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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 C08G 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08G |
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管理番号 | 1124276 |
異議申立番号 | 異議2003-73580 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-02-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-25 |
確定日 | 2005-07-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3473640号「樹脂封止型半導体装置及びこれに用いるエポキシ樹脂封止材」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3473640号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1].手続きの経緯 本件特許第3473640号に係る発明は、平成6年8月11日に特許出願され、平成15年9月19日に特許権の設定登録がなされ、その後、滝瀬 洋輔(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成16年11月4日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年1月11日に特許異議意見書と訂正請求書が提出されたものである。 [2].訂正の適否 1.訂正の内容 特許権者が求める訂正の内容は以下のとおりである。 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1及び2の 「下記一般式(III)及び下記一般式(IV)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の硬化促進剤」を 「下記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤」と訂正する。 訂正事項b 段落【0007】の 「下記一般式(III)及び下記一般式(IV)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の硬化促進剤」を 「下記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤」と訂正する。 訂正事項c 段落【0008】の 「前記一般式(III)及び前記一般式(IV)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の硬化促進剤」を 「前記一般式(III)で示される化合物又は前記一般式(III)で示される化合物と前記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤」と訂正する。 訂正事項d 段落【0011】の 「一般式(III)及び一般式(IV)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の硬化促進剤」を 「一般式(III)で示される化合物又は一般式(III)で示される化合物と一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項aは、訂正前の請求項1の「下記一般式(III)及び下記一般式(IV)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の硬化促進剤」との記載に基づいて、硬化促進剤を、一般式(III)で示される化合物を必須とするものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でされたものである。 (2)訂正事項b〜dは、訂正事項aによる特許請求の範囲の訂正に伴い、対応する発明の詳細な説明の項の記載をこの訂正と整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書に記載された範囲内でされたものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項および第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 [3].本件発明 上記の結果、訂正後の本件請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 Siチップ面積が25mm2以上又は一辺の長さが5mm以上で、パッケージの厚さが3mm以下であるエポキシ樹脂封止材で封止された薄型表面実装型の樹脂封止型半導体装置において、エポキシ樹脂封止材として下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂、 (式中RはH又はCH3基を示し、nは0〜3の数を示す。) 下記一般式(II)で示される硬化剤、 (式中mは0〜30の数を示す。) 下記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤、 ポリエチレン系ワックス又はポリエチレン系ワックスとカルナバ若しくはモンタン酸エステル系ワックスからなる離型剤並びに、充填剤として65〜90vol%の溶融シリカを配合したエポキシ樹脂封止材を用いたことを特徴とする樹脂封止型半導体装置。 【請求項2】 薄型表面実装型の樹脂封止型半導体装置に用いられ、下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂、 (式中RはH又はCH3基を示し、nは0〜3の数を示す。) 