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審決分類 |
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 C08F 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08F 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 C08F |
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管理番号 | 1124279 |
異議申立番号 | 異議2003-73241 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-10-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-24 |
確定日 | 2005-08-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3437636号「プロピレン系ブロック共重合体」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3437636号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 特許第3437636号の請求項1ないし3に係る発明は、平成6年4月18日に特許出願され、平成15年6月6日に特許権の設定がなされ、その後、特許異議申立人 加藤 達也(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成16年11月18日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年1月31日に特許異議意見書と訂正請求書が提出され、平成17年7月11日付けで再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年7月19日に訂正請求書及び上申書が提出されるとともに、先の訂正請求が取り下げられたものである。 2.訂正の適否 2-1.訂正の内容 全文訂正明細書の記載からみて、特許権者が求める訂正の内容は次のとおりのものと認められる。 訂正事項a 請求項1の 「[A]23℃n-デカン不溶成分:40〜85重量%と、[B]23℃n-デカン可溶成分:15〜60重量%とからなり、該[A]23℃ n-デカン不溶成分は、(1)プロピレンから誘導される構成単位を85〜100モル%の量で、プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を0〜15モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が0.1〜20dl/gであり、(3)その60℃ n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上であり、かつ[B]23℃n-デカン可溶成分は、(1)エチレンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で、炭素数3〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が5〜15dl/gであることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体。」を 「[A]23℃n-デカン不溶成分:40〜85重量%と、[B]23℃n-デカン可溶成分:15〜60重量%とからなり、該[A]23℃ n-デカン不溶成分は、(1)プロピレンから誘導される構成単位を85〜100モル%の量で、プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を0〜15モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が0.1〜20dl/gであり、(3)その60℃ n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上であり、(4)230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜150g/10分であり、かつ[B]23℃n-デカン可溶成分は、(1)エチレンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で、炭素数3〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が5〜15dl/gである共重合体であって、その厚さ50μmのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体。」と訂正する。 訂正事項b 請求項2及び3を削除する。 訂正事項c 段落【0010】の 「本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、[A]23℃n-デカン不溶成分:40〜85重量%と、[B]23℃n-デカン可溶成分:15〜60重量%とからなり、該[A]23℃ n-デカン不溶成分は、(1)プロピレンから誘導される構成単位を85〜100モル%の量で、プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を0〜15モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が0.1〜20dl/gであり、(3)その60℃ n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上であり、かつ[B]23℃n-デカン可溶成分は、(1)エチレンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で、炭素数3〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が5〜15dl/gであることを特徴としている。」を 「本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、[A]23℃n-デカン不溶成分:40〜85重量%と、[B]23℃n-デカン可溶成分:15〜60重量%とからなり、該[A]23℃ n-デカン不溶成分は、(1)プロピレンから誘導される構成単位を85〜100モル%の量で、プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を0〜15モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が0.1〜20dl/gであり、(3)その60℃ n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上であり、(4)230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜150g/10分であり、かつ[B]23℃n-デカン可溶成分は、(1)エチレンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で、炭素数3〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が5〜15dl/gである共重合体であって、その厚さ50μmのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下であることを特徴としている。」と訂正する。 訂正事項d 段落【0024】の 「また上記のような23℃n-デカン不溶成分[A]は、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、10〜200g/10分、好ましくは20〜150g/10分であることが望ましい。」を 「また上記のような23℃n-デカン不溶成分[A]は、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、20〜150g/10分であることが望ましい。」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項aには、請求項1において、「(3)その60℃ n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上であり、」の後に「(4)230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜150g/10分であり、」を挿入する訂正(以下、「訂正事項a-1」という。)及び「(2)極限粘度[η]が5〜15dl/gである」を「(2)極限粘度[η]が5〜15dl/gである共重合体であって、その厚さ50μmのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下である」とする訂正(以下、「訂正事項a-2」という。)が含まれている。 そして、 (1-1)訂正事項a-1は、訂正前の明細書の「また上記のような23℃n-デカン不溶成分[A]は、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、10〜200g/10分、好ましくは20〜150g/10分であることが望ましい。」(段落【0024】)との記載に基づいて23℃n-デカン不溶成分[A]のメルトフローレート(MFR)をより好ましい範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、 (1-2)訂正事項a-2は、訂正前の明細書の「また本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、そのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下であることが望ましい。」(段落【0032】)及び「(6)ゴム塊個数Tダイを取り付けた30mmφの一軸押出機にポリマーを装入して、冷却ロール温度25℃、樹脂温度230℃、3m/分の引取り速度で、幅30cm×厚さ50μmのフィルムに成形した。」(段落【0136】)との記載に基づいてプロピレン系ブロック共重合体を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)訂正事項bは請求項2及び3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (3)訂正事項c及びdは、訂正事項aによる請求項1の訂正に伴って、対応する発明の詳細な説明の記載をこれと整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (4)そして、これらの訂正事項aないしdは、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 2-3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立てについての判断 3-1.本件発明 上記の結果、訂正後の本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正された明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「[A]23℃n-デカン不溶成分:40〜85重量%と、[B]23℃n-デカン可溶成分:15〜60重量%とからなり、該[A]23℃ n-デカン不溶成分は、(1)プロピレンから誘導される構成単位を85〜100モル%の量で、プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を0〜15モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が0.1〜20dl/gであり、(3)その60℃ n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上であり、(4)230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜150g/10分であり、かつ[B]23℃n-デカン可溶成分は、(1)エチレンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で、炭素数3〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で含有し、(2)極限粘度[η]が5〜15dl/gである共重合体であって、その厚さ50μmのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体。」 3-2.特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、甲第1ないし6号証を提出して、概略、次の理由により訂正前の本件請求項1ないし3に係る特許は取り消されるべきである旨、主張する。 (1)訂正前の本件請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)訂正前の本件請求項1ないし3に係る発明は、甲第1ないし6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。 (3)訂正前の本件特許明細書の記載は下記(i)ないし(vi)の点で不備である。 (i)請求項1に記載された[A]成分についての「(2)極限粘度[η]が0.1〜20dl/g」であるという構成に対応する実施例がない。 (ii)実施例にはゴム塊の個数は記載されているが、剛性と耐衝撃性についてのデータが示されていない。 (iii)比較例1及び2の記載からは、特許請求の範囲に記載された構成とブツ発生の関係が不明である。 (iv)比較例3は請求項1及び3の構成を満たしているが、得られた樹脂はゴム塊個数が非常に多く、特許請求の範囲に記載された構成要件の意義が理解できない。 (v)比較例3においては洗浄が行われているが、得られた樹脂は落下秒数が長く流動性に劣るものであり、粒子性状に関する構成要件、効果が理解できない。 (vi)請求項2に記載された平均粒径、見かけ嵩比重及び落下秒数については、発明の詳細な説明にその定義、及び測定法が充分記載されていない。 したがって、訂正前の本件請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない出願についてされたものである。 3-3.取消理由通知の概要 当審において通知した取消理由及び引用した刊行物は以下のとおりである。 (1)訂正前の請求項1ないし3は、刊行物1、2又は3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)訂正前の請求項1ないし3に係る発明は、刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)訂正前の本件特許明細書には、特許異議申立人が指摘する上記(3)の記載不備に加えて、バイブレータの取り付け位置、振幅、振動数等が不明であり「落下秒数」の測定条件が明らかでない、という記載不備があるから、訂正前の請求項1ないし3に係る発明の特許は、特許法第36条第4項、第5項第2号及び第6項に規定された要件を満たしていない特許出願についてされたものである。 <刊行物> 刊行物1:特開平5-194685号公報(特許異議申立人が提出した甲第1号証) 刊行物2:特開平5-170843号公報(同甲第2号証) 刊行物3:特開平4-25519号公報(同甲第3号証) 刊行物4:特開平1-319508号公報(同甲第4号証) 刊行物5:特開平5-9219号公報(同甲第5号証) 刊行物6:特開平2-84404号公報(同甲第6号証) 3-4.刊行物1ないし6の記載事項 刊行物1 (1-1)「プロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン若しくは炭素数4以上のα-オレフィンが1モル%以下共重合された結晶性ポリプロピレン部分とエチレンとプロピレンの組成が重量比でエチレン/プロピレン=20/80〜60/40であるエチレン-プロピレンランダム共重合体部分を有し、(1)結晶性ポリプロピレン部分の極限粘度〔η〕Pが0.8〜2.0dl/g、GPCで測定した分子量の比Q値(重量平均分子量MW/数平均分子量MN)が3.0〜5.0、20℃キシレン可溶分が1.5重量%以下、(2)エチレン-プロピレンランダム共重合体部分の極限粘度〔η〕EPが3.5〜8.5であり、かつ(3)エチレン-プロピレンランダム共重合体部分が全重合体の5〜20重量%であるエチレン-プロピレンブロック共重合体。」