• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G03F
管理番号 1124304
異議申立番号 異議2003-71155  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-04-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-06 
確定日 2005-07-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3341096号「ディジタルスクリーンセットの形成法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3341096号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3341096号は、平成6年4月21日(優先権主張平成5年6月22日)に特許出願され、平成14年8月23日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人瀬戸口和彦から特許異議の申立てがされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年2月20日に意見書が提出され、上記取消理由通知と同日付で異議申立人瀬戸口和彦に対して審尋がなされ、その指定期間内である平成16年2月6日に回答がなされ、その後再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成17年6月2日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否
2.1 訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載「空間周波数領域で、μ軸との傾き角がθで、tanθが有理数であるような正方格子配列のスペクトル配置をもつ第1の直交スクリーンと、
前記第1の直交スクリーンとμ軸及びν軸に対し鏡像の位置にスペクトル配置をもつ傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、
前記第1及び前記第2の直交スクリーンを重ね合わせた場合に発生するスペクトル配置において、該スペクトル配置の対称軸上に新たに発生したスペクトル成分を要素して含み、前記第1及び前記第2の直交スクリーンとは異なる傾き角をもつ第3の直交スクリーンと、
を作成し、前記第1乃至第3の直交スクリーンを組み合わせてカラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法。」を、
「空間周波数領域で、μ軸との傾き角がθで、tanθが有理数であるような正方格子配列のスペクトル配置をもつ第1の直交スクリーンと、
前記第1の直交スクリーンとμ軸及びν軸に対し鏡像の位置にスペクトル配置をもつ傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、
前記第1及び前記第2の直交スクリーンを重ね合わせた場合に発生するスペクトル配置において、該スペクトル配置の対称軸上に新たに発生したスペクトル成分を要素して含み、前記第1及び前記第2の直交スクリーンとは異なる傾き角をもつ第3の直交スクリーンと、を作成し、
前記第1乃至第3の直交スクリーンをセットとして重ねた場合の原点付近に発生するスペクトラムの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選んで、カラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法。」と訂正する。
訂正事項b
明細書の段落【0012】の記載「【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様によれば、空間周波数領域で、μ軸との傾き角がθで、tanθが有理数であるような正方格子配列のスペクトル配置をもつ第1の直交スクリーンと、この第1の直交スクリーンとμ軸及びν軸に対し鏡像の位置にスペクトル配置をもつ傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、第1及び第2の直交スクリーンを重ね合わせた場合に発生するスペクトル配置において、このスペクトル配置の対称軸上に新たに発生したスペクトル成分を要素して含み、第1及び第2の直交スクリーンとは異なる傾き角をもつ第3の直交スクリーンと、を作成し、第1乃至第3の直交スクリーンを組み合わせてカラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法が得られる。」を、
「【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様によれば、空間周波数領域で、μ軸との傾き角がθで、tanθが有理数であるような正方格子配列のスペクトル配置をもつ第1の直交スクリーンと、この第1の直交スクリーンとμ軸及びν軸に対し鏡像の位置にスペクトル配置をもつ傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、第1及び第2の直交スクリーンを重ね合わせた場合に発生するスペクトル配置において、このスペクトル配置の対称軸上に新たに発生したスペクトル成分を要素して含み、第1及び第2の直交スクリーンとは異なる傾き角をもつ第3の直交スクリーンと、を作成し、前記第1乃至第3の直交スクリーンをセットとして重ねた場合の原点付近に発生するスペクトラムの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選んで、カラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法が得られる。」
と訂正する。

2.2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aについて
上記訂正事項aについては、本件特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記第1乃至第3の直交スクリーンを組み合わせてカラーハーフトーンを記録する」を、下位概念である「前記第1乃至第3の直交スクリーンをセットとして重ねた場合の原点付近に発生するスペクトラムの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選んで、カラーハーフトーンを記録する」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
この訂正後の請求項1の限定事項「前記第1乃至第3の直交スクリーンをセットとして重ねた場合の原点付近に発生するスペクトラムの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選んで」は、本件の願書に添付した明細書の【0027】及び【0048】段落の記載に基づいている。
従って、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項bについて
上記訂正事項bについては、特許請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、願書に添付した明細書の【0012】段落の対応する記載を訂正したものである。
従って、訂正事項bは、明りょうでない記載の釈明にあたり、また、訂正事項cは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。

