ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A45D |
---|---|
管理番号 | 1124297 |
異議申立番号 | 異議2003-71938 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-06-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-08-01 |
確定日 | 2005-07-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3372333号「棒状化粧料の受皿」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3372333号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3372333号(請求項の数4)に係る発明についての出願は、平成5年12月15日に特許出願され、平成14年11月22日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、全請求項に係る特許について、申立人・近藤武より特許異議の申立がなされ、平成16年6月17日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である同年8月24日に訂正請求がされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 イ.訂正事項b 特許請求の範囲の請求項2の「前記芯材が筒状体である請求項1の受皿。」を独立請求項とし下記の新たな請求項1に訂正する。 ウ.訂正事項c 特許請求の範囲の請求項3の「前記芯材が棒状体である請求項1の受皿。」を独立請求項とし下記の新たな請求項2に訂正する。 エ.訂正事項d 特許請求の範囲の請求項4の「前記芯材を複数設けた請求項1ないし3のいずれか1項に記載の受皿。」を、新たな請求項1を引用する下記の新たな請求項3と、新たな請求項2を引用する下記の新たな請求項4に分ける。 オ.訂正事項e 明細書の段落【0007】における「支持部53は、外筒51の内周の一部と内筒52の外周の一部とを所定間隔をもって接続している。」との記載を「支持部53は、外筒51の内周の一部と内筒52の外周の一部とを、外筒53の周方向に沿って所定間隔をもって接続している。」と訂正する。 [新たな請求項] 【請求項1】 溶解状化粧料が注入されるとともに、容器内において、溶解状化粧料が硬化した棒状化粧料を保持する受皿であって、 前記受皿が、 一方の端部に成形型が取り付けられるとともに、溶解状化粧材料が、他方の端部である下端から注入され、前記下端付近まで充填される外筒と、 筒状体であって、前記外筒内に同軸状に配置される芯材と、 前記芯材を前記外筒内で支持する支持部とから構成され、 前記芯材が、棒状化粧料の軸方向に沿って前記外筒内に設けられ、 前記支持部が前記外筒の内周の一部と前記芯材の外周の一部とを所定間隔をもって接続したことを特徴とする棒状化粧料の受皿。 【請求項2】 溶解状化粧料が注入されるとともに、容器内において、溶解状化粧料が硬化した棒状化粧料を保持する受皿であって、 前記受皿が、 一方の端部に成形型が取り付けられるとともに、溶解状化粧材料が、他方の端部である下端から注入され、前記下端付近まで充填される外筒と、 棒状体であって、前記外筒内に同軸状に配置される芯材と、 前記芯材を前記外筒内で支持する支持部とから構成され、 前記芯材が、棒状化粧料の軸方向に沿って前記外筒内に設けられ、 前記支持部が前記外筒の内周の一部と前記芯材の外周の一部とを所定間隔をもって接続したことを特徴とする棒状化粧料の受皿。 【請求項3】 前記芯材が、棒状化粧料の軸に沿って並んで配置される複数の芯材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の受皿。 【請求項4】前記芯材が、棒状化粧料の軸に沿って並んで配置される複数の芯材から構成されることを特徴とする請求項2に記載の受皿。