(特許請求の範囲の請求項1) (1-2)「本発明は、剛性、耐衝撃性、引張特性、耐熱性等に優れたエチレン-プロピレンブロック共重合体に関するものである。」(段落【0003】) (1-3)「本発明のエチレン-プロピレンブロック共重合体は下記(I)、(II)の成分で構成される。 (I)結晶性ポリプロピレン部分は、(1)135℃テトラリン中での極限粘度〔η〕Pは0.8〜2.0dl/g、好ましくは0.8〜1.7dl/g、更に好ましくは0.85〜1.5dl/gの範囲であり、(2)GPCで測定したQ値(重量平均分子量MW/数平均分子量MN)が2.5〜5.5、好ましくは3〜5であり、かつ、(3)全共重合体量の95〜80重量%を占め、(II)エチレン-プロピレンランダム共重合体部分が、(1)135℃テトラリン中での極限粘度〔η〕EPは3.5〜8.0dl/g、好ましくは3.5〜7.0dl/g、(2)エチレンとプロピレン組成が重量比で20/80〜60/40(重量比)であり、かつ、(3)全共重合体量の95〜80重量%を占めるものである。」( 段落【0013】) (1-4)「かかる方法によって本発明のエチレン-プロピレンブロツク共重合体を製造するが、特に耐熱性、剛性、傷付き性、光沢等が要求される用途に用いられる場合、第一段階で重合された結晶性ポリプロピレン部分の沸騰ヘプタン不溶部のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.970以上、沸騰ヘプタン可溶部の含有量が5.0重量%以下であり、かつ20℃キシレン可溶部の含有量が1.5重量%以下である高結晶性ポリプロピレンを用いることが好ましい。」(段落【0023】) (1-5)「実施例1 内容積5.5m3の攪拌機及びジャケット付きのSUS製反応器をプロピレンで十分置換したのち、n-ヘプタン2.5m3、トリエチルアルミニウム10モル及びシクロヘキシルエチルジメトキシシラン1.5モルを供給し、さらに内温を20〜40℃、圧力をプロピレンで0.2kg/cm2Gに調整し、固体触媒成分(特開平1-319508号の実施例-1に示す方法で合成した)0.12kgを供給する。次いで、ジャケットに温水を通水し該反応器の内温を75℃に昇温したのちプロピレン及び水素で反応圧力を8kg/cm2Gに昇圧し重合を開始した。反応温度75℃で反応圧力8kg/cm2Gを保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を4.6%に保つように供給しながら結晶性ポリプロピレン部分(以下P部と省略する)の重合を継続した。プロピレン供給量の積算量が1180kgに達した時点でプロピレン及び水素の供給を停止し、反応器内の未反応モノマーを脱ガスし、反応器内圧力を0.5kg/cm2Gまで降圧すると共に、反応器内温度を60℃に調整した。P部のポリマーを約100gサンプリングし分析した結果、極限粘度〔η〕Pは1.02dl/gであり、GPCにより求めた分子量の比MW /Mnは3.5、20℃キシレン可溶分は1.2重量%であった。P部でのポリマーの生成量はプロピレンの供給積算量と重合終了時点での未反応プロピレンの重量より計算し846kgであった。」(段落【0030】) (1-6)「引き続いて、プロピレン及びエチレンにより反応圧力を3kg/cm2Gに昇圧しエチレン-プロピレン共重合部(以下EP部と省略する)の重合を開始し、反応温度60℃で反応圧力を3kg/cm2Gに保つようにプロピレン/エチレン=3/1(重量比)の混合ガスを連続的に供給し、気相部の水素濃度が0.01%に保たれるように調整しながらEP部の重合を継続した。プロピレン/エチレン混合ガスの供給積算量が188kgに達した時点でモノマーの供給を停止し、反応器内のポリマースラリーの全量を失活槽へ導きブチルアルコールで失活処理を行った後、該ポリマースラリーを遠心分離することにより固体ポリマーを回収し、ドライヤーにて乾燥して粉末状白色パウダー940kgを得た。得られたポリマー全体の極限粘度〔η〕Tは、1.54dl/gであり、エチレン含量は2.3重量%であった。又、P部とEP部の重合比は、最終的に得られたポリマーの重量とP部のポリマー量より計算し重量比で89/11であった。したがってEP部におけるポリマー中のエチレン含量は24重量%であり、EP部の極限粘度〔η〕EPは6.2dl/gであった。」(段落【0031】) 刊行物2 (2-1)「[A]マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体(a)を必須成分として含有する固体状チタン触媒成分と、[B]有機金属触媒成分と、[C]下記式(1)R1n-Si-OR24-n・・・(1) (ただし式(1)中、R1は、炭素数1〜3の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基であり、R2は、炭素数1〜4の炭化水素基であり、nは1または2である。)で示される電子供与体とを含むオレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンを重合させた後、得られるポリプロピレンおよび[D]下記式(2)で示される電子供与体の存在下に、炭素数2以上のα-オレフィンから選ばれる少なくとも2種のα-オレフィンを共重合させることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法; (ただし、式(2)中、R3は、シクロペンチル基、置換シクロペンチル基、シクロペンテニル基、置換シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基あるいは3級炭化水素基であり、R4は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、R5およびR6はそれぞれ独立に、炭素数1〜4の炭化水素基を示す。)。 」(特許請求の範囲の請求項1) (2-2)「以下に示す条件を満たすプロピレン系ブロック共重合体を製造することを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法:(i)該プロピレン系ブロック共重合体中の、23℃、n-デカン可溶成分の含有率が1〜70重量%であり、(ii)該デカン可溶成分は、135℃、デカリン中での極限粘度[η]が3.0dl/g以上であること。」(特許請求の範囲の請求項2) (2-3)「本発明は、剛性、耐熱性に優れるとともに耐衝撃性にも優れるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を提供することを目的としている。」(段落【0007】) (2-4)「上記のような重合工程において得られるポリプロピレンにおいて、エチレン、炭素数4以上のα-オレフィン、ポリエン化合物から導かれる構成単位の含有率は0〜20モル%であり、好ましくは0〜10モル%であり、特に好ましく0〜7モル%である。 このようにして得られるポリプロピレンの135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]は40〜0.001dl/gであり、好ましくは30〜0.01dl/gであり、特に好ましくは20〜0.05dl/gである。」(段落【0073】〜【0074】) (2-5)「重合は回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行なうことができる。・・・得られるプロピレン系ブロック共重合体では、ゴム成分(23℃、デカン可溶成分)を1〜70重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%の割合で含有している。このゴム成分(デカン可溶成分)は、135℃、デカリン中での極限粘度[η]が3.0dl/g以上、好ましくは4.0dl/g以上、より好ましくは4.5dl/g以上、特に好ましくは5.0dl/g〜20dl/gである。」(段落【0096】) (2-6)「【実施例1】 [固体状チタン触媒成分[A]の調製]無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行なって均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに、130℃にて1時間攪拌混合を行ない、無水フタル酸を溶解させた。このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中にこの均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱反応を行なった。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。以上の操作によって調製した固体状チタン触媒成分[A]はデカンスラリーとして保存したが、この内の一部を触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分[A]の組成は、チタン2.4重量%、塩素60重量%、マグネシウム20重量%、DIBP13.0重量%であった。」(段落【0117】) (2-7)「[固体状チタン触媒成分[A]の予備重合]400mlの攪拌機付き四ツ口ガラス製反応器に窒素雰囲気下精製ヘキサン100ml、トリエチルアルミニウム3ミリモルおよび上記固体状チタン触媒成分[A]をチタン原子換算で1.0ミリモル添加した後、3.2リットル/時間の速度でプロピレンを1時間この反応器に供給した。重合温度は、20℃に保った。 プロピレンの供給が終了したところで反応器内を窒素で置換し、上澄液の除去および精製ヘキサンの添加からなる洗浄操作を2回行なった後、精製ヘキサンで再懸濁して触媒瓶に全量移液して予備重合触媒[I]を得た。」(段落【0117】〜【0118】) (2-8)「[重合]充分に窒素置換された内容積2リットルのオートクレーブに、分散剤として塩化ナトリウム150gを加え、90℃に加熱しながらオートクレーブの内圧が50mmHg以下になるように真空ポンプで2時間減圧処理を行なった。次いで、オートクレーブの温度を室温に下げオートクレーブ内をプロピレンで置換した後に、60℃に昇温し、トリエチルアルミニウム1.0ミリモル、プロピルトリエトキシシラン(PTES)0.2ミリモル、予備重合触媒[I]をチタン原子換算で0.02ミリモル添加し、系を密閉した後に70℃に昇温し48分間プロピレンを重合させた。重合中の圧力はプロピレンガスの補給により7Kg/cm2Gに保った。」(段落【0118】) (2-9)「重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、エチレン25モル%、プロピレン75モル%からなる混合ガスで置換した後、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)1.0ミリモルおよび水素60mlを加えて70℃に昇温して5分間共重合を行なった。重合圧力は、上記混合ガスの供給により3Kg/cm2Gに保った。ポリプロピレンと共重合体の生成比は重量比で約85/15であった。」(段落【0119】) (2-10)表1には、実施例1における「デカン可溶成分」について「エチレン含有率(モル%)」が「34.2」と記載されている。(段落【0125】) (2-11)表2には、実施例2における「デカン可溶成分」について「エチレン含有率 モル%」が「38.0」、「極限粘度(η)dl/g」が「6.1」と記載されている。(段落【0137】) 刊行物3 (3-1)「結晶性オレフィン重合体部と非晶性オレフィン重合体部とからなり、かつ、該非晶性オレフィン重合体部を構成するゴム成分の極限粘度比([η]A/[η]B)が1.2以上である2種類の重合体を、架橋剤の存在下で、架橋させることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1) (3-2)「本発明で用いられる重合体粒子の平均粒子径は、通常10μm以上、好ましくは10〜8000μm、さらに好ましくは100〜4000μm、特に好ましくは300〜3000μmの範囲内にある。・・・。また、本発明で使用される重合体粒子の自然落下による見掛け嵩密度は、通常0.2g/ml以上、好ましくは0.2〜0.7g/ml、さらに好ましくは0.3〜0.7g/ml、特に好ましくは0.35〜0.60g/mlの範囲内にある。・・・。またこのような重合体粒子は、下記のようにして定義される落下秒数が5〜25秒、好ましくは5〜20秒、特に好ましくは5〜15秒である。」(第4頁右下欄末行〜第5頁左上欄末行) (3-3)「落下秒数:嵩密度を測定する装置をそのまま用い、試料を受器に落とし、受器から盛り上がった試料をガラス棒ですり落とすことによって100mlの容器に収った試料を再度ダンパーを差し込んだ漏斗に移した後、ダンパーを引き、試料が漏斗下部より全量落下するのに要する時間(秒)を落下秒数とした。 ただし、落下秒数の測定に際しては、その試料の平均粒子径の1.5〜1.6倍以上の粒子をふるいによって除去した重合体粒子を用いた。 また落下秒数の測定に際しては、受器をパウダーテスタ(ホソカワミクロ製 Type PT-D,SER.No.71190)の振動台にセットし、振動板の振巾が1mmになるようにレオスタットの電圧を調整し、振動させながら上記重合体粒子を落下させた。」(第5頁左下欄第7行〜同頁右下欄第2行) (3-4)「[実施例] 共重合体(1)の製造 [触媒成分[A]の調整] 内容積2lの高速攪拌装置(特殊機化工業製)を充分N2置換したのち、精製灯油700ml、市販MgCl210g、エタノール24.2gおよび商品名エマゾール320(花王アトラス(株)製、ソルビタンジステアレート)3gを入れ、系を攪拌下に昇温し、120℃にて800rpmで30分攪拌した。高速攪拌下、内径5mmのテフロン製チューブを用いて、あらかじめ-10℃に冷却された精製灯油1lを張り込んである2lのガラスフラスコ(攪拌機付)に移液した。生成固体を濾過により採取し、ヘキサンで充分洗浄したのち担体を得た。 該担体7.5gを室温で150mlの四塩化チタン中に懸濁させた後フタル酸ジイソブチル1.3mlを添加し、該系を120℃に昇温した。120℃で2時間の攪拌混合した後、固体部を濾過により採取し、再び150mlの四塩化チタンに懸濁させ、再度130℃で2時間の攪拌混合を行った。更に該反応物より反応固体物を濾過にて採取し、充分量の精製ヘキサンにて洗浄することにより固体触媒成分(A)を得た。該成分は原子換算でチタン2.2重量%、塩素63重量%、マグネシウム20重量%、フタル酸ジイソブチル5.5重量%であった。平均粒度は64μmで粒度分布の幾何標準偏差(δg)が1.5の真球状触媒が得られた。」(第8頁右上欄第2〜5行) (3-5)表1には、「共重合体(1)」として、プロピレンホモ重合:プロピレン(kg)=2.0,水素(Nl)=75,重合時間(分)=50及びプロピレン-エチレン共重合:エチレン(Nl/Hr)=480,プロピレン(Nl/Hr)=720,水素(Nl/Hr)=12,重合温度(℃)=70,重合時間(分)=250との重合条件が記載されている。(第25頁) 刊行物4 (4-1)「Si-O結合を有する有機ケイ素化合物の共存下、一般式Ti(OR1)nX4-n(R1は炭素数が1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン原子、nは0<n≦4の数字を表わす。)で表わされるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エステル化合物で処理した後にエステル化合物と四塩化チタンとの混合物で処理して得られる三価のチタン化合物含有オレフィン重合用固体触媒の製造法。」(特許請求の範囲の請求項1) (4-2)「実施例1 (A)有機マグネシウム化合物の合成 ・・・フラスコをアルゴンで置換した後、グリニャール用削状マグネシウム・・・を投入した。滴下ロートにブチルクロリド・・・とジブチルエーテル・・・を仕込み、フラスコ中のマグネシウムに・・・滴下し、反応を開始させた。反応開始後、・・・滴下を続け、滴下終了後、・・・更に1時間反応を続けた。その後、反応溶液を室温に冷却し、固形分を濾別(註:「濾」は原文では”さんずいに戸”。)した。-中略- (B)固体生成物の合成 ・・・フラスコをアルゴンで置換したのち、ヘキサン・・・、テトラブトキシチタン・・・およびテトラエトキシシラン・・・を投入し、均一溶液とした。