2.3 むすび
上記訂正事項a及びbは、上記(2)のとおりであるから、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項及び第3項の規定に適合する。
従って、当該請求を認める。

3.特許異議申立てについての判断
3.1 本件発明
上記のとおり、訂正は認められるから、異議申立てに係る本件特許の発明(請求項1)は、訂正された特許明細書に記載された次のとおりのものである。
請求項1; 空間周波数領域で、μ軸との傾き角がθで、tanθが有理数であるような正方格子配列のスペクトル配置をもつ第1の直交スクリーンと、
前記第1の直交スクリーンとμ軸及びν軸に対し鏡像の位置にスペクトル配置をもつ傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、
前記第1及び前記第2の直交スクリーンを重ね合わせた場合に発生するスペクトル配置において、該スペクトル配置の対称軸上に新たに発生したスペクトル成分を要素して含み、前記第1及び前記第2の直交スクリーンとは異なる傾き角をもつ第3の直交スクリーンと、を作成し、
前記第1乃至第3の直交スクリーンをセットとして重ねた場合の原点付近に発生するスペクトラムの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選んで、カラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法。

3.2 異議申立人提出の証拠に記載された発明/取消理由通知で引用された刊行物に記載された発明
刊行物1:米国特許第408183号明細書
刊行物1には、画像領域で水平軸との傾がθで、tanθが有理数1/3であるような正方格子配列のユニットエリア配列を持つ第1の直交スクリーンが記載され、また、第1の直交スクリーンと画像領域で水平軸、垂直軸に対し鏡像の位置にユニットエリア配列を持つ傾きが-θの第2の直交スクリーンが記載され、また、スクリーン角度が45°の第3の直交スクリーンが記載されており、第1ないし第3の直交スクリーンを組み合わせてマルチカラー画像を記録する発明が記載されている。

3.3 対比・判断
3.3.1 一致点・相違点の認定
本件請求項1に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、
「μ軸との傾き角がθで、tanθが有理数であるような正方格子配列のスペクトル配置をもつ第1の直交スクリーンと、
該第1の直交スクリーンとμ軸及びν軸に対し鏡像の位置にスペクトル配置をもつ傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、
前記第1及び前記第2の直交スクリーンを重ね合わせた場合に発生するスペクトル配置において、該スペクトル配置の対称軸上に新たに発生したスペクトル成分を要素して含み、前記第1及び前記第2の直交スクリーンとは異なる傾き角をもつ第3の直交スクリーンを作成し、カラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法。」
において一致するが、次の点で両者は相違する。

相違点
本件請求項1に係る発明が「空間周波数領域において第1乃至第3の直交スクリーンをセットとして重ねた場合の原点付近に発生するスペクトラムの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選」ぶ構成(以下、「本件請求項1に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、刊行物1に記載された発明は、当該構成の記載がない点において両者は相違する。

3.3.2 相違点の判断
相違点について検討するに、刊行物1に記載された発明に係る直交スクリーンは、画像領域において定義された直交スクリーンであるにすぎず、本件請求項1に係る発明の空間周波数領域において定義された直交スクリーンは何ら考慮されていない。
さらに、空間周波数領域において定義された直交スクリーンにおいてのみ考慮できる上記「第1乃至第3の直交スクリーンをセットとして重ねた場合の原点付近に発生するスペクトラムの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選」ぶ点は自明でもない。
したがって、刊行物1に記載された発明は、本件請求項1に係る発明について記載又は示唆をするものではない。
従って、本件請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明ではない。
また、本件請求項1に係る発明は、上記本件請求項1に係る発明の特徴的構成を有するのに対し、刊行物1に記載された発明に基づいて当該構成を導き出すことが容易であることの理由付けがないから、本件請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。