下記一般式(II)で示される硬化剤、 (式中mは0〜30の数を示す。) 下記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤、 ポリエチレン系ワックス又はポリエチレン系ワックスとカルナバ若しくはモンタン酸エステル系ワックスからなる離型剤並びに、充填剤として65〜90vol%の溶融シリカを配合したことを特徴とするエポキシ樹脂封止材。」 [4]. 特許異議の申立てについての判断 [4-1].特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、甲第1〜7号証及び参考資料1、2を提出して、概略、次の理由により訂正前の本件請求項1及び2に係る特許は取り消されるべきである旨、主張する。 (1)訂正前の本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。 (2)訂正前の本件請求項1及び2に係る発明は、本件の出願の日前の特許出願であって本件の出願後に出願公開された特願平5-109033号(特開平6-36220号公報(甲第7号証)参照。:以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、先願明細書に記載された発明の発明者と訂正前の本件の請求項1及び2に係る発明の発明者とが同一の者ではなく、また、本件の出願の時に先願の出願人と本件の出願人とが同一の者でもない。 [4-2].取消理由通知の概要 当審において平成16年11月4日付けで通知した取消理由は、特許異議申立人の申し立てた上記の理由(1)及び(2)と同旨であり、引用した刊行物等は以下のとおりである。 <刊行物等> 刊行物1:特開平4-325517号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証) 刊行物2:特開昭60-18521号公報(同甲第2号証) 刊行物3:特開平6-16905号公報(同甲第3号証) 刊行物4:特開平6-16904号公報(同甲第4号証) 刊行物5:特開平5-3270号公報(同甲第5号証) 刊行物6:特開平5-152465号公報(同甲第6号証) 先願明細書:特願平5-109033号の願書に最初に添付した明細書又は図面(特開平6-36220号公報(同甲第7号証)参照。) 参考資料1:尾崎 敏範、石川 雄一”樹脂封止半導体の耐湿性試験方法”Zairyo-to-Kankyo,Vol.40,No.1,p.57-65(1991)(同参考資料1) 参考資料2:特開平6-69259号公報(同参考資料2) <刊行物等の記載事項> 刊行物1 (1-1)「エポキシ樹脂(A)、フェノール系硬化剤(B)、溶融シリカ(C)とを必須成分として含有してなる樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が式(I) (ただし、R1 〜R8 は水素原子、C1 〜C4 の低級アルキル基またはハロゲン原子から選ばれ、すべてが同一である必要はない。)で表されるエポキシ樹脂 (a1 )、および、式(II)-省略-で表されるエポキシ樹脂(a2 )の、少なくとも一方を必須成分として含有し、前記フェノール系硬化剤(B)が式(III) (ただし、Rは水素原子、C1 〜C4 の低級アルキル基またはハロゲン原子から選ばれ、すべてが同一である必要はない。また、nは0以上の整数を示す。)で表されるフェノール系化合物(b)を必須成分として含有するとともに、前記溶融シリカ(C)が平均粒径10μm以下の破砕状溶融シリカ97〜60重量%と平均粒径4μm以下の球状溶融シリカ3〜40重量%からなり、球状溶融シリカの平均粒径が破砕状溶融シリカの平均粒径より小さく、かつ溶融シリカ(C)を含む無機充填材の割合が全体の75〜90重量%であるエポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲) (1-2)「本発明の目的は、かかる半田付け工程で生じるパッケージクラックの問題を解消する、すなわち半田耐熱性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。」(段落【0008】) (1-3)「また、本発明においてエポキシ樹脂(A)とフェノール系硬化剤(B)の硬化反応を促進するため硬化触媒を用いてもよい。硬化触媒は硬化反応を促進するものならば特に限定されず、たとえば・・・トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p-メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレートなどの有機ホスフィン化合物があげられる。なかでも耐湿性の点から、有機ホスフィン化合物が好ましく、・・・」(段落【0039】) (1-4)「本発明のエポキシ樹脂組成物には・・・長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の金属塩、長鎖脂肪酸のエステル、パラフィンワックス、変性シリコーンオイルなどの離型剤を任意に添加することができる。」(段落【0048】) (1-5)「本発明のエポキシ樹脂組成物は、特定のエポキシ樹脂、特定の硬化剤と特定の粒径、形状の組み合わせからなる溶融シリカとを使用したことによって半導体封止用として優れた半田耐熱性を有する。」(段落【0063】) 刊行物2 (2-1)「(1)架橋剤を含むエポキシ樹脂を主成分とし、硬化促進剤として有機ホスフイン・有機ボロンコンプレツクスを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。 (2)コンプレツクスがトリフエニルホスフイン・トリフエニルボロン,トリブチルホスフイン・トリフエニルボロン,トリシクロヘキシルホスフイン・トリフエニルボロンからなる群の中から選ばれた少なくとも1種である特許請求の範囲第1項記載のエポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1及び2) (2-2)「この発明は、半導体素子等の電子部品の封止用あるいは、積層板製造用に適したエポキシ樹脂組成物に関する。」