次に、(A)で合成した有機マグネシウム化合物・・・を、・・・徐々に滴下した。滴下終了後、・・・固液分離し、・・・洗浄を繰り返したのち減圧乾燥して、茶褐色の固体生成物・・・を得た。-中略- (C)エステル処理固体の合成 ・・・フラスコをアルゴンで置換した後、(B)で合成した固体生成物・・・、トルエン・・・およびフタル酸ジイソブチル・・・を加え、・・・反応を行なった。 反応後、固液分離し、・・・洗浄を行なった。 (D)固体触媒の合成(活性化処理) 上記(C)での洗浄終了後、フラスコにトルエン・・・、フタル酸ジイソブチル・・・および四塩化チタン・・・を加え、・・・反応を行なった。反応終了後、・・・固液分離した後、・・・洗浄を行なった。上述したフタル酸ジイソブチルと四塩化チタンとの混合物による処理を同1条件で更にもう一度繰り返し、・・・洗浄して、黄土色の固体触媒・・・を得た。 固体触媒中には、チタン原子が2.1重量%、マグネシウム原子が20.2重量%、フタル酸エステルが17.3重量%含まれていた。」(第9頁左下欄第17行〜第10頁右上欄第19行) 刊行物5 (5-1)「実施例1〜3及び比較例1〜2 (1)固体生成物の調製 ・・・ガラス製反応器・・・を窒素ガスで充分に置換し、エタノール・・・、ヨウ素・・・及び金属マグネシウム・・・を投入し、・・・加熱下で反応させ、固体状反応生成物を得た。・・・。 (2)固体触媒成分の調製 ・・・ガラス製三ツ口フラスコ・・・に、前記固体生成物(a)・・・、精製ヘプタン・・・、四塩化ケイ素・・・及びフタル酸ジエチル・・・を加えた。・・・攪拌しながら四塩化チタン・・・を投入して・・・2時間反応させた後、固体成分を分離して・・・洗浄した。さらに、四塩化チタン・・・を加え、・・・2時間反応させた後、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分(A)を得た。」 (5-2)「(3)プロピレンの重合 スチレンスチール製オートクレーブ・・・に、ポリプロピレンパウダーを・・・投入し、系内を窒素ガスで充分置換した後、トリエチルアルミニウム・・・、ジフェニルジメトキシシラン・・・及び前記固体触媒成分(A)を・・・投入し、水素・・・及びプロピレン・・・を導入し、・・・1時間重合を行なった。引続き、系内の反応ガスをパージした後、エチレンとプロピレンを同容積比でフィードし、表1に示した極限粘度になるように水素量を調節し、・・・重合時間を変化させて、表1に示した共重合部比に調節してポリプロピレン系樹脂を得た。」(段落【0042】〜【0044】) (5-3)【表1】には、プロピレン重合体(A)のmmmm分率(%)が、実施例1、2及び3で、それぞれ「97.0」、「96.9」及び「96.9」であったことが示されている。(第9頁) 刊行物6 (6-1)「[A]マグネシウム化合物およびチタン化合物を接触させることによって形成されるマグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分として含有する固体チタン触媒成分、[B]有機アルミニウム化合物触媒成分、および[C]シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基またはこれらの誘導体を含む有機ケイ素化合物触媒成分、から形成されるオレフィン重合用触媒の存在下に、オレフィンを重合もしくは共重合させることを特徴とするオレフィンの重合方法。」(特許請求の範囲の請求項1) (6-2)「本発明は、アモルファスポリマー成分の副生率が極めて低く、しかも、高立体規則性を有するかあるいは組成分布の狭いオレフィン重合体を高収率で得ることができるようなオレフィンの重合方法・・・に関する。」(第2頁左上欄第2〜7行) (6-3)「実施例1 [固体チタン触媒成分[A]の調製] 無水塩化マグネシウム7.14g(75ミリモル)、デカン37.5mlおよび2-エチルヘキシルアルコール35.1ml(225ミリモル)を130℃で2時間加熱反応を行ない、均一溶液とした。その後、この溶液中に無水フタル酸1.67g(11.3ミリモル)を添加し、130℃にてさらに1時間撹拌混合を行ない、無水フタル酸を上記の均一溶液に溶解させた。 このようにして得られた均一溶液を室温まで冷却した後、-20℃に保持された四塩化チタン200ml(1.8モル)中に1時間にわたって全量滴下した。滴下後、得られた溶液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでジイソブチルフタレート5.03ml(18.8ミリモル)を添加した。 さらに2時間上記の温度で撹拌した。2時間の反応終了後、熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlのTiCl4にて再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱反応を行なった。 反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃デカンおよびヘキサンを用いて洗浄した。この洗浄を、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで行なった。 上記のようにして合成された固体チタン触媒成分[A]は、ヘキサンスラリーとして得られた。この触媒の一部を採取して乾燥させた。この乾燥物を分析したところ、上記のようにして得られた固体チタン触媒成分[A]の組成は、チタン2.5重量%、塩素58重量%、マグネシウム18重量%およびジイソブチルフタレート13.8重量%であった。」(第14頁右上欄第3行〜同頁左下欄第15行) (6-4)「[予備重合] 窒素置換された400mlのガラス製反応器に精製ヘキサン200mlを入れ、トリエチルアルミニウム20ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン4ミリモルおよび前記チタン触媒成分[A]をチタン原子換算で2ミリモル投入した後、5.9N/時間の速度でプロピレンを1時間供給し、Ti触媒成分[A]1g当り、2.8gのプロピレンを重合させた。 この予備重合終了後、濾過にて、液部を除去し、分離した固体部をデカンに再び分散させた。」(第14頁左下欄第16行〜同頁右下欄第6行) (6-5)「[本重合] 内容積2lのオートクレーブにプロピレン500gを入れ、60℃にて、トリエチルアルミニウム0.6ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.06ミリモルおよび前記予備重合に用いた固体チタン触媒成分[A]をチタン原子換算で0.006ミリモル投入し、、さらに水素1lを加えた後、70℃に昇温し、40分間プロピレン重合を行なった。 上記のようにして生成した重合体を乾燥させ、重量を測定したところ、重合体全収量は279gであった。 この重合体の沸騰n-ヘプタンによる抽出残率は99.2%、MFRは6.3g/分であった。したがって、この時の重合活性は46,500g-pp/ミリモル-Tiであった。」(第14頁右下欄第7行〜第15頁左上欄第5行) 3-5.特許法第29条第1項違反(第3号に該当)について 3-5-1.刊行物1に記載された発明との対比 刊行物1には、「プロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン若しくは炭素数4以上のα-オレフィンが1モル%以下共重合された結晶性ポリプロピレン部分とエチレンとプロピレンの組成が重量比でエチレン/プロピレン=20/80〜60/40であるエチレン-プロピレンランダム共重合体部分を有し、(1)結晶性ポリプロピレン部分の極限粘度〔η〕Pが0.8〜2.0dl/g、GPCで測定した分子量の比Q値(重量平均分子量MW/数平均分子量MN)が3.0〜5.0、20℃キシレン可溶分が1.5重量%以下、(2)エチレン-プロピレンランダム共重合体部分の極限粘度〔η〕EPが3.5〜8.5であり、かつ(3)エチレン-プロピレンランダム共重合体部分が全重合体の5〜20重量%であるエチレン-プロピレンブロック共重合体。」(摘示記載(1-1))が記載されており、エチレン/プロピレンについての「20/80〜60/40」という重量比はモル比に換算すると「27/73〜69/31」となる。 そうすると、該ブロック共重合体は、「プロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン若しくは炭素数4以上のα-オレフィンが1モル%以下共重合された結晶性ポリプロピレン部分(以下、「結晶性ポリプロピレン部分」という。)」と「エチレンとプロピレンの組成がモル比でエチレン/プロピレン=27/73〜69/31であるエチレン-プロピレンランダム共重合体部分(以下、「ランダム共重合体部分」という。)」とからなり、ランダム共重合体部分が全重合体の5〜20重量%であるものということができる。 一方、本件発明はその組成からみると、「(1)プロピレンから誘導される構成単位を85〜100モル%の量で、プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を0〜15モル%の量で含有する」[A]成分と、「(1)エチレンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で、炭素数3〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で含有する」[B]成分とからなるブロック共重合体であり、[A]成分40〜85重量%と[B]成分15〜60重量%とからなるものである。 そして、刊行物1に記載された発明における「結晶性ポリプロピレン部分」及び「「ランダム共重合体部分」は、それぞれ、「主としてプロピレンからなる成分」及び「エチレン-プロピレン共重合体となり得る成分」であるという点で、それぞれ、本件発明における[A]成分及び[B]成分に対応するものである。 してみれば、本件発明と刊行物1に記載された発明とは、ともに、主としてプロピレンからなる成分(以下、(a)成分という。)とエチレン-プロピレン共重合体成分(以下、(b)成分という。)とからなり、(a)成分が重合体に対して80〜85重量%の重量割合であるプロピレン系ブロック共重合体であり、(a)成分については、プロピレン単独重合体又はプロピレンとエチレン若しくは炭素数4〜10のα-オレフィンが1モル%以下共重合されたポリプロピレンであり、0.8〜2.0dl/gの範囲の極限粘度〔η〕を有しており、(b)成分については、エチレン27〜69モル%、プロピレン73〜31モル%の範囲で共重合されたエチレン-プロピレン共重合体であり、5〜8.5dl/gの極限粘度[η]を有する点で、両発明は一致している。 しかしながら、本件発明における以下の点について刊行物1には記載されていない点で、両発明間には相違が認められる。 (あ)(a)成分及び(b)成分について、それぞれ「「A」23℃n-デカン不溶成分」及び「[B]23℃n-デカン可溶成分」としている点、 (い)(a)成分が、「60℃ n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上である」点、 (う)(a)成分が、「230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜150g/10分」である点、及び、 (え)ブロック共重合体が、「厚さ50μmのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下である」点 そこでこれらの相違点の内、まず、(い)の点について以下に検討する。 刊行物1には、「特に耐熱性、剛性、傷付き性、光沢等が要求される用途に用いられる場合、第一段階で重合された結晶性ポリプロピレン部分の沸騰ヘプタン不溶部のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.970以上、沸騰ヘプタン可溶部の含有量が5.0重量%以下であり、かつ20℃キシレン可溶部の含有量が1.5重量%以下である高結晶性ポリプロピレンを用いることが好ましい。」(摘示記載(1-4))と記載されており、結晶性ポリプロピレン部分のアイソタクチック・ペンタッド分率について言及されてはいるが、その測定対象が本件発明のように「60℃ n-デカン不溶成分」ではなく「沸騰ヘプタン不溶部」である点、アイソタクチック・ペンタッド分率の範囲が本件発明のように「0.98以上」ではなく「0.970以上」である点、更には、刊行物1の実施例において、結晶性ポリプロピレン部分のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したデータは全く見出せないところから、本件発明における(い)を満たす結晶性ポリプロピレン部分を含むブロック共重合体が刊行物1に開示されているものということはできない。 この点について特許異議申立人は、刊行物1の実施例1では特開平1-319508号(甲第4号証、刊行物4)の実施例1に示す方法で合成した固体触媒成分が用いられており、刊行物4の記載をみると、実施例1ではマグネシウム担持型触媒が用いられ、内部電子供与体としてフタル酸ジイソブチル(フタル酸ジエステル)、外部電子供与体としてフェニルトリメトキシシラン(Si-O結合を有するケイ素化合物)が用いられ、嵩密度0.42g/mlのポリプロピレン粉末が得られていること、及び、これと酷似した触媒が用いられた甲第5号証(刊行物5)の実施例1〜3ではペンタッド分率(mmmm)が0.970以上のポリプロピレン部分が得られていることから、刊行物1に記載された発明においても実質的に本件発明と同一のペンタッド分率の結晶性ポリプロピレン部分を含むブロック共重合体が記載されている旨主張している。 そこで、刊行物4の記載をみると、その特許請求の範囲には、「Si-O結合を有する有機ケイ素化合物の共存下、一般式Ti(OR1)nX4-n(R1は炭素数が1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン原子、nは0<n≦4の数字を表わす。)で表わされるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エステル化合物で処理した後にエステル化合物と四塩化チタンとの混合物で処理して得られる三価のチタン化合物含有オレフィン重合用固体触媒の製造法。」(摘示記載(4-1))が記載されており、実施例1には、グリニャール用削状マグネシウムにブチルクロリドとジブチルエーテルを滴下して反応させて得た有機マグネシウム化合物を、ヘキサン、テトラブトキシチタンおよびテトラエトキシシランからなる均一溶液に滴下し、固液分離して、洗浄、乾燥して、茶褐色の固体生成物を得て、これにトルエンおよびフタル酸ジイソブチルを加えて反応を行ない、固液分離し、洗浄後、トルエン、フタル酸ジイソブチルおよび四塩化チタンを加えて反応を行ない、フタル酸ジイソブチルと四塩化チタンとの混合物による処理をもう一度繰り返し、洗浄して、チタン原子が2.1重量%、マグネシウム原子が20.2重量%、フタル酸エステルが17.3重量%含まれた黄土色の固体触媒を得た、との方法(摘示記載(4-2))が記載されている。 一方、本件訂正明細書の実施例1には、無水塩化マグネシウム、デカンおよび2-エチルヘキシルアルコール反応させて均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸を添加し、攪拌混合して無水フタル酸を溶解させ、得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン中に滴下装入し、混合液を昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチルを添加して2時間同温度にて攪拌保持し、反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を四塩化チタンに再懸濁させた後、2時間加熱し、反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取デカンおよびヘキサンにて充分洗浄して、チタンが2.3重量%、塩素が61重量%、マグネシウムが19重量%、DIBPが12.5重量%含まれた固体状チタン触媒成分が得られたこと(段落【0138】〜【0141】)が記載されている。 これらの実施例を対比すると、得られた固体触媒の成分が一部共通しているとしても、各成分の重量割合は実質的に一致するといえる範囲を逸脱しているし、使用する原料及びその接触順序についても相違するものであるから、それぞれの実施例において得られた触媒が同じものであるとすることはできない。 