4.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ディジタルスクリーンセットの形成法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間周波数領域で、μ軸との傾角がθで、tanθが有理数であるような正方格子配列のスペクトラム配列をもつ第1の直交スクリーンと、
前記第1の直交スクリーンとμ軸とν軸に対し鏡像の位置にスペクトラム配列をもつ傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、
前記第1及び第2の直交スクリーンを重ね合わせた場合に発生するスペクトラム配置において、当該スペクトラム配置の対称軸上に新たに発生したスペクトラム成分を要素として含み、前記第1及び第2の直交スクリーンとは異なる傾き角をもつ第3の直交スクリーンと、を作成し、
前記第1乃至第3の直交スクリーンをセットとして重ねた場合の原点付近に発生するスペクトラムの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選んで、カラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法。
【請求項2】
空間周波数領域で有理正接(tanθ=p/q)をとるスペクトラム配置を画像領域におけるユニットエリア配置に変換する際において、有限個の画素(βpq×βpq)で構成される傾斜を持たない四角の領域に有理正接の傾斜をもつ有限個のユニットエリアを含ませ、前記四角の領域を最小の繰り返しパターンとし、前記繰り返しパターンと鏡像のパターンの畳み込み像から得るスペクトラムパターンで、正接=1(45°)の線上に発生するスペクトラムと同一のスペクトラムを持つ45°スクリーンを形成し、当該45°スクリーンと、tan15°に近い有理正接のスペクトラム配置を有する15°スクリーンと、当該15°スクリーンの鏡像スクリーンである-15°スクリーンと3種のスクリーンを構成要素とするディジタルスクリーンセットの形成法。
【請求項3】
請求項2で形成された3種のスクリーンの周波数成分を畳み込んで得られたスペクトラムパターンから対称軸を求め、軸上にあるスペクトラムをもつ0°スクリーンを形成し、
前記3種のスクリーンと合わせ4種のスクリーンを構成要素とするディジタルスクリーンセットの形成法。
【請求項4】
画像領域で、h×h(hは2以上の整数)の単位セルで構成されるマルチセルの傾き角θが15°に近く、tanθがp/q(p、qは整数)に等しい正方格子配列のスペクトラム配置をもつ第1の直交スクリーンと、
当該第1の直交スクリーンの鏡像として作成される傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、
x軸方向及びy軸方向のスクリーンピッチPが下記の数式1で表され、
【数1】