(第1頁右欄第2〜4行) (2-3)「この発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤として前記のような有機ホスフイン・有機ボロンコンプレツクスが配合されているので、耐湿信頼性(耐Al腐食),電気特性,潜在硬化性のいずれもが優れているのである。」(第2頁左下欄第3〜7行) 刊行物3 (3-1)「ポリオレフィン系ワックスを含有したことを特徴とする封止用エポキシ樹脂成形材料。」(特許請求の範囲の請求項1) (3-2)「本発明は電気部品、電子部品、半導体素子等を封止するための、封止用エポキシ樹脂成形材料に関するものである。」(段落【0001】) (3-3)「離型剤としてはポリオレフィン系ワックスを用いることが必要で、酸価10以上の酸化ポリエチレンワックスであることが好ましい。」(段落【0005】) (3-4)実施例1として、エポキシ樹脂:130,フェノールノボラック:50,トリフェニルホスフィン:2,酸化ポリエチレンワックス:1,カーボンブラック:1.5,カップリング剤:5及び溶融シリカ:750を配合した組成物が記載されている。(段落【0008】表1) 刊行物4 (4-1)「ポリオレフィン系ワックスと他のワックスとを含有したことを特徴とする封止用エポキシ樹脂成形材料。」(特許請求の範囲の請求項1) (4-2)「本発明は電気部品、電子部品、半導体素子等を封止するための、封止用エポキシ樹脂成形材料に関するものである。」(段落【0001】) (4-3)「離型剤としてはポリオレフィン系ワックスを用いることが必要で、酸価10以上の酸化ポリエチレンワックスであることが好ましい。併用する他のワックスとしてはモンタン酸系ワックス、カルナバワックス等を併用することが望ましい。」(段落【0005】) (4-4)実施例1として、エポキシ樹脂:130,フェノールノボラック:50,トリフェニルホスフィン:2,酸化ポリエチレンワックス:1,カルナバワックス:9,カーボンブラック:1.5,カップリング剤:5及び溶融シリカ:750を配合した組成物が記載されている。(段落【0008】表1) 刊行物5 (5-1)「エポキシ樹脂を主剤とし、フェノール樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物において、分子構造中にグリシジルエーテル基を2個有するエポキシ樹脂を、全エポキシ樹脂に対してエポキシ当量換算で50%以上の割合で含むとともに、分子構造中にフェノール性水酸基を2個有するフェノール樹脂を、全フェノール樹脂に対して水酸基当量換算で50%以上の割合で含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1) (5-2)「このような事情に鑑み、この発明は、上述の半田付け工程時等、高温にさらされた時にクラックが発生しにくく、これにより、表面実装方式の樹脂封止半導体装置の製品化を可能にする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。」(段落【0006】) (5-3)実施例4には、2官能エポキシ樹脂:(a)85/100(当量/全エポキシ当量),その他のエポキシ樹脂:(b)15/100(当量/全エポキシ当量),2官能フェノール樹脂:(a)65/100(当量/全水酸基当量),その他のフェノール樹脂:(b)20/100(当量/全水酸基当量),その他のフェノール樹脂:(c)15/100(当量/全水酸基当量),硬化促進剤:0.2(重量部),離型剤:(a)0.05(重量部),離型剤:(b)0.2(重量部),着色剤:0.25(重量部),無機充填材:82(重量部),カップリング剤(a):0.2(重量部)及びカップリング剤(b):0.2(重量部)からなる組成物が記載されている。(段落【0021】表1) (5-4)「なお、表1および2中、各原材料の詳細は、以下の通りであった。2官能エポキシ樹脂(a):下記構造式化1で示され、エポキシ当量190、融点105℃のビフェニル型エポキシ樹脂「YX4000H」(油化シェルエポキシ(株)製)。 【化1】 」(段落【0023】〜【0024】) (5-5)「その他のフェノール樹脂(c):下記構造式化7で示され、水酸基当量182、融点85℃のp-キシレン・フェノール重合体「ミレックスXL-225L」(三井東圧化学(株)製)。 【化7】 硬化促進剤:2-エチル-4-メチルイミダゾール。 離型剤(a):酸化ポリエチレン。 離型剤(b):モンタン酸系。 着色剤:カーボンブラック。 無機充填材:シリカ微粉末。」(段落【0035】〜【0037】) (5-6)「この発明にかかる半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、低吸湿性であるとともに加熱時低応力であるため、耐熱性に優れ、半田付け工程時等、高温にさらされた時にクラックが発生しにくい。これにより、表面実装方式の樹脂封止半導体装置の製品化を可能にすることができ、その工業的価値は大きい。」(段落【0044】) 刊行物6 (6-1)「【請求項1】(A)熱硬化性樹脂、(B)無機充填剤および(C)離型剤を含む樹脂組成物であって、前記離型剤の一部を前熱記硬化性樹脂、無機充填剤と溶融混合させた組成物に、残部の離型剤が添加されて成ることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。 【請求項2】前記熱硬化性樹脂が硬化剤、硬化促進剤を含むエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。 【請求項3】前記離型剤がポリオレフィンワックスまたは/およびモンタンワックスをベースとするワックスを含む離型剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物。」