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 また、上記訂正事項b及びcは、引用形式の請求項を独立形式に書き換えると共に、明細書の段落【0002】、【0007】、【0008】及び図2、4、6、7の記載に基いて「受皿」、「外筒」、「芯材」、「支持部」の各構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 また、上記訂正事項dは、上記訂正事項aに伴い、請求項1ないし3を引用していた訂正前の請求項4を、訂正後の請求項1、2をそれぞれ独立して引用する新たな請求項3と請求項4に分けると共に、明細書の段落【0019】、【0020】及び図6の記載に基いて、「芯材」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 さらに、上記訂正事項eは、明細書の段落【0007】及び図1、5の記載に基いて、「支持部53」の構成を明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、上記いずれの訂正事項も、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)本件発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1ないし4」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載したとおりのものである。(上記2.(1)ア.の[新たな請求項]参照。) (2)取消しの理由の概要 本件発明1ないし4は、下記の刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきである。 記 刊行物1:米国特許第2815123号明細書(異議申立人の提出した 甲第1号証) 刊行物2:実願昭60-158621号(実開昭62-67515号)の マイクロフィルム(同甲第2号証) 刊行物3:実公昭50-31172号公報(同甲第3号証) 刊行物4:実願昭60-102114号(実開昭62-10818号)の マイクロフィルム(同甲第4号証) 刊行物5:実願昭59-109668号(実開昭61-23913号)の マイクロフィルム(同甲第5号証) 刊行物6:実願昭56-90628号(実開昭57-202811号)の マイクロフィルム(同甲第6号証) (3)引用刊行物に記載された発明 ア.取消しの理由で引用した刊行物1には、化粧料の受皿に関するものであって、図1〜6と共に次の事項が記載されている(和訳は異議申立人の提出した甲第1号証に添付された翻訳文抜粋参照)。 ・「本発明は、化粧料の容器に関するもので、特に口紅のような化粧用ポマード組成物の一端を受けとめ、かつ支えるための改良された受皿の構成に関する。」(第1欄第15〜18行) ・「棒状の化粧用ポマードは、いかなる従来組成物でもよいが、柔らかく塑性的で比較的滑りやすい材料であり、受皿内に保持機構によって保持されている。この保持機構は、平坦な底部28及び筒状の側壁30と間隔をあけて受皿内に取付けられているリング26形状の伸びた障害物を含み、リング26は、受皿の軸と一般に平行で半径方向に内側に伸びている複数のリブ若しくはフランジ32によって支持されている。保持手段は、望ましい実現形態としてはリング26の形であるが、受皿底及び側壁と間隔をもって受皿に横断的に拡がっている他のいかなる形の障害物でもよい。図4に示す通り、障害物又はリング26は、望ましくは受皿底部の円形孔34の上にあり、リング26の外径は孔34の直径と等しい。更に、障害物若しくはリング26は、その周りでの化粧料の流動を促進するために、断面厚みが受皿の口に向けて漸減するのが望ましい。受皿及び保持手段のデザインは、一体物として成型され得るものである。」(第2欄第53行〜第3欄第3行) ・「クレーム: 1.口紅組成物の端部を保持する受皿を備えた口紅容器; ここで受皿は、一般に筒状の壁面と、一般に円形でその縁が前記壁面から内側に所定間隔をあけて配置された開口部を有する一般に平らな底面と、前記壁面に固定されており、かつそこから半径方向内側に向かい前記開口部の縁と隣接する点まで伸びている複数個のリブと、その内側端部と接し前記リブに固定されているリング形状の障害物とを有しており、前記リングは一般に前記平らな底部と平行な平面内にあり、かつ前記底面と前記壁面から受皿内径の1/4〜1/10の距離をおいて配置されている。 2.