mの2乗個の画素で構成される正方領域に2×n2乗個のセルを含み、前記第1及び前記第2の直交スクリーンとは異なる傾き角を持つ第3の直交スクリーンと、を作成し、前記第1乃至第3の直交スクリーンを組み合わせてカラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法。
【請求項5】
前記hが4で、前記有理数p/qが17/63である請求項4記載のディジタルスクリーンセットの形成法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、カラー記録・印刷に関し、特に色により異なるスクリーン角度の網点画像を重ねた場合、モアレ(縞模様)の発生を防ぎ、規則的なロゼットパターンの発生を可能とする直交スクリーンセットの設計手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真的手法では、3色分解版の場合には、等スクリーン線数のコンタクトスクリーンを用い、±15°、45°に網掛けを行う。4色の場合には、さらに0°の網掛けを行い、色を重ねる。また、イメージセッタでディジタル的に網掛けを行う場合には、まず、色分解版ごとに異なる角度、例えば+15°マゼンダ、-15°シアン、45°墨、0°イエローというようにスクリーン角度を設定する。次に、このスクリーン角度の網点画像を記録する際に、1つの網点が占有しうる面積であるユニットエリアを指定のスクリーン角度に配列する。そして、ユニットエリアを構成する階調数に等しいか、あるいは階調数より多い複数の画素に閾値を設定する。最後に、この閾値と原画像走査で得られた画像信号とを比較して、両者の大小により出力値を“1”あるいは“0”に設定して網点を形成していた。
【0003】
しかしながら、ディジタル的な網掛けの場合には、±15°のスクリーンは、ユニットエリアの配列の傾きを正確に±15°に設定することが不可能である。このため、実際の装置では、できるだけ±15°を近似するような有理正接値を選んで±15°に近い網掛けを行ってきた。ここで、近似度を良好にするため、N×Nセル(Nは2以上の整数)の傾斜を±15°に近付けることが行われている。
【0004】
有理正接値をもつユニットエリア配列のハーフトーン記録に当たっては、文献1:「エレクトロニックハーフトーニン」(梶光男著,日本印刷学会誌第28巻第1号)に詳しく述べられているように、矩形状に閾値マトリックスを切り出し、この閾値マトリックスの繰り返しと画像信号の比較により網掛けを実行する。この文献1には、モアレを防ぐために、45°スクリーンをマルチユニットエリアで構成する方法も提案されている。
【0005】
従来の手法に共通していることは、全て、所望のスクリーン線数、スクリーン角度に近似するユニットエリア配列を画像領域で設計することに重点が置かれていることである。
【0006】
他の設計法が文献2:「ポウスクリプト スクリーニング:アドーべ精密スクリーン(PostScript Screening:Adobe Accurate Screens)」(ピーター フィンク(Peter Fink)著,アドーべ出版社(Adobe Press))に記述されている。
この文献2による設計法は、h×h個(h:整数)のユニットエリアで構成するスーパーセルによりスクリーン線数、スクリーン角度を所望の値に近似させる設計法である。この設計法も、画像領域で写真的手法の網掛けにより近づけることを意図した設計手法で、重ね合わせた場合のモアレの予測と出現するロゼットパターンを予め設計条件に含めることができない欠点があった。ここで、ロゼットパターンとは2重リングのロゼット状のパターンのことをいう。
【0007】
本発明に関連の先行技術として次のものが知られている。特開昭59-176978号公報(以下、先行技術1と呼ぶ)には、入力画像に固有の空間周波数Trと、ディザ化に用いるディザマトリクスの周期T0に着目し、ディザ化対象の中間調画質領域のTrを検出し、Trに応じて最適なT0を選定することにより、モアレを抑制する「画像処理装置」が開示されている。特開平1-180573号公報(以下、先行技術2と呼ぶ)には、色分解機能素子の分布した色分解層を有する感光体を用いて、感光体上に色ずれなくカラー画像を形成することができ、形成画像にモアレを生ぜしめることがない「画像形成装置」が開示されている。特開昭61-170186号公報(以下、先行技術3と呼ぶ)には、所望のスクリーン角度の網点画像に基づく網点パターンのデータ情報を記憶し、該網点パターンのデータ情報を網点画像の濃度情報の平均値をアドレスとして直接読み出すことにより、メモリ容量を少なくして効率良くアクセスすることができ、さらに所望のスクリーン角度を有する網点画像の形成を高速に行うことができる「網点画像形成装置」が開示されている。特開昭57-171337号公報(以下、先行技術4と呼ぶ)には、所望のスクリーン角度を近似する有理正接の値がどの様な値であっても、網目情報の必要量をボケ網点1個分の情報量に収めるようにした「網点版画像の形成方法」が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、文献1、2および先行技術1〜4では、そのいずれも、モアレの発生を防止することはできるが、ロゼットパターンの形状を予め予測することができない。
【0009】
本発明の技術的課題は、モアレの発生しないスクリーン角度、スクリーン線数を有する3種以上のスクリーンで構成されるスクリーンセットが得られ、且つ、ロゼットパターンの形状が予め予測できるディジタルスクリーンセットの形成法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、上記スクリーンセットを空間周波数領域で設計する手法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、上記スクリーンセットを画像領域で設計する手法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の態様によれば、空間周波数領域で、μ軸との傾き角がθで、tanθが有理数であるような正方格子配列のスペクトラム配列をもつ第1の直交スクリーンと、この第1の直交スクリーンとμ軸及びν軸に対し鏡像の位置にスペクトラム配列をもつ傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、第1及び第2の直交スクリーンを重ね合わせた場合に発生するスペクトラム配置において、このスペクトラム配置の対称軸上に新たに発生したスペクトラム成分を要素して含み、第1及び第2の直交スクリーンとは異なる傾き角をもつ第3の直交スクリーンと、を作成し、前記第1乃至第3の直交スクリーンをセットとして重ねた場合の原点付近に発生するスペクトラムの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選んで、カラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法が得られる。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、画像領域で、h×h(hは2以上の整数)の単位セルで構成されるマルチセルの傾き角θが15°に近く、tanθが有理数p/q(p,qは整数)に等しい正方格子配列のスペクトル配置をもつ第1の直交スクリーンと、この第1の直交スクリーンの鏡像として作成される傾き角が-θの第2の直交スクリーンと、x軸方向及びy軸方向のスクリーンピッチPが下記の数式2で表され、
【数2】