(特許請求の範囲) (6-2)「こうした樹脂封止半導体装置の分野においては、半導体素子の高集積化に伴って、半導体素子の各種機能単位の微細化、半導体チップ自体の大型化が急速に進んでいる。さらに半導体装置は小型、薄型化の傾向にある。また、実装面においても自動化、薄型化の点で有利な表面実装型の半導体装置の要求が高い。」(段落【0002】) (6-3)「該無機充填剤としては、アルミナ、窒化ホウ素、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等の粉末を用いるのがよい。該無機充填剤の配合量は目的とする半導体装置によって異なるが、通常50〜85体積%が用いられる。」(段落【0014】) (6-4)「また、(C)成分の離型剤としてはエステル系ワックス、炭化水素系ワックス、脂肪酸系ワックス、脂肪酸アミド系ワックス等が挙げられる。耐湿性の点から、カルナバワックス、モンタンワックスなどのエステル系ワックスが好ましく、その他にステアリン酸、パルチミン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の長鎖のカルボン酸およびこれらの金属塩、低分子量ポリエチレンワックス等が挙げられる。これらのワックスは2種以上併用しても、あるいは予備反応させたものであってもよい。」(段落【0015】) (6-5)「〔実施例2〕エポキシ樹脂として2官能のビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂90g、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂45g、無機充填剤として溶融シリカ610g、その他は実施例1と同じ組成とし、同様にして半導体封止用樹脂組成物を作成した。(段落【0023】) 先願明細書 (先-1)「 (a)一般式〔1〕 (式中、Rは水素原子またはメチル基を示し互いに異なっていてもよい、nは0〜2の整数を示す。)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、 (b)一般式〔2〕 (式中、mは1〜10の整数を示す。)で表される硬化剤、 (c)一般式〔3〕 (式中、R1〜R6はフェニル基,ブチル基,シクロヘキサン環を示し互いに異なっていてもよい。)で表される硬化促進剤と、 (d)組成物の全体に対して50〜90容量%の無機充填剤、 を含むエポキシ樹脂組成物で封止されていることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。」(特許請求の範囲の請求項1) (先-2)「・・・半導体装置は、実装の高密度化が強く要望され、最近では高密度実装に適した表面実装型半導体装置が主流になりつゝある。しかも、パッケージは年々小型薄型化の趨勢にある。それに伴い樹脂封止層は著しく薄肉化している。 特に、・・・厚さが1mm前後の薄型表面実装型パッケージの需要が増大しており、また、厚さが0.5mm以下の超薄型表面実装型パッケージの開発も進められている。・・・薄肉の表面実装型の樹脂封止型半導体装置には耐はんだリフロー性(はんだリフロー時のパッケージの耐クラック性)の向上が強く望まれている。」(段落【0003】〜【0006】) (先-3)「本発明の目的は、こうした状況に鑑み、ボイド等の内部欠陥が少なく、耐はんだリフロー性および前記電極と金ワイヤとの接続信頼性の優れたエポキシ系樹脂組成物で封止された樹脂封止型半導体装置を安定的に提供することにある。」(段落【0010】) (先-4)「前記一般式〔3〕で表される硬化促進剤は、有機ホスフィン系化合物の有機ボロン塩である。具体的にはトリフェニルホスフィン・トリフェニルボロン、トリブチルホスフィン・トリフェニルボロン、トリシクロヘキシルホスフィン・トリフェニルボロン等がある。」(段落【0021】) (先-5)「無機充填剤としては溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ等の微粉末を用いることができる。」(段落【0024】) (先-6)「更に、カルナバワックス、モンタン酸系ワックス、ポリアルキレン系ワックス等公知の化合物を離型剤として用いてもよい。」(段落【0028】) (先-7)実施例1には、ビフェニル型エポキシ樹脂:85,臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂:15,フェノールアラルキル樹脂:85,硬化促進剤 TPP-TPB(註:トリフェニルホスフィン・トリフェニルボロン):5,三酸化アンチモン:15,溶融シリカ(容量%):74,ポリジメチルシロキサン:10,エポキシシラン:10,モンタン酸エステル:2及びカーボンブラック:2からなる樹脂組成物が記載されている。(段落【0047】表1) (先-8)「次に、表面にアルミニウムのジクザク配線を形成したシリコンチップ(6mm×6mm)を42アロイ系のリードフレームに搭載し、更に,チップ表面のアルミニウム電極とリードフレーム間を金線(30μmφ)でワイヤボンディングした後、全体を表1の実施例4,5及び比較例1〜3の材料を用いて前記の条件で封止し、180℃で5時間の後硬化を行い、表面実装型のQFP-IHを作成した。各半導体装置の耐はんだリフロー性、耐湿信頼性、高温放置信頼性試験を行った。」(段落【0053】) (先-9)「本発明の樹脂封止型半導体装置は、耐はんだリフロー性、耐湿信頼性並びに高温放置信頼性に優れ、特に、金ワイヤとアルミニウム電極接合部の高温における接続信頼性が優れており、実装の高密度化を図ることができる。」(段落【0060】) [4-3].特許法第29条第2項違反について (1)本件発明2 本件発明2と刊行物1に記載された発明とを対比する。 