前記リング状障害物の外径が、前記開口部の直径と略等しいような請求項1に記載の口紅容器。 3.リング状障害物の断面厚みが受皿口部に向かうに従い漸減するような請求項1に記載の口紅容器。」(第4欄第25〜44行) ・また、第3〜6図には、側壁30内に同軸状に且つ化粧用ポマード組成物の棒状物24の軸方向に沿ってリング26を配置し、複数のリブ32が側壁30の内周の一部とリング26の外周の一部とを所定間隔をもって接続した構成が示されている。 イ.同じく引用した刊行物4には、二色口紅成形用紅皿に関するものであって、第1〜3図と共に次の事項が記載されている。 ・「外皿2と該外皿2内に適宜の間隙を介して設けた内皿3との二重構造体からなる有底短筒状の皿体1の側面にピン4を突設すると共に皿体1の底部には前記外皿2及び内皿3の下部を夫々延長してなる周壁5,6を形成し、前記外皿2及び内皿3の底壁7,8に化粧料の注入口9,10を穿設し、更に前記外皿2の開口部に装着するカプセル11及び前記内皿3の開口部に装着するカプセル12とからなる二色口紅成形用紅皿。」(実用新案登録請求の範囲) ・「本案紅皿によって二色口紅を成形する場合は先ず内皿3の開口部にカプセル12を装着し、底部の注入口10から自動充填機によって口紅溶液を注入し、この溶液が固化した時点でカプセル12を除去し、つぎに外皿2の開口部にカプセル11を装着して注入口9から前記とは色を異にする口紅容液を注入し、これを固化したのちカプセル11を除去するようになる。」(明細書第3頁第13〜20行) ・また、第1図及び第3図には、口紅溶液が固化した棒状化粧料を保持する皿体1が、一方の端部にカプセル11が取り付けられ、他方の端部である下端から口紅溶液が注入されて下端付近まで充填される外皿2と、外皿2内に同軸状に配置される筒状体である内皿3と、内皿3を外皿2内で支持する注入口9を穿設した底壁7とから構成されることが示され、さらに、内皿3が棒状化粧料の軸方向に沿って外皿2内に設けられ、底壁7が外皿2の内周と内皿3の外周とを接続した構成が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物4には、以下のとおりの発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。 「口紅溶液が注入されるとともに、容器内において、口紅溶液が固化した棒状化粧料を保持する皿体1であって、 前記皿体1が、 一方の端部にカプセル11が取り付けられるとともに、口紅溶液が、他方の端部である下端から注入され、前記下端付近まで充填される外皿2と、 注入口10を穿設した底壁8を有し、筒状体であって、前記外皿2内に同軸状に配置される内皿3と、 前記内皿3を前記外皿2内で支持する注入口9を穿設した底壁7とから構成され、 前記内皿3が、棒状化粧料の軸方向に沿って前記外皿2内に設けられ、 前記底壁7が前記外皿2の内周と前記内皿3の外周とを接続した棒状化粧料の皿体1。」 ウ.同じく引用した刊行物5には、口紅等の収納容器に関するものであって、第1〜8図と共に次の事項が記載されている。 ・「筒状体内を上下移動する口紅等を支持する皿部材を備えた口紅等が直接充填される口紅等の収納容器において、前記皿部材に該皿部材に支持された口紅等の補強を図る心棒を摺動可能に備えたことを特徴とする口紅等の収納容器。」(実用新案登録請求の範囲) ・「11は前記内筒部材6内を摺動する、口紅等12を支持する皿部材で、・・・14は前記皿部材11に摺動可能に備えられた該皿部材11に支持された口紅等12を支持する心棒で、この心棒14の下端は前記皿部材11に一体成形された該心棒14の上方へ抜け脱を防止する抜け脱防止部材15に支持されている。」(明細書第3頁第15行〜第4頁第4行) ・「上記構成の口紅等の収納容器にあっては、皿部材11を内筒部材6の最下部に位置させ、該内筒部材6の上部開口部より直接口紅等を内筒部材6内に充填し、皿部材11を心棒14によって支持させる。」(同第4頁第7行〜第10行) ・また、第1、2図には、口紅等が充填される外筒及び底壁を備えた皿部材11の構成、心棒14の一部が皿部材11の外筒の端部から突出して配置された構成、及び、心棒14を外筒内で支持する底壁と外筒の下端で支持する抜け脱防止部材15からなる支持構成が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物5には、以下のとおりの発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。 