m2画素で構成される正方領域に2×n2のセルを含み、第1及び第2の直交スクリーンとは異なる傾き角をもつ第3の直交スクリーンと、を作成し、第1乃至第3の直交スクリーンを組み合わせてカラーハーフトーンを記録するためのディジタルスクリーンセットの形成法が得られる。
【0014】
【作用】
本発明の第1の態様では、所望のスクリーン角度の正接値に近い有理正接値をもつスクリーン角度θの直交スクリーンの空間周波数スペクトルが、傾き角θをもつ正方格子配列をもつこと、所望のスクリーンセットの空間周波数スペクトル配列を決定した後、該空間周波数スペクトル配置をもつユニットエリア配列はマルチユニット構成を用いることにより、整数個の画素で実現可能であることに着目する。
【0015】
図3に示すように、傾き角θのもつ正方格子配列のスペクトルをfθm,nで表す。θは空間周波数のμ軸に対する正方格子の傾き角であり、m,nはそれぞれ、μ方向、ν方向のm次高調波スペクトル、n次高調波スペクトルであることを示す。次に、fθm,nと周波数軸に対し鏡像の関係にある、傾き角-θをもつ正方格子配列のスペクトルをf-θi,jで表す。カラープリントや印刷では、一般にこの正方格子配列スペクトルを有する2種の直交スクリーンを2つの色分解版に割り当てる。この2つの直交スクリーンを重ねた場合に出現するスペクトルは、fθm,nとf-θi,j(i,j,m,n=1,2,3,…)のコンボリューションから求めることができる。
【0016】
コンボリューションにより出現するスペクトル分布には対称軸が存在し、軸上にいくつかのスペクトル成分が現れるので、次にこの軸上に現れた成分のうち、0点からの距離が隣接スペクトル間の距離に近い成分を選択し、その選択した成分を正方格子配列のスペクトルの要素成分として含む、対称軸と同じ傾き角α、例えばα=45°の直交スクリーンを設計する。
【0017】
かくして得られた3種のスクリーンをセットして使用することにより、モアレの発生を防ぐことができる。3種のスクリーンを重ねた場合に発生するロゼットパターンは、tanθの有理正接値をパラメータとして形状を計算するこができるので、ロゼットパターンの出現とモアレ除去とを同時に解決した有理正接値をもつスクリーンセットが得られる。3種以上のスクリーンを重ねた場合も、同様の手続きで、例えば0°のスクリーンを実現できる。
【0018】
本発明の第2の態様では、所望のスクリーン角度の正接値に近い有理正接値をもつスクリーン角度θを、h×h個のセルで構成されるマルチセルの傾斜で実現する(図14参照)。図14の場合、一つのセルの一辺aは下記の数式3で表される。
【0019】
【数3】