刊行物1には、エポキシ樹脂(A)、フェノール系硬化剤(B)、溶融シリカ(C)とを必須成分として含有してなる樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が式(I) (ただし、R1 〜R8 は水素原子、C1 〜C4 の低級アルキル基またはハロゲン原子から選ばれ、すべてが同一である必要はない。)で表されるエポキシ樹脂 (a1 )を必須成分として含有し、前記フェノール系硬化剤(B)が式(III) (ただし、Rは水素原子、C1 〜C4 の低級アルキル基またはハロゲン原子から選ばれ、すべてが同一である必要はない。また、nは0以上の整数を示す。)で表されるフェノール系化合物(b)を必須成分として含有するとともに、溶融シリカ(C)を含む無機充填材の割合が全体の75〜90重量%であるエポキシ樹脂組成物(摘示記載(1-1))が記載されており、この樹脂組成物が半田耐熱性に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であること(摘示記載(1-2))、硬化反応を促進するため硬化触媒を用いてもよく、硬化触媒としてトリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート等が挙げられること(摘示記載(1-3))及び長鎖脂肪酸のエステル、パラフィンワックス等の離型剤を任意に添加し得ること(摘示記載(1-4))が記載されている。 刊行物1に記載された式(I)及び(III)と本件発明2における一般式(I)及び(II)とを対比すると、刊行物1に記載された「式(I)で表されるエポキシ樹脂(a1 )」及び「式(III)で表されるフェノール系化合物(b)」は、それぞれ、本件発明2における「一般式(I)で示されるエポキシ樹脂」及び「一般式(II)で示される硬化剤」に相当するものであり、刊行物1に硬化触媒として記載された「トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート」は本件発明2における「一般式(IV)で示される化合物」に該当するものである。 そうすると、本件発明2と刊行物1に記載された発明とは、本件発明2に即してみれば、ともに、 「樹脂封止型半導体装置に用いられ、下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂、 (式中RはH又はCH3基を示し、nは0〜3の数を示す。) 下記一般式(II)で示される硬化剤、 (式中mは0〜30の数を示す。) 硬化促進剤、離型剤並びに、充填剤として溶融シリカを配合したエポキシ樹脂封止材」 である点で一致しており、エポキシ樹脂封止材に対する溶融シリカの配合量範囲についても重複しているが、これらの発明の間には次の点で相違が認められる。 (あ)本件発明2が「薄型表面実装型の」樹脂封止型半導体装置に用いられるものであるのに対して、刊行物1にはこのような半導体装置にエポキシ樹脂組成物を適用することについて記載されていない点、 (い)本件発明2においては硬化促進剤が「下記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物 」からなるのに対して、刊行物1に記載された発明においては、この一般式(IV)で示される化合物を硬化触媒(硬化促進剤)とする点、及び、 (う)本件発明2においては離型剤が「ポリエチレン系ワックス又はポリエチレン系ワックスとカルナバ若しくはモンタン酸エステル系ワックスからなる」ものであるのに対して、刊行物1には長鎖脂肪酸のエステル、パラフィンワックス等を離型剤として用いることが記載されているにとどまる点 そこで、これらの相違点の内、まず(い)の点について以下に検討する。 刊行物1には、本件発明2における一般式(IV)で示される化合物を硬化触媒(硬化促進剤)として用いることは記載されているものの、これと本件発明2における一般式(III)で示される化合物を併用すること、更には、一般式(III)で示される化合物を硬化促進剤として単独使用することについては、記載も示唆もされていない。 また、刊行物2〜6のいずれにも、エポキシ樹脂組成物において硬化促進剤として一般式(III)で示される化合物を用いることは開示されていない。 そして、本件発明2はこの点により、半田付け時のパッケージのフクレやクラックが発生することなく、外観にボイドが発生せず、耐湿信頼性に優れているという、本件訂正明細書に記載された顕著な作用効果を生ずるものと認められる。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)本件発明1 本件発明1は、本件発明2に係るエポキシ樹脂封止剤を用いた樹脂封止型半導体装置の発明であるが、上記のように、前提となる本件発明2が刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1もまた本件発明2と同様の理由により、刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 [4-4].特許法第29条の2違反について (1)本件発明1 本件発明1と先願明細書に記載された発明とを対比する。 先願明細書には、その特許請求の範囲の請求項1に、(a)一般式〔1〕 (式中、Rは水素原子またはメチル基を示し互いに異なっていてもよい、nは0〜2の整数を示す。)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂、(b)一般式〔2〕 (式中、mは1〜10の整数を示す。)で表される硬化剤、(c)一般式〔3〕 (式中、R1〜R6はフェニル基,ブチル基,シクロヘキサン環を示し互いに異なっていてもよい。)