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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G03G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
管理番号 1124312
異議申立番号 異議2003-72503  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-10 
確定日 2005-09-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第3398767号「電子写真感光体及びその製造方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについてされた平成17年1月14日付け取消決定に対し、知的財産高等裁判所において、上記決定を取り消す旨の判決(平成17年(行ヶ)第10153号、平成17年6月9日判決言渡)があったので、更に審理の上、次のとおり決定する。 
結論 特許第3398767号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許出願:平成4年2月21日(特願平4-72640号)
設定登録:平成15年2月21日(特許第3398767号)
公報発行:平成15年4月21日
特許異議の申立て:平成15年10月10日
取消理由通知:平成16年7月12日付け
意見書及び訂正請求書:平成16年9月21日提出
請求項1、2及び5に係る特許を取り消す決定:平成17年1月14日付け
東京高等裁判所に出訴:平成17年2月23日(平成17年(行ケ)第10153号)
訂正の審判請求:平成17年3月15日(訂正2005-39048)
訂正容認の審決:平成17年4月18日付け
審決確定:平成17年4月28日
決定取消の判決言渡:平成17年6月9日
異議申立人に対し審尋:平成17年7月8日付け
回答書:平成17年9月1日提出

2.本件請求項1ないし5に係る発明
本件特許については、上記のとおり訂正2005-39048で請求された訂正を認める審決が確定しているから、本件請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、上記訂正の審判請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質及びポリアリレート又はポリカーボネート(ビスフェノールZタイプ)を含有する電荷輸送層とを順に積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生層の膜厚が、電荷輸送物質の電荷輸送層から電荷発生層への移行により変化して、下記(1)式を満足することを特徴とする電子写真感光体。
d2/d1>1.3 ・・・(1)
式中、d1:電荷輸送層積層前の電荷発生層の膜厚
d2:電荷輸送層積層後の電荷発生層の膜厚
【請求項2】 前記電荷輸送層が、少なくとも低分子電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり、かつ下記(2)式を満足することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
w2/w1≧0.7 ・・・(2)
式中、w1:電荷輸送層中に含有されるバインダー樹脂および高分子電荷輸送物質の重量の合計
w2:電荷輸送層中に含有される低分子電荷輸送物質の重量
【請求項3】導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を順に積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生層の膜厚が、電荷輸送物質の電荷輸送層から電荷発生層への移行により変化して、下記(1)式を満足し、
d2/d1>1.3 ・・・(1)
式中、d1:電荷輸送層積層前の電荷発生層の膜厚
d2:電荷輸送層積層後の電荷発生層の膜厚
前記電荷輸送層が、少なくとも低分子電荷輸送物質と高分子輸送物質を含有する電荷輸送層であり、かつ下記(2)式を満足する
w2/w1≧0.7 ・・・(2)
式中、w1:電荷輸送層中に含有されるバインダー樹脂および高分子電荷輸送物質の重量の合計
w2:電荷輸送層中に含有される低分子電荷輸送物質の重量
ことを特徴とする電子写真感光体。
【請求項4】導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を順に積層してなる電子写真感光体において、該電荷発生層の膜厚が、電荷輸送物質の電荷輸送層から電荷発生層への移行により変化して、下記(1)式を満足し、
d2/d1>1.3 ・・・(1)
式中、d1:電荷輸送層積層前の電荷発生層の膜厚
d2:電荷輸送層積層後の電荷発生層の膜厚
前記電荷輸送層が、少なくとも2層以上であり、少なくとも該電荷発生層と接触する電荷輸送層が低分子電荷輸送物質を含有する電荷輸送層であり下記(3)式を満足し、かつ電荷発生層から最も離れた電荷輸送層が下記(4)式を満足することを特徴とする電子写真感光体。
w4/w3>0.7・・・(3)
w4/w3<0.4・・・(4)
式中、w3:電荷輸送層中に含有される物質の重量の合計
w4:電荷輸送層中に含有される低分子電荷輸送物質の重量
【請求項5】請求項1〜4の電子写真感光体を用いた電子写真装置。」