「口紅等が充填されるとともに、容器内において、充填された口紅12を支持する皿部材11であって、 前記皿部材11が、 口紅等が充填される外筒と、 口紅等を上部から充填するための底壁と、 棒状体であって、前記外筒内に同軸状に配置され、一部が外筒端から突出する心棒14と、 前記心棒14を前記外筒内で支持する底壁及び前記外筒の下端で支持する抜け脱防止部材15とから構成され、 前記心棒14が、一部を除き、口紅12の軸方向に沿って前記外筒内に設けられた口紅12の皿部材11。」 (4)対比・判断 ア.本件発明1について 本件発明1と引用発明4とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「口紅溶液」が前者における「溶解状化粧料」及び「溶解状化粧材料」に相当し、以下同様に、「固化」が「硬化」に、「皿体1」が「受皿」に、「カプセル11」が「成形型」に、「外皿2」が「外筒」に、「内皿3」が「芯材」に、「注入口9を穿設した底壁7」が「支持部」に、それぞれ相当している。 したがって、両者は、 「溶解状化粧料が注入されるとともに、容器内において、溶解状化粧料が硬化した棒状化粧料を保持する受皿であって、 前記受皿が、 一方の端部に成形型が取り付けられるとともに、溶解状化粧材料が、他方の端部である下端から注入され、前記下端付近まで充填される外筒と、 筒状体であって、前記外筒内に同軸状に配置される芯材と、 前記芯材を前記外筒内で支持する支持部とから構成され、 前記芯材が、棒状化粧料の軸方向に沿って前記外筒内に設けられ、 前記支持部が前記外筒の内周と前記芯材の外周とを接続した棒状化粧料の受皿。」 において一致し、次の点で相違する。 (相違点A) 支持部に関し、本件発明1が、外筒の内周「の一部」と芯材の外周「の一部」とを「所定間隔をもって」接続した構成としたものであり、さらにこの構成から、互いに「所定間隔をもって」複数の支持部が存在すると解されるのに対し、引用発明4は、外筒の内周と芯材の外周とを「注入口9を穿設した底壁7」という単一の支持部で接続した構成である点。 以下、上記相違点Aについて検討する。 上記刊行物1には、複数の支持部(リブ32が相当)が外筒(側壁30が相当)の内周の一部と芯材(リング26が相当)の外周の一部とを所定間隔をもって接続した構成を有する棒状化粧料(化粧用ポマード組成物の棒状物24が相当)の受皿の発明が記載されている。 引用発明4も刊行物1に記載された発明も、棒状化粧料の受皿という同一技術分野に属するものであるから、引用発明4における芯材の支持部として、刊行物1に記載された発明の構成を採用し、上記相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が格別の困難性を伴うことなく適宜なし得る程度のものである。 そして、本件発明1の全体構成により奏される効果も、刊行物1及び4に記載された発明から当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって、本件発明1は、上記刊行物1及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 なお、本件特許権者は、平成16年8月24日付けの意見書の第13頁第5〜9行において、「刊行物4に記載された受皿では本件発明の効果を得ることができない。すなわち、刊行物4に記載された受皿の場合、底壁(7)、(8)の孔に対し別々に溶解状化粧料を注入しなければならず、一度に円滑に注入することができないため、表面の痕跡を取り除く前提としての化粧料の均一な充填が実現されない。」と主張している。 しかしながら、刊行物4に記載された受皿の構成によれば、二色の口紅を成形する場合は、底壁(7)、(8)の孔に対し別々に溶解状化粧料を注入する必要があるが、単色の口紅を成形する場合は、底壁(7)、(8)の孔に対し同時に溶解状化粧料を注入すればよいだけのことであり、溶解状化粧料を一度に円滑に注入することができないとはいえないため、上記主張は到底採用できない。 イ.