また、刊行物5の実施例1〜3にも刊行物4の実施例1と類似の固体触媒の製法が記載されているが、やはり、使用する原料及びその接触順序について本件訂正明細書の実施例1とは相違するものであるし、刊行物5の実施例で得られたとされるプロピレン重合体のペンタッドアイソタクティシティも本件発明の「0.98以上」を満たすものではない。 したがって、刊行物4及び5の記載を参酌しても、刊行物1の実施例1に記載された方法で得られた固体触媒を用いて製造した共重合体が、本件発明における(a)成分(主としてプロピレンからなる成分)と同じペンタッドアイソタクティシティを有するものということはできない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は刊行物1に記載された発明ではない。 3-5-2.刊行物2及び3に記載された発明との対比 刊行物2及び3にはそれぞれ、ポリプロピレン成分とプロピレン-エチレン共重合体成分とからなるポリプロピレン系共重合体(摘示記載(2-1)、(2-9)、(3-1)、(3-5)等)が記載されているが、これらの刊行物のいずれにも、ポリプロピレン成分が本件発明の上記(い)のようなペンタッドアイソタクティシティを有することについては記載されておらず、刊行物3の実施例に記載された固体触媒も、刊行物1のものと同様、本件訂正明細書の実施例1に記載された固体触媒と同一であるとはいえない。 ただ、刊行物2の実施例1には、本件訂正明細書の実施例1と同様の原料及び製法によって固体触媒を得ることが記載(摘示記載(2-6))されており、本件訂正明細書のものと同じ固体触媒が得られている可能性は否定し得ない。 しかしながら、固体触媒による予備重合について、刊行物2の実施例1では「ヘキサン・・・、トリエチルアルミニウム・・・および上記固体状チタン触媒成分[A]を・・・添加した後、・・・プロピレンを・・・反応器に供給した」(摘示記載(2-7))と記載されており、ジシクロペンチルジメトキシシランを用いない点において本件訂正明細書の実施例1とは相違するものであり、また、重合工程の処理条件についてもこれらの実施例は相違しており、予備重合工程及び重合工程が重合体の立体構造に及ぼす影響は無視し得るものであると解すべき根拠は見出せないから、刊行物2の実施例1において、本件発明における(a)成分と同じペンタッドアイソタクティシティを有するポリプロピレン成分を含む共重合体が得られるとすることはできない。 したがって、本件発明は刊行物2又は3に記載された発明ではない。 3-6.特許法第29条第2項違反について 上記のように、刊行物1〜3には本件発明における(い)の構成が記載されておらず、刊行物4及び5の記載を参酌しても、これをもたらすための固体触媒及び重合方法について開示されているとすることができない。 そして、刊行物6の実施例1には、本件訂正明細書の実施例1に記載された固体触媒及び重合方法が記載されているものの、同刊行物の特許請求の範囲に記載された発明は、「アモルファスポリマー成分の副生率が極めて低く、しかも、高立体規則性を有するかあるいは組成分布の狭いポリオレフィンを重合体を高収率で得ること」(摘示記載(6-2))を目的とするオレフィンの重合方法に係るものであるから、その実施例1に記載された方法によって、仮に本件発明における(a)成分と同じペンタッドアイソタクティシティを有するポリプロピレンが得られるとしても、そのような方法を、剛性、耐衝撃性、引張特性、耐熱性等に優れ(摘示記載(1-2))主としてプロピレンからなる成分とエチレン-プロピレン共重合体成分とからなる刊行物1に記載されたブロック共重合体の製造に適用することを、当業者が容易に想到し得たものとすることはできないし、また、そのように二成分を含有する共重合体のポリプロピレン成分について、ペンタッドアイソタクティシティがどのような値となるか予測することは困難であるというべきである。 その上、ブロック共重合体が、「厚さ50μmのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下である」という本件発明の上記(え)の構成についても、刊行物1に記載されていないばかりでなく、刊行物2〜6のいずれにも記載されておらず、このような特性をフィルムに具備せしめることについて教示するところもない。 したがって、本件発明は刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3-7.特許法第36条第4項、第5項第2号及び第6項違反について 平成16年11月18日付け取消理由において、訂正前の本件明細書の記載が不備であると指摘した点の内、「(i)請求項1に記載された[A]成分についての「(2)極限粘度[η]が0.1〜20dl/g」であるという構成に対応する実施例がない。」という点については、明細書の実施例中には23℃n-デカン不溶成分([A]成分)のメルトフローレート(MFR)の値が示されており、極限粘度[η]とMFRとは換算し得ることは、特許権者が平成17年7月19日に提出した上申書で引用されたM.D.Baijal et.al,Journal of Applied Polymer Science,vol.14,p.1651-1653(1970)に記載されているように周知であって、実施例に記載されたMFRの値は「極限粘度[η]が0.1〜20dl/g」という範囲に含まれるものであるから、この点で明細書の記載が不備であるとすることはできない。 また、「(ii)実施例にはゴム塊の個数は記載されているが、剛性と耐衝撃性についてのデータが示されていない。」という点については、剛性と耐衝撃性は通常の効果であるから記載を省略し、特徴的なゴム塊の個数についてのみ記載したものと解することができ、これにより発明の効果が不明りょうであるとはいえない。 更に、「(iii)比較例1及び2の記載からは、特許請求の範囲に記載された構成とブツ発生の関係が不明である。」及び「(iv)比較例3は請求項1及び3の構成を満たしているが、得られた樹脂はゴム塊個数が非常に多く、特許請求の範囲に記載された構成要件の意義が理解できない。」という点については、上記訂正により特許請求の範囲の請求項1に「(該[A]23℃ n-デカン不溶成分は、)(4)230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜150g/10分であり」との構成が付加され、MFRがこの範囲を超える「200g/10分」である比較例3ではゴム塊個数が1000以上という多数となることが示されているので、もはや記載不備とはいえない。 そして、「(v)比較例3においては洗浄が行われているが、得られた樹脂は落下秒数が長く流動性に劣るものであり、粒子性状に関する構成要件、効果が理解できない。」との点は、共重合体の洗浄に触れた訂正前の明細書の段落【0127】の記載が、洗浄が粒子性状に好ましい影響をもたらすことを一般的に述べたものに過ぎないものと解すればあえて異とするに足りず、また、「(vi)請求項2に記載された平均粒径、見かけ嵩比重及び落下秒数については、発明の詳細な説明にその定義、及び測定法が充分記載されていない。」との点及び「バイブレータの取り付け位置、振幅、振動数等が不明であり「落下秒数」の測定条件が明らかでない」との点については、上記訂正により請求項2及び3が削除されたので、特許請求の範囲に記載された発明が不明りょうであるとの不備は解消されているし、また、実施例で評価されているこれらの特性についての定義及び測定法も、訂正明細書に記載された説明及び技術常識から十分理解し得るものということができる。 したがって、訂正明細書の記載に不備があるとすることはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 プロピレン系ブロック共重合体 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 [A]23℃n-デカン不溶成分:40〜85重量%と、 [B]23℃n-デカン可溶成分:15〜60重量%とからなり、 該[A]23℃n-デカン不溶成分は、 (1)プロピレンから誘導される構成単位を85〜100モル%の量で、 プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を0〜15モル%の量で含有し、 (2)極限粘度[η]が0.1〜20dl/gであり、 (3)その60℃n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上であり、 (4)230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜150g/10分であり、かつ [B]23℃n-デカン可溶成分は、 (1)エチレンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で、 炭素数3〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で含有し、 (2)極限粘度[η]が5〜15dl/gである共重合体であって、 その厚さ50μmのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の技術分野】 本発明は、剛性に優れるとともに耐衝撃性にも優れ、外観に優れた成形体を形成しうるプロピレン系ブロック共重合体およびその製造方法に関する。 【0002】 【発明の技術的背景】 結晶性ポリプロピレンは、剛性、耐熱性、表面光沢性などに優れているが、耐衝撃性には劣るという問題点があった。 【0003】 このため従来、ポリプロピレンの耐衝撃性を向上させる方法が種々提案されており、たとえば結晶性ポリプロピレンに、エチレン系重合体、ゴム状物質などの改質剤をブレンドしてポリプロピレン組成物を形成する方法が知られている。このゴム状物質としては、一般的に非晶性あるいは低結晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、ポリイソブチレン、ポリブタジエンなどが用いられている。 【0004】 またこのようなポリプロピレン組成物が、上記のようなゴム状物質特にエチレン・プロピレンランダム共重合体(EPRゴム)成分とポリプロピレン成分とからなるブロック共重合体であると、このポリプロピレン組成物は、耐衝撃性が、結晶性ポリプロピレンと非晶性エチレン・プロピレンランダム共重合体との単なるブレンド物に比べて著しく優れていることが知られている。 【0005】 そして上記のようなポリプロピレンと非晶性エチレン・プロピレンランダム共重合体とからなる組成物では、エチレン・プロピレンランダム共重合体の分子量が高いと、得られるポリプロピレン組成物の耐衝撃性に優れていることが知られている。 【0006】 ところで上記のようなポリプロピレンとエチレン・プロピレンランダム共重合体とのブロック共重合体は、ポリプロピレンを製造するためのプロピレン重合槽、エチレン・プロピレンランダム共重合体を製造するためのゴム重合槽からなる連続重合装置を用いた連続重合法によって製造されている。 【0007】 しかしながらポリプロピレンとエチレン・プロピレンランダム共重合体とのブロック共重合体を連続重合法により製造する際に、エチレン・プロピレンランダム共重合体成分の分子量を高めようとすると、高分子量ゴム成分は分散性に劣るため、ポリプロピレンとエチレン・プロピレンランダム共重合体とが均一に分散されていないブロック共重合体が得られることがあり、このようなブロック共重合体は、耐衝撃性に劣ったり、またその成形品には外観上ブツが発生することがあった。 【0008】 このため、剛性に優れるとともに耐衝撃性に優れ、外観にブツを発生することのない成形物を形成することができるようなプロピレン系ブロック共重合体の出現が望まれていた。 【0009】 【発明の目的】 本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、剛性に優れるとともに耐衝撃性にも優れ、外観にブツを発生することなく成形物を形成することができるようなプロピレン系ブロック共重合体およびその製造方法を提供することを目的としている。 【0010】 【発明の概要】 本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、 [A]23℃n-デカン不溶成分:40〜85重量%と、 [B]23℃n-デカン可溶成分:15〜60重量%とからなり、 該[A]23℃n-デカン不溶成分は、 (1)プロピレンから誘導される構成単位を85〜100モル%の量で、プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を0〜15モル%の量で含有し、 (2)極限粘度[η]が0.1〜20dl/gであり、 (3)その60℃n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上であり、 (4)230℃、2.16gk荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜150g/10分であり、かつ [B]23℃n-デカン可溶成分は、 (1)エチレンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で、炭素数3〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を20〜80モル%の量で含有し、 (2)極限粘度[η]が5〜15dl/gである共重合体であって、 その厚さ50μmのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下であることを特徴としている。 【0011】 上記のようなプロピレン系ブロック共重合体は、平均粒径250〜8000μm、見かけ嵩比重0.25〜0.80g/ml、落下秒数5〜15秒/100ml-ポリマー粒子であることが好ましい。 【0012】 上記のようなプロピレン系ブロック共重合体は、 平均粒径が5μmの粒子含有量が20重量%以下の粒子状触媒成分からなるチーグラー触媒の存在下に、 (i)プロピレン95〜100モル%と、プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィン0〜5モル%とを重合させて、 23℃n-デカン可溶成分が2重量%以下であり、かつその23℃n-デカン不溶成分についてのペンタッドアイソタクティシティI5が0.97以上であるポリプロピレン成分を形成し、次いで (ii)エチレンと炭素数3〜10のα-オレフィンとを共重合させてエチレン/α-オレフィンランダム共重合成分を形成させることにより製造される。 【0013】 【0014】 【発明の具体的説明】 以下、まず本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体について具体的に説明する。 【0015】 本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、23℃n-デカンで溶媒分別することによって、[A]23℃n-デカン不溶成分と[B]23℃n-デカン可溶成分とに分別されるが、 [A]23℃n-デカン不溶成分を40〜85重量%好ましくは50〜80重量%さらに好ましくは60〜80重量%の量で、 [B]23℃n-デカン可溶成分を15〜60重量%好ましくは20〜50重量%さらに好ましくは20〜40重量%の量で含有している。 【0016】 プロピレン系ブロック共重合体の23℃n-デカンによる溶媒分別は次のようにして行われる。 攪拌装置付き1リットルのフラスコに、重合体試料3gと、2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール20mgと、n-デカン500mlとを入れ、145℃の油浴上で加熱溶解させる。重合体試料が溶解した後、3時間かけて80℃まで、3時間かけて46℃まで、さらに2時間かけて23℃まで徐々に冷却し、続いて23℃の水浴上で20時間保持する。析出した重合体を含むn-デカン懸濁液を、G4(またはG2)グラスフィルタで濾過分離する。分離された固体部を減圧乾燥して、これを23℃n-デカン不溶成分とした。一方分離された溶液部からは、10mmHg、150℃でn-デカンを蒸発させることにより23℃n-デカン可溶成分を得た。 【0017】 上記のように23℃n-デカンで溶媒分別することにより得られる本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の[A]23℃n-デカン不溶成分および[B]23℃n-デカン可溶成分は、下記のような特性を有している。 