3.異議申立ての理由及び取消理由の概要
異議申立人は、甲第1号証(下記刊行物1)、参考資料1(下記参考資料1)、参考資料2(下記参考資料2)を提出して、査定時の請求項1及び5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、また、査定時の本件明細書は記載が不備であり特許法第36条第4項及び第5項の規定に違反しているから、本件請求項1ないし5に係る発明は取り消されるべきものであると主張している。
また、平成16年7月12日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
理由1)本件発明1、2及び5は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。

刊行物1:特開平3-259268号公報(特許異議申立人が提出した甲 第1号証)
参考資料1:電子写真学会誌 第35巻 第2号 1996 111〜1 15頁(同じく参考資料1)
参考資料2:特開平4-37761号公報(同じく参考資料2)
理由2)本件明細書は、請求項2、3、4について記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第5項第2号に規定する要件を満たしていない。

4.当審の判断
4-1 特許法第29条第1項第3号違反について
(1)刊行物に記載された発明
取消理由で引用した本願出願前に頒布された刊行物である刊行物1、及び参考資料1、2には、以下の事項が記載されている。
刊行物1:特開平3-259268号公報の記載事項
(a)導電性支持体上に中間層と光導電層とを順に設けた電子写真感光体であって、光導電層が電荷発生層と電荷輸送層からなり、電荷発生層中の電荷発生物質と結着剤樹脂の体積比を特定比以上に限定した電子写真感光体(特許請求の範囲第2項)に関する発明が開示され、
(b)発明の目的として、帯電性に優れると共に環境依存性が小さくかつ耐久性の優れた電子写真感光体を提供すること(2頁左上欄5〜7行)、
(c)電荷発生層として、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、スクエアリック顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、セレン粉末・セレン合金粉末、アモルファスシリコン粉末、酸化亜鉛粉末、硫化カドミウム粉末のごとき電荷発生物質、をポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの結着樹脂溶液中に分散し、これを中間層上に塗工することにより形成される(3頁左上欄11〜18行)こと、
(d)電荷輸送層について、α-フェニルスチルベン化合物、ヒドラゾン化合物などの電荷輸送性物質を成膜性のある樹脂例えばポリエステル、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリスチレンなどに溶解させ、これを電荷発生層上に厚さ10〜40μm程度に塗工すればよく、ここで、成膜性樹脂が用いられるのは、電荷輸送性物質が一般に低分子量でそれ自身では成膜性に乏しいためである(3頁右上欄5〜14行)こと、
(e)実施例5として、「アルミ蒸着ポリエステルフィルム上に下記の中間層塗工液Cを塗布し、膜厚6.0μmの中間層を形成した。・・・・
次にブチラール樹脂〔エスレックBLS(積水化学製)〕3部をシクロヘキサノン150部に溶解し、これに下記構造式のビスアゾ顔料6部を加え、ボールミルで48時間分散し、更にシクロヘキサノン210部を加え12時間分散した。これを固型分がlwt%になるように更にシクロヘキサノンを加えた。こうして得られた電荷発生層用塗布液を前記中間層上に塗布乾燥し、厚さ約0.2μmの電荷発生層を作成した。
更に、
下記構造式の電荷輪送物質 8部
ポリカーボネート樹脂 10部
[パンライトK-1300(帝人化成製)]
シリコンオイル 0.002部
[KF-50(信越化学工業製)]
を86部のテトラヒドロフランに溶解した。こうして得られた電荷輸送層用塗布液を前記電荷発生層上に塗布乾燥し、厚さ20μmの電荷輸送層を形成し、電子写真用感光体を作成した。」(4頁右下欄4行〜5頁右上欄4行)こと、
(f)「以上得られた感光体を周長460m、巾341mmのエンドレスベルト状に加工し、リコピーFT-2050で5千枚の画像をコピーし、初期と5千枚後の画像品質を評価した。また、画像コピー前と5千枚コピー後に、FT-2050の現像位置に表面電位計を取り付け、露光部と非露光部の表面電位を測定した。」(5頁左下欄1〜7行)