本件発明2について 本件発明2と引用発明5とを対比すると、その作用・機能からみて、後者における「口紅等」が前者における「溶解状化粧料」及び「溶解状化粧材料」に相当し、以下同様に、「充填」が「注入」に、「充填された口紅12」が「溶解状化粧料が硬化した棒状化粧料」及び「棒状化粧料」に、「支持」が「保持」に、「皿部材11」が「受皿」に、「心棒14」が「芯材」に、「底壁」及び「抜け脱防止部材15」が「支持部」に、それぞれ相当している。 したがって、両者は、 「溶解状化粧料が注入されるとともに、容器内において、溶解状化粧料が硬化した棒状化粧料を保持する受皿であって、 前記受皿が、 溶解状化粧材料が充填される外筒と、 棒状体であって、前記外筒に同軸状に配置される芯材と、 前記芯材を前記外筒で支持する支持部とから構成され、 前記芯材が、棒状化粧料の軸方向に沿って前記外筒に設けられた棒状化粧料の受皿。」 において一致し、次の点で相違する。 (相違点B) 溶解状化粧材料が充填される外筒に関し、本件発明2は、「一方の端部に成形型が取り付けられるとともに」、溶解状化粧材料が、「他方の端部である下端から注入され、前記下端付近まで」充填される構成としているのに対し、引用発明5は、かかる充填態様の構成とされていない点。 (相違点C) 芯材に関し、本件発明2が、「外筒内に・・・配置される」、「外筒内に設けられ」及び「外筒内で支持する」とされているところから、芯材の全てが外筒内に配置され、設けられ及び支持されていると解されるのに対し、引用発明5は、必ずしも芯材の全てがそのような配置又は支持関係にあるわけではない点。 (相違点D) 支持部に関し、本件発明2が、「外筒の内周の一部と芯材の外周の一部とを所定間隔をもって接続した」構成であり、さらにこの構成から、互いに所定間隔をもって複数の支持部が存在すると解されるのに対し、引用発明5は、かかる構成を備えていない点。 以下、上記各相違点について検討する。 ・相違点Bについて ところで、本件特許明細書の段落【0002】に、「【従来の技術】口紅などの棒状化粧料は、ケース内において、その一端が受皿で保持され、その受皿を昇降させることによりケースから出し入れするようにしている。棒状化粧料の成形時には、図9に示すように、受皿1に成形型2が取り付けられ、受皿1の下方より溶融した化粧料が受皿1の下端付近まで注入され、硬化後成形型2が取り外される。」と記載されているように、棒状化粧料の充填の際に、受皿の外筒に対し、「一方の端部に成形型が取り付けられるとともに」、溶解状化粧材料が、「他方の端部である下端から注入され、前記下端付近まで」充填されるとする構成を採用することは、周知技術であるといえる。 したがって、引用発明5において、上記周知技術を適用し、相違点Bに係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 ・相違点Cについて 溶解状化粧材料を受皿の外筒に充填するものにおいて、芯材の全てが外筒内に配置され、設けられ及び支持されている構成は、引用発明4の構成として開示されているところである。 そうすると、引用発明5において、芯材の外筒に対する配置・支持関係について、引用発明4の構成を適用し、相違点Cに係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。 ・相違点Dについて 上記刊行物1には、複数の支持部(リブ32が相当)が外筒(側壁30が相当)の内周の一部と芯材(リング26が相当)の外周の一部とを所定間隔をもって接続した構成を有する棒状化粧料(化粧用ポマード組成物の棒状物24が相当)の受皿の発明が記載されている。 引用発明5も刊行物1に記載された発明も、棒状化粧料の受皿という同一技術分野に属するものであるから、引用発明5における支持部として、刊行物1に記載された発明の構成を採用し、上記相違点Dに係る本件発明2の構成とすることは、当業者が格別の困難性を伴うことなく適宜なし得る程度のものである。 そして、本件発明2の全体構成により奏される効果も、刊行物1、4及び5に記載された発明から当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって、本件発明2は、上記刊行物1、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 ウ.本件発明3について 本件発明3は、本件発明1に、「芯材が、棒状化粧料の軸に沿って並んで配置される複数の芯材から構成される」とする構成をさらに限定したものである。 