【0018】 [A]23℃n-デカン不溶成分 本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の23℃n-デカン不溶成分は、 (1)プロピレンから誘導される構成単位を85〜100モル%好ましくは95〜100モル%の量で、プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を0〜15モル%好ましくは0〜5モル%の量で含有している。 【0019】 このようなプロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンとしては、たとえばエチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセンおよびこれらの組合わせが挙げられる。 【0020】 (2)23℃n-デカン不溶成分[A]は、135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が0.1〜20dl/g好ましくは0.5〜15dl/g特に好ましくは0.7〜12dl/gである。 【0021】 (3)23℃n-デカン不溶成分[A]は、さらにその60℃n-デカン不溶成分について測定されるペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上である。この60℃n-デカン不溶成分は、上記のようなn-デカン溶媒分別方法に準じて、濾過分離を60℃で行なったときに得られる固体部である。 【0022】 このペンタッドアイソタクティシティI5が0.98以上であるプロピレン系ブロック共重合体は、剛性に優れている。 なおこのペンタッドアイソタクティシティI5は、エイ・ザムベル(A.Zambelli)らにより、Macromolecules6、925(1973)に提案された方法すなわち13C-NMR法(核磁気共鳴法)によって測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクティック分率であり、プロピレン単位が5個連続してアイソタクティック結合したプロピレンモノマー単位の分率である。 【0023】 13C-NMRスペクトルにおけるピークの帰属は、Macromolecules8、687(1975)の記載に基づいて行われる。また13C-NMRは、フーリエ変換NMR[500MHz(水素核測定時)]装置を用いて、周波数125MHzで、20000回の積算測定することにより、ジクナル検出限界を0.001まで向上させて測定することができる。 【0024】 また上記のような23℃n-デカン不溶成分[A]は、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(MFR)が、20〜150g/10分であることが望ましい。 【0025】 [B]23℃n-デカン可溶成分 本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の23℃n-デカン可溶成分[B]は、実質的にプロピレン系ブロック共重合体の非晶質部分(ゴム成分)であり、主としてプロピレン系ブロック共重合体中のエチレン/他のα-オレフィン共重合部分である。 【0026】 本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の23℃n-デカン可溶成分[B]は、 (1)エチレンから誘導される構成単位を20〜80モル%好ましくは30〜50モル%の量で、 炭素数3〜10のα-オレフィンから誘導される構成単位を20〜80モル%好ましくは50〜70モル%の量で含有している。 【0027】 炭素数3〜10のα-オレフィンとしては、たとえばプロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセンおよびこれらの組合わせが挙げられる。 【0028】 (2)またこの23℃n-デカン可溶成分[B]は、135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]が5〜15dl/g好ましくは6〜11dl/gである。 本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、前述のような高結晶性の23℃n-デカン不溶成分[A]とともに上記のような23℃n-デカン可溶成分[B]を特定量含有しており、剛性に優れるとともに耐衝撃強度にも優れている。 【0029】 このようなプロピレン系ブロック共重合体は、プロピレン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサンなどの単独重合体または共重合体を、たとえば前重合により形成される予備重合体として含有していると、結晶化速度が大きく高剛性である。 【0030】 本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は粒子状であることが好ましく、具体的に平均粒径が250〜8000μm好ましくは300〜1000μmであり、見かけ嵩比重が0.25〜0.80g/ml好ましくは0.30〜0.50g/mlであり、落下秒数が5〜15秒/100ml-ポリマー好ましくは5〜10秒/100ml-ポリマーの粒子であることが望ましい。 【0031】 なおポリマー粒子の落下秒数は、下記のように測定される。 バイブレーターを装着した直径86mm、長さ168mm、出口直径10.5mmの円筒型ロートに100mlの重合体を入れる。バイブレーターでロートを振動させながら100mlの重合体が落下する時間(秒)を測定する。 【0032】 また本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、そのTダイ成形フィルム中に含有される直径0.1mm以上のゴム塊数が、5個/100cm2以下であることが望ましい。 【0033】 上記のような本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、メルトフローレート(MFR)が、0.02〜150g/10分好ましくは0.1〜100g/10分であることが望ましい。 【0034】 MFRが上記のような値であるプロピレン系ブロック共重合体は、流動性、成形性に優れており大型品に成形することもできる。 本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体には、必要に応じて、核剤、ゴム成分、耐熱安定剤、耐候安定剤、停電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、含量、天然油、合成油、ワックス、充填剤などを配合することができる。 【0035】 プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 上記のようなプロピレン系ブロック共重合体は、チーグラー触媒の存在下に、 (i)プロピレンを重合させてポリプロピレン成分を形成し、次いで (ii)エチレンと炭素数3〜10のα-オレフィンとを共重合させてエチレン/α-オレフィンランダム共重合成分を形成させることにより製造される。 【0036】 以下にまず本発明で用いられるチーグラー触媒について説明する。 チーグラー触媒 本発明で用いられるチーグラー触媒は、アイソ特異性を示すチーグラー触媒であって、たとえば遷移金属触媒成分と有機金属触媒成分とからなる。この遷移金属触媒成分としては、三塩化チタン触媒成分、マグネシウム、ハロゲン、チタンおよび電子供与体からなるMgCl2担持型チタン触媒成分、架橋しあった2個のシクロペンタジエニル基を配位子として有するメタロセン触媒成分などが挙げられ、また有機金属触媒成分としては、トリアルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムオキシドなどが挙げられる。 【0037】 これらのうち、MgCl2担持型チタン触媒成分(固体状チタン触媒成分)と有機金属触媒成分とからなる触媒について以下に説明する。 本発明で用いられるMgCl2担持型触媒成分を含むチーグラー触媒は、 (a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、 (b)有機金属化合物触媒成分と、 (c)下記式(c-i)で示される有機ケイ素化合物; RanSi(ORb)4-n …(c-i) (式中、nは1、2または3であり、 nが1であるとき、Raは2級または3級の炭化水素基であり、 nが2または3であるとき、Raの少なくとも1つは2級または3級の炭化水素基であり、Raは同じであっても異なっていてもよく、 Rbは炭素数1〜4の炭化水素基であって、4-nが2または3であるとき、ORbは同じであっても異なっていてもよい。) とからなる。 【0038】 上記のような固体状チタン触媒成分(a)は、下記のようなマグネシウム化合物、チタン化合物および電子供与体(d)を接触させることにより調製することができる。 【0039】 固体状チタン触媒成分(a)の調製に用いられるチタン化合物として具体的には、たとえば、次式で示される4価のチタン化合物を挙げることができる。 Ti(OR)gX4-g (式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4である) このようなチタン化合物として、具体的には、 TiCl4、TiBr4、TiI4などのテトラハロゲン化チタン; Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(On-C4H9)Cl3、Ti(OC2H5)Br3、Ti(O-iso-C4H9)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン; Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(On-C4H9)2Cl2、Ti(OC2H5)2Br2などのジハロゲン化ジアルコキシチタン; Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(On-C4H9)3Cl、Ti(OC2H5)3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン; Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(On-C4H9)4、Ti(O-iso-C4H9)4、Ti(O-2-エチルヘキシル)4などのテトラアルコキシチタンなどを例示することができる。 【0040】 これらの中ではハロゲン含有チタン化合物が好ましく、さらにテトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタンが好ましい。これらチタン化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらにこれらのチタン化合物は、炭化水素化合物あるいはハロゲン化炭化水素化合物などに希釈されていてもよい。 【0041】 固体状チタン触媒成分(a)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、還元性を有するマグネシウム化合物および還元性を有しないマグネシウム化合物を挙げることができる。 【0042】 ここで還元性を有するマグネシウム化合物としては、たとえばマグネシウム-炭素結合あるいはマグネシウム-水素結合を有するマグネシウム化合物を挙げることができる。このような還元性を有するマグネシウム化合物の具体的な例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどを挙げることができる。これらマグネシウム化合物は、単独で用いることもできるし、後述する有機金属化合物と錯化合物を形成していてもよい。また、これらマグネシウム化合物は、液体であってもよく、固体であってもよいし、金属マグネシウムと対応する化合物とを反応させることで誘導してもよい。さらに触媒調製中に上記の方法を用いて金属マグネシウムから誘導することもできる。 【0043】 還元性を有しないマグネシウム化合物の具体的な例としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n-オクトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなマグネシウムのカルボン酸塩などを例示することができる。 【0044】 これら還元性を有しないマグネシウム化合物は、上述した還元性を有するマグネシウム化合物から誘導した化合物あるいは触媒成分の調製時に誘導した化合物であってもよい。 【0045】 還元性を有しないマグネシウム化合物を、還元性を有するマグネシウム化合物から誘導するには、たとえば、還元性を有するマグネシウム化合物を、ハロゲン、ハロゲン含有有機ケイ素化合物、ハロゲン含有アルミニウム化合物などのハロゲン化合物、アルコール、エステル、ケトン、アルデヒドなどの活性な炭素-酸素結合を有する化合物、ポリシロキサン化合物と接触させればよい。 【0046】 なお本発明において、マグネシウム化合物は上記の還元性を有するマグネシウム化合物および還元性を有しないマグネシウム化合物の外に、上記のマグネシウム化合物と他の金属との錯化合物、複化合物あるいは他の金属化合物との混合物であってもよい。さらに、上記の化合物を2種以上組み合わせて用いてもよい。 【0047】 固体状チタン触媒成分(a)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、上述した以外にも多くのマグネシウム化合物が使用できるが、最終的に得られる固体状チタン触媒成分(a)中において、ハロゲン含有マグネシウム化合物の形をとることが好ましく、従ってハロゲンを含まないマグネシウム化合物を用いる場合には、調製の途中でハロゲン含有化合物と接触反応させることが好ましい。 【0048】 上述したマグネシウム化合物の中では、還元性を有しないマグネシウム化合物が好ましく、ハロゲン含有マグネシウム化合物がさらに好ましく、塩化マグネシウム、アルコキシ塩化マグネシウム、アリロキシ塩化マグネシウムが特に好ましい。 【0049】 本発明で用いられる固体状チタン触媒成分(a)は、上記のようなマグネシウム化合物と、前述したようなチタン化合物および電子供与体(d)を接触させることにより形成される。 【0050】 固体状チタン触媒成分(a)の調製の際に用いられる電子供与体(d)としては、具体的には下記のような化合物が挙げられる。 メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素数1〜18のアルコール類、 トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素数1〜18のハロゲン含有アルコール類、 フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトールなどの低級アルキル基を有してもよい炭素数6〜20のフェノール類、 アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾキノンなどの炭素数3〜15のケトン類、 アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素数2〜15のアルデヒド類、 ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、クマリン、フタリド、炭酸エチルなどの炭素数2〜18の有機酸エステル類、 アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリドなどの炭素数2〜15の酸ハライド類、 メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素数2〜20のエーテル類、 酢酸N,N-ジメチルアミド、安息香酸N,N-ジエチルアミド、トルイル酸N,N-ジメチルアミドなどの酸アミド類、 メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアミン類、 アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリニトリルなどのニトリル類、 無水酢酸、無水フタル酸、無水安息香酸などの酸無水物、 ピロール、メチルピロール、ジメチルピロールなどのピロール類、 ピロリン、ピロリジン、インドール、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ジメチルピリジン、エチルメチルピリジン、トリメチルピリジン、フェニルピリジン、ベンジルピリジン、塩化ピリジンなどのピリジン類、 ピペリジン類、キノリン類、イソキノリン類などの含窒素環状化合物、テトラヒドロフラン、1,4-シネオール、1,8-シネオール、ピノールフラン、メチルフラン、ジメチルフラン、ジフェニルフラン、ベンゾフラン、クマラン、フタラン、テトラヒドロピラン、ピラン、ジテドロピランなどの環状含酸素化合物などが挙げられる。 