参考資料1:「電子写真学会誌」第35巻 第2号 1996年 111〜115頁の記載事項
(g)「積層有機感光体における電荷発生層/電荷輸送層界面の構造」と題する論文が掲載されており、検討に用いた試料として、
Al電極を有するポリエステルフィルム上に、フルオレノン・ビスアゾ顔料(CGM)と、ポリビニルブチラール(PVB)を10:4wt.比でテトラヒドロフラン(THF)に分散させた液を塗布・乾燥して電荷発生層(CGL)を形成し、その上にα-フェニルスチルベン化合物(CTM、Fig.1参照)と、ビスフェノールAタイプ・ポリカーボネート(PC)とを、1:1wt.比、固形分濃度20wt%で含むTHF溶液を塗工して、電荷輸送層(CTL)を設け、積層感光体を作製したこと、(「2.実験」の欄 1〜13行)、
(h)測定は、CTLを積層することによるCGL膜厚の変化を調べるために、積層構成サンプルのCGL膜厚を透過型電子顕微鏡で撮影した断面写真によったこと(111頁右欄14〜17行)、
(i)結果と考察として、CGLへのCTMのしみ込みは、CTLのウエットな状態で生ずる方が優勢と考えられること(112頁右欄末行〜113頁左欄2行)、
(j)「Fig.5に,CTMとPCの比率を変えてCTLを形成した際のCGL膜厚を,感光体の断面TEM写真から求めて示す.このときのCTL塗工液の固形分濃度は,11.6wt%である.PCだけ塗布した場合CGLの厚さは多少は増しているが,低分子CTMだけの場合は3.5倍にまで膨らんでいる.すなわち,PCもCTMもCGLにしみ込むことができるが,CTMの方がしみ込みやすい.さらに,Fig.5において感光体のCGL膜厚とCTL組成との間に直線関係が認められる.この結果は,Fig.5 の挿入図に模式的に示されるように,CTMとPCが独立してCGLにしみ込むことを表している.換言すれば,CTMとPCのしみ込み量に加成則が成り立つことを示している.」(113頁左欄3〜15行)こと、
(k)Fig.5として、電荷輸送層中の電荷輸送物質含有量と、電荷発生層の厚さとの関係を示すグラフが記載されている。

参考資料2:特開平4-37761号公報の記載事項
(l)帝人化成パンライトK-1300がCTLバインダとしてのビスフェノールAポリカーボネートであること(第15頁左上欄6行〜8行)が記載されている。

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1の「ポリアリレート又はポリカーボネート(ビスフェノールZタイプ)」も、刊行物1に記載されたポリカーボネート等の成膜性のある樹脂も、電荷輸送層のバインダー樹脂であるから、上記「(1)刊行物に記載された発明」の欄に摘示するとおり、刊行物1には本件発明1の構成のうち、「導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質とバインダー樹脂を含有する電荷輸送層を順に積層してなる電子写真感光体」が記載されているものと認められ、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明1は、電荷輸送層のバインダー樹脂が「ポリアリレート又はポリカーボネート(ビスフェノールZタイプ)」であるのに対して、刊行物1には、バインダー樹脂として「ポリカーボネート」が列記され、実施例では「ポリカーボネート樹脂[パンライトK-1300(帝人化成製)]」が用いられているが、ポリアリレート又はポリカーボネートとして、特にビスフェノールZタイプについては記載されていない点。
相違点2:刊行物1には、電荷発生層の膜厚が、電荷輸送物質の電荷輸送層から電荷発生層への移行により変化して、下記(1)式を満足することについて記載されていない点。
d2/d1>1.3 ・・・(1)
式中、d1:電荷輸送層積層前の電荷発生層の膜厚
d2:電荷輸送層積層後の電荷発生層の膜厚