ところで、本件特許明細書の段落【0018】〜【0021】の、「以上本発明を上記実施例について説明したが、本発明はそれに限定されることはなく、様々に変形して実施することができる。・・・ 図6はさらに別の実施例の概略縦断面図であり、筒体は円柱状に限らず、錐体状であってもよいし、また円筒状の場合には内径に差があってもよい。さらに複数の筒体を上下に配置してもよいし、筒体の側面に多数の小孔を形成するようにしてもよい。・・・【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、受皿内に芯材を設けることにより、棒状化粧料が芯材を中心に収縮硬化されるので、成形型への付着を減少させて化粧料表面の痕跡を減少させることができるとともに、棒状化粧料の受皿からの離脱を確実に防ぐことができる。」との記載によれば、芯材の具体的な形状に関しては、棒状化粧料が芯材を中心に収縮硬化する限りにおいて適宜変形し得るものと解すべきであり、また、形状の相違に基づいて格別な効果上の差異が生ずるとも認められないから、芯材の形状を本件発明3に係る上記限定した構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項というべきである。 したがって、上記「ア.」での検討内容を踏まえれば、本件発明3は、上記刊行物1及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 エ.本件発明4について 本件発明4は、本件発明2に「芯材が、棒状化粧料の軸に沿って並んで配置される複数の芯材から構成される」とする構成をさらに限定したものであるが、かかる限定した構成は、本件発明3において限定した構成と同一である。 したがって、上記「イ.」及び「ウ.」での検討内容を踏まえれば、本件発明4は、上記刊行物1、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件発明1ないし4についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 棒状化粧料の受皿 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】溶解状化粧料が注入されるとともに、容器内において、溶解状化粧料が硬化した棒状化粧料を保持する受皿であって、 前記受皿が、 一方の端部に成形型が取り付けられるとともに、溶解状化粧材料が、他方の端部である下端から注入され、前記下端付近まで充填される外筒と、 筒状体であって、前記外筒内に同軸状に配置される芯材と、 前記芯材を前記外筒内で支持する支持部とから構成され、 前記芯材が、棒状化粧料の軸方向に沿って前記外筒内に設けられ、 前記支持部が前記外筒の内周の一部と前記芯材の外周の一部とを所定間隔をもって接続したことを特徴とする棒状化粧料の受皿。 【請求項2】溶解状化粧料が注入されるとともに、容器内において、溶解状化粧料が硬化した棒状化粧料を保持する受皿であって、 前記受皿が、 一方の端部に成形型が取り付けられるとともに、溶解状化粧材料が、他方の端部である下端から注入され、前記下端付近まで充填される外筒と、 棒状体であって、前記外筒内に同軸状に配置される芯材と、 前記芯材を前記外筒内で支持する支持部とから構成され、 前記芯材が、棒状化粧料の軸方向に沿って前記外筒内に設けられ、 前記支持部が前記外筒の内周の一部と前記芯材の外周の一部とを所定間隔をもって接続したことを特徴とする棒状化粧料の受皿。 【請求項3】前記芯材が、棒状化粧料の軸に沿って並んで配置される複数の芯材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の受皿。 【請求項4】前記芯材が、棒状化粧料の軸に沿って並んで配置される複数の芯材から構成されることを特徴とする請求項2に記載の受皿。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、容器内において棒状化粧料を保持する受皿に関し、特に棒状化粧料の表面に表われる痕跡を減少させるとともに、棒状化粧料を確実に保持できるようにした受皿に関する。 【0002】 【従来の技術】 口紅などの棒状化粧料は、ケース内において、その一端が受皿で保持され、その受皿を昇降させることによりケースから出し入れするようにしている。