【0020】
空間周波数の単位を1/aとすると、有理正接値tanθ=±p/qの2種の直交スクリーンを重ねた場合には、座標値が下記の数式4で表される位置にスペクトルの発生することが知られている(図15参照)。
【0021】
【数4】
[k・(cosθ-sinθ),l・(cosθ-sinθ)](但し、k+l:偶数)
【0022】
このスペクトルと同じスペクトル配列を持つ、直交スクリーンは45°スクリーンであり、このスクリーンを設計して、有理正接値tanθ=±p/qの近似±15°スクリーンとセットにすれば、モアレを防ぐことができる。またロゼットパターンは、p/qの値に依存し、予め予測が可能である。
【0023】
上記45°スクリーンのx軸方向およびy軸方向のスクリーンピッチPは下記の数式5で表され、図16のように表現される。
【0024】
【数5】

【0025】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0026】
図1を参照して、本発明の第1の実施例によるディジタルスクリーンセットの形成法について説明する。図1は傾き角が±15°に近い直交スクリーン及びこれらと組になる45°直交スクリーンの設計手順をフローチャートで示したものである。
【0027】
第1のステップS1において、傾き角が15°に近いθの正方格子配列空間周波数スペクトル配列を描く。次に、第2のステップS2において、傾き角が-15°に近い、傾き角が15°の空間周波数スペクトルと周波数軸に対して鏡像関係にある正方格子配列スペクトルを描き、両者のコンボリューション画像を描く。詳細に説明すると、周波数軸に対し、互いに鏡像関係にある空間周波数スペクトルのコンボリューションfθm,n×f-θi,jを行い、発生するスペクトルを求め、図4を得る。同図の原点付近に発生するスペルトルR1,R2,…,R12を図5に示す。コンボリューションfθm,n×f-θi,jにより発生するスペクトルは、±θの直交スクリーンのスペルトルの位置全てに図5のスペクトルパターンを重ねたスペクトル分布になっている。
【0028】
第3のステップS3において、±45°の軸を対称軸として持ち、座標軸が[k・(cosθ-sinθ),l・(cosθ-sinθ)](但し、k+l:偶数)の位置に必ずスペクトルが出現するので、同様のスペクトル分布をもつ45°スクリーンを第3のスクリーンとする。
【0029】
第4のステップS4において、3種のスクリーンを重ねて発生する0点近傍のスペクトルを求め、空間周波数領域での形状が2重リングのロゼット状になる有理正接値、例えば、3/11を選択する。詳細に説明すると、更に第3のスクリーンを重ねた場合に発生するスペクトルは、図4のスペクトル分布とスクリーン角度が45°の第3のスクリーンのスペクトルのコンボリューションを計算することにより得られ、図6のようになる。同図の原点付近に発生するスペクトルは図7のようになり、R1,R2,…,R12の内側にさらにM1,M2,…,M12で表されているスペクトルが入った形状を示す。これらの座標は、±θ°の直交スクリーンのピッチの逆数1/dを単位とすると、下記の表1のように与えられる。
【0030】
【表1】