で表される硬化促進剤と、(d)組成物の全体に対して50〜90容量%の無機充填剤、を含むエポキシ樹脂組成物で封止されている樹脂封止型半導体装置(摘示記載(先-1))の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されており、また、薄肉の表面実装型の樹脂封止型半導体装置には耐はんだリフロー性(はんだリフロー時のパッケージの耐クラック性)の向上が強く望まれていたこと(摘示記載(先-2))、先願発明が、ボイド等の内部欠陥が少なく、耐はんだリフロー性および前記電極と金ワイヤとの接続信頼性の優れたエポキシ系樹脂組成物で封止された樹脂封止型半導体装置を安定的に提供すること(摘示記載(先-3))を目的とすること、無機充填剤としては溶融シリカ等の微粉末を用い得ること(摘示記載(先-5))及びカルナバワックス、モンタン酸系ワックス、ポリアルキレン系ワックス等の化合物を離型剤として用いてもよいこと(摘示記載(先-6))が記載され、更に、表面にアルミニウムのジクザク配線を形成した6mm×6mmのシリコンチップを樹脂封止した実施例(摘示記載(先-8))が示されている。 これらの記載からみて、先願発明は、一辺の長さが5mm以上であるSiチップがエポキシ樹脂封止材で封止された表面実装型の樹脂封止型半導体装置に係るものということができ、先願発明における「一般式〔1〕で表されるビフェニル型エポキシ樹脂」、「一般式〔2〕で表される硬化剤」及び「一般式〔3〕で表される硬化促進剤」は、その構造式からみて、それぞれ本件発明1における「一般式(I)で示されるエポキシ樹脂」、「一般式(II)で示される硬化剤」及び「一般式(IV)で示される化合物」に相当するものである。 そうすると、本件発明1と先願発明とは、本件発明1に即してみれば、ともに、 「Siチップ(一辺の長さが5mm以上)がエポキシ樹脂封止材で封止された表面実装型の樹脂封止型半導体装置において、エポキシ樹脂封止材として下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂、 (式中RはH又はCH3基を示し、nは0〜3の数を示す。) 下記一般式(II)で示される硬化剤、 (式中mは0〜30の数を示す。)硬化促進剤、離型剤並びに、充填剤として溶融シリカを配合したエポキシ樹脂封止材を用いた樹脂封止型半導体装置」 である点で一致しており、エポキシ樹脂封止材に対する溶融シリカの配合量範囲についても重複しているが、これらの発明の間には以下の点で相違が認められる。 (え)本件発明1が、「パッケージの厚さが3mm以下である・・・薄型」表面実装型の樹脂封止型半導体装置としているのに対して、先願発明ではパッケージの厚さについてこのような限定をしていない点、 (お)本件発明1においては、「下記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤」を用いるのに対して、先願発明においては、この一般式(IV)で示される化合物を硬化促進剤とする点、及び、 (か)本件発明1においては離型剤が「ポリエチレン系ワックス又はポリエチレン系ワックスとカルナバ若しくはモンタン酸エステル系ワックスからなる」ものであるのに対して、先願発明では、このようなポリエチレン系ワックス等を離型剤として用いることが規定されていない点 そこで、これらの相違点の内、まず(お)の点について以下に検討する。 先願発明は、本件発明1における一般式(IV)で示される化合物を硬化促進剤として用いるものであるが、一般式(IV)で示される化合物と一般式(III)で示される化合物とを併用すること、更には、一般式(III)で示される化合物を硬化促進剤として単独使用することについては記載されていない。 そして、本件発明1はこの点により、半田付け時のパッケージのフクレやクラックが発生することなく、外観にボイドが発生せず、耐湿信頼性に優れているという、本件訂正明細書に記載された顕著な作用効果を生ずるものであるから、この点には充分な技術的意味が認められる。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、先願明細書に記載された発明と同一ではない。 (2)本件発明2 本件発明2は、本件発明1の樹脂封止型半導体装置の発明の主要部であるエポキシ樹脂封止剤自体の発明であるが、上記のように、エポキシ樹脂封止剤の組成の相違により本件発明1が先願明細書に記載された発明と同一ではない以上、本件発明2もまた本件発明1と同様の理由により、先願明細書に記載された発明と同一ではない。 [5].むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 樹脂封止型半導体装置及びこれに用いるエポキシ樹脂封止材 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】Siチップ面積が25mm2以上又は一辺の長さが5mm以上で、パッケージの厚さが3mm以下であるエポキシ樹脂封止材で封止された薄型表面実装型の樹脂封止型半導体装置において、エポキシ樹脂封止材として下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂、 【化1】 (式中RはH又はCH3基を示し、nは0〜3の数を示す。) 下記一般式(II)で示される硬化剤、 【化2】 (式中mは0〜30の数を示す。) 下記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤、 【化3】 ポリエチレン系ワックス又はポリエチレン系ワックスとカルナバ若しくはモンタン酸エステル系ワックスからなる離型剤並びに、 充填剤として65〜90vol%の溶融シリカを配合したエポキシ樹脂封止材を用いたことを特徴とする樹脂封止型半導体装置。 【請求項2】薄型表面実装型の樹脂封止型半導体装置に用いられ、下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂、 【化4】 (式中RはH又はCH3基を示し、nは0〜3の数を示す。) 下記一般式(II)で示される硬化剤、 【化5】 (式中mは0〜30の数を示す。) 下記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤、 【化6】 ポリエチレン系ワックス又はポリエチレン系ワックスとカルナバ若しくはモンタン酸エステル系ワックスからなる離型剤並びに、 充填剤として65〜90vol%の溶融シリカを配合したことを特徴とするエポキシ樹脂封止材。