【0051】 これらの他にも、水、アニオン系、カチオン系、非イオン系の界面活性剤を用いることもできる。またさらに有機酸エステルとして、下記一般式で表される骨格を有する多価カルボン酸エステルを特に好ましい例として挙げることができる。 【0052】 【化1】 【0053】 上記式中、R1は置換または非置換の炭化水素基、R2、R5、R6は、水素または置換または非置換の炭化水素基、R3、R4は、水素あるいは置換または非置換の炭化水素基であり、好ましくはその少なくとも一方は置換または非置換の炭化水素基である。またR3とR4とは互いに連結されて環状構造を形成していてもよい。炭化水素基R1〜R6が置換されている場合の置換基は、N、O、Sなどの異原子を含み、たとえば、C-O-C、COOR、COOH、OH、SO3H、-C-N-C-、NH2などの基を有する。 【0054】 このような多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、 コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、メチルコハク酸ジエチル、α-メチルグルタル酸ジイソブチル、メチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、イソプロピルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、フェニルマロン酸ジエチル、ジエチルマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジエチル、β-メチルグルタル酸ジイソプロピル、エチルコハク酸ジアルリル、フマル酸ジ-2-エチルヘキシル、イタコン酸ジエチル、シトラコン酸ジオクチルなどの脂肪族ポリカルボン酸エステル、 1,2-シクロヘキサンカルボン酸ジエチル、1,2-シクロヘキサンカルボン酸ジイソブチル、テトラヒドロフタル酸ジエチル、ナジック酸ジエチルなどの脂環族ポリカルボン酸エステル、 フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸モノイソブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸エチルイソブチル、フタル酸ジn-プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジn-ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジn-ヘプチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジn-オクチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジフェニル、ナフタリンジカルボン酸ジエチル、ナフタリンジカルボン酸ジブチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸ジブチルなどの芳香族ポリカルボン酸エステル、 3,4-フランジカルボン酸などの異節環ポリカルボン酸エステルなどが挙げられる。 【0055】 また多価カルボン酸エステルの他の例としては、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジn-ブチル、セバシン酸ジn-オクチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシルなどの長鎖ジカルボン酸のエステルなどを挙げることができる。 【0056】 本発明では、電子供与体(d)として、これらのうち、カルボン酸エステルを用いることが好ましく、特に多価カルボン酸エステル、とりわけフタル酸エステル類を用いることが好ましい。 【0057】 これらの化合物は2種以上併用することもできる。またこの電子供与体(d)として、後述するような一般式(c-i)、(c-ii)、(c-iii)で示される有機ケイ素化合物を用いることもできる。 【0058】 また上記のようなチタン化合物、マグネシウム化合物および電子供与体(d)を接触させる際に、下記のような粒子状担体を用い、担体担持型の固体状チタン触媒成分(a)を調製することもできる。 【0059】 このような担体としては、Al2O3、SiO2、B2O3、MgO、CaO、TiO2、ZnO、Zn2O、SnO2、BaO、ThOおよびスチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの樹脂などを挙げることができる。これら担体の中でも、好ましくはSiO2、Al2O3、MgO、ZnO、Zn2Oなどを挙げることができる。 【0060】 なお上記の成分は、たとえばケイ素、リン、アルミニウムなどの他の反応試剤の存在下に接触させてもよい。 固体状チタン触媒成分(a)は、上記したようなチタン化合物、マグネシウム化合物および電子供与体(d)を接触させることにより製造することができ、公知の方法を含むあらゆる方法により製造することができる。 【0061】 これら固体状チタン触媒成分(a)の具体的な製造方法を数例挙げて以下に簡単に述べる。 (1)マグネシウム化合物、電子供与体および炭化水素溶媒からなる溶液を、有機金属化合物と接触反応させて固体を析出させた後、または析出させながらチタン化合物と接触反応させる方法。 【0062】 (2)マグネシウム化合物と電子供与体からなる錯体を有機金属化合物と接触、反応させた後、チタン化合物を接触反応させる方法。 (3)無機担体と有機マグネシウム化合物との接触物に、チタン化合物および好ましくは電子供与体を接触反応させる方法。この際、あらかじめ該接触物をハロゲン含有化合物および/または有機金属化合物と接触反応させてもよい。 【0063】 (4)マグネシウム化合物、電子供与体、場合によっては更に炭化水素溶媒を含む溶液と無機または有機担体との混合物から、マグネシウム化合物の担持された無機または有機担体を得、次いでチタン化合物を接触させる方法。 【0064】 (5)マグネシウム化合物、チタン化合物、電子供与体、場合によっては更に炭化水素溶媒を含む溶液と無機または有機担体との接触により、マグネシウム、チタンの担持された固体状チタン触媒成分を得る方法。 【0065】 (6)液状状態の有機マグネシウム化合物をハロゲン含有チタン化合物と接触反応させる方法。このとき電子供与体を1回は用いる。 (7)液状状態の有機マグネシウム化合物をハロゲン含有化合物と接触反応後、チタン化合物を接触させる方法。このとき電子供与体を1回は用いる。 【0066】 (8)アルコキシ基含有マグネシウム化合物をハロゲン含有チタン化合物と接触反応する方法。このとき電子供与体を1回は用いる。 (9)アルコキシ基含有マグネシウム化合物および電子供与体からなる錯体をチタン化合物と接触反応する方法。 【0067】 (10)アルコキシ基含有マグネシウム化合物および電子供与体からなる錯体を有機金属化合物と接触後チタン化合物と接触反応させる方法。 (11)マグネシウム化合物と、電子供与体と、チタン化合物とを任意の順序で接触、反応させる方法。この反応は、各成分を電子供与体および/または有機金属化合物やハロゲン含有ケイ素化合物などの反応助剤で予備処理してもよい。なお、この方法においては、上記電子供与体を少なくとも一回は用いることが好ましい。 【0068】 (12)還元能を有しない液状のマグネシウム化合物と液状チタン化合物とを、好ましくは電子供与体の存在下で反応させて固体状のマグネシウム・チタン複合体を析出させる方法。 【0069】 (13)(12)で得られた反応生成物に、チタン化合物をさらに反応させる方法。 (14)(11)あるいは(12)で得られる反応生成物に、電子供与体およびチタン化合物をさらに反応させる方法。 【0070】 (15)マグネシウム化合物と好ましくは電子供与体と、チタン化合物とを粉砕して得られた固体状物を、ハロゲン、ハロゲン化合物および芳香族炭化水素のいずれかで処理する方法。なお、この方法においては、マグネシウム化合物のみを、あるいはマグネシウム化合物と電子供与体とからなる錯化合物を、あるいはマグネシウム化合物とチタン化合物を粉砕する工程を含んでもよい。また、粉砕後に反応助剤で予備処理し、次いでハロゲンなどで処理してもよい。反応助剤としては、有機金属化合物あるいはハロゲン含有ケイ素化合物などが挙げられる。 【0071】 (16)マグネシウム化合物を粉砕した後、チタン化合物と接触・反応させる方法。この際、粉砕時および/または接触・反応時に電子供与体や、反応助剤を用いることが好ましい。 【0072】 (17)上記(11)〜(16)で得られる化合物をハロゲンまたはハロゲン化合物または芳香族炭化水素で処理する方法。 (18)金属酸化物、有機マグネシウムおよびハロゲン含有化合物との接触反応物を、好ましくは電子供与体およびチタン化合物と接触させる方法。 【0073】 (19)有機酸のマグネシウム塩、アルコキシマグネシウム、アリーロキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物を、チタン化合物および/またはハロゲン含有炭化水素および好ましくは電子供与体と反応させる方法。 【0074】 (20)マグネシウム化合物とアルコキシチタンとを少なくとも含む炭化水素溶液と、チタン化合物および/または電子供与体とを接触させる方法。この際ハロゲン含有ケイ素化合物などのハロゲン含有化合物を共存させることが好ましい。 【0075】 (21)還元能を有しない液状状態のマグネシウム化合物と有機金属化合物とを反応させて固体状のマグネシウム・金属(アルミニウム)複合体を析出させ、次いで、電子供与体およびチタン化合物を反応させる方法。 【0076】 固体状チタン触媒成分(a)を調製する際に用いられる上記各成分の使用量は、調製方法によって異なり一概に規定できないが、たとえばマグネシウム化合物1モル当り、電子供与体(d)は0.01〜5モル、好ましくは0.1〜1モルの量で用いられ、チタン化合物は0.01〜1000モル、好ましくは0.1〜200モルの量で用いられる。 【0077】 このようにして得られる固体状チタン触媒成分(a)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有している。この固体状チタン触媒成分(a)において、ハロゲン/チタン(原子比)は約2〜200、好ましくは約4〜100であり、前記電子供与体/チタン(モル比)は約0.01〜100、好ましくは約0.2〜10であり、マグネシウム/チタン(原子比)は約1〜100、好ましくは約2〜50であることが望ましい。 【0078】 本発明で用いられる(b)有機金属化合物触媒成分としては、周期律表第I族〜第III族金属の有機金属化合物が挙げられ、具体的には、下記のような化合物が挙げられる。 【0079】 (b-1)一般式R1mAl(OR2)nHpXq (式中、R1およびR2は炭素原子を通常1〜15個、好ましくは1〜4個含む炭化水素基であり、これらは互いに同一でも異なってもよい。Xはハロゲン原子を表し、0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)で表される有機アルミニウム化合物。 【0080】 (b-2)一般式M1AlR14 (式中、M1はLi、Na、Kであり、R1は前記と同じである)で表される第I族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。 【0081】 (b-3)一般式R1R2M2 (式中、R1およびR2は上記と同様であり、M2はMg、ZnまたはCdである)で表される第II族または第III族のジアルキル化合物。 【0082】 前記の[B-1]に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物を例示できる。 一般式R1mAl(OR2)3-m (式中、R1およびR2は前記と同様であり、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である)で表される化合物、 一般式R1mAlX3-m (式中、R1は前記と同様であり、Xはハロゲンであり、mは好ましくは0<m<3である)で表される化合物、 一般式R1mAlH3-m (式中、R1は前記と同様であり、mは好ましくは2≦m<3である)で表される化合物、 一般式R1mAl(OR2)nXq (式中、R1およびR2は前記と同様であり、Xはハロゲン、0<m≦3、0≦n<3、0≦q<3であり、かつm+n+q=3である)で表される化合物などを挙げることができる。 【0083】 (b-1)に属するアルミニウム化合物としては、より具体的には、 トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、 トリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、 エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド、 R12.5Al(OR2)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、 ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、 エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、 ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、 エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、 エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムを挙げることができる。 【0084】 また(b-1)に類似する化合物としては、酸素原子や窒素原子を介して2以上のアルミニウムが結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物としては、たとえば (C2H5)2AlOAl(C2H5)2、 (C4H9)2AlOAl(C4H9)2、 (C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2 などの他に、 メチルアルミノオキサンなどのアルミノオキサン類を挙げることもできる。 【0085】 前記(b-2)に属する化合物としては、 LiAl(C2H5)4、 LiAl(C7H15)4などを挙げることができる。 【0086】 これらの中では有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。 本発明で用いられる(c)有機ケイ素化合物は、下記式(c-i)で示される。 RanSi(ORb)4-n …(c-i) (式中、nは1、2または3であり、 nが1であるとき、Raは2級または3級の炭化水素基であり、 nが2または3であるとき、Raの少なくとも1つは2級または3級の炭化水素基であり、Raは同じであっても異なっていてもよく、 Rbは炭素数1〜4の炭化水素基であって、4-nが2または3であるとき、ORbは同じであっても異なっていてもよい。) この式(c-i)で示される有機ケイ素化合物において、2級または3級の炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、置換基を有するこれらの基およびSiに隣接する炭素が2級または3級である炭化水素基が挙げられる。より具体的に、 置換シクロペンチル基としては、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2-エチルシクロペンチル基、2-n-ブチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、2,4-ジメチルシクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、2,3-ジエチルシクロペンチル基、2,3,4-トリメチルシクロペンチル基、2,3,5-トリメチルシクロペンチル基、2,3,4-トリエチルシクロペンチル基、テトラメチルシクロペンチル基、テトラエチルシクロペンチル基などのアルキル基を有するシクロペンチル基を例示することができる。 