【0031】
R1,R2,…,R12,M1,M2,…,M12の値を各種の有理正接について求め、空間周波数領域におけるロゼットパターンを求めると、奇麗な二重リングの出現するtanθの値は、3/11,4/15,5/19などに限られており、これら3種の値は、±15°直交スクリーンの有理正接値として適当である。
【0032】
他の角度にたいしては別の適当な有理正接値が存在する。いくつかの有理正接値に対する空間周波数領域におけるロゼットパターンの例を図8,図9及び図10に示す。
【0033】
第5のステップS5において、有理正接値±3/11を有するスペクトルパターンに対応する直交スクリーンを最小繰り返しパターンとして求め、ユニットアリアの面積S=8.37692を得る。所望の階調数と上記ユニットエリアの面積Sからスケーリングファクタβを求め、実用サイズのディジタルスクリーンを完成し、閾値マトリックスの形状を確定する。βのユニットエリア数との間に公倍数がある場合には、閾値マトリックスに含まれるユニットエリアの数は130/公倍数になる。
【0034】
少し具体的に説明すると、図11に、有理正接値が3/11の場合における、有理正接値に対する直交スクリーンの構成を示す。図2を参照して、p=d/cosθ=3画素、q=d/cosθ=11画素、最小繰り返しエリア、33画素×33画素、最小繰り返しエリア内に含まれるユニットエリアは、130個で、最小繰り返しパターンのユニットエリアの面積は1089/130=8.37692画素で与えられる。スケーリングファクタβを5にとると、209階調の表現が可能になり、閾値マトリックスを構成するユニットエリアの数は図11の点線で分割したような閾値マトリックスの繰り返しとなり、130/5=26に減少する。
【0035】
第6のステップS6において、tanθ=±3/11にセットとなる45°直交スクリーンを求め、ユニットエリアの対角線長c=4.125βを得る。対角線長cが画素の整数倍とならない時は、マルチユニット化によりx方向、y方向の繰り返しが、画素の整数倍となるようにする。記録のための閾値マトリックスを切り出す。
【0036】
少し具体的に説明すると、45°直交スクリーンは、ユニットエリアの対角間の距離cがc=βp・q/(q-p)=4.125βで与えられる。従って、図12に示すように、8×8のマルチユニット化を行って、45°直交スクリーンを実現することができる。
【0037】
最後に、第7のステップS7において、閾値マトリックスをROM(図示せず)へ実装する。
【0038】
図13を参照して、本発明の第2の実施例によるディジタルスクリーンセットの形成法について説明する。図13は上記第1の実施例と同様に、傾き角が±15°に近い直交スクリーン及びこれらと組になる45°直交スクリーンの設計手順をフローチャートで示したものである。
【0039】
第1の工程Sa1において、画像領域で、h×hセルを単位と構成される、傾き角が15°に近いθのマルチセル配列を描き、その有理正接値をp/qで表す。本実施例では、図14に示すように、tan15°に近い有理正接値p/qとして、17/63を選択した。このとき、θは15.1°に等しくなる(θ=15.1°)。また、h=4とすると、単位セルの画素数(階調数)とセルの一辺長aは、それぞれ、下記の数式6および数式7で表される。
【0040】
【数6】

【数7】
セルの一辺長さa=(階調数)1/2=16.313338
これにより、200階調の表現が可能である。
【0041】
次に、第2の工程Sa2において、傾き角が-15°に近い、傾き角が15°のマルチセル配列と鏡像関係にある配列と重ねあわせる。
【0042】
第3の工程Sa3において、図15に示されるように、傾き角α=±45°のスクリーンのスペクトルと同じ、空間周波数領域の座標で、座標軸[μ,ν]が[k・(cosθ-sinθ),l・(cosθ-sinθ)](但し、k+l:偶数)の位置に必ずスペクトルが発生するので、同じ位置にスペクトル配列のくる45°直交スクリーンを第3のスクリーンとする。
【0043】
第4の工程Sa4において、図16に示されるように、スクリーン角度が45°スクリーンのスペクトル値から、x軸方向(図16の横軸方向)のスクリーンピッチPを、下記の数式8および数式9から求める。
【0044】
【数8】