棒状化粧料の成形時には、図9に示すように、受皿1に成形型2が取り付けられ、受皿1の下方より溶融した化粧料が受皿1の下端付近まで注入され、硬化後成形型2が取り外される。 【0003】 図8は化粧料Bが硬化した状態を示す断面図であるが、図からわかるように、化粧料Bは、硬化の過程において、受皿1および成形型2の一部の面Fへ向って図8の矢印で示すように収縮する。一方、面Fの対面には隙間Sができる。そうすると、図9に示すように、受皿1から成形型2にかけて帯状の付着面3が形成され、この付着面3は成形型2を取り外した後も化粧料の表面にすじ状の痕跡を残し商品の外観を損ねる原因となる。 【0004】 ところで、棒状化粧料の受皿については、従来より種々の改良が提案されており、たとえば、実公昭61-24170号公報には、受皿の内周面に螺条、内鍔、縦条を形成して棒状化粧料を確実に保持できるようにした考案が開示されている。また、受皿の側壁に多数の小孔を開けて受皿内外の棒状化粧料の冷却勾配を均一にする考案(実公平1-36781号公報)、受皿に内径差および斜状、縦状リブを設けて口紅の抜け、回転を防止する考案(実公平5-13299号公報)なども知られている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、従来の技術においては、上述したような棒状化粧料の表面に表われる痕跡について課題としてとりあげたものは無かった。また、棒状化粧料を受皿に保持する構造にしてみても、従来提案されているものでは十分に保持性を確保できるものではなかった。本発明はこの点にかんがみてなされたもので、上述したような棒状化粧料の表面に表われる痕跡を減少させるとともに、棒状化粧料を確実に保持できる受皿を提供することを課題とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本発明においては、棒状化粧料の受皿内に棒状化粧料の軸方向に沿って芯材を設けるようにした。この芯材は、材質、大きさは特に限定されず、また形状も筒状体であってもよいし、棒状体であってもよい。またその数は単数でも複数でもよい。要するに芯材は溶融化粧料が硬化するときに核となるようなものであればよい。 【0007】 【実施例】 以下本発明の一実施例を図を参照して説明する。図1は本実施例の受皿の平面図、図2は図1のA-A断面図である。受皿5は、外筒51と、外筒51内に配置される内筒52と、内筒52を外筒51内で支持する支持部53とから構成され、これら三者はたとえば樹脂製で一体に形成されている。外筒51は、段差51aを有し、これを境に上部と下部に分けられ、上部の内径は下部の内径より僅かに大きくなっている。内筒52は、段差51a付近に外筒51と軸方向を同じにして配置されている。支持部53は等間隔に3本設けられている。支持部53は、外筒51の内周の一部と内筒52の外周の一部とを、外筒53の周方向に沿って所定間隔をもって接続している。なお、内筒52と外筒51は同心状に配置されているが、それぞれの中心がずれて配置されていてもよい。 【0008】 さて、成形時においては、溶融した化粧料は外筒51の図2の下端から注入され硬化される。このとき内筒52は外筒51と同軸状に配置されているので、化粧料の注入は円滑に行われる。化粧料が硬化するときは、図3に矢印で示すように、内筒52が中心または核となってその方向へ収縮するので、化粧料Bは外筒51に付着せず、外筒51との間には僅かな隙間Sができる。そのため、硬化後の棒状化粧料に従来のような痕跡(図9)はできない。また、できるとしても、図4に示すように、成形型2の先の一部に極めて小さな痕跡Kができるだけである。 【0009】 次に、比較例として上記受皿から内筒52、支持部53を除去した受皿(但し外筒の内面に小さな突起を3個設けてある)を準備し、この比較例と上記実施例に成形型2をセットし、下記処方および製法の棒状化粧料の溶融物を充填硬化させ、成形性および成形物の強度を評価した。 【0010】 (1)付着試験 成形型を受皿から取り外すときの荷重値(g)をオートグラフにより測定した。表中、Rは最小値と最大値の差を示す。 【0011】 【表1】 【0012】 試験棒状化粧料の処方および製法 (処方) 1.カルナウバワックス 9.0(重量%) 2.セレシン 12.0 3.ミツロウ 20.0 4.ラノリン 9.0 5.