【0087】 置換シクロペンテニル基としては、2-メチルシクロペンテニル基、3-メチルシクロペンテニル基、2-エチルシクロペンテニル基、2-n-ブチルシクロペンテニル基、2,3-ジメチルシクロペンテニル基、2,4-ジメチルシクロペンテニル基、2,5-ジメチルシクロペンテニル基、2,3,4-トリメチルシクロペンテニル基、2,3,5-トリメチルシクロペンテニル基、2,3,4-トリエチルシクロペンテニル基、テトラメチルシクロペンテニル基、テトラエチルシクロペンテニル基などのアルキル基を有するシクロペンテニル基を例示することができる。 【0088】 置換シクロペンタジエニル基としては、2-メチルシクロペンタジエニル基、3-メチルシクロペンタジエニル基、2-エチルシクロペンタジエニル基、2-n-ブチルシクロペンテニル基、2,3-ジメチルシクロペンタジエニル基、2,4-ジメチルシクロペンタジエニル基、2,5-ジメチルシクロペンタジエニル基、2,3-ジエチルシクロペンタジエニル基、2,3,4-トリメチルシクロペンタジエニル基、2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル基、2,3,4-トリエチルシクロペンタジエニル基、2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル基、2,3,4,5-テトラエチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエニル基、1,2,3,4,5-ペンタエチルシクロペンタジエニル基などのアルキル基を有するシクロペンタジエニル基を例示することができる。 【0089】 またSiに隣接する炭素が2級炭素である炭化水素基としては、i-プロピル基、s-ブチル基、s-アミル基、α-メチルベンジル基などを例示することができ、Siに隣接する炭素が3級炭素である炭化水素基としては、t-ブチル基、t-アミル基、α,α’-ジメチルベンジル基、アドマンチル基などを例示することができる。 【0090】 このような式(c-i)で示される有機ケイ素化合物は、nが1である場合には、シクロペンチルトリメトキシシラン、2-メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,3-ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類が例示される。 【0091】 nが2である場合には、 ジシクロペンチルジエトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン類が例示される。 【0092】 nが2である場合には、式(c-i)で示される有機ケイ素化合物としては、下記のような式(c-ii)で示されるジメトキシ化合物も挙げられる。 【0093】 【化2】 【0094】 式中、RaおよびRcは、それぞれ独立に、シクロペンチル基、置換シクロペンチル基、シクロペンテニル基、置換シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、あるいは、Siに隣接する炭素が2級炭素または3級炭素である炭化水素基を示す。 【0095】 このような式(c-ii)で示される有機ケイ素化合物としては、たとえば、 ジシクロペンチルジメトキシシラン、 ジシクロペンテニルジメトキシシラン、 ジシクロペンタジエニルジメトキシシラン、 ジt-ブチルジメトキシシラン、 ジ(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(3-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(2-エチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(2,4-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(2,5-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3-ジエチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,4-トリメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,5-トリメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,4-トリエチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(テトラメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(テトラエチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、 ジ(2-メチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(3-メチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2-エチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2-n-ブチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3-ジメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,4-ジメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,5-ジメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,4-トリメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,5-トリメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,4-トリエチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(テトラメチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(テトラエチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2-メチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(3-メチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2-エチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2-n-ブチルシクロペンテニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,5-ジメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3-ジエチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,4-トリエチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,4,5-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(2,3,4,5-テトラエチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジ(1,2,3,4,5-ペンタエチルシクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、 ジt-アミル-ジメトキシシラン、 ジ(α,α’-ジメチルベンジル)ジメトキシシラン、 ジ(アドマンチル)ジメトキシシラン、 アドマンチル-t-ブチルジメトキシシラン、 シクロペンチル-t-ブチルジメトキシシラン、 ジイソプロピルジメトキシシラン、 ジs-ブチルジメトキシシラン、 ジs-アミルジメトキシシラン、 イソプロピル-s-ブチルジメトキシシランなどが挙げられる。 【0096】 nが3である場合には、 トリシクロペンチルメトキシシラン、トリシクロペンチルエトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルエトキシシラン、シクロペンチルジメチルメトキシシラン、シクロペンチルジエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシランなどのモノアルコキシシラン類などが挙げられる。 【0097】 これらのうち、ジメトキシシラン類特に式(c-ii)で示されるジメトキシシラン類が好ましく、具体的に、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ-t-ブチルジメトキシシラン、ジ(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(3-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ-t-アミルジメトキシシランが好ましい。 【0098】 上記の化合物は、2種以上組み合わせて用いてもよい。 本発明で用いられるチーグラー触媒は、上記のように固体状チタン触媒成分(a)などの固体状触媒成分から形成されているが、この固体状触媒成分は、平均粒径が10〜50μm好ましくは15〜30であることが望ましく、また平均粒径5μm以下の粒子含量が20重量%以下好ましくは10重量%以下であることが望ましい。 【0099】 なお、触媒の粒径は液相沈降法を基本原理とする遠心沈降式自動粒度分布測定装置で行われる。これはStokesの沈降式、および吸光度と粒子濃度との比例関係を組み合わせた測定法であり、一定の密度と粘性係数をもつ溶媒中に存在する触媒はStokesの沈降式に従って一定の速度で沈降する。触媒粒径の大きさにより沈降速度が異なり、この違いにより粒径の大きさを決定することができる。 【0100】 予備重合 本発明では、上記のようなチーグラー触媒を形成する触媒成分にオレフィンを予備重合させて予備重合触媒成分を形成して用いることが好ましい。 【0101】 予備重合は、上記のような触媒成分に、たとえば不活性な炭化水素媒体の共存下に、炭素数2〜10のオレフィンを重合または共重合させることにより行われる。 【0102】 炭素数2〜10のオレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、3,5,5-メチル-1-ヘキセン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられ、これらのうちプロピレン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサンなどが好ましく用いられる。 【0103】 予備重合に用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうち、脂肪族炭化水素を用いることが好ましく、特に沸点180℃以下の脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。 【0104】 予備重合の際の反応温度は、生成する予備重合体が実質的に不活性炭化水素媒体中に溶解しないような温度であることが好ましく、通常約-20〜+100℃、好ましくは約-20〜+80℃、さらに好ましくは0〜+40℃であることが望ましい。 【0105】 予備重合においては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。本発明では、予備重合は、上記のような固体状チタン触媒成分(a)1g当り0.01〜2000g好ましくは1〜500g徳に好ましくは2〜200gの予備重合体が生成するように行うことが望ましい。 【0106】 予備重合は、バッチ式、半連続式あるいは連続式いずれの方法で行ってもよい。 上記のような固体状チタン触媒成分(a)と有機金属化合物触媒成分(b)と特定の有機ケイ素化合物(c)とからなるチーグラー触媒または予備重合触媒成分を用いると、分子量の高い重合体が得られ易く、高分子量のポリプロピレン成分、高分子量のエチレン/α-オレフィン共重合成分を含むプロピレン系ブロック共重合体が得られ易い。 【0107】 プロピレン系ブロック共重合体の製造 本発明では、上記のようなチーグラー触媒の存在下に、まず (i)プロピレンを重合させてポリプロピレン成分を形成し、次いで (ii)エチレンと炭素数3〜10のα-オレフィンとを共重合させてエチレン/α-オレフィン共重合成分を形成させることによりプロピレン系ブロック共重合体を製造する。 【0108】 本発明では、プロピレン系ブロック共重合体を製造するに際しては、バッチ式重合法、半連続式重合法、連続式重合法のいずれの方法においても行なうことができるが、バッチ式で行なうことが好ましく、具体的に、(i)プロピレン重合をバッチ式で行うことが好ましく、さらに(i)プロピレン重合と(ii)エチレン/α-オレフィン共重合のいずれもバッチ式で行うことが好ましい。 【0109】 (i)プロピレンの重合 プロピレンの重合工程では、23℃n-デカン可溶成分が2重量%以下好ましくは1.5重量%以下さらに好ましくは1.0重量%以下であり、かつその23℃n-デカン不溶成分についてのペンタッドアイソタクティシティI5が0.97以上好ましくは0.975以上さらに好ましくは0.980以上であるポリプロピレン成分を形成する。 【0110】 プロピレンの重合工程では、チーグラー触媒として、たとえば上述のような固体状チタン触媒成分(a)と、有機金属化合物触媒成分(b)と、式(c-i)で示される有機ケイ素化合物(c)とから形成される触媒が用いられるが、上記のようにして得られる予備重合触媒成分が用いられる場合には、予備重合触媒成分とともに有機金属化合物触媒成分(b)および/または有機ケイ素化合物(c)を用いることもできる。 【0111】 予備重合触媒成分とともに用いられる有機金属化合物触媒成分(b)および有機ケイ素化合物(c)は、予備重合触媒成分を調製する際に用いた有機金属化合物触媒成分(b)および有機ケイ素化合物(c)とそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。 【0112】 重合系内においては、固体状チタン触媒成分(a)または予備重合触媒成分は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は約0.0001〜2ミリモル、好ましくは約0.001〜1ミリモル、より好ましくは0.005〜0.5ミリモルの量で用いられる。有機金属化合物触媒成分(b)は、重合系中のチタン原子1モルに対し、通常1〜2000モル、好ましくは2〜1000モルの量で、有機ケイ素化合物(c)は、このチタン原子1モル当り、通常0.001〜5000モル、好ましくは0.01〜1000モルの量で用いられる。 【0113】 プロピレンの重合は、溶媒懸濁法、液状プロピレンを溶媒とする懸濁重合法、気相重合法などによって行うことができるが、溶媒懸濁法で行うことが好ましい。 【0114】 溶媒懸濁重合で用いられる重合溶媒としては、重合不活性な炭化水素を用いることができる。このような不活性炭化水素としては、具体的には、予備重合の際に用いたような炭化水素が挙げられる。これらのうち、脂肪族炭化水素が好ましく、特に沸点180℃以下の脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。 【0115】 また水素(連鎖移動剤)を用いて、ポリプロピレンの分子量を調節することができる。 重合は、通常、重合温度が約-50〜200℃好ましくは約50〜100℃で、常圧〜100Kg/cm2好ましくは約2〜50Kg/cm2の圧力下で実施される。 【0116】 上記のようなプロピレンの重合工程においては、プロピレンを単独重合させることが好ましいが、プロピレンに少量のプロピレン以外の炭素数2〜10のオレフィンを加えて共重合させることもできる。 