【数9】

このスクリーンピッチPの値から(m×m)画素の領域に(2×n2)個のセルを含む45°スクリーンの最小繰り返し単位を決定する。本実施例では、最小繰り返し単位(m×m)画素が(2129×2129)画素の大きさで、その中に、(2×922)個のセルが含まれる。
【0045】
第5の工程Sa5において、±15°スクリーンの(h×h)個のセルで構成される、最小繰り返し単位について、その閾値マトリックスを割り付ける。図14の場合は、h=4、tanθ=17/63を採用している。
【0046】
第6の工程Sa6において、45°スクリーンの(2×n×n)個のセルについて、閾値マトリックスを割り付ける。図16の場合、(2129×2129)画素の領域に16928個のセルが含まれる。
【0047】
最後に、第7の工程Sa7において、±15°スクリーン及び45°スクリーンの閾値マトリックスをROM(図示せず)へ実装する。
【0048】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明の第1の態様によれば、空間周波数領域で有理正接をもつ角度の傾きをもつ第1の直交スクリーンと、それと周波数軸に対し鏡像の位置にスペクトル配列をもつ第2の直交スクリーンとを重ねた際に発生するスペクトルに着目し、その中の対称軸上に発生する選択されたスペクトルと同じ位置に要素スペクトルを持つスクリーンを第3の直交スクリーンとして設計し、この3種のスクリーンをセットとして重ねた場合の原点近傍に発生するスペクトルの形状から、ロゼットパターンの発生する有理正接を選ぶようにしているので、モアレの発生しない、奇麗なロゼットパターンの発生が得られるスクリーンセットを得ることができる。
【0049】
また、本発明の第2の態様によれば、画像領域で、傾き角θが15°に近く、tanθが有理正接値p/qに等しい正方格子配列のスペクトル配置をもつ第1の直交スクリーンと、この第1の直交スクリーンの鏡像として作成される傾き角が-θの第2の直交スクリーンとを重ねた際に発生するスペクトルに着目し、そのスペクトルと同じスペクトル配列を持つスクリーンを第3の直交スクリーンとして設計しているので、モアレの発生を防ぐことができ、また、ロゼットパターンは有理正接値p/qの値が依存するので、予め予測可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施例によるディジタルスクリーンセットの形成法の設計手順を示すフローチャートである。
【図2】
スクリーン線数が1/d、従ってスクリーンピッチがd、スクリーン角度がθの網点画像とユニットエリアとを示す図である。
【図3】
図2の網点画像の空間周波数スペクトル分布とその記号を示す図である。
【図4】
±θのスクリーン角度をもつ2種類の直交スクリーンを重ねた場合に出現するスペクトルを示す図である。
【図5】
図4でθ=15°の場合の原点の近傍のスペクトルを示す図である。
【図6】
図4の±θのスクリーン角度をもつ2種類の直交スクリーンに、スクリーンピッチが2・d/(cosθ-sinθ)の45°スクリーンを重ねた場合に出現するスペルトル分布を示す図である。
【図7】
図6の原点近傍のスペクトルにつけた名称を示す図である。
【図8】
tanθ=3/11の場合の空間周波数領域におけるロゼットパターンを示す図である。
【図9】
tanθ=4/15の場合の空間周波数領域におけるロゼットパターンを示す図である。
【図10】
tanθ=5/17の場合の空間周波数領域におけるロゼットパターンを示す図で、有理正接値の選択が不適当な例を示す図である。
【図11】
tanθ=3/11の場合の実施例で、130ユニットエリアで構成される最小繰り返し面積とユニットエリアの配列をもち、スケーリングファクタβ=5の場合には、閾値マトリックスの繰り返しが点線で示す26ユニットエリアの繰り返しに減少することを示す図である。
【図12】
図11のユニットエリア配列の直交スクリーン及び鏡像関係にユニットエリアが配列される直交スクリーンとセットをなす45°スクリーンのマルチユニット配列を示す図である。
【図13】
本発明の第2の実施例によるディジタルスクリーンセットの形成法の設計手順を示すフローチャートである。
【図14】
画像領域で、有理正接値p/q=17/63、4×4のマルチセルで構成した近似15°スクリーンの最小繰返し単位を示す図である。
【図15】
一辺の長さ(1/セル)を単位周波数として±15°スクリーンを重ねた場合に発生する周波数スペクトルを示す図である。
【図16】
図15に示すスペクトル位置に周波数スペクトルをもつ45°スクリーンの構成を示す図である。
【符号の説明】
100 ユニットエリア
101 網点ドット
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-13 
出願番号 特願平6-82943
審決分類 P 1 652・ 113- YA (G03F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 町田 光信秋月 美紀子  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 末政 清滋
辻 徹二
登録日 2002-08-23 
登録番号 特許第3341096号(P3341096)
権利者 日本電気エンジニアリング株式会社
発明の名称 ディジタルスクリーンセットの形成法  
代理人 池田 憲保  
代理人 後藤 洋介  
代理人 池田 憲保  
代理人 後藤 洋介  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