって、第1コントローラ92は一定時間、汎用入力ルートの条件成立を監視し、時間内に条件が成立しない場合、異常時の安全措置を記述したサブルーチンに実行を移すことになる。」(段落【0107】〜【0108】)

(7)図9の記載によれば、第2のコントローラ94は、Y軸ドライバ108、汎用I/O110及びY軸用制御モジュール106から構成され、Y軸アクチュエータ68を制御するものであることが看取できる。

2-2 記載事項についての検討
当初明細書の段落【0100】〜【0101】には、「当例の場合、その役割から第1のコントローラ92が制御の中核となる。そのため、第1のプログラムにより第2のコントローラ94の実行状態が監視されることになり、汎用入力ルートの基部に時間制限機能付入力判断命令が記述されることになる。
このように、複数のアクチュエータとコントローラにより実現された機器群において時間制御機能付入力判断命令が用いられている個所は3つ存在する。第1はエアチャック84、86を制御する空気圧機器制御命令である。第2はエアバランサ制御の圧力モニタ入力の時間制限監視である。第3は第2コントローラ94の実行状態監視である。」(摘記事項(4))と記載されている。
上記記載によれば、時間制御機能付入力判断命令が用いられている3つの個所のうち、第1と第2は、第1コントローラ92により制御されるアクチュエータであるエアチャック84、86及びエアバランサの個所であるから、第1コントローラ92が、時間制限機能を有する入力判断命令が記述されたプログラムに基づいてアクチュエータを制御するものであることは明らかである。
しかしながら、第3の第2コントローラ94の実行状態監視については、上記記載は、第2コントローラ94自体の実行状態を時間制御機能付入力判断命令により監視することを示したものであって、第2コントローラ94がY軸アクチュエータ68を時間制御機能付入力判断命令により監視することを示したものではない。そして、第2コントローラ94が、時間制限機能を有する入力判断命令が記述されたプログラムに基づいてY軸アクチュエータ68を制御することについては、当初明細書等には何ら記載されておらず、また、当初明細書等の記載から自明の事項でもない。
したがって、補正後の請求項1における、「時間制限機能を有する入力判断命令が記述されたプログラムに基づいて各アクチュエータを制御する複数の制御手段」は、当初明細書等に記載した事項であるとすることはできない。
また、当初明細書の段落【0107】〜【0108】には、第2コントローラ94のプログラム実行が停止された場合に、第2プログラムの汎用出力ルートは実行されず、第1コントローラ92は一定時間、汎用入力ルートの条件成立を監視し、時間内に条件が成立しない場合、異常時のエラー処理を行うことが記載されている。
上記記載は、第2コントローラ94からの動作状態信号を計時手段によって計測した時間が監視手段により許容時間外であると判定された場合、入力判断命令に基づいて第1コントローラ92によりエラー処理を行うことを示したものであるが、第2コントローラ94により制御されるY軸アクチェエータ68からの動作状態信号を計時手段によって計測した時間が監視手段により許容時間外であると判定された場合、入力判断命令に基づいて第1コントローラ92によりエラー処理を行うことを示したものではない。そして、第2コントローラ94により制御されるY軸アクチェエータ68からの動作状態信号を計時手段によって計測した時間が監視手段により許容時間外であると判定された場合、入力判断命令に基づいて第1コントローラ92によりエラー処理を行うことについては、当初明細書等には何ら記載されておらず、また、当初明細書等の記載から自明の事項でもない。
したがって、「一の前記制御手段(第2コントローラ94)により制御されるアクチュエータ(Y軸アクチェエータ68)からの動作状態信号を計時手段によって計測した時間が監視手段により許容時間外であると判定された場合、入力判断命令に基づいて他の前記制御手段(第1コントローラ92)によりエラー処理を行う」ことは、当初明細書等に記載した事項であるとすることはできない。

なお、請求人は、本件補正の根拠について、平成15年12月17日付手続補正書(方式)において、
「補正した請求項1において、「周期的に運転され」および「複数の」とある補正事項は、出願当初の明細書の段落[0098]に「第1および第2のコントローラ92、94は互いの汎用入出力モジュール104、110を介して同期的に運転される。」とある記載に基づくものである。
補正した請求項1において、「入力判断命令に設定された」とある補正事項は、出願当初の明細書の段落[0099]に「汎用入力ルートに時間制限機能を付加し、他方のコントローラのプログラム実行時間を監視する方法」とある記載に基づくものである。
補正した請求項1において、「一の前記制御手段により制御される前記アクチュエータからの前記動作状態信号を」および「他の前記制御手段により」とある補正事項は、出願当初の明細書の段落[0108]に「第2コントローラ94の実行が停止した場合、…時間制限機能付入力判断命令によって、第1コントローラ92は一定時間、汎用入力ルートの条件成立を監視し、時間内に条件が成立しない場合、異常時の安全措置を記述したサブルーチンに実行を移すことになる。」とある記載に基づくものである。なお、「一の制御手段」は第2コントローラ94に対応し、「他の制御手段」は第1コントローラ92に対応する。
これらの補正事項は、特許請求の範囲を減縮する補正であり、また、これら以外の補正事項は、特許請求の範囲の補正に基づくものであって、出願当初の明細書に対して何ら新規事項を追加するものではない。」(「2.補正の根拠の明示」の欄参照)と主張している。