ヒマシ油 残 量 6.ステアリン酸ヘキサデシル 10.0 7.セチルアルコール 3.0 8.顔料 適 量 9.香料 適 量 (製法) A:上記1〜7を加熱溶解する。 B:Aに上記8,9を加えて3本ローラにて混練する。 C:Bを溶解して棒状化粧料の溶融物とする。 【0013】 (2)外観試験 上記(1)の試験で成形型を外したサンプルについて専門評価者の目視により外観試験を行った。判定基準は次のとおりである。 ◎成形型への付着の痕跡がない ○成形型への付着の痕跡は見られるが問題とならない程度 △成形型への付着の痕跡が残る ×成形型への付着の痕跡が著しく残る 【0013】 【表2】 【0014】 上記(1)(2)より、実施例の受皿は、棒状化粧料の成形型への付着が少ないため、取り外す際の荷重値が低く離型性が良い。また外観評価においても良好な結果が得られた。 【0015】 (3)強度試験 上記(2)試験のサンプルを各5本ずつ35℃、50℃の恒温槽に2時間セットした後、受皿から充填物を引き抜くときの荷重値(g)をオートグラフにより測定した。 【0016】 【表3】 【0017】 上記結果より、どちらの温度においても実施例の受皿の方が引き抜く際の荷重値は高く、棒状化粧料が受皿に強固に保持されていることがわかった。 【0018】 以上本発明を上記実施例について説明したが、本発明はそれに限定されることはなく、様々に変形して実施することができる。図5は他の実施例の概略平面図を示し、受皿内に配置される内筒の断面形状は、円に限らず、六角形や四角形などの多角形であってもよい。また内筒は複数設けてもよく、その場合、内筒の中にさらに径の小さい筒体を配置したり、筒体を複数本並べて配置してもよい。また断面形状の異なる筒体を組み合わせるようにしてもよい。 【0019】 図6はさらに別の実施例の概略縦断面図であり、筒体は円柱状に限らず、錐体状であってもよいし、また円筒状の場合には内径に差があってもよい。さらに複数の筒体を上下に配置してもよいし、筒体の側面に多数の小孔を形成するようにしてもよい。 【0020】 図7はさらに別の実施例の受皿の縦断面図を示すもので、ここでは受皿内に筒状体ではなく棒状体を設置した。棒状体は、角柱状、円柱状または錐体状などでもよい。さらに棒状体が異なる複数の径を有するようにしてもよいし、その表面に凹凸を形成してもよい。 【0021】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、受皿内に芯材を設けることにより、棒状化粧料が芯材を中心に収縮硬化されるので、成形型への付着を減少させて化粧料表面の痕跡を減少させることができるとともに、棒状化粧料の受皿からの離脱を確実に防ぐことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明による棒状化粧料の受皿の一実施例の平面図である。 【図2】 図1の受皿のA-A断面図である。 【図3】 棒状化粧料が硬化した状態を示す断面図である。 【図4】 棒状化粧料が硬化した状態を示す側面図である。 【図5】 本発明の他の実施例を示す概略平面図である。 【図6】 本発明の他の実施例を示す概略断面図である。 【図7】 本発明の他の実施例を示す概略断面図である。 【図8】 従来の棒状化粧料の硬化状態を示す断面図である。 【図9】 従来の棒状化粧料の硬化状態を示す側面図である。 【符号の説明】 5 受皿 51 外筒 52 内筒 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-05-24 |
出願番号 | 特願平5-342212 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(A45D)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 冨岡 和人 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
佐々木 芳枝 丸山 英行 |
登録日 | 2002-11-22 |
登録番号 | 特許第3372333号(P3372333) |
権利者 | 株式会社コーセー |
発明の名称 | 棒状化粧料の受皿 |
代理人 | 松浦 孝 |
代理人 | 松浦 孝 |
代理人 | 小倉 洋樹 |
代理人 | 小倉 洋樹 |