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、大型Siチップ、薄型パッケージの表面実装型の樹脂封止型半導体装置及びこれに用いられるエポキシ樹脂封止材に関する。 【0002】 【従来の技術】 IC、LSI等の半導体素子は素子の集積度の向上と共に、素子サイズの大型化、樹脂封止型半導体装置の小型化、薄型化が進んでいる。同時に半導体装置の基板への取付けを行うときに、半導体装置自体が短時間のうちに200℃以上の高温にさらされるようになってきた。このとき、樹脂封止材中に含有される水分が気化し、ここで発生する蒸気圧が樹脂と素子、リードフレーム等のインサートとの界面において、剥離応力として働き、樹脂とインサートの間で剥離が発生し、特に薄型の樹脂封止型半導体装置においては、半導体装置のフクレやクラックに至ってしまうことになる。この対策として、樹脂封止材の吸湿量を少なくするため、充填材として結晶シリカ、溶融シリカ又はこれらの混合物を従来50〜60vol%含有させていたのを、充填材として溶融シリカのみを使用し、含有量を65〜90vol%とした樹脂封止材で封止したり、更にインサートとの密着力を向上させるため、エポキシ樹脂を通常用いられるo-クレゾールノボラック型に代えて、後述の一般式(I)で示されるようなエポキシ樹脂を使用あるいは併用した樹脂封止材で封止したり、硬化材を通常用いられるフェノールノボラック樹脂に代えて後述の一般式(II)で示されるようなアラルキル型フェノール樹脂を使用あるいは併用した樹脂封止材で封止することが行われている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 先に示した樹脂封止材で封止した薄型の樹脂封止型半導体装置は、半田付け時のフクレやクラックは発生しなくなるが、離型性及び保存安定性が悪いため連続成形性が困難であったり、樹脂封止型半導体装置の外観にボイドが発生し、耐湿信頼性に劣るという問題がある。 【0004】 本発明は、特に薄型表面実装型の樹脂封止型半導体装置において、半田付け時のフクレやクラックが発生せず、耐湿信頼性に優れた樹脂封止型半導体装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 すなわち、本発明はSiチップ面積が25mm2以上又は一辺の長さが5mm以上で、パッケージの厚さが3mm以下であるエポキシ樹脂封止材で封止された薄型表面実装型の樹脂封止型半導体装置において、エポキシ樹脂封止材として下記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂、 【0006】 【化7】 (式中RはH又はCH3基を示し、nは0〜3の数を示す。) 下記一般式(II)で示される硬化剤、 【0007】 【化8】 (式中mは0〜30の数を示す。) 下記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤、 【0008】 【化9】 ポリエチレン系ワックス又はポリエチレン系ワックスとカルナバ若しくはモンタン酸エステル系ワックスからなる離型剤並びに 充填剤として65〜90vol%の溶融シリカを配合したエポキシ樹脂封止材を用いたことを特徴とする樹脂封止型半導体装置を提供するものである。 また、本発明は、薄型表面実装型の樹脂封止型半導体装置に用いられ、前記一般式(I)で示されるエポキシ樹脂、 前記一般式(II)で示される硬化剤、 前記一般式(III)で示される化合物又は下記一般式(III)で示される化合物と下記一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤、 ポリエチレン系ワックス又はポリエチレン系ワックスとカルナバ若しくはモンタン酸エステル系ワックスからなる離型剤並びに、 充填剤として65〜90vol%の溶融シリカを配合したことを特徴とするエポキシ樹脂封止材を提供するものである。 【0009】 本発明のエポキシ樹脂封止材中の前記エポキシ樹脂の配合割合は70〜100重量%とすることが好ましい。また、エポキシ封止材中のエポキシ樹脂に対する硬化剤の好ましい配合割合は、エポキシ樹脂のエポキシ当量/硬化剤のOH当量=0.8〜1.2の範囲である。 【0010】 本発明においては、離型剤を従来使用していたカルナバ、モンタン酸エステル系ワックスに代えて、ポリエチレン系ワックス単独で又はポリエチレン系ワックスとカルナバ、モンタン酸エステル系ワックス等を併用することにより、離型性を改良し、連続成形性を容易にした。本発明において前記離型剤の好ましい配合割合はエポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部である。 【0011】 また、樹脂封止材の保存安定性が悪いと、流動性が劣化し、連続成形性が困難になる。そこで、本発明においては、硬化促進剤を従来使用していたトリフェニルホスフィン、イミダゾール等から潜在性のある(活性化エネルギーに変曲点がある。低温で反応が遅く、高温で反応が早い。)硬化促進剤、すなわち、一般式(III)で示される化合物又は一般式(III)で示される化合物と一般式(IV)で示される化合物からなる硬化促進剤を使用することにより保存安定性を改良した。 【0012】 更に樹脂封止型半導体装置の外観にボイドが発生する原因は、従来使用していた硬化促進剤のトリフェニルホスフィン、イミダゾール等が、金型(170〜180℃)で成形する際、酸化され、触媒作用がなくなった部分が未硬化状態になり、ボイドとして樹脂封止型半導体装置の外観に発生するものと考えられる。そこで、本発明においては、酸化されにくい上記硬化促進剤を使用することにより、ボイドの発生がなく、耐湿信頼性に優れた樹脂封止型半導体装置を得られるようにした。 【0013】 硬化促進剤の配合割合は好ましくはエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部である。 