しかしながら、段落【0098】における上記記載は、第1および第2のコントローラ92、94という複数の制御手段が同期的に運転されることを示しているにすぎず、上記のとおり、第2のコントローラ94が時間制限機能を有する入力判断命令が記述されたプログラムに基づいてY軸アクチュエータ68を制御することについて当初明細書等に何ら記載されていないから、当該記載は、「時間制限機能を有する入力判断命令が記述されたプログラムに基づいて前記各アクチュエータを制御する制御手段」が複数あることを示しているものではない。
また、段落【0108】には、第2コントローラ94(一の制御手段)の実行が停止した場合に、第1コントローラ92(他の制御手段)は汎用入力ルートの条件成立を待ち続け、時間制限機能付入力判断命令によって、第1コントローラ92がエラー処理を行うことが記載されているだけで、第2コントローラ94(一の制御手段)により制御されるY軸アクチュエータ68からの動作状態信号を計時手段によって計測した時間が監視手段により許容時間外であると判定された場合に第1コントローラ92がエラー処理を行うことが記載されているものではない。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。

以上のとおり、補正後の請求項1に記載された「時間制限機能を有する入力判断命令が記述されたプログラムに基づいて前記各アクチュエータを制御する複数の制御手段」及び「一の前記制御手段により制御される前記アクチュエータからの前記動作状態信号を前記計時手段によって計測した時間が前記監視手段により許容時間外であると判定された場合、前記入力判断命令に基づいて他の前記制御手段によりエラー処理を行う」は、当初明細書等に記載した事項ではないから、本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1.本件発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1乃至3に係る発明は、平成15年8月13日付手続補正書により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、第1の1-1に記載したとおりの「アクチュエータコントローラ。」である。

2.引用例記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭55-44680号公報(以下「引用例」という。)には、以下のとおり記載されている。
(イ)「第1図は本発明が適用される一般的な数値制御工作機械システムを示す模式図である。本図において、10は数値制御装置、20は被制御機器としての工作機械である。数値制御装置10(NC)はパンチされた指令テープPTから供給される各種指令およびデータを入力し、また、情報線および信号線束11を介して工作機械20(MT)を制御する。前述した補助機能には各種のものがあるが、1例として主軸モータの回転開始機能および回転停止機能を挙げると、これらの機能は指令テープPT内にMO3およびMO5としてプログラムされており、これら機能に応じて工作機械20内の主軸モータ21(M)を回転または停止させる。」(第2頁左上欄第6〜18行)

(ロ)「接点mo3が動作してリレーRが励磁され、その接点r1,r2,r3,r4,r5,r6が動作し、このうち接点r1はリレーRを自己保持し、接点r2は主軸モータ21を回転せしめる。同時に接点r3によりタイマーT1が動作し、主軸モータ21の回転が十分立上つたのち、その接点t1を動作して、電圧+V3を、接点r5,mo3′および信号線11-3を通して、動作完了信号FINとして数値制御装置10に返送する。このFINを受けて、次のステツプの動作例えば加工物23の加工が行なわれる。ただし、この加工に係る制御系統は図示されていない。」(第2頁左下欄第2〜13行)

(ハ)「第1図に示す如き数値制御工作機械システムにおいて、線路、回路網の故障等により工作機械側における動作指令MFSの受信、もしくは動作指令に応答した制御動作が行なわれないと受信確認信号RECもしくは動作完了信号FINが数値制御装置側に送出されない。したがつて数値制御装置は次ステツプの動作へ移行せず停止状態のままでおり、管理者が異常を発見するまでに時間がかゝる不具合があった。
そこで本発明においては第2図に示す如く警報装置を数値制御装置内に設けて上述のような異常が生じたとき警報信号を発生しうるようにしたものである。
第2図においてCLKは一定周波数の基準パルスを発生するパルス発生器、CTはカウンタ、F1,F2はフリツプフロツプ、Gはゲート、DECは判定回路、AMPは増幅器、ALは警報ランプを夫々示す。
先ずフリツプフロツプF1,F2及びカウンタCTはリセツト信号RSTを与えてリセツト状態にあるものとする。動作指令MFSが与えられるとフリツプフロツプF1はセツトされ、カウンタCTは内容零の状態から基準パルスPを計数開始する。カウンタCTの内容は判定回路DECにおいて監視されており、予め定められた一定値に達するとフリツプフロツプF2がセットされ、警報信号ALSを発生し、増幅器AMPを介して警報ランプALを点灯する。しかし機械側の受信動作、制御動作が正しく行なわれて受信確認信号RECもしくは動作完了信号FINが数値制御装置に送出された場合はフリツプフロツプF1がリセツトされ、カウンタCTは基準パルスPの計数を中止する。再び次の補助機能指令に伴って動作指令MFSが送出されると、カウンタCTはクリヤされ、フリツプフロツプF2はリセツトされかつカウンタCTは基準パルスPの計数を開始する。
したがつて正常状態において動作指令MFSの発生時点から受信確認信号RECもしくは動作完了信号FINが発生するまでの時間に合わせて前記一定値を定めておくことにより、動作指令MFSの発生時点から正規の時間内に信号RECもしくはFINが受信されない場合は警報信号ALSを発生することができる。」(第2頁右下欄第12行〜第3頁右上欄第13行)