【0117】 プロピレン以外の炭素数2〜10のα-オレフィンとしては、たとえばエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテンなどを用いることができ、これらを組合わせ用いてもよい。このような他のα-オレフィンから誘導される構成単位は、最終的にポリプロピレン成分中に、5モル%以下好ましくは4モル%以下さらに好ましくは3モル%以下の量で存在するように用いられる。 【0118】 このように形成されるポリプロピレン成分は、MFR(230℃、2.16kg)が、10〜500g/10分好ましくは10〜300g/10分であることが望ましい。 【0119】 (ii)エチレン/α-オレフィン共重合 本発明では、上記のようにしてポリプロピレン成分を製造した後、得られるポリプロピレンの触媒失活処理を行なうことなく、次いでエチレンと上述したような炭素数3〜10のα-オレフィンとを共重合させてエチレン/α-オレフィンランダム共重合成分を形成させる。 【0120】 上記のようにしてポリプロピレン成分を製造した後、エチレンと炭素数3〜10のα-オレフィンとを共重合させるに際して、この共重合系にさらに固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、有機ケイ素化合物(c)などを追加することもできる。 【0121】 エチレンと共重合されるα-オレフィンとしては、ポリプロピレン成分の製造の際に用いたような炭素数3〜10のα-オレフィンが用いられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテンなどが好ましく用いられる。これらは2種以上組合せて用いることもできる。 【0122】 またエチレンとα-オレフィンとを共重合させる際には、これらと共重合しうる他のオレフィンたとえばシクロオレフィン類、ビニル化合物類、ジエン類などを用いることもできる。 【0123】 共重合は、気相あるいは液相で行なうことができるが、液相特に溶媒懸濁重合で行なうことが好ましい。この際、重合溶媒としては、前述した不活性炭化水素が用いられるが、これらのうちでも沸点180℃以下の脂肪族炭化水素が好ましく用いられる。 【0124】 共重合系内においては、前記ポリプロピレン(i)は重合容積1リットル当り、10〜1000g、好ましくは10〜800g、特に好ましくは30〜500gの量で用いられる。また該ポリプロピレン中に含まれる固体状触媒成分(a)は、チタン原子に換算すると、重合容積1リットル当り、通常0.0001〜50ミリモル、好ましくは約0.001〜10ミリモルの量で存在する。 【0125】 共重合系に、固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、有機ケイ素化合物(c)などが追加される場合には、固体状チタン触媒成分(a)は、重合容積1リットル当り、0.0001〜20モル、好ましくは0.001〜10モルの量で、有機金属化合物触媒成分(b)は、重合系中のチタン原子1モルに対し、1〜2000モル、好ましくは約2〜1000モルの量で、有機ケイ素化合物(c)は、重合系のチタン原子1モル当り、0.001〜2000モル、好ましくは0.01〜1000モルの量で、それぞれ適宜用いられる。 【0126】 共重合時に、必要に応じて水素(連鎖移動剤)を添加して分子量を調節することもできる。 上記の共重合は、通常、重合温度が約-50〜200℃好ましくは約20〜100℃で、常圧〜100Kg/cm2好ましくは約2〜50Kg/cm2の重合圧力下に行なわれる。 【0127】 本発明では、この共重合を、反応条件を変えて2段以上に分けて行なうこともできる。 上記のように製造されたプロピレン系ブロック共重合体は、該共重合体と反応不活性な炭化水素で洗浄されることにより、粒子性状に優れたプロピレン系ブロック共重合体粒子を得ることができ好ましい。この反応不活性な炭化水素としては、重合工程で重合溶媒として示した炭化水素を用いることができる。特に上記の共重合が、沸点180℃以下の炭化水素媒体の共存下に行われなかった場合または沸点180℃以上の媒体の共存下に行われた場合には、該共重合で得られたプロピレン系ブロック共重合体を、不活性な炭化水素特に沸点180℃以下の脂肪族炭化水素で洗浄することが好ましい。 【0128】 本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、プロピレン系ブロック共重合体の固体状チタン触媒成分(a)単位量に対する収率が高いため、本発明の方法によれば、生成物中の触媒残渣、特にハロゲン含量を相対的に低減させることができる。したがって、生成物中の触媒を除去する操作を省略できるとともに、得られたプロピレン系ブロック共重合体を用いて成形体を成形する際に、金型の発錆を有効に防止することができる。 【0129】 【発明の効果】 本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、剛性、耐熱性に優れるとともに耐衝撃性、靱性にも優れている。 【0130】 また本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体からTダイ成形されたフィルムでは、0.1mm以上のゴム塊数が少なく、外観に優れている。 このような本発明に係るプロピレン系ブロック共重合体は、広範な用途に利用することができ、特に自動車用内外装材、電気部品筺体などの用途に好適に用いられる。 【0131】 【実施例】 次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 【0132】 なお下記の実施例、比較例において、各物性は以下のようにして測定した。 (1)MFR:ASTM D1238に準拠して測定した。 (230℃、2.16kg荷重下) (2)曲げ弾性率(FM):ASTM D790に準拠して測定した。 【0133】 試験片 12.7mm(幅)×6.4mm(厚さ)×127mm(長さ) スパン間 100mm 曲げ速度 2mm/分 (3)アイゾット衝撃強度(IZ):ASTM D256に準拠して測定した。 【0134】 温度 23℃または-30℃ 試験片 12.7mm(幅)×6.4mm(厚さ)×64mm(長さ) ノッチは機械加工 (4)熱変形温度(HDT) ASTM D648に準拠して測定した。 【0135】 荷重4.6kg/cm2 (5)低温脆化温度(BTc) ASTM D746に準拠して測定した。 【0136】 試験片 2mm厚角板より打ち抜いた。 4.0mm(幅)×2.0mm(厚さ)×38.0mm(長さ) (6)ゴム塊個数 Tダイを取り付けた30mmφの一軸押出機にポリマーを装入して、冷却ロール温度25℃、樹脂温度230℃、3m/分の引取り速度で、幅30cm×厚さ50μmのフィルムに成形した。 【0137】 このようにTダイ成形されたフィルム中のゴム塊個数を数えた。 【0138】 【実施例1】 [固体状チタン触媒成分(a)の調製] 無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。 【0139】 このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。 【0140】 2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。 反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。 【0141】 上記のように調製された固体状チタン触媒成分(a)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を触媒組成を調べる目的で乾燥した。 このようにして得られた固体状チタン触媒成分(a)の組成は、チタン2.3重量%、塩素61重量%、マグネシウム19重量%、DIBP12.5重量%であった。 【0142】 またこの固体状チタン触媒成分(a)は、平均粒径が18.2μmであり、粒径5μm以下の粒子の含有量が5重量%であった。 [予備重合触媒成分-1の調製] 窒素置換された400mlのガラス製反応器に、精製ヘキサンを200ml装入した後、トリエチルアルミニウム20ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン4ミリモルおよび上記のように調製された固体状チタン触媒成分(a)をチタン原子換算で2ミリモル装入した後、プロピレンを7.3NL/hrの速度で1時間供給して重合させた。プロピレンの予備重合量は、固体状チタン触媒成分(a)1g当たり3gであった。 【0143】 予備重合後、濾過により液部を除去して固体部を分離した後、固体部をデカンにリスラリーすることにより予備重合触媒成分-1のデカン懸濁液を調製した。 [重合] 内容積2リットルのオートクレーブに、精製デカンを800ml装入し、室温でプロピレン雰囲気下、トリエチルアルミニウム0.75ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.15ミリモルおよび前記の予備重合により得られた予備重合触媒成分-1をチタン原子換算で0.015ミリモル装入した。水素を1.8Nリットル導入した後、プロピレンを導入しつつ80℃に昇温した。プロピレンを補給することにより重合圧力を7kg/cm2Gに保った。 【0144】 プロピレンを30分間重合させた後、60℃まで冷却して脱圧した後、未反応プロピレンを窒素で20分間パージした。 上記の重合によって製造されたポリプロピレン成分は、23℃n-デカン可溶成分含量が1.0重量%であり、また23℃n-デカン不溶成分について測定したI5が0.980であった。 【0145】 次いで、60℃、窒素雰囲気下、20Nmlの水素を一括添加した後、プロピレン68モル%/エチレン32モル%の混合ガスを導入して、重合温度60℃、重合圧力5kg/cm2Gの一定条件下に40分間重合させた。 【0146】 重合終了後、生成重合体を含むスラリーを60℃の温度で濾過して液相部を分離することにより白色粉末状重合体を得た。得られた白色粉末状重合体を、室温においてヘキサン1リットルで2回洗浄した。 【0147】 乾燥後の重合体の収量は210gであり、重合活性は14000g/ミリモル-Tiであった。また、MFRは2.2dg/minであった。 この粉末状重合体は、見かけ嵩比重が0.43g/mlであり、平均粒径が430μmであり、また110℃で1時間加熱した後の落下秒数が7.0秒/100mlであり、流動性は良好であった。 【0148】 またこの重合体を23℃n-デカンで溶媒分別すると、可溶成分量が31重量%であり、不溶成分量が69重量%であった。 該可溶成分は、エチレン含量が37モル%でり、極限粘度[η]が7.3dl/gであった。また該不溶成分は、MFRが130dg/minであり、ペンタッドアイソタクティシティI5が0.985であった。 【0149】 【実施例2】 実施例1において、プロピレン/エチレン混合ガスを重合させる際に、水素添加量を30Nmlに変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。 【0150】 【実施例3】 実施例1において、プロピレン/エチレン混合ガスを重合させる際に、水素を添加しなかった以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。 【0151】 【比較例1】 実施例1において、プロピレンを55分間重合させ、次いでプロピレン75モル%/エチレン25モル%混合ガスを15分間重合させた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。 【0152】 【比較例2】 実施例1において、プロピレン/エチレン混合ガスを重合させる際に、水素添加量を40Nmlに変えた以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。 【0153】 【比較例3】 [予備重合触媒成分-2の調製] 窒素置換された100リットルの反応器に、精製ヘキサンを40リットル装入した後、トリエチルアルミニウム5モル、ジシクロペンチルジメトキシシラン1モルおよび実施例1で調製された固体状チタン触媒成分(a)をチタン原子換算で0.5モル装入した後、20℃に攪拌維持しながらプロピレンを7.3kg/hrの速度で1時間供給して重合させた。プロピレンの予備重合量は、固体状チタン触媒成分(a)1g当たり3gであった。 【0154】 予備重合後、デカンテーションにより液部を除去して固体部を分離した後、固体部をn-ヘキサンにリスラリーすることにより予備重合触媒成分-2のn-ヘキサン懸濁液を調製した。 【0155】 [連続重合] 内容積200リットルのプロピレン重合器A、60リットルの脱圧ドラムB、200リットルのプロピレン/エチレン重合器C、60リットルの脱圧ドラムからなる連続装置を用いて重合を行った。 【0156】 液レベル130リットルの重合器Aに、ヘキサンを33リットル/hr、プロピレンを17kg/hrの量で連続的に供給し、水素を気相部の水素/プロピレンのモル分率が0.4モル/モルになるように供給した。さらにトリエチルアルミニウムを55ミリモル/hr、ジシクロペンチルジメトキシシランを11ミリモル/hrおよび上記で得られた予備重合触媒成分-2をTi原子換算で1.1ミリモル/hrの量で供給して、重合温度80℃、重合圧力7kg/cm2Gの一定条件下にプロピレンの重合を行なった。なおこの時のスラリー濃度は300g/リットルであった。 【0157】 また液レベル30リットルの脱圧ドラムBでは、圧力0.3kg/cm2G、温度60℃の一定条件下に、液相部に窒素を20Nm3/hrの量で供給してプロピレンおよび水素を除去した。なお脱圧ドラムBには、ヘキサンを20リットル/hrの量で連続的に供給した。 【0158】 液レベル130リットルの重合器Cでは、ヘキサンを38リットル/hr、プロピレンを9kg/hr、エチレンを4.5kg/hrの量で連続的に供給して、水素を気相部の水素/プロピレンのモル比率が0.005モル/モルになるように供給して、重合温度60℃、重合圧力5kg/cm2Gの一定条件下に、プロピレンとエチレンとの共重合を行った。なおこの時のスラリー濃度は200g/リットルであった。 【0159】 液レベル30リットルの脱圧ドラムDでは、温度65℃、圧力0.3kg/cm2Gの一定条件下に、液相部に窒素を20Nm3供給して、プロピレン、エチレンおよび水素を除去した。 【0160】 最終工程である脱圧ドラムDから抜き出されるスラリーは、デカンターでウエットケーキと母液に分離した。ウエットケーキをドライヤーにより温度90℃で乾燥して白色粉末状重合体を得た。得られた白色粉末状重合体の一部を採取し、室温においてヘキサン1リットルで2回洗浄した。 【0161】 重合器Dから抜き出される白色粉末重合体(乾燥後)の量は、毎時20kg/hrであり、重合活性は18500g/ミリモル-Tiであった。また、MFRは7.8dg/minであった。 【0162】 この粉末状重合体は、見かけ嵩比重が0.40g/ml、平均粒径が470μmであり、また110℃で1時間加熱した後の落下秒数が18秒/100mlであり、流動性に劣っていた。 【0163】 またこの重合体を23℃n-デカンで溶媒分別すると、可溶成分量が26.6重量%であり、不溶成分量が73.4重量%であった。 該可溶成分は、エチレン含量が36モル%であり、極限粘度[η]が6.9dl/gであった。また該不溶成分は、MFRが200dg/minであり、ペンタッドアイソタクティシティI5が0.983であった。 【0164】 結果を表1に示す。 【0165】 【表1】 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-07-21 |
出願番号 | 特願平6-78673 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(C08F)
P 1 651・ 531- YA (C08F) P 1 651・ 534- YA (C08F) P 1 651・ 113- YA (C08F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐藤 邦彦 |
特許庁審判長 |
井出 隆一 |
特許庁審判官 |
船岡 嘉彦 石井 あき子 |
登録日 | 2003-06-06 |
登録番号 | 特許第3437636号(P3437636) |
権利者 | 三井化学株式会社 |
発明の名称 | プロピレン系ブロック共重合体 |
代理人 | 鈴木 俊一郎 |
代理人 | 鈴木 俊一郎 |
代理人 | 牧村 浩次 |
代理人 | 牧村 浩次 |