【0014】 本発明において使用されるエポキシ樹脂封止材にはその他の添加剤としてカーボンブラック等の着色剤、シランカップリング剤及び難燃剤等を配合することが出来る。 【0015】 【作用】 前記したエポキシ樹脂封止材を用いて封止した樹脂封止型半導体装置は、樹脂封止材中に含有する水分が少なく、更にインサートとの密着力が高くなり、半田付け時のフクレやクラックが発生することなくまた、離型性、保存安定性に優れているため連続成形性が容易であり、樹脂封止型半導体装置の外観にボイドが発生せず、耐湿信頼性に優れた樹脂封止型半導体装置を提供することが出来る。 【0016】 【実施例】 以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0017】 実施例1 まず、表1に示す各種の素材を予備混合(ドライブレンド)した後、二軸ロール(ロール表面温度約80℃)で10分間混練し、冷却粉砕してエポキシ樹脂封止材を製造した。 【0018】 このエポキシ樹脂封止材を用い、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力70kgf/cm2、硬化時間90secの条件で成形した。スパイラルフロー(SF)は、EMMI1-66に準じて測定した。また、保存安定性は、エポキシ樹脂封止材(通常5℃以下で保管する。)を常温戻し後(室温/24h)、室温にて保管し、SFの10%劣化(90%保持)時間を測定した。離型性(連続成形性)は、エムテックスマツムラ(株)製のオートモールド成形機ATOM-100PF(型締圧、50トン、PKG:SOP20P、L/F:Cu)を用いて、同様の条件で成形し、連続成形性(連続して成形しているうちに、離型性の悪いものはパッケージが金型の上型にハリツキを起こしたり、カルの部分が分離したりする)を測定した。 【0019】 更に、エポキシ樹脂封止材を用いて、半導体素子をトランスファー成形機で同様の条件で成形し、後硬化(175℃/6h)後パッケージの外観ボイド(実体顕微鏡を用いて観察した。また、0.1mm以上のボイドを測定した。)、半田付け時のパッケージクラック性とその後の耐湿信頼性を測定した。ボイド、半田付時のパッケージクラック性、耐湿信頼性に用いた半導体装置は、QFP82Pの樹脂封止型半導体装置(外形寸法20×14×2.0mm)であり、リードフレームは42alloyで8×10mmのチップサイズを有するものである。(チップのデザインはAl15μm幅、ギャップ5μm、パッシベーションなし)。このようにして得られた樹脂封止型半導体装置について、ボイドの観察及び125℃/24hベーキング後、85℃/85%RHで所定の時間吸湿させた後、215℃/90secの処理を行ったときの樹脂封止型半導体装置のクラック発生率を求めた。クラックが発生しなかったパッケージについて、耐湿信頼性試験を行った。耐湿信頼性はPCT(121℃、2atm)中に1000h放置後に導通試験を行い、Al配線の腐食による断線を測定した。上記の各試験結果をまとめて表2に示す。 【0020】 【表1】 注)*1 本文中の式(I)で示されるエポキシ樹脂(R=CH3基n=1) *2 本文中の式(II)で示される硬化剤(m=3) *3 本文中の式(III)で示される硬化促進剤 *4 本文中の式(IV)で示される硬化促進剤 【0021】 【表2】 【0022】 *1 離型性(連続成形性) エムテックスマツムラ製オートモールド成形機、ATOM-100PF(型締圧50トン)、PKG:SOP20P、L/F:Cu、チップなし、成形条件、180℃/90sec。連続して成形しているうちに、パッケージが金型の上型にハリツキをおこしたり、カルの部分が分離したショット数を測定した。 【0023】 * 2 ボイド 半導体素子をトランスファー成形機で、180℃/90secの条件で成形し、175℃/6h後硬化後PKGの外観ボイドを測定した(実体顕微鏡を用いて、0.1mm以上のボイドを測定した)。PKG:QFP82P、(外形寸法20×14×2.0mm)、L/F:42alloy、チップサイズ8×10mm(Al15μm幅、ギャップ5μm、パッシベーションなし)、Au線25μm、 【0024】 * 3 半田付け時のクラック 外観ボイドを測定した後、125℃/24hベーキング後85℃/85%RH48h吸湿させた後、215℃/90sec処理したもの。 【0025】 *4 耐湿信頼性 半田付けのクラックテストを行った後パッケージクラックのないものについて、耐湿信頼性試験、PCT1000h(121℃/2atm)を行った後、導通試験を行い、Al配線の腐食による断線を測定した。 【0026】 【発明の効果】 本発明のSiチップの表面が25mm2以上又は一辺の長さが5mm以上、パッケージの厚さが3mm以下の薄型表面実装型の樹脂封止型半導体装置は、半田付け時のパッケージのフクレやクラックが発生することなく、また、離型性、保存安定性が優れているため連続成形性が容易であり、樹脂封止型半導体装置の外観にボイドが発生せず、耐湿信頼性に優れた特性を有している。 また、本発明のエポキシ樹脂封止材は、上記の樹脂封止型半導体装置の製造に、封止材として好適に用いられる。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-06-27 |
出願番号 | 特願平6-189686 |
審決分類 |
P
1
651・
161-
YA
(C08G)
P 1 651・ 121- YA (C08G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小林 均 |
特許庁審判長 |
井出 隆一 |
特許庁審判官 |
大熊 幸治 藤原 浩子 |
登録日 | 2003-09-19 |
登録番号 | 特許第3473640号(P3473640) |
権利者 | 日立化成工業株式会社 |
発明の名称 | 樹脂封止型半導体装置及びこれに用いるエポキシ樹脂封止材 |
代理人 | 穂高 哲夫 |
代理人 | 穂高 哲夫 |