相違点1及び相違点2について検討する。
ビスフェノールZタイプのポリカーボネートは、電荷輸送層のバインダー樹脂として本願出願前に通常用いられているものであるから、刊行物1には、バインダー樹脂として、ポリカーボネートの中でビスフェノールZタイプものを用いることも示されているともいえる。しかし、参考資料2によると、帝人化成パンライトK-1300がCTLバインダとしてのビスフェノールAポリカーボネートであること(第15頁左上欄6行〜8行)が記載されているから、刊行物1の実施例で具体的に用いられているポリカーボネートは、ビスフェノールZタイプではないのである。
ところで、参考資料1には、電荷輸送層が、電荷輸送物質である特定のα-フェニルスチルベン化合物とバインダー樹脂であるビスフェノールAタイプ・ポリカーボネートとを固形分濃度20wt%で含むTHF溶液を、電荷発生層の上に塗工したものについて、電荷輸送物質の含有量を増やすと、電荷輸送層を塗工した後の電荷発生層の膜厚が一定の割合で増加することがFig.5に示されている。しかしながら、ビスフェノールAタイプ・ポリカーボネートをビスフェノールZタイプあるいはポリアリレートに代えた場合、Fig.5と同じ割合で電荷発生層の膜厚が増加するかどうかは、参考資料1の記載からは明らかでないから、バインダー樹脂がビスフェノールZタイプあるいはポリアリレートの場合、電荷発生層の膜厚の変化が、どの程度であるかは不明であるといわざるをえない。
そうすると、参考資料1、2を参照しても、刊行物1にバインダー樹脂がビスフェノールZタイプであって、電荷発生層の膜厚の変化が「d2/d1>1.3」であるものが記載されているということはできない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明であるとすることはできない。
イ 本件訂正発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて有し、さらに限定を加えるものであるから、上記アと同様の理由で、刊行物1に記載された発明であるはいえない。
ウ 本件訂正発明5について
本件発明5は、本件発明1〜4の電子写真感光体を用いた電子写真装置であるから、上記ア、イと同様の理由で、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。

4-2 特許法第36条第4項及び第5項違反について
異議申立の理由及び取消理由通知において本件明細書の記載不備とする点は、以下のとおりである。
(1)査定時の明細書の請求項2、3、4に記載する「低分子電荷輸送物質」、「高分子電荷輸送物質」について、明細書中にその定義が示されていないため、両者の境界が明らかでなく、特許を受けようとする発明が明確でなく、当業者が容易に発明の実施しうる程度に記載されていない。
(2)発明の詳細な説明の欄に、電荷輸送層として、低分子電荷輸送層と高分子電荷輸送層とを併存させる点が記載されていないので、当業者が容易に発明の実施しうる程度に記載されていない。
以下検討する。
(1)について
一般論として、低分子化合物と高分子化合物との境界は、分子量10000程度を境とするものであることは、化学分野における常識であり、本件各発明における「低分子電荷輸送物質」、「高分子電荷輸送物質」についても、その程度以上に区別すべき理由はないから、本件各発明の構成が明確でないとはいえないし、明細書中に具体的な化合物が記載されていることから、当業者が容易に発明の実施しうる程度に記載されていないとはいえない。
(2)について
本件明細書の実施例3には、低分子電荷輸送物質と、ポリメチルフェニルシランとをテトラヒドロフランに溶解して電荷輸送層形成用の塗工液を形成したことが記載されている。一方、たとえば、特開平2-183264号公報に記載されているように、ポリメチルフェニルシランのように、電荷輸送物質であって、しかも造膜性を兼ね備えたポリマーが存在することは明らかであるから、本件明細書の実施例3には、電荷輸送層として、低分子電荷輸送層と高分子電荷輸送層とを併存させる例が示されている。
したがって、本件明細書について、異議申立の理由及び取消理由通知で指摘する記載不備は存在しない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし5に係る発明の特許を取り消すことはできない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-01-14 
出願番号 特願平4-72640
審決分類 P 1 651・ 531- Y (G03G)
P 1 651・ 113- Y (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 淺野 美奈  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 秋月 美紀子
阿久津 弘
登録日 2003-02-21 
登録番号 特許第3398767号(P3398767)
権利者 株式会社リコー
発明の名称 電子写真感光体及びその製造方法  
代理人 伊東 忠彦  
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