上記記載事項及び図面の記載からみて、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
[引用発明]
主軸モータ21の動作制御を行う数値制御装置10において、
前記主軸モータ21からの動作完了信号FINを受信する手段と、
プログラムに基づいて前記主軸モータ21を制御する手段と、
前記動作完了信号FINを受信するまでの基準パルスPの数を計数するカウンタCTと、
正常状態における前記動作完了信号FINを受信するまでの基準パルスPの数に対応する一定値を設定する手段と、
前記カウンタCTによって計数された基準パルスPの数が前記一定値に達したか否かを監視する判定回路DECと、
を備え、前記制御する手段は、前記カウンタCTによって計数された基準パルスPの数が前記判定回路DECにより前記一定値に達したと判定された場合、警報ランプALを点灯する数値制御装置。

3.対比
本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「数値制御装置」は、本件発明における「アクチュエータコントローラ」に相当しており、以下同様に、「動作完了信号を受信する手段」は「所定の動作状態信号を受信する動作状態信号受信手段」に、「主軸モータを制御する手段」は「アクチュエータを制御する制御手段」に、「動作完了信号を受信するまでの基準パルスの数を計数するカウンタと、正常状態における前記動作完了信号を受信するまでの基準パルスの数に対応する一定値を設定する手段と、前記カウンタによって計数された基準パルスの数が前記一定値に達したか否かを監視する判定回路」は「動作状態信号を受信するまでの時間を計測する計時手段と、前記動作状態信号を受信するまでの時間の許容時間を設定する許容時間設定手段と、前記計時手段によって計測された時間が前記許容時間外であるか否かを監視する監視手段」にそれぞれ相当していることが明らかである。
また、引用発明の「警報ランプALを点灯する」は、エラー処理を行うことに限り、補正発明の「入力判断命令に基づくエラー処理を行う」と一致している。
以上のとおりであるので、両者は、
「アクチュエータの動作制御を行うアクチュエータコントローラにおいて、
前記アクチュエータからの所定の動作状態信号を受信する動作状態信号受信手段と、
プログラムに基づいて前記アクチュエータを制御する制御手段と、
前記動作状態信号を受信するまでの時間を計測する計時手段と、
前記動作状態信号を受信するまでの時間の許容時間を設定する許容時間設定手段と、
前記計時手段によって計測された時間が前記許容時間外であるか否かを監視する監視手段と、
を備え、前記制御手段は、前記計時手段によって計測された時間が前記監視手段により許容時間外であると判定された場合、エラー処理を行うアクチュエータコントローラ。」
である点で一致し、次の点で相違している。
[相違点1]
本件発明では、動作制御されるアクチュエータが複数のアクチュエータであり、各アクチュエータからの所定の動作状態信号を受信するものであるのに対し、引用発明では、そのようなものであるか否か明らかでない点。
[相違点2]
本件発明では、プログラムに時間制限機能を有する入力判断命令を記述し、前記入力判断命令に基づくエラー処理を行っているのに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。

4.相違点についての検討
(1)相違点1について
アクチュエータコントローラにより複数のアクチュエータの動作制御を行うことは、例示するまでもなく従来周知の技術手段であるので、引用発明において、アクチュエータコントローラにより複数のアクチュエータの動作制御を行うことに格別の困難性は見当たらず、また、複数のアクチュエータの動作制御を行うに際し、各アクチュエータから所定の動作状態信号を受信することは、必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎない。

(2)相違点2について
引用発明は、動作完了信号FINを受信するまでの基準パルスPの数(時間)が判定回路DECにより一定値に達した(許容時間外)と判定された場合に警報ランプ点灯(エラー処理)を行うものであることから、時間制限機能を有する入力判断を行っているということができるとともに、このような入力判断及び処理をプログラム中に命令として記述して実行させることは周知の技術手段である。
また、エラー発生時にプログラムに基づくエラー処理を行うことも、例えば、特開平2-235106号公報、特開平5-197408号公報等に記載されているように従来周知の技術手段である。
してみると、引用発明に上記周知の技術手段を適用して上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本件発明が奏する作用効果は、引用発明及び上記周知の技術手段から当業者であれば予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。

よって、本件発明は、引用発明及び上記周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明及び周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願の請求項2及び3に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-03 
結審通知日 2005-08-09 
審決日 2005-08-24 
出願番号 特願平6-229919
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05B)
P 1 8・ 561- Z (G05B)
P 1 8・ 575- Z (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木 誠  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 佐々木 正章
豊原 邦雄
発明の名称 アクチュエータコントローラ  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 宮寺 利幸  

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